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中国東北部の森林資源の減少と劣化に関する歴史的研究 : 清朝末期から新中国計画経済期(1890年代~1970年代)までの森林経営の実態

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Academic year: 2021

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Title

中国東北部の森林資源の減少と劣化に関する歴史的研究 :

清朝末期から新中国計画経済期(1890年代∼1970年代)まで

の森林経営の実態( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

王, 賀春

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第469号

Issue Date

2008-03-13

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/23476

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 王 賀 春 (中華人民共和国) 博士(農学) 農博甲第469号 平成20年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物生産科学専攻 信州大学 中国東北部の森林資源の減少と劣化に関する歴史的研 究一清朝末期から新中国計画経済期(1890年代∼1970 年代)までの森林経営の実態一 主査 信州大学 教 授 副査 信州大学 教 授 副査 静岡大学 教 授 副査 岐阜大学 教 授 人 人 雄 淳 達 正 睦 木 藤 嶋 部 植 加 小 安 論 文 の 内 容 の 要 旨 Ⅰ.研究の背景と目的 中国の森林資源は長期にわたって減少し続け,加えてその質の劣化も危倶されており,近年 の大洪水や砂嵐などの災害の発生も,こうした森林の減少・劣化によるものといわれている。そこ で政府は環境悪化や藷災害に対処するため,"天然林保護"や"環境公益林"など森林経営の 重要課題を次々と打ち出してきた。特に中国国内でも最大規模の森林資源を有する東北部で も,その枯渇と環境保全機能の低下などが叫ばれ,森林の回復および環境に配慮した森林経営 への転換などが焦眉の課題となっている。 そこで本研究は,旧満州建■国と新中国の集中的計画経済時期を中心に,それぞれの社会・経 済的情勢をふまえつつ,森林政見木材生産量とそれに対する収穫路猟営林事業など当時の 実態を把握し,森林開発と木材利用における各時代の性格を明らかにしようとするものである。そ れにより中国東北部のおよそ100年にわたる森林資源の減少と劣化の状況をマクロ的にとらえ, 今後の当地域の森林経営のあるべき方向性を提示することとした。 Ⅱ.研究方法と調査地の概要 本研究は,中国東北部における清朝末期の1900年ごろから1980年代までの各時期を対象と し,それぞれの森林開発の展開過程およびその経営実態・特徴を明らかにするため,資料・文献 による新たな史実の掘り起こしと,時代の前後関係を注意深く検討し,特に森林政策,木材生産 象伐出技術および育林事業などの関連性に焦点を当て痍究を進めた。研究対象地は中国東 北部とし,遼寧,書林および黒龍江の3省と内モンゴル東部より構成され,この地域は中国でも 重要な森林地帯と位置付けられている。

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Ⅲ.戦前期(第2次大戦前)の中国東北部の森林開発の展開過程 1644年から約200年間禁伐された中国東北部の森林資源は,清朝後半期の移民政策によっ て遼寧西部より徐々に農地開拓が始まった。その後,遼寧東部で民間資本による森林開発が 大々的に展開し,さらに鴨緑江流域にまで拡大した。これらの開発は粗放で分散的であったた め,遼寧地域の森林はこの時期より減少・劣化が進み始めた。続く帝朝末期の190P年ごろ,大 陸進行政策を抱えた日本は,中国東北部への東進政策に基づくロシア資本による束清鉄道沿 線の北浦(満州北部)勢力に対抗するため,鴨緑江流域を中心とする南満(満州南部)勢力を築 き,軍用材の確保,枕木,製材,木材販売などの経済利権を拡張し,大規模な森林開発を進め た。当時の年間木材生産量軋南満材と北満材を合計すると約300万dを超え,これにより吉林 と黒竜江地域の鉄道沿線およびその流域の森林資源は大きく減少した。 また1932年の満州国建国後には,日・満経済一体化政策のもと,「満州国経済建設要綱」お よび「産業開発5カ年計画」によって満州国の経済および産業は急速に進展した。1937年,日中 戦車の勃発により,満州国は国力の増強を由るため,林産業の酎ヒを優先的に進め・,木材増産 計画の立案とそれを実現する官行事業を強化し,木材統制政策を採用しつつ市場を±ントロー ルした。これにより軍用机輸出用材および建築材の生産は増大しノ1ルプ工業,製材工業など は生産規模を拡大し,それに伴い年間木材生産量は1・936年の約150万dから1942年には約 500方正に達した。こうした木材生産の急増は,日本からの伐木・集材および運材などの技術の 導入,特に1930年代半ば以降の集材作業用軌道と陸運鉄道の移入によぅて果された。また原 始的択伐ないし皆伐を採用し,1931年から1942年までのわずか10年間で森林面積は約582 万ba,蓄積は約5億ポ減少した。 以上のように戦前期の東北部の森林開発は,移民政策による小規模・分散的開発に始まり, 徐々に日・露両国の領土拡大の思惑のもとに競争的商業資本の参入による大規模開発へと進 展し,さらには日・満経済一体化にみる国家的独占資本による全面開発へと展開した。これによ り移民開発から満州国滅亡までのおよそ80年間で,当地域の森林率は約4割の減少となった。 Ⅳ.戦後期(第2次大戦後)の中国東北部の森林開発の展開過程 新中国建国後,集中的計画経済体制(1949∼80)は国家統制による指令的痩拝系統の整備 によって進められた。この経済体制による国家建設の推進は,東北地域の森林資源の国家的利 用を明確に打ち出し,「東北国有林の開発計画」をもって遂行された。特に大躍進時期(1958∼ 60)では,組織化された東北森林工業企業(林業局)を核として,チェーンソー,集材用トラクター および運材用トラックなどの集・運材部門の機械化の導入と積極的普及によって大面積の皆伐 作業を実現し,年間木材生産量は建国初期の約5倍(2,500万d)に達した。その結果,大幅な 資源量の減少と大量の更新不良地を発生させ,森林の生産基盤を大きく損ねた。続く1960年代 にはさらなる収穫技術の機械化を進め,索道技術の導入に伴って択伐作業準が一時的に採用 されるが,■1966年から始まるプロレタリア文化大革命の影響により,永続利用という営林理念が批 判され,森林経営は軍部の管理の下に組み入れられることによって,生産活動の停滞と混乱状 態を招いた。その後,林業部門は中央政府が要求する計画木材生産量の追求に走り,特に 1970年代の木材生産量は工業部門の下支えとして飛躍的な増大をみせ,戦前・戦後を通じて 最大量を達した。これにより東北地域の森林資源量は1980年の時点で,蓄積は1949年に比べ 2.7億d(7.4%)減少し,特に成熟林の面積と蓄積は1963年に比べ367万ba(23.5%),4億d (19.6%)の減少となった。また地域固有樹種や針葉樹資源は深刻な打撃を受け,同時に森林 諸機能の低下とみられる様々な災害が頻発化することとなった。

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すなわち戦後の東北部の森林開発は,集中的計画経済体制の下で,諸産業の建設・育成に よる急速な経済成長を実現するため,政府主導の溜令的組織体制を確立し,特に林業生産部 門は機械化の推進と皆伐作業の全面的採用によって,林分の成長量を大幅に上回る収穫量が 常態化し,東北林業史一上長大の収穫のピークを迎えることによって急速に森林資源を減少させ た。 Ⅴ.結論 中国東北部の森林開発および森林経営は,特に戦前期・はロシアや日本の外部資本によって 未開発地域の資源の争奪戦が繰り広げられ,満州国時代には産業振興政策による増産計画お よび木材統制の強化などによって大規模な資源収奪を特徴とした。さらに戦後は,集中計画経 済の導入による工業優先の産業政策によって,指令的・全面的な資琴開発などを特徴とし,収 穫技術の機械化による木材生産のピークを迎えた。 以上より戦前,戦後を通じて育林思想は育っことなく,殖民地支配と経済開乳および権力闘 争に翻弄され,一貫して資源の略奪的性格を強く帯びた森林経営であった。こうした100年の歴 史的展開によって森林汗腺が大幅減少と劣イヒを生み,今なおその再生に困難を来たしている。 今後は,これまでの木材生産優先の体質を改め,育林思想の醸成と環境保全型森林経営の推 進,さらにはそれを保障するより科学的な森林施業法の確立が望まれる。 審 査 結 果 の 要 旨 中国東北部の森林資源は,全国でも最大規模であり,これまで中国の木材生産業に大きな貢 献をしてきたとともに,環境や生物多様性の保全にも重要な役割を果たしている。しかし,この1 世紀の森林開発によって利用可能な森林資泳が徐々に枯渇し,特に原生林地帯の消失により 当地域の森林生態およびその環境は著しく悪化した。現在,政府は森林開発策を見直すため に,"伐採量の制限'',"天然林保護"や"環境公益林''など森林経営の重要課題を次々と打ち 出している。この背景のもとで本研究は,森林減少と劣化をもたらした歴史的な原因-,すなわち それぞれ社会・経済的情勢,森林開発と経営の実態などから東北部の森林開発史を解明した ものである。 その結果,戦前期の東北部の森林開発は,移民政策による小規模・分散的開発に始まり, 徐々に日・露両国の領土拡大の思惑のもとに競争的商業資本の参入による大規模開発へと進

展し,さらには日・満経済一体化にみる国家的独占資刺Fよる全面開発へと展開した。これによ

り移民開発から満州国滅亡までのおよそ80年間で,当地域の森林率は70%から約30%まで減 少した。さらに戦後の東北部の森林開発は,集中的計画経済体制の下で,諸産業の建設・育 成による急速な経済成長を実現するため,政府主導の指令的組織体制を確立し,特に林業生 産部門は機械化の推進と皆伐作業の全面的採用によって,林分の成長量を大幅に上回る収穫 量が常態化し,東北林業史上最大の収穫のピークを迎えることによって急速に森林資源を減少 させた。こうした森林開発は,森林資源の減少と劣化によって森林機能の喪失を顕在化させた。 以上のことから,育林思想は育っことなく,殖民地支配と経済開発,および権力闘争に翻弄さ れ,一門して資源の略奪的性格を強く帯びた森林経営であった。こうした100年の歴史的展開 によって森林資源は大幅な減少と劣化に至り,今なおその再生に困難を来たしている。今後 は,これまでの木材生産優先の体質を改め,育林思想の醸成と環境保全型森林経営の推進, さらにはそれを保障するより科学的な森林施業法の確立が望まれる,と結んでいる。

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また基礎となる学術論文は下記のとおりである。 ①王賀春,植木達人,中島耕平,王栓杢:中国東北部の森林資源の利用と開発に関する 歴史的研究(Ⅰ)一集中的計画経済前半期(1949∼1962)の木材増産とその促進要因について -,森林計画学会誌Vol.41No.2,2008. ②王賀春,植木達人,中島耕平,王■栓杢:中国東北部の森林資源の利用と開発に関する 歴史的研究(Ⅱ)一集中的計画経済後半期(1963-1980)の木材生産の暴走とその原因につ いて-,森林計画学会誌Vol.41No.2,2008. 以上より,審査委員は全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文と して十分価値あるものと認めた。

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