著作物再販 制度 の見 直 しの評価 (その 1)
一一見直 しのプロセスに限定 して一一 I 問 題関心 再 販行 為 は,独 禁 法 上,不 公 正 な取 引方法 と して (一般 指 走 12項該 当),原 1 ) 則違 法 とな る (19条)。 しか し,公 取委 が指 定 す る特 定 の商 品 (指定 商 品)と 著作物 を対象 とす る再販行為 は,所 定 の場合,例 外 的 に独禁法 の適用が除外 さ れ る (24条の 2)。 再 販適 用 除外制 度 は1953年の独 禁 法 改正 に よ り導入 され た もの であ るが,著 作物再 販制 度 に限定 す れば,従 来 か ら定価 販 売 の慣行 が あ っ た こ ともあ り,レ コー ド業 界にお いては1953年頃か ら,書 籍 ・雑誌業界におい 2 ) て は1956年頃か ら,再 販契約 が実施 され た。 3 ) 1966年に開始 され た指定商 品の見 直 しは,著 作物 に も波及 した。 1972年以降, 随 時,新 聞,専 門書,一 般 書籍,雑 誌 につ いて実 態調査 が行 われ た。1979年以 降 は,出 版物 の再 販制 度 の改善指 導 が行 われ,関 係 業 界 に対 して,部 分再 販 ・ 時 限再 販 の導 入等が要 請 され た。 また,1991年 に行 われ た音楽 用 CD等 につ い ての実 態調査 に基づ き,1992年 ,レ コー ドメー カー各社 に対 して, 自主的 な改 善 努 力が要 請 され た。 もっ とも,著 作物再 販制 度 の見 直 しの議論 が活発化 したの は,1995年 7月 に, 1)指 定 はすべ て,1997年 1月 に取 り消 されたので (施行 は同年 4月 ),現 在 の ところ,指 定商品は存在 しない。 2)F独 占禁止政策20年史』223頁 (1968年)参 照。 3)以 下 については,さ しあた り,厚 谷襲児ほか (編)『条解独 占禁止法』445-47頁 (内田 耕作執筆)(1997年 )参 照。 作 耕 田 内「政 府規制 等 と競 争政 策 に関す る研 究会 再 販 問題検 討小 委員会 」が,「再 販 適用 除外 が認め られ る著作物 の取扱 いにつ いて (中間報告 )」 (以下,「 中間報 告」とい う。)を 公表 したことを契機 としてであった。 というのは,「中間報告」 は,従 来 とくに問題視 されて きた音楽用 CD等 だけではな く,書 籍 ・雑誌,新 聞 をも含めて,著 作物再販制度それ 自体 の廃止 を視野に入れ るものであったか らである。 それは,国 民各層による活発 な議論 を期待 して公表 されたこともあ り,各 方面か ら賛否両論が展開 された。 とくに関係業界か らは彩 しい数の組織 的反論が行 われ,廃 止論者 との間で激 しい議論が交わされた。 再販適用除外が認め られ る著作物の範囲につ いては,1998年 3月 末 までに, その限定 ・明確化 を図 ることが政府決定 されてお り,公 取委 も,そ の期 限まで に限定 ・明確化 を図 ることとしている。実際の ところ,「政府規制等 と競争政 策に関す る研究会」は,1997年 2月 にすでに審議 を再開 し,1997年 秋 までに, 国民各層におけ る議論 を踏 まえつつ,再 販適用除外が認め られ る著作物の取扱 いについて具体的な結論 を得 ることを目指 している。 やや時機 を失 した感はあるが,一 連の小論において,著 作物再販制度の見直 つ しにつ いて評価 を加 えることにす る。検討 を思い立 ったのは,見 直 しを推進す る立場 に も,見 過 ごす ことので きない本質に関わる問題点が数 多 く存在す ると 実感 したこ とによる。問題点 として取 り上げ るのは,見 直 しのプロセス,著 作 物再販制度の趣 旨の理解,見 直 しのスタンスである。 もっとも,本 稿の検討対 D 象は,見 直 しのプ ロセスに限定 され る。 見直 しのプ ロセスが フェアでなければ, 関 係業界の納得は得 られない。のみ 4)本 稿 の問題関心は見直 しの在 り方にあるので,著 作物再販制度 それ 自体 の問題点や,存 続 を主張す る立場 の問題点 につ いては,ほ とん ど触 れない。 なお,再 販制度 の見直 しにつ いては,問 題関心 ・検討対象 を異にす るが,ガ ヽ論 を公表 してい る。併せ て参照 いただけれ ば幸 いである。「再販制度の見直 しと物価」国民生活26巻 3号 52頁 (1996年)。 5)な お,一 連の小論の検討結果 を先取 りすれば,評 価 は次の ようになる。今 日,本 質 に関 わ る問題″点が十分 に検討 されない まま性急に,著 作物再販制度の廃止 を視野に入れた議論 が行 われ るに至 っている。著作物 とい う商品の特性 を考 えると,フ ェアなプ ロセスで, し か も本質 に関わ る問題点 を逐一検討 しなければ,関 係業界の納得 を得 ることはで きない し, 手続的に も内容 的に も,公 取委の法運用に禍根 を残す結果 となろう。
著作物再販制度の見直 しの評価 (その 1) ならず,か えって混乱 を惹起す ることになる。 それ以上 に由々 しいのは,「公 取委 はフェアであ る」 との確信が削がれ るこ とである。以下,「政府規制等 と 競争政策 に関す る研究会」が 「独 占禁止法適用除外制度の見直 し」 を取 りまと めた1991年7月 まで逆上 り,そ の後の見直 しのプロセス (主として1995年7月 の 「中間報告」の公表 まで)が フェアであったか否か を検証す る。叙述は,次 の順序 に よる。 まず最初 に,「独 占禁止法適用除外制度の見直 し」におけ る著 作物再販制度の見直 しのスタンスを明 らかにす る。その後,公取委 による著作物 再販制度の見直 しのプロセスが フェアであったか否か,立 ち入 った検討 を行 う。 II「 独 占禁止法適用 除外制度 の見直 し」の ス タンス 「独 占禁 止法適 用 除外 制度 の見 直 し」 は,「政 府規制 等 と競 争政 策 に関す る 研 究会 」が,1990年 1月 以 降,適 用 除外制度全般 を対象 にその見直 しを検討 し た結果 であ る。著作物再販制度 に関 して も,著 作物 につ いての考 え方,公 取委 が採 る必要 の あ る今 後 の対応が,各 々示 されて い る。以下,略 述す る とともに, 著作物再販制度 の見 直 しの ス タンス を明 らか にす る。 まず,著 作物 につ いての考 え方 としては,次 の こ とが示 され てい る。 ア 独 禁 法上再 販 が認め られ る著作物 の範 囲 につ いては,独 禁 法 の 目的 ・再 販適用 除外 の趣 旨に照 らして限定 的 に解釈 され るべ きであ り,必 ず しも著作権 法上 の著作物 と同一 に解 す る必要 はない。 イ 書 籍 ・雑 誌 につ いては,再 販適用 除外制度 が,広 く。安 く書籍 ・雑誌 を 消 費者 に提供 す る機 能 を果 た してい るか否か等 につ いて,今 後 とも実 態把握 に 努 め る とともに,消 費者利益 の観 点 か ら事 業 者 の行為 を監視 す る必要 が あ る。 ウ 新 聞 につ いては,他 のマ ス メデ ィアの発達 が著 し く,情 報化 が進展 して い る中で,新 聞業 界 をめ ぐる環境 も大 き く変化 してい るこ と,価 格 設定 が同調 的 に行 われ る等新 聞発行 本社 間の価格競 争 が必ず しも十分 とは いいが た く,一 6)なお,取 組みに当たっては,「独 占禁止法適用除外制度小委員会」が設置 され,そ の検討・ 報告 を踏 まえた上 で研究会 の考 え方が取 りま とめ られてい る。
般消費者の利益 を損なうおそれがあること等か ら,今 後 とも実態調査に努める とともに,消 費者利益の観点から事業者の行為 を監視する必要がある。 エ レ コー ド盤 ・音楽用テープ ・音楽用 CD(以 下,「音楽用 CD等 」 とい う。)に 関 し今後再販 を認めるか否かについては,次 のような基本的問題があ る。①音楽用 CDは 寡 占化の程度が比較的高い品目に属 し, 自由な競争が損な われているのではないか。②音楽用 CD等 について再販適用除外 を認めること は,消 費者の利益 を害することとならないか (メーカーが決める小売価格等は 比較的狭 い範囲で同調的に設定 され る傾 向にあ り,邦 楽の CDに ついては価格 硬 直的になってお り,音 楽用 CDに ついては家電量販店等で値引 き販売が増加
する傾向にある)。③音楽用CD等 については,そ の商品特性により,購 入の
反復性 。商品間の代番性が少ないことから,そ もそもおとり販売の対象となる
ことは少ないのではないか。④主要国で音楽用CD等 について再販を認めてい
る国はなく,わ が国だけ認める理由はないのではないか。
次 に,公 取委 が採 る必要 の あ る今 後 の対 応 としては,次 の こ とが示 されてい る。 ア 書 籍 ・雑 誌,新 聞 につ いては,今 後 とも実態把握 に努 め る とともに,事 業者の行為が消費者の利益 を損な うことのないよう監視 を続ける必要がある。 イ 音 楽用 CD等 については,早 急に必要 な調査 を行 い,消 費者 ・関係業界 等か ら広 く意見 を聞 きつつ,基 本的問題 についてさらに検討 を進め,再 販が認 め られ る著作物 として取 り扱 うか否かについて明確 にすべ きである。 そこで,著 作物再販制度の見直 しのスタンスは,次 のようにまとめ ることが で きる。書籍 ・雑誌,新 聞については,今 後 とも実態把握に努め るとともに, 事業者の行為 が消費者の利益 を損 な うこ との ない よ う監視 を続け る。音楽用 CD等 につ いては,早 急に必要 な調査 を行 い,消 費者 ・関係業界等か ら広 く意 見 を聞 きつつ,基 本的問題 につ いてさらに検討 を進め,再 販が認め られ る著作 物 として取 り扱 うか否かにつ いて明確 にす る。 見直 しのスタンスは,書 籍 ・雑誌,新 聞 と音楽用 CD等 とでは大 き く異なっ の ている。ここでは, こ のことを確認すればよい。著作物再販制度の見直しの評価 (その 1) 39 1 H 公 取委 によ る著作物再販制度 の見直 し
公取委による著作物再販制度の見直しは,① 音楽用CD等 に着目した対応の
時期,② 適用除外が認められる著作物の範囲についての幅広い角度からの総合
的検 討 の時期 ,に 三分 す るこ とが で きる。 メル クマー ル とな るのは,公 取委が 1992年 4月 に取 りま とめ た音楽 用 CD等 の再販適用 除外 の取扱 いに関す る見解であり,① は主として1992年4月以前,② はその後ということになる。以下,
各 々 につ いて検 討 す る。 (1)音 楽 用 CD等 に着 日した対 応 の時期 「政 府規制 等 と競 争政 策 に関す る研 究会 」 は,公 取委 が,「独 占禁 止法適 用 除外制 度 の見 直 し」 の 「趣 旨を踏 まえ,市 場 メカニ ズムが最大 限に活用 され る よう,適 用除外制度及びその運用について積極的に見直 しを行 うことを強 く要 望」 した。 これ を受 けて,公 取委事務局側 は,「公正取引委員会 としては,こ の報告書の趣 旨を尊重 して,今 後 とも適用除外制度の見直 しを推進 してい くこ とと」す る旨表明 した。 そこで,公 取委が,実 際に,当 該報告書の趣 旨を尊重 して著作物再販制度の見直 しを推進 したか否かが,検 証 されなければならない。公取委が音楽用 CD等 に着目して採った措置には,次 のものがある。①音楽
用 CD等 の再販適用除外の取扱いに関する見解の取 りまとめ。②レコー ドメー
カーに対する改善努力の要請。以下,各 々について略述するとともに,「独 占
禁止法適用除外制度の見直し」の趣旨が尊重されたか否かを検証する。
(a)音 楽 用 CD等 の再 販適用 除外 の取扱 いに関す る見解 の取 りま とめ 公 取委 は,1991年 9月 か ら11月にか け,音 楽用 CD等 につ いて, レ コー ドメー カ ー, 日本 レコー ド協会,レ コー ド販売業者,全 国 レコー ド商組合連合会,消 費 者 に対 す る実 態調査 を実 施 し,同 年 12月12日,調 査 結果 を公表 した。 また,同 7)こ の点 は,伊 従寛 『出版再販一一書籍 ・雑誌 ・新 聞の将来 は ?』 (1996年)が す でに指 摘す るところであ る (65-66頁)。 8)公 正取引委員会事務局 (編)『独 占禁止法適用除外制度の現状 と改善の方向』 (1991年) の 「刊行 に当たって」参照。年 1 2 月2 5 日には, 関 係事 業者,消 費者,学 識経験者等か ら広 く意見 を聴取す る ため,公 聴会 を開催 した。 その上 で,公 取委 は,1992年 4月 15日,音 楽 用 CD 等 の再 販 適 用 除外 につ いて の検 討 結 果 を公 表 した。 それが,「 レ コー ド盤,音 楽 用 テー プ及 び音楽用 C D の 再販適用 除外 の取扱 いにつ いて」 であ り,そ れ に 別 紙 と して添付 され たのが, 「 レ コー ド盤, 音 楽 用 テー プ及 び音楽 用 C D の 再 販適用除外の取扱いに関す る公正取引委員会の見解」 (以下,「見解」 とい う。) であった。 「見解」は,次 のように叙述す る。 ア 公 取委は,立 法当初か ら,再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲につ いては,著 作権法上の著作物 と同一の もの と解す る必要はな く,立 法趣 旨,商 品特性,諸 外国の動 向等 を考慮 して,書 籍,雑 誌,新 聞,レ コー ド盤;音 楽用 テープであると解釈 して きている。 また,再 販適用除外制度については,独 禁 法上原則 として禁止 されている再販売価格維持行為 に対す る例外的措置である こ とか ら,厳 格 な取扱いが行 われ るべ きであ り,再 販適用除外が認め られ る著 作物の範囲は限定的に解 され るべ きである。 イ 音 楽用 CDは , レ コー ド盤 と同一視す ることができるか否かにつ いて議 論があ り, また,実 態調査や公聴会等において も,種 々の問題が指摘 されてい る。他方,音 楽用 CDは ,レ コー ド盤の代番商品であ り,そ の延長線上にある と認識 されて きた側面 もあることは否定で きない。 ウ 再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲について法解釈上種々の見解が あるこ とや, レ コー ド盤 と音楽用 CDと の関係について種々の議論があるこ と のほか,今 後,新 しい情報媒体 を含む新商品が現れ るたびに再販適用除外が認 め られ る著作物の範囲が問題 となるおそれがあること等か ら,「この際,独 占 9)調 査結果については,公 正取引委員会事務局 「再販適用除外制度に関す る実態調査 につ いて (要約)」公正取引495号50頁 (1992年)参 照。 10)以 下の叙述は,主 として,公 正取引委員会事務局 『レコー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽 用 CDの 流通実態等に関す る調査報告書』 1頁 (1995年7月 )に 依拠 した。 11)公 正取引委員会事務局取引部取引課 「再販適用除外制度に関す る公聴会 におけ る意見に つ いて」公正取引496号56頁 (1992年)参 照。
著作物再販制度の見直しの評価 (その 1) 41 禁 止法上再 販適 用 除外 が認 め られ る著作物 の取扱 い を明確 にす るため には,法 的安 定性 の観 点か ら,立 法措 置 に よって対応す るのが妥 当であ る との結論 に達 した。 この ため,当 委員会 としては,今 後,再 販適用 除外 が認め られ る著作物 の範 囲 につ いて幅広 い角 度 か ら総 合 的 な検 討 に着 手 す る」。 なお,音 楽 用 CD
は,立 法措置によってその取扱いが明確にされるまでの間,当 面,レ コー ド盤
に準 じて取り扱われ る。 (b)レ コー ドメー カす に対す る改善努力の要請 公 取委 は,公 聴会等にお いて音楽用 CD等 について次の ような問題が指摘 されていることに鑑み,一 般 消費者の利益 を確保す る等の観″点か ら,メ ー カー各社が 自主的に改善努力 を行 うよう要請 した。①音楽用 CD等 の価格 は,発 行枚数 の多寡等 と関係 な く,各 社 ともほぼ同一水準に設定 されてお り, しか も,近 年の需要の著 しい増大 に も かかわ らず下方硬直的であ り,国 際的にみて も割高になっているのではないか。 ②発売 当初 の価格 では売れな くなった音楽用 CD等 は,メ ー カーに│より回収 さ れ,全 量廃棄 されているが,価 格 を引 き下げれば まだ需要はあるのではないか。 これ を受けて, レ コー ドメー カー各社 は,公 取委に対 し,改 善措置 を採 る旨 をまず報告 し,そ の後,改 善措置の具体的内容 (価格の引下げ,時 限再販制度 の導入,即 売会の開催)に ついて報告 した。公取委 としては,レ コー ドメー カ ー各社に対 し,引 き続 き,改 善努力を行 うよう要請 し,改 善状況 を見守 ること とした。 (C)「 独 占禁止法適用除外制度の見直 し」の趣 旨は尊重 されたか 音 楽用 CD等 に着 目して採 られた対応 を表面的にみれば,公 取委 は,「独 占禁 止法適 用除外制度の見直 し」の趣 旨を尊重 して,著 作物再販制度の見直 しを遂行 して きたかの よ うにみえる。 しか し,実 際には,公 取委は,そ の趣 旨を十分 に尊重 した とは思 われない。む しろ,そ れ を尊重す るかの ような外観 を装 いなが ら, 12)公 正取引委員会 「レコー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CDの 再販適用除外の取扱 いに つ いて」 (1992年4月 15日)参 照。 13)以 下,公 正取引委員会 「レコー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CDに 関す るレコー ドメ ー カーの 自主的改善措置状況について」 (1992年10月28日)参 照。再 販 適 用 除 外 が 認 め られ る著 作 物 の範 囲 につ い て幅 広 い角 度 か ら総 合 的 な検 討 が行 えるよう手 を打 った といった方が よい。 ポイン トは,「見解」のウの叙述,す なわち,「この際,独 占禁止法上再販適 用除外が認め られ る著作物の取扱いを明確 にす るためには,法 的安定性の観点 か ら,立 法措置によって対応す るのが妥当であるとの結論に達 した。 このため, 当委員会 としては,今 後,再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲について幅 広 い角度か ら総合 的 な検討 に着手す る。」 とい う叙述 をどう理解す るかである。 「見解」が取 りまとめ られ るに至 った経緯,取 りまとめ られ るまでの公取委 の対応,公 表文の表題に照 らせ ば,焦 点はさしあた り,音 楽用 CD等 に当て ら れていた と理解す るのが率直であろう。 しか し,公 取委の関心は,取 りまとめ の時点ですでに,音 楽用 CD等 の再販制度の見直 しだけでな く,書 籍 ・雑誌, 新 聞 も含めた著作物再販制度全般 の見直 しに移行 していたように思われ る。 従前の経緯等に拘束 され ることな く著作物再販制度全般 の見直 しを推進す る ためには,全 般 的見直 しを表明 していた と後 日になって受け取 られ得 る 「別個 の見解」 を,「公表」 してお くこ とが是非 とも必要 であった。当該の引用箇所 は,こ の使命 をも帯 びて,「見解」の ウに挿入 された と評す ることがで きる。 この点については,項 を改め さらに検証 しよう。 14)こ の点は,伊 従 ・前掲 (注7)が す でに指摘す る ところであ る (67-68頁)。実際の と ころ,今 村成和 r独占禁止法入門 〔第 4版 〕』 (1993年)は ,次 の ように述べ て いた (164 頁)。公取委 は,「原則 としてその必要性が認め られ る書籍 ・雑誌 ・新聞以外 の レコー ド盤, 音楽用 テープ及 び音楽用 CDに つ いては,再 販が認め られ る 『著作物」 であるか どうか を 再検討す る必要があ る と考 えているようである」。 また,谷 原修 身 『独 占禁止法』212-13 頁 (1992年)参 照。 なお,金 子晃 「再販適用除外の見直 しをめ ぐる問題点 と今後の課題」 公正取 引500号18頁 (1992年)は ,紙 幅の関係 で音楽用 CD等 につ いてのみ検討す る との 限定 を付 しているので断定 はで きないが, さしあた り音楽用 CD等 に焦″点を当てた もの と して 「見解」 を理解 していたように思われ る。 この点は興味深い。 15)鈴 木満 「音楽用 CD等 の再販適用除外 の取扱 いにつ いて」公正取 引500号13,17,18頁 (1992年)の 叙述 は,こ の こ とを窺 わせ る。 16)実 際の ところ,後 日,「再販が認め られ る著作物全体 の見直 しを表明 した」 と主張 され てい る。鈴木恭蔵 「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱いについて一―著作物の再販 制度見直 しの経緯等」 ジュ リス ト1086号44,46頁 (1996年)。
著作物再販制度の見直 しの評価 (その 1) 43 なお,付 言すれば,本 稿の趣 旨は,公 取委が著作物再販制度全般 の見直 しを 行 うの を論難す ることにあるのではない。従前の経緯等 との継続性 。一貫性 を 保 っているかの ような外観 を装 いなが ら,徐 々に論″点をず らすその常套的な手 法 を論難 しているのである。著作物再販制度全般 の見直 しを行 いたいのであれ ば,従 前の経緯等 を総括 した上で,そ の趣 旨 ・目的 を全面的に明 らかに して行 えば よい。 それがフェアであ り,誤 解 の発生 を避け ることに もなる。 修)著 作物 の範囲につ いての幅広 い角度か らの総合的検討の時期 『平成 4年 度公正取引委員会年次報告』は,次 の ように叙述す る (191頁)。 「当委員会は,平 成 4年 4月 15日,独 占禁止法第24条の 2第 4項 の規定に基づ き再販適用除外が認め られている著作物 (書籍,雑 誌,新 聞, レコー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CD)の 取扱 い を明確化す るためには,法 的安定性 の観 点か ら立法措置に よって対応す るこ とが妥当であるとの見解 を公表 した。 この ため,当 委員会 は,再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲について幅広い角 度か ら総合 的に検討す るこ ととして」 いる。
実際にも,総 合的検討の一環 として,① 流通実態調査,②
「
政府規制等と競
争政策に関する研究会」に対する検討依頼,が 行われた。①が先行 し,② が後
追いをしたが,報 告書の公表は同時であった。以下,各 々について略述すると
ともに,当 期の見直しのプロセスがフェアであったか否か,検 討する。
(a)流 通実 態調査 流 通実 態調査 は,書 籍 ,雑 誌,新 聞,音 楽 用 CD等 に つ いて行 われ た。書籍 ・雑 誌 の流通実態調査 は1993年 2月 に,新 聞の流通実 態調査は1093年
10月
に着手された。1994年
1月にはすでに,それらの調査結果の
集計 ・分析 等が行 われてお り,「分析 が終 了 した段階で,再 販適用除外が認め られ るべ き著作物の範囲について,幅 広 く検討 し,国 民各層の理解が得 られる 結論 を得 たい と考 えている」 とされていた。 他方,音 楽用 CD等 の流通実態調査 は,1991年 12月の流通実態調査 を基に, 17)徐 々に論点をず らすのが,公 取委の常套的な手法であることについては,拙 稿 「景品規 制の見直 しの評価」彦根論議290号25頁 (1994年)参 照。 18)植 松勲 「取引部の今年の課題」公正取引519号12,14頁 (1994年)参 照。その後 の流通実 態 の変化,時 限再 販制度 の導入等が市場 に与 えた影響 を把握す るため に補 足的 に実施 され た。 (b)「 政府規制 等 と競 争政策 に関す る研 究会 」 に対す る検 討依頼 公 取委 事務 局 に よる 「政 府規制 等 と競 争政 策 に関す る研 究会 」へ の検討依頼 は,1994 年 9月 に行 われ た。依頼 の趣 旨 。内容 は,「 中間報告」 に よれば,「独 占禁止法 適用 除外制度 の見 直 しの一環 として再販適用 除外 が認め られ る著作物 の取扱 い につ いて検 討 す る」 こ とであ る とされ た。 もっ とも,『平成 6年 度公正取引委員会年次報告』は,依 頼 の経緯 につ いて 次の よ うに叙述す る (219-20頁)。「当委員会 は,平 成 4年 4月 15日,独 占禁 止法第24条の 2第 4項 の規定 に基づ き再販適用除外が認め られている著作物 (書籍,雑 誌,新 聞, レ コー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CD)の 取扱 いを 明確化す るためには,法 的安定性の観″点か ら立法措置によって対応す ることが 妥当であ るとの見解 を公表 し,幅 広い観点か ら総合的な検討 を行 っている。 この検討の一環 として,現 在再販適用除外が認め られ る書籍,雑 誌,新 聞, 音楽用 CD等 の流通実態調査 を行 い, また,学 識経験者か らなる 『政府規制等 と競争政策に関す る研究会 再 販問題検討小委員会』 (座長 金 子 晃 慶 応 義塾大学法学部教授)に おいて,再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲につ いて主 として法律 ・経済の理論的側面か ら検討 していただ」いた。 (C)報 告書の公表 各 品 目の流通実態調査 と 「再販問題検討小委員会」の 「中間報告」は,1995年 7月 ,同 時に公表された。それは,国 民各層において 議論が深め られ るこ とを期待 しての ものであった。
(d)当期の見直しのプロセスはフェアでぁったか 以 下,① 公取委の対応,
② 「
政府規制等と競争政策に関する研究会」の対応,に 分けて検討する。なお,
19)公 正取引委員会事務局 ・前掲 (注10)1頁 参照。 20)な お,「政府規制等 と競争政策に関す る研究会」は,「再販問題検討小委員会」 を設置 し, 専 門的に検討 した。 21)『平成 7年 度公正取引委員会年次報告』に も,ほ ぼ同様の叙述が見受け られ る (270-71 頁)。著作物再販制度の見直 しの評価 (その 1) 45
①の一部は,便 宜上,② の後に譲ることにする。
ア 公 取委の対応(1) こ こで問題にするのは,次 の2つである。①総合的
検討の 「
決定」
。②流通実態調査の扱い。
i 総 合 的検討 の 「決 定 」 『 平成 4年 度公正 取 引委員会年 次報告 』 は, 公 取委 が,「再 販適 用 除外 が認 め られ て い る著 作物 (書籍,雑 誌,新 聞,レ コ ー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CD)の 取扱 い を明権化す るためには,法 的 安 定性 の観 ″点か ら立法措 置 に よって対 応す るこ とが妥 当で あ る との見解 を公 表 した」 ため,「再 販適 用 除外 が認 め られ る著作物 の範 囲 につ いて幅広 い角 度 か ら総合 的 に検討 す るこ ととして」 い る と叙述す る。 しか し,公 取委 が公表 したのは,「 レ コー ド盤,音 楽用 テープ及び音楽用 CD の再 販適用 除外 の取扱 いにつ いて」 であ る。 しか も,別 紙 としてそれに添付 さ れ て い たに過 ぎな い 「見解 」 にお いては,「独 占禁 止法上再 販適用 除外 が認 め られ る著作物 の取扱 い を明確 にす るため には,法 的安定性 の観 ″点か ら,立 法措 置 に よって対 応す るのが妥 当であ る との結論 に達 した。 この ため,当 委員会 と しては,今 後,再 販適用 除外 が認め られ る著作物 の範囲 につ いて幅広 い角 度か ら総合 的 な検討 に着手す る。」 と叙述 されていたに とどまる。両者を比較すれば,年 次報告は,次 の″
点で特異である。① 「
見解」について
は何らの言及もなされていない。②著作物 (書籍,雑 誌,新 聞,レ コ
ー ド盤,
音楽用テープ及び音楽用 CD)の 取扱いを明確化するためには,法 的安定性の
観点か ら立法措置によって対応す るこ とが妥当であるとの 「見解 を公表 した」 と叙述 されている。③ 「著作物」に括弧書 きが追加 され,「著作物 (書籍,雑 誌,新 聞, レコー ド盤,音 楽用テープ及び音楽用 CD)」 と叙述 されている。 年次報告の この叙述 は何 を意味す るか。 それは,ま さに,公 取委が,従 来の 経緯等 を完全 に断ち切 った上 で,改 めて総合的検討 を行 う 「決定」 をしたこと を意味す る。 ここに至 り,公 取委 は,仮 面 (音楽用 CD等 の再販制度の見直 し の外観)を 取 り去 り,正 体 (著作物再販制度全般 の見直 し)を 露に した といえ る。以後,こ の 「決定」は,見 直 しの出発点 として位置付け られ ることとなっ た。 しか し,こ の 「決定」過程 は極めて不透明であ り,公 取委のフェアネスを疑 わせ るの に十分 であ った。 11 流 通実 態調査 の扱 い 各 品 目の流通実 態調査 の扱 いは,音 楽用 CD等 の第一 次実 態調査 の扱 い とは違 って い る。 第一 次実 態調査 は,「見解」 の取 り ま とめ に先 立 ち (しか も公聴会 に先 立 ち)公 表 され た (前述 III(lXa)参照 )。 そ れ に対 し,各 品 目の流通実 態調査 は,「 中間報告」 の公 表 に合 わせ て公表 され た。 その扱 いは フェア であ ったか。決 め手 とな るの は,流 通実 態調査 が,「見 直 しの方 向につ いてはニュー トラル な立場 で」行 われ る とされていた こ とであ る。 それ を前提 とすれば,流 通実態調査 の扱いは,次 のように評す ることがで きる。
① 流 通実態調査が実際にも,見 直しの方向についてニュー トラルな立場で
行われたのであれば,集 計 ・分析が終了した段階で公表することには,何 らの
問題 もなか った。む しろ,公 表す ることによ り,公 取委の運用の透明性は高 ま り,国 民各層におけ る議論が一層深 まることが期待 できた。 また,公 表 をめ ぐ る紛争 も,回 避す ることがで きた。 ② 流 通実態調査 は,そ の 「分析が終 了 した段階で,再 販適用除外が認め ら れ るべ き著作物の範囲につ いて,幅 広 く検討」す るとされてお り,後 の検討に おいて利用 され ることが意図 されていた。実際に も,流 通実態調査の結果は, 「中間報告」の作成に当た り参照に供 された。問題は,調 査結果が公表を控え られたまま,著 作物再販制度の廃止 を視野に入れ る結論の導出に利用 されたこ とにある。調査結果が公表 を控 えられたまま参照に供 され るの と,公 表により 客観的 な評価 を得 た上 で参照に供 され るの とでは,調 査結果の持つ意味合 いに 違 いが生 じる。その違 いは,「中間報告」の内容 に影響 を及ぼす もので もある。 その限 りで,流 通実態調査 の扱いは,ニ ュー トラルであった とはいえない。 22)小 粥正 巳 「年頭所感」公正取引507号 2, 3頁 (1993年),植 松勲 「取引部の今年の課題」 公正取引507号12,13頁 (1993年)等 参照。 23)植 松勲 ・前掲 (注22)13頁 。 24)な お,新 聞の流通実態調査結果 をめ ぐる公取委 と新聞業界 との車と操につ いては,原 寿雄 ほか 『本 と新 聞 再 販制度 を考 える』15-16頁 (1995年)参 照。著作物再販制度の見直しの評価 (その 1) 47 流通実 態調査 は, 分 析 が終 了 した段 階 で直 ちに公表 されておれば, ニ ュー ト ラル な もの として, 本 来的 な評価 を得 るこ とが で きた。 イ 「 政府規制等 と競争政策に関す る研究会」の対応 問 題 となるのは, 次の 2つ である。①従前の提言の実現の有無 ・程度の確認。②依頼範囲 を超 え た検討。 i 従 前の提言の実現の有無 ・程度の確認 「 政府規制等 と競争政策に関 す る研究会」は,従 前,著 作物再販制度の見直 しにつ いて提言 を行 っていたの であるか ら (前述 II参照),新 たな検討依頼 を引 き受 け るに先立 ち,従 前の提 言の実現の有無 ・程度につ いて確認す るのが筋である。 そ うでなければ,研 究 会 としての一貫性 は保 てない。のみな らず,こ の局面 での不透 明 さが,見 直 し のプ ロセスのフェアネスを損な うことになる。 しか し,「中間報告」か らは,こ の確認が行 われたか否かは分か らない。権 認が行 われたのであれば,そ の内容 を明 らかにすべ きであった。意図せず確認 が行 われなか ったのであれば,不 注意のそ しりを免れないであろう。意図的に 行 われなか ったのであれば,問 題 は さらに大 きい。 とい うのは,「政府規制等 と競争政策に関す る研究会」の方で も,従 来の経緯に とらわれない新 たな観″点 の下に,著 作物再販制度の見直 しを推進す ることを決意 した との推察がなされ 得 るか らである。 この局面での不透 明 さは,大 な り小 な り,見 直 しのプ ロセス のフェアネスを損 な うものであった。 ii 依頼範囲 を超 えた検討 公 取委事務局が当初検討 を依頼 した趣 旨・内 容 と 「政府規制等 と競争政策に関す る研究会」が依頼 を受けた とす る趣 旨・内 容 との間には皿解が あ り,「再販 問題検討小委員会」は依頼範囲 を超 えた検討 をしたように思 われ る。 この点,「中間報告」は,① 「独 占禁止法適用除外制度の見直 しの一環 とし て」,② 「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱 いにつ いて」,検 討す るよう 依頼 を受 け た と叙述す る。他方,『平成 6年 度公正取 引委員会年次報告』は, 25)伊 従 ・前掲 (注 7)77-78頁 を も参照。
① 「平成 4年 4月 15日,独 占禁止法第24条の 2第 4項 の規定に基づ き再販適用 除外が認め られている著作物 (書籍,雑 誌,新 聞,レ コー ド盤,音 楽用 テープ 及 び音楽用 CD)の 取扱いを明確化す るためには,法 的安定性の観点か ら立法 措置に よって対応す ることが妥当であるとの見解 を公表 し,幅 広い観点か ら総
合的な検討を行って」おり,「この検討の一環として」
,② 「
再販適用除外が認
め られ る著作物 の範 囲につ いて」検討 を依 頼 した と叙述す る。 両 者 を比較す る限 り,依 頼 の趣 旨に関 しては,独 禁法適用 除外制度 の見直 し の一 環 としてであ るのか,独 禁 法上再 販適用 除外 が認め られてい る著作物 の取 扱 いの明確化 を 目指 す総合 的検討 の一環 としてであ るのか,皿 鯨が あ る。依頼 の 内容 に関 しては,「再 販適 用 除外 が認 め られ 〔て い〕 る著作物 の取扱 い」 に つ いての検 討 であ るのか,「再 販適用 除外 が認 め られ る著作物 の範囲」 につ い ての検 討 であ るのか,鯉 簿 が あ る。両者 は運動 してい るが,便 宜上 二分 し,後 者 か ら検 討 す る。 現在,暫 定 的 に再 販適用 除外 が認め られて い る著作物 は書籍 。雑 誌,新 聞, 音楽 用 CD等 であ るこ とを出発 点 とすれば,公 取委 が総合 的 に検討 して い る見 直 しは,二 つ の段 階 に分 け るこ とが で きる。 第一段 階 は,本 来 的に再販適用 除 外 が認 め られ て しか るべ き著作物 の範 囲 を画定 す るこ とであ る。 第二段 階 は, 第一段 階 の判 断 に基づ き,暫 定 的 に再販適用 除外 が認め られ てい る著作物 の取 扱 い を明確 化 す るこ とで あ る (範囲 の限定 な ど)。公 取委事務 局 が検 討 を依頼 したの は第一段 階 で あ り,「 中間報告」 が検 討 を依 頼 され た とす るの は第二段 階 で あ る。 第二段 階 の検 討 は実 際上 第一段 階 の検 討 を含 む の で,「再 販 問題検 26)も っ とも,公 取委 は,「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱 いにつ いて」検討 を依 頼 した とも叙述す る。公正取引委員会 「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱いについ て一一政府規制等 と競争政策に関す る研究会再販問題検討小委員会 中間報告書――」(1995 年 7月 25日)参 照。 この叙述 に従 えば,依 頼 内容 の理解 につ いては飢鯨がないことになる。 しか し,以 下の議論 は,年 次報告 の叙述に従 って進め ることにす る。 それは,次 の理 由に よる。①検討依頼 はそ もそ も,再 販適用除外が認め られ る著作物の範囲についての幅広 い 角度か らの総合 的検討の一環 として行 われた。②年次報告は国会 に対す るものであ り,そ の叙述には重みがある。著作物再販制度の見直しの評価 (その 1) 49 討小委員会 」 の検討 は,依 頼 の範 囲 を超 えた可能性 が高 い。 他方,検 討依頼の趣 旨については,次 の ようにい うことがで きる。確かに, 独禁法上再販適用除外が認め られている著作物の取扱いの明確化 は,独 禁法適 用除外制度の見直 しの一環 として着手 ・推進 されてきた。 しか し,著 作物の取 扱 いの明確化 を目指す総合的検討の一環 としての検討依頼 を,独 禁法適用除外 制度の見直 しの一環 としての検討依頼 と同一視す ることには,問 題がある。 と い うのは,依 頼の趣 旨が限定的なものであるか一般的なものであるかは,検 討 のスタンス ・内容 に大 きな影響 を及ぼすか らである。 この″点,「政府規制等 と 競争政策に関す る研究会」は,限 定的な依頼の趣 旨を一般的な もの と同一視 し たのであるか ら,「再販問題検討小委員会」の検討は,依 頼の範囲 を超 えた可 台ヒ性がある。 問題 は,依 頼範囲 を超 えた理由である。意図 した ものであれば,当 該の研究 会 ・小委員会 はフェア とはいえない。のみならず,検 討結果 も,懐 疑的に見 る 必要が生 じて くる。 ウ 公 取委の対応修) 依 頼 の範囲の理解 に皿解があることに対す る公取委 の対応 も,問 題 である。 この″点については,公 取委は,何 らの言及 もしていな い。 それ どころか,依 頼内容については,徐 々に,研 究会 。小委員会の理解に 合 わせ ていった ように思われ る。 この こ とは,「中間報告」の公表に先立 ち次 の ような叙述が行 われていたこ とか らも分か る。「再販問題検討小委員会」に は,「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱 いを中心 として再販制度の見直 しにつ いて検討 を行 っていただいているところであ」 る。そして,「中間報告」 の公表後 は,一 般 に,「再販適用除外が認め られ る著作物の取扱いについて」 検討す るよう依頼 した と叙述 され るようになった。 問題 は,こ こで も,公 取委が依頼範囲 をず らした理由である。それは,次 の ところに求め られ よう。す なわち,「再販問題検討小委員会」の問題関心が, 27)大 熊 まさよ 「取引部の今年の課題」 28)例 えば,鈴 木 ・前掲 (注16)44頁 , 年版〕』53頁 (1996年)参 照。 公正取引531号12,13頁 (1995年)参 照。 鈴 木孝之 (監修)『独 占禁止法質疑応答集 〔平成 8
見直 しにつ いての公取委の シナ リオに適合 的であった とい うことである。公取 委 は,こ の ことを確証 したことによ り,依 頼範囲の拡張 を図った。 この見方は, 「中間報告」公表後の公取委の態度か らも,正 当化 される。 しか し,依 頼範囲の変更は,適 時に, しか もその旨を明瞭に表明 して行 われ なければな らない。方針 を徐々にず らす手法は,断 じて採 るべ きでない。それ が見直 しのプロセスのフェアネスを大 きく損 な うことは, もはや 多言 を要 しな いであろう。 29)な お,こ の対応は,公 取委の意 に副わなか った と推察 され る 「独 占禁止法適用除外制度 の見直 し」の提言に対す る対応 とは,際 立 った対照 を示 している。 しか し,両 者の対応に は,方 針 を徐々にず らす とい う点 で,共 通の問題がある。 30)例 えば,「著作物の再販制度の見直 し十一消費者利益の確保 に向けて一一」時の動 き40巻 1号 66頁 (1996年)の 叙述の仕方 ・内容 を参照 されたい。