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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 利用統計を見る

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(1)

職場におけるセクシュアル・ハラスメント

著者名(日)

今上 益雄

雑誌名

東洋法学

43

2

ページ

127-185

発行年

2000-03-15

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000436/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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職場におけるセクシュアル

ハラスメント

東洋法学

 本稿は、東洋大学﹁井上円了記念学術センタi﹂が﹁井上円了没後八O年記念事業﹂シリー ズの一環として実施し、筆者が、一九九九年八月二五日に群馬県安中市の職員自己啓発研修会 及び同月二七日に同県渋川市の職員教養研修会において、﹁職場とセクシュアル・ハラスメン ト﹂と題して約一時間三〇分に亘り行った講演︵一〇月二六日に埼玉県吹上町、二〇〇〇年一 月六日に群馬県富岡市でも講演の予定︶要旨に大幅に加筆訂正をし、﹁であります調﹂を﹁で ある調﹂に改めて論文化したものである。その際タイトルも﹁職場におけるセクシュアル・ハ ラスメント﹂と改めた。  ところで、気鋭の哲学者井上円了は、今から一一〇年前の一九八七︵明治二〇︶年に東洋大 学の前身である私立哲学館を創設したが、彼は当時としては先駆的な社会教育や生涯教育の 普及のために情熱を注ぎ、約三、六〇〇日に亘り全国各地に赴き講演活動を行って、それぞれ

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント の地域において﹁哲学館創設のための寄付﹂をお願いした。  それから幾多の試練を経て、東洋大学は、現在、四キャンパスに文学部、経済学部、経営学 部、法学部、社会学部、工学部、国際地域学部、並びに生命科学部の八学部、及び大学院、短 期大学からなり、在学生総数約二八、OOO名、二つの附属高校を擁する総合大学へと発展し た。  右のことにかんがみ、本学の発展に寄与された多くの人々の御芳志に報いる趣旨で、東洋大 学では、一九九九年度にコ一〇目の御礼﹂として費用を自弁し、全国規模で講演の申し込み を受け付け、テーマごとにこれに適する専任教員が分担して各地で講演を行うこととした。  本稿の基となった講演も、その一部をなすものである。   目  次 はじめに 一 今、なぜセクシュアル・ ω 論議の要因 ② 対策の必要性 ハラスメントか 128

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ニ アメリカにおけるセクシュアル・ハラスメントとその対応  ω 法的救済と公民権法第七編  ⑭ 公民権法第七編と判例法 三 わが国におけるセクシュアル・ハラスメントとその対応  ω 均等法の改正  ③ セクシュアル・ハラスメントの原因と形態  ㈹ セタシュアル・ハラスメントと法的救済の方法 四 セクシュアル・ハラスメントに対する取組み  ω セクシュアル・ハラスメントの予防対策  ⑧ 苦情処理の方法 おわりに

はじめに

東洋法学

      ハこ       パら  セクシュアル・ハラスメント︵ωΦ釜巴富轟霧ヨ①暮︶は、わが国では﹁女工哀史﹂の時代から存在した古くて 新しい間題である。が、この言葉が日常的に使われるようになったのは一九八O年代の末頃からであり、週刊誌 などでも興味本意にとりあげられ、一九八九年にはその年の流行語大賞にもなった。もっとも、セクシュアル ハラスメントは、この問題の本質を堀り下げそれに対する対策が議論されてきたわけでもないこともあり、残念 ながら今も言葉として定着することとその内容の理解が一致しない典型の一つといってよい。

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント  ところで、セクシュアル・ハラスメントは性的いやがらせと訳されているが、その理論と実践の両面で中心的 役割を果たしたアメリカの女性ジャーナリスト、キャサリン・A・マツキノンは、かつて、﹁女性は昔から、物 質的な生存と性的サ:ビスの交換をさまざまな形で要求されてきた。売春・結婚そしてセクシュアル・ハラスメ       パニ ントはこれを制度化したものである。﹂といっている。アメリカでは、すでに一九七〇年代に女性の職場進出に 伴う働く女性の意識の高まりにより、﹁働く女性全体に向けられた性差別は個人が受忍すべき問題ではない。社 会的問題として是正、救済が必要である﹂というフェミニズム運動の中から、隠れていたセクシュアル・ハラス メント被害が表面化するようになり、﹁女性の尊厳︵お89けh蒔三昌︶に関わる問題﹂としてとりあげられるよ うになったものである。そして性差別の法律問題が顕在化した背景には、一九七一年に初めて性差別を憲法の平       パゑ 等条項違反としたリード事件と一九六四年公民権法第七編︵↓筐Φ葺99Φ〇三一勾一讐富>9這窪︶の包括的        パむ 雇用差別禁止条項を雇用性差別に適用したフィリップ事件とについての二つの連邦最高裁判決があったといえよ ・つ。  もっとも、アメリカ社会一般に広くセクシュアル・ハラスメントが浸透するきっかけとなったのは比較的最近 の一九九一年に、連邦最高裁判事の就任承認に当たり問題となったクラレンス・トーマス判事の﹁セクハラ疑惑﹂  なマ 事件であった。この事件は、内容のショッキングさで人々を驚かせたばかりでなく、皮肉にもセクシュアル・ハ ラスメント問題の複雑さと深刻さを世に知らしめることとなった。  他方、わが国では、一九八九年八月に部下の女性Xとの対立関係に関連してその女性の異性関係をめぐる行状 130

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東洋法学

や性向についての悪評を二年余に亘り執拗に続けたため、人格的尊厳を侵害され、退職を余儀なくされたとして その上司Yと右上司の行為に対する適切な対処を怠った企画会社Zを相手どって損害賠償の支払いを求めて訴え を提起した福岡事件が、最初のセクシュアル・ハラスメント訴訟として内外に報道されたため大きな関心を呼び、        パヱ 一六五万円という賠償額の低さにもかかわらず原告勝訴の判決が言い渡されたこともあり、その後の訴訟の広が りに大きなインパクトを与えることとなった。そして、判決文に初めてセクシュアル・ハラスメントの言葉が用        ハニ       すロ いられた金沢事件やこの種の事件ではきわめて困難とされる実名で訴訟を提起した宇都宮事件など、相次ぐ訴訟 の提起は職場でのセクシュアル・ハラスメントの深刻な実態をうきぼりにした。また、行政にも数多くの相談が 寄せられるようになり、東京都を皮切りに大阪や神奈川、福岡など全国的に行政での取組みや弁護士会、各種女        パむ 性団体などの電話相談や調査は、職場での実態を告発する大きな力となり、また法規制のきっかけを作り出した といえよう。  しかし、セクシュアル・ハラスメントは、わが国とアメリカとでは、職場での仕事の進め方、職務権限の範囲、 とりわけ上司の人事権限も異なっており、さらに職場での性的言動に対する受けとめ方も、個人差が大きく、よっ て立つ文化の違いもあるため問題の起こり方はもちろん、受けとめ方にも微妙な違いがある。また、セクシュア ル・ハラスメントは﹁男性から女性﹂のみならず、﹁女性から男性﹂﹁男性から男性﹂﹁女性から女性﹂を含めて 種々の態様が考えられる。しかし、わが国では性差別の問題は、男性から女性に対するもの、つまり﹁男女差別﹂        パな とイコールで語られていたこと、改正雇用機会均等法一二条も﹁男性から女性﹂に対するセクシュアル・ハラス

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント メントのみを規定していることにかんがみて、本稿におけるセクシュアル・ハラスメントとは、この態様の場合 に限定して用いることとしたい。  本稿は、右のことを踏まえて、セクシュアル・ハラスメントの法的対応の先進国でわが国のそれに多大のイン パクトを与えたアメリカの状況を判例理論の形成を中心にスケッチした後、わが国での法的救済の方法とその予 防・対処方法についての若干の私見を展開しようとするものである。 ︵1︶

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アル・ハラスメントと男女雇用機会均等法﹂ジュリスト九五六号︵一九九〇年︶三七頁参照。  O鋤浮巽営︸冨8鉦目oPω霞仁巴国巽器ωB①暮9≦9犀ぼ鵬薫oヨΦPP嵩9這お。なお、金城清子﹁セクシュ  一九二五年刊。細井和喜蔵著。紡績女工の苛酷な労働条件とその悲惨な生活を記述。 クシュアル・ハラスメント﹂と使用することにする。 ハラスメントを﹁性的いやがらせ﹂とする訳語ではやや表現として弱すぎる嫌いもあり、本稿では、そのまま﹁セ 語はしばしばからかい半分、面白半分でこの問題を扱うのと規を一にしていることが多く、強姦に近いケースでの  セクシュアル・ハラスメントは、﹁セクハラ﹂という略語が用いられる場合が多い。しかし、セクハラという略 勾Φ&ダ園。①ρ“。“dφ目︵一㊤刈一︶ 写一一唇く’霞畳冒匡毘①け$Ooβ﹂。。dφ㎝命︵一。刈一︶  一九九一年一〇月保守派の黒人判事クラレンス・トーマスの最高裁判事の就任承認をめぐって、上院の司法委員 会の公聴会が三日間に亘り開かれ、米三大ネットワークなどで終日実況中継され、四人に三人はテレビを見たとい われ、アメリカ国民の注目を浴びた事件である。  トーマスは、一八八O年代前半に教育省、続いて雇用機会平等委貝会︵後出参照︶で働いていた。が、当時トー マスの助手をしていたアニタ・ヒルはトーマスから頻繁にデートの誘いがあり、それを拒絶すると、勤務中、性的 132

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)))

︵10︶ ︵11︶ できわめて不愉快な内容の話をされ傷ついたと証言した。  公聴会の後、上院本会議で指名承認をめぐる表決がされ、五二対四八の小差で、トーマスは承認された。  事件は一〇年前に密室で起きたものであるが、四票の差はヒルの証言に信葱性があることを認めつつ、セクシュ アル・ハラスメントの立証の難しさを物語っている。  福岡地判平成四年四月一六日判例タイムズ七八三号。  金沢地裁輪島支判平成六年五月二六日労働判例六五〇号。  上司にホテルに連れ込まれそうになり、キスをされ、抗議すると中傷し退職に追い込まれた事案で、五年間に及 ぶ審理を経て、被告上司、会社との間で三〇〇万円を支払うことで和解が成立。原告の菊地清美さん︵三〇歳︶は、 ﹁何も悪いことをしていないのだから名前を隠す必要はない。堂々としていたい﹂と明言︵平成九年一二月二六日 付毎日新聞︶。  例えば、東京都は﹁セクシュアル・ハラスメント防止マニュアル﹂︵一九九四年︶を作成し、行政・企業・労働 組合・個人の具体的取組みのマニュアルを示し、また、東京第二弁護士会は電話相談活動に基づき﹁セクハラ防止 法案﹂︵一九九〇年︶を発表するなどをした。  正式名称は、﹁雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律﹂というが、本稿では、以 下﹁均等法﹂と略称する。

東洋法学

今、なぜセクシュアル・ハラスメントか わが国では﹁セクシュアル・ハラスメント﹂への本格的な取り組みが求められている。 それでは、今、なぜ それを論議する必要があるのか。その対策の必要性とともに、先ずこの点について見てみよう。

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント qD  論議の 要因  いくつかの理由を考えることができるが、大きなものは次の三つである。  e 紛争の増加と法制化 直接的には、均等法の改正︵一九九八年六月二日︶により企業は、女性労働者が性 的言動によって不利益を受けたり、就業環境が害されないように雇用管理上の配慮義務を負うこととなったこと である︵二一条一項︶。これはわが国の法律における初めてのセクシュアル・ハラスメントについての規定であ り、一九九九年四月一日から施行された。均等法は女性労働者の量的、質的拡大と女性差別撤廃条約の批准︵一 九八O年︶などを受けて、女性労働者が性別により差別されることなく、その能力を有効に発揮し、充実した職        こ 業生活を営むことを基本理念として一九八五年五月一七日に制定されたものである。セクシュアル・ハラスメン ト対策の面で欧米諸国に比べ大幅に立ち遅れたわが国で、右均等法の改正により、ようやくセクシュアル・ハラ スメントに関する規定が設けられた背景には、当然のことながらアメリカなどと同じく、男女の平等意識の高ま りの延長線上に性差別による紛争の増加がある。  福岡事件以後、この一〇年間で起こされたセクシュアル・ハラスメント裁判は一〇〇件を超える。もっとも、 裁判は、必ずしもセクシュアル・ハラスメントを分類のキーワードとしているわけではなく、一〇〇件余の数字 は裁判で争われている実数というよりも、セクシュアル・ハラスメント裁判としてある程度注目されたものの件        パヱ 数というのが正確であろう。ちなみに、労働省女性少年室へのセクシュアル・ハラスメントの年度別相談件数は 表1のとおりであり、東京都へのそれは表2のとおりである。いずれも年度を追うごとに件数が増加しているこ 134

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 表1 セクシュアル・ハラスメントの年度別相談件数 年度

平成6

平成7

平成8

平成9

平成10 件数 850 968 1,615 2,539 上半期2,348 下半期4,671 (計7,019) *平成6年度から調査開始 労働省女性政策課(都道府県女性少年室)による 表2 年度

平成4

平成5

平成6

平成7

平成8

件数 355 208 277 383 484 *平成2年から調査開始 東京都による 図1円グラフ 平成8年度 セクシュアル・ハラスメント相談の内容 45 56

  合計

48 484件

..3●●●・ ・漉’● 33●9 工髄 202件 □望まない性的な行動をしかけられる 【=コ望まない性的な誘いを受ける 圃いやがっているのに性的な話題で反応を楽しむ 刎望まない性的な関心を示される ■不快な職場環境 ㎜その他 (出所)1996年度東京都労働経済局「労働相談およびあっせんの概要」

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント  口 企業の海外進出化 経済のグローバル化の中で、日本の企業が海外に進出することが普通となり、それに 比例して欧米諸国で日本企業のセクハラ裁判が多発し、時に文化摩擦の様相さえ呈するようになった。その象徴 的なケースとしてマスコミにも大きく報道された米国三菱自動車製造︵以下﹁米国三菱﹂という。︶のセクシュ アル・ハラスメント事件をあげることができよう。  米国三菱は、イリノイ州ノーマルに本社を置く三菱グループの一〇〇%出資子会社である。従業員約四、OO O人のうち女性は約八○○人という典型的な男性中心の職場であった。職場では女性従業員が胸や下半身を触ら れたり、卑わいな言葉を投げかけられたり、壁には下品な落書きがあちこちにあったりするなど、日常的にハラ スメント行為が横行し、女性にとり非常に不快な職場環境にあった。こうした環境に対し女性従業員が会社に改 善かたを訴えたが米国三菱は何らの対策を講じなかった。そこで一九九四年に、二〇数名の女性従業員が裁判に 訴え、また、これと別に個人で連邦行政機関の雇用機会平等委員会︵↓ぼ国ε巴国B覧畠目Φ旨○唇oε巳な Oo目ヨ凶ωの一91以下﹁EEOC﹂という。︶に訴え出た。EEOCは一年三カ月の調査の後、調査結果の報告と 一三項目からなる改善勧告案を提出したが、なお事態を甘く見た米国三菱は、社員の研修や間題のある従業員の 処分を行っていると反論し、それ以上の対応をしなかった。そこでEEOCは、一九九六年四月に米国三菱をク       パゑ ラスアクション︵o一霧ω碧試9U集合代表訴訟︶として民事提訴に踏み切った。ところがその二週間後、約三、 ○○○人の米国三菱の従業員とその家族がバス五九台に分乗してEEOCのシカゴ事務局に赴き抗議デモを行っ た。が、バスのチャータi代から昼食代、日当まで米国三菱が負担していることが判明したばかりでなく、黒人・ 136

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ヒスパニックをはじめマイノリティの雇用問題に努力していないと激しい批判をあびて三菱製品の不買運動など に広がり、日米の外交問題にまで飛び火した。危機感を抱いた米国三菱は、人権擁護団体や女性団体から出され ていたセクシュアル・ハラスメント提訴後に辞めていった女性従業員を職場復帰させること、副社長クラスに黒 人二人を起用すること、マイノリティの雇用を五年間に一、八OO人に増やすために総額二億ドルの投資をする ことなどの職場改善要求を受け入れ、ついに一九九八年六月一一日の記者会見で、補償金三、四〇〇万ドル︵一 ドル一一〇円として三七億四、○○○万円︶を支払うことでEEOCと和解が成立したことを公表せざるをえな       パを いことになった。この補償金は一企業が支払う金額としては過去最高であったほか、和解の内容には、正式な謝 罪と社外監視団の設置が盛り込まれ、この監視団は、適切なセクシュアル・ハラスメント対策が行われているか どうかを一年間監視し、その結果を裁判所とEEOCに報告する義務を負うものであった。  米国三菱のセクシュアル・ハラスメント事件は、わが国では補償金額の大きさがセンセ:ショナルに報道され 企業の危機感をあおった嫌いがないではないが、日本人管理職が新入社貝向けのオリエンテ:ションで女性は職 場に必要な存在だとは思っていないと発言したり、日本人管理職の命令で女性従業員が接待パーティに出席させ られたりするなど、現情認識の甘さ、セクシュアル・ハラスメントが横行する環境について知っていたにもかか わらず、﹁たいしたことではない﹂とそのまま放置するという広い意味での日米の文化の違いが原因の一つとなっ ていたことは否めない。  米国三菱の得た痛い教訓は、セタシュアル・ハラスメントは小さなとるに足りない問題ではなく、対応を一つ

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 間違えば企業の存立を決し、またわが国との文化摩擦を生じかねないことをマザマザと見せつけることとなった のである。  日 経済的損失 右は企業サイドから見た問題であるが、上司に性的関係を迫られ、それを拒否したために解 雇されたり退職した女性側の経済的損失も深刻である。仕事を辞めれば収入は無くなり、また、セクシュアル・ ハラスメントが理由で仕事を辞めた女性は、次の仕事が見つけにくいともいわれているのである。  このように、セクシュアル・ハラスメントをなくすためにどの企業も雇用管理上の重要問題として具体的対策 を考え、事業主をはじめ従業員の一人ひとりがハッキリとした心構えを持たなければならない時期に来ているの である。  ② 対策の必要性  e 性的自己決定権の侵害 職場でセクシュアル・ハラスメントが実際に発生した場合、被害者個人にとって は人格権の一つとしての性的自己決定権に対する侵害となる。近年、アメリカなどを中心とする精神医学の研究 によれば、強姦されたり、強姦されそうになったという形態のセクシュアル・ハラスメントでは、その恐ろしい 体験が被害者に﹁トラウマ﹂︵↓墨¢ヨ僧︶と呼ばれる心的障害、すなわち被害を受けたときの様子を生々しく思 い起こしたり︵フラッシュバック︶、不眠・情緒不安定・対人障害・自殺衝動などを引き起こし何年にも亘って 被害者を苦しめ、被害の訴えに対し不適切な対応がされた場合には第二次の重大な被害をもたらすことが解明さ 138

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   パぜ れている。したがって、このケースでは被害者の精神的ケアーと人権救済が急務となる。       パヱ  他方、企業のサイドから見れば、次の諸点をあげることができよう。  ⇔ 時問的、経済的損失 セクシュアル・ハラスメント問題が生ずると、加害者と被害者という個人対個人の レベルを超えて企業の使用者責任や債務不履行責任などを訴求するケースが多い。とりわけ改正均等法により企 業が雇用管理上の配慮義務を負うとされたことにより、厳しく企業責任が問われかねない。損害賠償額のいかん にかかわらず、訴訟による時間的、経済的損失ははかり知れない。仮に訴訟以外の解決が求められた場合でも、 被害者の心理面にも加害者の心理面にも十分に配慮した対処が求められ、その負担もきわめて大きく、企業は常 にこうしたリスクを負うことになるのである。  目 企業イメージの低下・従業員のモラールダウン ひとたび﹁セクシュアル・ハラスメントを起こした企業﹂ というレッテルが貼られれば、企業イメージは大きく損なわれ、せっかく築いたこれまでの信用を失うことにな りかねない。それは賠償金の支払いにも代え難い大きなダメ:ジとなろう。とりわけ名のある企業の場合には、 その名に比例してダメ:ジも増大する。と同時に、そのような企業の現場では、従業員同士に不信感が生じて業 務の円滑な遂行に支障が出たり、士気にも影響し、ひいては労働意欲が減退して生産性が低下することにもなり かねない。  また、個人のレベルで考えた場合でも、当事者双方が全面的に争うケースが多く、強姦まがいのセクシュアル・ ハラスメントはしばしば第三者のいない場所で行われるため被害者女性による立証も困難であるため、法的責任

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職場におけるセタシュアル・ハラスメント の追及までいかなくても、スキャンダルに発展しやすく、そのため加害者男性は配転や退職などを余儀なくされ るケースが生ずる。  このようにセクシュアル・ハラスメントに関わる紛争が実際に発生した場合には、企業も個人も多大のダメー ジを受けかねないという現実があり、被害者の人権救済とともに、セクシュアル・ハラスメント対策の必要性が あるのである。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶  女子差別撤廃条約の逐条解釈としては、国際女性の地位協会編﹁女子差別撤廃条約注解﹂︵一九九二年︶が詳し い。なお、国際法と女性たちについては、山下泰子・戒能民江・神尾真知子・植野妙実子﹁法女性学への招待﹂ ︵一九九八年︶一頁以下、均等法については同書一二一頁以下参照。  セクシュアル・ハラスメント裁判及び裁判以外のセクシュアル・ハラスメント事件については、金子雅臣氏︵東 京都労働経済局労政課勤務︶の作成に係る一覧表がある。福島瑞穂・金子雅臣・中下裕子・池田理知子・鈴木まり 子﹁セクシュアル・ハラスメント︵新版︶﹂二一二頁以下。そして、金子氏は、右裁判の件数は氷山の一角にすぎ ないという同書五頁。  なお、アメリカでのセクシュアル・ハラスメント裁判の件数は、一九九一年度では約六、八OO件であったもの が一九九三年には約一二、OOO件に倍増し、ここ数年では約四〇、○○○件近い数にのぼっているといわれる。  EEOCは、公民権法第七編の七〇五条により定められるところの差別の救済を目的として設置された連邦政府 機関で一九六五年七月二日に創設された。本部のほか約五〇の地域事務所があり、その地域の個人からの申立てに 対処している。  公民権法第七編に基づく救済の申立ては、被害者は直接裁判所に提訴することはできず、初めにEEOCに提起 しなければならない。弁護士費用などを節約するためといわれる。 140

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︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶  EEOCは、差別の申立てを受けると事実の調査を行い、理由があると判断した場合は、調整、説得により差別 の是正を行うが、不調に終わった場合には、EEOC自ら民事訴訟を提起することもある。 o一器ω8江9とは、集合代表訴訟とか、集団訴訟と訳される。共通点をもつ一定範囲の人々︵これをo一霧ωという︶ を代表し、一人または数名の者が全員のために原告として訴えまたは被告として訴えられる訴訟形態をいう。  最近の、一九九九年八月二一日にも、マイノリティの雇用率が低いとして米国ホンダに対しクラスアクションが 提訴された。クラスアクションの判決効は勝訴でも敗訴でもo一mωωの全員に及び、損害賠償請求訴訟で勝訴すれば、 原告とならなかった被害者にも賠償金が支払われる。  総額三千四百万ドルの和解金は、クラスアクションの結果として原告以外の被害者も含め、被害者全員の四八六 人に対し被害状況によって支払われる。近く一人当たり最高三〇万ドル︵対象七人︶から、約一一、OOOドル ︵同二〇八人︶まで支払いを始める予定である。  このほか、レイプ・トラウマ・シンドローム︵声冨霞窪ヨ鋤ω旨昏oBΦ︶、すなわち肉体的に暴行を受けた女性 が一時的に硬直して何もなかったように行動し抗議などを行わないことがある、という行動様式の解明がされてい るという。大脇雅子など前掲書九八頁以下。  日経連出版部編﹁セクハラ防止ガイドブック﹂︵一九九九年︶一一頁は、紛争が発生することによって企業にも 大きなマイナスが発生する。これは﹁いわゆるリスクマネジメントや危機管理という視点です。﹂という。

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ニ アメリカにおけるセクシュアル ・ハラスメントとその対応 ω 法的救済と公民権法第七編  性差別の告発に取り組んだフェミニズム運動は、 の女性をクビにするという行為を見逃さなかった。 職場で上司が部下の女性に性的関係を迫り、拒絶されるとそ それはセクシュアル・ハラスメントであり性差別なのだ、と

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 訴えた。しかし、一九七〇年代には、セクシュアル・ハラスメントを直接規制した法律は存在せず、場合により 犯罪行為として刑事責任を問い、また民事的にはコモン・ロi︵Oo目ヨ窪ぴ餌名︶上の不法行為や契約違反の責 任を問うなどの方法が講ぜられた。しかし、このような方法は加害者本人に対する責任追及を本則とし、救済の 具体的内容も金銭賠償にとどまるなど、被害者に対する救済手段としては必ずしも十分で効果的なものではなかっ た。そこでこれに代わる、あるいはこれを補充するものとして包括的な雇用上の差別禁止法である一九六四年公 民権法第七編︵以下、原則として﹁第七編﹂という。︶をめぐる判例法の形成という形で法的救済が図られてきた のである。  すなわち、多くの場合、職場で働く男性から女性に対して行われる性的言動などが、そもそも第七編の禁止す る雇用上の性差別を構成するかどうか、またこれが管理職や同僚の従業員などにより行われた場合であっても、 その法的責任を企業に追及しうるかということを主要な争点として議論されてきたのである。  このように、アメリカでのセクシュアル・ハラスメントに対する法的規制の中心をなすものは、第七編の適用 をめぐる判例法である。  6 公民権法第七編 第七編は、性差別のほか、人種、宗教、国籍などを理由とする雇用上の差別を禁止した     パよ 法律である。しかし、同法は、差別の行政機関として、前出のEEOCを設置した。その第七編七〇三条︵島 dφ○>。留OO。①1巣蝉︶︶は次のように規定する。    §二〇〇〇eI二条@以下の行為は、使用者の違法な雇用慣行とする。 142

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   ω人種、皮膚の色、宗教、性、または出身国を理由として、個人を雇用すること、あるいは雇用に関する    報酬、期間、条件、または特典について、差別待遇を行うこと、    あるいは、    ω人種、皮膚の色、宗教、性、または出身国を理由として、個人の雇用機会を奪い、奪う可能性のある方    法で被用者、または就職志願者を制限、分離、類別すること、あるいは被用者たる地位に不利益を及ぽす    こと。  そして、EEOCは、一九八O年にセクシュアル・ハラスメントに関するガイドラインを策定し、セクシュア ル・ハラスメントとは何かについての明確な基準を示した。もとよりガイドラインは、裁判所を拘束するもので はないが、その後連邦最高裁をはじめとして裁判所はこのガイドラインを尊重して判決を下したといってよい。  ⇔ セクシュアル・ハラスメントの二つのタイプ 第七編の性差別になるとしたセクシュアル・ハラスメント とは、次のようなものである。    §一六〇四−一一 セクシュアル・ハラスメント。    @性に基づくいやがらせは、第七編七〇三条に違反する。不快な性的接近、性的行為の要求、ならびに性    的性質を持つ口頭、または身体上の行為は、以下のような場合、セクシュアル・ハラスメントを構成する。    ωこのような行為への服従が、明示もしくは黙示に、個人の雇用条件を形成する場合、    ωこのような行為への服従、または拒絶が、その個人に影響する雇用上の決定として用いられる場合、

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント    または、    ⑬このような行為が、個人の職務遂行を不当に阻害し、または、脅迫、敵意、もしくは不快な労働環境を    創出する目的もしくは効果を持つ場合。  右のω及びωは、対価型セクシュアル・ハラスメント︵O鼠αギoO琶ω霞g巴国巽国器日①耳ー以下﹁対価 型﹂という。︶と呼ばれる場合で、何らかの雇用上の利益の代償として性的要求がなされるケースである。例え ば、﹁性的要求に応じなければクビだ﹂といって性的関係を強要する場合である。性的誘いに応じることが雇用 契約継続の条件となっているから、右のωに当たるのである。また、その性的誘いを拒絶したことが、その後の 昇進などの決定の際に不利益に取り扱われる場合などはωに当たる。  これに対して、⑥は、職場環境型セクシュアル・ハラスメント︵国oω匹①≦o詩国莞冒o目Φ旨ωΦ図q巴 =震器ω日Φ旨  以下﹁環境型﹂という。︶と呼ばれる場合で、経済的な利益に直接の影響を与えるものではな いが、女性にとって不快で、耐え難い職場環境を形成しているようなケ!スである。  もっとも⑬も規制の対象としたことは大いに議論を呼んだ。当時、このタイプのセクシュアル・ハラスメント をハッキリと違法とする判決は未だ出されていなかったからである。  しかし、ガイドラインは、セクシュアル・ハラスメントをなくすためには予防が重要であるとして、使用者に 予防措置を義務づけたことから、これが契機となって、企業では社員教育、苦情処理手続きの創設などの取組み が積極的になされるようになったのである。 144

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 ω 公民権法第七編と判例法  e 対価型セクシュアル・ハラスメントに対する救済 第七編に基づく訴訟は、公民権法がもともと性差別よ りもむしろ人種差別の是正を目的として提案された法律であったこともあり、当初は人種差別事件が中心であっ た。しかし、フェミニズム運動の高揚とともにさまざまの﹁性差別﹂事件が裁判所に持ち込まれるようになり、 一九七〇年代は対価型セクシュアル・ハラスメントが、そして、一九八O年代になって次第に環境型セクシュア ル・ハラスメントが問題となった。セクシュアル・ハラスメントの法的争点は、第七編適用のため、ω雇用上の 不利益取扱いがあること、㈲それが性に基づくものであること、及び㈹使用者︵企業︶の行為と評価しうるもの であること、の三要件を具備するか否かにあった。右のうち、対価型のケースでは、解雇などの具体的な雇用上 の不利益を伴っているのが通常であるから、ωの要件は問題がなかったが、㈹と㊧ ①が問題となった。例えば、㈹ については、性的魅力のある女性に対する個人的な間題であって、女性一般に向けられた差別ではないと主張さ れ、㈹は、当該上司の個人的性癖に基づく行為であって、﹁企業には責任がない﹂と主張された。 一方環境型ハ ラスメントのケースでは、逆に対価型で問題とならなかったωの要件が問題となった。そのような職場環境が果 して雇用上の不利益取扱い、つまり雇用条件についての差別的取扱いといえるかどうかが争われたからである。 ㈲否定判例とその論理 セクシュアル・ハラスメントのケースについて、裁判所は、当初第七編の適用を否定し       こ た。代表的な判例として次のものがある。

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント       パゑ  ①バーネス事件・第一審︵コロンビア特別区連邦地裁判決、一九七四年︶セクシュアル・ハラスメント訴 訟に関するリーディング・ケースである。  バーネスは経理事務員として採用されたが、部門の長である男性上司から退社後どこか一緒に行こうと再三誘 われ、性的関係を持てば昇進させると何度もほのめかされた。これらを拒絶すると、彼女をけなしたり、仕事を 与えなかったりのいじめが始まり、ついに彼女の職自体が廃止された。そこでバーネスは職の廃止は性的要求に 応じなかったことの報復であり、性差別であると提訴した。ところが裁判所は、﹁本件では、バーネスが女性で あるから﹂ではなく、﹁上司の要求を拒絶したために差別された。﹂というきわめて形式的な論理で第七編の適用 を否定したのである。       パゑ  ②コルネ事件・第一審︵アリゾナ州連邦地裁判決、一九七五年︶二人の女性が同じ男性上司から執拗に肉 体的誘惑を受け、それに耐えられず自ら退職し、二人は第七編の救済を求める裁判を起こしたものである。裁判 所は、﹁この男性の行為は、あくまで彼個人の性癖に基づくものであって、企業の政策でもなければ、企業がこ れによって利益を得るというようなものでもない。﹂したがって、彼が管理職の地位にあっても、﹁彼の行為が企 業や雇用の性格とは関係がない以上、彼の行為の責任を企業に負わせることはできない。﹂と判示した。本件事 案は、その男性上司は他の女性従業員にも同様の言動をとっていたこともあり、環境型ハラスメントに近い性格        ハニ を有するが、その後、ミラi事件・第一審︵カリフォルニァ州北地区地裁判決、一九七六年︶は、コルネ事件判 決と全く同じ論理で第七編の適用を認めず、トムキンズ事件・第一審︵ニュージャージi州連邦地裁判決、一九 146

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  ハ レ 七六年︶も、上司の性的関係を強要する行為が人事権の濫用であることを認めながら、それが刑法犯として処罰 されたり、民事上の不法行為として救済の対象となることはあっても、第七編の適用は認められないとして、ト ムキンズに敗訴の判決を下した。そして裁判官は、﹁公民権法第七編の適用を認めるとすれば、昇進が認められ なかったり、配転、解雇されたりするたびに、性的な動機が原因だとの訴えが提起されることになりかねない。﹂ とのミラー事件の判決文を引用しつつ、さらに、﹁原告の主張によるならば、上司は部下の女性と社交上の会話 もできなくなってしまう。﹂と判示したのである。このように否定判決の底流には、セクシュアル・ハラスメン ト問題の告発に対する男性側の感情的反発と女性に対する不信感を見てとれるのである。しかし、これらの事案 は、いずれも職場における上司たる地位を利用して性的関係を強要するものであって、いわば﹁心理的レイプ﹂       パヱ というべきもので、単なる﹁誘惑﹂とは似て非なるものであることは明らかであろう。 ⑥肯定判例の登場 右のように否定判決が続いたにもかかわらず、女性たちは粘り強く裁判を続け否定説の論理 や感情論を鋭く批判し、ついに一九七六年に、救済を肯定する初めての判決をかちとるに至った。       パニ  ①ウィリアムズ事件・第一審︵コロンビア特別区連邦地裁判決、一九七六年︶ウィリアムズは直属の上司 から性的要求を受け、これを拒絶すると、その直後から理由なく彼女を非難したり、必要な情報を提供しなかっ たり、彼女の提案を採用しなかったりなどのいやがらせが行われ、ついに業務成績の不良を理由に彼女は解雇さ れた。  ウィリアムズは先ずEEOCに苦情の申立てをしたが、性的要求を拒絶したからいやがらせを受け、ついに解

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職場におけるセタシュアル・ハラスメント 雇されたとの因果関係を立証することができなかった。そこで彼女は裁判所へ提訴した。被告側の﹁女性である がゆえに差別的取扱いを受けたのではない﹂とする先のバーネス事件判決の形式論理の主張に対して裁判所は、 ﹁広く性を基磯として行われる差別的取扱いは第七編違反となる。性的いやがらせが男性、女性双方ともに行わ れうるとしても、それが実際上一方の性のみに向けられている場合には公民権法第七編の性差別になる。﹂と判 示した。また、﹁使用者に責任はない﹂旨の被告の主張に対しても、﹁もし、上司︵監督者︶の行為であれば、代 理責任により使用者も責任を免れない﹂とし、第七編の適用を認めたのである。そして、この判決が大きな転回 点となって、肯定判決があいつぎ、前記バーネス事件、ミラi事件、トムキンズ事件はいずれも控訴審で覆され ることになった。        すレ  ②バーネス事件・控訴審︵コロンビア特別区連邦控訴審判決、一九七七年︶一審判決の論理は、彼女が性 的誘いを受けたのは彼女が女性の部下であったからだ、ということを見逃した議論であり、﹁彼女は正に女性で あるがゆえに上司の性的欲望の対象となり、職と引換えに彼の要求に応ずるように求められたのである。﹂とし て第七編違反の性差別であることを認め、また、コ般に企業は管理職のした性差別行為について公民権法第七 編違反の責任を負う。﹂ことを認めたのである。  口 環境型セクシュアル・ハラスメントに対する救済 こうして対価型セクシュアル・ハラスメントのケース については性差別として第七編の適用を受けその救済が認められたが、次に問題になったのは、解雇など具体的 な経済的不利益を伴わない環境型セクシュアル・ハラスメントに属するケースの場合である。 148

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 性差別裁判の闘いを通じて力をつけてきたフェミニズム運動は当然のことながら、このケースにも第七編の適 用を認めよ、と主張した。こうした世論を背景に前述したように、一九八O年にEEOCはセクシュアル・ハラ スメントに関するガイドラインを策定し、裁判所に先がけて環境型についても第七編の適用があることを明確に したのである。  右のような状況の中で、ついに一九八一年、環境型のケースについても救済を認める判例が登場したが、その 法的争点は、﹁雇用に関する報酬、期間、条件または特典について、差別待遇を行うこと﹂︵島qψρ>留。。。①1 只餌︶︶、すなわち、﹁雇用条件﹂に職場環境が該当するか否かにあった。       ハど  ①バンディ事件・控訴審︵コロンビア特別区連邦控訴審判決、一九八一年︶バンディは同僚の男性から性 的関係を迫られ拒絶し続けたが、二年後には今度は二人の直属の男性上司から性的要求が執拗にくり返されるよ うになった。困った彼女は二人の上司のさらに上司である男性に苦情を訴えたところ、その苦情を取り上げなかっ たばかりか、﹁男はみな君を強姦したいと思っているよ。﹂といって、彼までもが性的関係を迫ってきた。彼女は これをも拒絶し、職場の苦情処理機関に訴え出たが、十分な調査も行われず、反って上司の上司に苦情を申し立 てたことの報復として、上司の男性たちが彼女の仕事ぶりに文句をいい始め、そのため、彼女の昇進が遅れてし まった。そこでバンディが裁判所に提訴。一審判決は、性的要求の拒絶と昇進の遅れとの間の因果関係の立証が ないとし、性的要求行為自体が﹁雇用条件﹂についての性差別であるとのバンディの主張に対しても、﹁彼女の 職場でのこのような性的要求行為は標準的な慣行であり、彼女に害を与えるようなものではない。﹂として、彼

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 女の主張を認めなかった。  これに対して控訴審裁判所は、﹁セクシュアル・ハラスメント事件についても、雇用上の具体的不利益がなく ても、性的固定観念に基づくあざけりや品位のない性的要求それ自体も、それが女性に対して不安感や精神的衰 弱をもたらすような場合には第七編違反の性差別になる。﹂とした。こう解釈しなければ、使用者は解雇など具 体的不利益を課する行為を用心深く差し控えることにより、責任を問われることなくいやがらせをくり返すこと ができるようになる、というのである。  いずれにせよ、女性に不安感や精神的衰弱をもたらすような労働環境も﹁雇用条件﹂に含まれ、それが差別的       パど である場合には、第七編違反として救済が認められたのは画期的であり、その後、ヘンソン事件控訴審判決など 環境型セクシュアル・ハラスメントの救済を認める判決が相次いだが、一九八六年には、セクシュアル・ハラス メントのケースについての初めての連邦最高裁判決が下された。著名なヴィンソン事件判決である。        パお  ②ヴィンソン事件︵連邦最高裁判決、一九八六年︶黒人女性ヴィンソンは、銀行の窓口係となり、四年の 在職期間のうちに窓口主任、さらに支店長補佐︵器匹ω鼠旨酵き3ヨきΦ磯R︶へと昇進を重ねた。ところが入 社後間もなく支店長から性的関係を要求され、初めは拒絶していたが、それを続ければ職を失うことになるかも 知れないと恐れ、結局要求を受け入れ四・五〇回に亘り性的関係をもった。支店長は、仕事中に同僚の面前で彼 女を愛撫したり、彼女が一人でトイレヘ行くときについて行き自分の性器を見せたり、暴力的に性交を行うこと もあった。彼女は無期限の病気休暇をとったが、休暇権の濫用であるとの理由でそのニカ月後に解雇された。そ 150

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こでヴィンソンは、右上司と銀行を相手に第七編に基づく救済を求めて裁判所に提訴したが、彼女は在職中、そ の事実を上司に申告したり、苦情処理機関に対して申立てはしていなかった。  一審︵一九八O年︶は、彼女と支店長との間に性的関係があったか否かについては具体的に認定することなく、 仮に関係があったとしても、それは完全に﹁任意に基づく︵<o一馨$蔓︶﹂ものであること、銀行は二人の関係を 知らなかったのだから、銀行に責任を負わせるべきではないことを理由に第七編の適用を認めなかった。他方、 控訴審︵一九八五年︶は、先のバンディ事件控訴審判決の議論を再度確認して一審判決を全面的に否定し、﹁第 七編のセクシュアル・ハラスメントは、何ら雇用上の地位や諸条件と結びつくことなく、専ら敵対的、または不 快な労働環境︵ぎω匹①90臣窪ω貯①鋪o詩9<冒9ヨ①導︶をもたらす場合にも認められ、本件は正にそのケー スである。﹂とした。また、第七編による救済請求に当たり、被害者である女性は当該性的要求に﹁抵抗した﹂ ということまで証明する必要はなく、性的関係が任意に基づくものであったという事実は第七編違反の抗弁事由 とはならないと判示した。さらに、銀行自身の使用者責任についても、﹁銀行は管理職である上司のセクシュア ル・ハラスメントについては、その事実を認識していたか否かにかかわりなく、当然に責任を負わなければなら ない。﹂としたのである。  最高裁は、概ね控訴審判決の立場を支持し、環境型セクシュアル・ハラスメントとして救済を受けるためには、 それが被害者の﹁雇用条件を変更し、また侮蔑的な労働環境をつくり出すほど十分に重大もしくは徹底したもの ︵ω旨ゆ9①旨辱ωR<Φo吋O①同轟ω貯①8巴けR跨Φ8昌9江o昌o︷①ヨO一〇﹃ヨΦ筥餌民RΦ葺Φきm9ω一<Φ名o蒔ぎ磯

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 窪く冒9目Φ耳︶でなければならない﹂との違法性判断の基準を示したが、本件はこの要件をみたすとした。また、 ﹁任意に基づく関係﹂が抗弁事由となるか否かについて、セクシュアル・ハラスメントであるかどうかの基準は、 ﹁任意に基づく﹂かどうかでなく、当人にとって﹁いやな、望まない︵巨≦色8目Φ︶﹂かどうかであると述べた。  ヴィンソン最高裁判決の意義は、環境型セクシュアル・ハラスメントについても第七編違反の成立の可能性を 認めたことと、セクシュアル・ハラスメントかどうかの具体的な判断基準は、当該性的言動があくまで本人にとっ て﹁いやな、望まない﹂ものであるか否かを強調したことの二点にあった。しかし、反面、環境型のケースが第 七編違反となるためには、﹁雇用条件の変更﹂とともに﹁侮蔑的な労働環境の創出﹂が要件とも解され、﹁侮蔑的 な︵筈諾貯①と﹁重大な︵ω①<RΦ︶﹂﹁徹底した︵勺R話巴ぎ︶﹂などの文言などは、いずれもその内容において抽 象的であるため、実際のケースでの違法性判断は相対的にならざるをえず、その後のこの種の事案では、裁判所 の判断は相当のバラツキを見せている。次のラビデュー事件は、逆に救済が認められなかったケースの一つであ る。        パリ  ③ラビデュー事件・控訴審︵第六巡回区連邦控訴審判決、一九八六年︶ラビデューは、役員の秘書として 雇用されたが、三年後には管理職補佐に昇進した。が、しかし、やがて短気で頑固な性格、同僚や顧客との協調 性の欠如などを理由に解雇された。彼女は違法なセクシュアル・ハラスメントの存在を理由に環境型セクシュア ル・ハラスメントであると提訴した。なお、オフィスの机や壁には女性のヌード写真や躰の多くを露出した写真 が飾られ、コンピュータ部門の上司がしばしば彼女や他の女性職員らに対し卑わいな言動をくり返し、職場環境 152

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に悩まされていた。しかし、その上司はコンピュータグラマーとしての技量の良さもあり、その言動は大目に見 られ、何らの処分などがなされず、彼女や他の多くの女性職員がこうした職場の状況にいつも不満を訴えていた が、一向に改善されない中で本件解雇が行われたものである。本件では、右のような職場環境が第七編違反の要 件である﹁敵対的、侮蔑的労働環境﹂に該当するかどうかが主要な争点となった。控訴審は、結果的にこれを否 定したが、その際、従来の判例には見られなかったユニークな違法性判断の粋組みを示した。すなわち、本判決 もヴィンソン最高裁判決や他の判決と同じく、職場で行われる不快な性質の性的言動が第七編違反となるために は、その言動が被害者の業務の遂行に不当に干渉し、また同人の精神的安定に重大な影響を与えるに足りるよう な﹁脅迫的、敵対的もしくは不快な労働環境﹂をもたらす効果を有することを要求する。しかし、注目すべきは、 本判決の立場では、明らかに被害者︵原告︶は﹁業務遂行への干渉﹂と﹁敵対的な労働環境の創出﹂の二つを証       パど 明しなければならないとしており、この点はいずれか一方の事実の証明で足りるとしたEEOCの立場を拒否し た。また、他方でヴィンソン最高裁判決とも異なるのは、本決決は、さらに﹁不快︵oヰ①話貯Φ︶、もしくは敵対 的な労働環境の結果としてある程度の損害︵ωoヨ①αΦ嬢80二三q蔓︶を被った﹂ことの証明までも要求してい ることである。要するに﹁業務遂行への干渉﹂と﹁敵対的な労働環境の創出﹂が、単に精神面での支障にとどま らず、例えば生産性や能率の低下など業務遂行に対する具体的な支障となって現われていることが必要と解され     パお るのである。  加えて本判決においては、当該性的言動が﹁いやな、望まない﹂ものであったか否かは、これを被害者本人の

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職場におけるセタシュアル・ハラスメント 気持ち︵ω窪巴σ旨蔓︶で判断すべきでなく、新たに﹁理性のある人間︵お霧o奉亘Φ冨お9︶﹂という概念を設定 し、具体的判断に当たっては、﹁まず理性的な平均人を基準として、重大な影響を及ぼすといえるような場合で なければならず、かつ、実際にも当該被害者が重大な影響を受けているという場合でなければならない。﹂とし て、ヴィンソン最高裁判決とは異なる判断基準を示した。  ﹁性文化の変革という大きな社会的課題にまで、裁判所としては立ち入れない﹂とラビデュー事件の裁判官は         パど 考えたのであろうが、敵対的な労働環境をもたらすセクシュアル・ハラスメントの第七編違反の成否について、 右のような基準により判断するとすれば、その成立は相当に限定されてしまうことは確かである。  とりわけ、﹁いやな、望まない﹂ものであるか否かの判断を﹁理性的な平均人を基準﹂とすることは、性的自 己決定権の侵害という被害者女性本人の気持ちや働く女性が実際に職場におかれている不平等な状況を理解しな いものとして多くの批判を浴びることとなった。  性的言動やヌードポスターの掲示などにより受ける影響は個人差があり、性的事柄は個人的な自己決定の領域 に属する人格権として保護されるのである。とすれば、当該性的言動が﹁いやな、望まない﹂ものかどうかは、 平均人を基準とすべきではなく、その女性自身に与えた影響を検討すれば十分ではないのか。  こうした観点から職場におけるポスターの掲示や性的言動についてセクシュアル・ハラスメントであることを 認めた画期的な判決が下された。       ゼ  ④ロビンソン事件︵フロリダ連邦地裁判決、一九九一年︶ロビンソンは造船所の溶接工として働いていた 154

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が熟練工としての女性はきわめて少数であった。職場では規則で無許可での物の掲示は禁止されていたが、ポル ノ写真が多数掲示されており、ポルノ雑誌もあちこちに置かれ、彼女や他の女性たちはしばしば上司や他の同僚 から卑わいな言葉をかけられたり、性的なからかいを受けたので、苦情を申し立てても適切な措置が講ぜられな かった。そこで彼女は、このような職場環境は第七編に違反すると提訴した。  裁判所は環境型セクシュアル・ハラスメントの要件としてヴィンソン事件の要件論に依拠しつつラビデュi事 件判決を批判し、ポルノ写真の影響を考える場合、あくまでそれが職場で掲示されていることを前提にロビンソ ン自身及び通常の女性労働者が侮蔑的で不快であると感じるかどうかを問うべきであり、全体的職場環境という 観点から見て、ロビンソンの精神的安定に深刻な影響を与えるほど重大なものであり、セクシュアル・ハラスメ ントに当たるとした。  この判決は、ポルノ写真の掲示などが女性労働者に精神的被害をもたらすことを、具体的な職場環境との関連 で判断したもので、ラビデュー事件を超えるものとして注目されたのである。  日 公民権法の改正 右に見てきたような法的対応の中で一九九一年にクラレンス・トーマス判事の﹁セクハ ラ疑惑﹂事件などが生じ、その波及効果が最も直接的に現われたのが同年一一月の公民権法の改正である。  それまで雇用や昇進に際して不当な取扱いを受けた場合、旧公民権法下では人種差別が原因と見られる場合以 外は損害賠償を求める訴訟を起こすことができなかったのが、今回の改正により、性や宗教、身体傷害による差 別にまで対象が広げられ、セタシュアル・ハラスメントによる被害も損害賠償の対象となった。すなわち差別が

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント あったと認められても、遡及的賃金支払い︵9簿冨望︶、復職や昇進などの原状回復及びセクシュアル・ハラス メント行為差止めの仮処分のみが認められていたが、新たに金銭的な補償も認められるようになった。しかもそ の賠償額は被害者の被った経済的・精神的な損害に対する填補的損害賠償︵8B需拐簿o曼3ヨ濃8︶に加え 懲罰的損害賠償︵を旨江奉3筥濃8︶も認められることになった。懲罰的損害賠償は、加害行為の悪性が高い 場合に、加害者に対する懲罰及び一般的抑止効果として認められる損害賠償をいうが、特に環境型ハラスメント のように経済的損害の算定が難しいケースの場合、大きな意味を持つといわれる。しかし、懲罰的損害賠償の導 入は、賠償額の高額化の一因にもなるため、人種差別による被害には設けられていない損害賠償の限度額が企業 の規模により定められ、従業員一〇〇人以下の場合は五万ドル、一〇一人以上二〇〇人までは一〇万ドル、二〇        お 一人から五〇〇人までは二〇万ドル、五〇一人以上は三〇万ドルであり、新公民権でも性差別による被害の重大 さが十分に認知されていないことを物語るといえよう。  一九九一年以降のこうした社会状況の変化の中で、ヴィンソン事件に続く二度目の最高裁判決が一九九三年に 出た。ハリス事件であるが、ここでは精神的被害の程度に関わる間題に新たな指針が示され、環境型セクシュア ル・ハラスメントの判断基準の難しさとともに救済の適用範囲を広げたものとして評価されたのである。       お  ⑤ハリス事件︵連邦最高裁判決、一九九三年︶ハリスは二年間、フォークリフト・システムの会社にマネー ジャーとして勤務したが、その間男性社長からさまざまな言葉によるいやがらせを受け、﹁レンタル部門のマネー ジャーとして必要なのは男性だ﹂﹁低脳な女︵四身目訂鴇名oヨき︶﹂などといった侮蔑的なことを他の従業員の 156

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面前で言われた。また社長はたびたびハリスなど女性従業員の服装に対して性的意味合いを含むコメントをする こともあった。ハリスはこうした行為をやめるよう申し出、社長は冗談のつもりでやったことだと弁解して謝り、 二度とこうした言動をしないと約束した。しかし、社長は再び同じような行為をし、他の従業員もいる前で顧客 と性的関係と引替えに契約をとっているような言い方をしたので、翌月、会社を辞め提訴した。  一審判決は、環境型ハラスメントに非常に近いケースであるが、ハリスの精神状態を著しく損うほどひどいも のではなかったとして訴えを却下した。最高裁は一審判決を破棄し、環境が敵対的︵ぎω艶Φ︶あるいは虐待的 ︵筈霧貯Φ︶であったかどうかを判断するのに、被害者が精神的にひどく傷つく必要は必ずしもないとした。この 最高裁の見解はヴィンソン事件の要件を緩め第七編の適用範囲を広げたものである。ただしセタシュアル・ハラ スメントに当たるかどうかの判断に関しては、基本的には平均人を基準とするとした。しかし、環境が被害者に とって敵対的あるいは虐待的であるかどうかを判断するにはあらゆる状況を考慮しなければならないとし、より        パ  幅のあるものとなっている。  なお企業のセクシュアル・ハラスメントについての責任であるが、対価型、つまり人事権限のある管理職が何 らかの雇用上の利益と引替えに性的要求をしてくる場合は、企業がセクシュアル・ハラスメントの事実を知ろう        パむ      パ  と知るまいと、裁判所は企業の厳格責任を認める傾向にある。この傾向はエラース事件及びファラガー事件につ いての一九九八年の連邦最高裁判決でも支持されている。  他方、何らの利益を交換条件としない環境型の場合、ω上司から部下へのハラスメントの場合は、右の二件の

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 連邦最高裁判決は、使用者がセクシュアル・ハラスメントの事実を知らなかったとしても、徹底したセクシュア ル・ハラスメント対策を行っていることを証明しえない限り、免責されない、との方針を示している。また、㈲       パ       パお 同僚によるハラスメントの場合は、キャンベル事件控訴審判決やデモント事件を通じ、いかに適切な処置を講じ たか否かが企業責任の成否の分かれ目になっているといえよう。 ︵1︶        

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)   )   )   )   )   )   )   )   )   )  第七編に関する日本語の文献としては、奥山明良﹁アメリカに見る労働環境と性差別﹂判例タイムズ五二三号 ︵一九八四年︶一八頁、水谷英夫﹁雇用における﹃性的いやがらせ﹄  アメリカの事例を中心として﹂法学五〇 巻六〇号︵一九八七年︶九一頁、秋元 樹﹁アメリカにみるセクシュアル・ハラスメント﹂労働旬報一二二八号 ︵一九八九年︶二二頁、林 弘子﹁職場におけるセクシュアル・ハラスメントヘの法的対応﹂ジュリスト九五六号 ︵一九九〇年︶四二頁などが有益である。  第七編の救済に関わる判例法の生成と展開については、福島等・前掲書三七頁以下が詳しい。  ω勉ヨ①ωダ↓﹃巴P一ω閃巴﹃国日O一●即僧ρO蝉¢一器︵U。U。02ρ一9一〇謹︶  OoヨΦ<.ωきω3帥いoヨダ冒PωOOコω后℃9一〇一︵∪.︾ユN︸一〇胡︶ 言一一段<’忠爵。眺>ヨ①ユ8﹂一。 。男ω唇℃﹄。 。ω︵一Z’PO巴4一零。︶ ↓。日鉦霧‘評呂。ωR<一。Φ田Φρや9のOP“鵠コω8℃。緕も 。︵U,2﹂﹂S①︶  福島等・前掲書五五頁参照。  ≦崖ごヨωダω餌図げρ占ω男ωg唱づ一●臼藤︵U。U.ρ一〇蕊︶  浮旨①ωダOoω二ρ㎝。一固。。 。ω︵U’○Ωぴ一。§  ω琶身<9宣良ω・p。占コ毘。認︵POΩ目←一。。 。N︶  =Φ房2ダΩ蔓亀O琶号ρ①o 。N男母o 。零︵一一浮Ωびおo 。N︶これと同じく環境型セクシュアル・ハラスメン トの救済を認めたものとして、冒器ω‘い旨堕①$コω唇P一一。。 。︵∪。U。P這。 。。︶匹o誘戸の暮8勾呂げR 158

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︵12︶ 1413 181716 15 )  )  )  ) 2019 )  )

OPo

。G 。ωコぎαに8︵ε些Ωぴおo 。刈︶などがある。  蜜Φ旨9留ダ劇きF勾ωω<’くぎ8P一8ψOけ器8︵おo 。O︶●なお、ヴィンソン最高裁判決の意義と問題点 については、奥山明良﹁セクシュアル・ハラスメントの違法性判断の基準﹂ジュリスト九五六号︵一九九〇年︶五 五頁、同﹁アメリカの働く女性と性的いやがらせ﹂成城法学二三号︵一九八七年︶四頁、釜田泰介﹁﹃性的いやが らせ行為﹄と公民権法第七編﹂法学教室七五号︵︼九八六年︶八七頁以下参照。  国曽げ一身Φダ○ω80冨勾Φ暁ぎ冒のOoこo 。O㎝閃。臣①H一︵O浮Ωン一〇〇 。O︶  EEOCのガイドラインでは﹁個人の業務遂行に不当に干渉し、あるいは︵o﹃︶脅迫的、敵対的もしくは不快な 労働環境をつくり出すような目的ないし効果をもつもの﹂とされ、ヴィンソン最高裁判決が﹁雇用条件の変更およ び︵曽区︶侮蔑的な労働環境の創出﹂と説示しているところとは異なる。  奥山教授はこのように明言され︵外形的支障の発生?︶とカッコ書きされる。前掲﹁違法性判断の基準﹂五八頁。  福島等・前掲書七一頁。 肉。び一諺。昌ダ冒。冨自色一①曽一ξ霞α9目ρ為①。コω8℃﹂“。 。①︵罫∪。国四口8一︶  懲罰的損害賠償は、損補賠償が一定の要件を満たせば必ず与えなければならないのと異なり、与えるか与えない かは事実認定者︵裁判官または賠審員︶の裁量により決定でき、その決定は裁量権の濫用にならない限り覆されな い。なお公民権法の改正により賠償額の上限が定められたが、コモンローや州法の下で訴えれば賠償額が三〇万ド ルを上回ることもありうる。例えば、弁護士が有能で多数の顧客を有するためセクシュアル・ハラスメントに当た る行為をしても事務所が何らの処分をしなかったために世界最大の法律事務所を被告とする訴訟で七一〇万ドルの 懲罰的損害賠償が認められた。妻8冨‘ω欝R帥ζ畠①目一ρω信冥Φ日①02旨90呂8旨貫一ωΦP5漣臨 頃蝉鼠ωダ閃。詩一洋留ω$ヨρぎ9一置ψ9︵一8ω︶  ハリス事件最高裁判決が出る前であるが、奥山教授は、第七編違反の要件、すなわち違法性判断は個々の事案ご との諸事情を総合勘案して行われているとして、①行為の性質、形態、㈲行為の反復・継続性、㈹行為の主体、㈹ 行為が行われた状況及び㈲被害者の対応をあげられているが、そのような事情は現在でも基本的に維持できよう。 前掲﹁違法性判断の基準﹂五九頁以下。

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職場におけるセクシュアル・ハラスメント 2423 22 21 )  )  )  ) ︼W貫一ぎ讐8一&qω巳①ω堕目ρ<.日一R登一8。 。qω5r国図一ω島一S 閃胃僧磯げR<,ω08勾讐oPおOo od。ψ一国図Hω島一〇. 9ヨぴ①一一く,固o践量ω80一〇〇壱o鍔匡9﹂。潔↓①巨。︾署。い国ζω99 UΦ旨o導<,>墜一一簿a鍔σo轟8曙﹂Zρ一8①dDψ9ω戸い国﹀Pω一G 。まド 三 わが国におけるセクシュアル・ハラスメントとその対応  ω 均等法の改正  e セクシュアル・ハラスメント規定の新設 右に見てきたように、一九七〇年代にアメリカでセクシュアル・ ハラスメントが問題視されはじめてから三〇年足らず。個人の問題から企業の問題、そして労働問題へとその捉 え方は変化していった。他方わが国では、セクシュアル・ハラスメント対策は、欧米諸国からかなりたち遅れて いたが、女性たちの真摯な取組みが進む中、雇用における男女平等を実現するために制定された均等法が一九九 七年六月二日に改正︵施行は一九九九年四月一日︶され、ようやくセクシュアル・ハラスメントに関する規定が 明文化されるに至った。  改正均等法の第三章は、従来の﹁女性労働者の就業に関する援助の措置等﹂とする標題を﹁女性労働者の就業 に関して配慮すべき措置﹂と改めた上、新たに第一二条に﹁職場における性的言動に起因する問題に関する雇用 管理上の配慮﹂義務の規定を設けた。すなわち第一項で﹁職場において行われる性的言動に対するその雇用する 160

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東洋法学

女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受ける﹂対価型セクシュアル・ハラスメ ントや、﹁又は当該性的言動により当該女性労働者の就業環境が害される﹂環境型セクシュアル・ハラスメント が起こることのないよう事業主は、﹁雇用管理上必要な配慮をしなければならない。﹂との規定を新設した。そし て第二項で、﹁労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が配慮すべき事件についての指針を定めるものとする。﹂        パき と定め、これに基づき一九九八年にその指針が示された︵労働省告示第二〇号︶。セクシュアル・ハラスメントが 人間の尊厳、性差別、女性の働く権利の侵害であることから、事業主に女性が人間としての尊厳を維持し、セク シュアル・ハラスメントのない環境でその意欲や能力を有効に発揮できるよう配慮義務を定めたものである。  ⇔ 労働省の指針 右の指針は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントの内容についての事業主や労働者 の理解が十分でなく、その防止のための措置を講じている事業主が少ない状況にあることにかんがみ、セクシュ       ハと アル・ハラスメントとは何か、その内容︵指針二のe︶とともに対価型セクシュアル・ハラスメント︵指針二の 四︶と環境型セクシュアル・ハラスメント︵指針二の㈲︶の典型例が示された。そして事業主に対して、 ㈲セクシュアル・ハラスメントを防止するための方針を明確化し、労働者に対しその方針を周知し啓発をはかる こと︵指針三のe︶、 @相談・苦情窓口を明確化し、相談・苦情への適切かつ柔軟な対応への配慮をすること︵指針三の︵二︶︶、 @セクシュアル・ハラスメントが生じた場合、事後の迅速かつ適切な対応をすること︵指針三の︵三︶︶、が求め られ、それぞれについて具体例が例示されている。そして、もし企業が均等法・指針に違反して予防措置を十分

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