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高齢者の一般性セルフ・エフィカシー尺度 (GSESE:General Self-Efficacy Scale for the Elderly)の信頼性と妥当性の検討 利用統計を見る

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(1)

)の信頼性と妥当性の検討

著者

松田 英子, 中川 萌

著者別名

Eiko MATSUDA, Moe NAKAGAWA

雑誌名

東洋大学社会学部紀要

58

2

ページ

5-17

発行年

2021-03-18

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00012315/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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高齢者の一般性セルフ・エフィカシー尺度

(GSESE:General Self-Efficacy Scale for the Elderly)

の信頼性と妥当性の検討

Development of General Self-Efficacy Scale for the Elderly

(GSESE): Verification of Reliability and Validity.

松田 英子

Eiko MATSUDA

中川  萌

Moe NAKAGAWA

1.問題

 セルフ・エフィカシー(self-efficacy)は一般的には自己効力感と訳されるが、坂野(1995)では、 行動の先行要因となる「効力予期」、つまり、“自分にはこのようなことがここまでできるのだ”とい う認知がセルフ・エフィカシーであり、一般的セルフ・エフィカシー(general self-efficacy)とは、 その人の性格特性を示す認知的変数と定義付けている。  また、 Bandura(1977)によれば、セルフ・エフィカシーは精神的健康を予測する変数の1つであ り、主として臨床分野で望ましい行動変容をもたらす認知的変数として捉えられてきた。つまりこの セルフ・エフィカシーは固定的で変動の少ない特性ではなく、直接的・間接的経験により学習し向上 しうる特性である。Bandura, A. は、①自分で実際に行い、成功体験を持つこと(遂行行動の達 成)、②うまくやっている他人の行動を観察すること(代行的経験)、③自己強化や他者からの説得的 な暗示を受けること(言語的説得)、④生理的な反応の変化を体験してみること(情動的喚起)、と いった体験を通じて、個人が自らセルフ・エフィカシーを高めていくものであると考えている(坂 野,1995)。  セルフ・エフィカシーと精神的健康との関連については、これまでも様々な研究で明らかにされて きた。坂野(1989)によれば、抑うつを主症状とする患者は一般的セルフ・エフィカシーが低い傾向 にあるものの、抑うつ症状の改善に随伴してセルフ・エフィカシーが高まるという知見がある。ま た、林・瀧本(1992)は、問題解決行動および将来への時間的展望とセルフ・エフィカシーに強い相 関関係があると示している。同様に戸ヶ崎・坂野(1993)は、オプティミストの研究の中で、セル フ・エフィカシーを高く見積もる人は、ポジティブな思考パターン、積極的な行動パターンを持つこ * 東洋大学社会心理学実験室

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とができる傾向にあることを述べている。

 一般的セルフ・エフィカシーを測定可能にするために、これまでに次のような尺度が開発されてき た。成人用 GSES(General Self-Efficacy Scale)(坂野・東條,1986; 坂野・東條・福井・小松, 2006)および児童用 GSESC-R (General Self-Efficacy Scale for Children-Revised)(福井・飯島・小 山・中山・小田・嶋田,2008)である。  GSES は、18歳以上の成人を対象として、個人の一般的セルフ・エフィカシーの認知の高低を測定 する尺度である。質問項目は、「何か仕事をするときは、自信を持ってやるほうである」「過去に犯し た失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある」などの16項目からなる。回答 は、「はい」か「いいえ」の2件法で、得点は0~16点である。採点は、学生・成人男性・成人女性 それぞれの標準化得点に照らし合わせて、5段階で評価される。合計得点から、セルフ・エフィカ シーの強さは「1=非常に高い」、「2=低い傾向にある」、「3=ふつう」、「4=高い傾向にある」、 「5=非常に高い」となる。  GSESC-R は、質問紙調査が可能な小学校3年生以上の児童・生徒を対象として、児童の一般的セ ルフ・エフィカシーの認知の高低を測定する尺度である。GSES と比べて、児童・生徒にもわかりや すい文字と表現で構成されている。質問項目は、「ほかの人と比べて、心配することが多い」、「もの ごとを自分からすすんでやるのは、苦手だ」などの18項目からなる。回答は、「はい」、「どちらかと いえばはい」、「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」の4件法で、得点は18~72点である。採点方法 は、GSES と同じく標準化得点を用いて行われる。  高齢者は GSES の適用範囲にあるため、共通して測定できる項目はあると想定されるものの、加 齢の影響を加味した項目で構成される高齢者を主対象としたセルフ・エフィカシー尺度は、前田・東 條(1995)以外には、ほとんど開発されていない。  その他には、転倒予防などの特定の運動機能に関するセルフ・エフィカシー(竹中・近河・本田・ 松崎,2002)などの検討が行なわれているのみである。高齢期は腰の痛みや老眼のような身体的な衰 えに注目が集まる一方で、精神的な症状は注目されにくい。しかし、高齢期には加齢現象に伴うスト レッサーを他より多く感じるようになり(下山・金光,2005)、日常生活の中で、家族が高齢者本人 に対して記憶の失敗を繰り返し指摘することは、本人に失敗に対しての認識がないため、自尊心を傷 つけてしまう可能性が高い(佐藤,2013)。高齢期の精神的健康を脅かす対象として、高齢者自身が 感じる衰えと、高齢者の周囲の人からの衰えの指摘の少なくとも2つがあり、注目されやすい高齢期 の身体的衰えについての認知が大きなストレスとなることがわかる。心身の機能両方の衰えについて の認知を測定する項目が、高齢者用の一般的セルフ・エフィカシーを測定する場合には必要であると 考え、新たに本研究では、臨床分野における実用性を主眼におき、高齢者が一般的セルフ・エフィカ シーをどの程度高く、あるいは低く認知する傾向にあるかを測定するために高齢者用 GSESE (General Self-Efficacy Scale for Elderly)を作成することおよび信頼性と妥当性の検証をすることを

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 前田・東條(1995)では、セルフ・エフィカシーと抑うつ状態の関連に着目し、高齢期の抑うつ状 態が、セルフ・エフィカシーの認知の低下と関連すると示しており、セルフ・エフィカシーを高齢者 の生きる意欲の低下につながる心理学的要因として捉えていることを踏まえ、本研究ではその考え方 を支持し、高齢者の日常生活に関連するより多様な側面からセルフ・エフィカシーを捉えるための尺 度の検証を試みることとした。  九十九(2007)によると、高齢者の生き生きとした生活を支えるものの一つに、社会的活動が挙げ られる。その社会的活動に影響を与える心理・社会的要因の一つにセルフ・エフィカシーがある。肯 定的なセルフ・エフィカシーをもつと、不安が少なく、達成感を得やすい行動を生じさせることが可 能となり、その結果、充実した生活を築いていくことができうると見込まれる。また、九十九 (2007)は高齢者のセルフ・エフィカシー研究の動向から、その意義と重要性について次のようにま とめている。a)セルフ・エフィカシーは問題解決行動に結び付き、高齢者の自分自身に対する自信 につながる、b)抑うつ状態に陥らずに長期的に耐えることができるかどうかについての重要な要因 の一つとしてセルフ・エフィカシーが挙げられる、c)セルフ・エフィカシーは望ましい行動変容を 起こし、生きがい感を持つことが期待できる、d)セルフ・エフィカシーを心理的・社会的指標とし て用いることが可能と考えられる、e)セルフ・エフィカシーは福祉に関する政策策定や実施プログ ラムの具現化に有用な示唆や方法論を提示する可能性を秘めている、f)セルフ・エフィカシーは福 祉に関する政策策定や実施プログラムの妥当性や効果等の実践的有用性をもつと考えられる、g)介 護者の状態をとらえるための心理的・社会的指標としてセルフ・エフィカシーを用いることが可能と 考えられる。さらに、九十九(2007)は高齢期におけるセルフ・エフィカシーの尺度開発研究の臨床 福祉学における意義について、次のように要約している。セルフ・エフィカシーを高める介入を試み ることが重要であるため、1)セルフ・エフィカシーを指標として使用することにより、支援の効果 測定ができる、2)セルフ・エフィカシーの測定項目を手がかりとして、具体的な支援方略を提供す ることができる。これらの視点からも、日常生活を問う項目から構成される高齢者のセルフ・エフィ カシー尺度を作成することに意義があると考えた。  研究1では、GSESE の項目を既存の GSES の項目を参考に、高齢者から得た自由記述から追加項 目を選定し、内的整合性および自尊感情との相関から弁別的妥当性、一般的精神健康度との相関から 基準関連妥当性を検討する。研究2では、さらに GSESE の内的整合性の確認に加え、再検査信頼性 の検討および、援助行動、不眠、抑うつとの相関から基準関連妥当性を再度確認する目的で調査を 行った。

2.研究1

2-1.研究1の目的  これまで加齢の影響を加味した項目で構成される高齢者を対象としたセルフ・エフィカシー尺度は

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ほ と ん ど 開 発 さ れ て い な い。 そ こ で、 高 齢 者 独 自 の セ ル フ・ エ フ ィ カ シ ー を 測 定 す る 尺 度 (GSESE:General Self-Efficacy Scale for the Elderly)を開発し、内的整合性および自尊感情、一般 的精神健康度との相関から構成概念妥当性を検討することを目的とした。さらに、調査協力者の年 齢、性別、住居形態との関連についても検討した。  Rosenberg の自尊感情は、自己についての肯定的あるいは否定的な態度と定義している(桜井, 2000)。自尊感情が自己の価値への態度の表れであるのに対し、自己効力感は個人の能力についての 考 え 方 で あ る(Sherer,Maddux,Mercandante,Prentice-Dunn,Jacobs,& Rogers,1982; 小 池・伊藤,2015)。生涯発達的な側面から、特性的自己効力感について全年齢を対象として調査した 成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田(1995)では、自尊感情の構成要素の一つとして自己効力感を 挙げ、両者に高い正の相関が見られた。また、女性中年看護師を対象としてレジリエンスの発動要因 を調査した根木・片岡(2018)では、自尊感情と自己効力感が相関関係を持ちながらレジリエンスに 重要な影響を与えている可能性が示唆された。このため一般的セルフ・エフィカシーと自尊感情には 高い相関が予測され、結果として精神的健康との相関も予測される。 2-2.研究1の方法 2-2-1.調査協力者  関東在住の高齢者サークル、カルチュアスクールの受講者に調査協力を求めた。記入漏れや記入ミ スのあったデータを除き、40歳から65歳未満の初老者31名(男性0名、女性31名、平均年齢59.5歳± 5.7歳)、65歳から74歳の前期高齢者50名(男性23名、女性27名、平均年齢69.2歳±2.9歳)75歳以上の 後期高齢者56名(男性27名、女性29名、平均年齢80.3歳±4.6歳)の合計137名を調査対象とした。調 査期間は、2011年8月~9月であった。 2-2-2.調査手続きおよび材料 ① 高齢者の自己効力感を測定する項目。高齢者が一般的にセルフ・エフィカシーをどの程度高く、 あるいは低く認知する傾向にあるかという、一般的セルフ・エフィカシーの強さを測定するために 作成されたものである。GSES(坂野ら,2006)および前田・東條(1995)を参考にした19項目に 加え、高齢者に「自分はまだ出来る(あるいは出来なくなった)と感じる時はどのような状況のと きか」ヒアリングしたうち頻出した10項目を加え、4件法(「1 いいえ」「2 どちらかといえばい いえ」「3 どちらかといえばはい」「4 はい」)の4つのうちから、最もよくあてはまるところの 数字に○印をつけてください」と教示し記入を求めた(Table1)。回答は、『はい』から『いい え』の4件法であり、得点項目は19~76点である。高得点者ほど一般的セルフ・エフィカシーが高 い傾向を示す。

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Table1 自己効力感尺度の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転) ② Rosenberg(1965)の自尊感情尺度(Self-Esteem Scale)の日本語版:桜井,2000) 5件法で 評定を求め、妥当性の検証の指標とした。この尺度は「少なくとも人並みには価値のある人間であ る」「いろいろなよい素質を持っている」などの全10項目からなり、対象者はそれぞれの項目につ いて、「あてはまらない」を1、「あてはまる」を5とする5件法で評定した。高得点者ほど自尊感 情が高いことを示す。

③ Goldberg(1978)の精神的健康度短縮版(General Health Questionnaire 12; GHQ)の日本語版 (大坊・中野,1987,中川・大坊,2013) 4件法(0-0-1-1点法)で評定を求め、妥当性の検証の指 標とした。「何かをする時いつもより集中してできた~全くできなかった」「心配事があって、よく 眠れないようなことは全くなかった~たびたびあった」などの全12項目からなり、対象者は質問ご とに定められた4項目の中から答えを選び、評定した。GHQ の採点法として0-0-1-1点を用いたの

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で、総合点は0~12点で計算された。低得点者ほど精神的健康が高いことを示す。 ④ フェイスシート:年齢、性別、住居形態(1人暮らし、配偶者と2人暮らし、その他の家族と同 居、福祉施設に入所) 2-2-3.倫理的配慮  回答は無記名式で、調査の目的等を説明し、実施後も随時辞退できる旨を伝え、調査協力者から同 意の承諾を得て行われた。 2-3.研究1の結果 2-3-1.因子構造  すべての項目を対象に、主因子法、プロマックス回転による因子分析を行った。その結果3因子が 抽出され、いずれの因子においても十分な負荷量.40を示さなかった10項目が除外された。表1に示 した3因子19項目(1:8項目、2:6項目、3:5項目)が残った。因子負荷量の高い項目を示す 内容を考慮し、固有値が1以上で解釈可能性を考慮して第1因子を「行動の積極性」、第2因子を 「身体的能力に対する肯定」、第3因子を「知的能力に対する肯定」と命名した(Table1)。 2-3-2.信頼性の検討  内的整合性を検討するためのクロンバックのαは.790 ~ .806と高い値であった(第1因子.806 第 2因子.790 第3因子.795)。折半法ではα=.750であった。 2-3-3.妥当性の検討  GSESE の合計得点および下位因子のすべてと自尊感情に有意な正の相関、GHQ とは有意な負の 相関が見られた(Table2)。 Table2 GSESE と自尊感情、精神的健康度の相関 **p<0.1,***p<.001 2-3-4.属性の検討  調査協力者を65歳未満の初老者群、前期高齢者群、後期高齢者の3群に分け、3因子の得点を従属 変数として1元配置の分散分析を行ったところ、第2因子「身体的能力の肯定」では年齢の主効果が みられ(F(2,134)=9.408, p<.001)、後期高齢者より前期高齢者、初老者の方が有意に高く、第3因 子「知的能力の肯定」においても年齢の主効果がみられ(F(2,134)=4.295, p<.01)、後期高齢者よ

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り前期高齢者、初老者の方が有意に高かった。また、すべての下位因子において性差がみられ、いず れも男性の方が女性より高かった(第1因子t(135)=2.239, p<.05、第2因子t(135)=3.633, p<.001、第3因子t(135)=2.242, p<.05)。  住居形態に関しては、1人暮らしが9.7%(3名)、配偶者と2人暮らしが35.5%(11名)、その他の 家族と同居が54.8%(17名)、福祉施設に入所が0%(0名)であった。住居形態との関連について 検討したところ、第1因子「行動の積極性」に関しては住居形態の主効果が有意傾向でみられ(F (3,133)=2.357, p<.10)、1人暮らし、配偶者と2人暮らしの方が、その他の家族と同居、施設入所者 よりも有意に得点高かった。第2因子「身体的能力」と第3因子「知的能力」には関連がみられな かった。 2-4.研究1の考察  GSESE の因子分析と内的整合性の検討と自尊感情、精神的健康度(GHQ)との相関の検討によ り、GSESE の信頼性と妥当性がある程度確認された。年齢段階や住居形態との検討結果も妥当なも のであった。GSESE は19項目で、高齢者を対象に回答者が10分程度と短時間で回答できるものにな り、容易に集計が可能である。尺度の構成においては、第1因子「行動の積極性」は坂野・東條 (1986)の項目と共通しているが、「同年代の人に比べ、優れた知識や能力をもっている分野があ る」、「40歳代のころよりもさらに知識や能力がついたと思う」など、年齢に伴う項目がみられた。第 2因子「身体的能力」および第3因子「知的能力」においては、おもに老化に伴う身体的能力や知的 能力の変化による項目で構成され、因子構造も含め坂野・東條(1986)の GSES や前田・東條 (1995)の尺度とは差別化されている。  信頼性、妥当性の更なる確認のために、今後さらに再検査法やその他の理論的に関連が予測される 外的基準との関連の検討を続けることが課題である。

3.研究2

3-1.研究2の目的  研究2では、GSESE の内的整合性の再検討に加え、新たに再検査信頼性を検討する目的で、また 援助行動の成果指向性、不眠症状、抑うつ症状との相関からさらに基準関連妥当性を確認することを 目的として調査を行った。援助成果指向性は、援助行動を自ら起こすことで、主観的な心理的充足を 得るポジティブな認知指標であり、GSESE とは正の相関が予測される。一方、抑うつ症状とセル フ・エフィカシーの関連については、これまでも坂野(1989)や青木(2004)の研究で検証されてお り、GSESE とは負の相関が予測される。また、抑うつ症状と関連が強い不眠症状を新たに加えて検 討することにした。

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3-2.研究2の方法 3-2-1.調査協力者  記入漏れや記入ミスのあったデータを除き、65歳から74歳の前期高齢者37名(男性8名、女性28 名、不明1名、平均年齢69.0歳±3.2歳)75歳以上の後期高齢者26名(男性4名、女性22名、平均年齢 79.6歳±4.6歳)の合計63名を調査対象とした。比較対象として65歳未満の初老者57名(男性14名、女 性43名、平均年齢57.3歳±4.2歳)、総計117名に回答を求めた。調査は2018年10月~2019年2月の間 に、調査の間隔は1か月で、二度、縦断調査で実施した。1回目の調査協力者に任意で2回目の調査 への協力を依頼したところ、75名からの回答を得た。 3-2-2.調査手続きおよび材料 ① GSESE 研究1で選択した19項目を、高齢者のセルフ・エフィカシーを測定するために使用し た。より簡便に2件法で評定する形式とした。行動の積極性、身体的能力に対する肯定、知的能力 に対する肯定の3因子からなる。実施手続きは研究1と同様である。 ② 援助成果指向性尺度(妹尾・髙木,2011) この尺度では、援助行動を起こした後の援助者自身 の心理的変化を測定した。項目は、「人への好意や援助から、私は喜びや感動を経験することがあ る」、「人に何かしてあげると、私自身が成長できる」などの全29項目からなり、対象者はそれぞれ の項目について、「あてはまらない」を1、「あてはまる」を5とする5件法で評定した。第Ⅰ因子 は、自己の内面の向上や成長に関する「自己成長志向」、第Ⅱ因子は他者との温かみのある関わり に関する「幸福・安寧感共有志向」である。高得点者ほど援助成果指向性が高いことを示す。 ③ アテネ不眠尺度(AIS:Soldatoes et al., 2000,日本語版 岡島・井上,2012) この尺度では、 不眠の程度と不眠による日中の活動への影響を測定した。8項目4件法からなり、項目例として、 「寝つき(布団に入ってから眠るまでに必要な時間)はどうでしたか」という質問に対し「0=寝 つきはよい、1=少し時間がかかった、2=かなり時間がかかった、3=非常に時間がかかった、 あるいはまったく眠れなかった」で回答を求めた。回答する際の基準は、過去1か月間を振り返 り、少なくとも週3回以上経験したものであった。選択した項目の点数を合計し、高得点者ほど不 眠傾向が強いことを示す。参考までに日本における不眠のカットオフ値は6点以上である。 ④ 抑うつ尺度(SDS:Zung, 1965,日本語版:福田・小林,1973) この尺度では抑うつの程度を 測定した。項目は、「気が沈んで憂うつだ」「日ごろしていることに感謝している」などの全20項目 からなる。対象者はそれぞれの項目について、「ほとんどいつも」を1(4点)、「かなりのあい だ」を2(3点)、「ときどき」を3(2点)、「ないか、たまに」を4(1点)とする4件法で評定 した。選択した項目の点数を合計し、高得点者ほど抑うつ傾向が強いことを示す。カットオフ値は 50点以上で抑うつ症状があると判定される。 ⑤ フェイスシート:年齢、性別の記入を求めた。

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3-2-3.倫理的配慮  回答は無記名式で、調査の目的等を説明し、実施後も随時辞退できる旨を伝え、承諾を得て行われ た。また、東洋大学社会学研究科倫理審査委員会の承認を得た(承認番号P19002)。 3-3.研究2の結果 3-3-1.記述統計量  1時点目のデータ(N=121)と、2時点目のデータ(N=75)を使用した。年齢不明1名を除 き、年代別の3群を比較した結果、GSESE 合計得点は年代が上がるほど減少傾向を示した。特に後 期高齢者の身体的能力因子は初老者・前期高齢者よりも有意に低かった(Table3)。性差はいずれ の変数にもみられなかった。 Table 3 各要因における年代差比較(一元配置分散分析) 3-3-2.信頼性の検討 ① 内的整合性の検討   Cronbach のα係数は GSESE 合計.781、第1因子(行動の積極性).733、第2因子(身体的能 力).619、第3因子(知的能力).725であった。 ② 再検査信頼性   2時点目のデータ(N=75)を使用した再検査法の結果、GSESE 合計.809、第1因子.845、第2 因子.761、第3因子.695の信頼性が得られた(Table4)。1時点目と2時点目の平均値の差に関す るt検定の結果では、いずれの因子においても有意差がみられなかった。

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Table 4 1回目と2回目の高齢者自己効力感尺度(GSESE)得点の相関 3-3-3.妥当性の検討  GSESE の3つの下位尺度と、援助成果指向性尺度、アテネ不眠尺度、抑うつ尺度を実施した調査 で、GSESE の基準関連妥当性を検討するため、各尺度間で相関分析を行った。その結果、AIS との 間に負の相関(r=-.304, p<.01)、SDS と負の相関(r=-.628, p<.001)、援助行動と正の相関(r=.252, p<.05)(2時点目のみ)が見られた(Table5)。 Table 5 高齢者自己効力感尺度(GSESE)と各要因の相関 3-4.研究2の考察  調査の結果、年代別分析では、後期高齢者の GSESE の平均得点が最も低かった。本研究の回答者 の平均得点は、抑うつ及び不眠の基準点とした得点を下回り、生活自立度の高い比較的健康な者が多 かったと言える。しかしそのような健康的な後期高齢者でも、初老者・前期高齢者と比べると気分が 落ち込みながら暮らしている人が多いことがわかる。加齢に伴い、身体の機能や認知機能の衰えが起 こり行動の積極性が低下するということは妥当な結果と考えられる。

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 信頼性の分析において、十分な再検査信頼性と Cronback のα係数による内的整合性が確認され た。妥当性の分析に関しては、不眠および抑うつと GSESE に負の相関、援助成果指向性と GSESE 「身体能力の肯定」因子に正の相関がみられ、十分な構成概念妥当性が示された。これは高齢者の自 己効力感と抑うつの負の相関が示された心理学分野の坂野(1989)や、社会福祉学分野の青木 (2004)の研究を支持する結果といえる。以上のことから、高齢者独自のセルフ・エフィカシーを測 る尺度の開発が必要で、本研究において使用可能な尺度が提案できたと考えられる。

4.総括および今後の課題

 超高齢社会を迎え、臨床および福祉分野において、高齢者の精神的健康の向上がますます重要視さ れることが予測される。高齢者の心理面の研究が発展することにより、身体活動能力や認知能力に着 目される高齢者支援の現場に新しい考えが導入され、より多様なケアにつながると考えられる。しか し、高齢者支援の多職種チームに心理職が介入している例は少なく、支援者にも高齢者の精神状態の 知識を増やしていく必要があるといえる。

謝辞

 本研究の実施にあたり、山崎晃司氏、平瀬千沙都氏、NPO 法人日本教育工学研究所佐藤敬氏に多 大なご協力を得ました。また快く調査に協力くださった皆様にも感謝申し上げます。 文献 青木邦男(2004). 在宅高齢者の社会活動性に関連する要因の共分散構造分析.社会福祉学,45⑴,23-34. Bandura, A.(1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84,

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【Abstract】

Development of General Self-Efficacy Scale for the Elderly

(GSESE): Verification of Reliability and Validity.

Eiko MATSUDA

Moe NAKAGAWA

 The purpose of this study was to develop a tool for measuring individual differences in general self-efficacy in the elderly across everyday life settings, and to verify its reliability and validity. Two research studies were conducted to validate both reliability from internal consistency and retest reliability, and validity from discriminant validity and criterion validity. As a result, the General Self-Efficacy Scale for the Elderly(GSESE), which consisted of 19 items, consisting of a three-factor structure(behavioral activeness, self-confidence in physical ability, self-confidence in intellectual ability)was sufficiently reliable and valid. The developed GSESE demonstrated high reliability for elder populations, discriminant validity for self-esteem, and criterion validity for general mental health, helping behaviors, depression, and insomnia. It was suggested that the GSESE may be applicable to clinical research and applications.

Table 4 1回目と2回目の高齢者自己効力感尺度(GSESE)得点の相関 3-3-3.妥当性の検討  GSESE の3つの下位尺度と、援助成果指向性尺度、アテネ不眠尺度、抑うつ尺度を実施した調査 で、GSESE の基準関連妥当性を検討するため、各尺度間で相関分析を行った。その結果、AIS との 間に負の相関( r=-.304, p&lt;.01)、SDS  と負の相関( r=-.628, p&lt;.001)、援助行動と正の相関(r=.252,  p&lt;.05)(2時点目のみ)が見られた(Table

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