若い教師の力量形成に関する調査研究(2)2010静岡
調査における「教職生活の実態」に関する基礎分析
報告
著者
山崎 凖二, 望月 耕太, 菅野 文彦
雑誌名
東洋大学文学部紀要, 教育学科編
号
36
ページ
79-93
発行年
2010
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000081/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja79
若い教師の力量形成に関する調査研究
(
2
)
-2010
静岡調
査にお
ける「
教職生活の実態
」に関する
基礎分析報告
一
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本稿は、「ライフコースアプローチに基づく若い教師の発達サポートシステム構築のための 基礎研究」の一環として取り組まれた質問紙調査 (2010年8月実施)結果の中から、「教職生 活の実態」に関する諸問題に焦点を当て、その基礎的な集計・分析を報告したものである。同 調査は、 20歳代前半から30歳代前半の若い教師たちを対象としているが、彼(女)らの教職 生活実態からは、男女ともに教職生活が 「非常に忙しいJ
と感じる者の割合が半数以上にもの ぼり、「教師をやめたい」と思った理由の第l位を占めているのは 「仕事量があまりに過重だ からjという実態がみえてきている。また、教職生活の「ゆきづまり」を感じた理由の第l位 を占めているのは「子どもの能力差に対応すること」であり、「障害児や問題児の指導J
r
保護 者との対応」といった内容項目も上位に上がってきていることが今目的特徴としてみえてきて いる。教師の資質能力の向上、あるいは高度な専門性の確立などが叫ばれる今日、とくに教師 としてのライフコース上、入職直後、無我夢中の試行錯誤的な実践の中から、次第に自己の実 践課題を自覚化し、自分はどのような課題にこだわり、どのような個性と得意分野をもった教 師として生きていくのかという最初の教職アイデンテイティを確立し飛躍していく重要な 10 年間に在る若い教師たちの発達と力量形成を支え促していくサポート体制を日常生活レベルか ら整備していく必要がある。 キーワード:若い教師/ライフコース/力量形成/教職生活/質問紙調査O
.
は じ め に : 調 査 の 目 的 と 実 施 概 要 本稿執筆者のうち山崎は、これまで、静岡大学 教育学部卒業生で主に静岡県下の小 ・中学校に勤 務する教師を《図表1}に記されたような卒業コー ホート(
G
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:以下GC
と略)に編成し、 彼(女)らの「教師の発達と力量形成jに関する 諸事項を自記式質問紙法(郵送留め置き法)によっ て把握することを目的として、 1984年 以 降 5年 間隔で継続的に調査を実施してきた(注1)。 今回報告するのは、その継続調査の延長線上に ある第6回目にあたるものであるが、今回は調査 対象者を第 10GC、第 llGCに絞るとともに、新 たに 2008 年~2010年 3月に卒業し入職していっ た初任期教師たち(第12GC) を調査対象に加え 実施した調査(第6回調査:2010年8月調査実施) 結果の基礎分析報告である。質問項目内容は広範 囲に及んでいるため、「若い教師の力量形成に関 する調査研究j という共通テーマの下に、3回に 分けて報告していく予定であるが、本稿は、主に 教職生活の実態に関する諸問題を扱うものとして のサブタイトルを付し、以下基礎的な集計・分析 をもとに報告していきたい(注2)。 また、今回の報告は、2010調査結果の報告を 中心とするものであるが、必要に応じて過去の調 査 データとの比較考察も行い、 2010年時点にお *やまざき じゅんじ 東洋大学文学部教育学科 **もちづき こうた 静岡大学大学教育センター ***すがの ふみひこ 静岡大学教育学部学校教育講座 79-80 「東洋大学文学部紀要」 第64集 教育学科編 XXXVI (2010年度) ける 20歳代前半から 30歳代前半に及ぶ若い教師 たち(第12GC、第 IIGC、第 10GC) の生活実態 や、そのなかで形成された意識傾向の特徴を描い て い き た い 。 ( 山 崎 ・ 望 月 ・ 菅 野 ) 1.回答者の属性構成とその特徴 (1)今回の調査における回収率と性別構成は〈図 表1}のとおりであるが、同一対象に対する継続 的調査としてやむを得ないことではあるが、住所 不明者の増加による回答実数の低下が引き続きみ られた(第 10、11GC)。新しく対-象者に加えた 第 12GCに関しては、教員採用状況の好転を背景 に、卒業生の中で教員に就職した者の数が第 10、 llGCよりも増え調査対象者数も増えたものの、 回収率と有効回収数は全体で 42.1%、 88票にと どまった。その内訳は、教育学部入学生の構成、 また卒業生で教員に就職した者の構成を反映し て、女性の割合が高く、第 10~ 12GC全体では 66.3%、特に第 12GCでは 71.6%であった。 (2) 調査時点の勤務校に関しては(未表記)、小 学校 64.3%、中学校:23.7%、特別支援学校 :7.2%、 退職及びその他 4.8%、となっている。また役 《図表
n
アンケート調査対象者の構成及び回収率 割地位は、年齢からして当然一般教諭が圧倒的に 多く (87.0%)、第 10GCに学年・研修主任であ る者が生まれ(第lOGCの内 15.0%) 第 12GCで は 臨 時 採 用 等 で あ る 者 が 存 在 ( 第 12GCの 内 10.2%) している。 また、既婚者は、 GC及び男女別に整理すると、 第lOGC: 男 83.3% 一 女 73.8%、第 l1GC 男 61.5%一女 63.6%、第 12GC:男 8.0%一女 3.2%、 で あ り 、 配 偶 者 の 職 業 で は 、 男 性 教 師 の妻の 57.6%、女性教師の夫の 44.4% (一般会社員は 38.9%)が、それぞれ教職者である。 (3) 大学に入学した頃の実家生業は、《図表2} においてみられるように世代とともに傾向の変化 が明瞭で、ある。すなわち年輩GCには「学校 教員」 や「農林水産鉱業」が相対的に多い状況から、若 い GCになるにつれて次第に 「事務系勤人(ホワ イトカラー)
J
ゃ「作業系勤人(ブルーカラー)
J
が相対的に多くなってくるという特徴傾向がみら れ、今回新たに対象となった第 12GCに関しでも 同様(両者で 47.8%) である。 また、教職に就いた頃、身内に教職者がいたか どうかをたずねた結果(<図表分)も、上の実家 [第6回調査l (2010年 8月) [第5回調査1[第4回調査1[第3回調査1第[2回調査1[第l回調査] ( 調査実施年月) (2004年8月)(1999年8月)(1994年B月)(1989年8月)(1984年8月) 項目 回答者数(性別構成比) 合 言十 合 計 合 計 合 E十 A 口 計 4 ロ E十 呼称 卒業年月 実数(回収率)実数(回収率)実数(回収率)実数(回収率)実数(回収率)実数(回収率) 男性 女性 第lGC 1952.3-54.3 205 (65.5%) 193 (60.7%) 266 (78.0%) 第2GC 1957.3-59.3 ーーー』 ーー ー 209 (65.1 %) 212 (66.7%) 189 (56.6%) 275 (80.9%) 第3GC 1962.3-64.3 180(579%) 188 (58.6%) 221 (68.6%) 203 (62.1 %) 252 (75.7%) 第4GC 1967.3-69.3 -・・・・・・・. 曲幽ーーーーー・. 153(54.1%) 131 (45.6%) 161 (55.5%) 162 (55.5%) 214 (679%) 第5GC 1972.3-74.3 ーーーーー骨司幽骨 133(50.2%) 125 (47.2%) 148 (56.3%) 137 (519%) 172 (63.8%) 第6GC 1977.3-79.3 ーーーーーー. 140(46.5%) 139 (43.7%) 150 (49.5%) 145 (45.0%) 153 (512%) 第7GC 1983.3のみ 96(36.9%) 107 (41.5%) 119 (45.1%) 115 (41.7%) 172 (58.9%) 第8GC 1988.3のみ 71(41.5%} 64 (34.8%) 85 (45.7%) 109 (556%) 第9GC 1992.3-93.3 75(399%) 78 (356%) 136 (57.9%) ーー圃値圃ー.骨骨.・_ 第10G 1997.3-99.3 18(30口%) 42(70.0%} C 60(45.8%) 64(379%) 91 (467%) ー一一一・・ー 第IIGC 2002.3-04.3 26(43.3%) 33(55.0%) 60(44.4%) 82(42.3%) ーーーーーー--- -第12GC2008.3-10.3 25(28.4%) 63(71.6%} 88(42.1%) ーー曲---伺骨骨- -総計 69(33.2型6)1 38(66.3%) 208(42.1 %) 994(46.4%) 1132 1437 1253 1505 (47.8%) (57.6%) (53.8%) (63.1%) ※合計側の(回収率)は、対象者死亡や宛先不明で返送されてきたものを除宮、実配布数lこ対する有効回答者数の割合を意味している。 ※※第1回調査には、 GCの不明者が1名存在しているが表記していない(総計数には入っている)。 ※※※第5回調査には、第3GCに2名、第4 GCにl名、第6 GCに1名、第7GCに1名、第11GCに3名、また第6回調査には、第11G C に1名、それぞれ性別不明者が存在しているが、表記していない(ただし、各GC毎の合計数、総計数には、入っている)。 80若い教師の力量形成に関する調査研究 (2) 81 (%) (図表2b)調査対象者が文学入学頃の実家生業 (各GC別 積み重ね%) 100 1.0. GC 11 GC 12GC l.o.-12GC全体 9.0. 学校教民 1.0. 7 13 3.0. 19] ... J 1.7 . . J.4,e ....14,4 80 農林 水 鉱 業 1 .0. .0. 1 … 山山.1.7 口… …Q日 日 山 O,~ 自営商工業 8 8 4 2.0. … … }:>..3. t:,ヨ … 4,.~. ...Q,(I … . 0 . 1 3 専門自由業 2 ; l ,3. ....0. 1.1...1.4 50 般公務員 6 7 5 18 引山… 10.Q …1.17. …57..山 8] 40 事 務系 勤 人 14 14 24 52 一一23,.3… …23.3 ..21.3...25,.0. 30 作業 系 勤人 12 14 18 44 20 川 20口一 23.3. 20,5….… 21,2← 役員管理職 2 6 12 2.0. 10 一 一 吋 .>:,.3.. .10.0• .J3,6山町9.6 サービス業 3 1 6 10 0 5..0. 1.7 6.8 4.8 3GC 4GC 5GC 6GC 7GC 8GC 9GC 10GC llGC 12GC ll-12GC ※「その他Jr無図書Jは表記から除いた. ※第3-9GCの数値は2004調査時のもの、第10・12GCの数値は2010悶査時のもの. 《図表3}教 職に 就 い た 頃 、 身 近 に 教 師 い た か ( % ) (%) (図表3b)教職に就いた頃、身近に教師がい た か (各GC別 積み葉ね%) 10 G C 11G C 父母及び親族中 8.3 13.3 父 母 の み 6.7 3.3 親 族中 の み 21.7 21.7 親しい知人 3.3 1.7 身 近にいない 60.0 60.0 12 G C 10-12全体 6.8 9.1 12.5 8.2 20.5 21.2 11.4 6.3 48.9 55.3 100 9.0. 8.0. 70 60 50 40 30 20 10 教師は身近に全くいなかった 文母が教師 ※退職者も含む。 rそ の 他Jr無回答 」 は 来 表 記 O +---,---,----r 生業と同様の傾向にあり、「父母 ・親族ともに教 員ではなく、親しい人の中にも教員はいなかった」 と回答した者が第10~ 12GCの若い教師たちの中 では過半数 (55.3%)を占めるに至っている(注3)。 (4) さて、 今回の調査対 象者である第 10 ~ 12GCに属する教師たちのライフコースの時代的 背景について、説明しておきたい。 第10~ 12GCは、1990年代後半のいわゆる「バ ブル経済
J
崩壊後の不況期から新世紀を迎えて 10年ほど経つが経済は不況!惑が長ヲ│く現在まで のおよそ 20年余りが対応している。日本国内に おいては、 1995年の阪神大震災、 97年の山一証 券倒産に象徴される金融危機の増大、それを背景 に大学生たちには就職戦線が超氷河期ともいわれ る時期となった。 2009年には政権交代が行われ たものの、依然、不況と混迷の状況は続き、社会 的格差は拡大してきている。世界的にも、新世紀 に入り、 2001年のアメリカ同時多発テロ事件や それに起因する 03年のイラク戦争勃発、 07年頃 から始まった金融危機とグローパル恐慌とを迎え 3GC 4GC 5GC 6GC 7GC 8GC 9GC 10GC llGC 12GC l1-12GC 出第3-9GC白数値1;1;2004調査時のもの、軍10-12GC司敏創立201口調査時四も旬。 ることになった。このような内外にわたる不安な 情勢の中で大学生活を送ったのが第1O-12GCで ある。 彼(女)らの小・中・高校までの被教育体験は、 1980年代前半の「学校の“荒れ"
J
現象への対応 策として広がっていった 80年代後半の管理主義 教育以降の学校であり、不登校児童生徒の増大現 象 (1990年代、小・中学校不登校児童生徒数及 び全児童生徒数に占める比率も増加の一途をたど り、 2001年度には、全国で 138,722人、 1.23%、 静岡県で3,795人、 1.08%とピークを迎えた)の 中の学校においてであった。また新世紀を迎える 頃から頻発し、マスコミでも報道されることが多 くなった凶悪な少年事件の発生も社会現象化して きた時期であった。高校進学率は、100%に近い 飽和状態 (2005年に 98%超)が続き、短大 ・大 学の進学率は50%を超える (05年)など「高等 教育の大衆化」が急速に進展してきた時期でも あった。 1989年に改訂された小・中学校学習指導要領 81-82 「東洋大学'文子部紀要」第 61集 教育学科編 XXXVI (2010午度) は、いわゆる「新しい学力観」という名の下で「関 心・意欲・態度」面が過度に強調され、 90年代 の教室では授業中の挙手回数や発言回数などの チェックが盛んに行われた。 1998年には再度の 学習指導要領改訂が行われ、完全学校5日制移行 に対応した授業時間数と学習内容量削減の方針が 打ち出された。しかし、その教育方針が完全実施 される前段階で、いわゆる「学力低下」論議が巻 き起こり、 2003年の学習指導要領一部改訂では、 学習指導要領の 「最低基準性」方針や、指導要領 には記載のない発展的学習内容の指導容認や、「総 合的な学習の時間」の指導計画や評価の強調など が打ち出され、 2008-9年には学習指導要領が改 訂され、いわゆる『ゆとり教育
J
路線からの転換 が図られることとなった。第 11-12GCは、自ら の被教育体験とは異なる教育方針が打ち出された 学校・実践現場で教職生活を送り始めることに なったのである。 就職戦線超氷河期を背景として、さらに少子化 (03年合計特殊出生率1.29ショック)の影響を受 けて、 10GCの教員就職状況は厳しい状況にあっ た。それへの対応策として、 1998年には全国の 国立教員養成系大学・学部における教員養成課程 学生定員を削減(これによって約 l万人体制とな りピーク時の半数となった)するとともに、 2001 年には文部科学省内設置の 「国立の教員養成系大 学・学部の在り方に関する懇談会」が検討まとめ の中で同大学・学部の全国的な統合・再編の方針 を打ち出すまで、に至った。国立の教員養成系大学・ 学部の教員養成課程の卒業生の教員就職状況は、 1999年時点で、 全国平均 32.0%、静岡大学教育 学部 17.7%と、底を打つに至っていた。しかし第 11-12GCの卒業の頃になると状況は好転し始め る。いわゆる「団塊世代」の大量退職期を迎え、 また各地方自治体独自の少人数指導体制実施など も加わって、大都市圏では教員採用者数の急増期、 静岡県においても漸進的増加時期を迎えつつあ る。静岡県においても、 2001年度の小中学校採 用教員数は 165名であったが、翌年度から次第に 増加し始め、第 12GCの卒業期には 400名を超え る採用者数となってきている。 教員養成及び現職教育に対する政策的施策も変 化を迎えた時期であった。1997-99年には 3次に わたる教育職員養成審議会答申がまとめられ、第 l次答申では養成段階における実践的指導力の基 82 礎等の育成が強調され、カウンセリングなどを中 心とした教職関連科目の単位増や教育実習期間の 延長などを特徴とする教育職員免許法改定 (1999) につながっていった。また、第 2次答申では孝文員 養成系修士大学院の在学形態の多様化と大学院修 士レベルにおける現職教育機能の拡大の基本方針 が打ち出された。大学院就学休業制度 (2001年) や十年経験者研修制度 (2003年)も法制化され るとともに、全国の各教育委員会レベルでは、い わゆる「指導力不足」教員問題や教員評価問題が 具体的政策課題として論議され、一部実施される に至っている。 2006年 7月の中央教育審議会答 申では、新たな教職大学制度の創設と教員免許の 更新制導入の方針が打ち出され、それぞれ導入が 2008年、 2009年に現実のものとなった。そして 教師教育改革の次なる課題は、大学院レベルでの 教員養成、教師教育の高度化という動きとなって あらわれている。 新世紀を迎えて5年余り、社会状況の変化に伴 い、子どもとその保護者の生活実態や意識も大き く変化し、それらの変化の直接的反映として学校 及び教師に様々な困難さがもたらされ、それらの 困難な課題に即座に対応できない学校及び教師に 対して期待の裏返しとしての厳しい批判が突きつ けられてきている。変化に対応した学校教育の改 革も急ピッチで進められることになり、それらの 新しい改革課題の遂行がさらにまた一段と学校と 教師を多忙化へと追い込んでいく結果となってい る 。 ( 山 崎 )2
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生活の実態 本調査では、家庭生活と学校生活の実態につい てたずねているが、「教師の力量形成」問題を考 える際に生活実態は欠かせない要素として組み入 れていかねばならないからである。 とくに近年、この教職生活の多忙化が指摘され るようになってきている。従来、教師の多忙化は、 ストレス問題やパーンアウト(燃え尽き症候群) 問題と連動して語られてきている。教師のストレ ス問題は、 1970年代後半以降イギリスを始めと する諸外国において、日本でも 1980年代後半か ら研究が進められるようになってきており、日本 の場合、教育現場の環境が大きなストレスになっ ている実態があると指摘されている(注 4)。 文科省が公表している「病気休職者等の推移」若い教師の力量形成に閉する調査研究
(
2
)
、,,、6u 統計によれば、 2000年度から 2009年度の 10年 間での病気休職者数は 4,922人(在籍者比 0.53%) から 8,627人(同 0.94%) へと約1.75倍となり、 とりわけ、うち精神疾患による休職者数が 2,262 人(病気休職者数に占める割合 46.0%)から 5,458 人(同 63.3%) へと約 2.41倍とまでなってきて いる(注 5)。また同じく文科省公表の「条件附 採用制度の状況についてj統計によれば、 2009 年 度 に 採 用 さ れ た 公 立 学 校 教員(全採 用 者 数 24,825人)で l年間の条件附採用期間を経て正式 採用ならなかった者は 317人、そのうち病気によ る者が 86人 (27.1%)となっている(注 6)。 このような状況を背景として、文科省委託研究 として約 40年ぶりに本格的な教員勤務実態調査 が実施 (2006年)された。そこでは、勤務日 (7 月)・l日あたりの平均残業時間量が小中全体で、2 時間 09分 (小:I時間 49分、中 2時間 26分)、 平均持帰り時間量が小中全体で 2時間 44分 (小 2時間 37分、中 :2時間 51分)となっており、 その仕事内容は小中ともに成績処理が多く、続い て小では授業準備、中では部活動・クラブ活動で あるという実態が浮かび上がってきた(注 7)。 同様の実態はベネッセによる「第4回学習指導 基本調査 (2007 年 8 月 ~9 月実施 )J でも浮かび 上がっている。同調査によれば、 10年前の同調 査結果と比較して、小・中学校教員とも、出勤時 刻が早まりかつ退勤時刻が遅くなっている(中学 校教員の場合で出勤が約I
O
分早まり退勤が約 40 分遅くなっており、 「学校にいる時間J
は平均 II 時間 48分であった)01
学校にいる時間Jは、教 職経験年数の短い教員ほど、女性よりも男性教員 ほど、それぞれ長い実態にあった。「家での仕事 時間」も、小 ・75.5分、中:61.7分であり、女性 教員の方が家での仕事時聞が長く、かっ家事負担 も多い実態にあることなどが報告されている。さ らには平均睡眠時間も、中学校教員の場合、 10 年前 (1997年)と比べて 29分減少 (2007年調査. 5時間 57分)し、 6時間を確保できなくなってい る実態も報告されている(注 8)。 本調査の対象者である静岡県下教師の実態は、 静岡県教育委員会が委託した調査研究「教職員に 対する意識調査及び勤務実態調査J
(2007年 6月 ~8 月実施)から、窺うこともできる。 向調査に よると、勤務日における教職員の労働時 間は、小-中学校教員で約 12時間、高校教員で約I
O
時間で 83 あり、休日における部活動指導の平均時間は、中 学校教員で 4時間 10分、高校教員で 5時間 12分 となっている(注 9)。 本調査は、主な調査目的を異にしているため、 上掲の本格的な実態調査と比べるならば質問数も 少なく限られたものだが、それらの本格的実態調 査結果の特徴を考慮しながら、以下、若い教師を 対象とした調査データとしての特徴を考察してい きたい。 (山崎) (1)家庭生活 調査時において退職している者を除いた 201名 を対象として、「通常の平日」において以下の各 事柄に費やす平均時間を、時間を記した選択肢で 回答するよう求めた。以下はそれらの結果である。 「勤務時間(学校にいる時間): (図表4ーア}Jは、 全体的な傾向として1
-
1
3
時間:12時間以上」が 多く(男:54.4%、女:37.9%)、とりわけ新任期 にある第12GCは男女とも半数を超える高い数値 を示している(男 :70.8%、女 54.0%)。男女別 では、上記のように男性教師の方が長時間勤務の 傾向がみられるが、これは女性教師が家事・育児 などを担うため、自宅で残務を処理しなければな らない実態傾向にあることもあわせて考慮する必 要がある。また女性教師聞においても既婚者と独 身者には違いがみられ、独身者は 112時間以上J
に回答が集中し、半数を超えていた。男性と女性、 女性でも既婚と独身による違いは、教職生活と家 庭生活のバランスの取り方に大きな違いがあるこ とを考慮し、教師としての力量形成問題を考えて いかねばならないことを示唆している。 「通勤時間(往復): {図表4 イ}J は、 GC及 び男女に共通して1
-
30分 I ~ 30分」と1
-1時間 30 分 ~ 1 時間未満」に集中している。 両 者 を 合 わ せ る と 男 全 体 :83.8% 、 同 女 全 体 : 78.1%となり、 8割前後にまで上る。大都市圏に おける一般的な通勤時間に比べてだいぶ少ないと いえよう。 「家事・育児 〈図表4 ウ}Jは、男女の違い、 女性でも既婚か独身かの違いが、あらわれている。 既婚者に関しては、男性は0分~ l時間未満に回 答が集中しているのに対し、 女性は 1 ~3 時間未 満に回答が集中していた(未表記)02004年調査 でも報告されていたように、男性教師と女性教師 の育児・家事に費やされる時間の差は大きく、育 児・ 家事が女性教師の学校及び家庭生活のあり様81 「東洋大子文宇部紀安
J
第6
1
集 教育予科編XXXV
I
(2010午度) や教師としての発達のあり様に大きな影響を与え ていることが推測される。I
(
家で行う)残務処理・教材研究等・〈図表 4ーエ
}Jの時間は、全体傾向として1
-
2時間:1 ~2 時間未満」の指摘が最も多くなっている。 し かし、男性よりは女性、第lOGCよりは第 J2GC の方が、多くなる傾向にある。これらの点は、 2004年までに行われたこれまでの調査と同様で あった。男女や既婚と独身による違いはほとんど 認められなかった。 「余暇・自由時間 《図表4ーオ}Jは、男女い ずれも結婚の有無による違いがみられ、特に女性 教師はその差が大きいことが指摘できる(未表 記)。男性に関して、独身はI
1
~ 2時間未満」 のみに回答が集中していたのに対し既婚者は l分 ~2 時間未満の聞に回答が集中していた。女性に 関しては、 130分 ~2 時間未満」に回答が集中し ていたのに対し、既婚者は 11~ 30分未満 j に 回答が集中していた。このことからも、結婚後の 女性教師の生活においては、ゆとりが少なくなる 傾向にあるといえる。 「睡眠時間 《図表4 カ}J は、1
-
6時間 :5 ~6 時間未満 J (男:32.4%、女 41.7%)と1
-7時 間 :6 ~ 7時 間 未 満J
(男 38目8 %、 女 : 38.6%) に集中している。しかし、男性では、第 10-lIGCに比べて第 12GCの!睡眠時聞が短く、女 性では、その逆の傾向がある。女性の場合の傾向 は、既婚者の増加を反映しているといえる。 「部活動やスポーツ ・クラブ等の指導 ・〈図表4 ーキa,b}Jの時間は、第12GCの男性教師の時間 の長さが目立っているが、それ以上に勤務校種に よる違いが顕著である。 小学校または中学校に勤 務する教師別に整理した結果は、小学校に勤務し ている者の65%以上が 11~ 30分未満j である ことに対し、中学校に勤務している者の 90%以 上が 1 ~4 時間未満であり、最も多い回答は 12 ~3 時間未満 J (約半数の50%) であった。中学 校に勤務する教師の半数以上が、平日の l日あた りl時間以上「部活動やスポーツ・ クラブ等の指 導」 に費やしていた。(望月) (2)学校生活 次に、学校生活に関する事柄について、主に「子 ども」と「同僚」との関係についてたず、ねた質問 結果をもとに考察していきたい。 「多忙感 《図表 5}Jについては、全体として8
4
(%) (図表4ーア》勤務時 間 (r学校にいる時間J) 80 30 20 5.6時間 ー7時 間 一8時間 .9時間 .10時間 11時間 ・12時間 13時間 (%) (図表4ーイ}通勤時間(往復) 50 30 20 0分 30分 .50<間 ・6時間 (%) (図表4-ウ》家事 育児 50 40 30 20 10 -o分 .30分 ー1符C .2時間 3時間 4時間 5時間 -6時間 《図表4ー工) (家で行う)残務処理・教材研究等 O分 .30分 .1時間 ー2時間 -6時 間 教職生活は「非常に忙しい」に回答が集中してお り、男女いずれも半数以上(男 63.2%、 女 :若い教師の力畳形成に関する調査研究 (2)
8
5
5
4
.
5
%
)
にのぼっていた。一方で、適度だと感じ ている者やゆったりと感じている者を足しでも全 体の 10%もおらず少数であった。男女による違 いはあまり見られなかったが、既婚者は「非常に 忙しい」と回答した者が60%を超えており(未 表記)、独身者よりも既婚者のほうが多忙の程度 を強く感じているといえる。 「子どもとの関係 :{図表6
>
J
については、全 体として過半数の者が該当する(,非常によくあ るJ
+
,たまにあるJ
)
と回答した項目は、「子ど もに対する指導がうまくいかないこと」、 「自分の 指導力に無力感を感じること」、「学校の仕組み自 体が変わらないと今の子どもに対応できないこ と」、「自分の実践自体が変わらないと今の子ども に対応できないと思うこと」の4項目であった。 いずれも子どもに対する教師自身の実践にかかわ る内容であるといえる。 男女による違い(未表記)は、「これまでの自 分の教育・指導観に混乱が生じること」に対し、 男性は該当者が半数に満たないのに対し、女性は 半数以上が該当していた。 「同僚との関係性:{図表7
>
J
について、全体 として過半数の者が該当する(,非常によくある」+
,たまにある」と答えた項目は、「同僚と子ど ものことや教育のことについて話し合うこと」、 「同僚に自分から実践指導上の相談をよくするこ とJ
、「学年・学校経営に積極的に関わっていこう とすること」、「主任-教頭・校長に実践指導上の 相談をよくすること j、「同僚と互いに実践につい てアドバイスしあったりすること」、「同僚と互い に授業を見合ったりすること」、「同僚と学校を離 れでもインフォーマルにつきあうこと」の7項目 にわたり、比較的同僚と助け合い協力しながら職 務に取り組んで、いる様子が窺える。一方で、回答 の少なかった「同僚と勉強会のようなものをした {図表5)教職生活の多忙感 女 思 りすること」については、自主的な学習活動の機 会が時間的にも精神的にも得にくい状況があるこ と、「思い通りに実践する」ことや 「職員会言義で {図表4-オ}余限・自由時間 40 30 20 10。
0分 -3D分 一1時間 .2符/IlJ -3時間 4時間 5時間 6時 間 (%) (図表 4ーカ}睡眠時間 50 40 2-3時間 4時間 .5時間 -6時間 -7時間 ・8時間 9時間 10時間 (%) (図表4ーキa)部活動・スポ ツ等の指導 0分 ・30分 一1時間 一2時間 一3時間 -4時間 ー5時間 6時 間 (%) (図表4-キb)部活動・スポ ツ等の指導(小中別) 80 70 60 30 20 (%) 0分 ー30分 1時間 2持問 3時間 4 時 n~ -5時間 一6時 間-85
Rの 「東洋大学 文 学部 紀要
J
第f
i
4
集 教 育 学 科 編XXXVT
(
2
0
1
0
年 度) 《図表6
>
>
最近の学校生活において、子どもとの関係は、どの程度感じますか。 非 常 に よ く あ る た ま に あ る あ ま り な い ま っ た く な い 無回答 指導うまくいかない 指導力Ii:無力感じる 学校制度の転換必要 実践自体の転換必要 子ども観覆る思い 従来の指導銭混乱 心のズレを感じる 気持ち理解できない 子供成長手応えない 話するのがおっくう。
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 《図表7
>
>
最近の生活において、 同僚との関係は、どの程度感じますか。 非常によくある たまにある あまりない まったくない 無回答 同僚と教育を話する 向僚に実践を相談 経営に積極的関わる 校長等lこ相談する 同僚と助言し合う 同僚と授業見合う 同僚と学校外付き合い 思い通りに実践する 職員会議でよく発言 同僚と勉強会し合う千
。
10 20 30 40 50 60 70 80 90 % 86一若い教師の力量形成に関する調査研究 (2)
8
7
よく発言する」ことは、若い教師たちにとっては 未だ実現が難しい事柄であることが推測できる。 男女の違い(未表記)については、「職員会議で は積極的に発言すること」は、男性は約半数が該 当しているのに対し、女性の該当者は 20%程度 であった。 (望月)3
.
研究活動の実態 次に、若い教師の研究活動の実態を、 (1)学校 における共同研究、 (2)参加している研究会や自 主サークル、 (3)個人的な努力、の順に探ってみ たい。 (1)学校の共同研究 学校での共同研究に関しては、現在の勤務校に おける全校研究(研修)テーマの有無、それへの 参加意欲と自己の力量形成への貢献度、その影響 の内容を問うている。 全体テーマの有無に関しては、全体(=退職者 を│徐く回答者201名)の92.0%が、全校研究(研 修)テーマが「ある」と回答している。各G C聞 にも目立った違いは認められない。 その全体研究(研修)への参加意欲 (1自分は 意欲的に取り組んでいる」と思う度合い、《図表 8}) については、「どちらともいえない」を中央 とした5件法で回答を求めているが、「どちらか といえば(やや)そう思う j を回答比率5割前後 の大きさの分布になっている (3つのGC全体で 50.8%)。しかし、第12GCにかけてやや指摘率 が低くなり (44.2%)、「どちらともいえないjの 側に寄った分布へとゆるやかに移行している。こ れは、若年層の研修意欲の僅かな低下傾向と見る こともできなくはないが、初任者研修などに追わ れる初任者や講師の占める比率が影響している部 分もあろう。また、全体研究(研修)の自己の力 量形成への貢献度 (1自分の力量形成に役立つて いる」と思う度合い、《図表9})についても、 「ど ちらともいえないjを中央とした5件法で回答を 求めているが、「どちらかといえば(やや)そう 思う」を回答比率5割前後の頂点とした分布に なっている (3つのG C全体で45.9%)。第 12GC にかけてやや指摘率が低く なり (41.6%)、「どち らともいえない」 の側に寄った分布へとゆるやか に移行している点も同様である。「非常にそう思 う」と合計して7~8割という分布に各GC 聞の 顕著な差はみられない。8
7
《図表 8)学校の共同研究に r自分は意欲的に取り組んでいるJ力、 非l!!ζ1そうJ!lラ ややそう思う どちらともいえない ややそう思ねえよい 全く思わ怠い NA 全 体 11 GC 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 終回答者突敏'"1 OGC目白、II GC (53)、12GC (77) .全体(185) 同} {図表9)学校の共同研究は r自分の力量形成に役立っている』か 弊需にそう思う ややそう思う どちらともいえ本い ややそう思わない 金〈尽わない NA 会 体 12GC IIGC IOGC 1 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 '回答者突実従事1OGC (55) • 1 1 GC (53)‘ 1 2GC (77)、全体(185) (96) 《図表10)) 現在、 力点 を おい て継 続的に 参加 して い る 研 究 会-サークル (最 も 重 要と 判断した つを 選 択 ・ %) 10GC 11 GC 12GC 全 体 (GC回答者実数) ( 56) ( 58) ( 87) (201) (男性) ( 18) ( 26) ( 24) ( 68) (女性) ( 38) ( 31) ( 63) (132) 特にない 39.3 41.4 51.7 45.3 44.4 42.3 70.8 52.9 ~9,Çl. 41.9 44.4 41.7 地区研究会 21.4 20.7 20.7 20.9 11.1 11.5 20.8 14.7 26.3 2Q,C.l 20,9 2~,.;;. 自主研究サークル 14.3 17.2 8.0 12.4 22.2 26.9。
。
16.2 10.,;;. 日7 11.1 10.6 教委籍企扇~i.!窓会 7.1 5.2 日旦 95. 研究指定絞発表会 7.1 3.4 ~..4 4.;; 民周款育研究周体 ~, q 8.6 2..3 4,;; 組会主催研究会 3,Q。
。
2...3. ;;.0 出版社主態研究会。
。
1.7。
。
0,;; 教委指定研究サークル 0.0。
。
0.0。
。
※『全体回答者数Jには性別不明者数も含まれている。「その他J来表記 (2)参加研究会 ・自主サークル 校内研究(研修)とは別に、最も「力点をおい て継続的に参加している研究会 ・サークルJ
(1 つに絞って回答するよう指示した)と、そこで「得 られたことJ
を問うた({図表 10})。88 「東洋大学文学部紀要」第64集 教育学科編 XXXVI (2010年度) 最も力点をおき、継続的に参加していると回答 《図表
1 0
参加の研究会等で得たもの(%) されたのは、「地区研究会・地区の学年・教科・ (2つまで選択可) 領域別の研究会」と「自主研究サークル」の2つ が相対的に多く 、それぞれ全体で20.9%と12.4% である。前者「地区研究会」は、男女差がみられ、 男性教師よりも女性教師からの指摘率が高いが、 勤務校の所在地域ごとに学年・教科・領域別に部 会が組織され、ほほ全員がいずれかの部会に参加 する形態をとっている組織にもかかわらず、「自 分の勉強の場として力点をおいて継続的に参加し ているJ
ということになると約2割程度しか意識 されていないという実態である。後者 「全く自由 な研究サークル」は、多忙化を反映しての教育界 全体における自主的活動の全体的な衰退を背景と しており、 全体としては l割ほど、特に新任期に ある第 12GCでは低い数値にとどまっている。そ れでも、教11校生活に少しゆとりが出てくる第 IIGC、第 10GCになると男性教師を中心に指摘 率が増加している。 しかし、もっとも目立つのは「特にない」とい う回答が第 10GCから第12GCにかけていずれも 最多比率を占め、かつ39.3%→41.4%→ 51.7%(特 に男性教師の70.8%)と顕著に増えている傾向で ある。制度的・伝統的あるいは自主的な研修全般 の量的、そしてとりわけ質的な停滞、個々のニー ズからの話離といった状況が窺われる。 そう した研究会やサークル等から「得られたも の」について({図表 11})は、「地区研究会」及 び「自主研究サークル」の両活動ともJ
教科内容・ 教材を構成してゆく力がついたJ
が最多で (2つ まで回答という指示下で)5割前後である。しか し、それに続くものとしては、両者に違いがある。 「地区研究会」活動では、「教育活動に対する考え 方が深まった」ゃ 「授業を展開してゆく力がつい た」が多く、同活動を通して具体的な指導力量の 向上が自覚されている。その一方、「自主研究サー クjレ」 活動では(回答者実数が少ない制約はある が)、「人的交流の幅が広がった」が多く指摘され ており、職場を超えた人的ネッ トワークの有益さ が自覚されている。 (3)個人的努力 さて、以上に加えてさらに、「教師としての力 量を高めるために、現在、個人的に努力している ことjの有無と、そ の 内 容 を 問 う た ({図 表 12} 。) 地 区 研 究 会 自 主 研 究 サ ー ク ル (GC回答者実数) ( 42) ( 25) 教 科内容・教 材 を 47.6 52.0 構 成してい主力フいた 教 育活動に関 す る 35.7 12.0 芳 之 方 がj架ーまコたー 授 業 を 展 開していく 28.6 16.01
1
がヨいたー 人 的 交 流 の 幅 が 19.0 40.0 j広がコた 子 ど も に対 す る 19.0 28.0 煮え1
i
が 高 まヨ:ーた 教 育 活 動 に 関する 16.7 12.0 意 欲 が 増した 自分自身が 0.0 20.0 人間として成 長した 《図表12))現 在 、 力量を 高 め る た め の 個 人 的 努 力 内 容 (複数選択 %) 10GC 11GC 12GC 全 体 ; (全体回答者実数) (56) ( 58) ( 87) (201) (有回答%j実数)(82.1/46) (82.8/48)(82.8/72)(826ハ
66) 実践を公開し、 21.7 25.0 29.2 25.9 j)t訴を受ける 実践に関する子どもの 28.3 22.9 16.7 2l.7 感Z患を 窓昆を聞く 実践の記録反省を 15.2 31.3 47.2 33.7 取る 教材研究指導案の 50.0 41.7 45.8 45.8 fラ念主主準備 学校内外の研究会に 28.3 29.2 18.1 24.1 積極的に参加 自主研究会 サークル 17.4 29.2 9.7 17.5 活動に参加 関心ある学問芸術 13.0 14.6 13.9 13.9 について進議を深める 教育学等関係の 30.4 33.3 18.1 25.9 専問:m雑誌を読む 一般教養を身につけ 26.1 31.3 22.2 25.9 人間的成長を図る ※全体回答者数には、性別不明者も含まれている。 努力していることが「ある」との回答は、3つ のGCともに82%を少し超えたほどであり、 GC 聞に大きな違いはなし、。 その努力内容 (複数選択可との指定)は、 「教 材研究や指導案など実践の準備は丹念にしてい る」が最も多く、4-5割である。次いで「自分 の実践についての記録 ・反省など」が3割前後と なっているが、 GC聞に大きな違いがみられ、第 10GCが15.2%でしかないのに対して、第 11GC では31.3%、第12GCでは急増して47.2%にもの持い教師の力量形成に関すゐ調脊研究 (2) 89 ぼり、新任期教師の特徴を示している。その傾向 とは逆に、第 11GCや第 10GCになると指摘率が 高まっていく努力内容としては、「自分の実践に ついて児童・生徒に感想や意見を聞いている」ゃ 「実践記録や教育学 ・心理学関係の専門書・雑誌 を読んで、いる」、あるいは「機会あるごとに積極 的に学校外の研究会に積極的に参加している」ゃ 「自主的な研究会・サークルの一員として活動し ている」といったものがみられる。実践遂行にお いて、学習者(子ども)側への着目や理論的な関 心の芽生えが次第に生まれていくこと、あるいは また自らの実践を対象化・客観化してみるために も職場を超えた学びの場を得ょうという志向性の 芽生えもまた生まれていく ことを窺わせる結果と な っ て い る と い え よ う 。 ( 菅 野 )
4
.
教職生活における転機 教師個々人のライフコースをみてくると、その 中に、教職生活上の転機とともに、教職生活に関 して「ゆきづまり」を感じたり、教師を「やめた い」とまで思い込む危機的な時期を含んでいる ケースが少なくない。 (1)全体的特徴 《図表13}は、既に退職した者を除いて「最近、 ご自分の実践上の『ゆきづまり』を感じたことが あるか」及び「最近、『教師をやめたいJ
と思っ た こ と が あ る か 」 と た ず ね た 結 果 で あ る 。 第 10GC、第11GC、第12GCがそれぞれ調査対象に 加えられた 1999年、 2004年、 2010年の各調査時 点の結果データを表しである。 まず第lOG Cであるが、新任期にあたる 99調 査時点から30歳代前半に入った今回の2010調 査 時点まで、「ゆきづまり」感じたことあるも「や めたい」と感じたことあるも共に増加しているこ と が わ か る ( ゆ き づ ま り :67.0 %→71.4 % →80.4%、やめたい 35.2%→41.3%→46.4%)。 その数値を押し上げているのは同G Cに属する女 性教師たちの数値である。そして同様の傾向は、 第11GCにおいてもみられ(ゆきづまり:80.2% →82.8%、 や め た い :37.0%→43.1 %)、同 G C でも女性教師の数値が男性よりも高い。さらに 2010 調査時点では入職後 1~2 年余りしか経っ ていない第 12GCにおいても、「ゆきづまり」感 《図表13}最近、ゆきづまりを感じたことがある 教職をやめたいと感じたことがある (それぞれ「はしりと回答した者の%) GC 10GC 11GC 12GC 全 体 ゆきづま 99年調査 67.0 67.0 りを感じ 男性 58.1 58.1 たことカミ 奈佐 71.7 71.7 たことが 04年調査 71.4 80.2 76.4 ある 男性 54.5 70.0 63.5 女娃 80.5 日:7.,.~. 日4.3 2010年調査 80.4 82.8 87.4 84.1 男性 66.7 69.2 79.2 72.1 女性 86.8 93.5 90.5 90.2 やめたい 99年調査 35.2 35.2 と感じ 男性 29.0 29.0 たこと力ぐ 女 性 ヨ8,3 ヨ8,.3. ある 04年調査 41.3 37.0 38.9 男性 31.8 30.0 30.8 女.11 46,3 43.8 44.9 2010年調査 46.4 43.1 31.0 38.8 男性 27.8 38.5 20.8 29.4 女性 55.3 45.2 34.9 43.2 《図表14))[ゆ き づ ま り 」 の あ っ た 時 期 と そ の 内 容 ( 複 数 選 択 可 、 % 、 上 位3つ を 表 記 ) 順 位 第1位 第2位 第3位 時 期 回 答 者 数 20歳代前半 99-10GC (61)適切な発問で子どもの思考を発展(54.5)子ども能力差に対応 (508) 授業展開の組み立て (47.5) 04-11 GC (65)子ども能力差に対応 (63.1) 適切な発問で子どもの思考を発展 (55.4)子どもに基礎学力を定着させる (369) 10-12GC (76)子ども能力差に対応 (57.9) 授業展開の組み立て (50.0) 障害児や問題児の指導 (40.8) 20歳代後半 99-9GC (63)子ども能力差に対応 (54.0) 時に応じて子どもを厳しく指導 (31.7) 適切な発問で子どもの思考を発展 (30.2) 04-10GC 子ども能力差に対応 (42.2) 子どもに基礎学力を定着させる (35.6) 適切な発問/障害児等の指導 (333) (45) 子ども能力差に対応 (54.2) 障害児や問題児の指導 (47.9) 適切な発問で子どもの思考を発展 (41.7) 10-11 GC (48) 30歳代前半 99-8GC (45)子ども能力差に対応 (48.8) 子どもにしつけ徹底 (42.2) 子どもの気持ち理解 (333) 04-9GC (55)子ども能力差に対応 (56.4) 保護者との対応 (34.5) 子どもに基礎学力を定着させる (30.9) 10-10GC(45) 障害児や問題児の指導 (46.7) 子ども能力差に対応 (44.4) 適切な発問/保護者対応 (313) ※ 例 [20歳 代 前 半 99-10GC (61)Jという表記は、 1999年 調 査 時 点 で20歳 代 前 半 の l OGCに 属 す る 回 答 者61名のこと。 8 9-90 「東洋大学文学部紀要」第 64集 教育学科編 XXXVI (2010年度) じたことあると回答した者は 87.4%と高く、第 10、11GCの 99、04調査時点よりも高い。そし て同 GCでも女性教師の数値は男性よりも高く、 90%を超えている。 (2)
r
ゆきづまり」 次に、「ゆきづまり」の内容とその克服要因に ついて考察していきたい。〈図表 14}と〈図表 15}が、それぞれの結果を表している。 1999調 査時点、 2004調査時点、 2010調査時点において、 それぞれ 20歳代前半、 20歳代後半、 30歳代前半 の各年齢段階にあった GCの回答結果を表記しで ある。 「ゆきづまり」の内容の傾向であるが、調査時 点や年齢段階を超えて共通して 1~2 位に指摘さ れているのが 「子どもの能力差に対応すること」 である。それに続く内容としては、 20歳代前半 の新任期にある教師層では「適切な発聞をして子 どもの思考を発展させること」ゃ「授業全体を組 み立てて展開することJ
r
子どもに基礎学力を定 着させること」など授業 ・学習指導に関係する事 柄である。また、 2004調査時点から 2010調査時 点になると次第に「障害児や問題児の指導」や「保 護者との対応」が上位に指摘されるようになって きていることも特徴的である。最近の学校におけ る、子どもの学力格差の拡大、LD
児 .ADHD
児 や不登校児の増加、あるいは保護者の教育観や価 値観の多様化などへの対応が大きな課題となって きていることを反映したものだといえよう。 では、「ゆきづまり」を克服していく要因とし てはどのようなものが挙げられているのだろうか。 克服要因として多く指摘されているのは、「経 験豊かな年輩教師の励ましゃアドバイス」ゃ「家 族の者や友人の励ましゃアドバイス」が主たるも のであり、それらに続いて「年齢の近い若手教師 の励ましゃアドバイス」ゃ「自分の努力」が挙げ られている。年齢段階が上がってくると、「家族・ 友人の励まし」ゃ「自分の努力」が上位に上がっ て き て い る こ と も 特 徴 的 で あ る 。 そ れ の イ ン フォーマルな関係性の下にある諸項目に比べて、 「教務や学年の主任教師の励ましゃアドバイス」 「教頭や校長の励ましゃアドバイスJ
r
指導主事の 励ましゃアドバイス」などフォーマルな関係性の 下にある諸項目の指摘は少なかった。 (3)r
教師をやめたいJ
さらに、「教師をやめたい」と思った理由につ いて考察していきたい。その結果を、《図表 14} と同様の表記の仕方で、《図表 16}に表しておい た。 《図表16}からは、調査時及び年齢段階にかか わらず、「教師をやめたい」と思った理由は、「仕 事量があまりに過重だからJ
r
自分の性格が教職 に適していないと思うようになったからJ
r
教育 実践上の深刻なゆきづまりから」の 3項目によっ て占められていることがわかる。とくに「仕事量 があまりに過重」は、調査時及び年齢段階にかか わらず、第l位を独占しており、その指摘率も他 の項目より高くなっていることが特徴的である。 未表記であるが、 1984調査時においては、 20 30歳代前半の教師が「自分の性格が教職に不向 き」と「実践上の深刻なゆきづまり」が多く、 30 歳代後半-40歳代の教師になると「仕事量があ まりに過重」が上位に表れ、そして 50歳代前半 の教師の半数から「仕事内容に生きがいを見出せ なくなったから」が指摘されている。それが、 1994調査時になると、 20歳代の若い教師からも 「仕事量があまりに過重」が多く指摘され始める 結果となり、 30歳代後半の教師からは、それに 加えて、「家庭の事情から」ゃ「自分の健康に自 信がなくなったから」などが上位に表れてくる。 そして、 2004調査時になって、どの年齢段階に おいてもすべて「仕事量があまりにも過重」を指 摘する声が大きくなり、その実態は今回 2010調 査時においてもさらに若い教師たちにおいても一 層鮮明になったのである。 さらに今回 2010調査の結果を男女別に整理し た〈図表 17}からは、回答者数が少ないという 制約はあるものの、男女ともに「仕事量があまり に過重」が理由の第 1位を占めていることがわか ると同時に、男性教師においては「仕事の量・内 容に比べてあまりに賃金が低いから」ゃ「仕事内 容に生きがいを見いだせなくなったから」が、女 性教師においては「職場の人間関係がうまくいか なくなって」ゃ「家庭の事情から」が、それぞれ 表れ始めていることがわかる。 多忙化が叫ばれ始めた教育現場の実態が、教師 たちの「教職の危機」を生み始めていることがう か が わ れ る 結 果 で 、 あ る 。 ( 山 崎 )-90-者い教師の力量形成に関する調査研究 (2) 91
5
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おわりに
生活の実態」に関する諸問題に焦点を当て、その 基礎的な集計・分析を報告したものであった口 本稿は、「若い教師の力量形成J
に関係する諸 事項についての質問紙調査結果の中から、「教職 教師の力量形成問題は、今日、教育改革の最も 重要な課題の一つであり、とりわけ若い教師にお 《図表15>>rゆきづまり」のあった時期とその克服要因(複数選択可、%、上位3つを表記) 順 位 第1位 第2位 第3位 時期ー回答者数 20歳代前半 99-10GC (61)年齢近い若手教師の励まし (29.5) 経験豊かな年輩教師の励まし (24.6) 家族・友人の励まし (13.1) 04-11 GC (65)経験豊かな年輩教師の励まし (58.5) 年齢近い若手教師の励まし (9.2) 自分努力/主任教師の励まし/家族 (77) 10-1 2GC (76)経験豊かな年輩教師の励まし (39.5) 教務や学年の主任教師の励まし (21.1) 若手教師の励まし/家族等の励まし (14.5) 20歳代後半 99-9GC (63)経験豊かな年輩教師の励まし (38.1) 家族・友人の励まし (143) 年齢近い若手教師の励まし (12.7) 04司10GC(45)経験豊かな年輩教師の励まし (37.8) 家族・友人の励まし (17.8) 自分努力/若手数師/主任教師 (11.1) 10-11GC (48)経験豊かな年語教師の励まし (41.7) 教務や学年の主任教師の励まし (167) 家族・友人の励まし (10.4) 30歳代前半 99- 8Gc (45) 自分の努力 (24.4) 経験豊かな年輩教師の励まし (20.0) 主任教師の励まし (8.9) 04・9GC(55)経験豊かな年輩教師の励まし (34.5) 家族 友 人 の 励 ま し (16.4) 主任教師の励まし(10.9) 10-10GC (45) 経験豊かな年輩教師の励まし (311) 家族・友人の励まし (22.2) 年齢近い若手教師の励まし (20.0) ※ 例 r20歳代前半 99-10GC (6l)Jという表記は、 1999年調査時点で20歳代前半の10GCに属する回答者61名のこと。 《図表16>>r教師をやめたい」と思った時期とその理由(複数選択可、%、よ位3つを表記) 順 位 第1位 第2位 第3位 時期 回答者数 20歳代前半 99-10GC (61) 仕事filがあまりに過重 (50.0) 実践上の深刻なゆきづまり (31.3) 自分の性格が教職lこ不向き (28.1) 04-11 GC (65)仕事@:があまりに過重 (56.7) 自分の性格が教職lこ不向き (46.7) 実践上の深刻なゆきづまり (23.3) 1 0-12GC (76) 仕事盃があまりに過重 (48.1) 自分の性格が教職lこ不向き (33.3) 実践上ゆきづまり/職場での人間関係 (22.2) 20歳代後半 99- 9GC (63)仕事岳があまりに過重 (54.5) 自分の性格が教職に不向き (33.3) 実践上の深刻なゆきづまり (21.2) 04-10GC (45) 仕事置があまりに過重 (46.2) 自分の性格が教職に不向き (30.8) 実践上の深刻なゆきづまり (23.1) 10-11GC (48) 仕事fiIーがあまりに過重 (600) 自分の性格が教職に不向き (36.0) 実践上の深刻なゆきづまり (32.0) 30前 (167) 99-8GC (45)仕事Eがあまりに過重 (44.8) 実践上のゆきづまり (27.6) 自分の性格が教織に不向き (24.1) 04- 9GC (55)仕事量があまりに過重 (57.7) 自分の性格が教職lこ不向き (30.8) 実践上の深刻なゆきづまり (26.9) 10-10GC (45) 仕事歪があまりに過重 (57.7) 自分の性格が教職に不向き (269) 仕事の冨・内容に比べて賃金が低い (231) ※ 例 r20歳代前半・99-10GC(6l)Jという表記は、 1999年調査時点で20歳代前半の10GCに属する回答者61名のこと。 《図表1n
r教師をやめたしりと思った時期とその理由 (2010調査結果の男女別、複数選択可、%、上位3つを表記) 順 位 第1位 第2位 第3位 時期 回 答 者数 10GC 1男(5)1仕事訟が 過 重 /賃金が低い (60.0) 1 一一ー 一 一 │自分の性格が教職に不向き (40.0) 30 歳L...l...J...J 代前半│女(21)I
仕事2があまりに過重 (57.1) 性 格 が 教 職 に 不 向 き / 家 庭 の事情 (23.8)I 11GC 1男(10) ↓仕事盃があまりに過重 (50.0) 1自分の性格が教職に不向き (40.0) I仕事に生きがいを見出せなくなった (30.0) 20歳 I I I I 代後半i女(14)1仕事虫があまりに過重 (64.3) 1実践上の深刻なゆきづまり (42.9) 1自分の性格が教職に不向き (35.7) 12GC 1男(5) ↑仕事盃があまりに過重 (60,0) 1仕事の岳・内容に比べて賃金低い (40.0)I一一一一一 20歳 I...L... ... . . . J 代前半│ 腿;
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量制 云 流 通 陥)"...1齢 出 掛 湖 顧 問 き (36:4j...1議 脱 税 万 ア 極 秘X
両鰍{幻叫 10-121男(20)l'仕事畳があまりに過重 (55.0) 1賃金が低い/性格が不向き (35.0) 1一一一一一一一一一一一 GC I...L...J 全体 │女(57)十仕事盃があまりに過重 (54.4) I自分の性格が教職に不向き (31.6) I実践上の深刻なゆきづまり (211) 919究 「東洋大学文学部紀要j第(i4集 教育学科編 XXXVT (2010年度) ける同問題は、養成・採用・(新任期)研修の各 段階において、如何に実践的指導力の育成を図る かという具体的課題に焦点化されて、喫緊の課題 と考えられている。 同時に、 2000年代に入って、上述のような教 師の教職生活や勤務実態に関する調査が実施され てきていることに象徴されるように、力量形成問 題を考える上で教職生活の実態を抜きにはできな いとの認識が共有されるようになってきている。 例えば、教員養成・免許制度の在り方について 総 合 的 に 論 じ た 中 央 教 育 審 議 会 答 申 (2006年) では、教員をめぐる状況の変化の一つに、多忙化 と同僚性の希薄化のあることを指摘しており、文 部科学白書 (2007年版)では、前年度に実施し た教員勤務実態調査結果を踏まえて、教員の「子 どもと向き合う時間」を拡充することが喫緊の課 題であるとも指摘している(注10)。 本調査が対象とした20歳代前半から 30歳代前 半の若い教師たちの教職生活実態からも、男女と もに教職生活が「非常に忙しい」と感じる者の割 合が半数j:)上にものぼり、「教師をやめたい」と 思った理由の第 l位を占めているのは「仕事量が あまりに過重だから」という実態がみえてきてい る。また、教職生活の「ゆきづまり」を感じた理 由の第l位を占めているのは 「子どもの能力差に 対応すること
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であり、「障害児や問題児の指導」 「保護者との対応」といった内容項目も上位に上 がってきていることも今日的特徴としてみえてき ている。 こうした状況の中で、研究活動の実態としては、 回答者の9割以上が学校共同研究に取り組んでい ると答えているものの、その活動が「自分の力量 形成に役立つていると思う」と回答する者は半数 に満たない実態にある。参加研究会 ・サークル活 動への参加状況も、「特にない」と回答した者の 割合が45%余りを占める実態にある。しかし他 方で、「教材研究・指導案などの丹念な準備」や「実 践の記録・反省を取る」などの日常の実践に根差 した個人的努力を行っている者も少なくない実態 もまたみえてきた。 勤務時聞が12時間を超える者、家で行う残務 処理・教材研究等の時間が2時間近くである者、 そして睡眠時間が6時間前後である者が、それぞ れ相対多数を占める実態、さらには女性教師に とっては結婚・家事・育児の負担が生じ離職の危 92 機も生じやすくなる実態の中に、若い教師たちの 日常における教職生活はある。 教師の資質能力の向上、あるいは高度な専門性 の確立などが叫ばれる今日、とくに教師としての ライフコース上、入職直後、無我夢中の試行錯誤 的な実践の中から、次第に自己の実践課題を自覚 化し、自分はどのような課題にこだわり、どのよ うな個性と得意分野をもった教師として生きてい くのかという最初の教職アイデンテイティを確立 し飛躍していく重要な 10年間に在る若い教師た ちの発達と力量形成を支え促していくサポート体 制を日常生活レベルから整備していく必要があ る 。 ( 山 崎 ・ 望 月 ・ 菅 野 ) [注記] 1) これまでの継続調査結果とその考察に関して は、第 1~3 回質問紙調査結果と第 l 回インタ ビュー調査結果をもとにした山崎準二『教師 のライフコース研究j(創風社、 2002年3月) と、第 4~5 回質問紙調査結果と第 2 回インタ ビュー調査結果を加え再構成した報告書『ライ フコースアプローチに基づく教師の発達と力量 形成に関する継続調査研究j(科学研究費補助 金基盤研究 (C)研究成果報告書、研究代表・ 山崎準二、 2008年3月)がある。 2)今回、本稿と一体のものとして、次の基礎分析 報告を行った。それぞれ独立した報告としての 性格も持たせているため一部重複する記述部分 もあるが、併せて参照願いたい。0
山崎準二・望月耕太・菅野文彦「若い教師 の力量形成に関する調査研究 (1)- 2010静 同調査における「教職の形成」に関する基礎分 析報告一一JU静岡大学教育実践総合センター 紀要』、 2010年度)0
望月耕太・菅野文彦・山崎準二 「若い教師の 力量形成に関する調査研究 (3)- 2010静岡 調査における「教職観の形成」に関する基礎分 析報告J
(静岡大学大学教育センター編『静 岡大学教育研究 第7号』、 2010年度) 3)静岡大学教育学部の入学者における実家生業 (出身階層)の傾向が全国的規模での傾向を反 映するものであるかどうかは即断できない。し かし、例えば東京学芸大学生を対象とした次 の調査報告においても、教職経験者が「身近 にいない」と回答した割合は教員養成課程で若い教師の力量形成に閲する調査研究