• 検索結果がありません。

英語再帰代名詞SELFへの認知言語学的アプローチ(その1) - スペイン語再帰代名詞si/seに見られる概念的並行性を通して -

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "英語再帰代名詞SELFへの認知言語学的アプローチ(その1) - スペイン語再帰代名詞si/seに見られる概念的並行性を通して -"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)近畿大学英語研究会紀要. 第5号2010年1月. 英 語 再 帰 代 名 詞SELFへ の 認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) 一 ス ペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的 並 行 性 を通 して一. 嘱 要旨. 森. 雅. 史. 「個 の 時代 」 が 強 調 され て 久 しい今 日、 我 が 国 で はオ リジ ナ ル ・テ キ ス トの 作 成 や オ フ ィス ・ア ワー の. 活 用 な ど個 の 活 動 が 大 学 教 育 で 盛 ん に 求 め られ て い る反 面 、 語 学 教 員 と して 「個 」 が 如 何 にあ るべ きか 、 とい う研 究 ・教 育 姿 勢 につ い て は 必 ず し も重 視 され て い る よ うに は感 じ られ な い 。 そ こで、 本 論 文 で は、 大 学 教育 に お け る語 学 教 員 と して 各 自の研 究 が 教 育 に反 映 され るべ き姿 勢 の あ り方 を 、 ま さ に 「個 」 を 表 す 表 現 で あ る英 語 再 帰 代 名 詞SELFお. よ び ス ペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seを 通 じて 提 議 す る。. 特 に、 こ の 「そ の1」 で は、 「oneselfは主 語 が指 示 す る 物 と同 一 物 を 指 示 す る」 とす る先 行 研 究 の 問題 点 を 認 知 言 語 学 理 論 も交 え て 指 摘 す る。. キ ー ワー ド. 認 知 言 語 学 、 再 帰 代 名 詞3θ 外. フ ァ カ ル テ ィ ・デ ィ ベ ロ プ メ ン ト(FD)、. 比較文化学、 スペイ ン. 語 再 帰 代 名 詞si/se. ACognitiveLinguisticApproachtotheConceptual MechanismofSELF(Part1) -ThroughtheConceptualParallelwiththeSpanishReflexivePronounsi/se一. MasafumiFukumori AbstractInrecenttimes,beingalongtimesince`theageoftheindividual'begantobeemphasized,individualfacultystaffactivities,suchasthepreparationoforiginaltextbooksandtheutilizationofoffice hours,havebeenhighlyrequiredinuniversitiesinJapan. Ontheotherhand,however,itisundeniablethatresearchinto,andtheeducationalstancetoward,how an`individual'shouldbeasalanguageteacherhasnotnecessarilybeenconsideredasimportant. Accordingly,inthispaper,Iwillpropose,preciselythroughlanguagepertainingto`theindividual',that is,theEnglishreflexivepronounSELFandtheSpanishrelextivepronounsi/se,justwhatthestanceshould beregardinghowlanguageteachers'individualresearchisreflectedinfacultyeducationalprograms.In particular,inthisPartI,Iwillindicatetheproblemsofprecedingstudies,thatis,"oneselfindicatesthe samethingthatthesubjectindicates",withtheCognitiveLinguisticstheory.. 47.

(2) 近畿大学英語研究会紀要. Keywords:. 第5号. CognitiveLinguistics,reflexivepronounself,FacultyDevelopment(FD),LanguageCulture, Spanishreflexivepronounsi/se. 48.

(3) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. 1.は. 森). じめ に. 次 の(1)に. 示 さ れ て い る よ う に 、 我 が 国 で 外 国 語 を 学 ん で い る 学 生 の 関 心 は 「外 国 語 を. 自 由 に 話 し た り聞 い た りで き る よ う に な る こ と 」 に あ る よ う に 感 じ られ る 。. (1)こ. れ は 一 般 的 な 風 潮 か と 思 い ま す が 、 学 生 た ち は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 道 具 と し. て 英 語 を学 びた い と い う要 求 が 強 い よ うで す 。 世 間 で もよ く 「使 え る英 語 」 とか 「役 に 立 つ 英 語 」 と い う よ う な 言 葉 が 聞 か れ ま す が 、 い っ た い 「使 え る 」 と か 「役 に 立 つ 」 と は 何 を 意 味 す る か は こ こ で は さ て お き 、 学 生 た ち の 間 で は 、 他 の 人 が 話 して い る 英 語 を 聞 き 取 り た い 、 ま た 、 自 分 が 思 っ て い る こ と 、 考 え て い る こ とを 英 語 で 話 せ る よ う にな りた い と い う希 望 が 強 い よ うで す 。 一 永 松(1999144)(下. 線 筆 者). そ の こ とが 関 係 して い る か 否 か は 定 か で は な い が 、 現 在 の 外 国 語 教 育 に 目 を 向 け て も、 以 下(2)に. 示 さ れ る よ う に 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 の 向 上 を 目 的 と し た 授 業 が 重 要 視 さ れ. て い る と言 え る1。. (2)従. っ て 、 現 代 の 外 国 語 指 導 者 は 異 口 同 音 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 育 成 の た め の 指 導 、 つ ま りCommunicativeLanguageTeaching(CLT)を. 代 表 的 な教 授 法 と. して あ げ る で あ ろ う。. 一 津 波(2003:211). 確 か に 、 こ の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 中 心 と した 学 習 指 導 法 は 海 外 に お い て も行 な わ れ て い る も の で あ り、 外 国 語 を 習 得 す る 際 の 必 要 条 件 の 一 つ で あ る こ と は言 う ま で も な い 。 しか し な が ら、 現 実 に 日本 の 外 国 語 教 育 で 行 な わ れ て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 授 業 に 目 を 向 け れ ば 、 下 記(3)に. も見 られ る よ う に 、 名 ば か りの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 授 業 が 多. 数 存 在 して お り、 そ う し た 学 習 指 導 を 行 な う こ と で 、 本 当 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが で き る だ け の 外 国 語 運 用 能 力 が 身 に つ く と は 到 底 考 え られ な い 。. 1CLTと. は 、 概 ね 以 下[1]の. [1](1)指. よ う に ま とめ られ る。. 導 目標 を 、 文 法 や 言 語 能 力 の 育 成 の み に止 ま らず 、 コ ミュニ ケ ー シ ョ ン能 力 を 形 成 す るす べ て の 知 識 ・技 能 に 置 くo. (2)言 語 の 型(Form)よ. り機 能(Function)に. 重 き を 置 き 、 言 語 を 運 用 さ せ る こ と に よ っ て 、Form. を 習 得 さ せ る よ う な 指 導 を 計 画 ・実 践 す る 。 (3)意 思 や 情 報 の 伝 達 に 焦 点 を 当 て 、 正 確 さ(Accuracy)よ. り は 流 暢 さ(Fluency)を. 重 視 す る。. 従 って 、 情 報 の 授 受 と伝 達 能 力 が 学 習 者 の 評 価 基 準 に な る。 (4)授 業 の 中 で は 、 よ り 自 然 で 現 実 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 活 動 、 つ ま り 、 情 報 を 聞 き 取 り(読 り)、 自 分 の 意 思 を(口. 頭 あ る い は 筆 記 で)伝. 49. 達 す る活 動 が 中 心 とな る。 一 津 波(2003:211. み と -212).

(4) 近畿大学英語研究会紀要. (3)現. 第5号. 在 行 な わ れ て い る オ ー ラ ル ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 指 導 に は 単 な る 「お 遊 び 」 と 受 け 取 れ な く もな い もの が 多 くみ られ る か らで あ る 。 ま ず 、 イ ン プ ッ トに 関 す る 配 慮 が ほ と ん ど な さ れ て い な い 場 合 が 多 い 。 ト ピ ッ ク だ け 与 え て 、 「さ あ 、 話 し合 っ て み よ う 」 と い う ふ う な 活 動 の さ せ か た は 少 な くな い 。 あ る い は 配 慮 さ れ て い る に して も極 め て 不 十 分 な 場 合 が 多 い 。 … 楽 し さ を 強 調 す る あ ま り、 楽 し さ だ け に な っ て い る 場 合 も見 受 け られ る 。 楽 し さ に も い ろ い ろ あ って 、 理 解 や 進 歩 を 意 識 で き る 楽 し さ で な い と 、 最 初 の う ち は 喜 ん で い た 生 徒 で も 「飽 き 」 が 来 て し ま う こ と に な りか ね な い 。 一 金 谷(2002:135. ま た 、 英 語 を 含 む ヨ ー ロ ッパ 言 語(以 導 す る 際 に は 、 そ れ らの 類 似/近. -136)(一. 部 省 略 筆 者). 下 、 「ヨ ー ロ ッパ 言 語 」 と して 記 載)を. 学 習 ・指. 接 言 語 を 母 語 と す る 学 習 者 と 日本 語 を 母 語 と す る 外 国 語. 学 習 者 と の 間 に は 決 定 的 な 差 異 が 存 在 す る こ と も忘 れ て は な らな い 。 ま ず 、 ヨ ー ロ ッパ 言 語 は ア ル フ ァベ ッ ト言 語 で あ り、 そ の 記 述 に 関 して も、 ほ と ん ど 同 じ よ う な 文 字 が 用 い られ て い る 点 が 挙 げ られ る 。 確 か に 、 厳 密 に 言 え ば 、 そ れ らの 言 語 間 に も文 字 の 違 い は 存 在 す る 。 例 え ば 、 ス ペ イ ン語 に は 英 語 に は 存 在 し な い ま た ポ ル トガ ル 語 に は. 、 、gな. ど の 文 字 が 、 さ ら に ドイ ツ 語 に もa、Bの. る 。 さ ら に 、 フ ラ ン ス 語 に はaとeの. 文 字 を 合 わ せ たaeの. の文 字 が 、 文字が存在す. 文 字 やoとeの. 文 字 を合 わ せ. た ㏄ な ど の 文 字 が 存 在 す る 。 し か し な が ら、 こ れ ら は 部 分 的 な 相 違 で あ り、 大 局 的 な 見 方 を す れ ば 、 大 き な 違 い は な い こ と は 明 らか で あ る 。 そ の た め 、 日本 語 を 母 語 と す る 多 く の 外 国 語 学 習 者 が 中 学1年. 生 で 英 語 を 初 め て 学 習 す る 時 に 、A、B、C…. の 読 み 書 きの 練. 習 か ら始 め な け れ ば な ら な い の に 対 し、 ヨ ー ロ ッパ 語 圏 の 言 語 を 母 語 と す る 人 々 が 、 類 似 /近. 接 言 語 体 系 の 外 国 語 を 学 ぶ 場 合 に は 、 元 々 同 様 の 文 字 を 使 用 して い る た め 、 そ う い っ. た 練 習 に 多 くの 時 間 を 割 く必 要 は な い の で あ る 。 次 に 、 ヨ ー ロ ッパ 言 語 の 大 多 数 は 、 語 順 の 点 で も よ く似 た 構 造 を 持 っ て い る 。 例 え ば 、 下 記(4a-b)に. 示 さ れ る よ う に、 英 語 文 の 各 々 の 語 句 に 番 号 を 付 け 、 そ れ ら に 意 味 論 的 に 並. 行 す る 各 ス ペ イ ン語 文 の 語 句 に 同 様 の 番 号 を 付 け て 示 せ ば 、. (4)a.[英. 語] MysonisreadingabookthatIbought ①. ②. ③. yesterday. ④. ⑤. ⑥. ⑦. (私 の 息 子 は 、 私 が 昨 日 買 っ た 本 を 読 ん で い る). 50. ⑧.

(5) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅 b.[ス. 森). ペ イ ン 語] compre. Mihijoestleyendounlibroque(yo) ①. ②. ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ノ ayer.. ⑧. (私 の 息 子 は 、 私 が 昨 日 買 っ た 本 を 読 ん で い る). 両 者 の 語 順 が 非 常 に よ く似 て い る こ と が 観 察 さ れ る 。他 方 、下 記(5)に. 本言 吾] 私の. 息 子 は、. 私が. 昨 日. ①. ②. ⑥. ⑧. 買 っ た(と. こ ろ の). ⑦. ⑤. 続 ④. (5)[日. 示 され るよ うに、. 読んで いる 。. ③. 日本 語 は 、 英 語 や ス ペ イ ン語 と は 全 く異 な る 語 順 に な っ て い る こ と が 確 認 さ れ る 。 そ の た め 、 ヨ ー ロ ッパ 語 圏 の 言 語 を 母 語 と す る人 々 が 類 似/近. 接言 語 体 系 の外 国語 を学 ぶ 際 に は、. その 多 くの場 合 、 母 語 の 単 語 と並 行 させ て 、 学 習 言 語 内で そ れ ぞ れ に相 当す る単 語 に置 き 換 え る だ け で ほ ぼ 正 し い 文 を 作 る こ と が で き る よ う に な る の で あ る 。 他 方 、 日本 語 を 母 語 と す る 外 国 語 学 習 者 が 同 じ よ う に(文. 単 位 内 で の)単. に な っ て し ま う こ と が 多 く あ る 。 以 下(6a-b)が. 語 の 置 き換 え だ けを 行 な う と、 非 文. そ の 実 例 で あ る。. (6)a.*MysonIyesterdayboughtthatabookisreading. b.*Mihijo(yo)ayercompr6queunlibroestleyendo.. そ の た め 、 我 々 が ヨ ー ロ ッパ 言 語 を 正 し く運 用 し、 自 由 に 話 した り聞 い た りで き る よ う に す る た め に は 、 統 語 に 関 す る 学 習 ・指 導 は 欠 く こ と の で き な い もの で あ る と 言 え る 。 さ ら に 、 幾 つ か の 英 単 語 に 関 し、 西 英 辞 典 を 使 っ て そ れ ら に 相 当 す る ス ペ イ ン語 の 単 語 を 調 べ た 下 記(7a-d)を. 見 て み よ う。. (7)a.animalnanimalm-ODSD(s.v.anima1)(一. 部 変 更. ・ 下 線 筆 者). 部 変 更. ・ 下 線 筆 者). 部 変 更. ・ 下 線 筆 者). 部 変 更. ・ 下 線 筆 者). b.universityn(pl-ties)universidadf -ODSD(s. .v.university)(一. c.stationln國(a)(Rail)estaci6nf (b)(bus∼)estaci6nforterminalfdeautobuses -ODSD(s. .v.university)(一. d.comprehendvtcomprenderf -ODSD(s. .v.comprehend)(一. 51.

(6) 近畿大学英語研究会紀要. 上 記(7)に. 第5号. 示 さ れ る よ う に 、 ス ペ イ ン語 は 、 語 の 形 と そ の 意 味 が 英 語 と 非 常 に よ く似 た 単. 語 を 有 して い る こ と が 観 察 さ れ る2。 ま た 、 次 の(8)一(9)に. (8)[英. 見 ら れ る よ う に、. 言 吾] library1図. (9)[ス. 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 」(s. 書 館 、 図書 室. .v.library). ペ イ ン語] 一 『現 代 ス ペ イ ン 語 辞 典 』(s. a.libroO本 b.libreriaO本. 屋 、 書 店;書. 籍 販 売 業 一 『現 代 ス ペ イ ン 語 辞 典 』(s. 2ス. .v.libro). .v.1ibreria). ペ イ ン語 だ けに 限 らず 、 英 語 を 含 む ヨー ロ ッパ 言 語 には 、 形 とそ の 意 味 が 非 常 に よ く似 た 語 が 互 い に 存. 在 して い る と言 え る。 そ の 理 由 と して 、 まず 、 そ れ らの 言 語 が 属 す る語 派 や 語 族 が 同 じだ か ら とい う点 が 挙 げ ら れ る 。 例 え ば 、 ポ ル トガ ル 語 、 ス ペ イ ン語 、 フ ラ ン ス 語 、 イ タ リ ア 語 は 全 て 「(俗)ラ テ ン語 」 か ら 派 生 し て お り 、 「イ タ リ ッ ク 語 派 」 と い う 同 じ語 派 に 属 し て い る(cf.風 [1]に. [1]. 間(1998:6-19))。. そ の た あ、 下 表. 示 され る よ う に、 各 々の 語 は 非 常 によ く似 た 形 を して い る。. ラ テ ン語. ポ ル トガ ル 語. スペ イ ン語. イ タ リア 語. フ ラ ンス語. pal. mater(-trem). me. padre. pre. padre. madre. mre. madre 9. manUS. mo. brchium cabllus. mano. maln. brago. brazo. bras. braccio. cavalo. caballo. cheval. cavallO. ●. piscis(-scem). また 、 英 語 は. pez. flor. nUS. mano. o. pelxe. flor(flrem). POlsson. flor. un. pesce. fleur. uno. fiore. un. duo. dois. dos. deux. trs. trs. tres. trOIS. ●. 日本 語. 父 母 手 腕 馬 魚 花. .. pater(-trem). uno. 1. due. 2. tre. 3. 「ゲ ル マ ン 語 派 」 に 属 す る た め 上 述 の イ タ リ ッ ク 語 派 と は 異 な る が 、 さ ら に 時 代 を 遡 れ ば 、. 「イ ン ド ・ ヨ ー ロ ッパ 語 族 」 と い う 同 じ語 族 に 属 し て い る(cf.風. 間(1998:6-19))。. 例 え ば 、 下 記[2]に. 見. られ る よ う に、 [2]fathern.1.((OE))父. 2.((OE))祖. 父 、 先 祖.. ◆OEfreder<Gmc.物. δ∂r(Du.Vader/GVater/ONfa∂ir/Goth.fadar(通. IE*pater-father(LL幽/Gk.pα Sktpitdr-/Toch.A.(方 英 語fatherは 、 ラ テ ン 語paterと の イ ン ド ・ヨ ー ロ ッパ 祖 語*pater一 れ る よ う に 、p→fに. 言)画oαr).一. 『英 語 語 源 辞 典 』(s.v.father,n.)(下. [3]ノ. 線 筆 者). 同 様 、 「父 」 を 意 味 す る イ ン ド ・ ヨ ー ロ ッパ 祖 語*p∂ter一 に 由 来 す る。 こ が 一 方 で は ラ テ ン語paterと な り、 ま た 他 方 で は 、 グ リ ム の 法 則 に 見 ら. 、 ま たt→thに. な る(cf.『. 言 語 学 大 事 典 」(第6巻. (ほ う そ く))、 寺 澤(2008:30-31))こ と でfatherと な っ た ので あ る。 さ ら に 、 英 語 と イ タ リ ッ ク 語 派 と の 間 に 見 ら れ る 類 似 性 に は 、1066年 係 し て い る 。 こ の 時 、 以 下[3]に. 例 はatta)). 卿/OIr.athir(lr.&Gael.athair)Arm.hayr/. 述 語 編)(s.v.グ のNormanConquestが. リム の法 則 大 き く関. 示 され るよ う に、. ル マ ン人 の 征 服 以 前 に 英 語 に 入 っ て き た フ ラ ン ス 語 はcastle「 城 」、pride「 誇 り」、tower「 塔」 な ど 数 語 に す ぎ な か っ た が 、13世 紀 初 め か ら徐 々 に 増 加 し、1350-1400年 に 頂 点 に達 した。 中 英 語 期 だ け で じ つ に1万. 語 も の 借 入 語 が 英 語 に 入 っ て き 、 し か も そ の う ち7500語. が 今 日の 語 彙 に 残 って. い る。 一 中 尾(1989:59)(下 線 筆 者) 多 くの フ ラ ンス 語 の 語 彙 が 英 語 の 中 に取 り込 まれ 、 現 在 に至 るま で そ の 割 合 は か な りの 数 を 占め て い る と言 え る。 そ の た め 、 フ ラ ンス 語 と語 派 を 同 じ くす るイ タ リッ ク語 派 に 属 す る各 言 語 と英 語 との 問 に は 、 フ ラ ン ス語 語 彙 を 介 す る よ うに して 、 語 の 形 とそ の 意 味 との 類 似 性 が 顕 著 に観 察 され るの で あ る。. 52.

(7) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. 森). 日本 語 訳 は多 少 異 な る場 合 で も、 意 味 の 上 で 何 らか の 共 通 点 を有 して い る単 語 は多 数 存 在 す る 。 例 え ば 、 上 記(8)一(9)の. 英 語1ibraryと. ス ペ イ ン 語libro、libreriaと. の 間 に は、. 全 て 「本 」 に 関 係 す る 語 で あ る と い う共 通 点 が 存 在 して い る3。 そ の た め 、 ヨ ー ロ ッパ 語. 圏 の 言 語 を母 語 とす る人 々が 類 似 言 語 体 系 の 外 国 語 を学 ぶ 場 合 に は、 初 めて 目 にす る単 語 で あ っ て も、 そ の 単 語 の 意 味 を 容 易 に 推 測 す る こ と が 可 能 に な る と 考 え られ る 。 そ れ に 対. し、 日本 語 を母 語 とす る外 国 語 学 習 者 は、 母 語 を頼 りに して 日本 語 訳 か ら推 測 す る こ とが で き な い 。 そ れ 故 、 語 の 意 味 や 用 法 に 関 す る 学 習 ・指 導 も欠 く こ と が で き な い もの で あ る と言 え る。. こ の よ うに、 英 語 を含 む ヨー ロ ッパ 言 語 を母 語 とす る学 習 者 と 日本 語 を母 語 とす る外 国 語 学 習 者 と の 間 に は 決 定 的 な 差 異 が 存 在 す る に も拘 らず 、 下 記(10a-b)の. よ うな理 由 で 、. 外 国 語 を 用 い た 名 ば か り の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の み を 重 視 し、 「文 法 」 や 「語 彙 」 の 習 得. を蔑 ろ にす る学 習 ・指 導 法 に は疑 問 を持 た ざ るを 得 な い。. (10)a.ヨ. ー ロ ッパ 言 語 を 母 語 と す る 学 習 者 は あ ま り文 法 の 学 習 ・指 導 に 時 間 を 割 い て い な い の だ か ら、 日本 で も文 法 の 学 習 ・指 導 に は あ ま り時 間 を 割 く必 要 は な い。. b.ヨ. 3以. 下[1]の. ー ロ ッパ 言 語 を 母 語 と す る 学 習 者 は 会 話 を 中 心 と した 練 習 を して い る の だ. 語 源 辞 典 の 記 載 か ら も 明 ら か な よ う に 、 英 語libraryは(古)フ. 入 語 で あ り 、 さ ら に 時 代 を 遡 れ ば 、 ラ テ ン 語librriaに [1]◆MElivrarie口(0)Flibrairie〈VL*1'傭rノ store/Port.livraria)=L1∫. ラ ン ス 語librairieか. α(m)(lt.librerialibrary,bookshop/Sp.livreriabook一 わ而rノαbookseller'sshopLlibrariuspertainingtobooks.libr-. liberbook,(原 義)theinnerbarkofatreeusedasawritingmaterial<*luber?IEleUp-, *leub(h? -topeeloff(⇒LEAF) .『 英 語 語 源 辞 典 」(s.v.library)(下 ま た 、 ス ペ イ ン 語libreraも. 、 次 の[2]に. [2]librriaθ(名f)本. らの 借. 由来 す る。. 見 ら れ る よ う に 、 ラ テ ン 語librriaに. 線 筆 者). 由来 す る。. 屋、書籍店. it.fr.sp.po.ru.rh. libreria(f)librairie(f)librera(f)livraria(f)librrie(f)libreria(f) 一 片 岡(1982:235)(一 こ の よ う に 、 両 者 は い ず れ も ラ テ ン 語librriaと braryは. 「図 書 館 」、 ス ペ イ ン 語libreraは. 部 変 更 ・下 線 筆 者). い う 同 一 の 語 に 由 来 す る に も拘 らず 、 現 在 で は 、 英 語li「本 屋 」 と い う異 な る 意 で 用 い ら れ て い る 。 こ う し た 意 味 の 違. い に 関 し て は 、 「メ トニ ミー 」 の 観 点 と 「民 族 文 化 と 人 間 文 化 」 の 観 点 か ら 説 明 す る こ と が で き る 。 ま ず 、 英 語library及. び ス ペ イ ン語libreraは. 、 上 記[1]に. 示 さ れ る よ う に 、 「本 」 を 意 味 す る こ と が 確. 認 され る。 ま た 、 英 語libraryの 接 尾 辞 一ary及 び ス ペ イ ン語libreraの 接 尾 辞 一eraに 相 当 す る ラ テ ン語 の 接 尾 語 一riaは 、 次 の[3]に 示 さ れ る よ う に 、 「...に 関 係 す る 場 所 」 の 意 の 名 詞 を 造 る 。 [3]2「_に 関 係 す る 人[も の 、 場 所]」 な ど の 意 の 名 詞 を 造 る 。 ◆ME-ari(e),-ary□OF-arie//L-drius(masc.adj,suf.),-aria(fem.),-arium(neut.)pertaining. to,connectedwith.一 す な わ ち 、 英 語library及. 「英 語 語 源 辞 典 』(s.v.-ary,suf.)(下. び ス ペ イ ン語libreraは. 、 本 来 下 記[4]を. 線 筆 者). 意 味 し て い た 語 だ と考 え ら れ る 。. [4]本 〔libr-〕 に 関 係 す る 場 所 〔-ary〕 そ し て 、 「図 書 ・記 録 そ の 他 の 資 料 や 情 報 を 集 あ て 整 理 ・保 管 し、 広 く一 般 に 利 用 に 供 す る 」(cf。 『明 鏡 国 語 辞 典 」(s.v.と し ょ 一か ん (cf。『明 鏡 国 語 辞 典 」(s.v.ほ. 【図 書 館 】))点 が 焦 点 化 さ れ た も の が 英 語libraryで あ り、 他 方 、 「本 を 売 る 」 ん や 【本 屋 】))点 が 焦 点 化 さ れ た も の が ス ペ イ ン語libreraで あ る。. ま た 、 この 時 、 どの よ うな 点 が 焦 点 化 され るか は 文 化 の 違 い に よ って 異 な る。. 53.

(8) 近畿大学英語研究会紀要. 第5号. か ら、 日本 で も そ ち らの 学 習 ・指 導 に よ り多 くの 時 間 を 当 て る べ き で あ る 。. さ ら に 、 日本 の 外 国 語 教 育 の 現 状 を 鑑 み る と、 「ど の よ う な 既 製 の 教 材 を 授 業 内 で 使 う と 効 果 的 な 学 習 ・指 導 が 行 な え る か 」、 ま た は 「一 コ マ の 授 業 内 の 時 間 配 分 は ど う す れ ば 効 果 的 な 学 習 ・指 導 が 行 な え る の か に つ い て 、 そ の 時 間 配 分 例 を 挙 げ る 」 と い っ た`how toteach'の. 点 ば か りが 優 先 さ れ て い る 。. し か し な が ら、 こ の よ う な`howtoteach'中 一 時 的 に は 引 く こ と が で き る もの の 例 え ば 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. (11)1[強. 心 の 学 習 ・指 導 法 で は 、 学 習 者 の 興 味 を. 、 根 本 的 な 理 解 に は 決 して な り得 な い と 考 え られ る 。. 通 常 以 下(11)に. 勢 を 置 い て 強 調 用 法 と して]自. 2[再. 帰 用 法 と し て]自 のoneに. 示 され る よ う に、. 分 自身 、 み ず か ら. 分 自 身 を[に]、. み ず か ら を(((米))himself)《. ◆ 主語. 呼 応 し、 他 動 詞 の 目 的 語 ま た は 前 置 詞 の 目 的 語 と な る》 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s .v.oneself,pron.)(下. 線 筆 者). 「自 分 自 身 、 み ず か ら」 と い っ た 意 味 で 用 い られ る と 学 習 ・指 導 さ れ る こ と が 多 い 。 確 か に 、 次 例(12a-c)に. 見 ら れ るoneself(以. 下 で は 全 てmyself)は. い ず れ も 「自 分 自 身 」(以. 下 で は 全 て 「私 自 身 」)と 解 釈 す る こ と が 可 能 で あ る 。. (12)a.IwenttoMadridmyself. (私 は 私 自 身 マ ド リ ッ ド に 行 っ た の で す) b.Ilookedatmyselfinthemirror. (私 は 鏡 で 私 自 身 を 見 た) c.Ihurtmγself (私 は 私 自 身 を 怪 我 さ せ た →. しか し な が ら、 次 の(13)の. (13)besideoneself〔...で. 私 は 怪 我 し た). 記 載 が 示 す よ う に、. 〕 我 を 忘 れ て 、 逆 上 して 、 気 が 狂 っ て. 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s. besideoneselfと. 〔with〕. .v.【 成 句 】besideoneself)(下. い う 連 語 表 現 を 学 習 ・指 導 す る に 当 た っ て は 、 「besideoneself=我. 線 筆 者). を忘. れ て 」 と い う 機 械 的 な 日本 語 訳 の 「丸 暗 記 」 に よ る 学 習 ・指 導 が 行 な わ れ て お り、 そ こ に は 既 に 学 習 ・指 導 した 「oneselfは. 「自分 自身 、 み ず か ら」 を 意 味 す る 」 と い う 内 容 は 全. 54.

(9) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. 森). く生 か さ れ て い な い 。 ま た 、 こ の よ う な 日本 語 訳 の 機 械 的 な 丸 暗 記 に 頼 らな け れ ば な らな い 表 現 が 数 え る 程 度 しか な け れ ば よ い が 、 そ の 数 が 増 え る に した が って 記 憶 の 負 担 は 一 層 大 き くな る 。 負 担 が 大 き くな れ ば そ れ が 苦 痛 と な り、 学 習 に 対 す る 意 欲 さ え も削 が れ か ね な い 。 こ う な る と 、 日本 語 訳 ば か り を 重 視 して 、 音 楽 や 英 語 な ど の 学 習 ・指 導 教 材 を 使 っ た と こ ろ で 、 そ の 根 本 的 な 原 因 を 取 り除 か ね ば 、 学 習 者 の 興 味 ・関 心 を 取 り戻 す こ と は も は や 不 可 能 で あ ろ う。 さ ら に 、 教 え る 側 で あ る 語 学 教 員 に 関 して も、 学 生 か ら次 の(14)の. よ うな 質 問 を受 けた. 場合、. (14)「. 真 横 」 を 意 味 す るbesideと oneselfと. す る と、 何 故. 「自 分 自 身 」 を 意 味 す るoneselfを. 合 わ せ てbeside. 「我 を 忘 れ て 、 逆 上 し て 、 気 が 狂 っ て 」 と い う意 味 に な. る の で す か?. ` whattoteach'で. は な く`howtoteach'を. 優 先 して い る現 状 で は そ の 質 問 に 的 確 な 解 答. を 与 え る こ と は で き な い た め 、 筆 者 の 経 験 上 、 「そ う覚 え る し か な い ん だ!」. とい う一 点. 張 り の 回 答 を す る しか で き な い こ と に な る 。 こ う した 対 応 を 繰 り返 す と 、 英 語 に 対 す る 学 習 者 の 興 味 ・関 心 を 削 ぐ だ け で な く、 教 壇 に 立 つ 者 と して の 資 質 さ え 問 わ れ か ね な い 。 こ れ で は 、 「フ ァ カ ル テ ィ ・デ ィ ベ ロ プ メ ン ト([英 DesarrollodeFacultad)」(以. 下FD)の. 語]FacultyDevelopment/[西. 語]. 最 重 要 懸 案 の 一 つ で あ る 「教 員 の さ ら な る 資 質. の 向 上 」 が 具 現 化 さ れ る 十 分 条 件 に は 至 る べ く も な い4。 も う少 し平 た く言 う と 、`howto teach'を teach'も. 「容 器 」 とす る な ら ば 、 そ の 「内 容 物 」 は 「言 語 」 で あ る の だ か ら、`whatto ま た 、 そ の 必 要 条 件 と して さ ら に 問 わ れ る べ き な の で あ る 。. Pedagogy(教. 育 学)と. や 自 立 し た 個 人(理. は 「子 育 て 学 」 で あ る。 つ ま り 、 「目 的 の 先 に 在 る 理 想 の 人 間. 想 の 人 間 像)を. 育 て る に は 「何 を 」 ど う教 え た ら よ い の か?」. と研 究. す る 学 問 で あ る 。 数 多 く の 教 育 者 の 涙 ぐ ま し い 努 力 に は 頭 が 下 が る 思 い で あ る 。 しか しな が ら、 昨 今 の 日 本 の 教 育 に お い て は 「何 を 」 と い う 内 容 で は な く、 「ど う教 え た ら よ い の. 4こ. のFDと. は 「大 学 教 員 の 教 育 能 力 を 高 め るた め の実 践 的 方 法 」 の こ とで 、 大 学 の 授 業 改 革 の た め の 組. 織 的 な取 り組 み 方 法 の 中 で も大 きな 位 置 を 占め て お り、 近 年 で はFDに 関 す る研 修 も定 期 的 に開 催 さ れ て い る。 こ の よ うに、FDに 対 す る関 心 が 高 ま って い る一 方 で 、 以 下[1a-e]に 見 られ る よ うな課 題 も指摘 され て い る。 [1]a.研 究 の ア クテ ィ ビテ ィで 授 業 力 が きま る 教 師 の 自信 と熱 意 が 授 業 力 の 源 泉 で あ る。 魅 力 あ る授 業 、 わ か りや す い 授 業 は 自 らの 専 門 を 極 あ る事 に よ って 実 現 す る。 b.創 意 工 夫 が あ る ほ ど授 業 の 満 足 度 が 高 い 教 科 書 頼 りの 授 業 は い ま まで 受 けて きた 初 等 中 等 教 育 で 学 生 が ウ ンザ リ して い る。 教 師 が 自 ら作 成 した オ リジナ ル な 教 材 を 授 業 に 活 用 す るた め の 日 ご ろか らの 研 鐙 が 求 め られ る。 c.教 科 ご との 産 業 界 で 役 立 つ 人 材 像 が あ るか 何 の た め に学 ぶ か の 動 機 づ けが 大 切 で あ る。 教 師 は 学 外 の 研 究 会 、 企 業 との 共 同 研 究 な どを/. 55.

(10) 近畿大学英語研究会紀要. 第5号. か?」 ばか りが 先 行 し、 教 育 学 の 根 本 理 念 を欠 いて い る もの が 目立 って い る よ う に思 え て な らな い。Pedagogyの. 存 在 意 義 とは 「 教 育 そ の もの とは 何 か」 とい う普 遍 的 概 念 を 見 つ. め、(法 学 で あ ろ う と数 学 で あ ろ うと)如 何 な る分 野 に も効 果 的 に還 元 し得 る帰納 的 メ カ ニ ズ ム を明 らか にす る こ と に あ った はず で あ り、 欧 州 諸 国 の ア カ デ ミズ ムで はそ れ が 共 通 の認 識 で あ る。 それ に も拘 わ らず 、 その 学 問 的 実 体 か ら外 れ 、 英 語 を特 別 視 し、 授 業 運 営 と学 習 者 の反 応 に過 度 に重 点 を置 くその 逆 方 向の ベ ク トル に こそ 、 日本 の 大 学 語 学 教 育 が 多 くの諸 問題 を 孕 ま ざ る を得 な い主 た る原 因 が 隠 され て い る よ うに感 じ られ て な らな い。 我 々が 下 りるの で は な い、 学 習 者 を 引 き上 げ るべ きな の だ 。 机 の 並 べ 方 か ら始 ま る 「ク ラ ス単 位 の 運 営 外 郭 」 の メ ソ ッ ド論 の 形 成 に帰 属 す る 日本 の 英 語 教 育 学 の人 々 は(そ の 習 得 を希 望 す る小 中高 の 教 員 育 成 を 目指 して)教 育 大 学 ・教 育 学 部 に、 そ の 「中身 」 と も言 う べ き外 国 語 その もの の メ カニ ズ ムを 解 明 して 学 習 者 に演 繹 を 図 る言 語 学 者 は外 国 語 大 学 ・ 外 国語 学 部 に、 と い う棲 み 分 け が、 今 後 の 日本 に お け る語 学FDを. 展 開 す る前 提 と して. の急 務 とな ろ う。 「英 語 を母 語 と しな い人 た ちが大 学 で 英 語 を教 え る資 格 」 を旗 印 に外 国 人 の 人 材 を育 て 上 げて そ れ ぞ れ の 母 国 へ 送 り出 し、 外 国 人 に対 して 自国 の 学 問 業 界 の パ イ を守 る よ うな国 策 と も言 うべ き商 業 主 義 を採 る大 国 の 後 を盲 目的 に追 随 す る こ とだ け は避 け な けれ ば な らな い。 海 洋 立 国 と して の 立 場 もあ ろ うが 、 学 習 者 に と って 真 に 自 由で 自立 的 な空 間 を築 き上 げ る国 益 の た め に は真 正 面 か ら向 き合 わ な けれ ばな らな い問 題 で あ る。 今 こ こで、 も う一・ 度 見 つ め直 す べ くは 「個 」 で あ る。 「個 の 時 代」 が 強 調 され て 久 しい 今 日、 我 が 国 で は、 オ リジ ナル ・テ キ ス トの 作 成 や オ フ ィ ス ・ア ワー の活 用 な ど個 の 活 動 が 大 学 教 育 で 盛 ん に求 め られ て い る。 しか しなが ら、 そ の 反 面 、 語 学 教 員 と して 「個 」 が 如 何 にあ るべ きか 、 とい う研 究 ・教 育 姿勢 に つ い て は必 ず しも重 視 され て いな い。 そ こで 、 本 論 文 で は、 大 学 教 育 に お け る語 学 教 員 と して 各 自の 研 究 が 教 育 に反 映 され るべ き姿 勢 の 在 り方 を、 ま さ に 「 個 」 を表 す表 現 で あ る英 語 再 帰代 名 詞oneselfお. よ びス ペ イ ン語 再 帰. 代 名 詞si/seを 通 じて 提 議 す る。. 2.先. 行 研 究 とそ の 問 題 点. 2.1.主. 語 の 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 す るoneself. 従 来 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. \. d.ど. 、 以 下(1)の. 辞 書 の 記 述 に 見 られ る よ う に 、. 通 じて 社 会 の ニ ー ズ の 変 化 を 知 る こ とが 必 要 で あ る。 ん な 変 化 を お こ した か. 新 しい こ とで イ ニ シア テ ィ ブを と る教 師 の 姿 勢 が 学 生 の 心 を 動 か す 。 教 師 は 孤 立 を 怖 れ ず 勇 気 を も って 新 た な 試 み を す べ きで あ る。 e.卒 業 生 に と って 心 の よ り ど こ ろ にな って い るか 卒 業 生 か ら どれ だ け相 談 を 受 けた か 、 これ に 対 して 適 切 な 支 援 が で き た か 。 これ も大 学 の レ ベ ル と教 師 の 力 量 の バ ロ メー ター で あ る。 一 中 村(2004:46)(一 ・ 部 変 更 筆 者). 56.

(11) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. (1)1[強. 勢 を 置 い て 強 調 用 法 と して]自 2[再. 帰 用 法 と し て]自 のoneに. 森). 分 自身 、 み ず か ら. 分 自 身 を[に]、. み ず か ら を(《 米 》himself)《. ◆ 主語. 呼 応 し、 他 動 詞 の 目 的 語 ま た は 前 置 詞 の 目 的 語 と な る》 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s .v.oneself,pron.)(下. 線 筆 者). 「自 分 自 身 、 み ず か ら」 と い っ た 意 味 で 用 い られ る と 学 習 ・指 導 さ れ る こ と が 通 常 で あ る 。 確 か に 、 次 例(2a-c)に で は 全 て1)の. 見 られ るoneself(以. 下 で は 全 てmyself)は. 、 い ず れ も 主 語(以. 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 し て お り、 「自 分 自 身 」(以 下 で は 全 て. 下. 「私 自身 」). と解 釈 す る こ とが 可 能 で あ る。. (2)a.IwenttoMadridmyself. (私 は 私 自 身 パ リ へ 行 っ た の で す) b.Ilookedatmyselfinthemirror. (私 は 鏡 で 私 自 身 を 見 た) c.Ihurtmyself (私 は 私 自 身 を 怪 我 さ せ た →. 私 は 怪 我 し た). し か し な が ら、 こ こ で 一 つ 問 題 が 生 じ る。 従 来 の 意 味 論 の 考 え 方 の 一 つ と して 、 次 の (3)に. 示 され る. 「構 成 性 の 原 理([英. principiodecomposicionalidad)」. (3)従. 語]principleofcompositionality/[ス. ペ イ ン 語]. が 挙 げ られ る 。. 来 、 意 味 論 の 世 界 に は 、 構 成 性 の 原 理(PrincipleofCompositionality)と 呼 ば れ る 考 え 方 が あ る 。 こ れ は 部 分 の 意 味 の 総 和 が 全 体 の 意 味 で あ る と い う考 え 方 で 、 個 々 の 単 語 の 意 味 を 足 し あ わ せ て い く こ と で 、 ボ トム ア ッ プ 式 、 い わ ば 「積 み 木 式 」 に 、 全 体 の 句 や 文 の 意 味 が 得 ら れ る と す る も の で あ る 。 例 え ばfe一 maledancerと. い う と 、 〈female>+〈dancer>の. よ う に 、 「女 性 」 と 「踊 り手 」、. そ れ ぞ れ の 意 味 を 知 っ て い れ ば 、 句 全 体 の 意 味 「女 性 の 踊 り手 」 も得 られ る 、 と 言 う考 え 方 で あ る。. 一 河 上(編)(1996:3)(下. こ の 考 え に 基 づ け ば 、 連 語 表 現besideoneselfの. (4)自. 分 自身 の. 〔oneself〕. に も拘 らず 、 実 際 に は 次 の(5)に. 真 横 に. 〔beside〕. 意 は 以 下(4)に. い る。. 示 され る よ う に、. 57. 線 筆 者). し か な り得 な い 。.

(12) 近畿大学英語研究会紀要. (5)besideoneself〔...で. 第5号. 〕 我 を 忘 れ て 、 逆 上 して 、 気 が 狂 っ て. 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s. 連 語 表 現besideoneselfは. 、通常. 〔with〕. .v.【 成 句 】besideoneself)(下. 線 筆 者). 「我 を 忘 れ て 」 の 意 と し て 用 い ら れ て い る の で あ る。. そ の た め 、 こ の 「我 を 忘 れ る」 の 意 とoneselfが. 持 つ 「自分 自 身 、 み ず か ら」 の 意 と の つ. なが りは如 何 な る ものか 、 と い う疑 問 が 生 じるの で あ る。 こ の 点 に 関 し、 下 記(6)に. 示 さ れ る 、 ゲ シ ュ タ ル ト(Gestalt)知. 覚 の 観 点 か ら説 明 を. 与 え る こ と が で き る と 考 え る 人 も い る か も しれ な い 。. (6)個. 体 を 超 え た 全 体 性 と い う もの は、 固 体 を 綜 合 す る こ と で 得 られ る も の で は な く、. む しろ逆 に、 知 覚 に お いて は全 体 こ そ部 分 の 前 提 と な る もの だ と考 え られ る(こ れ を 「部 分 の 全 体 規 定 性 の 問 題 」 と い う)。 要 素 は 、 全 体 に 全 体 に 埋 め 込 ま れ た 以 上 、 単 な る 要 素 で は な く、 ゲ シ ュ タ ル トを 構 成 す る 全 体 の 中 の 部 分 と して 有 機 的 に 機 能 す る も の で あ り、 ま た そ の よ う に 認 知 さ れ る 。 一 河 上(編)(1996:3)(下. つ ま り、 こ の ゲ シ ュ タ ル ト知 覚 の 観 点 に 基 づ け ば 、 連 語 表 現besideoneselfは. 線 筆 者). 、 それ全. 体 で 「我 を 忘 れ て 」 と い う 意 を 表 す の で あ り、 所 謂 イ デ ィオ ム と言 わ れ て い る`kickthe bucket'(く. た ば る)と. 同様 、 部 分 の総 和 が 全 体 の意 味 にな らな い典 型 的 な例 の一 つ で あ. る と言 え る 。 しか し な が ら、 こ の よ う に 説 明 し た と して も、 上 述 の 疑 問 が 解 消 さ れ た と は 決 して 言 え な い 。 な ぜ な ら、 確 か に 部 分 の 総 和 か ら全 体 の 意 が 容 易 に 類 推 で き な い と して も、 そ こ に は 全 体 の 意 が 生 じ得 る だ け の 何 ら か の メ カ ニ ズ ム が 存 在 して い る と考 え られ る か ら で あ る 。 も し、 い か な る 語 句 の 結 合 を も許 す の で あ れ ば 、 以 下(7)に. 見 られ る よ う に 、. (7)beside,alongside,abreast,abeam,by,ontheflankof,alongby,bytheside of,alongthesideof-RIT(s.v.218slDE,PREPS11)(下. し ば し ばbesideの. 類 義 語 と さ れ るbyを. 線 筆 者). 用 い たbyoneselfと. い う表 現 が 「我 を 忘 れ て 」. の 意 で あ っ た と して も何 ら不 思 議 で は な い 。 しか しな が ら、 実 際 に は 、 次 の(8)に る よ う に 、 そ こ に はbesideoneselfが. 表 す よ う な 「我 を 忘 れ て 」 と い う意 が 生 じ得 る こ. と は な い。. (8)1ひ. 示 され. と り ぼ っ ち で(alone). 58.

(13) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅 2独. 力 で(withouthelp)、. 3ひ. と りで に. 森). ひ と り で(cf.forONESELF) 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 」(s.v.【. 成 句 】byoneself). つ ま り、 連 語 表 現 と 日本 語 訳 と が 一・ 見 結 び つ き 難 そ う な もの で あ っ て も、 そ こ に は 連 語 表 現 を 構 成 す る各 々 の 語 句 が 選 択 さ れ る べ き必 然 性 が 存 在 す る の で あ っ て 、 何 の 脈 絡 も無 く、 単 に 部 分 を 足 し た 総 和 以 上 の 意 味 が 付 加 さ れ て い る と い う 考 え 方 は 改 め ね ば な らな い 。 そ の た め 、 「自 分 自 身 の. 〔oneself〕 真 横 に. 〔beside〕 い る 」 と い う 文 字 通 り の 意 と 「我. を 忘 れ て 」 と い う 連 語 表 現 と して の 意 と の 間 に 存 在 す る 意 味 の 隔 た り を 埋 め る た め に は 、 ど の よ う な 説 明 を す れ ば よ い の か 、 と い う 疑 問 は 、 依 然 と して 存 在 す る こ と に な る 。 さ ら に 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. 、 以 下(9)に. 示 さ れ る よ う に、 主 語 の 指 示 物 と 目 的 語 の. 指 示 物 とが 同 一 の 場 合 に 用 い られ る もの と さ れ て き た 。. (9)Acommonuseofreflexivepronounsistotalkaboutactionswherethesubject andobjectarethesameperson. (再 帰 代 名 詞 の 通 常 の 用 法 は 主 語 と 目 的 語 が 同 じ 人 物 で あ る 行 為 に つ い て 話 す こ と で あ る) ∫cutmyselfsha「. レingthismorning.(NOTfLom-me...). (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た →. 私 は今 朝. 、 髭 剃 り 中 に 切 り 傷 を 作 っ た). Megotoutofthewateranddriedo〃rselyes.(NOT...driedLns.) (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た →. タ 1"mgoingto伽8加. 私 た ち は水 か ら出て. 、 体 を 乾 か し た). ρ3togetmyselfsometennisshoes.. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う と い う 目 的 で 店 に 行 っ て い る →. 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(下. こ の 考 え に 基 づ く と、 下 例(10)のmyselfの. 線 ・ 日 本 語 訳 筆 者). 指 示 物 と主 語 で あ る1の. 指 示 物 とは 同 一 物 で. あ る はず で あ る。. (10)Iwasbesidemyselfwithanger. 怒 り に 逆 上 した. しか しな が ら、 上 例(10)を. 一 『英 語 活 用 大 辞 典 』(s.v.1anger,【. 文 字 通 り に 捉 え た 下 記(11)の. 59. 前 置 詞+】)(下. よ うな 事 象 は 、1の. 線 筆 者). 指示物が複数.

(14) 近畿大学英語研究会紀要. 第5号. 人 存 在 し得 な い こ と か ら、 決 して 起 こ り得 な い こ と だ と 言 え る 。. (11)「. 私 」 は 怒 り を 伴 っ た 「私 自 身 」 の 真 横 に 位 置 した 。. こ の こ と は 、 上 記(10)の. 場 合 、myselfの. 指 示 物 と主 語 で あ る1の. 物 と は な り得 な い こ と を 意 味 す る 。 つ ま り、 上 記(10)に. 指 示 物 と は 全 くの 同 一・. お い て は 、 上 出(9)の. よ うな 指 示. 関 係 は 成 立 しな い の で あ る 。. 2.2.「 本 来 の 自 分 」 と して のoneself 従 来 のoneselfの. 指 示 関 係 で は 、 既 に §2.1.(9)(以. 下 に(1)と. して 再 掲 載)で. 見た よ. う に 、 主 語 の 指 示 物 と 目的 語 の 指 示 物 と が 同 一 の 場 合 に 用 い られ る も の と さ れ て き た 。. (1)Acommonuseofreflexivepronounsistotalkaboutactionswherethesubject andobjectarethesameperson. (再 帰 代 名 詞 の 通 常 の 用 法 は 主 語 と 目 的 語 が 同 じ 人 物 で あ る 行 為 に つ い て 話 す こ と で あ る) ∫cutmyselfsha「. レingthismorning.(NOTfLom-me...). (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た →. 私 は今 朝. 、 髭 剃 り 中 に 切 り 傷 を 作 っ た). Megotoutofthewateranddriedo〃rselyes.(NOT...繍.) (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た →. タ 1"mgoingto伽8加. 私 た ち は水 か ら出て. 、 体 を 乾 か し た). ρ3togetmyselfsometennisshoes.. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う と い う 目 的 で 店 に 行 っ て い る →. 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(下. 確 か に 、 上 記(1)に. 線 ・ 日 本 語 訳 筆 者). 見 られ る 例 に お い て は 、 全 て 主 語 の 指 示 物 と 目 的 語 の 指 示 物 と が 同 一. で あ る よ う に 感 じ られ る 。 し か し な が ら、 既 に §2.1.(10)(以. 下 に(2)と. し て 再 掲 載)で. 見 た よ うに、. (2)Iwasbesidemyselfwithanger. 怒 り に 逆 上 した. 一 『英 語 活 用 大 辞 典 』(s.v.1anger,【. 60. 前 置 詞+】)(下. 線 筆 者).

(15) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. 森). 現 実 世 界 の 物 理 的 物 体 と して 論 理 的 に 考 え れ ば 、 「「私 」 が 「私 自 身 」 の 真 横 に 位 置 す る 」 と い う こ と は 有 り得 な い 。 そ の た め 、 上 記(2)の. 場 合 、myselfの. 指 示 物 と 主 語 で あ る1. の 指 示 物 と は 全 くの 同 一 物 と は な り得 な い の で あ る 。 ま た 、 こ う し た 問 題 は 、 以 下(3a-b)に. 示 さ れ る よ う なoneselfを. 用 いたその他の連語表. 現 に お いて も同様 に 当て は ま る。. (3)a.be[feel](like)∼. 〈人 が 〉 精 神 的[肉. 体 的]に. 本 来 の調 子 で あ る。. 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s b.beoutof∼. 我 を 忘 れ る。. .v.oneself,pron.). 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s.v.oneself,pron.). そ こ で 、 こ の よ う な 問 題 点 を 解 決 す べ く、 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』 で は 、 次 の(4)の よ うな意 味 が 記 載 され て い る。. (4)3本. 来 の 自分. こ の よ う に 、oneselfを 物 は. 一 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s.v.oneself,pron.)(下. 線 筆 者). 「本 来 の 自 分 」 と 解 釈 す れ ば 、 他 方 、 主 語 に 現 れ る 名 詞 句 の 指 示. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 と 捉 え る こ と が で き る 。 と す る と 、 上 記 に 見 た 連 語 表 現. besideoneself、be[feel](like)oneself、beoutofoneselfは. 、 そ れ ぞ れ 下 記(5a-c)の. よ うに捉 え る こ とが 可 能 とな る。. (5)a.besideoneselfの. 捉 え 方:. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が. 「本 来 の 自 分. 〔oneself〕 」 の 真 横. 〔beside〕. に. 存 在 す る。 b.be[feel](1ike)oneselfの. 捉 え 方:. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が す る. 〔be〕[感. c.beoutofoneselfの. じる. 〔oneself〕 」 の よ う に. 捉 え 方: 「本 来 の 自 分. 〔oneself〕 」 の 外 に. 〔outof〕. 存. 〔be〕。. し か し な が ら、 こ こ で 新 た な 問 題 が 生 じ る 。 も し、oneselfを. 「本 来 の 自分 」、 主 語 に 現. れ る 名 詞 句 の 指 示 物 を 「本 来 の 姿 で は な い 自分 」 と す る な ら ば 、 上 出(1)(以 と して 一 部 抜 粋)で. 〔1ike〕 存 在. 〔fee1〕]。. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 在 す る. 「本 来 の 自 分. 下 に(6a-c). 見 た 例 文 に お い て も、 こ う した 考 え 方 が 当 て は ま る は ず で あ る。. 61.

(16) 近畿大学英語研究会紀要. 第5号. (6)a.lcutmysetfshavingthism・rning.(NOT・imt-me_) (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た →. 私 は 今 朝 、 髭 剃 り 中 に 切 り 傷 を 作 っ た). b.Megotoutofthe・wateranddriedoursetyes.(NOT...tinied-ttS.) (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た → C.∫. ヲ. 〃290加9'OtheshOPS'09(∼'〃zyself、. 私 た ち は水 か ら出て. 、 体 を 乾 か し た). ∫ometenni、 ∫、shoe、 ∫.. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う と い う 目 的 で 店 に 行 っ て い る →. 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(下. し か しな が ら、 こ れ ら の 例 に お い て は 、 各 々 下 記(6'a-c)に. 線 ・ 日 本 語 訳 筆 者). 見 られ る よ うに 奇 妙 な解 釈 に. な って し ま う 。. (6')a.「. 本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 今 朝 、 「本 来 の 自 分 」 の 髭 を 剃 っ た 。. b.「 本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 水 の 外 に 出 て 、 「本 来 の 自 分 」 を 乾 か し た 。 c.「 本 来 の 姿 で は な い 自分 」 が. 「本 来 の 自 分 」 に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に. 店 に行 って い る。. そ の た め 、 上 記(6a-c)に. お け るoneselfは. 、 主 語 の 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 す る も の と して. 捉 え な け れ ば な らな い 、 とす る §2.1.(1)の に 基 づ け ば 、 場 合 に よ って2種 し か し な が ら 、 次 の(7)に 場 か ら 鑑 み れ ば 、oneselfと. 解 釈 が 必 要 と な る の で あ ろ う。 こ れ ら の 主 張. 類 のoneselfが. 存 在 す る こ と にな って しま う。. 見 られ るOneForm,OneMeaningと い う1つ. の 形 に 、 「主 語 の 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 す る も の 」. と 「本 来 の 自 分 を 指 示 す る も の 」 と い う異 な る2つ. (7)本. い う認 知 言 語 学 の 立. の 意 味 は 存 在 し難 い と 考 え られ る 。. 書 の 奏 で る 旋 律 は 、意 味 と 形 は 一 対 一 の 対 応 を 成 す(oneform,onemeaning)、 と い う と こ ろ に あ る 。 形 が 違 え ば 意 味 に も違 い が あ り、 意 味 が 違 え ば 形 に も違 い が あ る と す る 。 い ず れ か 一 方 が 他 方 に 対 し一 対 多 の 関 係 を もつ 、 と す る の で は な い。. 一 中 右(訳)(1977:iv)(下. と い う こ と は 、oneselfは. (8)a.主. 以 下(8a-b)の. いず れ か を指 す こ とに な る が、. 語 の 指 示 物 と 同一 物 を指 示 す る もの. 62. 線 筆 者).

(17) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. b.本. 来 の 自 分 を 指 示 す る もの. c.上. 記a、b以. 外 の 別 の もの. 上 記 で 観 察 し た よ う に 、(8a-b)は の だ か ら、oneselfの. 森). い ず れ も が 単 独 でoneselfの. 必 要 十 分 条件 が 満 た せ な い. 概 念 的 正 体 を 明 らか に す る た め に は(8c)の 代 案 を 提 示 す る 新 し い 見. 解 が 必 要 とな る。 こ う した問 題 点 を解 決 す る た め に は、 語 句 と そ の語 句 が 指 示 す る物 との 間 に は どの よ う な 概 念 的 関 係 が 存 在 す る の か に つ い て 見 直 す 必 要 が あ る と考 え られ る。 そ こ で 、 次 セ ク シ ョ ンで は 、 語 と そ の 指 示 物 と の 関 係 を 観 察 す る こ と に す る 。. 謝. 辞. 末 筆 に な りま した が 、 本 誌 に掲 載 の機 会 を与 え て 頂 き ま した近 畿大 学 英 語 研 究 会 に、 この場 を お 借 り して 感 謝 申 し上 げ ます 。. 参. 考. 文. 献. Bolinger,Dwight(1977)MeaningandForm.London,NewYork:Longman.(中 (訳)(1981)『. 右 実. 意 味 と 形 』 こ び あ ん 書 房.). Descartes,Ren6(Amie1,01ivier(ed.〉)(1990)Discoursdelame'thode.(Agoralesclassiques), Paris:PressPocket.(落. 合 太 郎(訳)『. 方 法 序 説 』(岩. 波 文 庫. 青613-1)岩. 波 書 店.). Hege1,GeorgWilhelmFriedrich(1949)VorlesungenmberdiePhilosophiederGeschichte. Gtuttgart:Fr.FrommannsBerlag.(長 (上/下)』(岩. 波 文 庫. 谷 川 宏(訳)(1994a/1994b)『 青629-9/青630-0)岩. 歴 史 哲 学 講 義. 波 書 店.). Lakoff,George&MarkJohnson(1980)MetaphorMeLiveBy.Chicago:Universityof ChicagoPress.(渡. 辺 昇 一 他(訳)(1986)『. レ ト リ ッ ク と 人 生 』 大 修 館.)(Marin,. CarmenGonzlez(trad.)(1986)MetaforasdelaVidaCotidiana.Madrid:Catedra.) Lakoff,George&MarkJohnson(1999)PhilosophyintheFlesh!TheEmbodimentMindand itsCha〃engetoMesternThoughLNewYork:BasicBooks. Lakoff,George&MarkTurner(1989)MoreThanCoolReason.Chicago:Universityof ChicagoPress.(大. 堀 俊 夫(訳)『. 詩 と 認 知 』 紀 伊 國 屋 書 店.). Prato(Gallop,David(trans.))(1975)Phaedo.Oxford:ClarendonPress.(岩 『パ イ. ド ン ー 魂 の 不 死 に つ い て 一 』(岩. 田 靖 夫(訳). 波 文 庫. Priest,Stephen(1991)TheoriesoftheMind.PenguinBooks.(河 弘 行. ・真 船 え. り ・ 室 田 憲 司(訳)(1999)『. 青602-2)岩. 波 書 店.) 野 哲 也. 心 と 身 体 の 哲 学 』 勤 草 書 房.). 63. ・安 藤 道 夫. ・木 原.

(18) 近畿大学英語研究会紀要. 第5号. Swan,Michae1(1995)PracticalEnglishUsage(2nded.),Oxford:OxfordUniversity. 伊 藤 勝 彦(1967)『. デ カ ル ト』(CenturyBooks人. と思 想11)清. 上 野 義 和(1995)『. 英 語 の 仕 組 み 一 意 味 論 的 研 究 一 』 英 潮 社.. 上 野 義 和 ・森 山 智 浩 ・幅 森 雅 史 ・李 潤 玉(2006)『. 水 書 院.. 英 語 教 師 の た め の 効 果 的語 彙 指 導 法 一. 認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ ー 」 英 宝 社. 梅 田 修(1985)『. 英 語 の 語 源 物 語 』 大 修 館 書 店.. 江 藤 一・ 郎(2003)『. 基 本 ス ペ イ ン語 文 法 』 芸 林 書 房.. 大 澤 真 幸(1999)『. 行 為 の 代 数 学 一 ス ペ ンサ ー=ブ. 新 版)青. ラ ウ ンか ら社 会 シ ス テ ム 論 へ 一 』(増 補. 土 社.. 風 間 喜 代 三(1990)『 133)平. こ と ば の 身 体 誌 一 イ ン ド ・ ヨ ー ロ ッパ 文 化 の 原 像 へ 一 』(平 凡 社 選 書. 凡 社.. 風 間 喜 代 三(1998)『 金 谷 憲(2002)『. ラ テ ン語 と ギ リ シ ア 語 」 三 省 堂.. 英 語 授 業 改 善 の た め の処 方 箋 一 マ ク ロ に考 え ミク ロ に対 処 す る一 』 大 修. 館 書 店. 河 上 誓 作(編)(1996)『. 認 知 言 語 学 の 基 礎 一AnIntroductiontoCognitiveLinguistic』. 研 究 社. 倉 田 誠(2003)『 Getま. コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め の 基 本 動 詞 の 最 大 公 約 数1-Developか. で 』 松 柏 社.. 倉 田 誠(2004)『 Startま. ら. コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め の 基 本 動 詞 の 最 大 公 約 数2-Carryか. ら. で 』 松 柏 社.. 小 林 栄 三(1980)「. 科 学 的 社 会 主 義 の 教 育 論 」 日本 共 産 党(編)『. (新 日本 文 庫92)pp.19-56、 斎 藤 稔 正(2001)「. 日本 共 産 党 と 教 育 問 題 」. 新 日本 出 版 社.. 人 間 形 成 に お け る 自 己 超 越 体 験 」 『立 命 館 人 間 科 学 研 究 』 第1号. 、pp.. 35-47、 立 命 館 大 学 人 間 科 学 研 究 所. 坂 部 恵(1985)「 波講座. か た り と し じ ま 一 ポ イ エ シ ス 論 へ の 一 視 角 一 」 大 森 荘 蔵 他(編)『. 哲 学1い. 佐 久 間 治(2009)『. ま 哲 学 と は 」pp.213-239、. 文 化 人 類 学 入 門 』(増 補 改 訂 版)(中. 田 中 美 知 太 郎(1966)『. プ ラ ト ン1』(世. 英 語 教 授 法 」 山 内 進(編. 活 か す 一 』pp.203-220、 寺 沢 盾(2008)『. 岩 波 書 店.. ウ ソ の よ う な ホ ン トの 英 文 法 」 研 究 社.. 祖 父 江 孝 男(1990)『. 津 波 聡(2003)「. 新 ・岩. 界 の 名 著6)中. 公 新 書560)中. 央 公 論 新 社.. 央 公 論 社.. 著)『 言 語 教 育 学 入 門 一 応 用 言 語 学 を 言 語 教 育 に. 大 修 館 書 店.. 英 語 の 歴 史 一 過 去 か ら未 来 へ の 物 語 」(中 公 新 書1971)中. 央 公 論 新 社.. 中 尾 俊 夫(1989)『. 英 語 の 歴 史 』(講 談 社 現 代 新 書958)講. 永 松 京 子(1999)「. グ ル ー プ 発 表 授 業 一 外 国 語 授 業 の 場 合 」、 日本 私 立 大 学 連 盟(編)『. 64. 談 社. 大.

(19) 英 語 再 帰代 名 詞SELFへ の認 知 言 語 学 的 ア プ ロ ー チ(そ の1) スペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seに 見 られ る概 念 的並 行 性 を 通 して(幅. 学 の 教 育 ・授 業 を ど うす る 一FDの 中 村 明 徳(2004)「. す す め 」pp.141-148、. 森). 東 海 大 学 出 版 会.. 高 等 教 育 の 充 実 に 向 け て 一 い か に 魅 力 あ る 授 業 を 創 り 出 す か 一 」 『太 成. 学 院 大 学 紀 要 』 第6巻(通. 号23号)pp.43-48.太. 日本 聖 書 協 会(編)(2008)『. 成 学 院 大 学(旧. 聖 書GOODNEWSBIBLE和. 野 田 又 夫(1978)『. デ カ ル ト』(世 界 の 名 著27)中. 渡 部 昇 一(2009)『. 語 源 力 』 海 竜 社.. 辞 書. 南 大 阪 大 学):大. 英 対 照 』 日本 聖 書 協 会. 央 公 論 社.. ・辞 典. [α)SD]:Robin,Nicholas,CarolStylesCarvajalandJaneHorwood(ed.〉(2005>Oxford SpanishDeskDictionarp7.(3rd.ed.),Oxford:OxfordUniversityPress. [.IUT]:Chapman,RobertL.(ed.)(1992)ROFE7"SInternationalThesaurus,FifthEdition, NewYork:HarperCollinsPublishers. 片 岡 孝 三 郎(1982)『. ロ マ ン ス 語 語 源 辞 典 』(ロ. 亀 井 孝 ・河 野 六 郎 ・千 野 栄 一(1996)『 小 西 友 七 ・南 出 康 生(編)(2002)『 寺 澤 芳 雄(編)(1999)『. マ ン ス 言 語 学 叢 書V)朝. 言 語 学 大 辞 典 」(第6巻. 述 語 編)三. 省 堂.. ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 」 大 修 館 書 店.. 英 語 語 源 辞 典 」 研 究 社.. 祖 父 江 孝 男 ・米 山 俊 直 ・野 口 武 徳(編)(1987)『 山 口 佳 紀(編)(2008)『. 暮 ら しの こ と ば. 山 田 善 郎 他(編)(2004)『. 改 訂 文 化 人 類 学 事 典 』 ぎ ょ う せ い. 新 語 源 辞 典 』 講 談 社.. 現 代 ス ペ イ ン 語 辞 典(改. 訂 版)』. 白 水 社.. DVD. Girl,Interrupted(邦. 日 出 版 社.. 題. 『17歳 の カ ル テ 』)(2003)米:ColumbiaPicturesIndustries.. 65. 阪..

(20)

参照

関連したドキュメント

 さて,日本語として定着しつつある「ポスト真実」の原語は,英語の 'post- truth' である。この語が英語で市民権を得ることになったのは,2016年

この 文書 はコンピューターによって 英語 から 自動的 に 翻訳 されているため、 言語 が 不明瞭 になる 可能性 があります。.. このドキュメントは、 元 のドキュメントに 比 べて

語基の種類、標準語語幹 a語幹 o語幹 u語幹 si語幹 独立語基(基本形,推量形1) ex ・1 ▼▲ ・1 ▽△

2021] .さらに対応するプログラミング言語も作

テューリングは、数学者が紙と鉛筆を用いて計算を行う過程を極限まで抽象化することに よりテューリング機械の定義に到達した。

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

[r]

基本的金融サービスへのアクセスに問題が生じている状態を、英語では financial exclusion 、その解消を financial