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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 学際的研究における分野間知識統合の解析 : 環境科学 と生物物理学を対象とした論文傾向の経年変化 Author(s) 藤垣, 裕子; 牧野, 淳一郎; 内田, 斉; 土井, 伸一 Citation 年次学術大会講演要旨集, 11: 35-40 Issue Date 1996-10-31 Type Conference Paper Text version publisherURL http://hdl.handle.net/10119/5540
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学際的研究における 分野間知識統合の 解析
- 環境科学と生物物理学をヵヰ 象 とした論文傾向の 経年変化 - 0 藤墳裕子 ( 科技庁・科学技術政策研),
牧野淳一郎 ( 東大総合),
内田 斉 ( アライドコンサルティンバ),
土井伸一 ( 日本電気 ) 1 。 はじめに科学技術と社会との
接点においては、 各専門分野の 個別知識に留まらず、 複数 の専門分野の 個別の知識を 統合して、 実践的課題を解決する学際研究がのぞまれ
ている。 その必要性がさけばれて 久しいが、 このような学際的研究に 対する十分 な RonR が行われてきたとはいいがたい。 本研究の目的は、 学際的研究に 対する Ro nR をおこなうことによって、 その分野間知識統合の 経時的変化を 分析することで あ る。 筆者らはすでに、 学際研究遂行における 異分野摩擦と知識の統合の
理論的 側面について、 ジャーナル共同体の 妥当性要求水準を単位とした分析をおこなっ
てきた。 ,,本研究ではより 具体的に環境科学と 生物物理学を 対象とし、 口頭発表 および論文発表の 内容の経年変化を 追うことによって、学際分野の知識統合のよ
うすを調べた。 その結果について 報告する。 2 。 研究の視点、 および対象の 選択 本研究では以下の 点に注目した。 ( 1 ) 学際研究における 知識統合のあ りかた。 学際分野成立以後、 その形成にかかわった各個別分野間の
内容の類似性の 経年変化を追うことによって、 その知識統合の経年変化のようすを
調べる。 ( 2 ) 学際的研究分野における 制度化・組織化の 役割。 とくにブレイクスルー (新しい研究分野をつくろうとする
活動を大きく前進させる画期的研究成果
) とな るような業績よりも、 社会的外圧による 制度化のほうが 先行した場合の、 その後 0 分野の動向を 調べる。 3 。 方法 3 一 1 。 対象分野の選定 上記のような 視点をもって分析を行う対象学際分野としてまず 環境科学を選択
した。 これは社会的要請を 受けて成立した 分野の代表的存在であ るためであ る。 また上記 2 のような制度化の 影響を調べるために、 対照分野として、 制度化の影響よりも学問内在的要求によって
成立した度合いの高い分野の例として
生物物理 学を選択した。 3 一 2 。 データ取得手続き 8 一 2 一 1 。 母集団の設定 各分野に 「所属する研究者」 を以下のように 定義する。 A 。 環境科学 1 ) 環境科学関係の 学科・研究科に 所属するもの2 )
文部省科学研究費補助金環境科学特別研究に
参加している 者 B 。 生物物理学 生物物理学会年会講演予稿 集 に原稿をよせている 者 A 。 については調査当時 ( 8 4 年 ) に環境科学全般にわたった 内容を扱 う 学会が なかったためにそれに 代わる制度 研究機関として 上記を採用した。 3 一 2 一 2 。調査年度の設定
各分野のライフサイクルにおける
段階 や 、 各種制度 ( 学会、 学科、 補助金など ) の 成立年度、 および デ一 タ 0 入手可能な範囲などを 考慮に入れて、 次のように 設 定した。 A 。 環境科学 : 1 9 7 7 年度、 1 9 8 3 年度 B 。 生物物理学 : 1 9 6 6 、 1 9 7 2 、 1 9 7 9 、 1 9 8 4 年度 3 一 2 一 3 。 研究者名簿の 設定 A. 環境科学 ①学科研究科に 属する者 環境科学関連の 学科研究科のうち、 1977年以前に設立されたものを
取り上げる。 全国大学職員録から、 それらの学科研究科に 属する人間をリストア , プ して 1977 年度の名簿とする。 これに、 1977 年から 1983 年の間に設立された 学科の人間を っ けくわえて、 1983 年度の名簿とした。 ②科研 費 に参加している 者 1977 年度については、 科研 費 総合 班発行の「環境科学」研究広報「
5 2 年度 研 究 計画 概容 」から、 掲載された研究報告に 載っている研究者の 名簿を作成した。 1983 年度については、 上と同じ研究広報「 5 8年度研究計画棋客」の
巻末の「 昭 和 5 8 年度名簿」 を利用した。 B 。 生物物理学 1966 年、 1972 年、 1979 年については、日本生物物理学会年会講演予稿集の
巻頭 プロバラムからその 年の発表者の 名簿を作成した。 1984 年については、 同年予稿 集の巻末の 「発表者名簿」 を利用した。 3 一 2 一 4 。 母集団の人数 上記 3 一 2 一 1 ∼ 3 の手続きをふんだ 結果、 各集団の人数は 次のようになった。 A 。 環境科学 学科メンバ 102 人、 科研 費 メンバ 271 人、 全体 346 人 ( 2 つのデータ ソースに共通する 人間も存在する ) 。 Bo 生物物理学 1966 年 り 42 人、 1972 年 : 353 人、 1979 年 : 582 人、 1984 年 : 888 人 3 一 2 一 5 0 デ一 タ 作成の作業手順 名簿作成から、 各研究者名に 各分類項目 ( 学際分野を形成する個別分野に相当す
る 。 3 一 3 。 で詳述 ) ごとの論文本数が 対応する形にデータを 作成した。 その手 順は次の通りであ る。 A 。 環境科学 名簿作成 づ J I C S Tの科学技術文献速報環境公害編年間索引
で 記事番号を引く づ 記事番号から 論文抄録をひき、 その内容から 論文の属する 分 類 項目を調べる づデ一 タファイルの 作成 B 。 生物物理学 : 年会講演予稿プロバラムから、
発表名簿に発表件数および
分類 項目 ( 発表分科会名 ) をひき、 デ一 タファイルとした。 3 一 8 。分類項目の設定
A 。 環境科学 : 先行研究 2 ) の分類に以下の 4 点の変更を加えて 用いた。 1 ) 植 物 、 動物、 微生物、 生態システムをまとめて「生物」 とした 0 2 ) 排水処理・ 生 物 利用処理から、 活性汚泥関係のものをまとめて、 新たに「活性汚泥」 という 項 目 をたてた。 3 ) 分析・反応を、 分析化学と環境反応化学に 分割した。 4 ) アセ スメント、 都市計画、 人間・環境システムをまとめて、 「環境政策全般」 とした。 これらはいずれも、 各分類の件数があまり大きく違いすぎないようにするための
調整であ る。 B 。 各年度ごとに、 予稿集 め プロバラムにつけられた 分類をそのまま 利用した。 これは年ごとに 変動しているが、 研究内容自体の 変化を反映していると 考えられ るので、 そのまま採用した。 4 。 結果と考察 4 一 1 。 単純集計 A 。 環境科学 : 論文総数に占める 各分類項目 ( 専門領域 ) の割合 1977 年から 1983 年にかけての 大きな変化は「毒物」 の割合が 5 倍近く増加した ことであ る。 この項目にふくまれる 論文は 、 環境中に排出され 3 6 各種の合成切質の毒性評価というものがほとんどであ
り、 古典的公害 ( NOx. SOx. Hg など ) とは 性質が異なり、 8 0年代にクローズアップされてきた
問題であ る。 一方、 この 2 区間で割合がⅠ / 3 ほどに減少しているのが「環境化学反応」 であ る。 これは、 77 年には気圏での 光化学反応過程 ( 光化学スモッバの 発生プロセス ) についての 研究が非常に 多かったことに 対応している。 これらのことから、 環境科学では、 かなりのタイムラグはみられるものの、専門領域と社会的要請との 対応が見られ
ると考えられる。 B 。 生物物理学 上記のような 社会的要請との 対応は見られなかった。 4 一 2 。 専門領域間の 関係の変化 一 1 A 。 環境科学 専門領域の総数を n 、 サンプル数を q とし、 i 番目のサンプル ( ここではひとにあ たる ) がⅠ番目の領域に 発表した論文の 数を X ij ( i,1. 2 ‥. q, 卜 1. 2, ‥ n) とする。 年子 列 A 二 { A ij} を 下の式によって 定義する。 A jk 二 2 ( X i 卜 X ik/ S X i l) 今 2 つの領域 j, k を考えよう。 もし多くの研究者が j, k の両方の領域に 論文を出し ていれば、 A jk の数字は大きくなる。 したがって上で 定義した行列 A は、 領域間 の 関係の強さを 表している。 この行列から 相対伝達量 Uc を求める。 Uc が大きいということは、 領域間の関係が 薄く、 行列 A が対角行列に
近いということを
表して いる。環境科学においては
1977 年の Uc 二 0 ・ 385 、 1983 年の Uc 二 0 . 413 、 となった。 77 年に比べ 83年のほうが専門領域が
孤立化して相互の 関係が薄くなったと 考える ことができる。 B 。 生物物理学 生物物理学では 用いたデータが 年会講演 集 であ るため、 1 人あたりの発表総数
があ まり多くなく、 上の式をそのまま 利用することは 困難であ る。 しかし 4 つの サンプル点があ るので、 連続する 2 時点、 間での領域の 連続性の強さを 測定した。 このため上の 式を拡張して、 A@ jk=@ @@ { X ij ・ X ・ ik/@ ( S X il @@ S X , i ・ )@ } 但し、 X ij : サンプル数が 年度 1 の領域 j ( j,1. 2 ‥. n) に発表した回数 X . jk : 同じく年度 2 の領域 k ( k,1, 2 ‥. m) に発表した回数 但し後年の方の 年度を独立変数として Vc を計算した。 その結果、 66-72 年度問では Uc= 0 ・ 434, 72-79 年度間では Uc,0 ・ 395, 79 Ⅱ 4 年度間では Uc,0 . 485 となった 0 79 Ⅱ 4年はそれ以前に 比べ Uc が大きいことから、 専門領域の固定化が 進み、 領域間の流 動 性が減少したものと 考えられる。 72-79 年の Uc の減少は、 領域の分け方の 変化と 対応しており、 この時期に生物物理学の 研究内容の変化があ ったと考えられる。 4 一 3 。 専門領域間の 関係の変化 一 2 4 一 2 節では領域間の 関係の平均的強さを 扱った。 本節では領域間の 相対的関 係 を扱 う 。 ここでは数量化Ⅲ類を 用いた。 A 。 環境科学 77 年の専門領域と 83 年の専門領域を
並列して同じデータをとして
扱い、 同時に 数量化Ⅲ類で 布置を与えたのが、 図 1 であ る。この図から対象年度によって
分野 の 布置に動きがあ ることが読み 取れる。これは対象年度というものがひとを
区別する形になっていることを
示している (つまりひとのいれかわりの
激しさが布置 の 動きをもたらしている。 ) そこでひとの 入れ代わりを 排除して両方の 年度に継続して存在していたひとのみを
対象とした図が 図 2 であ る。 これを見ると、 客車 円領域の布置はあ まり変化しておらず、 動いているものはほぼ一方向に移動して
いろ。各テーマは融合していないことが
示唆される。 B 。 生物物理学生物物理学において
環境科学の図 1 と同じように 年度を並列して 同じデータと して扱った結果を 図 3 に示す。 生物物理学では、対象年度というものがひとを
区 別していない ( つまりひとのいれかわりが 少ない ) ことが読み取れる。 ここでひ との入れ代わりがあ まりない ( つまり両年度に存在していたひとが
多い ) ことが 判明したので、 66. 72 年の年度ごとの 布置を図 4 、 5 に示す。 ・ 66 において「遺伝」 と 「蛋白合成」 群 、 「 膜 」 群 、 「運動」 「筋肉」 群 、 および中央に 大きな 群と 4 つあ った群のうち、 ・ 72 年では中央の 大きな群が 2 つに分かれ、 「 膜 」 群 と 「運動」 「筋肉」群はそれぞれ 分かれた一方に 含まれたような 形となっている。 これは 専 円領域の分離と 複合化が同時に 進行したためと 理解できる。い井八 % 比笘 丑蛙ね伊
幸 ⅠⅠ
Ite 配 の 域 領 字間 科専 填め 環 Ⅱ と 17 図 Ⅱ
Ⅰ 7 %3 :, 。
軸
Ⅱ 気 Ⅰ l8 本Ⅰ l9 地口 接合 4 20 生協 5@ 21 帝源 ( 木 alc. ) 6 22 史林木主 台源 23 光宙 防疫 24 H 甘 振劫 7@ 25 毒物 26 分析化 掌 27 球 坑 化学反応 緋 水処理 l2 3 Ⅰ 廃 下物処理13 3 ミ 生協利用処理 14@ 32 活性汚泥 右 ' 生 " 孝ア Ⅰ 7 瞭壊 政策全般
地牡臆尭
笘
'
㎏ 図 2 : 環境科学 継続的研究者の 専門領域の配置の 変化①
蛋白合成 リホソ - ム SRNA コンフ オメ - ション 蛋白構造 膵坤接お 丸柱 実 棟方法 g 寮 光合成 核酸 筋肉 図 3 生物物理学
①
, 。
"。
・ 66 と 72 の専門領域の 配置 : 図 4 : 生物物理学 ・ 66 の専門領域の 配置 56T 222 生体高分子 ( Ⅰ 子キ ) 生体高分子. ぬ覚 遼 % 分子達 伍 核酸 ヘム蛋白ヘリ ソ クスコイル ホリ ペ プ チド
環境科学では 年度間で動いているものと 動いていないものとか 明確に分かれ、
動いているものはほぼ
一方向に移動したのに 対し、 生物物理学では、 移動の方向 が 一様でなく、 環境科学のような 一方向への移動はどの年度間をとっても
見られ なかった。 6 。 まとめ環境科学ではバループ
構造が既存の 専門領域のを 反映し、知識の融合が
進んで いないのに対して、 生物物理学では 固定した問題分割が存在せずグループ
構造化 に 経時的変化が 見られた。 これらの結果は、 学際研究のアウトプッ トによる以下 の 3 分類のうち、 環境科学がⅡに、 生物物理学が fにそれぞれ対応していることを
示している。 1 ) その学際研究の 出力が、 社会や政策への 提言のみの形をとり、 かつジャー ナ ル共同体を形成しえないもの
n ) その学際研究の 出力は、 それぞれの既存分野に 個別な知識 ( 妥当性要求の 方 向の異なるもの ) の並立の形であ らわれ、 それらの間に相互連関のないもの
皿 ) その学際研究の 出力は、 ( 学際的 ) ジャーナル共同体を 形成し、 その知識 産出は共通の妥当性要求水準をもっもの
す な は ち Ⅱは社会的要請を 受けて分野が 形成され、 知識産出よりも 制度化のほ ぅが 先行する傾向をもっ。 つまり学問覚在的目的や 制度化のほうが 先行するため に、 学際といわれてもなお、 既存の分野の 枠を残している。 これは既存の 複数の 、 ジャーナル共同体の 協 動 関係であ る。 複数のジャー ナル共同体は 互いに協力しあ っていても、 妥当性要求水準の 異なる論文の 林立という形で 知識産出が行われ、 1 つの統一された妥当性要求水準をもつジャーナル
共同体として 統一されていっ ていない。 それに対し、 m のケースにおいては、 Ⅱ た 比べて制度化の 進行が遅く 、 社会的要請や 外在的目的よりも、 学問内在的要求から 発生する。 このために問題 分割に経時的変化が 見られる。 これらの結果は 理論的分析による 学際研究の出力分類に 対応している。 しかし これらのデータは たかだか 1 8 年程度の傾向を 追ったものなので、 今後 8 4 年 収 降のデ一 タ を集めて、 さらに処理を 行い、 経時的変化を 追跡し、分析を深めてゆ
きたいと考えている。 1 ) 藤墳裕子、 学際研究遂行の 障害と知識の 統合∼ 異分野コミュニケーシ
, ン 障 害を中心として ∼、 研究技術計画、 Vol. 10 、 NO. 1 ハ , 1995. 73-83 2 ) 塚原修一、 「科学技術における 専門分野の形成過程」3@ )@ Fujigaki , Y ・・ Theoretica1@ Analysis@ on@ Interdisciplinary@ Collaboration
as@ a@ Base@ of@ UnIG@ Co@11aboration:Know@1@edge@ Based@ Analysis ・ International@ C
onference@ on@ Technology@ Management , 1996, 206-211
4 ) 篠垣裕子、 科学知識と科学者の 生態学 一 ジャーナル共同体を