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微小散乱体の空間配置による光波制御

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Academic year: 2021

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(1)

 物体による光の散乱には,表 1 に示すように散乱体物質 との相互作用に基づいた原子共鳴による非弾性散乱(ラマ ン散乱やブリユアン散乱など)と,散乱体物質との相互作 用のない弾性散乱とがある.弾性散乱の場合,散乱される 光の波長は散乱の前後で等しい.弾性散乱はさらに,散乱 体による光共振を伴う,したがって散乱体のサイズや形状 に強く依存する共鳴散乱と,散乱体での共振を伴わない非 共鳴な散乱とに分けられ,非共鳴の場合はさらに散乱体の サイズと波長との関係によって,ミー散乱やレイリー散乱 に分けられる.本稿で述べる光散乱はこのうち散乱体の共 振を利用するもので,散乱の仕方が散乱体の形状やサイズ に強く依存する.このような光散乱体をナノフォトニック エレメントとよぶことにする.  複数のナノフォトニックエレメントが空間的に規則正し く配置された場合には,さらに興味深い現象がみられる. 図 1 に示すように,ナノフォトニックエレメントが空間的 にランダムに配置されている場合,光の散乱はインコヒー レントに起きるが,空間的に規則正しく配置されている場 合にはコヒーレントな散乱となり,特定の方向にのみ強く 散乱されたり1),偏波状態が変換されたりすることもある2) 本稿ではそれらの現象について解説し,光デバイスや光回 路などへの応用についても言及する. 1. ナノフォトニックエレメント  上に述べたナノフォトニックエレメントに関しては,表 2 に示すようなフォトニックナノ構造がすでに知られてお り,このうちのフォトニック結晶やフォトニック分子とよ ばれる構造体はこのようなナノフォトニックエレメントに おける光のコヒーレント散乱を利用するものであるといえ る.例えば,フォトニック結晶デバイスの多くは,屈折率 の多次元ナノ周期構造における光のコヒーレント散乱に よって発現するフォトニックバンドギャップ内に,点欠陥 や線欠陥を導入し,光共振器や光導波路として機能させる ものである.これと逆の発想で,光が自由に伝搬可能な自 由空間やスラブ導波路内にナノフォトニックエレメントを 配置し,光波のコヒーレント散乱によって光の伝搬を制御 するデバイスも考えられる.これに関しては,2∼4 章で 紹介する.また,サブ波長周期の回折格子は,特定波長の 入射光に対して導波モード共鳴現象を発現し,反射率がほ ぼ 1 になるという興味深い現象を呈する.これに関しても 5 章で紹介する. 2. ナノフォトニックエレメントによる発光体の指向 性制御  ナノフォトニックエレメントによる興味深い現象のひと つとして,発光体の発光指向性の制御がある.電波のアン

光散乱制御のためのニューテクノロジー

解 説

微小散乱体の空間配置による光波制御

山田 博仁・大寺 康夫

Control of Lightwave with Coherent Optical Scattering by Nano-Photonic Elements

Hirohito YAMADA and Yasuo OTERA

Unique methods of controlling lightwave with coherent optical scattering by nano-photonic elements were proposed. We describe a method of controlling directivity of light emission, polarization control of lightwave, and a device with guided-mode resonance. Radiation and Polarization conversion characteristics of a tailored array of sub-wavelength dielectric cylinders, and resonance characteristics of sub-wavelength grating-assisted disk resonators are presented.

Key words: lightwave control, coherent optical scattering, nano-photonic element

(2)

テナの一種に八木・宇田アンテナがあるが,この原理を光 に対して応用すると,発光の指向性の制御が可能とな る1).図 2 は,波長 1550 nm 付近に共振波長を有する誘電 体ロッドから,波長 1550 nm の光が放射される様子を FDTD( finite-di›erence time-domain )法で計算したもの である.孤立した誘電体ロッドからの発光は図 2(a)に示 すように等方性となるが,発光体から 4 分の 1 波長離れた 位置に,共振波長がわずかに短い(共振周波数がわずかに 高い)誘電体ロッド(導波器)を配置すると,図 2(b)に 示すように導波器の方向に強く放射されるようになる.逆 に,発光体から 4 分の 1 波長離れた位置に,共振波長がわ ずかに長い(共振周波数がわずかに低い)誘電体ロッド (反射器)を配置すると,図 2(c)に示すように反射器と は反対方向に強く放射されるようになる.これらナノフォ トニックエレメントの数をさらに増やしていくと,図 2 (d)∼(f)に示すようにより鋭い指向性をもった発光が得 られるようにもなる.このように,発光体の光放射パター ンの制御が可能となる. 3. ナノフォトニックエレメントによる光導波路出射 ビームの指向性制御  光導波路端からの光出射パターンを制御する方法として は,ビームスポットサイズ変換器などがあるが,ナノフォ トニックエレメントを用いると,コンパクトに出射パター ンを制御することが可能となる.図 3 は,チャネル光導波 路からスラブ導波路への出射光ビームの伝搬の様子を FDTD 法で計算したものである.チャネル導波路からの出 射光ビームはスラブ導波路内では図 3(a)に示すように大 きく広がるが,ナノフォトニックエレメントを用いると, 図 3(b),(c)に示すように出射光ビームを鋭くすること 㠀 ඹ 㬆 d ≈ λ 䝺䜲䝸䞊ᩓ஘ 䝭䞊ᩓ஘ 䝤䝸䝴䜰䞁ᩓ஘ 䝷䝬䞁ᩓ஘ 䝁䞁䝥䝖䞁ᩓ஘ d << λ 㠀 ඹ 㬆 ඹ 㬆 ඹ 㬆 ≀㉁䛻䜘䜛 ≀㉁䛻䜘䜛 ගඹ᣺䛻䜘䜛 ගඹ᣺䛻䜘䜛 (λin= λout) ᙎᛶ (λin≠ λout) 㠀ᙎᛶ 䝃䜲䝈 ≀ ㉁ 双 叩 召 ඹ 㬆 λin λout λin λout d d 䝘䝜䝣䜷䝖䝙䝑䜽 䜶䝺䝯䞁䝖䛸࿧䜆䛣䛸䛻  表 1 各種光散乱メカニズム.

ྛ✀䝣䜷䝖䝙䝑䜽䝘䝜ᵓ㐀

䝣䜷䝖䝙䝑䜽⤖ᬗ 䝣䜷䝖䝙䝑䜽 䝣䝷䜽䝍䝹 䝣䜷䝖䝙䝑䜽ศᏊ 䝣䜷䝖䝙䝑䜽ཎᏊ ᒅᢡ⋡኱ ᒅᢡ⋡ᑠ ᒅᢡ⋡኱ ᒅᢡ⋡ᑠ d d d > Ȝ 䝯䝍䝬䝔䝸䜰䝹 ω k ω k ω k ▼ⱥ⌫ෆWG䝰䞊䝗 d ⤖ྜ䝬䜲䜽䝻䝕䜱䝇䜽 d > Ȝ d < Ȝ 䝃䝤Ἴ㛗࿘ᮇ ᅇᢡ᱁Ꮚ ศᩓ㛵ಀ ศᩓ㛵ಀ ศᩓ㛵ಀ ᑟἼ䝰䞊䝗ඹ㬆 (GMR)⌧㇟  表 2 各種フォトニックナノ構造. 1. 䜲䞁䝁䝠䞊䝺䞁䝖䛺ගᩓ஘ 2. 䝁䝠䞊䝺䞁䝖䛺ගᩓ஘ 図 1 コヒーレント散乱とインコヒーレント散乱.

(3)

ができる.出射ビームのパターンは,ナノフォトニックエ レメントの形やサイズ,位置などに大きく依存し,これら を適切に配置することにより,光ビームを整形したり,導 いたりすることも可能となる. 4. ナノフォトニックエレメントによる偏光制御  ナノフォトニックエレメントによって散乱される光波 は,散乱の際に何がしかの位相変化がもたらされる.エレ メントの形状が異方性の場合,位相変化は光波の偏光に依 存する.これを利用することで,エレメントを偏光子や波 長板として機能させることもできる2).図 4 はエレメント の直径と,エレメントに対して縦横両偏光の位相差の関係 を,FDTD 法で求めた電磁界分布から計算したものであ る.ここでエレメントの長さは 700 nm とし,300 nm 角の ບ᣺※ /4 ᙉᗘ: 1.29 ᙉᗘ: 0.86 d=0.154m d=0.11m Caseϩ ບ᣺※ /4 2.2 0.71 d=0.154m d=0.264m CaseϪ ບ᣺※ 䝰䝙䝍䞊 ᙉᗘ: 1 䝰䝙䝍䞊 ᙉᗘ: 1 d=0.154m Ey䛾ศᕸ (a) (b) (c) ບ᣺※ ບ᣺※ ບ᣺※ 1.7 0.76 1.86 1.05 0.6 3.44 Ey䛾ศᕸ (d) (e) (f) 図 2 ナノフォトニックエレメントによる発光体の指向性の制御.

(4)

光導波路から,波長 1.55 mm の光を照射するものとした. エレメントの直径が導波路寸法と同程度から 2 倍程度の範 囲で 0.1p 程度の位相差を生じることがわかる.なお,図 に記した数字は,いずれかの偏波に対しエレメントが共振 する点を表わしている.この共振の効果を利用し,さらに エレメントを 2 個・3 個と直列配置することで,偏光面の 回転に必要とされる 0.25∼0.5pの位相差も発生できると考 えられる. 5. サブ波長周期回折格子  ディスク共振器やリング共振器などの円形共振器は光導 波路型のレーザーキャビティーや波長選択フィルターなど に多用されている.前者で通常用いられるのは外周に沿っ て 伝 搬 す る whispering gallery mode( WGM )で あ り, ディスク側壁には平坦性が求められる.ここで側壁に意図 的に散乱体を周期配列すると,2 つの新しい機能を発現さ せることができる.1 つ目は周方向のブラッグ反射であ り,これを利用したレーザーはマイクロギア・レーザー

(a)

(b)

(c)

఩┦ᕪ NjP S S  S NjP         ༙ᚄD>NjP@ NjP NjP 㟷(O೫Ἴ ㉥(W೫Ἴ NjP NjP 3K( PRQLWRU

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図 4 フォトニックエレメントによる偏光制御の例.(a)電界が紙面に平行(Et)および垂直(El)の両偏光間の位相差,(b)Et

偏光入射時の電界分布,(c)El偏光入射時の電界分布,PhE はフォトニックエレメントの略. 䝏䝱䝛䝹ᑟἼ㊰ 䝇䝷䝤 ᑟἼ㊰ 䝡䞊䝮 ᩚᙧჾ Hy Hy Hy  (a)           (b)           (c) 図 3 ナノフォトニックエレメントによる光導波路出射ビームの制御.

(5)

として知られている3).もう 1 つは導波モード共鳴現象 ( guided-mode resonance: GMR)4)であり,これは WGM をディスクの中心に向かう同心円状の界分布に変換する作 用を示す.GMR の共鳴波長では,ディスク中心からみた 側壁の反射率は理論上ほぼ 100% に達するので,きわめて 高い Q 値をもつ共振器として動作させることができる. 図 5 に示すのは SiO2基板上の Si3N4層に形成した GMR 型 ディスク共振器および励振用バス導波路の概念図であ る5).WGM の散乱効果を強めるために,ディスク内部に も円孔列を配置するものとしている.ここでバス導波路か ら TM モード(電界主成分が基板面に垂直)を入射する と,GMR の共鳴波長において,同心円状の電磁界分布を もつ共振モードが発生する.二次元円柱座標系 FDTD 法 で計算したこの共振モードの磁界分布を図 6 に示した.共 鳴波長以外では側壁の反射率は低いため,強い界の閉じ込 めは起きない.すなわちこの素子は大面積でありながら, 少数の高 Q 値モードしか存在しえない,「実効的単一モー ド共振器」という,波長選択フィルターに好適な機能を有 しているといえる.  光の波長以下のサイズの微小光散乱体(ナノフォトニッ クエレメント)によるコヒーレント光散乱を用いて,発光 の指向性や光出射パターンの制御,偏光制御,さらには導 波路共鳴による波長選択的な光の反射といったさまざまな 現象が現れることを示した.これらの現象を利用すれば, 新しい動作原理に基づく光デバイスの実現や,光回路など に応用できるものと思われる. 文   献 1) 山田博仁,牛田 淳:“フォトニック原子の他励振動による発 光および出射光ビームの指向性制御”,第 51 回応用物理学関係 連合講演会,29p-M-17 (2004). 2) 井元敦生,大寺康夫,山田博仁:“フォトニックエレメントに よる偏波制御機能の検討”,電子情報通信学会ソサエティ大 会,C-3-34 (2010).

3) M. Fujita and T. Baba: “Microgear laser,” Appl. Phys. Lett., 80 (2002) 2051―2053.

4) S. S. Wang and R. Magnusson: “Theory and applications of guided-mode resonance filters,” Appl. Opt., 32 (1993) 2606― 2613.

5) S. Iijima, Y. Ohtera and H. Yamada: “High-Q microdisk resona-tor having sub-wavelength grating on its sidewall,” Conference

on Lasers and Electro-Optics, Pacific Rim (CLEO/PR), WI1-5 (2013). (2014 年 6 月 9 日受理) ᇶᯈ: ▼ⱥ 䝁䜰ᒙ (Si3N4) 䝞䝇ᑟἼ㊰ ഃቨ䜾䝺䞊䝔䜱䞁䜾(࿘ᮇ~1Pm) ✵Ꮝิ ಙྕග drop WGM ࿘᪉ྥ࿘ᮇᩓ஘య௜䛝 䝬䜲䜽䝻䝕䜱䝇䜽ඹ᣺ჾ 図 5 周期散乱体付きディスク共振器の概念図.周期壁の共 鳴波長に一致した波長の光のみがディスク内に同心円状の共 振モードを形成する.

HT

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0.59/ 0.9/ 図 6 周期散乱体付きディスク共振器の共振モードの磁界分 布.側壁周期L は 1 mm, 共振波長は 1.393 mm.この構造の 面内 Q 値の試算値は 100 万以上.

図 4 フォトニックエレメントによる偏光制御の例. (a)電界が紙面に平行(E t )および垂直(E l )の両偏光間の位相差, (b)E t

参照

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