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生物分子機械

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Academic year: 2021

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生物分子機械

生命活動の素過程は,大きさが数∼数十 nm の「タンパ ク質分子機械」が担っている.分子機械は,方向性のある 動きによって機能を発現する.現在では,顕微解析・操作 技術などの開発にともない,1 分子レベルでその機能を見 て操作することができる.直線運動を起こす分子モーター として働くアクチン・ミオシンや微小管・キネシン(ダイ ニン),それに回転分子モーターである大腸菌のべん毛 モーターや F1FOATP 合成酵素など,さまざまな分子機械の しかけがナノレベルで解明されつつある. タンパク質は,直鎖状につながった多数のアミノ酸が 3 次元的に折りたたまれた構造体であり,多数の内部自由度 をもつ.分子機械が機能を発現するとき,この多数自由度 が複雑にからみ合う.運動性分子機械において,化学エネ ルギーが力学的仕事に変換される物理機構を解明するため には,立体原子構造の解明に加えて,分子動力学による動 態解析や多自由度非平衡統計力学の開発も必要だろう. このように 1 分子生理学を突きつめたうえで,「生命と はなにか」という問いに対する物理学的な答えを得ること が将来的な課題である.そのためには,生物の基本単位で ある細胞が,複製も含め自律的システムとして働く仕組み を,物質レベルで説明しなければならない.わずか数 μm3 ほどの単細胞生物である大腸菌でさえ,千種類もの分子機 械を数百万個内包する.高等生物の細胞はさらに複雑で, タンパク質合成を担うリボソームや,環境情報を受け取る 膜受容体,細胞骨格を行きかう分子モーター,「エネルギー 通貨」ATP を生み出すミトコンドリア,変性や老廃物を修 理し処分する分子装置や小器官,そして細胞核や遺伝子群 が存在し,物質代謝が時々刻々と行われている.細胞機能 の動的秩序や自律性は,どのように設計されているのか. 各分子機械の動作原理を解明した先に待ち受けるのは,極 度な混み合い状態のなかで分子機械が集団協調的に働く 「場」としての細胞,その設計原理の解明である. 石渡信一(早大理工),会誌編集委員会 微小管上を前進するキネ シン分子モーター.2 量 体の一方(橙)が微小管に 結合し,他方(緑)が前方 に再結合(矢印)する.動 力源は ATP 加水分解反 応(自由エネルギー差). (早大物理高野研提供) ©2017  日本物理学会

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