Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
癌治療における放射線治療の役割−放射線治療の進歩と
環境の変化と共に−
Author(s)
青柳, 裕
Journal
歯科学報, 115(5): 463-463
URL
http://hdl.handle.net/10130/3880
Right
レントゲンがX‐線を発見してから120年になる。X‐線発見直後,また3年後のキュリー夫妻のラジウム発 見数年後にはそれぞれを用いてがんの治療が行われている。私は市川総合病院で放射線科部長としてまたは放 射線治療医として23年間お世話になった。単純な割り算では,放射線治療の歴史120年の20%もの期間を市川 総合病院で放射線治療医として働かせて頂いた事になる。本格的に放射線治療が施行され普及したのは,1951 年にコバルト遠隔照射装置がカナダで初めて完成して以来と言える。市川総合病院旧病院では現新病院開院直 前までこのコバルト遠隔照射装置を用いていた。 新病院ではリニアックによる外部照射が始まり,2009年には世界でも最新型のリニアックを導入して頂き 3D-CRT で照射ができるようになった。それ以前の1999年には高線量率密封小線源治療装置が導入されてい る。 “腫瘍の制御率”と“正常組織障害の発生率”の駆け引きが放射線治療の本質である。この両者の比率を“治 療可能比”といい線量の集中はその大きな要素の一つである。3D-CRT や IMRT など最新の外部照射の進歩 により必要な領域のみに線量をより集中させられるようになった。小線源治療である組織内照射や腔内照射 は,外部照射では不可能な程の線量の集中が得られる歴史の長い確立された治療法である。 本講演では市川総合病院放射線治療部で施行してきた“治療可能比”向上のための様々な工夫を紹介した い。口腔ガンセンターとの緊密な連携により,頭頸部がんには力をいれてきたが,未知の領域である歯肉がん の外部照射による化学療法併用療法は良好な経過を示している。放射線治療の適応が多い,子宮がん,食道が ん,乳がん,肺がん,前立腺がんなどでも手術療法や化学療法とのきめ細やかな組み合わせが重要であること は明白である。 放射線以外のがんの治療としては,症例は少ないが当初から温熱療法も行ってきた。極めて特殊な,加温針 を組織に刺入して加温する組織内加温法による温熱療法であるが合わせて紹介したい。 本来の医療としてのがんの治療には,外科療法,放射線療法,化学療法等担当医師のレベル,また担当看護 師,担当技師,担当事務その他の職種間のレベルの密接なコミュニケーションが必須であるが,この意味にお いてもこの23年間に感謝したい。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 昭和53年3月 東京慈恵会医科大学卒業 昭和53年5月 東京慈恵会医科大学附属病院長直属の研 修医 昭和55年5月 東京慈恵会医科大学放射線医学教室医員 昭和55年7月 国際聖路加病院放射線科医員 昭和57年2月 東京慈恵会医科大学放射線医学教室助手 昭和63年10月 医学博士の学位受領(東京慈恵会医科大 学) 平成4年6月 東京慈恵会医科大学放射線医学教室講師 平成4年7月 東京歯科大学放射線科助教授 平成14年7月 東京歯科大学放射線科教授 現在に至る <所属学会> 日本医学放射線学会,専門医 日本放射線腫瘍学会,専門医 日本ハイパーミア学会,評議員,指導医 日本食道学会,特別会員 日本癌治療学会 日本頭頸部腫瘍学会