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カエル舌粘膜におけるカルシウムイオンの受動および能動輸送

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20 〔原著〕松本歯学2:20−−27,1976

カエル舌粘膜におけるカルシウムイオンの

受動および能動輸送

野村浩道 浅沼直和

松本歯科大学 口腔生理学教室(主任 野村浩道教授)

Passive and Active Transports of Ca Ions in the Mucosa of the Frog Tongue

HIRoMIcHI NOMURA and NAoKAzu ASANUMA

D¢μγ伽2吻ρ〆Oral Phツsiology,1吻勧♂ηoZo Dθη’al College        (Chief’ Prof H∧Jomuraノ

Summary

  The movement of Ca ions across the mucosa of the frog tongue was measured by means of radioisotope,45Ca、 The results obtained were as follows; 1.C・ ・pt・k・w・・inhibit・d by N・C1・・nd・N・SCN・・d its rat・・ed・ced t・apP・・xim・t・ly 10%of the control by adding IM NaCl. 2.・Ca uptake was inhibited by some chemicals such as 2,4−dinitrophenol, ruthenium red and sodium lauryl sulfate, but its rate did not reduce to less than one third of the control. 3.Both Ca uptake and Ca release were.inhibited by cooling, but their rates did not reduce to less than one third of the controL   These results suggest that there are passive and active transport of Ca ions across the mucosa of the frog tongue.  哺乳動物の味蕾およびその周辺の上皮組織には ホスファターゼが多量に存在する (Baradi & Bourne,19531);Rakhawy,1963i4);Iwayama& Nada, 19675)).このことに最初に注目した Baradi&Bourne(1953)1)は,これらボスファター ゼの役割を味覚受容に直接関連するものと考え, いわゆる味覚の酵素説を提唱したが,今日この説 は一般には認められておらず(Beidler,.19612}),こ れら酵素の生理的役割についてはほとんど何もわ かっていない.  野村および河野(1975)11)は,カエルの舌を組 (1976年4月5日受理) 織化学的に調べ,舌粘膜表面,とくに味覚器のあ る茸状乳頭の頂(感覚円盤とよばれている)にか なり強いホスファスターゼ活性のあることを見い だした.また彼らは,脳と脊髄を破壊して不動化 したウシガエルを用いて,舌表面にATPやβ一グ リセロ燐酸などを基質とした溶液をかけると,舌 粘膜表層のホスファターゼによってそれらが加水 分解されることを見いだした.後者の実験による と,ATPの加水分解は2価陽イオンを必要とし, ウアバインで抑制されず,CaがあればMgなし で生じる.従ってATPを加水分解するボスファ

ターゼはCaイオン依存性ATPアーゼと考えら

れる.

(2)

 Caイオン依存性ATPアーゼは,赤血球膜,筋 小胞体膜,小腸刷子縁膜,尿細管膜,ミトコンド リア膜などを始め,いろいろな臓器の細胞膜で見 いだされているが,いずれもCaイオンの能動輸 送に関与していると考えられている(Wasserman &Kallfelz,197015)).そこで,カエル舌粘膜表層の

ATPアーゼもCaイオンの能動輸送に関与して

いるのではないかと考え,カエル舌粘膜を横切る Caイオンの移動を放射性の45Caを用いて調べて みた.

材料と方法

 1.材料   この実験に用いた材料はトノサマガェル(Rana nigromaculata)およびウシガエル(食用ガエル, Rana catesbiana)である.前者は14∼45 g,後者 は150∼220gのものを使用した. II.方法  1.Caとり込み(その1)  脳と脊髄を破壊して不動化したトノサマガエル あるいはウシガエルを背位に固定し,舌を引き出 してflow chamber上にピンで固定する. flow chamberは,高さ35 mm,長さ100 mm,後幅

50㎜,前幅20mmのプラスチック箱で,内

部はパラフィンが流し込んである.前方1/3のと ころに直径10 mm の穴があけてあり, flow chamber上の溶液はこの穴から下の容器(直径60 mmのシャーレを使用)に流れ落ちるようになっ ている.flow chamber全体はカエル固定用の木 製の板の上に固定してある.  実験の順序は以下のごとくである:まず舌をリ ンガー液で十分洗ったのち,放射性同位元素45Ca を含む溶液(以下45Ca溶液とよぷ)1mlを約20秒 かけてスポイトで舌表面にかけ,そのあとリン ガー液を十分流して45Ca溶液を洗い流す.この操 作を3分間隔で所定の回数だけ繰り返す.ついで 舌を切り出し,約100mlのリンガー液で3回洗 い,水分を除いたのち液体シンチレーションカウ ンター用グラスバイアルに入れる.(ウシガエルの 場合は舌を適当な大きさに切断し,1個ずつをグ ラスバイアルに入れる.)グラスバイアルには組織 片の大きさに応じて1.O,1.25あるいは1.5 ml のSoluene−100を加え,52℃に加温した振盟器に 移して1∼数時間,加温振邊して組織片を溶解す る.組織片が完全に溶解したらグラスバイアルに Insta−gel 18mlを加え,よく振還し,冷却するのを 待って液体シンチレ’一ションカウンター(Nu− clear−Chicago, Mark−1, Channel D)にかけ,45Ca 量を測定する. 2.Caどり込み(その2)   トノサマガエルの脳と脊髄を破壊したのち,舌 を引き出しO.IM NaCl溶液でよく洗い5∼6ml の45Ca溶液の入った直径30 mmのシャーレに 舌を浸す.30分後カエルごとリンガー液で洗い, 舌を体から切り離して0.1M NaCl溶液20 mlの 入ったビーカー中に入れる.このビーカーは常に ゆるやかに撹拝しておく.1分後同じようにゆる やかに撹拝してある0.1M NaC1溶液20 mlの 入ったつぎのビーカーに舌を移し同様に1分間置 く.この操作を5回繰り返したあと,今度は1mM EDTA (エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム 塩)を含む0.1M NaCl溶液に舌を移し同様な操作 を5回繰り返す.以上の操作が終わった舌はグラ スバイアルに入れ,前述した方法に従って溶解し, Insta−gelを加え,液体シンチレーションカウン ターにかけで5Ca量を測定する.

3.Ca放出

  10μCi(13μM)45CaCl2溶液に30分浸して十 分に45Caをとり込ませたトノサマガエルの舌を

蒸溜水と1mM EDTAでそれぞれ5回ずつ洗っ

たのち,いろいろの条件をもつ溶液20mlの入っ たビーカーに移し,同様にゆるやかに撹拝しなが ら1分間置き,溶液中に放出してきた45Ca量を液 体シンチレーションカウンターによって測定す る.通常溶液10 mlとInsta−gel 10 mlをグラス バイアルに入れ,十分振盛撹拝してコロイド状態 にして測定した. III.薬品  45CaはNew England Nuceear(米国)製造,日 本アイソトープ協会頒布のものを使用した.第1 回目に購入したものは比放射能9.45mCi/mgCa, 第2回目に購入したものは11.1mCi/mgCa,第3 回目に購入したものは16.7mCi/mgCaであり,い ずれも40日以内に使用した.  組織溶解剤はSoluene−100,ゲル化剤は ln− sta−gelを使用したが, Insta−gelが入手できな かった時期Dimilume−30をInsta−gelの代わり に使用した(いずれもPackard社製). ●

(3)

22 野村他:カエル舌粘膜におけるカルシウムイオンの受動および能動輸送  ルテニウム赤はChroma社製,その他の試薬は 半井化学社のものを使用した. IV.実験温度  実験は夏季(7月および8月)千葉市で行なっ たので,実験温度は25°一一 27℃であった.なお冷 却実験は冷凍室(3°一一 4℃)中で行なった. 結 果

1.Caとり込み速度とCa放出速度

舌がCaをとり込む速度は本実験で行なった時 間範囲(3分20秒)ではほぼ直線的であった.表 1は10μCi(23.6μM)45CaCl2溶液を20秒ずつ1 回,2回,5回および10回与えたときの舌にとり 込まれた4SCa量を測定した結果を示す.液体シン チレーションカウンターのカウント数と45Ca量 は同時計数のため正確には正比例しないが,計算 を簡略にするため45Ca 量は55.800cpm を 1 ng45Caとして換算してこの表のD欄に示した. Table 1. Re正ation between the amount of 45Ca uptaken by tongue and the times of 4sCa application.

A

B

C

D

E

F

G

The times @  of ≠垂垂撃奄モ≠狽奄盾 Total time @    (sec) Counts @  (cpm) Amount of @ 45Ca @     (ng) Body weight @       (9) ・匠 D/F  0 Q0 S0 P00 Q00  6.9G5 R8,695 P06,384 Q41,131 U90,630 0,088 O,694 P,907

S321

P2,377 20 Q5 R0 Q7 E45 7.3 W.5 X.7 X.0 P2.7 0,012 O,082 O,197 O,480 O,975 ■ 15 ͡ ㌣

910

6

5

5

9

0

9

寸 0 Time(min)   室   3

  a

1・08   −   6   9   旨   =

  5

0.5E

  2

  2

  合

  8

  写 0 Fig.1. Relation between the amount of    45Ca uptaken by tongue and the    total time during which the ton・    gue was exposed to 4sCa solution.    a and b:Rana nigromaculate,    c:Rana catesbiana. 時間とともに舌にとり込まれる45Ca量が増大し ていることがわかる.  この表のG欄は,一定面積の舌表面当りの4SCa とり込み量を相対値として求めたものである.こ の実験で使用したカエルの体重は20∼45gと大 幅な差をもっていたので舌面積もかなり差があっ たと考えられるが,伸展性の大きい舌の面積を求 めることが困難なので,体長が2倍になれば舌面 積は4倍,体重は8倍になるという仮定に基づい てD欄の値を3/(EllSEで除してG欄の値を求め た.  図1は,表1のD欄とG欄の値を45Ca溶液を与 えた時間との関係で画いたグラフである.後者の 曲線bが,前者の曲線aに比べてより直線的に なっていることがわかる.このことは,舌のCaと リ込みが時間と舌の面積に正比例して増大するこ とを示す.  なお,同様な実験をウシガエルについても行 なったが,ウシガエルの場合も同様な実験結果が 得られた(図1曲線c).  図2は,舌を10μCi(13μM)45CaC12を含む0・5mM CaCl2溶液に30分間浸し,そののち1回リンガー

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松本歯学 2(1)1976 12

10

68

5

v

$6

9

歪 0 4 翻 寸 2 0 1.5 §1.0

9

き 合  0.5 β マ

卜1・・m…Ct十11=噺

Fig.2. The rate of 45Ca release from    tongue. 液で洗い,ついで0.1M NaCl溶液および1mM

EDTAを含む0.1M NaCl溶液に5回ずつ浸し

て45Caの放出速度を調べた結果を示す.この実験 で4sCaを0.5mM CaCl2溶液に加えたのは,非放 射性のCaを混合することによって45Caのとt) 込みが極端に多くならないようにするためであ る.このグラフからわかるように,45Caの放出は 指数函数的に生じており,また,0.1M NaCl溶液 での45Caの放出がほぼ平衡に達したあとに1mM EDTAを含むO.IM NaCl溶液に舌を移すと再び

大量の4SCaの放出が生じている.このこと

は,45Caのかなりの量が舌粘膜表層に吸着または 弱く結合していることを示唆している.従って, 舌内部よりの45Caの放出を測定するためには,こ の実験で行なった処理を終えたあとに行なわなけ ればならぬことになる.なお,0.1M NaCl溶液の 代りに蒸溜水を使用したときの結果もこの実験の 結果とほぼ同様であったが,0.1M NaCl溶液を用 いた場合に比べ,“Ca放出速度の値がカエルごと に多少ばらついた. II. Caとり込み速度に及ぼす無機塩および2,3 の薬物の作用       mM        200   500 1000  2   5     10 20  50 100     NoC,  concentration Fig.3. Effect of NaCl and NaSCN on    45Ca uptake. Closed circles and    vertical bars indicate the means    and standard errors of three pre−    parations in the case of NaC1, res−    pectively, and open circles indicate    values of single preparations in the    case of NaSCN.

 図3は,Ca とリ込み速度に及ぼすNaClと

NaSCN の作用を調べた結果である. 2μCi (4.7μM)45Caを含む0.5mM CaC12溶液に2

∼1000mM NaClまたはNaSCNを加えた溶液を

20秒ずつ5回,3分間隔でトノサマガエルの舌に かけたのち,舌を切り出して舌の45Ca量を測定し た.グラフ上の黒丸と縦棒はそれぞれ3標本の平 均値と標準誤差であるが,NaCl濃度の増加に伴 い,10mMぐらいより急激に,SCaとり込み速度が 減少していることがわかる.  このグラフの3個の白丸は,それぞれNaSCH

を10mM,50 mMおよび200mM加えたとき

の1例ずつの結果である.NaClとNaSCNで抑制 効果に違いがみられない.このことは無機塩の抑 制効果がNaイオンとCaイオンとの拮抗による のか,または無機塩濃度増加に伴うイオン強度の 増大の効果によることを示す.  図4は,ウシガエルの舌に 2μCi(4.7μM)45Ca を含むO.5mM CaCl2溶液に2∼1000μMラウリ ル硫酸ナトリウム(以下SLSとよぷ)を加えた溶

液を20秒ずつ5回3分間隔でかけた場合の舌

の45Caとり込みを調べたものである.SLSが0.2 mMになると,45Caとり込み量が1/2以下になっ

ていることがわかる.しかしNaClやNaSCNの

場合と異なり,SLS濃度をさらに上げても1/3以

(5)

24 野村他:カエル舌粘膜におけるカルシウムイオンの受動および能動輸送 ? …1 着 吾 β .002  .005  .01 .02   .05  .1   .2    .5   1    SLS conc●ntration Fig.4. Effect of sodiurn lauryl sulfate on    45Ca uptake. Circles and vertical    bars indicate the means and stan−    dard errors of three preparations,    respeCtively.  1.0 当 ? £

6

8 旨 = 0.5 § 芒 皇

2

8

零 0

   隻 9 る

…艮基:

   皇 も も

8       ←       F

8

差 y

   マ も ← Fig.5. Effect of 2,4−dinitrophenol, ruthen−    ium red and cooling on 45Ca up−    take. The graph indicates the    rneans and  standard  errors of    three preparations. 下にはなちないようにみえる..また曲線の勾配も NaClの場合よりも小さい.このことは,無機塩と SLSで抑制機序が異なることを示唆する.  ルテニウム赤(以下Ru redとよぶ)および2, 4一ジニトロフェノール(以下2,4DNPとよぶ) は,ミトコンドリア膜や赤血球膜のCaイオン依存 性 ATP アーゼ阻害剤であり (Moore,1971s); Wins&Schoffeniels,196616)), Ca能動輸送を抑 制することが期待される.また,赤血球膜のCa能 動輸送を抑制することが期待される.また,赤血 球膜のCa能動輸送のQ、。は3.16と温度に敏感 であることが知られている(Lee&Shin,19696)). そこでつぎに,45Caとリ込みに対するRu red,2, 4DNPおよび冷却の効果を調べた.  6.5μCi45Caを含む50mM NaCl溶液にトノサ マガエルの舌を30分浸し舌の45Caとり込み量を 測定した.図5は実験結果を棒グラフにまとめた もa)一(u, 45C・とり込み量を・隔・で除した値を 縦軸にとってある.各値は3例ずつの平均値と標 準誤差である.10’2M 2,4DNP,10−4M Ru redお よび冷却によって45Caとり込み量はコントロー ルの1/2以下になっている.しかし,4℃に冷却 しても4SCaとり込み量がコントロールの1/3以 下になっていない.このことは,舌へのCaとり 込みのかなりの部分が受動輸送であることを示 す. m.Ca放出速度に及ぽす冷却の作用  10μCi(13μM)45CaCl2溶液に30分浸して十分 に45Caをとり込ませたトノサマガエルの舌を蒸

溜水と1mM EDTAでそれぞれ5回ずつ洗った

のち,リンガー液20mlの入ったビーカーに移 し45Ca放出を調べた.図6は2例の実験結果を示 す.室温(25℃)における45Ca放出に比べ,3℃ に冷却したリンガー液中における45Caの放出速 度は僅かではあるが減少している.この結果は舌 からのCa放出に能動輸送が関与していることを 示唆する. W.Caとり込みと舌化学受容器のCa応答  結果IIで述べたごとく,カエル舌のCaとり込 みはNaCl, NaSCH,およびSLSによって抑制さ れる.このことはカエル舌化学受容器のCa応答 がNaCl, NaSCNおよびSLSによって抑制され るという実験結果(Nomura&Sakada,196S「3); Nomura&Ishizaki,197212);野村,河野,1974i°)) に類似している.そこで,Caとり込みの実験の場 合と同一のCa濃度(O.5mM CaCl2)でNaClま たはSLSを加えたときのカエル舌化学受容器の 応答を調べた.

 図7はNaCl,図8はSLSを加えたときのカエ

ル舌化学受容器の濃度一応答曲線である.各点

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松本歯学 2(1)1976

6

5

で $ σ

2

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寸 ξ 琵 _0.5 9 ! 1.0 0.5 0 1.0 0.5 0

A

B

ト25℃十3°C十25℃ヨ

Fig.6. Effect of cooling on 4sCa release    from tongue. A and B indicate the    results obtained from two single    P「eparalons・  10  20   50  100 200 NaC‖  concentratiOn Fig.7. Effect of NaCl on neural activity    of chemoreceptor. Circles and ver’    t三cal bars indjcate the means and    standard errors of four prepara−    tions. はNaClの場合4標本, SLSの場合5標本の平均 値と標準誤差である.NaCtによる抑制はCaとり

込みの場合と同じく10mMぐらいより強く起

こってくるが,Caとり込みの抑制が100mM以

上でもさらに続くのに,Ca応答の抑制は100 mM で100%に達している.なお500mM以上での化 ξ 三 Σo.s き 』 0 0001 0002 000SO.01 0,02  005  0.1    SLS cencentration Fig.8. Effect of sodium lauryl sulfate on    neura!activity of chemoreceptor.    Curve A was obtained when    O.5mM CaCl2 solution was used as    stimulating solution and curve B    was obtained when(0.lM NaCl+    5mM CaCl2)solution was used.    A:five preparations, B:four pre・    parations. 学受容器の応答増大はNaClの作用によるもので Caの作用によるものではない(Nomura&Ishi・ zaki,1972 i 2)).  SLSの場合, Caとり込みは0.1mMで40%ぐ らいまで抑制されるに過ぎないが,化学受容器の 応答は100%抑制される(曲線A).以上の結果は, Caとり込みと化学受容器のCa応答との間にか なりの共通点はあるが,一義的関係のないことを 示唆する.  なお,このグラフの曲線Bは5mM CaCl2を含 む0.1M NaCl溶液を刺激溶液とし,その溶液に SLS を加えたときの濃度一応答曲線である. 0.5mM CaCI2溶液を刺激溶液とした場合(曲線 A)と曲線が一致しない理由については不明であ る. 考 察 1.カエル舌粘膜の物質透過性  本研究において,カエル舌粘膜はCaイオンに 対してかなり透過性が高く,かつその透過性のか なりの部分が受動輸送によることが示唆された. すなわち,舌へのCa’とり込みはCa能動輸送の 阻害剤である2,4DNPやRu redで抑制される が,阻害剤の濃度を十分高くしても1/3以下にな らず,また舌の温度を4℃に下げても1/3以下に ならないからである.この点はCa放出について も同様で,舌の温度を3℃に下げても放出速度は

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26 野村他:カエル舌粘膜におけるカルシウムイオンの受動および能動輸送 僅かしか減少しない.  Mistretta(1971)ηは,ネズミの舌粘膜の物質透過 性を調べ,角質層(stratum corneum)が物質透過 性の障害となっており,舌粘膜の物質透過性は体 部皮膚のそれと大差ない低いものであることを示 している.しかし,Fr6mter&Diamond(1972)4)に よると,上皮には“leaky”な上皮と“tighV’な上皮が あリ,前者の上皮の細胞間隙は無機イオン,有機 小分子および水をよく透過するという.前者の例 としては胆嚢上皮,小腸粘膜,腎近位尿細管など があり,後者の例としては膀胱膜,胃粘膜,脳脈 絡叢膜,カエルの皮膚などがある.本研究の結果 からみて,カエルの舌粘膜は“leaky”上皮であると 推察される.  Fr6mter&Diamond(1972)4)によると,“tight”上 皮では塩の能動輸送に伴った水の輸送が行なわれ

ないため上皮の両側の塩濃度差が30:1から

1000:1に達するのに対し,“leaky”上皮では塩の 能動輸送に伴った水の輸送が行なわれるため上皮 の両側の塩濃度差は1.3:1から14:1程度と 低い.もしこの見解が正しいとすると,カエルロ 腔内Ca濃度は粘液の分泌がなくてもかなり高く 保たれていることになる. II.カエル舌粘膜のCa能動輸送の意義  野村および河野(1975)11)は,カエル舌粘膜表面 にCaイオン依存性ATPアーゼが存在し, Caイ オンの能動輸送を行なっていることを示唆した. 本研究において,冷却によってCaと})込みとCa 放出の速度が減少したことはこの示唆を支持す る.ところで問題なのは,この冷却の効果がCaと り込みとCa放出の両者に現われた点である.こ の点についてはつぎの3つの可能性が考えられ

る.第1はCaとり込みとCa放出が別々の上皮

細胞によって行なわれている可能性である.さき に野村および河野(1975)ll)の行なった組織化学は ATPアーゼの存在部位を明確には提示しなかっ たものの,ATPアーゼ活性は舌粘膜表層全体に みられたのでこの可能性は少ない.第2は上皮細 胞のCa輸送担体(多分ATPアーゼ自身)が口腔 へのCa輸送と舌内へのCa輸送の両者に働いて いる可能性である.カエル舌化学受容器はCaイ オンの助けによって水を感じると考えられてい る(Nomura&Sakada,1965)13)が,もしそのために 口腔内Caイオン濃度を一定に保っておく必要が あるとすると,カエルロ腔粘膜がCaの吸収と排 泄の両機能を有して口腔内Caイオン濃度調節を 行なっていても,不思議ではないように思われる.

第3は,Caとり込みとCa放出のうち一方のみ

が能動輸送であり,他方は促進輸送,っまり担体 をもつ受動輸送であるという可能性である.舌粘 膜ATPアーゼは能動輸送に関与していると考え られるので,Caとり込みとCa放出の両者とも 促進輸送である可能性は少ないが,一方が促進輸 送である可能性は十分考えられる.本研究でCa とり込みが能動輸送らしいと考えられた根拠は, Ca とり込み速度に対する温度の影響および2,4

DNPとRu redのCaとり込み速度に対する抑

制効果であるが,後者は2,4DNPやRu redの濃 度がかなり高くないと効果がない点から能動輸送 に対する十分な証拠とはいえない.また,温度の 影響は促進輸送でもみられる(Davson,1970)3)の で,前者も能動輸送に対する決定的証拠とはなり 得ない.これら3つの可能性のうち,どれが真実 かは,今後の実験を待つ必要がある. In. Ca能動輸送と化学受容器のCa応答  Nomura(1975)9)は, Caイオン能動輸送を阻害 する2,4−DNP,キナクリンおよびRu redなど がカエル舌化学受容器のCa応答を抑制すること から,カエル舌化学受容器の受容分子がCa依存 性ATPアーゼであ}), Caが味細胞にとり込ま れることによってCa応答が生じるのではないか と考えた.しかし野村および河野(1975)ll}によ ると,ATPアーゼは化学受容器のある茸状乳頭 感覚円盤で密に存在するものの,他の舌粘膜部分に も存在することから,両者に一義的関係はないと 考えられる.だが,本研究においてCaイオンとり 込みおよび化学受容器のCa応答が同じような濃

度でNaClとSLSによって抑制されるという

点,また詳しく検討されなかったが,化学受容器 のCa応答を抑制するRu red,2,4DNPが45Ca とり込みを抑制する点は,両者に何らかの関連が ありそうな感じを与える.恐らく,化学受容器の

受容分子とCa依存性ATPアーゼのCaイオン

結合部位が極めて似た性質をもつことによるので あろう. 要 約 カエル舌粘膜におけるCaイオン輸送を放射性

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松本歯学 2(1)1976 同位元素45Caを用いて調べた.実験結果は以下 の通りである.

1.舌のCaとり込みはNaClやNaSCNによっ

 て抑制され,とり込み速度はIM NaCl存在下で  元の10%程度に落ちた. 2.舌のCaとり込みは,2,4一ジニトロフエノー  ル,ルテニウムレッドおよびラウリル硫酸ナト  リウムによって抑制された.しかしCaとり込  み速度は元の1/3以下にはならなかった.

3.舌のCaとり込みおよび舌からのCa放出の

 両者が低温によって抑制された.しかし両者の  速度は元の1/3以下にならなかった.  以上の結果は,カエル舌粘膜ではCaイオンの 能動輸送と受動輸送の両者があることを示唆す る. 謝 辞  本研究の一部は,放射線医学総合研究所にて行 なわれたもので,本研究に御援助下さった環境衛 生部渡辺博信博士,市川龍資博士ならびにアイソ トープ取り扱いなどを御指導下さった稲葉次郎博 士に厚く御礼申し上げます.なお本研究の経費の 一部は文部省科学研究費補助金(一般研究 No. 057343ならびに総合研究(A)No、938028)に よった. 文 献 1)Baradi, A. F. and Bourne, G. H.(1953)Gusta・  tory and olfactory epithelia. Int. Rev. Cytol.』  2:289−330. 2)B・idl…LM・(1961)T・・t・・ecept・r stim・1・ti・n・  Progress in biophysics and biophysical chemis−  try 12:107−151. 3)Davson, H.(1970)Atextbook of Physiolgy・   Churchi11, London. 4)Fr6mter, E. and Diamond, J.(1972)Route of  passive ion perrneation in epithelia. Nature New  Biology 235:9−13 ・ 5)Iwayama, T. and Nada, O.(1967)Histochemical   observation on the phosphatases of the tongue,   with special reference to taste buds. Arch. his−   tol. jap.28:15−163. 6)Lee, K. S. and Shin, B. C.(1969)Studies on the   active transport of calcium in human red cells.   J.Gen. Physiol.54:713・729. 7)Mistretta, C. M.(1971)Permeability of tongue   epithelium and its relation to taste. Amer. J.   Physiol.220:1162−1167. 8)Moore, C. R(1971)Specific inhlbition of mi−   tochondrial Ca++transport by ruthenium red.   Biochem. Biophys. Res. Comm.42:298−305. 9)Nomura, H.(1975)Effects of ruthenium red,   quinacrine hydrochloride, ethacrynic acid and   2,4−dinitrophenol on the water receptor of the   frog tongue. Jap. J. Physio1.,25:165−173. 10)野村浩道,河野のり子(1975)カエル舌水受容器   に対するNitrophenol化合物および界面活性剤の   抑制作用,医学,88:315−318. 11)野村浩道,河野のり子(1974)カエル舌粘膜表   面ATPアーゼの役割,歯基礎誌,17:492 12)Nomura, H. and IshiZaki, M.(1972)Effects of   anions on the chemoreceptor response of frog’s   tongue. Olfaction and Taste IV. 266−272,   Wissenschaftliche Verlagsgese】eschaft mbH,   Stuttgart. 13)Nomura, H. and Sakada,.S.(1965)On the water   response of frog’s tongue. Jap. J. Physiol.   15:433−443. 14)Rakhwy, M. T. E.(1963)Alkaline phosphatases   in the epithelium of the human tongue and a   possible mechanism of taste. Acta ianat.   55:323−342. 15)Wasserman, R. H. and Kallfelz, F. A.(1970)   Transport of calcium across biological mem−   branes. Biological calcification 313−345, ed. by   H. Schraer, Appleton−century−crofts, New   York. 16)Wins, P. and Schoffeniels, E.(1966)Studies on   red・cell ghost ATPase system:Properties of a   (Mg2+十 Ca2+)−dependent ATPase、 Biochim.   Biophys. Acta,120:341−350.

参照

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