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農山村住居の広間呼称とその概念基底 : 住空間の史的展開過程に関する研究 (その4)

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(1)

Kobe Shoin Women’s University Repository

Title

農山村住居の広間呼称とその概念基底

―住空間の史的展開過程に関する研究(その4)

Naming and Concept of the main rooms of the old

farmer's dwellings

Author(s)

島村 昇(Noboru Shimamura)

Citation

生活科学論叢(Review of Living Science)

No.22:19-109

Issue Date

1990

Resource Type

Bulletin Paper / 紀要論文

Resource Version

URL

Right

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農 山村住 居 の広 間呼 称 とそ の概 念基 底

住 空 間 の 史 的 展 開 過 程 に 関 す る研 究(そ の4)

1住 空 間 にお け る広 間 の 意 味 1.1広 間 の 定 義 1.2広 間 呼 称 の成 立 過 程 1.3広 間 呼 称 の発 生 メ カ ニ ズ ム 1.4広 間 呼 称 の伝 承 形 式 と呼 称 系 1.5広 間 呼 称 の 分 析 視 点 1.6広 間 呼 称 と住 空 間 の 発 展 史 2配 棟 形 式 に由 来 す る広 間 呼 称 2.1配 棟 形 式 と概 念 基 底 2.2「 主 」概 念 ・オ モ ヤ 系 広 間 呼称 2.3「 在 」概 念 ・ア ラ カ系 広 間 呼称 2.4「 家 」概 念 ・イ エ 系 広 間呼 称 2.5「 中」概 念 ・ナ カ イ系 広 間 呼称 2.6配 棟 形 式 と広 間 呼 称 3床 形 式 に 由 来 す る広 間 呼 称 3.1床 形 式 と概 念 基 底 3、2「 座 」概 念 ・ザ 系 広 間 呼 称 3.3「 上 」概 念 ・オ ウ エ 系 広 間 呼称 3.4「 台 」概 念 ・ダ イ 系 広 間呼 称 3.5「 庭 」概 念 ・ニ ワ 系 広 間呼 称 3.6床 形 式 と広 間呼 称 4.平 面 形 式 に 由 来 す る広 間 呼 称 4.1平 面 形 式 と概 念 基 底 4.2「 下 」概 念 ・シ モ 系 広 間呼 称 4.3「 前 」概 念 ・オ マ エ 系 広 間 呼 称 4.4「 表 」概 念 ・オ モ テ 系 広 間 呼 称 4.5「 広 」概 念 ・ヒ ロマ 系 広 間 呼 称 4.6平 面 形 式 と広 間呼 称 5ユ 住 様 式 に 由 来 す る広 間 呼 称 5.1住 様 式 と概 念 基 底 5.2「 常 」概 念 ・ジ ョウ イ系 広 間 呼 称 5.3「 出 」概 念 ・デ イ系 広 間 呼 称 5。4「 居 」概 念 ・イマ 系 広 間 呼 称 5.5「 茶 」概 念 ・チ ャ ノマ 系 広 間 呼 称 5.6住 様 式 と広 間 呼 称 6.住 空 間 と広 間 呼 称 の相 関 性 6.1概 念 基 底 と住 空 間 6.2概 念 ・呼称 系 と住 空 間 6.3伝 承 形 式 と住 空 間 6.4広 間呼 称 の 分 布 域 6.5広 間呼 称 の 重 層 性 6,6広 間呼 称 の 歴 史性 ・地 域 性

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1.住 空 間 に お け る広 間 呼 称 の 意 味 本 論 第1章 にお い て 、 白 山 ・山村 住 居 に オ ミヤ な る広 間 呼 称 が あ り、 それ が 古 代 的 性 格 を もつ 語 で あ ろ うこ と を指 摘 した。平 野部 の 農 村 住 居 で は 、オ エ な る呼 称 が 行 わ れ て お り、 山方 の オ ミ ヤ と里 方 の オ エ が 併 存 して い る事 実 をみ た。 里 方 の は オ エ は オ ウ エ(御 上)の 方 言 的 転 託 で あ り、 オ ウ エ は 中 世 の 近 畿 で 使 用 さ れ た 呼 称 で あ るか ら、歴 史 的 な 由 来 は か な り明 白で あ る。 しか し、 山方 の オ ミヤ は そ の 由 来 が 不 分 明 で あ っ た が 、 筆 者 は これ を オ モ ヤ(母 屋)の 転 読 と した の で あ っ た 。 しか し、考 えて み る と この オ ミヤ に しろ オ エ に し ろ、要 す る に 農 山村 住 居 の 中 心 的 な場 で あ る 広 間 に対 して何 ら か の 呼 称 が あ り、 そ の 呼 称 が いつ の 時 代 か らか 使 用 さ れ て きた もの で あ る 以 上 、 そ の呼 称 は 広 間 と密 接 に関 係 す る もの で あ り、過 去 の 広 間 の 状 況 を諸 に反 映 して い る こ とは 充 分 に予 測 され る。つ ま り、広 間 呼 称 を材 料 と して農 山村 住 居 の 住 空 間 の 発 展 過 程 が 展 望 で き る の で は な いか とお も え た。 そ して 、 そ の よ うな作 業 の 中で 、先 の オ ミヤ や オ エ な る広 間呼 称 の 意 味 も明確 に な り、 ま た そ の歴 史 的 性 格 も閏 明 さ れ る と考 え られ た 。 1.1広 間 の 定 義 本 論 に お け る広 間 呼 称 の ほ とん どは 、『日本 民 家 語 彙 集 解 』(日本 建 築 学 会 民 家 語 彙 集 録 部 会 編 、 日外 ア ソ シエ ー ツ 、1985年)に よ った 。 同書 の 室 名 の 中 に、 「土 間 の 上 に接 し炉 を備 え た 日常 の 居 室 」 とい っ た解 説 の あ る もの が か な りあ る。 こ れ が 本 論 で い う広 間 で あ る。 い わ ゆ る民 家 の 広 間 は 、 上 に挙 げ た よ うに 「炉 を備 え た 日常 の 居 室 」 で あ り、 住 空 間 に お け る 中心 的 な場 と して 永 ら く伝 承 され て きた 。 こ の 広 間 を 、「炉 の あ る起 居 の 場 」と解 す る と、 そ の よ うな 住 空 間 は縄 文 時代 の竪 穴 住 居 に まで 遡 及 す る こ とが で き る。これ は広 間 の 祖 型 とい い う る も の で あ る。以 降 、広 間 は 連 綿 と して 各 時 代 各 地 域 の 住 居 に受 け つ が れ て今 日に至 っ た 。 し た が っ て 、 広 間 の 歴 史 は核 心 的 な 住 空 間 の発 展 史 とみ な す こ とが で きる 。 広 間 呼 称 は こ の 広 間 と と もに存 続 して きた もの で あ る 。遠 い昔 の 住 居 は消 滅 して し ま っ て い て もそ の 呼 称 は伝 承 さ れ今 日 に至 っ た もの もあ ろ う。広 聞呼 称 は 、 い わ ば 歴 史 の 証 人 とい い う る も の で あ る。 な お 、 広 間呼 称 は数 多 くあ る の で 、 本 論 で は 統 一 的 に 「広 間 」 な る語 を使 用 し、 呼 称 と して の 広 間 は ヒ ロマ と片 仮 名 で 表 記 す る。 1.2広 間 呼 称 の成 立 過 程 上 に 述 べ た よ う に 、広 間 呼 称 は まず は歴 史 的 産 物 で あ る 。少 な くと も古 代 以 降 の 各 時代 に、 そ の と き ど きの住 居 形 式 や 住 様 式 に対 応 して 、あ る い は そ れ ら を反 映 して広 間呼 称 は 成 立 した 。こ

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れ は 時 間 軸 か らの視 点 で あ る。一 方 、あ る時 代 に成 立 し た広 間 呼 称 が 他 地 域 に伝 播 した 場合 、 当 該 地域 に お け る方 言 転 託 を閲 す る。単 純 に い えば 、そ の 地 域 の数 だ け の 広 間 呼 称 が 生 じ る こ とに な る。 こ れ は 空 間 軸 か らの 視 点 で あ る。 以 上 の 時 間 的(歴 史 的)要 因 と空 間 的(地 域 的)要 因 が 相 乗 的 に作 用 す る こ とに よっ て 、広 間 呼 称 は 歩数 の ひ ろ が りをみ せ て 今 日に至 っ た。 ち な み に、 本 論 で 扱 う広 間呼 称 の 数 は162に 達 し た。 以 上 の よ うに 、広 間呼 称 を考 え るに 際 して は、歴 史 的 視 点 と地 域 的視 点 を欠 くこ とが で きな い 。 歴 史 的 視 点 につ い て は 、 大 き く古 代 、 中世 、 近 世 、 近 代 、現 代 の 時 代 区 分 を尺 度 と し た。 広 間 呼 称 の発 生 時 期 は 、当該 呼 称 の 語 源 に 求 め 、資 料 と して は 、 『大 言 海 』、『岩 波 古 語 辞 典 』、『上 代 語 辞 典 』等 の 国語 学領 域 の 辞 典 類 に よ った 。 ま た 、 と くに建 築 史 にか か わ る用 語 につ い て は 、 『建 築 大 辞 典 』 を参 照 した 。 一 方 、地 域 的 視 点 に つ いて は 、資 料 の 関 係 もあ っ て 、現 行 の都 府 県行 政 域 を地 域 単 位 とす る が 、 と きに は その 半 分 くら い(た と えば 岐 阜 県飛 騨 地 方 とい った 範 囲)を 考 えね ば な ら な い場 合 もあ り、 また 、数 府 県 ぐ らい の ま とま り(た とえ ば 近 畿 地 方 とい っ た範 囲)、 ま た と きに は さ らに 大 き く東 日本 と い っ た マ ク ロ な視 点 も必 要 とな ろ う。北 海 道 に つ い て は 、民 家 史 と して は新 しい 地 域 なの で 除外 して い るが 、 ア イ ヌ住 居 の広 間 呼 称 す な わ ち ア イ ヌ 語 は今 後 の 課 題 で あ る。 また 、琉 球 列 島 に つ い て は 、南 九 州 等 の 関 連 す る地 域 でふ れ る。 した が っ て、 本 論 の 対 象 とす る 地域 は、 本 州 、 四 国 、 九 州 で あ る。 地 域 に 固有 な 方 言 に つ いて は 、 『日本 方 言 大 辞 典 』(全3巻)に よ っ た 。 その 他 の文 献 資 料 等 に つ い て は 、 そ のつ ど明 記 す る 。 1.3広 間 呼 称 の 発 生 メカ ニ ズ ム 広 間 呼 称 は 上 記 の よ う に歴 史 的 ・地 域 的産 物 で あ るが 、 あ る時 代 の あ る地 域 に お け る 広 間 呼 称 の 発 生 メカ ニ ズ ム に つ いて 考 え る と次 の よ う に な ろ う。 も と も と広 間 とい う住 空 間 内 の 一 定 の 空 間 は、無 色 透 明 な無 名 の 空 間 的 存在 で あ る 。 この 空 間 に 呼 称 が 付 与 され るに は 、 まず その 必要 性 が 生 じな けれ ば な ら な い。 つ ま り、 広 間 呼 称 の 必 要 性 とい うこ とで あ る。 この こ とは 実 に あ た りま え の こ とで あ るが 、重 要 な こ とで あ る。 た と えば 、 広 間 だ け の単 室 住 居 の 場 合 、原則 的 に呼 称 は 必 要 で な い 。住 空 間 が複 数 の 室 に よ って 構 成 さ れ た と き、 広 間 を他 の 諸 室 と区 別 す る ため に 室 呼 称 が要 求 され るか ら で あ る。 さて 、 次 に 広 間 呼 称 が 要 求 され た と き、 人 び とは どの よ うに し て呼 称(室 名)を つ け た で あ ろ うか 。 こ れ が 広 間呼 称 の 発 生 メ カニ ズ ム で あ る。 まず 、そ の メ カ ニ ズ ム を図4-1に 図 示 す る。 図 の メ カ ニ ズ ム は 人 間 の 広 間 につ い て の 認 識 構 造 と い っ て も よ い もの で あ る 。人 び とが 広 間 を どの よ うに 把 え 、 その 認 識 結 果 に 基 づ い て い か に適 しい ネ ー ミン グ を行 っ た か と い う こ とで あ る。客 体 とな る広 間 をみ 、 ま た そ こ で の 生 活 体 験 を通 して 、主 体 と な る人 間 は あ る概 念 を え る 。 た と えば 「広 い」 とい う概 念 で あ る。 そ こ か ら ヒ ロ マ(広 間)な る呼 称 が 生 れ るが 、 実 の とこ ろ

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図4-1広 間 呼 称 の 発 生 メ カ ニ ズ ム 広 間 を 「広 い 」 と認 識 す る に 先 だ っ て 、 一 般 的 な社 会 通 念 と して の 「広 い」 とい う観 念 が 存 在 す る。 「広 い 海 」、 「広 い 野 原 」な どに み られ る 「広 い」 とい う観 念 で あ る。 も ち ろ ん 、 広 間 な る 空 間 は 海 の よ うに 、 ま た 野 原 の よ うに 広 い わ け で は な い。 しか し、住 空 間 内 の 空 間 的 ひ ろが りに お い て 広 間 は他 の 室 に 比 して 「広 い 」の で あ る。 こ こ に お い て 、 一 般 的 な観 念 で あ る 「広 い 」が 広 間 の 属 性 を表 現 す る1つ の概 念 と して 定 立 さ れ るの で あ る。 この よ うに 、広 間 に関 す る概 念 が 定 立 され る た め に は、社 会 的通 念 と して の 観 念 が 先 行 して 存 在 して い る が 、 こ の観 念 は あ らゆ る 自然 的 事 象 、 社 会 的 事 象 を含 ん で い よ う、 そ して 、 そ の 包 括 的 な観 念 の 中 か ら、 広 間 に適 し い観 念 が選 び 出 さ れ 、広 間 に関 す る概 念 が つ くられ る。 そ の 際 、 その概 念 は 広 間 の あ る属 性 を基 底 と し、 あ る い は そ の 属 性 に触 発 さ れ て 結 実 す る の で あ る。そ の 属 性 な い し触発 源 とな る事 象 を概 念 基 底 と呼 ぶ 。 す な わ ち、 客 体(対 象)と な る広 間 を み 、 ま た 体 験 す る 人 び と(主 体)の 頭 の 中で は広 間 の あ る属 性 が 概 念 基底 と して 把 え られ 、 そ こ か ら1個 の概 念 が定 立 され 、 コ トバ(呼 称)が 生 れ る。 以上 が 図 の 説 明 で あ る。 1.4広 間 呼 称 の伝 承 形 式 と呼 称 系 広 間 に 関 す る あ る概 念 が 定 立 し、 そ こ か ら呼 称 が 生 まれ る と、 そ の 地 域 で 一 定 期 間 そ の 呼 称 が 使 用 さ れ る。そ れ は あ る地 域 に お け る広 間呼 称 の 伝 承 と い うこ とで あ る。 こ の 広 間 呼 称 が 他 地 域 に伝 え られ 、 その 地 域 で も使 用 され る よ う に な っ た 場合 、 こ れ は 伝 播 な い し波 及 で あ る。 広 間 呼 称 の 伝 承 に つ いて は 、時 代 の 推 移 につ れ て も との広 間 呼 称 が 変 っ た 意 味 で 使 用 され る よ う に な る場 合 も生 じ るで あ ろ う。 ま た、 ま っ た くも との ま まの 意 味 で 使 用 され る場 合 も あ るで あ ろ う。 い ず れ に して も、種 々 の 伝 承 方 法 が予 想 され る の で 、 こ こ に 伝 承 形 式 と い うこ とを考 え て お く。 次 に 、広 間呼 称 の 伝 播 な い し波 及 の 問題 で あ る。1つ の 広 間 呼 称 が あ る 地 域 か ら他 の 地 域 へ 伝 播・した場 合 、 と うぜ ん 方 言 転 読 に よ っ て発 音 が 変 り、一 見 別 の 呼 称 の よ うに み え る場合 もあ るだ ろ う。 しか し、 そ の 場 合 で も も との 呼 称 が 同 じで あ れ ば 、 同一 の 呼 称 と して 扱 っ て よ いか らそ の

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一群 の呼 称 を呼 称 系 とす る ま た、 あ る地 域 に複 数 の 広 間 呼 称 が併 存 す る場 合 が あ る。 そ の大 き な 理 由 と して は、 時期 を別 に した広 間呼 称 の 使 用 とい う こ とが 考 え られ る。古 い 呼 称 と新 しい 呼 称 が 重 層 的 に併 存 す る とい う こ とで あ る。こ れ は そ の 地 域 の 住 居 の 変 遷 とか か わ る もの で あ り、住 空 間 の あ る種 の転 換期 に 生 ず る可 能 性 が 大 き い とお もわ れ る。 1.5広 間 呼 称 の分 析 視 点 以 上 の よ うに 、 広 間 呼 称 に つ い て 「概 念 基 底 」、 「概 念 」、 「伝 承 形 式 」、 「呼 称 系 」 な どの考 え方 を示 した。 しか し、実 際 に資 料 と して わ れ わ れ の 目の 前 に あ るの は 、 多数 の 広 間呼 称 で あ る。 し た が って 、 作 業 と して は逆 の 方 向 、 結 果 と して の 広 間 呼 称 か ら 「系 」 や 「伝 承 形 式 」 や 「概 念 」 や 「概 念 基 底 」 に 到 達 しな け れ ば な らな い 。 まず 最 初 に行 っ た 作 業 は 、概 念基 底 に よ る分 類 で あ る 。概 念 基 底 は4種 類 に な っ た。す な わ ち、 ① 配 棟 形 式 、② 床 形 式 、③ 平 面 形 式 、 ④ 住 様 式 が それ で あ る。 そ して 、 それ ぞ れ の 概 念 基 底 の 中 に3∼4種 の概 念 が 認 め られ た 。 た と えば 、 ヒロ マ な る広 間呼 称 につ い て い え ば 、 こ れ の概 念 基 底 は③ 平 面 形 式 で あ り、 よ り具 体 的 に は 室 規 模(床 面 積)に 関 す る もの で あ る。 そ して 、 そ の 場 合 の概 念 は 「広 」で あ る。 つ ま り、 概 念 基 底 に よ る分 類 を大 分 類 とす れ ば 、 概 念 に よ る分 類 は 中 分 類 と な る。 次 に 、 呼 称 系 に つ い て は 、概 念 の 中 に小 分 類 と して 分 類 され る。 た とえば 、 上 記 の 「広 」 につ い て い えば 、 ヒロ マ(広 間)、 ヒ ロ シ キ(広 敷) 、 オオ ヒロマ(大 広間)な どは、 ヒロマ系 であ り、 ア ダ(徒)、 ア ダ ノマ(徒 の 間)な どは ア ダ系 で あ る。 こ の よ う に、1つ の 概 念 の 中 に い くつ か の 呼 称 系 の あ る場 合 もあ るが 、と くに一 般 的 な呼 称 系 は そ の概 念 を代 表 す る代 表 呼 称 系 とい うこ と が で き る。 最 後 に 、伝 承 形 式 に つ いて は 、呼 称 系 の 中 で の ヴ ァ リエ ー シ ョン を考 察 す る こ とに よ って1つ の 呼 称 が歴 史 的 に どの よ うに変 容 した か が 判 明 す る。 以 上 を要約 す る と次 の よ う に な ろ う。 (1)概 念 基 底(大 分 類)① 配 棟 形 式 、 ② 床 形 式 、 ③ 平 面 形 式 、④ 住 様 式 ② 概 念(中 分 類)た と え ば 「広 」 (3)呼 称 系(小 分 類)た とえ ば 、 ヒ ロ マ 系 とア ダ系 (4)伝 承 形 式 呼 称 系 内 の 歴 史 的 変 容 (5)伝 播 な い し波 及 呼 称 の分 布 域 1.6広 間呼 称 と住 空 間 の 発 展 史 広 間 呼 称 を 以 上 の よ うな 方 法 論 に よ っ て 考 察 しよ う とす る の で あ るが 、 そ の 予 備 的 作 業 と し て 、呼 称 の 成 立 背景 とな る住 空 間 の 発 展 過 程 を概 観 して お きた い 。従 来 の 民 家 学 、建 築 史 学 の 成

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果 お よ び前 章 まで に得 た拙 論 の知 見 に 基 づ き、 主要 な事 項 を列 挙 す る。 (1)小 棟 分 立 の 多棟 構 成 か ら1棟 化 へ の 発 展(局 部 的 な分 棟 化 もあ る) ② 床 形 式 の 発 展(土 座 → 低 床 → 揚 床) (3)住 空 間(主 屋)内 へ の 前庭(ニ ワ)の 内 部 化(主 屋 内 土 間 の 成 立) (4)住 空 間 の 多室 化 ㈲ 住 空 間 の整 合 的 な列 段 構 成 化 (6)妻 入 りタ テ屋 造 か ら平 入 りヨ コ屋 造 へ の 転 換 (7)広 間 の 確 立 (8)広 間 の 前 後2分 割

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(9)広 間 の 土 間(ニ ワ 〉 へ の 拡 大 ⑩ 炉 を か こ む 広 間 で の 住様 式 の確 立 と発 展 以 上 は農 山村 住 居 に お け る住 空 間発 展 過 程 の 主 要 な事 項 で あ るが 、こ れ らの 現 象 は地 域 、階 層 に よ っ て 出 来 す る時 期 は ま ち ま ち で あ ろ う。 しか し、全 国 的 にみ る と大 きな 流 れ と して 、近 世 後 期 か ら近 代 に か けて 今 日み る とこ ろ の 農 山村 住 居 は 完 成 さ れ た とい え る。 そ の結 果 と して 、わ が 国 の 民 家 は 図4-2に 示 す よ うな分 布 とな っ た。 その 際 、民 家 の 位 置 す る地 域 の 気候 風 土 が及 ぼ す 影 響 も無 視 で きな い要 因 と考 え られ る の で 寒 冷 地 域 、 多雪 地 域 を併 列 して 示 して い るが 、寒 冷 多雪 な 東 北 か ら北 陸 へ か けて の ゾ ー ン と広 間 型 の分 布 域 は よ く一 致 して い る し、比 較 的 温 暖 な西 日本 で は4間 取(田 字 型)、 南 九 州 で は南 方 系 住 居 の 影 響 が 明 らか で あ る。 以 上 の よ うな民 家 の歴 史 的 ・風 土 的 成 立 背 景 を も基 盤 に 据 え な が ら 、 広 間 呼 称 に つ い ての 検 討 を以 下 に す す め て み た い 。 2.配 棟 形 式 に 由 来 す る広 間 呼 称 当初 で 述 べ た よ う に、広 間 呼 称 が発 生 す る た め には 、 ま ず 広 間 を どの よ うに把 え る か と い う認 識 方 法 の 問 題 が あ る。 そ して 、 その 認 識 の結 果 が 概 念 と して一 般 に定 着 して は じめ て 呼 称(話 し コ トバ)が 発 生 し通 用 す る。 遠 い昔 、 まだ 農 山村 住 居 が ネ ブ キ ゴヤ の よ う な単 室 住 居 で あ っ た 頃 に は今 日み る とこ ろ の 広 間 は な か っ た。単 室 の 内 部 空 間 は 、確 か に今 日の 広 間 的 機 能 を も っ て い たが 、他 の 室 との 関 係 に お い て 発 生 す る呼 称 、 た と えば ヒロ マ(広 間)な る呼 称 は 生 れ る は ず が な い。 しか し なが ら、 こ の 単 室 の 内部 空 間 は今 日の 広 間の 祖 型 と考 え られ る の で 、当 時 一 般 に行 わ れ て い た 呼 称 が 後 代 まで 伝 承 され 、広 間 呼 称 と して 生 きて い る か も知 れ な い 。 も しそ の よ うな 広 間 呼 称 が伝 承 さ れ て い た とす れ ば 、 それ は も っ と も起 源 の 古 い呼 称 とい わ ね ば な らな い。時 代 的 に は 、古 代 あ る い は そ れ 以前 に遡 行 す る こ とは確 実 で あ る。 さ て 、単 室 の 内部 空 間 は ど の よ う に認 識 され 、一 般 的 な 概 念 と して 定 着 し、呼 称 が発 生 して い たの か 、本 節 で は そ の 辺 の事 情 につ い て 考 え て み た い が 、当 時 の 農 山村 住 居 の大 きな 特 色 は小 棟 分 立 の 多棟 構 成 で あ る 。 まず 最 初 に 配 棟 形 式 を挙 げ た ゆ え ん で あ る。 2.1配 棟 形 式 と概 念 基 底 農 山 村 住 居 は 、 一 般 に複 数 の棟 か ら構 成 され る。 居 住 用 の主 屋 の 他 に 、 納 屋 ・倉 ・厩 ・厩 な ど を付 属 し、 そ れ らが全 体 と して1つ の 居 住 空 間 を構 成 す る。 す な わ ち、主 屋 と付 属 屋 に よ る 多 棟 構 成 を もっ て 居 住 空 間 は 完 結 す るの で あ る。と くに 農 山村 の 経 済 的 水 準 の 低 い段 階 に お い て は 、 大 建 築 物 の 構 築 は不 可 能 で あ り、粗 末 な 小 棟 を分 立 させ 、そ れ らが総 体 と して農 山村 の 生 産 と生

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活 を支 えた 。 こ う した傾 向 は 、先 にふ れ た 白山 の 山村 住 居 に もみ え て い た 。 す な わ ち、居 住 用 の 主 屋 とな る イエ(家)の 他 に 、 コヤ(小 屋)・ セ ンチ ン(雪 隠 ・便 所)・ ウマ ヤ コヤ(馬 屋 小 屋)な どが み え た。近 世 にお い て は 、 白 山 の よ うな豪 雪 地 帯 にお い て も、 まだ 小 棟 分 立 の 多棟 構 成 を とっ て い る の で あ る。 また 、後 にふ れ る近 世 加 賀 藩 の平 野 部 の農 村 にお いて も こ の 事 実 は み とめ られ る と こ ろ で あ り、 近 世 文 書 に も イヤ(居 家)と ナ ヤ(納 屋)、 イエ(家)と ア セ チ(庵 室)あ る い は ウマ ヤ(馬 屋)が ワ ン セ ッ トと して 記 録 に計 上 され て い る。 この よ う な 多棟 構 成 は、歴 史 的 に み て いつ 頃 まで 遡 及 す る こ とが で き るの で あ ろ うか 。 こ れ に つ い て は 、考 古 学 の 論 述 が参 考 に な り、図4-3は 、す で に古 墳 時 代 に 多棟 構 成 を と って い た こ と を示 す もの で あ るが 、 今 後 の 研 究 に よっ て さ らに 古 い 時 代 に遡 行 す る可 能 性 を もっ て い る。 図4-3古 代 に お け る居 住 空 間 の 多 棟 構 成 例 資 料)石 野 博 信 『日本 原 始 ・古 代 住 居 の 研 究 』(吉 川 弘 文 館 、 平 成2年 、A図:P。418、B図 P.423) 注)A図:大 阪 ・宮 ノ 前(8世 紀)、B図:大 阪群 家 今 城(東)(8∼9世 紀)、 ● 印 一 井 戸 こ の よ うに古 い 歴 史 を もつ 多棟 構 成 も、 時代 が 降 る に した が っ て 、 社 会 的 ・風 土 的 条 件 に よ っ

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て 、 や が て1棟 化 の傾 向 を た ど り、 民 家 学 の い う 「曲 り屋 」 や 「中 門造 」 な ど に定 形 化 され て い くが 、 それ は近 世 以 降 の こ とで あ り、広 間呼 称 の 中 に は 、1棟 化 以 前 の 多棟 構 成 時 代 の 呼 称 法 を 伝 承 す る とみ られ る もの が あ る。 本 節 で は 、 そ の よ うな 多棟 構 成 時代 の 居 住 用 建 物 で あ る主 屋 ・ 主 棟 等 に 由 来 す る広 間 呼 称 につ い て考 え た い。 2.2「 主 」 概 念 ・オ モヤ 系 広 間 呼 称 本 論 第1章 、第4節 に お い て 、 白 山 ・山 村 住 居 の 広 間 呼 称 に オ ミヤ な る 耳 慣 れ な い呼 称 が あ り、 その 古 代 的 性 格 に言 及 して 、 そ れ が オ モ ヤ(母 屋)に 由 来 す るで あ ろ う こ と を述 べ た 。 母 屋 は配 棟 形 式 上 、 中 心 的 な建 物 で あ り、 本論 で は こ れ を 「主 屋 」 と表 記 す る 。 さ て、 こ の 主 屋 とな るオ モ ヤ は 、 また モヤ と もい わ れ 、 古 くは 「身 舎 」 ま た は 「身屋 」 な る字 を当 て て い る。 国 語 学 の教 え る とこ ろ に よ る と、 モ は ミ(身)の 古 形 ム か らの 転 と され て お り、 モ ヤ な る語 の 成 立 過 程 が よ くわ か る。 す な わ ち 、 「本 体 」 「主 体 」 を意 味 す るム ま た は モ(身)に 建 物 を指 示 す るヤ(舎 、 屋)が 付 加 され て 、 ム ヤ ま た は モヤ が 成 立 した とみ られ る の で あ る。 モ ヤ な る語 は今 日 にお い て も広 く使 用 され て い るが 、ム ヤ な る語 は 一 般 的 で な くな って い る。 しか し、 ま っ た くな くな っ て い る わ け で は な い。 「家 作 材 木 帳 」(新 潟 県 小 千 谷 市 、 大 渕 家蔵 、 文 政12年 ・1829、 『越 後 の 民 家 ・中越 篇 』 新 潟 県 む や は り 教 育 委 員 会 、 昭 和54年 、 所 収)の 中 に、 「親 屋 梁 五 丁 」 な る 記 述 が み え る。 こ の ム ヤ(親 屋)は 、 同帳 にみ え る他 の 室 呼 称 、 ウマ ヤ(馬 屋)、 ニ ワ(庭)、 ネヤ(臥 房)、 ヘ ヤ(部 屋)、 ミズヤ(水 屋)、 カマ ヤ(釜 屋)な ど と同 じ く住 空 間 内 の 一一定 の場 所(室)を 示 して い る こ とは 明 らか で 、 同 帳 の 指 図 に よ り上 の 室 呼 称 を配 す る と、 ム ヤ は広 間 部分 を指 す こ とが わ か る(図4-4)。 こ の 近世 民 家 は 民 家 学 の い う 中 門造 で 、前 方 の ウ マ ヤ と後 方 の ネ ヤ 、側 面 の ミズ ヤ が 突 出 し、 そ れ ぞれ が 中 門 を形づ く り、全 体 と して 一 棟 化 し、 多室 化 して お り、 この 平 面 形 式 は か な り発 展 した段 階 の もの で あ るが 、 そ の 中心 的 な広 間 の呼 称 に ム ヤ(親 屋)を 使 用 して い る こ とは 注 目 さ れ る。 ま た、 ム ヤ に 「親 屋 」 な る字 を 当 て て い るの も妙 を えて い る。 広 間部 分 が 本 来 主体 とな る 初 源 的 な 住 空 間 で あ り、そ の 他 の 諸 室 は こ れ に 付 加 され た もの で あ る とい う歴 史 性 を よ く表 現 し て い るか らで あ る。 近 年 同 地 域 で は 、 この 広 間部 分 を チ ャ ノマ(茶 の 間)と 呼 ん で い るが 、 上 の ム ヤ は い う まで も な く、 チ ャ ノマ よ り古 い呼 称 法 で あ り、 こ こ に も広 間呼 称 の 変 遷 が み とめ られ る。 ム ヤ が 近 世 後 期 に使 用 され て い た事 実 を勘 案 す る と、チ ャ ノマ な る呼 称 は 、す くな く と も近 代 に入 って か ら の 呼 称 と考 え ざ る をえ な い。 い ず れ に して も、 ム ヤ な る広 間 呼 称 が近 世 に存 在 し、 そ れ は 住 空 間 の 中心 的 な部 分 を指 して い る と い うこ とが 重 要 で あ る。お そ ら く、 この 中 門造 の 民 家 も時代 を遡 行 す れ ば 、ムヤ な る居 住 用 の 主 屋 と付 属 屋 か ら成 る 多棟 構 成 を と って い た で あ ろ う。新 潟 県 は 多雪 地 帯 で あ り、小 千 谷 は 県 下 で も有 数 の 豪 雪 地 域 で あ る。 こ う した風 土 的 条 件 が 住 空 間 の 集約 的1

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図4-4広 間 呼 称 と して の ム ヤ(親 屋) 資 料)「 家 作 木 材 帳 」(新 潟 県 小 千 谷 市 、 大 渕 家 蔵 、 文 政12年 ・1829)、 『越 後 の 民 家 ・中 越 篇 』(新 潟 県 教 育 委 員 会 、 昭 和54年 」 所 収 。 注)1.平 面 図 は 同 帳 の 指 図 に よ り筆 者 作 図 。 2.室 名 は 文 書 に現 れ る も の の み に よ り、当 地 の 一 般 的 な 呼 称 は 使 用 し て い な い 。当 地 の 一 般 的 呼 称 で は 、 上 図 の ヘ ヤ は デ エ(出 居)、 ム ヤ は チ ヤ ノマ(茶 の 間)と な っ て い る。 棟 化 を促 進 した こ とは容 易 に推 定 しう る とこ ろで あ る 。 以 上 は モヤ の 古 形 と して の ム ヤ に つ い て ふ れ た の で あ るが 、お も う に この ム ヤ な る語 は 、モ ヤ の 越 後 的方 言 と い うよ りは 、わ が 国 の 古 語 の残 遺 とみ な すべ きで あ ろ う。古 代 の 中 央 に お い て は ム ヤ → モヤ の 変 化 を 閲 した が 、地 方 に お い て は よ り古 い ム ヤ が 残 存 し た と考 え るの で あ る。次 に この モヤ の発 展 形 と して の オ モヤ につ い て み る。 オ モ ヤ(母 屋)な る 呼 称 も、 や は り付 属 屋 に対 す る主 屋 の意 味 に今 日で も広 く使 用 さ れ て い る。 平 安 時代 の 寝 殿 造 と よば れ る 公 家 住 宅 の 空 間 構 成 手 法 と して、 オ モ ヤ(母 屋)・ ピサ シ(庇 、 廟) の構 成 は 、有 名 で あ る。主 屋 の 中心 とな る本 屋 部 分 をオ モヤ 、そ の ま わ りに張 りめ ぐ ら され る幅 一 間 の 下 屋 部 分 を ピサ シ(ま た は ピサ シの 間)と よぴ 習 わ した。 こ の場 合 の オ モ ヤ は、 住 空 間 内 の 「主 体 とな る 空 間 」 を指 す 空 間 呼 称 と して 使 用 され て い るが 、 先 の ム ヤ や モ ヤ にみ られ た主 屋 概 念 を受 け つ いで い る。 す な わ ち、 主 屋 に ピサ シ が付 加 され た とみ な し う る か らで あ る 。 この よ うな オ モヤ ・ピサ シの構 成 は 、後 の 農 山 村 住 居 に も受 けつ が れ 、 群 馬 、 千 葉 、 富 山、 石 川 、福 井 、長 崎 、 宮 崎 な どで は 本 屋 部分 を オ モ ヤ とよ ん で い る(図4-5)。 こ の 場 合 、 図 の ゲ ヤ に 当 る と こ ろが ピサ シで あ る こ とは い う まで もな い 。 そ して、本 来 付 属 屋 に対 す る主 屋 を指 示 す る モヤ(さ らに古 くは ムヤ)が 建 物 の 主 た る 内部 空 間 を指 す 呼 称(オ モ ヤ)と もな って 、 一 定 の

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意 味 的 ひ ろ が りを もつ に 至 る。 した が って 、一 般 的 で な い ム ヤ は 別 と して 、モ ヤ とオ モ ヤ は ひ じ ょ うに近 い 関係 に あ り、ほ とん ど 同義 と して使 用 され る場 合 が あ る が 、筆 者 と して は ムヤ → モ ヤ → オ モ ヤ を建 物 の 発 展 過 程 と対 応 させ た い と考 え る。 図4-5農 山村 住 居 に お け るオ モヤ ・ゲ ヤ の 構 成 資 料)前 出 『日本 民 家 語 彙 解 』(オ モ ヤ の 項)に よ る 。 しか し、いず れ に して もモ ヤ な い しオ モ ヤ が 主 屋 な し い は 主 屋 の 主 た る 内 部 空 間 を指 示 す る こ とは 明 らか で あ り、そ の 延 長 線 上 に広 間呼 称 と して の オ モヤ も存在 す る もの と考 え るの で あ る。 本 論 第1章 、 図1-17「 室名 と して の オ モヤ 」 に示 し た よ うに 、 広 間 呼 称 と して ス トレー トに オ モ ヤ が 使 用 され て い る。こ の 場合 の 広 間 呼 称 は 、同 時 に オ モ ヤ → オ エ の 変 化 を も示 して い た の で あ っ たが 、前 出 『日本 民 家 史 』(P.670)に も同家 の 広 間呼 称 と して オ モ ヤ を採 集 して い る(図4-6)。 そ の他 、 桑 谷 正 道 『飛 騨 の 系 譜』(日 本 放 送 出版 協 会 、 昭和46年 、P.165)、 佐 名 木 熈 『白川 郷 』白川 郷 合 掌文 化 研 究 室 、 昭 和53年 、P.5)の 平 面 図 の 室 名 もオ モ ヤ(オ エ)を 採 用 して い る。 こ れ らは す べ て 同 家 の 広 間 呼 称 が オ モ ヤ → オ エ に変 化 して い る こ と を示 して お り、かつ て広 間が オ モ ヤ とよ ば れ て い た こ とが わ か る。 一 方、 オ モ ヤ の 方 言 的 意 味 を み る と、 岐 阜 県 飛 騨 地 方 で は 「入 り 口の 次 の 間」 を指 し、 や は り 本 論 で い う広 間 を指 して い る。先 の 遠 山家 の み な らず この 地 方 で は一般 に 広 間 を オ モ ヤ と よん で い た こ とが わ か る。 この 事 実 に よ っ て 、オ モ ヤ が 室 呼 称 と くに 広 間 呼 称 と して 使 用 され て い た こ とを識 るの で あ るが 、ふ り返 っ て み る と、住 空 間 に 関 連 す る オ モ ヤ の 意 味 は 次 の3つ に わ た って い る。

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図4-6広 間 呼 称 と しての オ モ ヤ(母 屋) 資 料)前 出 『日本 民 家 史 』(P.670、 岐 阜 県 、 遠 山 家)の 図 。 同 書 、P.672に 次 の 説 明 が あ る。 「畳 は ザ シ キ と仏 間 と、 中 の デ 即 主 人 の 寝 所 の み で あ っ た 。帳 台 の 奥 は 三 畳 位 で 主 婦 、っ ぎ の 広 い テ ウ ダ イ は莚 の 間 で 、こ こ に 数 女 の 寝 床 が あ る。口 の デ は 男 子 の 寝 室 、板 の 間 で あ る が ム シ ロ を し い て 五 つ ば か り寝 床 が とっ て あ っ た 。 オ モ ヤ 或 は オ エ は 莚 を し き 中 央 に 囲 炉 裏 が あ り、 小 天 井 が つ い て い る。 オ エ は 別 にニ ツ ク ドが あ っ て 茶 が わ い て い る。」 (1)棟 呼 称 付 属 屋 に 対 す る 主 屋 を指 す ② 内部 空 間 呼 称 庇 や 下 屋 に対 して 主 屋 内 の本 屋 部 分 を指 す (3)室 呼 称 炉 の あ る 日常 の居 室 と して の 広 間 を指 す この よ うな オ モ ヤ の 意 味 的 ひ ろが りは 、と りも なお さず建 物 の発 展 につ れ て そ の 意 味 内 容 が拡 大 的 に変 容 した こ と を示 す もの で あ ろ う。小 棟 分 立 の 多棟 構 成 を とっ て い た 時 代 の 、主 屋 とな る 居 住 用 の建 物 を指 示 す るモ ヤ(さ ら に古 くは ムヤ)、 主 屋建 物 が 発 展 して ま わ りに ピサ シ(ゲ ヤ) を付 加 して 住 空 間 を拡 大 した 時 代 の 本 屋 部 分 を指 示 す るオ モ ヤ 、こ う した流 れ は 今 日 まで つ づ い て い るが 、 要 す る に モ ヤや オ モヤ は 「主 た る建 物 」、 「主 た る内 部 空 間 」 を意 味 す る もの で あ る。 農 山村 住 居 が まだ 初 源 的 な単 室 住 居 で あ った 時 代 、モ ヤ は い くつ か の 棟 の 中の 主 屋 を指 示 し た で あ ろ うが 、 後 、 主 屋 の 規模 拡 大 ・多室 化 に つ れ て モ ヤ(オ モ ヤ)は 中心 的 な本 屋 部 分 の呼 称 と もな り、 ま た本 屋 部 分 の 室 呼 称(す な わ ち広 間呼 称)と して も使 用 さ れ る よ うに な っ た。 飛 騨 地 方 に純 粋 な形 で 残 っ て い た オ モ ヤ な る広 間呼 称 は、上 述 の よ う な流 れ の 中 で 把 え られ ね ば な ら な い で あ ろ う。 第1章 に お い てふ れ た 白 山 ・山 村 住 居 の オ ミヤ な る広 間呼 称 も、 こ の オ モ ヤ な る広 間呼 称 の 転 設 と考 え るの で あ る 。飛 騨 と白 山 は 山 つ づ きで あ り、地 域 的類 縁 性 か ら も両 者 の 血 縁 関係 が 想 定 さ れ る。 す な わ ち、 い ず れ も山 方 文 化 圏 で あ る。

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さ らに後 代 に な る と、オ モ ヤ な る語 は建 物 関 係 以外 の 、い わ ば 社 会 的 事 象 に ま で流 用 され る よ うに な る。① 分 家 に対 す る本 家 、② 別 家 に対 す る主 家 、③ 借 家 人 に対 す る大 家 な どが それ で あ る。 これ らは い ず れ もオ モ ヤ の 「主 」概 念 か ら流 用 され る よ うに な っ た もの で あ ろ うが 、 と くに① の 本 家 をオ モ ヤ と称 す る地 域 は全 国各 地 域 に あ り、 群 馬 ・新 潟 ・富 山 ・石 川 ・福 井 ・岐 阜 ・三 重 ・ 京 都 ・大 阪 ・兵 庫 ・奈 良 ・和 歌 山 ・島 根 ・広 島 ・徳 島 ・香 川 ・愛 媛 ・高 知 ・長 崎 ・態 本 ・大 分 ・ 宮 崎 が そ れ で あ る。 こ れ らの 地 域 で本 家 をオ モ ヤ と称 す る に至 っ た 理 由 は 、す で に 明 らか な よ う に、 オ モ ヤ(主 屋)を 本 家 に 見 立 て 、 分 家 を付 属 屋 に 見 立 て た た め で あ る。 家 族 類 縁 の 人 間 関 係 に建 築 関係 用 語 が 転 用 され て い るわ けで あ る。 さ て 、こ の よ うな 本 家 を意 味 す る オ モ ヤ も地 域 的 な 方 言 転 詑 に よ っ て 、か な りの ヴ ァ リエ ー シ ョンが あ る。① オマ ヤ[新 潟]、 ② オ メ メ[栃 木]、 ③ オ メヤ ー[栃 木]が そ れ で あ る。 これ らは オ モヤ の方 言 転 詑 の実 例 と して 注 目 され る と こ ろで あ り、 白山 ・山村 住 居 の 広 間呼 称 オ ミヤ も実 際 に は 、第1章 で 述 べ た よ う に、 オ ミャ 、 オ ミャ ア 、 オ メア 、 オ メ ヤ ア 、 オ マ ア な どの ヴ ァ リエ ー シ ョン を も っ て い るか ら、 これ ら と上記 のオマヤ、オ メメ、オ メヤー な ど とはほ とん ど完全 に 重 な りあ うの で あ る 。 す な わ ち 、 オ ミヤ が オ モ ヤ に 由来 す る こ と を識 る の で あ る。 本 論 第1章 に お い て 、 『日本 農 民 建 築 ・第8輯 』の福 島 県 の 部 に 、 広 間呼 称 と して 、 オ マ エ 、 オ メエ 、 オ モ ヱ 、 オ モ メヱ な る語 が 採 集 さ れ て い る こ と を述 べ た が 、 『日本 民 家 語 彙 集 解 』に採 録 さ れ て い る同 類 の 語 を も含 め て、 オ モ ヤ(母 屋)系 と 目 され る広 間 呼 称 を列 挙 す る と次 の よ うで あ る。 ① オ モ ヤ(母 屋)[岐 阜]、 ② オ マ ヤ(母 屋 の 転)[新 潟]、 ③ オ ミヤ(同)[石 川]、 ④ オ メ ア (同)[新 潟]、 ⑤ オ モ エ(同)[福 島]、 ⑥ オ モ メ ヱ(同)[福 島]、 ⑦ オ メ ヤ ー(同)[栃 木]、 ⑧ オ メ メ(同)[栃 木]、 ⑨ オ メ エ(同)[福 島 、 長 野]、 ⑩ オ メ イ(同)[福 島] この うち 、⑧ オ メ メ、 ⑨ オ メエ 、 ⑩ オ メ イは 後 述 す る オマ エ(御 前)の 転 設 で あ る可 能 性 も も って い る が 、片 仮 名 表 記 に よ る場 合 、方 言 の 微 妙 な発 音 差 が わ か らな い の で 判 定 が む つ か し い。 最 後 に、 『日本 農 民 建 築 ・第8輯 』(P.77)に あ る次 の文 を 引 用 して お きた い。 オ モ メヱ と いふ の は 広 い板 問 で茶 の 間 と もい ひ 中 央 にユ ル リが あ り北 会 津 郡 地 方 の オマ エ は オ メエ と同 じ もの で あ るが 、新 潟 県 佐 渡 郡 及 び 富 山 県 地 方 で オ イエ と称 す る もの と 同 じ 語 源 で あ ろ う。但 し我 々 外 来 者 に対 して は普 通 広 間 又 は 茶 の 間 とい ひ、オ モ メ ヱ とは い は ぬ 。 こ の 引 用 文 の 中 に は 、 オ モ メ ヱ 、 オ マ エ 、 オ メ エ 、 オ イ エ の4つ の 広 間 呼 称 が 現 わ れ て い る 。 原 著 者 は こ れ ら を す べ て 同 じ 語 源 と推 定 し て い る が 、 こ の う ち オ イ エ は 後 述 す る よ う に 、 オ ウ エ

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(御上)の 転 で あ り、 現 在 京都 に お い て使 用 され て い るオ イエ と同 じで あ る。 オ モ メヱ は上 述 の よ うに オ モヤ(母 屋)の 転 詑 で あ ろ う。 オ マ エ は後 述 す る 「御 前 」 で あ り、 オ メエ は 「御 前 」 か 「母 屋 」の い ず れ か 判 定 が む つ か しい 。 お も うに 、 こ の 引 用 文 の 中 に は 、 一 見 同 じ語 源 とみ られ る 広 間 呼 称 が 集 中 的 に記 録 され て い る が 、そ こ に は お そ ら く3系 統 の 広 間 呼 称 が み て とれ るの で あ る。 そ して 、 その3系 統 の 広 間呼 称 は 、農 山村 住 居 の3つ の発 展 段 階 に対 応 す る もの とお も え る 。 す な わ ち、 ① 小 棟 分 立 の 多 棟 構 成 時代 の 主 屋 を指 示 す る オ モ ヤ(母 屋)に 由 来 す る もの(古 代)、 ② 土 間 に 対 す る上 足 スペ ー ス を意 味 す るオ ウエ(御 上 〉 に 由 来 す る もの(中 世 ∼近 世)、 ③ 広 間 の 上 手(奥 の 方)に 室 が 成 立 す る 時 代 に奥 の 諸 室 に対 す る位 置 関 係 か ら、 「前 」を意 味 す る オ マ エ(御 前)に 由 来 す る もの が 、 そ れ で あ る。 さ ら に い ま ひ とつ 重 要 な こ とは、引 用 文 の最 後 にみ られ る記 述 、「但 し我 々外 来 者 に対 して は普 通 広 間 又 は茶 の 間 と い ひ 、オ モ メヱ とは い は ぬ 。」とい う と こ ろ に み られ る よ うに 、旧 来 の伝 統 的 呼 称 オ モ メヱ は 、 一 般 的 な ヒ ロマ(広 間)や チ ャ ノマ(茶 の 間」 に と っ て変 られ る傾 向 を示 して い る こ とで あ る 。つ ま り、オ モ メヱ な る広 間呼 称 は 、 ヒロ マ や チ ャ ノマ よ り古 い呼 称 法 で あ る こ とが わ か る。お そ ら く ヒ ロマ や チ ャ ノマ が 一 般 に使 用 さ れ るの は 近 代 以 降 とみ な け れ ば な ら な い (後 述)。 しか し、 いず れ に して もオ モ ヤ(母 屋)な る呼 称 が 広 間 呼 称 と して 今 日 まで 伝 承 され 、 方 言 的 転 説 を閲 して い る とは い え その 類 縁 の 呼 称 が 存在 す る以 上 、 オ モ ヤ(母 屋)に 由 来 す る広 間呼 称 の 系 統 を措 定 し な い わ け に は い か な い 。 そ して 、 そ の オ モ ヤ の 来 歴 は、小 棟 分 立 の 多棟 構 成 時代 に居 住 棟 を主 棟 とみ な した 「主 」 概 念 が 基 底 に ひ そん で い る と考 え られ る の で あ る。 表4-1オ モ ヤ(母 屋)と オ マ エ(御 前)の 方 言 転 詑

オ(o.o) ヤ(ya) イ(yi) ユ(yu) エ(ye) ヨ(yo) マ(ma) L 、 、 、 ず マ ヤ 紳 一 オ マ イ ↑'\

ミ(mi) i オ ミヤ ゜ 、 屯 、 ≒ 、 、 一

一 ム(mu) ↑

一 「 、 、 、 \ 、 、 」一 ↓ 一 メ(me) オ メ ヤ ー ・ ↑ → オ メ イ 、 、 矛 メ4 、 、 、 一 → モ(mo) 1

オ モ エ 、 、 L 、 、 晶 → オ マ エ 系 一 1 オ モ ヤ 系

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(補説) 上 述 した よ うに、 オ モヤ(母 屋)系 の広 間 呼称 とオ マ エ(御 前)系 の 広 間 呼 称 とは 、方言的 に 転 詑 す る と発 音 形 態 上 ひ じ ょ う に ま ぎ らわ しい。 これ につ い て は 、国 語 学 、方 言 学 に学 ぱ な け れ ば な ら な い が 、両 者 の 混 乱 を い くら か で も防 ぐた め筆 者 は 表4-1を 作 成 し た 。 また 、 オ モ ヤ は オ モ(母)+ヤ(屋)で あ り、 オ マ エ は オ(御)+マ エ(前)で あ る。 この よ う な 音 韻 関 係 か らの 立 論 は 、 今 後 の 課 題 とす る。 2.3「 在 」概 念 ・ア ラカ 系 広 間呼 称 前 項 で は 、 オ モ ヤ な る呼 称 をめ ぐっ て 「主 」概 念 に 由 来 す る 広 間 呼 称 に つ い て み たが 、 この オ モヤ は機 能 的 にみ る と起 居 の た め の 居 住 棟 で あ り、 そ れ ゆ え オ モ ヤ(主 屋)で あ っ た 。それ では、 こ の よ う なオ モヤ の 内容 を示 す 「起 居 」の概 念 に 由来 す る広 間呼 称 が あ っ て も 当 然 で あ ろ う。 い わ ば建 物 と して の オ モ ヤ(主 屋)を 内容 的 に把 え た場 合 に 生 ず る呼 称 とい う こ とで あ る が 、 この こ とを検 討 す る に 当 っ て 、 まず 次 の 呼 称 を挙 げ た い。 ① ア ラ オ[佐 賀]、 ② ア ラ キ[福 井]、 ③ ア ラ ケ[東 京 、 石 川 、 大 分 、 熊 本 、 鹿 児 島]、 ④ ア ラ ト[東 京 、 新 潟 、 富 山 、 石 川 、 福 井]、 ⑤ ア ナ ト[東 京](以 上 は す べ て 後 述 の よ う に 、 ア ラ カ ・在 処 の 転) これ らの 呼 称 は 、前 項 の オ モ ヤ ほ ど今 日で は 一 般 的 な もの で は な くな って い る が 、それ だけ に 古 い 来 歴 を もつ もの とお もえ るの で、 まず これ らに 関連 す る とみ られ る語 を古 語 に 徴 す る と、ア ラ カ(ア ラ は ア リ ・在 リ、 有 リの 意 。 カ は ス ミカ ・住 処 の カ 。 す な わ ち、 在 処 ま た は有 処 。 本 論 で は わ か りよ い在 処 を採 用 。)が み え る。 この ア ラ カ につ い て は 、 た とえ ば 万 葉 歌(167)に ミア ラ カ と して 出 て い る。 ミア ラ カ は 敬 称 ミ(御)と ア ラ カ の合 成 語 で あ るか ら、 貴 人 の ア ラ カ(在 処)と 解 さ れ る 。 この ミラカ につ い て は 、 木 村 徳 国 『上 代 語 に も とつ く 日本 建 築 史 の 研 究 』(中 央 公 論 美 術 出 版 、 昭和63年 、P.125)に 、 そ の建 築 的 イ メ ー ジが 描 か れ て お り、特 色 とな る5点 が 指 摘 さ れ て い る。 ① 堀 立 柱 、② 高 床 、 ③ 柱 ・桁 ・梁 に よ る架 構 ・戸 の 存 在 、 ④ カ ヤ 葺 屋 根 、⑤屋 根 飾(千 木)が そ れ で あ る。 そ して 、 この 建 築 的 イ メー ジが 古 代 神 社 建 築(出 雲 、 伊 勢 、 住 吉 な ど)と 類 似 す る こ と も指 摘 さ れ て い る 。 この ミア ラ カ は、 す で に本 論 第1章 に 引 用 した 「家 屋 文 鏡 」(図1-3)のC棟 に相 当 す る もの で あ るが 、 こ の建 築 物 の最 大 の 特 色 は 高 床 形 式 で あ る。高床 式 建 物 は 南 方 系 に属 す る と され て お り、上 記 ア ラ カ系 呼 称 も九 州 方 面 に集 中 して い る。東 京 は伊 豆 諸 島 の 呼 称 で あ るか ら、 これ も南 西 諸 島 の 系 譜 を ひ く地 域 で あ り、系 統 的 に は 同 一 の 範 疇 と な る。 た だ 北 陸 方 面 に ア ラ カ 系 呼 称 の 存 在 す るの は一 見 ふ し ぎに み え る が 、 これ につ い て は 日本 海 ル ー トの 伝 播 が考 え られ よ う。 と く

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に 、福 井 の場 合 は 漁 村 住 宅 に お け る呼 称 で あ り、 海 浜 部 で行 わ れ て い る こ とが わ か る。 ま た 、新 潟 は佐 渡 地 方 、石 川 は能 登 半 島地 方 とい っ た よ う に海 との つ なが りの 強 い地 方 で あ り、海 上 ル ー トの伝 播 が考 え られ るの で あ る。 広 間呼 称 と して は オ ウエ(御 上)系 の オ エ が 優 勢 な こ れ らの 地 域 に ア ラ カ系 呼 称 が 存 在 す るの は 、 局 部 的 な 現 象 とみ な し うる。 さて 、上 述 の よ うに 南 方 系 の高 床 式 建 物 と して は、南 西 諸 島や 伊 豆 諸 島 の 高 倉 が 想 起 され る。 た だ これ らの 地域 の 住 居 は 必 ず し もす べ て が 高 床 式 で は な い が、高 倉 が 一 般 的 な こ の地 方 は 地 理 的 条 件 か らみ て も南 方 系 と考 え ざ る を え な い 。九 州 方 面 に ア ラ カ系 呼 称 が 集 中 し て い るの は 、や は り南 方 系 の 高 床 式 建 物 の影 響 を お もわ ず に は い られ な い。先 の ミア ラ カ ー 高 床 一 九 州 方 面 一 ア ラカ の 一 連 の 強 い 関 連 性 か ら、 古 語 ア ラ カ(在 処)に 由 来 す る ア ラ カ系 呼 称 を措 定 す る こ とが で き よ う。 しか し、実 の と こ ろ上 記 の ア ラ カ系 呼 称 は 広 間 呼 称 が 主 で あ る が 、広 間 以 外 の 場 所 や 室 を指 す こ とも あ る の で 、 その 分 布 状 況 を示 す と表4-2の よ うに な る。 図4-2ア ラ カ 系 呼 称 の 住 空 間 内 分 布 炊 事 場 広 間 什器置場 正 座 敷 ア ラ オ 佐 賀 ア ラ キ (福 井) ア ラ ケ 東 京 大鹿 児 島分 石 川 熊 本 ア ラ ト 東 京 、新 潟 富 山 、石 川 福 井 、(福井) ア ナ ト 東 京 注()内 は 漁 村 住 居 を示 す 。 他 は 農 村 住 居 。 上 表 に よ って わ か る よ うに 、ア ラ カ系 呼 称 は 住 空 間 に 広 く分 布 して い る。 この 事 実 を ど の よ う に理 解 す るの か 。も と も と単 室 住 居 で あ っ た もの が 多 室住 居 へ 移 行 して い くとい う住 空 間 の発 展 過 程 か らみ る と、 ア ラ カ(在 処)な る呼 称 は住 空 間 の初 源 的 段 階 の 呼 称 で あ ろ う。 お そ ら く単 室 の小 棟 をア ラ カ(在 処)と 称 し た 。 その 後 、 この ア ラ カ は 発 展 し 多室 化 して い く と、 本 来 的 には 住 空 間 内 の どの場 所 で もア ラ カ で あ る。す な わ ち 、 どの 場 所 どの 室 を ア ラ カ と呼 ん で もお か し く な い の で あ る。 しか し、 と くに ア ラ カ(在 処)の ア ラ カ た る ゆ え んで あ る、 炉 の あ る広 間 に この 呼 称 が 残 る の は 当 然 で あ ろ う。上 表 の分 布 を み て も、広 間呼 称 に ア ラ カ 系 呼 称 が 集 中 して い る の

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は そ の た め で あ る。 す なわ ち、 こ こ にア ラ カ 系 広 間 呼 称 が 定 立 さ れ る の で あ る。前 項 の オ モヤ 系 広 間 呼 称 は 、付 属 屋 に 対 す る主 屋 に由 来 して い た が 、本 項 の ア ラ カ系 広 間 呼 称 は 、 そ の 主 屋 の 内 容 を示 す 在 処(起 居 の 場)に 由来 す る とい え る。 ア ラ カ系 広 間 呼 称 で あ る ア ラ トの 具 体 的 状 況 を 示 す と図4-7の よ うで あ る。 図4-7ア ラ カ 系 広 間 呼 称 の 例 (ニ ワ) 資 料)『 建 築 大 辞 典 』(彰 国 社)の ア ラ トの 項 の 説 明 図 に よ る 。(ニ ワ)は 筆 者 記 入 。 同項 に次 の 解 説 が あ る 。 ① 伊 豆 の 大 島 ・新 島 、 佐 渡 、福 井 県 、 能 登 半 島 、 富 山 県 五 箇 山 な どの 民 家 に お い て 上 り は な の 一 室 。 炉 が あ り、 茶 の 間 ・仕 事 場 な ど と し て使 わ れ る 。 九 州 南 部 の 民 家 に み ら れ る 「あ ら け」 に相 当 す る とい う。 伊 豆 の 利 島 ・三 宅 島 で は 「な か ま」 と い う。 ② 飛 騨 そ の 他 の 地 方 に お い て 村 の 入 口 ま た は 谷 川 の 下 流 。 こ の 図 で 明 らか な よ うに 、ア ラ トは炉 の あ る広 間 で あ りそ の呼 称 に な って い る。土 間 の ジエ ド は地 土 の 転 で あ り、 チ ョ ウダ イ(帳 台)は 寝 室 、 デ イ(出 居 〉 は座 敷 で あ る か ら、 こ の 住 居 の 中 心 的 な生 活 の 場 は ア ラ トで あ る。ア ラ トの 発 生 が 間取 りの 上 か ら も よ くわ か る。こ こで ジ エ ド(地 土)に つ い て す こ し言 及 し てお きた い 。 次 節 で 述 べ る よ う に、 一 般 の 農 村 住 居 の 土 間 は ニ ワ(庭) と呼 ば れ る こ とが 多 いが 、こ の住 居 で は ジ エ ドとい っ て い る。本 来 、ニ ワ は 家 屋 の 前 庭 を指 す が 、 この ニ ワ が 主 屋 内 に 取 込 ま れ て 土 間 とな った と き、 ニ ワ な る呼 称 が そ の ま ま と な っ た 経 過 が あ る。 例 示 した農 村 住 居 で は 、前 庭 の ニ ワ は従 来 の ま まで あ り、住 居 内 に組 込 まれ て い な い 。 ジ エ ドな る土 間 は、一 見 ニ ワ な る 土 間 と同 じ くみ え る が そ の 由 来 が 異 る。例 示 した 農 村 住 居 の ジ エ ド は カマ ヤ(釜 屋)に 由 来 す る土 間 で あ る。 した が っ て 、 この 土 間 部 分 は カ マ ヤ と呼 ん で も よい も の で あ る。 事 実 、 土 間 を カ マ ヤ と呼 ん で い る例 もみ られ る。 南 西 諸 島 や 伊 豆 諸 島 の よ う に亜 熱 帯 的 な気 候 風 土 を もつ 地 域 で は 、住 生 活 に 占め る戸外 の役 割 は 大 き く、寒 冷 多雪 な 地 域 の よ うに ニ ワ を内 部 化 す る必 要 が な か っ た 。前 庭 の ニ ワ が 存 続 した 大

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き な理 由 で あ る。炊事 な ど も戸 外 の カマ ドで行 わ れ 、住 居 内 の 炉 は補 助 的 な 役 割 を果 して い た 。 これ に 関連 す る記 録 と して 、 前 出 『日本 農 民 建 築 ・第6輯 』(P.170)に 東 京 ・八 丈 島 の 状 況 が 次 の よ うに書 か れ て い る。 宅 地 内 の 配 置 図 に示 す 様 に 、宅 地 内 の 母屋 の 下 モ 手 横 に高 倉 が あ り、 その 背 後 の石 垣 の 垣 根 に釜 が あ るが 、是 を釜 、ヘ ッ ツ イサ マ 、 ホ ド等 と称 して居 る。私 の 調 査 し た 日は釜 をか け蒸 籠 を上 に 置 い て 正 月の 餅 を作 っ て居 った 。 新 島 で は 本 屋 か ら離 し た釜 屋 形 といふ 炊 事 場 を設 け る こ とは説 明 して お い た 通 りで あ る が 、 此 の家 の例 の 様 に全 く屋 外 に釜 を設 けて お くとい う事 は珍 ら しい 事 で あ る。此 の様 な 我 国 古 代 の 民 族 的 習俗 が 存 して い る こ とに 就 て は府 下 の概 観 に 述べ た 通 りで あ る。 こ の記 録 をみ て 、 まず 戸 外 の カ マ ドの 呼 称 に ホ ド(火 床 、 火 所)な る古 語 が 使 用 され て い る こ とが 目を惹 く。 本 論 第1章 に お い て 、 白 山 ・山 村 住 居 の炉 が ジ ロ(火 代 の 略)と 呼 ば れ て い る こ と につ い て ふ れ た が 、 ホ ドな る呼 称 もジ ロ と同 様 に古 い 語 とみ られ る。 白 山 ・山村 住 居 の 広 間 呼 称 が オ モヤ 系 の オ ミヤ で あ っ た こ と を想 起 す る と、 オ モ ヤ ・ジ ロ と入 丈 島 に残 るア ラ カ ・ホ ドは 古 代 に お け る主 屋 と火 所 の 呼 称 法 の 強 い 関連 性 を示 す もの とお も え る。 次 に、 引 用文 中の 「本 屋 か ら離 した 釜 屋 形 とい ふ 炊 事 棟 を設 け る」 は 、 カマ ヤ(釜 屋)な る炊 事 棟 と主 屋 の2棟 構 成 に つ いて 述 べ た もの で あ り、こ れ が 南 方 系 住 居 の 大 き な特 色 で あ る こ とは諸 方 で 指 摘 され て い る とこ ろで あ る。 しか し、 ア ラ カ系 広 間 呼 称 が 存 在 す る以 上 、 この 主 屋 の 方 をか っ て ア ラカ(在 処)と 称 して い た 時 代 が あ った と考 え ざ る を え な い 。古 語 ア ラ カ は 後 代 に至 っ て 、① ア ラオ 、② ア ラ キ、 ③ ア ラ ケ 、④ ア ラ ト、⑤ ア ナ トな どに 転 誰 しな が ら現 代 に至 っ た 。 こ れ らの 呼 称 は 、主 と して 広 間 呼 称 に伝 承 され て い るが 、他 の 部 分 に も拡 大 的 に伝 承 さ れ る場 合 もみ られ た。 本 論 で は 、前 者 を直 系 的伝 承 、 後 者 を拡 大 的 伝 承 と名 づ け る。 (補説) 以 上 、 ア ラ カ(在 処)に 由来 す る広 間呼 称 につ い て み た。 そ し て、 広 間 以 外 の 炊 事 場 ・什 器 置 場 ・正 座 敷 の 呼 称 も この ア ラ カ が 拡 大 的 に 流 用 さ れ た もの と考 え た 。 し か し、 い ま ひ とつ 気 に な る語 が あ る の で 、 こ れ をめ ぐっ て 以 下 に補 説 と した い 。 その 気 に な る語 とい うの は 、 ア ラ キ(新 墾)で あ る。 こ の ア ラ キ は 、 「新 し く開 い た 土 地 」を 意 味 す る語 で 、 万 葉 歌(1110)に ア ラ キ(新 墾)、 同(3848)に ア ラ キ ダ(新 墾 田)な ど と して み え る。 い わ ば農 耕 関 係 の 語 で あ るが 、 「新 し く開 い た土 地」の意 か ら、 住 居 の 場 合 で も 「新 設 した 場 所 ・室 」 に転 用 され る可 能 性 が あ る とお も えた 。 ま た 、 こ れ の 方 言 転 誰 をみ る と、 ア ラ キ ・ア ラ ク ・ア ラ コ ・ア ラ ケ ・ア ラ オ 等 々 と して 全 国各 地 に残 っ て い る。 発 音 形 態 の 上 か らは 、 ア ラ カ の

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転 誰 とほ とん ど重 な り合 って し ま うの で あ る。と くに こ れ らの語 を 片仮 名 で 表 記 した場 合 は 区別 が 困難 で あ る。 表4-1で 分 類 した① 炊 事 場 は 、福 井 県 の 場 合 は 漁村 住 宅 で あ り、本 来 炊 事 場 は 戸外 で あ っ た し、東 京 都 は 三 宅 島 の 例 で 、 こ れ も本 来 炊 事 場 は 戸 外 か別 棟 に あ っ た か ら、 主 屋 内 に 炊 事 場 が組 込 ま れ た場 合 、 それ は 「新 し い場 所 」 で あ っ た 。 次 に③ 什 器 置 場 は 、石 川 県 能 登 半 島 の 例 で 背面 通 り中央 の小 部 屋 を指 す が 、 こ の小 部 屋 は 当地 の 住 居 が 多室 化 し た際 に つ く られ た 「新 し い室 」 で あ り、 別 に リ ョウ ノマ(料 の 間)な ど の呼 称 も併 存 す る。最 後 に 、 正 座 敷 は 熊 本 県 の 例 で あ る が 、農 山 村 住 居 で は 一 般 に正 座 敷 を事 後 的 に増 設 す る場合 が 多 い 。伝 統 的 な 生 活 部 分 に 正 座 敷 を 付 加 す る の で あ る。 こ の 場 合 の正 座 敷 も 旧来 の 生 活 部 分 か らみ る と 「新 し い室 」で あ る。 図4-8は 、ア ラ ケ呼 称 が 正 座 敷 に 使 用 さ れ て い る例 で あ るが 、平 面 形 式 の 上 か ら も こ の ア ラ ケの 新 規 性 を うか が い 識 る こ とが で きる。 図4-8正 座 敷 呼称 と しての ア ラ ケ の 例(熊 本) 流 し 資料)前 出 『日本 農 民 建 築 ・第1輯 』(P.50)の 図 に よ り筆 者 作 図 。 以上 の よ うに 、 炊 事 場 、 什 器 置 場 、 正 座 敷 いず れ も 「新 しい場 所 ・室 」 で あ る。 この よ うな 新 設 空 間 に対 して 、 「新 し く開 い た土 地 」 を意 味 す るア ラ キ(新 墾)が 適 用 され て もふ し ぎ は な い 。 この よ うに考 え る と、 い ま ひ とつ ア ラ キ(新 墾)系 の ア ラケ を考 え な くて は な ら な い こ とに な る。 も し そ うな ら、 同 じア ラ ケ で もア ラ カ(在 処)系 の ア ラ ケ とア ラ キ(新 墾)系 の ア ラ ケ の2つ が あ る こ とに な る。果 し て こ の よ うな微 妙 な語 の使 い分 け が行 わ れ て い る の だ ろ うか 。 こ の 疑 問 に 対 して は 、 次 々 項 で 扱 うナ カ イ(中 居)な る語 が 大 い に参 考 に な る。 ナ カ イ の 意 味 等 に つ い て は 、

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次 々項 に ゆず る と して 、 この ナ カ イ の 住 空 間 内 の分 布 状 況 を み る と、 ア カ ラ と全 く同 じで あ り拡 大 的伝 承 が 行 わ れ て い る こ とが わ か る。ナ カ イ は ア ラ カや ア ラ キの よ うに、 ま ぎ ら わ しい 語 が な く、 ま た それ が 武 家 住 居 の 内 向 き(奥 向 き)の 空 間呼 称 に由 来 す る こ とが 明 確 な の で ア ラケ もナ カ イ と 同様 の 伝 承 形 態 を とっ た と考 え られ る。 す な わ ち 、 ア ラ カ(在 処)は 広 間 呼 称 は も ち ろ ん の こ と、 そ の他 炊事 場 、什 器 置 場 、正 座 敷 な ど の呼 称 と して も拡 大 的 に 伝 承 され て い る と考 え ら れ るの で あ る。 2.4「 家 」 概 念 ・イ エ 系 広 間呼 称 以 上 、 ア ラ カ(在 処)に 由来 す る広 間呼 称 につ い て み て きた が 、 そ の 基 底 に は 「居 所 」 を 意味 す る 「在 」概 念 が横 た わ っ て い た 。 「在 」 に 関 連 す る概 念 と して は 、 この 他 に 「居 」、 「住 」、 「家 」 な どが 考 え られ る。そ れ で は、こ れ らの概 念 を反 映 し た広 間呼 称 が あ って も当 然 で あ ろ う。事 実 、 そ の よ うな広 間 呼 称 が あ り、 以 下 に そ れ ら を挙 げ る。 ① イヤ(居 屋)[大 分]、 ② ス マ イ(住 居)[福 島] こ れ らの語 に つ い て は 、 多 くの 説 明 を必 要 と し な い だ ろ うが 、 イ ヤ(居 家)は 、 本 論 第3章 の 白 山 山村 の近 世 文 書 に もみ え て い た か ら、近 世 に は か な り一 般 に使 用 され て い た とお も え る。 ス マ イ(住 居)は 今 日で も まだ 「住 ま い」 な どの 表 記 で 多用 さ れ て い る。 ス トレー トに住 居 を指 す 語 で あ る こ とは い う まで も な い が 、こ れ らが 広 間呼 称 と して 使 用 され て い る こ とは 注 目 され ね ば な らな い 。 これ らの語 は ア ラ カ(在 処)ほ ど古 い語 と はお もえ な い が 、 本 来 住 家 を指 示 す る語 が 広 間 呼 称 に 直 系 的 に伝 承 さ れ て い る事 態 は 、 先 の オ モ ヤ(母 屋)や ア ラ カ(在 処)の 場 合 と同様 で あ る 。住 家=広 間 の 図 式 は 、初 源 的 な住 空 間 が 広 間 で あ っ た こ と を雄 弁 に物 語 っ て い る。逆 に い うな ら、多 室化 した農 山村 住 居 も時 代 を遡 行 す れ ば そ の 中 の 広 間 に収 束 す る と い うこ とで あ る。 ま た 、 前 項 の ア ラ カ にみ られ た 「在 」概 念 と本 項 の イ ヤ 、 ス マ イ に み られ る 「居 」概 念 を比 較 す る と、 一 見 類 似 の概 念 の よ う にみ え るが 、 「在 」は 主 に存 在 を表 現 す る に と ま り、 「居 」 の方 は い ま す こ し生 活 的 ・文 化 的 な 匂 い が す る 。 この こ とか ら、 ア ラ カ とイ ヤ ・ス マ イ の 時 代 差 をみ る の は行 き過 ぎで あ ろ うか 。 また 、 イ ヤ な る呼 称 が 大 分 県 で 行 わ れ て い る の は 興 味 深 い。 当地 域 に は前 項 の ア ラ カ系 呼称(ア ラケ)が あ っ た か ら、 イ ヤ は ア ラ ケ の 近 世 版(あ るい は 中世 版)と で もい え よ うカ・。 イ ヤ(居 屋)、 ス マ イ(住 居)に つ づ い て 、 同類 の イ エ(家)を 広 間呼 称 と して い る もの を挙 げ る と次 の よ うで あ る。

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③ イ エ ノ ナ カ(家 の 中)[岐 阜]、 ④ エ ン ナ カ(家 の 中 の 転)[山 形 、 富 山]、 ⑤ ヘ ン ナ カ ノ マ (家 中 の 間)[富 山] こ れ らの 広 間 呼 称 は 、 概 念 的 に み る と 「家 」 と 「中 」 で あ る 。 「家 」 に つ い て は 、 前 出 『上 代 語 に も と つ く 日本 建 築 史 の 研 究 』(P.P.170∼216)に 詳 論 さ れ て い る が 、 要 す る に 、 イ エ(も と は イ へ)は シ エ ル タ ー と し て の 家 構 を 指 す の で は な く、 そ の 中 味 ・内 容(家 族 、 生 活 等)に 力 点 を もつ 語 で あ る と し て い る 。 しか し、 後 代 に 至 っ て こ の イ エ は ハ ー ドな 家 構 に も使 わ れ る よ う に な っ た も の と み え て 、 上 記 の 呼 称 で は 「中 」 が つ け ら れ て い る 。 つ ま り シ ェ ル タ ー と し て の 家 構 の 中 と さ れ て い る の で あ る 。こ こ に は 内 部 空 間(す な わ ち 住 空 間)=広 間 の 図 式 が 認 め ら れ る の で あ る 。 ま た 、 上 記 の ヘ ン ナ カ ノ マ で は 、 「家 中 」 に さ ら に 「間 」 が つ け ら れ 、 「家 中 」 な る 広 間 が 独 立 し た1空 間 と し て 成 立 し た 経 過 を 示 し て い る 。こ れ は い う ま で も な く 多 室 化 の 過 程 で 生 じ る こ とで あ り、 「間 」 の つ く室 名 は 他 に 「広 間 」、 「茶 の 間 」、 「居 間 」 な ど が あ る(後 述)。 い ま ひ と つ 述 べ て お き た い の は 、 上 記 の イ エ ナ カ(家 中)の 方 言 的 ひ ろ が り を み る と、 この 語 が 炉 の 呼 称 と し て 使 わ れ て い る と い う こ と で あ る 。 そ の 状 況 は 、 ① イ ン ナ カ[富 山 、 石 川]、 ② エ ン ナ タ[石 川]、 ③ イ ナ カ[石 川]、 ④ エ ナ カ[石 川]、 ⑤ ヘ ン ナ カ[富 山]、 ⑥ ヘ ナ カ[富 山] 、 ⑦ ヘ ン カ[富 山]、 ⑧ エ ヌ ギ[秋 田]と い っ た 具 合 で あ る 。 また 、 カマ ドの 呼 称 と し て もイ ナ カ ・エ ン ナ カ[富 山]が あ る 。 再 三 述 べ て い る よ う に 、 広 間 と炉 の 関 係 は 強 く切 り離 す こ と が で き な い 。 炉 の あ る 室 を 広 間 と い っ て も よ い く ら い で あ る 。 こ の 観 点 か ら み る と 、 炉 が イ エ ナ カ(家 中)と 呼 ば れ る に 至 る 事 情 を よ く理 解 す る こ とが で き る 。 す な わ ち 、 家 → 家 中 → 広 間 → 炉 の 順 に 呼 称 が 転 用 さ れ て い くの で あ る 。 こ の 転 用 過 程 を 図 化 す る と 図4-9の よ う に な ろ う 。 図4-9イ エ ナ カ(家 中)の 転 用 過 程 居住棟 の内部 空間 を指す イエナカ 広 間 呼 称 と し て の イ エ ナ ヵ 炉 を指 示 す る イ エ ナ カ こ う して み る と、 イエ ナ カ(家 中)は まず 居 住 棟 内 の 全 住 空 間 を指 示 す る呼 称 と して 生 じ、 そ れ が や が て広 間 呼 称 と して伝 承 さ れ 、さ らに その 広 間 を象 徴 す る炉 の 呼 称 に 到 達 した とい う経 過 が 明瞭 と な る 。 この 場 合 の イ エ ナ カ(家 中)な る炉 の 呼称 法 は 、 先 にふ れ た ジ ロ(火 代 の 略)、 ホ ド(火 床 、 火 所)な どの よ うに火 と関 係 す る語 に よ らず 、 家 に 由 来 して い る。 しか し、 そ れ は 炉

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とい う火 所 と家 とい う住 空 間が 不 可 分 で あ り、い わば 炉 が そ の 住 空 間 の 呼 称 を象 徴 的 に伝 承 して い る の で あ る。 この よ うな現 象 を本 論 で は象 徴 的伝 承 と名 づ け る。 ま た 、 この 地 域 で は オ エ な る 広 間呼 称 が 優 勢 で あ る こ とか らみ て 、オエ 呼 称 が 行 わ れ るに つ れ て イエ ナ カ は 広 間呼 称 か ら炉 呼 称 に綾 小 化 され て残 存 し た とお も う。 した が っ て、炉 の 消 滅 と同 時 に こ の イ エ ナ カ な る語 は 永 久 に姿 を消 す こ とに な る。 もはや イ エ ナ カ の居 場所 が な くな るか らで あ る。 以上 の よ うに、 イ エ ナ カ(家 中)は 広 間や 炉 を指 示 す る呼 称 と して 存 在 し たが 、 この 呼 称 の 分 布 圏 をみ る と、 秋 田 ・山 形 ・富 山 ・石 川 ・岐 阜 の 寒 冷 多 雪 な地 域 に ま た が って い る。 こ の よ う な 寒 冷 多 雪 な 地 域 で は 、 と くに冬 季 の 家 ・広 間 ・炉 の 意 味 は大 きい 。 「家 」 概 念 に由 来 す る呼 称 の 背 景 と して 、 この よ う な気 候 風 土 的 条 件 も考 えて お く必要 が あ ろ う。後 述 す る よ うに 、温 暖 な 九 州 方 面 で は 「内 」概 念 に由 来 す る呼 称 が 多 くみ られ る。 「内」 は 第 一 義 的 に は 「外 」の 対 置 概 念 と し て の物 理 的 な 内部 空 間 を意 味 し、そ の 中で の 生 活 まで は含 まな い。 こ の文 脈 で い ま一 度 イ エ(家) を み る と、上 代 語 の イへ が 家 族 や 生 活 を含 む 生 活体 を意 味 して い た こ とが 想 い 出 さ れ る。そ れ を 強 調 す る意 味 で 「中」 が付 加 さ れ イ エ ナ カ(家 中)な る呼 称 が生 じた とみ なす こ と もで き よ う。 次 に 「家 」概 念 に近 い 「内」 に 関 す る もの を挙 げ る。 今 日で は イ エ(家)と ウ チ(内)は ほ と ん ど同義 語 と して使 用 され て お り、 両 者 の 類 縁 性 が 明 瞭 で あ る 。 ⑥ ウ チ(内)[徳 島 、 鹿 児 島]、 ⑦ ウ チ カ タ(内 方)[宮 城 、 岐 阜]、 ⑧ ウ チ ナ イ(内 な い)[宮 崎]、 ⑨(内 ね)[宮 崎]、 ⑩ ウ チ ネ エ(内 ね え 〉[鹿 児 島]、 ⑪ ウ ッ ザ(内 座)[鹿 児 島]、 ⑫ ナ イ シ ヨ(内 証 、 内 所)[茨 城 、 徳 島 、 福 岡 、 佐 賀 、 長 崎 、 大 分] 一 見 して、 こ れ らの 呼 称 が 九 州 方 面 に 多 い こ とに 気 付 く。 前 々 項 の ア ラ カ(在 処)地 域 と重 な る の で あ る。 ウ チ な る語 は 、 万 葉 歌(3926)に もみ え て お り、 ソ ト(外)と 対 比 的 に使 用 さ れ て い る か ら、 上 記 の 「内 」 は 明 らか に家 構 の 内側 ・内 部 空 間 を指 す 。 また 、 ウ チ の 古 形 は ウ ツ と さ れ て い るの で 、 ⑪ ウ ツザ(内 座)[鹿 児 島]の ウ ツ は 古 形 を保 つ とい え る。 さ ら に、 次 節 で 述 べ る が 「座 」 を 「土 座 」 と解 す る と、 「内座 」 は土 座 の 内 部 空 間 と い うこ とに な り、 昔 日の 姿 が 目に 浮 ぶ 。 す なわ ち、 土座 の 単 室 空 間 が 想 わ れ るの で あ る。 こ れ は 広 間 の祖 型 で あ り。 白 山 ・山村 住 居 に み られ た土 座 の ネ ブ キ ゴ ヤ と同様 で あ る。 時 代 を遡 行 す る と、 わ が 国 で は 、 ど の地 域 で も こ の よ うな 広 間 の祖 型 が 現 れ て くる よ うに お も え る。 も ち ろ ん 、 高 床 式 の 高 倉 な どは 別 で あ る。 さ て 、 こ の ウ チ(内)系 広 間 呼 称 の 内容 につ い て は 、 ⑧ ウ チ ナ イ(内 な い)[宮 崎]で は 、 「背 面 まで通 る広 い 室 で 、 炉 を備 え た 日常 の 居 室 」 で あ り、⑪ ウ ツザ(内 座)[鹿 児 島]で は 、 「土 間 の 上 手 に隣 接 す る室 の 呼 称 。 炉 や 仏 壇 を備 え、 日常 の居 室 」で あ る。 こ れ らが 代 表 して い る よ う に 、炉 を もつ 日常 の 居 室 、 す な わ ち 広 間 に 「内 」概 念 が 伝 承 され.てい る事 実 は 、 先 の オ モ ヤ(母 屋)、 ア ラ カ(在 処)、 イエ(家)な ど と 同様 、 主 棟 ・居 住 棟 が 意 識 さ れ て い る。 そ の た め 、 主 棟 ・

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