非営利組織の経営管理の特質(I)
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(2) 第45巻. 第1号. 日常となっている。 さらに, これらの組織が供給するサ ー ビスの多くの部分は政府の財政 援助を受けることとなり, それがために, かつては本当に独立部門であったこの非営利部 門の柔軟性と活力に関して大きな懸念が生まれてきた。 非営利部門はすでに大きな変化の渦中にあることを理解しなければならない。 医療 育• 福祉. ・. ・. 教. 社会奉仕などの非営利事業の中には財源の発掘や資金繰りが困難となり, 経営. 破綻をきたし, 解散や合併. ・. 統合が生じている。 他方では, 自然環境. ・. 社会環境. ・. 介護. ・. 芸術などの分野において新しい組織が明らかに営利部門より速く成長しており, 革新的な 多数の計画が発展しつつある。 しかしこの種の領域においても, 早晩厳しい財務問題と管 理問題に遭遇することは間違いない。 言うまでもなく, 組織の拡大に伴う財源の確保と特 に人事管理を中心とした経営管理の効率化という課題である。 これらの非営利組織の領域はそれぞれの特有な問願の挑戦を受けているが, 一般的に言 えば, 同じ領域内の競争の激化, 政府機関と営利企業に対する競合関係の激化. 資金調達 の困難性の増大, 専門家集団やボランティア集団の特に人的管理の困難性などが共通の問 題となっている。 従来の少なくともわが国の研究は,非営利組織の特殊領域の個別研究が多く,学校法人, 医療法人, あるいは公益法人などを対象として, しかもおおむね各種法人の実務の特殊性 を研究内容とするものであった。 他方においては, 近年の傾向として, 特に経済学におい て, 非営利組織はなぜ形成されるのか, その理論的根拠は何か. その社会経済的な機能は 何かを問うことが主流となっている。 しかし, 非営利組織の経営とその経営管理を直接に かつ総合的に扱った研究はほとんど見られない。 他方で, アメリカにおいては, すでに20数年前から, 特殊な経営問題としてその経営管 理の理論と実践が研究され, 非営利組織はどのような経営行動をするのかという組織行動 のモデルが提示され, それに従って実践的な経営管理のあり方を問うことが重要な課題で あった。 すなわち, 非営利部門の変化する役割を理解しその部門を構成する組織の行動を理解し ようとすれば. そこではより明確で強力な知識の基礎が究極的には要請されることにな る。 すなわち, そこでは正確な統計的情報ではなくて, 現実に利用できるよりよい基準と なる概念枠が要請される。 そのためには, 第1に, 非営利部門は種々様々で単 一の特質と モデルによっては理解できないために, 非営利部門は構成部分に分解され多種多様な形態 と目的によって分類されねばならない。 第2に, 非営利組織の特定の諸利点に関して, そ の存在理由を説明し, 政府組織と営利企業組織に対比するその役割を説明できる理論が開 - 2 (2)-.
(3) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) 発されねばならない。 第3に. 非営利組織はその性質· 量・質・ コスト ・ サービスと活動 のその他の諸側面について, どのようにして意思決定をするのかについて説明できる行動 モデルが合成されなければならない。 非営利組織の研究は学問の専門分野としては新しくかつテ ー マが大きいにもかかわら ず. すでに多くの研究者がこれらの分類. 理論の構築. つある111。 ただ.. モデルの提示に重要な貢献をしつ. むろんこの種の課題自体が決して統一的な結論に達していないし.. 総合. 的に整序されていないので. この非営利組織は. いぜんとして看過できない今後も継続す べき重要な研究対象である。 しかし, いずれにしろ, 非営利組織に固有な特殊性から生じる諸問題の解決とその処理 に関するいくつかの提示なり提言は, 基本的には「非営利組織の合理的· 効率的な経営管 理」を巡って示されてきた 。 そこでは, まず,営利企業が長年にわた って開発してきた「経 営管理の基本的な概念と経営管理の制度と方法」 を適用すべきであるとされる。 しかし, 現実には. 非営利組織の特有な経営構造と経営管理の手法が大きな「制約条件」 となって その適用を阻むのである。 した がって. 合理的・効率的な経営管理が現実に要請されてき ており, それに応えねばならないとすれば, そのためには.. まず「非営利組織の経営」の. 「特殊性」を理解し,非営利組織の特有な経営管理の性質と実態を把握していなければなら ない。 そのあとで. 合理的・効率的な経営管理の適用範囲と適用方法を選択することにな る1210 (I). Dennis R. Young, If Not for Profit, for What? 1983, p. 10.. (2) 特殊性を認めない見解. 特殊性があるとしても本質的・持続的な性格ではないとする見解. す べての現代組織がある一定の方向にしたがってある一定の管理活動に収飲しているとする見解な どがある。. (A. Etzioni, The Third Sector and Domestic Missions, Public Adminisitration Review, July-August 1973. Michael A. Murray, Comparing Public and Private Management, An Exploratory Essay, Public Administration Review, July-August 1975. M. E. McGill and L. M. Wooton, Management in the Third Sector, Public Administra tion Review, September-October 1975.). 経営管理の 一般理論は「組織の管理行動」にはどのような組織にも一般的に適用される行動原 則と行動態様があるという視点に立つ。 そこでは. 非営利の事業も組織活動である以上は, 他の 組織と異なる要素は存在しない。 ただ. この主張に対しては. 本来的な問題として. 経営管理は 普遍的に適用されるのかどうかが問われねばならない。 この問題はかなり以前から. いわゆる新 しい「経営管理 一般論」において. 「分離しているが等しい」 という歴史的な主張が新しい統合 主義の包括的モデルの台頭によって挑戦を受けている。 しかし. この新しい学派では. 何が比較 可能な領域であり. 特に何が同 ーで何が異質なのかが明らかではない。 他方では. 実証研究に よって. どのような組織もある 一定方向の組織行動に収敏しているという視点に立つものがあ る。 そこでは. 営利企業の組織もその現実の行動は理念としての組織の行動(例えば利益の最大 化行動)をとっていることはな<. 同様に非営利の組織も例えば費用· 便益計算に基づいて行動 するのであり, ともにある組織行動に収敏していると考えることが. 現実の組織行動を説明する として, 結果において. 両者の相違点は見あたらないことになる。 ただ. この主張に対しては. 現実に収敏している諸点は確認できるけれども,「しかし, 違いがある」という視点に対して説/'. - 3 (3)-.
(4) 第45 巻. 第 1号. 私の最終の関心は, 非営利組織の経営とその管理のあり方に関する「一般理論」を構築 することにある。 そのためには, まず, その経営と経営管理の特殊性を摘出しなければな らない。 ただ, このためには, この課頴に関してすでにアメリカにおいて優れた多くの論 考があるので, それらを尋ねて分類・整理. ・. 総合の作業から始める必要がある。 本稿は主. としてこの作業に焦点を当てる。 次には, それらの「経営の特殊性」を「経営構造と経営管理過程の視点から」厳密に見 直す作業が必要である。 従来の特殊論は, 営利企業や政府機関との比較に焦点を当てるあ まり, 非営利組織の「経営の特殊性」の摘出に終わっているきらいがある。 これらの特殊 性が経営組織の機構, 経営資源の構造, 経営の諸峨能, 経営管理の過程にどのように作用 するのかをそれぞれに明らかにしなければならない。 行動モデルの構築である。 本稿でも これに関して問題の提起をするが, 本格的には次稿の対象としたい。. 第1章 非営利組織における経営の特殊性 以下に, 内外の主要な研究者の所説を分類整理した上で, 非営利組織における「経営の 特殊性」を規定しておきたい1310 1). 非営利組織は営利を目的としない。 それは組織参加者が利己の個別利益を目的とし. ないだけではなく, 組織それ自体も利益の獲得を目的としない。 したがって, 利益高· 利 益率・資金回転率などの利益尺度が有効に働かず, それをもって計画一執行一統制の管理 \得すること はできないし,合理的・効率的な組織の理論の構築と実践方法の指針を提示すること はできないと言うべきである。. R. N. Anthony and D. W. Young, Management Control in Nonprofit Organizations, 1984, pp. 35-55. R. N. Anthony, Can Nonprofit Organizations Be Well Managed?, in "D. Borst, P. J. Montana. (ed), Managing Nonprofit Organizations, 1977", pp. 7-15. R. N. Anthony, Should Business and Nonbusiness Accounting Be Different?, 1989, pp. 19 -21. R. W. Cyert, Management of Non-profit Organizations: With Emphasis on Universities, 1975, pp. 11-13. D. C. Levy, A Comparison of Private and Public Educational Organizations, in "W. W. Powell (ed), Nonprofit Sector, 1987," pp. 258-272. I. Unterman, R.H. Davis, The Strategy gap in not-for-profits, Harvard Business Review, May-June 1982, pp. 30-34. I. Unterman, R.H. Davis, Strategic Management of Not-For-Profit Organizations, From Survival to Success, 1984, pp. 9-17. C. C. Selby, Better performance from 'nonprofits', Harvard Business Review, Sept.-Oct. 1978, pp. 92-94. W.H. Newman, H. W. Wallender, ill, Managing Not-for-Profit Enterprises, Academy of Management Review 3, no. 1, 1978, pp. 24-26. S. M. Oster, Strategic Management for Nonprofit Organizations, 1995, pp. 1-11.. (3). - 4 C 4)-.
(5) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) 活動に対する測定基準とすることができない。 同様に, 業績遂行の状態と結果としての業 績の測定基準となることもできない。 2). 非営利組織は主として社会的なサ ー ビスの提供を目的とする。 サ ー ビスはその性格. 上貯蔵性がなく, 労働集約的であり, なかには例えば保護. ・. 救済事業や環境保全事業のよ. うにサ ー ビス供給が少なくなることが望ましい非営利組織もある。 したがって, サ ー ビス 供給量のインプ ッ トの測定が相対的に困難であるばかりでなく, サ ー ビス価値は経済的で あるよりもその品質の価値にある以上, そのアウトプ ッ トの測定はより困難である。 した がって, 非営利組織が提供する便益を費用との関係で測定する尺度がなく, 経営の活動を 測る単ーかつ総合的な基準が存在しない。 むしろ非営利組織ではインプ ッ トとアウトプ ッ トの比較に基づく「効率性」よりは, 組 織に固有な目的と生産価値に照らした「有効性」を高めることが重要であるが, この価値 を測定する技術的基準がまた存在しない。 例えば, 動物保護活動において動物が絶滅する ことの社会的コストを評価し, これに金銭的価値を加えることはできない。 また, 公害防 止や公害規制についても, その必要性は明らかではあるが, 公害がどのように社会全体に 影響を及ぽすのかについては正確にこれを測定することはできない。 この場合, 公害防止 や公害規制の価値は評価できないけれども, 資金の投入がありそれを運転する組織があり 価値ある社会的機能を果たしていることは確かである。 したがって, 数量的に測定できなくても, 価値は非営利組織の成功を評価するには適切 な方法であることになる。 ただ, 目的と結果を比較する「有効性」を高めるとか測定不能 な価値を高めるという名目の下に, 組織が本来もつべき効率性が損なわれ, またそれが疎 かにされる危険がある。 利益目的をもたない, したがって利益尺度を業績測定の甚準とす ることがない組織に特有な「非効率性」が生じる。 そこでは, 経営活動の評価は必然的に 主観的となることが問題である。 それは目標設定とその方法の決定を具体化する予算編成 の評価. ・. 管理過程の活動評価. ・. 業績結果の評価も主観的となることを意味する。 しかも,. 有効需要に対するサ ー ビス供給を収支適合の原則で行う公企業とは違って, 価値ありと認 められた必要性に応じて組織が拡大するという傾向をもつ非営利組織では, 組織拡大に対 する制約が働かないから, さらにX非効率の現象を生む危険がある。 非営利組織において は, 一般に経営者の自由裁量の範囲が広くなる傾向をもつだけに, たとえば, 事業規模の 拡大· 役員報酬の引き上げ 原因となって, 物理的. ・. ・. スタッフ組織の拡大などの組織スラ ッ クをもたらし, それが. 人的資源の過剰, 低生産性による高い労働費用, 経営管理能力の. 不足によるコスト上昇などの組織管理上から発生する非効率が生じる危険がある。 - 5(5)-.
(6) 第 45巻. 3). 第1 号. 非営利組織は特殊な外部環境の諸制約のなかで活動する。. 全部もしくは一部の資金(実物資産を含む)の源泉が公的資金や寄付金に依存するから, 資金調達や資金運用に関して直接的に外部勢力に影響を受けると同時に, またその要請や 欲求を充足させる必要がある。 営利企業も利益配分について外部勢力の影響を受けるが, 非営利組織はサ ー ビスの供給量や品質などサ ー ビスそれ自体に対する直接の圧力を受け る。 したがって, 資金の調達よりも資金の運用における制約がより経営効率を損なうこと になる。 特定の限定された事業範囲のなかで経営活動を行うことが本旨であり, またそれが法律 によって定められているから, なかにはその法律の枠が過度に厳密なために経営活動を制 約して効率的経営を阻む。 経営環境の変化に適応して事業の選択や変更をする自由には大 きな制限がある。 しかし, 重要な特質は外部関係が密接であり外部の諸勢力に影響を受けることである。 まず, 政治的・社会的影響の外部の圧力が強く働くから, 効率的な資源の配分が困難であ る。 経営者が経営管理の選択をする場合, 政治的作用を強く受けたり外部の諸勢力から再 選される必要があるから, 推薦や選挙する人々の意向と思惑を考慮する性向をもつことに なる。 その結果, 経営管理は迎合・馴れ合い • 取引・妥協・調整を基礎とする保守的経営 を余儀なくされ, また経営は短期目標による短期計画となる傾向をもつ。 組織によっては, 天下りや早期の転職があり経営は革新的でなく官僚制的となる。 さらに, たんに政治的・ 社会的勢力だけではなくて, 例えば宗教組織が設立する非営利組織のように, あるいは全 国的• 国際的なネットワ. ー. クのなかでの非営利組織のように, 全体のシステムから影響を. 受ける。 4). 経営管理の自立性が保証されないことがある。. 営利企業の株主総会や監査役会のように, 最高経営者層を選抜し統制する単独の外部集 団が存在しないのに, とくに最高経営者の任免について, 外部の資金提供者が実質上強い 発言権をもつ。 株式会社の組織機構 (株主総会一取締役会・監査役会一執行経営者層) に類似する機構 をもたないことから, ガバナンス (統治) の所在が不明瞭でありかつガバナンスが弱いも のとなる。 責任経路が不明確となり情報が的確に配分されないために, 統制機能も弱いも のとなる。 5). しかし反対に, ある種の条件の下では, 非営利組織の経営者は自由裁量行動をする. 機会が営利企業の経営者よりも多い。 - 6 C 6)-.
(7) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) このような機会は次の 2つの要因から生じる。 一つは, 特定の用途が指定されていない 場合か, 寄付の型か労働時間ではなくて金銭で示される場合や, 寄付者が小額提供者でか つ散在している場合などで監視が不可能であるために, 特定のアウトプ ッ トを産出するよ う条件づけられていない一 括寄付金が存在することから生じる。 二つは, 非営利の地位を 得るために必要な認定要件や信用· 法律要件などの参入障壁が存在することから生じる。 この一括寄付金と参人障墜という性質から, 長期的にも非営利組織の「潜在的利潤」が生 み出され, これを非営利の経営者が自己の利益と自己の理念に基づいて使用する自由裁量 が広くなる。 この意味で, 非営利の経営者はインプ ッ トやアウトプ ッ トの選択に対する所 有権をもつことになる。 たとえば, 偽装とX非効率, 技術選好, 高品質生産, 経営者の選 好したサ ー ビス間の内部補助などを選ぶ性向である。 このような性向をもつ経営者の下で の非営利組織の行動は, 最初に潜在的利潤を創り出した公的・私的寄付提供者の意図とは 異なるものとなる。 6). 専門家が最高経営者層を形成しまた経営の支配権をもつことが多い。. そこでは, 組織管理の組織的動機と個人的欲求の専門家的動機の二重の動機が働くが, 後者の専門家としての動機が第一義的な位置を占める傾向にある。 組織効率を顧みない経 営の危険が潜む。 さらにこの場合, 外部の監視機能が十分に働かなければ, 専門家集団が モラルハザ ー ドに陥る危険がある。 7). 組織構造は事業の性格上限定されることになる。. 事業範囲が限定されていることから,. 一. 般に事業部制を採用することはなく, 機能別の. 峨能別組織を基礎とする。 そこから, 官僚制組織の持つ弊害が生じ, 組織効率を低下させ る危険がある。 また, 単 一のかつ総合的な業績測定基準がないことから, 経営管理を下部 組織に委ねる管理組織の分権化を基礎とすることができず, いきおい集権的管理を余儀な くされる傾向がある。 8). 本来的になんらかのイデオロギ ー や社会的使命感を共有する人々の集合する共同体. であるので, 経営管理者から従業員に至るまでモチベ ー ションや勤労意欲を高める人事管 理制度や報酬制度が不備である。 9). 組織の固有な共有イデオロギ ー が優先し, 往々にしてそれは事業や経営の採算性を. 無視した技術的な完璧性や理念的な純粋性を求める完全主義となる。 これは経営効率を低 める作用をする。 以上, 要するに, 非営利組織では, 技術的· 数量的には, アウトプ ッ トの測定が困難で あり, インプットとアウトプ ッ トの間の関係が明確にできない。 したがって, 効率的経営 - 7C 7)-.
(8) 第 45巻 第 1 号 のための行動基準がな く また経営目的に対す る 経営管理活動の有効性を測定することがで きないものとなる。 そこでは, いきおい効率性を軽視することになり, さらにはサ ー ビス 目的と業績達成を合致させる有効性をも無視することになる。 評価が数値で表現できない 社会的サ ー ビスの供給を外部の資源提供者から受託する経営者が, 評価が困難であるが ゆ えに, かえって自由裁量の範囲を拡大 し て, 非営利組織の経営がいわ ゆ るモラルハザ ー ド の状態に陥る危険を本来的にもつことになる。. 第 2 章 非営利組織における経営管理の特殊性 すでに指摘 し たように(41,. 非営利組織に含まれる事業は多種の広い範囲に及び, それぞ. れがまた特殊な経営の構造と機能を持っている。 し たがって, 第 1 章に示 し た非営利組織 の諸特性は包括的であり一般的には理解できると し ても, それだけに特定の非営利組織に とっては厳密には適当 し ないかあるいは全 く 適当 し ない特性であるという場合が考えられ る。 さらには, 適当すると し ても, その適当する特性が経営管理の実践においてはそれほ ど重要性を持たない場合がある。 し たがって, 例えば, 法規の相違, 規模の大小, 業種の 相違, 形態の相違, 目的の相違, 理事会の構成の相違, 資金の源泉の相違に基づいて決定 的な特性を特定することが必要である。 し か し , ここではそれまでに「経営管理の全体」を把握する意味で, さらに必須と思わ れる基準によって諸特性を区別すべきであると考える。 それは非営利組織の特殊な経営の 構造と特殊な経営管理活動に 「作用する特性」をそれぞれに区別することである。 そのた めには, まず, 権威ある研究者が展開する 「非営利組織における経営の特殊性」の議論に 関 し て, 「作用する特性」を焦点に し て観察する必要がある。 ただ, ここに取り上げるいず れの研究者の議論も一部を除いてその発表の時期はかなり古いのであるが, いぜんと し て 新 し く 示唆に富んでいる以上, それらを謙虚に後づけることがむ し ろ正 し いあり方である と思われる。. 2-1 .. R. N. ア ン ソ ニ ー 151. この論考では. そのテ ー マ 「非営利組織ははた し てうま く 管理できるか」 が提示する疑. (4) 堀田稿 「非営利事業の概念 と そ の形態分類」 商経学叢第42巻第 2 · 3 号, 1995. R. N. Anthony, Can Nonprofit Organizations Be Well Managed ?, in "D. Borst, P. J. Montana, Managing Nonprofit Organizations, 1977.". (5). - 8 ( 8 )-.
(9) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) 問の通り, うまく管理できない凡庸な経営管理を生む原因の弱点として, 次のような特性 を指摘している。 まず, 彼にとっては, 非営利組織の経営の特性はその弱点なのである。 1). 利益測定の欠如 : 非営利組織はサ ー ビスを提供するために存在するから, 営利企業. のような利益獲得を 目 的としない。 したがって, こ の利益測定がない点は非営利組織に固 有な本来的な性質から発する。 ただ こ こ で, 利益の測定に代 わる同じような何かの測定方 法が こ の「サ ー ビス」にも適用できればよいが. 「サ ー ビス」は曖昧な概念である。 どのよ うにサ ー ビスが行われたのか, ある一定水準のサ ー ビスを達成するためにどれだけの資金 の支出が必要なのか, さらに.. 一. 定の資金の増減がどれだけのサ ー ビスの質の高低に影響. するのかを測定する こ とは困難である。 さらに. サ ー ビスの質を高めるには資金を何にど れだけ配分すればよいのかを測定する こ とも困難である。 非営利組織では こ のような測定 に基づく意思決定に対する分析方法が存在しない。 したがって, 費用の支出とその便益の 間の数量的な関係を構築する こ とができないのである。 要するに, 目 的の設定. その 目 的の達成に要する資源の決定, 目 的達成の実行過程にお ける効率性と有効性の測定という一連の組織行動の合理的な循環システムを持たないので ある。 こ れが非営利組織の最大の深刻な経営管理の問題点である。 こ れは非営利組織に固 有な問題である。 それは,「利益測定の周辺に構築できる機構と同じ程度のよい統制機構を 161 開発する予測可能な方法が存在しない点である。 」 営利企業で発達した経営管理制度と. 技術の多くは非営利組織にも適用可能であるから. したがって, なによりもアウトプ ッ ト 一組織は何をしているのか, それをどのように実行しているのかーに関する測定方法を開 発する こ とが先決である。 2). 市場競争の欠如 : ほとんどの非営利組織には競争の圧力がかからない。 新しい クラ. イアントは l つの機会ではなくて, その クライアントは収益の源泉ど こ ろか厄介な存在で ある場合が多い。 他方で, 組織の内部においても. 競争市場の圧力が働かないから, 費用 の削減やよりよいサ ー ビスという剌激を受ける こ とが少ない。 こ れに関しては, 非営利組 織の経営者が競争の作用を高く評価する こ とだけで, 営利企業との競合や組織内部の単位 部門組織間の競争心などの競争原理の適用が可能であり. 競争の欠如による弱点を少なく とも補う こ とができる。 3). 決定機関と組織の意思決定における政治性 : 政治的な圧力や政治的な考慮はよい経. 営管理を妨げる。 特に公共部門では こ の政治性は避ける こ とができないが. 非営利組織へ. (6) R. N. Anthony, op. cit., p . 9. - 9 ( 9 )-.
(10) 第45巻. 第1号. の政治的影響力を減ずる機会はある。 それは特に役員や経営者の選任に関する制度の改革 にお いて可能である。 4). 機能 し な い 役員会 : 役員会の職能は政策の形成とその実施状況の監視にあるのに,. 概 し て非営利組織の役員会はその責務を全う し て い な い 。 と こ ろが反対に, 非営利組織は 目的を限定する こ とが困難であり, 利益測定に比較できる 自 動的な評価手段がな い から. 政策と経営管理の業績を評価するには, 非営利組織の役員会の健全な判断に依存 し なけれ ばならな い 。 し たがって, その役員会は営利企業の取締役会よりもさらに軍要な役割を持 つべきである。 それにもかかわらず. 適正な基準で役員が選任される こ とが少な いと こ ろ に問題がある。 多額の寄付提供者と し てある いは名 誉戦と し て選らばれる こ とが多く, か れらが経営管理職と し ての技能をもつ こ とは偶然で し かな い 。 い きお い 執行経営者の政策 に判を押すだけの存在になる。 役員会はもっと強化する必要がある。 そのためには, 経営 者と し ての経歴と経験のある退戦者と職業的な専門家を役員に採用する こ とである。 5). 専門技術をもつ経営者が組織の長であると いう伝統 : 新 し い 企業経営の管理技術は. 適用できな い とする因習 : 経営者は技術的な専門家ではなくて, 経営管理の専門家でなけ ればならな い のに, こ れらの特徴が い ま だに非営利組織では制度的にも慣習的にも存続 し て い る。 さらに, 「組織」 の経営と いう点では. 営利企業も非営利組織も共通の経営管理戦 能を持って いる。 その限りで. 現代の経営管理制度と技術一予算編成 ・ プロフ ィ ット セ ン ター. ・. コ スト分析 • 標準原価. ・. 差異分析 • 目標管理などーは非営利組織にお い てもそのほ. とんどが適用可能であるのに. その採用が遅れて いる。 その弱点の主たる要因は, 経営管 理に対する非営利組織の因習的な考え方と姿勢にある。 こ れを排除するには, 圧力が必要 であり. こ のために役員会の活性化が必要であり, 他方では新 し い経営者の 教育と選任が 必要となる。 6). 低 い 報酬 : 以上の点から, 非営利組織の経営管理の優れた専門戦を採用する こ とで. あり. こ れがためには. 低 い 報酬を引き上げる必要がある。 以上の弱点を指摘 し て. 条件付きで「非営利組織はう ま く管理できる」とする。 すなわ ち, 業績測定の困難性, 政治的考慮の不可避性などが経営管理の職務を困難に し ているが. 競争の導入, 新 し い 役員会の役割, 経営管理技術の認識の拡大, 新 し い 専門的経営者の教 育と選任. 現代的な経営管理制度と技術の採用によって, 非営利組織の経営管理は大きく 改善されるとするのである。. - 1 0 ( 1 0 )-.
(11) 非営利組織の経営管理の特質 (堀田) 2-2 .. R. N. ア ン ソ ニ ー . D. R. ヤ ン グ171. この著書は, この 2 人の会計学者として著名で権威のある著者が初めて公刊した非営利 事業 (nonbusiness ) に関する体系的な 経営管理論であるが, その中で, 非営利組織の特質 を詳細に論じている。 この著作については, あまりに多くの誤訳があるもののすでに一応 の翻訳書があり181, また, これに関する論考として吉 田忠彦「非営利組織の経営管理上の特 徴について」191 が発表されている。 したがって, 甫複する点はここでは簡単に触れておく。 非営利組織の経営管理過程に影響を及ぼすある種の特質は次の諸点である。. 1). 利益尺度が欠如している. 2). サ ー ビス組織の性向が強い. 3). 目標と戦略の策定に制約がある. 4). 資金源の クライ アント依存性が低い. 5). 専門家が優位を占める. 6). 統治 (ガバ ナ ンス) に相違がある. 7). 最高経営者層 (トップ マ ネ ジ メ ント) に相違がある. 8). 政治的な 作用が大きい. 9). 不適切 な 経営管理の慣行がある. ただし, この中で, “第l の「利益尺度の欠如」 が最も重要であり, それがすべての非営 利組織に作用するが, その他の特質はそれぞれがすべてでは な いが, 多くの非営利組織に 作用を及ぼし, その作用は多様である。 したがって, それらは普遍的な 特質であるよりも むしろ性向というべきものである。 その上に, 第 1 の特質を除けば, これらの特質は非営 利組織に特有のものでも な い. ”. と指摘している呪. 吉 田 氏は, その論文の中で, 非営利組織の経営管理の特徴が公的組織に適合するものも 含まれる点, 提供するサ ー ビスの種類によって適合する場合も適合し な い場合もある点を 指摘し, 結局は非営利組織の形態分類を基礎として,「適当な 範囲によるタイ ポ ロ ジ ー 」 が 経営管理の問題を分析するのに必要であるというlllJ。 この問題提起は理論を整序するとい う意味からは貴重である。 しかし, 実は, 著者たちは, 非営利組織を営利志向組織 ( ビ ジ ネス) と対峙させて区別 (7) R. N. Anthony and D. R. Young, Management Control in Nonprofit Organizations, 1984. (8) 「公企業の ための経営管理人門」 太 田 昭和監査法人, 公企業会計部訳, 平成元年。 (9) 吉 田忠彦 「非営利組織の経営管理上の特徴について」 近大豊岡短期大学紀要, No. 20, 1992. (10) R. N. Anthony and D. R. Young, op. cit., pp. 38-39. (JI) 吉田, 前掲論文, pp. 82-88. - 1 1 ( 1 1 )-.
(12) 第45巻. 第1号. す る こ と に 関心 を 持 っ て お り , 非営利組織 は ま さ に 何 よ り も 「 ノ ン ビ ジ ネ ス 」 な の で あ る 。 現実 の 公 的組織 と 民間非営利組織 の 抱 え る 経営管理 の 弱点 = 特質 は ビ ジ ネ ス で な い ー ノ ン ビ ジ ネ ス ー と い う 点か ら 共通 な の で あ る 。 し た が っ て , 強 く 実践的 な ノ ン ビ ジ ネ ス の 改善 策 を 具体 的 に 提言 し て き た 著者 た ち に は こ れ が最善 の分類で あ り . 経営管理 の 特質 = 弱点 の 摘 出法 な の で あ る 叱 し か も , 唯一 の 特質 は 「利益の 測定尺度 の欠如」 に あ り . そ の 他 は普遍 的 な 特質 で あ る よ り も 性 向 で あ る と す で に 自 ら 確認 し 明確 に し て い る 点 を 考慮す れ ば, 吉 田 氏 の 批判 は, 多 様 な 性向 を あ る 種 の タ イ ポ ロ ジ ー に 従 っ で帰属 さ せ る と い う 意義 を 持 つ に す ぎ な い 。 さ ら に , ア ン ソ ニ ー た ち は詳細 に わ た っ て 多 く の特質 を 指摘 し そ の 改善 の 方策 を提言 し た後で. こ れ ら の 諸特質 は 「技術 の側面」 と 「行動の 側面」 の 2 種類 に 分 け ら れ る と す る 。 第 1 の技術の側面 と は. ア ウ ト プ ッ ト の 測定, イ ン プ ッ ト と ア ウ ト プ ッ ト の 間 の 関係 の 測 定 に 関 わ る 「利益測定 を め ぐ る 」 困難性か ら 構成 さ れ る 。 こ の 側面か ら 指摘 さ れ る 諸問題 は, 組織が非営利 で あ る と い う 事実 に 固有 な 側面 で あ る 。 ア ウ ト プ ッ ト の 測 定 の 改善 は 可 能で あ り . そ れ だ け の 有意 義 な 価 値 が あ る が, た だ最終的 に は, 営利企業 の よ う に は, そ の 改善が計画策 定 や 業績測定 に と っ て十分 な 基礎 を 提供す る こ と に は な ら な い 点 を 最 初 か ら 認識 し て お く べ き で あ る 。 こ れ に 対 し て, 第 2 の 行 動 の 側面 は そ の 他 の 特質か ら 構成 さ れ る が.. こ の よ う な 特質 か ら 妨 げ ら れ る 合理的 な 経営管理活動 は . 適 切 な 理解 と 教育 に. よ っ て 克服 さ れ る 性質 の も の で あ る 。 こ の 行動 の 側 面 の 克服 が な け れ ば, 技術的 な 側 面 の 改善が行 わ れ て も . そ れ が経営管理 の 過程 に は 本 当 の 作用 を 及 ぼ さ な い と す る 見 こ こ で 明 ら か に な る よ う に , 彼 ら の 考 え る 非営利組織 の 固有 で 究極 的 な 特質 は, 非営利 組織 は利益 目 的 で は な く て, サ ー ビ ス 供給 目 的 を も つ 事業体で あ る 点 に 求 め ら れ る 。 そ し て, そ の経営管理の 特殊性 は 「測定の 困難性」 に 集約 さ れ る の で あ る 。 た だ し , 利 益 の 獲 得 を 目 的 と す る の で は な い が, サ ー ビ ス 供給 の 目 的 を 組織 と し て 継続 し て遂行す る た め に は最終損益 ( ボ ト ム ラ イ ン ) の 計算 は必要で あ る 。 そ こ で, ア ン ソ ニ ー は.. ビ ジ ネ ス 組織. と ノ ン ビ ジ ネ ス 組織 の 相違 に 関 し て は. FASB な ど で も い く つ か の 点 が指摘 さ れ議論 さ れ て い る が.. ノ ン ビ ジ ネ ス 組織 は 「寄付金を受領す る と い う 事実」 だ け が相違点で あ り ,. こ. れ だ け が非営利組織 の 会計概念 と 会計基準 を 必要 と す る 本 当 の 理 由 で あ る と す る 呪 つ ま. し か し さ ら に 別 途 に , こ の ノ ン ビ ジ ネ ス を タ イ プ A (財源 の 大 部分 を 製 品 や サ ー ビ ス の販売 で調達す る 非営利組織) と タ イ プ B ( そ れ以外の 非営利組織) に 区別 し て . 特 に 会計学上 は タ イ プ A の財務報告制度 の 向上 に実践的 に 貞献 し て い る こ と は注 目 す べ き で あ る 。 (13) R. N. Anthony and D. R. Young, op. cit., p. 61. (14) R. N. Anthony, Should Business and Nonbusiness Accounting Be Different ?, p. 21 . (12). - 12 ( 12 ) -.
(13) 非営利組織の経営管理の特質 (堀 田 ). り, 経営管理活動の 1 つの統制機構である会計制度に関して, 両者の相違を認めない立場 となる。 要するに, 非営利組織の特質の「技術的な側面」は会計制度を中心とする各種の管理用 具によってある程度の改善が 可能であり, 他方の 「行動の側面」 はたんなる性向でありこ れの是正は完全に可能であると考える。 そこで, 組織の効率的な管理を考える視点からは, 営利企業の合理的な経営管理に比較 して, 非営利組織には多くの弱点が認められ, それが経営管理の特質として理解されてい るために, 非営利経営管理の特質論は, その内容が最初からその改善を図る実践的な処方 箋となっている。 しかもその方向と内容は現代的で合理的と考 えているもっ ぱら企業経営 の諸制度と諸方法への接近でありそれらの適用である。 これでは, 独自の経営管理の理論 とその実践を構築するまでには至らない。 以上の彼らの展開それ自体は十分に評価できるものがあるが, 非営利組織の経営のどの ような特殊性が, どのような特殊な経営管理の行動を生み出すのかという組織行動の理論 を作りだし, これに基づいて非営利組織の特殊な経営管理論を組み立てるという作業を期 待することはできない。. 2-3 .. R. M. サ イ ア ー ト ⑮. 組織の本質や 目 的, その 目 的を達成するための経済性基準などの組織に関する概念は, 営利企業も非営利組織もともに同じく包括する概念である。 しかし. 第1に, 両者の相違は「業績の評価のプロ セ ス」 にあると考えられる。 事実, 非営利組織では, 多様な基盤から多くの異質の期待が生じて, ある業績を判断する諸基準 に関する一致が存在しない結果となる。 例えば, 学長の業績は評議員・教授 • 学生によっ て全く異なるものである。 さらに, 評価に関する問題は. 非営利組織が市場のテストを受 けずに遮蔽されている点である。 そこで, 業績の適正な測定を組織に与 えるようなある種 のフィ ー ド バッ クメカ ニ ズムの開発を内部の管理組織に設定する必要がある。 このためには, 目 標構造を開発しこの 目 標構造と評価指数とを連関させる方法を講ずる べきである。 ここでは, 営利企業と同様な方法が適用できるのである。 営利企業における 業績測定の唯一 の基準が利益基準であるわけではなく, 管理者の詳細に規定された行動計 画と実践結果の比較を通して業績の測定がなされるという面では同じだからである。. (15) Cyert, Management of Non-profit Organizations, 1975, pp. 7-55.. - 1 3 ( 1 3 )-.
(14) 第45巻. 第l号. 第 2に, 非営利組織は, 業績測定の諸基準が欠けていることと, 分権管理に必須の多数 の有能な管理者の供給が不足 し ていることから, 集権的な管理が行われる性向を持つ。 営 利企業における分権管理の基礎はプロフ ィ ットセ ンタ ー の概念であるから, この概念に基 づく制度を非営利組織に導入することはできない。 予算資金を単位部門組織に配分するだ けの分権化は非営利組織においても行われると し ても, それでは財務以外の業績測定がで きないから, 結局. 優れた経営者は組織を集中化 し て, 自 らが達成すべき諸目標を決定す る傾向を持つ。 し たがって. 分権化のためには. 個別単位の業績測定の方法が設計される 必要があり, さらに. 分権化組織を運営する多数の優れた管理者の採用と養成 ・ 訓練が必 要である。 第 3に. イ ノ ベ ー シ ョ ンの欠如である。 その原因は非営利組織の収益の獲得方法にある。 そこでは, サ ー ビス供給の生産を増加させ, これに伴って コ ストを引き下げ. 利益を創出 するよい配給システ ム を開発するという利益産出のシステ ム が働かない。 む し ろ. 場合に よっては. 収人の増加は剰余金よりも損失額に関連することさえある。 し たがって. 収益 の増大と コ ストの削減の必要性は少なく, その結果. 非営利組織では. 問題解決の探索と 革新に導く圧力に欠けているのである。 し か し , 助成金などの公的資金の削減. インフ レの圧力と競争の激化など経営を巡る諸 条件が変化 し てきたことから, このことはすべてが妥当 し なくなった。 非営利組織が コ ス ト削減を探索せ ざるを得ない事態となった。 し か し なお. 収益源と業績とが直結 し ない非 営利組織では, 業績の向上を図り収益の増大をもたらす経営管理の方法を開発するという 圧力は欠落 し ている。 第4に, この収益増大の方策の欠落を具体的に表現 し ているのであるが, 非営利組織に おけるマ ー ケ テ ィ ン グ活動の軽視ない し は無視である。 特に大学においてはこの マ ー ケ ティン グの用語を用いようとは し ない。 非営利組織におけるマ ー ケ ティン グ概念の導人を 疎外する 1つの要因は, この種の活動に強烈に反対する伝統である。 2 つは. ある政策決 定によって市場の規模が意図的に縮小される事実である。 大学においては. 学生のある一 定の知的水準を求めるという質の制約が存在する。 第 5に, 組織の性格を決定する重要な職能である資源の配分に関 し て. 非営利組織では いまだにその配分の諸原則となる固有な技術を開発 し ていない。 いきおいその資源の配分 は政治的プロ セ スにより決定されることになる。 営利企業では, まず市場価格が大きな条 件と し て存在 し . その条件の中で. 企業内の資源の配分のフ レ ー ム ワ. ー. クの合理性は利益. の増大に収敏 し ている。 ところが. 非営利組織には市場の価格制度の規律と客観性がなく, - 1 4 C 1 4)-.
(15) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) また利益の増大のような一 定の基準がないから, 組織内のサ ー ビス間や部門間を比較する こ とのできる客観的な基準によって資源配分をする方法が存在 し ない。 さらに, 非営利組 織では, そのフ レ ー ム ワ. ー. クの合理性は提供されるサ ー ビスの質でなければならない。 そ. の上に, 非営利組織では, 多数の利害関係者が存在する こ とから, 一連の特定された 目標 を設定 し それを展開する こ とは困難であるから, 資源配分の系統的な基準が欠ける結果と なり, 資源配分の プロ セ スに曖昧性と独断性が常に潜む こ とになる。 こ こ から, 非営利組 織の資源配分は政治的プロ セ スによるという傾向を持つ。 第6 に, 資源の配分に関連 し て,. 一. 般に非営利組織は予算編成において支出予算から積. 算する予算主義である。 こ の予算編成 プロ セ スはいわ ゆ る ゲ ー ムの理論の示すように進行 する。 過剰な予算 申請かあるいは過少な新規予算の 申請を生む こ とになる。 こ れを回避す るためには, 収益見積り予算から一 こ れも収益見積りを下方に歪める性向を持つが一予算 編成 プロ セ スを始める必要がある。 こ のためには, 諸 目標の設定と 目標達成の優先順位を 確定 し ておかなければならない。 こ のシステムが非営利組織では特に不備である。 さらに 強調すべき点は, 非営利組織は, 組織の利害関係者との契約から解放されるには長期の時 間を要する こ とである。 例えば, 大学における教授との複数年契約や学生との授業料や履 修課程の 4年間の契約である。 こ れらを変更するには長期間を要するから, そのためには, 非営利組織は長期の予算編成が必須となるのである。 こ こ でも, 予算編成の方式よりは, 目 的の達成計画の作成が先決の課題となる。 第7に, 非営利組織は営利企業のようにつねに成長を求めて 多角 化するモチベ ー ション を持たない。 む し ろ, 安定的も し くは縮小 し ている組織である。 こ のような組織の抱える 重要な問題は, 1 つは人事の停滞であり, その結果と し て の人的資源の能力の低下である。 他の 1 つは, 財源の 一定あるいは縮小であり, その結果の収益増大の施策が悪循環をもた らす こ とである。 多角 化が困難である こ とから, 特定のサ ー ビスの単価を引き上げる こ と はサ ー ビス需要を減少させ, ひいてはサ ー ビスの悪化をもたらす こ とになる。 大学におけ る授業料値上げの悪循環がそれである。 し たかって, 組織の内部の生産性の向上が重要と なるが, 組織関係者の中の特に専門家集団が こ の統制管理的な方向と施策に強く抵抗する という性向がある。 さらに, こ の種の組織では, 限られた資源と組織内部のサバイバ ル競 争のために組織内部のコンフ リ クトが厳 し く発生するが, 営利企業のような利益測定基準 が欠けているために, こ の解決が困難である。 こ こ にも, 非営利組織の経営管理の特質が 認められる。 以上, 長文の論考を前後を綴じ直 し て要約 し たが, サ イア ー トは組織の理論的な研究と 5( 1 5)- 1.
(16) 第45巻. 第l号. 大学 の学長 と し て の非営利組織 の 実践経営 の体験を基礎 に し て, 非営利組織 の 特質 を組織 そ れ 自 体 の 特 性一業績評価 プ ロ セ ス の 不 一 致, 集 権 的 志 向 の 組織, 保 守 的 な 組織, 安 定 的 ・ 縮小 的 な 組織ー と 経営職能 の 特性ー 政 治性 を も ち 込 む 資 源調達, 支 出 予 算 の 予算編 成, 創造性 を も た な い 配給 ( マ ー ケ テ ィ ン グ) 活動ー と を 指摘 し た と 言 う こ と が で き る 。 た だ, 彼 の 主 た る 関心 は,. こ の 種 の特性 を 条件 と し て, あ る い は そ れ を 克服 す る た め の 非. 営利組織 の 具体的な 経営管理 の諸方策 を提示 し て論議 を す る こ と で あ る が, そ れ は本稿 の 議論 の対象で は な い の で割愛す る 。 む ろ ん い ず れ は こ の 経営管理問題 に 取 り 組 ま ね ば な ら な い。. 2-4 .. P. F. ド ラ ッ カ ー 11@. サ ー ビ ス 機関 (service institution戸 は経営管理 さ れ て い る の か と 問 え ば, こ の 種 の 多 く の組織が経営 の 危 機 に 遭遇 し て い る こ と を 契機 に し て , 経営管理的意識が高 ま り , 徐 々 に経営管理 を学習 し て 「事業」 に 転換 し て い る こ と は事実 で あ る 。 し か し , 問 わ れ る べ き 疑問 は, そ れ に よ っ て 成功 し た組織が何を し て ( あ る い は何 を 避 け て ) 業績達成 を 果 た し た の か で あ る 。 そ の 疑問 こ そ 特定 の 種類の経営管理 の 問題 な の で あ る 。 実 は, 企業 も 非営利組織 も ほ と ん ど の 点 で は大き く 変 わ る と こ ろ が な い 。 事 業 を 組織 と し て 生産的 に 運営す る こ と , 事 業 の 社会的責任, 最高経営機関 の 機構 と 職貢, 経営者 の 戦 務 組織設計 と 組織構造 な ど は企業組織 と 大 き く 異 な る と こ ろ は な い。 組織 の 内部 に お い て は, 違 い は実質よ り も 用 語 に あ る と い う き ら い が あ る 。 し か し , 甫要 な 点 は, 非営利組織 は基本的 に 異質 な 目 的, 価値観, 目 標 社 会 へ の 貢献 の あ り 方 が異な る 。. “. 事業 “. な る の で あ る 。 し た が っ て, 企 業 の 経営管理 と は異 な る 理. ”. ”. に 従事 し て い る こ と で あ る 。. パフ ォ “. ー. パフ ォ. マ ン ス と 成果 ー. ”. が全 く 異. マ ン ス の た め の 経営管. が非営利組織 の た だ l つ の領域で あ る 。. 「 な ぜ非営利組織 は巧み な 経営管理 が で き な い の か 」 と い う 問題 に 対 し て , 一般 に は次 の 3 つ の 点が指摘 さ れ て い る 。 1). 経営者が. “. 効率的. ”. でな い. (16) Drucker. Managing the Public Service Institution, in "D. Borst. P. J. Montana (ed.) . Managing Nonprofit Organizations. 1 977," pp. 1 6-3 1 . (17) "public service institution" と い う 用 語 を 使 っ て い る が, 決 し て 政府機関や行政サ ー ビ ス 機 関 を 指 し て い る の で は な い。 こ れ ら は も ち ろ ん サ ー ビ ス 機関 で あ る が, こ こ で は対象 と し な い と 自 ら 断 っ て お り , こ の 用語 に よ っ て, 営利企業 と 政府機関以外 の サ ー ビ ス 機関一学校 ・ 大学 · 研 究所 ・ 公益事業 ・ 病院 • そ の他 の 医療機関 • 実業団体な ど を 指 し て い る の で あ る 。 し た が っ て, 本稿で は, 説 明 の 便宜上, 以後は こ れ を 「非営利組織」 と 記す。 - 1 6 ( 16) -.
(17) 非営利組織の経営管理の特質 (堀田) “. 2) 非営利組織は 有能な人材 “. 3) 目標と成果は 有形. ”. ”. がいない. でない. しかし, こ れらの理由は当たらない。 1). 企業のように行動すれば = 効率的に管理すれば, 非営利組織は巧みに業務を遂行で. きると考える傾向があるが, それは非営利組織の病気に対する誤った処方である。 ビ ジ ネ ス = 企業においては, その焦点は資本の回収· 市場 占有率などの成果にある。 非営利組織 において ビ ジネスのようになる こ とは, せいぜいが原価管理をする こ とを意味するにす ぎ ない。 真実は, それが ビ ジネスでない ゆ えにパフ ォ. ー. マ ンスが困難なのである。 むろんす. べての組織において効率性は必要である。 しかし, 非営利組織の基本的な問題は, 高いコ ストではなくて, 有効性の不足にある。 非常に効率的かもしれないが, それで正しい こ と をしていない性向 がある。 コストは下がるかもしれないが,. “. ”. 効率性 の名において, その. 組織の目的の遂行にとって本質的なサ ー ビスは薄くなるか削除される可能性がある。 2) 有能な人材が必要であるのにそれを求めてもいないから, 非営利組織は巧みな経営 管理ができないとするが, 普通の人材では管理できないとすれば, 言い換 えれば, ある満 足水準で懸命に働く人たちで仕事が遂行できるように組織を組む こ とができなければ, 仕 事は全くできない こ とになる。 さらに, 企業に比較して非営利組織の管理者が資格や能力 “. に劣ると考える根拠はない。 ただ, 企業の実業家でも非営利組織に入れば, 直ちに 官僚 となり, また企業の有能な実務家がサ ー ビススタッフに異動すれば こ れも こ とは確かである。 それは組織の中のパフ ォ. ー. “. ”. ”. 官僚 になる. マ ンスが困難である こ との証左である。. 3) 一見もっともらしい理由であるが, その説明は詭弁でありせいぜいが半分妥当する にす ぎない。 すべての組織において, その組織の事業とは何かを規定するときには, それ は目に見えない無形のものである。 しかし, 目的が無形であっても, それを達成するため のなすべき目標は目に見 えるものであり, そのパフ ォ. ー. マ ンスは簡単にかつ正確に測定で. きるのである。 どのような組織においても, 特定の限定された明確に定義された標的がなければ, 何事 も成就しない。 標的が限定されたときに初めて, それを達成するための資源が配分され, 優先順位と最終期限が設定されて, 誰かがその結果に対して責任を負うのである。 こ の場合, たとえ無形であっても, 組織の目的と使命が定義されている こ とが有効に組 織が機能するための第一 歩である。 目的が無形であるから, したがってその成果も見えな いと言うのは詭弁である。 “. ”. さらに, 営利企業に比較して非営利組織には複数の 選挙民 (利害関係者)が関与する - 1 7 C 1 7)-.
(18) 第45巻. 第 1 号. 点が指摘 さ れ る が, 企 業 に お い て も そ の経営者 も 含 め て 多 数 の 利害関係者が存在 す る の で あ る。 以上か ら , 一般 に議論 さ れ て い る 非営利組織 の 特性 = 経営管理上 の 欠点 の う ち , ー. カ. ドラ ッ. は, サ ー ビ ス 供給 目 的 の 特殊性, 成果測定 の 困難性, 経営 ・ 経営者の 非効率性 を取 り. 上 げて,. こ れ ら の 特性 は非営利組織の パ フ ォ. ー. マ ン ス の 不備 の 理 由 に な ら な い と す る 。. そ れ で は, 彼 は何 を も っ て 非営利組織 の特質 と す る の か。 ) 1. 企業 と 非営利組織 の 基本的 な 相違 点 は , 非営利組織 の 報酬 の 受 け 取 り 方 に あ る 。 企業. で は, 顧客 の ニ ー ズ に 適合 し た製品 だ け が対価 と し て の報 酬 を 得 る こ と が で き る か ら , 顧 客 の 欲求充足が企業 に お け る パ フ ォ. ー. マ ン ス と 成果 の 基礎 で あ る 。 対照的 に , 非営利組織. は 予 算 の 配分 か ら 収入 を 得 る 典型 で あ る 。 つ ま り , そ の 収益 は, 何 を し て い る の か と は 直 結 し な い で, 課税, 割 当 て , 寄付金 な ど か ら 得 ら れ る 全体 の 収益 の フ ロ. ー. か ら 配分 さ れ る 。. さ ら に は, 典型的な 非営利組織 は 独 占 権 を 有 し て お り , 対象 と な る 受益者 は選択 の 余地 を 持 た な い の が普通で あ る 。 予 算 の 配分 に よ る 収 人 は, フ ォ. ー. パ. フ ォ. ー. マ ン ス や成 果 の 意 味 を変 え て し ま う 。 つ ま り ,. パ. マ ン ス は予算を増額 さ せ る 能力 と な り , 成 果 は 予算増額 で あ る 。 こ う し て, 最初の. テ ス ト と 最初 の 存続必要条件 は 予 算 の 獲 得 と な る 。 し か も 予算 は結局,. 目 標 の 達成 に 関係. す る こ と な く , 目 標 の達成の 「意図」 に 関係 す る に す ぎ な い。 こ こ か ら は, 効率性 と コ ス ト コ ン ト ロ. ー. ル は真 の 価 値 を 認 め ら れ な く て, む し ろ 予算の. 規模 と そ の ス タ ッ フ の規模で組織 の 重要性が測定 さ れ る 。 よ り 少 な い 予算 と 人員で成果を 達成す る こ と は, 非営利組織で は 「 パ フ ォ. ー. マ ン ス 」 で は な い。 結局, 「 パ フ ォ. ー. マ ン ス」. と 「成果」 を測定す る も の は予算 で あ る 。 し た が っ て,. こ の 予算 の 獲得 と 組織 の効率性 は 明 ら か に 相 容 れ な い 。 し か も , 予 算 の 配. 分 に 依存す る こ と か ら , 組織の 有効性 も 危険 に 陥 る 。 す な わ ち , 組織 の使命 は 何 で あ る べ き か と い う 問題 を 提示 す る こ と が危 う く な る 。 こ の 問題 は つ ね に 多様 な 議論 に な る が, そ の よ う な 議論 は遠 ざ け ら れ て, 結 局 は 棚 上 げ さ れ る 叫 さ ら に ま た , 予算配分 に 依存す る と , 優先順位 を設定 し て 集 中 的 な 目 標達成 に 努 力 し な く な る 。 し か も , ば ら ま き 資源 の 配分 に な っ て 何事 も 成就 し な い。 企業 に お い て は, あ る. (I�. 例 え ば. 私立 の病院 に お い て. 使命 と そ れ を達成す べ き 諸 目 的 の 間 の 混乱が ま す ま す 大 き く な っ て お り . そ の結果, 有効性 と パ フ ォ ー マ ン ス の 障害が発生 し て い る 。 病 院 は 多 様 な 事業 を ど の よ う に 選ぶべ き か を決定す る 際 に . 有能 な病院 は複合的医療機関 と な り . 多様な 目 的 の 間 の 均 衡 を 図 る け れ ど も . ほ と ん ど の病 院 は こ れ を で き ず に. 事業範囲や使命 に つ い て混乱 と 障害 を 引 き 起 こ し て い る。 - 1 8 ( 1 8)-.
(19) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) 程度の市場占有率があれば, それに集中する活動が選ばれる。 し か し , 非営利組織では少 数の参与者の反対があれば, 予算が充当 されないか ら , 優先順位を設定する こ とが困難で ある。 さ ら に, 顧客によって抹殺されるような規律が強制されないか ら , 不適となった 陳 腐 化 し た サ ー ビスも こ れを放棄する こ とがない。 非生産的な努力が継続する。 要するに, 非営利組織では, その報酬はよい意図とよい計画に対 し て支払われるのであ り, ある特定の顧客 グ ル ー プの満足よりも, 重要な関係者を排除 し ない こ とに対 し て支払 われる。 こ のような支払方法を通 し て, 予算の維持とその増加が組織のパ フ ォ. ー. マ ン スと. その成果であると錯覚する こ とになる。 そのような誤った 方向に志向するのは, 甚本的に は非営利組織が競争市場のテスト の下で組織されていないか ら に他な ら ない11四O. 2-5 .. C. C. セ ル ピ ー �JI. 集団 パ フ ォ. ー. マ ン スが 原 因 となる受託責任の分散性と体系的な金銭的報酬制度の欠如. が. 営利企業と比較 し た 非営利組織 (特に ボ ラ ン テ ィ ア 団体) の経営管理面に認め ら れる 特徴である。 他方では, 利他的で主義に生きるという強い動機が経営活動における特徴を 作り出す。 こ のような特徴か ら , 受託責任,. マ ー ケ テ ィ ン グ,. ガ バ ナ ン スという固有の重. 大な経営管理上の諸問題に直面する。. (19) 同 じ 見解は多い。 例えば, C. C. Selby, Better performance from "nonprofits", Harvard Business Review. Sept. -Oct. 1978, p. 95. (2()) なお. 本稿の匝接の対象ではないが. 最後に. 非営利組織が成功する条件と し て. ド ラ ッ カ ー は次の諸点を挙げる。 これらの諸点を裏返 し てみれば, 非営利組織の経営管理の特殊性 = 弱点が 浮き彫 り にされる。 1) 自 己の事業とは何か。 それはどうあるべきかを規定することである。 自 らの瞭能と 目的と “ ” 任務を通 し てパ フ ォ ー マ ン ス テ ス ト に従うべきである。 それは決 し て ビ ジ ネ ス ラ イ ク になる ” “ ことではな く て. む し ろ その 固有な事業ら し く なる ことである。 2) 使命の定義から明確に し た 目 標を設定すべきである。 それには多 く の関係者が必要ではな く , 組織を意図的にパ フ ォ ー マ ン ス と成果に結 びつける経営管理の餓能を担うものが必要であ る。 その際に. 効率性ー原価管理を必要とするが, と り わけ有効性一正 し い成果に重点を置 く こ とが必要である。 3) そこで, 目 標の選択を可能に し て く れる集中すべき優先順位を設定 し なければならない。 これに基づいて遂行と達成の基準とその責任を設定する一最低限に受容される成果を限定する必 要がある。 4) パ フ ォ ー マ ン ス の測定方法一顧客満足の測定方法などを規定すること “ ” 5) この測定方法を活動努力に対する フ ィ ー ド パ ッ ク に利用すること一成果による 自 己統 制を制度化すること 6) 目的と成果の組織的な監査をすること一 不適切な活動を放棄 し , 活動の刷新と革新を進め る メ カ ニ ズ ム を作ること。 この点は市場の テ ス ト を通らない非営利組織には. この条件は最も重 要である。 要するに, 使命, 目的, 優先順位を通 し て計慮 し , 政策, 優先順位. 行動に対する成果に基づ く フ ィ ー ド バ ッ ク 統制を構築することである。 これによって. 予算のための パ フ ォ ー マ ン ス では な く , パ フ ォ ー マ ン ス のために経営管理をすることである。 �I) C. C. Selby, Better performance from 'nonprofit', Harvard Business Review. Sept.-Oct. 1978.. - 1 9 ( 1 9 )-.
(20) 第45巻. 第1 号. 非営利組織の目的は基本的にサ ー ビスの供給にあり, それは ボ ト ム ラ イ ンの利益ではな くて, その利益は. “. ”. クオリ テ ィ オ プライフ の部分である。 これを遂行する機関は営利企. 業と同じく所有者によって選任された理事会であり. これに任命された執行機関である。 問題は, そのような目的の事業の活動はどのように管理されているのか, その製品はどの ように設計され マ ー ケ テ ィ ン グされているのか, 最終成果はどこに行くのかに関 し て大き な相違がある点であり, この相違点が非営利組織の経営管理を固有な領域に し ているので ある。 1). 受託責任 : 企業においては, 所有者株主が取締役会を選任 し , この役員会が執行経. 営者を任命 し , この経営者に権限を委譲 し , 経営の直接責任を負わせる。 これに対 し て, 非営利組織においては, 直系のライン責任の機会はほとんどなく, 最終的な受託責任者で ある. “. 所有者. ”. が不明であることが多い。 ここから, 経営の生産性と効率性の低下が生ま. れる し , 他方では反対に. それなるが ゆ えに, 経営の創造性と公平性への配慮が生まれる。 専門的tょ 非営利組織ー病院 ・ 大学 ・ 美術館などーは専門家だけが提供できるサ ー ビスを 供給する。 そこでは, 専門的な問題や経営の問題に関する調整と合理化の作業を執行経営 者ではなくて役員会に直接委ねることが多い。 この場合には, その組織には経営管理階層, 専門家階層, ボランテ ィ ア階層の内の 2つか 3つの階層が見られる。 さらに, この種の専 門家は下位組織や外部職業集団の中に参加 し て独自の行動原則で動く存在である。 また, 非営利組織では, 役員会が経営の責任を有 し ているが, その経営管理階層の中に ボ ラン テ ィ アが参加 し ている。 し か し , かれらが有給の管理スタッフと直接の報告関係にあるこ とはほとんどない。 受託責任をスタッフとボランテ ィ アの関係の中で維持することは困難 である。 それぞれが独 自 の階層を通 し てそれぞれの上位階層に報告することになる。 このような並行的で交差的な管理組織のネットワ. ー. クから, サ ー ビス配給の責任が分散. し , そのサ ー ビスの品質と性質に関する責任を明確に し て, それに関するフ ィ. ー. ド バッ ク. を保証することが困難となる。 そのうえに, サ ー ビスの有効性の計数的な測定方法や限定 的な測定方法も欠如 し ているために, このプロ セ スがさらに複雑となる。 サ ー ビスの有効 性に関する責任が問われることも, 責任が交差することもなく, それぞれの立場で有効性 が解釈されるだけである。 また, 複合する管理組織系列であるために, サ ー ビスの供給に関する 問題よりも, 組織 の内部の構造に関する問題に関心が集まることになる。 組織規定, 組織の再編成, 計画の ための計画案の作成などに偏ることになる。 このような非効率的な経営活動の結果は, 小規模組織では決定力のある執行経営者の専 - 20 ( 20 )-.
(21) 非営利組織の経営管理の特質(堀田) 制的な統制か, 大規模組織では参加型民主主義の機能しない統制になり, いずれも変化に 対する必要な感受性 と 適応性が鈍化してさ ら に非効率をもた ら すこ と になる。 2). 最終成果 : 営利企業においては, 最終損益 ( ボ ト ム ラ イ ン ) は観察可能な有形の利. 益であり, 具体的に株主 では,. ・. 経営者・ 政府・ 企業に配分される。 これに対して, 非営利組織. サ ー ビス供給の利益は サ ー ビスの受益者に配分される。 もち ろん経営者も報酬を得. るし, 事業の将来の存続のための剰余は有形であるが, その他は利他的で イ デオ ロ ギ ー の 充足であり, 受益者も経営者もボ ラ ン テ ィ ア もその獲得する利益は ほ と ん どが有形ではな い。 そこでは, 経営者の職務のイ ン セ ン テ ィ プは, 経済性よりも予算費消に傾き, チ. ー. ムワ. ー. また ,. ク を犠牲にして自 己満足 と 合体する。. 機能的な組織活動に と っ てのこの 2 つの障害の内, 後者の利益の. “. 報酬. ”. と フ ィ. ー. ド. バ ッ ク の欠如は動機づけに直接に作用 するが, 前者の直系の受託責任の欠如は動機づけに 間接的に作用 する四g (22) ボ ラ ン テ ィ ア組織で は. 以上の相違点である障害にさらに特有の障害が加わる。 ポ ラ ン テ ィ ア の役割 は 別の組織での役割とは異質のものである。 ポ ラ ン テ ィ ア は 自 分で選択したある主義のた めに行動するのである。 そ こ で, 自 分の主義が最良であ り そ れが一般に受認されていると仮定す るから . サ ー ビ ス の マ ー ケ テ ィ ン グ計画や配給制度を展開しない。 さらに. ボ ラ ン テ ィ ア の行為 そ れ 自 体が善であ り , こ のために役立つ行為をするという役割意識で行動する こ と は善であると の仮定に立つから , サ ー ビ ス の貢献者として. サ ー ビ ス の性質を決定する権利とむし ろ 義務を持 つと錯覚する こ とである。 そ こ に は, サ ー ビ ス の製品設計に関して, 市場の顧客が関与する余地 がな く . ま た サ ー ビ ス の受益者に委ねられる よ り も. ボ ラ ン テ ィ ア などの寄付提供者の管轄権の 下にある こ とになる。 フ ィ ラ ン ソ ロ ピ ー の分野で は. 例えば環境保全の サ ー ビ ス などその市場は きわめて広 く かつ 事実上競争がないために. そ の傾向が強 く なる。 (C. C. Selby, op. cit., p. 95. ) (23) こ の他に. I. ウ ン タ ー マ ン , R. H. デイ ピ ス は. 特に企業組織と非営利組織の間の最高意思決 定機関の構成のあ り 方と そ の職務内容が異なる こ とから. そ の経営活動―特に その戦略的意思決 定一のあ り 方に相違がある こ とを調査によ って明らかにしている。 こ れらの相違が非営利組織の特有な意思決定と経営活動をもたらす。 I ) 役員会の規模 : 非営利組織で は 役 員 数 は 多 数 であ り , こ の事実が組織の 目的と 目 標を決定 する際に決定的に作用する。 個性が多様であれば. 自 己の主張する価値体系が薄められ, 多数の 役員の 多様な価値体系が互いに中和する結果となる。 そ こ から . 多数の役員 は戦略的意思決定過 程に 自 分の価値観を注入できないから. 戦略的決定には 参加しない。 反面, 多様な価値観が中和 されるから, 執行経営者の価値体系が強 く なる。 2) 執行管理者の参加程度 : 組織内 部の常勤執行役員 は ご く 少数しか参加していない。 そ こ か ら, 役員会と内 部の管理者層との接触が 中断され, 情報の流れが制約される。 3) 経営管理の経験と専門的技術者の助言の程度 : 経営管理の経験者が少な く 専門朦が多数を 占める。 効率的な経営管理 よ り も専門的 ・ 技術的な性向が強 く 働 く こ とになる。 さらに. 自 由業 の人材の利用が ほとんどない。 4) 役員囃の期間の程度 : 短期間の任期であ り 会長朦 は通常 1 - 2 年 で交代する。 そ こ から. 責任のある長期的な戦略の策定が回避され ま た阻害される。 その結果 は. 経営の基盤を改善する こ とが困難とな り , 執行経営者が そ れを利用する こ とになる。 5) 役員の執務時間数と貢献時間数 : ほとんどの役員 は常勤で はな く . 会議に参加して承認を 求められるのが典型であるから, 政策意思決定に参加する こ とが事実において不可能である。 い きおい執行経営者の影響が強 く なる。 6) 戦務内容とその範囲 : 企業における役員会の峨務と は 別に. 募金活動の よ うな執行的な職 能も負担している。 執行経営者と役員会の載務分担が不明瞭である。 他方. 非営利組織の特徴 は, 業務の執行に関して計画と実際を比較する統制方法が ほとんど/ - 2 1 ( 2 1 )-.
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