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独立行政法人の憲法学 : 資料・独立行政法人一覧付

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Academic year: 2021

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(1)独立行政法人の憲法学 ──資料・独立行政法人一覧付── 君 塚 正 臣. の中で,独立行政法人制度を提言した.「行政. はじめに. を簡素化・効率化することを,目指す」目的で. 行政改革の掛け声により,21 世紀冒頭に日 1). 導入することが提唱されたこの制度は,中央省. 本に登場した独立行政法人 は数多い.しかし,. 庁の再編と内閣の機能強化と並び,行政改革の. この新しい組織については,司法改革と法科大. 柱の1つと言えるものであった.それは,行政. 学院設立の喧噪の中,公法学からの検証は比較. 実施部門は,国民のニーズとは無関係に自己増. 的少なかったように思う.また,あっても,自. 殖的に業務を拡張する傾向があるという想定に. 2). らに関わる国立大学の国立大学法人. 化に目. 基づいていたと思われる6).. が行きがちで,より一般的な独立行政法人化に. 確かに 1996 年の自民党の選挙公約では,中. ついてはあまり検討されず,どのような独立行. 央官庁の制度執行部門のエージェンシー化(外. 政法人が何を目的に誕生したのかという基本的. 庁化)が 謳 わ れ,外庁化 は 直後 の 自民・社民・. な点について,我々は把握不足であるように思. さきがけの 3 党政策合意になってはいた7).し. われる3).しかも,その検討の多くは,当然の. か し,「独立行政法人」と い う 語 は,行革会議. ことながら行政法学からのものであって,憲法. では 5 回しか話し合われず,イギリス・サッ. 学からの検討は皆無ではないかとさえ思えた.. チャー政権下で 1988 年に導入されたエージェ. だが,果たして,独立行政法人化に憲法上の. ン シー8)を 参考 に,官僚主導 で 唐突 に 挿入 さ. 意味はないのであろうか.国家と統治機構の変. れた印象もあった9).中央官庁にあった 128 も. 質に関して,憲法学が無関心でいてよいように. の局が 96 に減らされたように,行政の民主化. は思われない.そこで本稿では,この間の独立. や公平性の確保というよりも,国の行政事務の. 行政法人化の動きを追い,その憲法学的考察の. 減量化に重点が置かれていた10).そこでは,省. 基礎を固めることを追求したい.. 庁大括りの前提条件を作るための組織の減量が. なお,議論がやや一点突破的に進んでいると. 目的であり,「とにもかくにも国からは独立の. 思われる国立大学法人4)に関しては,本稿で. 法人格を付与する,ということが,必要最低限. はあまり触れず,他日を期したいと思う.. 度の要請」となったのである11).. 1.独立行政法人化の動き. 中央省庁等改革推進本部12)は,1998 年 9 月 に中央省庁等改革に係る立案方針を決定した.. 国鉄,電電公社,専売公社 の 民営化5)か ら. 中央省庁等改革基本法(平成 10 年法律 103 号)32. 約 10 年経過 し た 1997 年 12 月 3 日,橋本龍太. 条によると,「国の行政組織並びに事務及び事. 郎首相直属の諮問機関である行政改革会議が,. 業の減量,その運営の効率化並びに国が果たす. 公務員定員の 10% 削減を目標とする最終報告. 役割の重点化」という目的から,「国の事務及.

(2) . 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). (504). び事業とする必要性が失われ,又は減少してい. 告以来,いかなる形態であれ独立行政法人の定. るも の に つ い て は,民間事業への転換,民間. 員は,定員法でいう定員に含まれないとされた. 若しくは地方公共団体への移譲又は廃止を進め. ことに鍵があった.独立行政法人化が容易な部. る」13)が,それができない, 「政策の実施に係. 門からそれがなされることになったのである.. るものについては,第 36 条に規定する独立行. そ の 後,同年 12 月 に は,特殊法人改革 の 象. 政法人の活用等を進め,その自律的及び効率的. 徴として注目された道路公団民営化の政府案が. な運営を図ること」とされた.そして,同法. 決定され,独立行政法人としても日本高速道路. 36 条によれば, 「政府は,国民生活及び社会経. 保有・債務返済機構 が 誕生 し た17)ほ か,2004. 済の安定等の公共上の見地から確実に実施され. 年 4 月には国立大学法人と,独立行政法人国立. ることが必要な事務及び事業であって,国が自. 病院機構18),2007 年 4 月には独立行政法人住宅. ら主体となって直接に実施する必要はないが,. 金融支援機構という巨大な法人が誕生した19).. 民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施さ. そして,2005 年のいわゆる郵政選挙の自民党. れないおそれがあるか,又は一の主体に独占し. 圧勝を受け,2007 年 10 月には郵政公社が民営. て行わせることが必要であるものについて,こ. 化され,独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険. れを効率的かつ効果的に行わせるにふさわしい. 管理機構も誕生した.財政投融資の相当の部分. 自律性,自発性及び透明性を備えた法人(以下. を占める郵便貯金に改革のメスが入った20)こと. 「独立行政法人」という.)の制度を設けるものと. は,独立行政法人にとって重要な意味もあった.. する」とされていたのであった.続いて,1999. 以上の巨大法人の誕生に目が行きがちでは. 年1月に中央省庁等改革に係る大綱,同年 4 月. あるが,2004 年1月現在の全 113 法人のうち,. に中央省庁等改革の推進に関する方針を決定し. 職員数 200 人未満の法人が 58 と過半数を占め,. た.ここで,独立行政法人個別法案の立案作業. 1000 人以上の法人は 18 に過ぎない21).そして,. を進めることなどが明示されたのである.. 鳥瞰すれば,特殊法人や認可法人の独立行政法. 2000 年 12 月,森喜朗内閣 は 行政改革大綱 を. 人化と,それとは逆に,政策実施部門が政策企. 閣議決定し,その中で, 「法律により直接に設. 画・立案部門から独立して独立行政法人となる. 立される法人又は特別の法律により特別の設立. 例があり22),その両面から,新しい形態である. 14). 行為をもって設立すべきものとされる法人」 15). である特殊法人等. を廃止,民営化,独立行政. 独立行政法人が,法人数,職員数の両面で,一 気に膨れ上がっていったのである.. 法人化の 3 つの方法で改革することを掲げた.. 思えば,それまで多くの特殊法人が存在して. こ れ に 従 い,2001 年 4 月 か ら,研究所 や 博物. い た も の の,個別法人毎 に 設立根拠法 に 基 づ. 16). 館 ,教育機関などを中心に,造幣局や印刷局. いて設けられるものに過ぎず,財団法人にお. も含めて,57 法人が独立行政法人としてスター. ける民法などの一般法や,独立行政法人におけ. ト し た.こ の 際 に,独立行政法人通則法(平成. る通則法は存在しなかった23).このため,その. 11 年法律 103 号)が制定され,独立行政法人共通. 業務の多様化も進み,日本政策投資銀行などの. の運営原則が定められた.. 政策金融,日本道路公団などの地域開発等公共. 更に,2001 年 12 月には小泉純一郎内閣が特. 事業関係,宇宙開発事業団などの試験研究開発. 殊法人等整理合理化計画 を 閣議決定 し た.そ. 等,労働福祉事業団などの施設管理運営サービ. こでは独立行政法人化の対象は 38 であったが,. ス等,国民生活センターなどの啓発業務・国際. 2003 年 10 月に,この決定を受けて,国際協力. 業務などに関する公的業務代替等,それ以外に. 機構など 30 の独立行政法人が誕生した.数多. 各旅客鉄道会社(JR),帝都高速度営団,電源. くのそれが誕生したのは,行政改革会議最終報. 開発株式会社,日本中央競馬会などの広きにわ.

(3) 独立行政法人の憲法学(君塚). (505). . たった.そ れ が,統一性 な き 立法 に よ り 誕生. 開請求も可能になった34).また,2003 年には「独. し,トータルで俗に特殊法人と呼ばれていたの. 立行政法人等の保有する個人情報の保護に関す. であった.そして,存在意義のなくなった特殊. る 法律」(平成 15 年法律 59 号)も 制定 さ れ た35).. 法人が温存され,単年度主義による硬直的な運. 透明性や合理性は担保されようとしていた.. 営がなされ,財務諸表の公開がなされず,責任. しかし,いかなる業務を独立行政法人とする. 24). が曖昧にされていた .財務は基本的に特殊法. かには,かなりのばらつきがあった36).数多の. 人等会計処理基準によっており,外部監査は殆. 特殊法人を独立行政法人にしては統合を繰り返. 25). どなかった .当初,独立行政法人化とは,こ. し た 農林水産省37)と,独立行政法人制度 の 創. のような特殊法人を一定の法形式に固めようと. 設を機に,新たな業務を抜け目なく立ち上げた. いうもの. 26). 27). である筈であった .. 経済産業省38)との違いなど,省府間の違いも. し か し,1999 年 4 月 の 中央省庁等改革 の 推. 大 き い.独立行政法人通則法 は,「民間 の 主体. 進に関する方針の中でも, 特殊法人については,. にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそ. 「徹底 し て 見直 し,民営化,事業 の 整理縮小・. れ が あ る も の」(2条1項)39)で,「事務及 び 事. 廃止等を進める」とする一方で, 「存続が必要. 業 が 国民生活及 び 社会経済 の 安定等 の 公共上. なものについては,独立行政法人化等の可否を. の見地から確実に実施されることが必要なも. 含めふさわしい組織形態及び業務内容となるよ. の」(3 条1項)を独立行政法人の対象と定めて. う検討する」と謳われ,これへの対処はいつの. いるが,他方で,当初,郵政事業は公社制度が. 28). 間にか後退していった .案の定,改革対象の. 選択され,国有林事業についてはそのままであ. 163 の特殊法人のうち,2005 年 4 月までに廃止. り,日本道路公団などのように特殊法人のまま. されたものは 15 に過ぎず,独立行政法人化さ. とされたものが多かった40).また,国土交通省. れたものも 39 だけであった29).最初の段階で. の地方整備局や農林水産省の地方農政局,社会. は,特殊法人改革という趣旨はほぼ骨抜きにさ. 保険庁,国税庁などの大規模な実施部門は除外. れたのである.これは,最初に独立行政法人化. された41).水産大学校42)や航空大学校など,「大. の標的にされたのが研究所. 30). や博物館などで. 学校」の一部は独立行政法人化され,或いは他. ある事実と整合するものである.. の独立行政法人と合併させられたが,防衛大学. それでも,独立行政法人では,事業の定期的. 校や気象大学校のようにそうでないところもあ. 見直しを行い,年度を超えた予算の使用が認め. る.沿革的には文部科学省管轄の大学でないの. られるなど自主的な運営が可能になったほか,. は偶然とも思えるものもあるが,これを機に国. 企業会計原則に則った財務諸表の公開を行い,. 立大学法人化しようという声は殆どなきに等し. 主務大臣の定めた業務の中期目標の達成度を第. く,省益優先の決着の色合いが濃かった.. 三者による評価委員会で評価するなどのチェッ. では,独立行政法人となったものがなぜ選ば. 31). ク体制も採られるようになった .その意味で,. れたのか.そこには共通点もない43).民間委託. 特殊法人よりは一歩前進であり, 「独立行政法. されたものとの区別も不明である44).組織形態. 人は改良型の特殊法人」との表現も言い得て妙. 選択に経済学的根拠もないとされる45).また,. 32). であった .また,イギリスのエージェンシー. そうであれば,特殊法人での問題を解決した筈. では情報公開の拡大や市民参加が不十分だった. の通則法を,広汎な業務に画一的に適用するこ. という欠点が紹介されていた33)が,日本では,. とはかえって問題だということにもなりはしな. 「独立行政法人等の保有する情報の公開に関す. いか46).要するに,「『独立の法人格を与えるこ. る法律」(平成 13 年法律 140 号)が 2001 年に公布. 47) と』自体が重要な目的」 という開き直りが,. され,独立行政法人や一部の特殊法人の情報公. まずありきだったのである.強いて言えば,批.

(4) . (506). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). 判の多い特殊法人という形態を続ける合理性が. 関統合の宇宙航空研究開発機構では,ロケット. およそ消滅した,ということであろう.今や,. も統合されようとしているが,もしそれに不具. 特殊法人の中にも独立行政法人通則法の適用を. 合があれば,全てのロケットの打ち上げが止ま. 受けるべきものがあるという指摘もなされるに. るという問題点が指摘された59).また,地質研. 至った48).要するに,国に専属すべき事務以外. 究所は世界最大級の地質図・地質データを保有. で,個別法が独立行政法人と決めたものが独立. し,他国の国立機関や国内の会社に保有データ. 行政法人であるだけであり49),特定独立行政法. の開示要請ができるのは国立だからであるとい. 人(公務員型)とそうでない法人(非公務員型)と. う意見もあった60).. の区別も恣意的なのであった50).. 端的に言って,適切なものが独立行政法人化. では,これら俎上に上った特殊法人や国の附. されず,不適切なものがそうされていた疑念は. 属機関などの全てを独立行政法人にすればよ. 拭えない.いかなる業務にいかなる形態が望ま. かったのか.これについては,私人の行為を. しいかの議論は,まだ十分にはなされていない.. 規制・誘導することを目的とする行政作用,文. 本来それは,政策判断から離れた,もしくは離. 化・知識を創造・蓄積する機能を持つ作用の多. すべき単純な法執行を,効率よく行う部門に導. くを行うときには,独立行政法人という形態は. 入されるべき制度ではなかったか.その意味で. 望ま し く な く,試験研究機関,検査検定機関,. は,社会福祉事業,公共施設の設置管理,助成. 文教研修施設等の中にはそれに不適用なものも. 事業等,給付行政の大部分は,通常の行政組織. 51). 多いという批判もある .戦略的・高リスク・. から独立する意義がある61).しかし,イギリス. 長期展望の研究開発や,環境,安全,医療,標. のエージェンシーは,必ずしも非権力的行政活. 準等の公共性の高い試験研究課題を担当してい. 動に限定されているわけではなく,海事・沿岸. る機関は多かったが,ならば, 「 『純粋公共財』. 警備庁のような例もあるという62).治安や防衛. ともいうべき行政の固有の守備範囲内に位置づ. ですら,どうしても官そのものでなければなら. けられる」のではないか,経済的効率化を目的. ない必然性はなく,その線引きは「思想上の問. とする独立行政法人制度と相容れないのではな. 題である」とされる63).文民統制などの見地か. いか52),逆に,このようなせいぜいメリット財. ら,これらも独立行政法人化するという選択肢. に過ぎないものは私的に供給することが可能で. は皆無ではないのである.. 53). はないか ,などの疑問もあった.本来的な国. そして,何よりも,独立行政法人においても,. の業務をそうでなくしたときに,公共性を省み. 法人の責任を回避しながら,トップに天下りで. ず,効率性のみを重視することで,職員の士気. きるようになっているとの非難64)は絶えない.. が下がり,サービスの質が下がることもある. 54). 実際に役員に締める退職公務員の割合は政府発. ことは考えねばならなかった.. 表 で も 45%,特殊法人役員 で あった 人 な ど を. 特に,長期的な基礎研究や文化施設の評価が. 含めると 95% との指摘もある65).2006 年 10 月. 可能かという観点からの疑義は多い55).イギリ. で も,役 員 655 人 中,退 職 公 務 員 227 人,独. スで,科学研究の市場化により入札制度を導入. 立行政法人等 の 退職者 207 人 と い う 数字 が あ. したところ,研究が小規模になって,質が低下. り66),少なくとも約 3 分の2は天下りと認定で. する現象が起きたという56).日本でも天文学の. きそうである.主務省府の統制が強力である,. 分野で, 研究が失敗を続けながら,17 年かけて,. 国会の関与の余地が小さいとの指摘もある67). 最終的には極めて優秀な研究となった例も挙げ. 一方,主務大臣と法人の長の責任体制が曖昧で. つつ57),独立行政法人化で事業としての対価を. あるとされる.国会での説明責任を誰が負うの. 58). 求められることへの懸念が表明された .3 機. かも,法文上は明快ではない68).通則法 20 条.

(5) 独立行政法人の憲法学(君塚). (507). . によれば,長は「当該独立行政法人が行う事務. 消防研究所79)の「廃止」が,事実上,他 の 独立. 及び事業に関して高度な知識及び経験を有する. 行政法人による吸収合併であったのが好例であ. 者」などとされているが,元高級官僚がこれに. る80).解体が期待されていた特殊法人が,独立. 適任であると自ら言っているようにも読めなく. 行政法人として延命した例も目立つ81).. はない69).しかも,独立行政法人の役員報酬が. そんな中でようやく,職員数 19 の平和祈念. 「特殊法人以上」であるという指摘が,早くも. 事業特別基金を 2010 年 9 月までに廃止するこ. なされている.自ら高い水準を定め,評価委員. とが決まった82).また,緑資源機構について,. 70). 会も承認し,大臣が認可している. が,職員. 2007 年 6 月1日,赤城徳彦農水相 は,農水省. の給与は公務員の平均額を上回っている71).例. が機構廃止を事実上決めたことを明らかにし. え ば,2005 年時点 で,農畜産業振興機構 の 給. た.同年 11 月 13 日,額賀福志郎財務相は,通. 与は,ラスパイレス指数で 136.4 と公務員の 1.3. 関情報処理センターの 2008 年度中の民営化の. 72). 倍超に達しているのであった .いわゆる「鉄. 方針を明らかにしたが,これは造幣局,国立印. の三角形」が温存されつつあるのである73).. 刷局の民営化を阻止するためであると言われて. なお,当初,57 法人のうち 52 の独立行政法. いる.また,12 月 6 日の渡海紀三朗文科相は,. 人は,通則法 51 条の定める特定独立行政法人. メディア教育開発機構の廃止の方針を明らかに. であった.行政改革の中では人員の削減も目的. し た 83).2007 年 8 月 の 内閣改造後,渡辺喜美. であるという見地からすれば,独立行政法人の. 行革担当相は,独立行政法人の見直し案の提出. 職員 は 本来公務員であってはならず,この点. を,各府省 に 強 く 求 め84),12 法人 の 廃止又 は. にも批判が強かった. 74). が,1997 年の最終報告. 民営化の方針を示したが,結局,廃止・民営化. は, 「理論的に確固たる根拠が存在しない」中. は,このほか日本万国博覧会記念機構と海上災. で, 公務員身分に拘る多くの現場の姿勢に鑑み,. 害防止センターの僅か6つにとどまった.他方. 「全くの政治的妥協に基づ」いて,公務員型の 75). で,2007 年のいわゆる年金問題から,社会保. 法人を許容したのである .特定独立行政法人. 険庁(社保・労働の定員は 3.9 万)の改組は俎上に. では,そ「の役員及び職員は,国家公務員とす. 上ってくるという予測が根強くある.この際に,. る」とされ,しかも,これらは定員外とされた. 独立行政法人制度は利用される公算が大きい.. ので,数字の上では国家公務員の削減に勘定さ. ならば,地方農政局,国税(定員 5.6 万)にも同. 76). れ, 「官の抵抗」はかなり成功した .. 様の措置が可能であると考えれば,独立行政法. しかし,2004 年,政府は,32 法人を 22 法人. 人は逆に巨大組織形態になっていくであろう.. にすること,25 法人の職員の非公務員化など. 結局,総論的に独立行政法人という仕組みの. を公表した.これは,通則法制定時の衆参両院. 合理性は受容できても,各論的・具体的な選択. での附帯決議に従ったものと受け止められた.. の場面で様々な問題を残してきたと思われる.. そ し て,多 く の 特定独立行政法人 は 2006 年 4. 国は,いかなる業務をいかなる組織形態でいか. 月にそうではない,非公務員型の独立行政法人. なる運用をなすべきか.そして,何を手放すべ. となった.現在,職員が国家公務員とされる特. きか.その問の難しさを,独立行政法人化問題. 定独立行政法人は 8 法人にとどまっている.. は改めて深めさせたように感じられた.. 独立行政法人の統合は進み,2004 年と 2005 年 に,当時の 56 法人を 42 法人に削減したが,不. 2.独立行政法人化の憲法学的問題. 要法人を廃止したり,地方公共団体に移管した. 以上のことは,普く郵便局があり,3 公社 5. り,独立行政法人であることが疑問だとして民. 現業があり,国立大学の比重は大きく,官尊民. 77). 78). 営化されたりした例はない .農業者大学校 ,. 卑の気風が席巻し,民間であっても行政指導に.

(6) . 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). (508). 基づく護送船団方式によりどこの都市銀行でも. て,ま さ に そ れ を 実施 し た 独立行政法人化 を. 預金金利は同じという, 「世界で最も成功した. 含 む 行政組織改革 の 結果,1998 年度末 の 自衛. 社会主義」とも揶揄された時代の日本からすれ. 官 26 万余 を 除 く 国家公務員定員 85 万弱92)の. ば,大きな変化の一端であった.以前は,国の. う ち,30 万 の 郵政事業,13 万余 の 国立学校関. コントロール下にあるか公的意味の強い私人の. 係,5 万弱の国立病院関係,7000 以上の造幣・. 行為をいかに憲法問題とするかが,多くの憲法. 印刷事業,3200 の 工業技術院職員 な ど の 多 く. 学者の課題であった85).しかし今や,行政の非. の定員が,国家公務員の定員外となるなどによ. 能率視,公務員汚職への非難,特権官僚への反. り,2007 年度 の 自衛官 を 除 く 国家公務員定員. 感などを基調とする行政改革や地方分権の流れ. は 32.8 万 に 減少 し た93).独立行政法人 の 定員. の中で,世論は「小さな政府」を当然の前提に. は 13.2 万,国立大学法人 の 定員 は 11.7 万,特. するようになり,民営化できるものは民営化す. 殊法人の定員は 10.4 万94)であるから,自衛官. ることが基本で,不可能なものが国の仕事と考. を除く国家公務員の定員は 3 者合計を下回った. えられるようになった.専売事業で国は収益を. ことになり95),コアの国家業務と周辺部とが,. 上げ86),それを税の軽減分や福祉に回せばよい. まさにはっきりと分離されたのである.そして,. という,以前の公法学や行政学,財政学などで. 自衛官定員 は 23.9 万(ほ か に 予備役 3.5 万)で あ. 87). はごく普通の考え方は全く影を潜めた . 「憧. る96)か ら,今 や 国家公務員 の 4 割 は 自衛官 な. れの職業は国家公務員」は,既にジョークです. のである.国家公務員定員のうち,治安関係が. らなくなりつつある.この圧力が,国家公務員. 6.4 万,防衛が 2.3 万であることとも併せると,. 定員の縮小,特殊法人改革に向けて噴出したの. 国家公務員定員の面では日本の夜警国家化,公. であった.このような状況変化を受け,憲法学. の縮小は急速に進んでいる感が強い97).独立行. は何を考え,語ればよいのであろうか.. 政法人化とは,何よりもそういうことなのかも. 一般論として,日本国憲法は,公私の領域確. しれなかった98).. 定, 即ち国家・政府の射程については明言せず,. こういった変化を踏まえると,規制緩和時代. それを基本的に民主的政治過程に委ねているよ. には,経済的自由の観点からはおよそ違憲的な. 88). うに思われる .このため,憲法の定める統治. 規制は緩和されるべきである一方,日本国憲法. 機構ではない部分については,これを広く国家. が社会権規定を有することを考えれば,本来的. の役割にしようと,民間の役割としようと,原. な国や公の任務をその領域に押し止め,過度の. 則的には違憲とは言い難い. 現在の流れの中で,. 規制緩和は憲法の禁じることだと論じる99)こと. 行政システムの外延・内包共に構造変化が進行. も肝要に思える.最小国家の役割であるものが. しており,行政の主体・手法・内容にわたる変. 国の役割として残るというよりも,市場におけ. 化のため,行政の範囲の見極めが困難になって. る競争原理では生き残り得ない,福祉や初等教. おり,公・政府の担うべき領域と,私・市場の. 育などの分野が国の役割として残るべきこと100). 担うべき領域の確定が難問になっている89)が,. はここで強調されてしかるべきである.ここに. それは基本的には憲法問題ではなかろう.補足. は,効率化の限界があるからである.政府の役. すれば,国家独占の専売事業ですら違憲論はな. 割は何であるか,ということを独立行政法人化. 90). かった 以上,特定の事業を国が行うか否かは,. は明示しようとしている.その意味は意外と大. 基本的 に は 立法政策 の 問題91)と せ ね ば,議論. きい.能率重視の「小さな政府」論は,大衆民. は一貫しない筈である.. 主主義を背景に,皮肉にも,非能率な分野を政. このため,既存の国営事業を民営化すること. 府の任務として確認していくのであろう.. などは,原則としては憲法違反ではない.そし. このように国が抱えねばならない業務は,憲.

(7) 独立行政法人の憲法学(君塚). (509). . 法上あまり存在しないのだとすれば,完全民営. 容される膨大な領域が存在しているということ. 化は無理だとしても,業務の効率化や低コスト. である.そして,相当数の独立行政法人が誕生. 化,サービス向上のため,既存の行政システム. したことは,官民間には大きなグレーゾーンが. とは異なる組織に改編したり,既存の行政手法. ある103)とか,「官と民との通約不能性を拒否す. とは異なる手法を積極的に導入したりすること. るものではないかとの疑い」を,多くの人に生. は許されることになろう.まさに,独立行政法. じさせよう104).我々は,公益と私益は別物で. 人化はそのような発想に基づくものであり,こ. はなく,私益の集合体が公益であるという方向. れを憲法違反であるとは言えないであろう.ま. に,思考がシフトし易くなった.官僚も「自己. た,独立行政法人という組織形態が違憲である. の私利益の最大化のみを求める存在として想定. とも思えないのである.. され,それに対応して,国民もあくまで行政サー. 経済学の立場から, 「公共部門内で維持すべ. ビスの消費者であり,その支出(税金)に対し. き強い戦略的補完性はなく,建物,土地,資本. て可能な限り大きな効用を行政サービスから引. 設備などの固定的投入を他の生産物を供給する. きだそうとする存在として想定されて」しまっ. 活動と共同利用する可能性が低く, 」 「公共財的. た の で あ る105).こ の 点,国公労組合 が,独立. 特性を有し,ユニバーサル・サービスとしての. 行政法人 の 国家行政組織復帰 よ り も 自主・自. 供給義務やプライバシーに関わる守秘義務等に. 律性拡大を方針としていることは興味深い106).. 相当する厳しい規制を受ける場合」に選択され. 独立行政法人化されたものの多くは,公権力の. ることが望ましいので, 「省庁に企画立案機能. 行使という色彩の薄い業務がだったのであり,. を残した上で,独立行政法人に対して政策実施. 官への復帰の意義は希薄なのである.. 機能の権限を委譲するというのが典型である」. だが,このようなグレーゾーンが認識された. 101). との指摘がある. .そうだとすれば,政策判. にも拘わらず,日本の法制度は,国や地方公共. 断を伴わないほぼ全ての行政執行部門こそ,独. 団体に関わるものを公法,それ以外は私法とい. 立行政法人化できるし,するのが相応しい.多. う峻別がなされ,その中間的な組織について固. くの定員を抱える,治安,社保・労働,河川・. 有の法制度を十分に構築してこなかった107)よ. 道路・港湾等, 防衛, 食料・農林統計等, 登記等,. うに思われる.確かに,公権力を行使する行政. 医療(が ん セ ン ター等),航空安全,気象,国有. 機関を念頭に置くとき,学問的論争108)は兎も. 林野が独立行政法人化できない理由は,殆どな. 角も,公私の区別は容易であった.しかし,今. かろう102).これらが独立行政法人化したとき. 日ではこの明快な線引きは瓦解しつつある.例. には,日本の中央政府は,内閣と,政策立案を. えば,多くの民間資金を得ている国立大学,第. 補佐する少数の官僚しか残らないであろう.そ. 三セクターの大学,多額の国庫補助金を得てい. して,それはそのまま, 「行政各部」など,憲. る私立大学の差は実質的にはないのであるが,. 法の予定する機関と,そうでない組織を分断す. これらは混在しており,制度的な選択はなされ. ることにもなろう.ある意味,最小国家化の現. ていない109).NPO などの中間法人による公的. 代版はここに極まる.他方,行政の政治主導,. 業務の分掌,PFI などの民間資本の導入につい. 延いては憲法の求める国民主権原理を体現させ. ても,検討は不十分である110).それは憲法学,. ることに繋がることでもあろう.. 否,公法学が,この現象を捉えた理論を展開し. そして,これまでの考察の中で判明してきた. きっていないことをも示すものである.公私二. ことは,日本国憲法が,政府の「大きさ」やそ. 分論,公法・私法二分論に過剰に拘泥すること. こでの行政スタイルについてもに相当の幅を許. は,両者の中間領域,中間団体,中間的行為な. 容するものであるならば,政府でも民間でも許. どの処理を不可能にしかねないのである..

(8) . (510). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). 更に加えて,グレーゾーンに属する独立行政. ということが確認されるべきである.また,そ. 法人制度は,イギリスでは民営化の次善の策と. こには憲法上の拘束も当然に及ぶ.「行政」で. 考えられていたようであるが,当該法人が目的. ある点,また,憲法上,利害関係者などには手. を達成できなければ,市場が供給すべきものだ. 続的保障があるべきでもある119).. として廃止が求められ,達成されれば民営化せ. 通則法があることにより,独立行政法人には. よという要求が出てくるという矛盾を当初から. 一見,憲法の縛りがないかと錯覚されがちでは. 抱えている111).独立の法人格を有する自体か. あるが,独立行政法人は「行政」なのである.. ら効率性が生じるとする主張も, それが「行政」. 行政手続法がこれを対象外としても,憲法の拘. の一部であることからくる,内閣が最終責任を. 束は及ぶと考えざるを得ず,告知・聴聞等の適. 取り,国の予算措置が執られるとの制約がある. 正手続の要請は独立行政法人にも及ぶと言うべ. ことを認めているのである112).. き で あ る120).情報公開 や 個人情報保護 に つ い. 振り返れば,日本の現在の多くの独立行政法. て も,法律 が 憲法 の 下位法令 で あ る 以上,こ. 人は,特殊法人などから転じたものであり,公. れら現行法が憲法の要請を満たすものであるか. 企業として採算がとれる分野を経営するもの. は,検証する必要があろう.以上は,忘れがち. なのである113).独立行政法人になったものに. であるが,確認されねばならない点である.だ. ついて, 「本来民営の形でも行い得なくはない. とすれば,独立であっても本来的に「行政」法. もの」だったという吐露114)もあった.つまり,. 人であることが必要な機関ならば,それが安易. 民営化できない理由はなかったのである. 仮に,. に非公務員型となることには,その組織の性格. 民営化は無理でも,経営効率を考えるなら,第. を曖昧にするという問題があったであろう.. 三セクターではいけないのかも不明である.そ. そして,独立行政法人の憲法拘束性を強調す. うなったとき,公と私の区分けはますます微妙. れば,裁判を受ける権利や国家賠償請求権など. となり,中間団体のための法体系・法理論の整. の請求権的権利が,そして,そこでの参加を通. 備はますます必要になろう. 115). .行政の多様化. じて国政を動かす点に鑑みて,それには参政権. は,アウトソーシングや民営化,民間主体の公. 的権利と共通の側面もあるの主張・展開となろ. 共事業にまで及んでいる.それらには私法の. う121).司法ではなく,行政に対し,何かを訴. ルールが及ぶべきであって公法は縮小するべき. えるに際し,憲法論として,厳密な意味で当事. であるのか,それとも,公益を公共的に追求す. 者適格や法的利益の存在を要求せねばならない. る公法的秩序空間はむしろ拡大すると理解すべ. かは,再考されるべきかもしれなかった.. 116). きなのかという問題を提起しよう. .国が関. 独立行政法人職員 が 労働基本権 を 有 す る か. わり,国法のあるところ,全て憲法の射程内に. は,当該個別法により,それが特定独立行政法. ある,ということを確認したいと思う.. 人となったか否かで決められた122).産業技術. 公私区分論以外の問題もある.. 総合研究所など,非公務員型となることで,労. 独立行政法人には,いわば給付行政に当たる. 使交渉,労働協約締結によって,労働組合の役. 業務が多いので,予算は経済的,効率的,効果. 割を実感した例もある123).しかし,憲法上は,. 117). 的に使われるべきだという行政法学の主張. 原則として給与所得者には労働基本権があるの. がある.しかし,それ以上に,様々な選択肢が. であり,職務の性質上,その制約が必要最小限. 憲法上も許容されている中で,独立行政法人と. 度で認められるだけだと言うべきものである.. いう形態が選択されたからには, その組織は「行. この点,憲法論を逃れて,法律の文言で全てを. 政」であり,国家機関の一部として認識され,. 解決してよいのか,疑問を残している.これは. 118). 憲法上,その根拠は法律によらねばならない. 究極的には,公務員の労働基本権の全面剥奪を.

(9) 独立行政法人の憲法学(君塚). (511). . 合憲とする判例124)の再考を促そう.. く あった132)し,近時,こ れ を「法人」と 呼 ぶ. 独立行政法人全ての問題ではないが,研究所. のは誤りであり,憲法は個別の「結社」の自由. や教育機関等の憲法問題もある.独立行政法人. を 21 条や 22 条,28 条などで保障しているに. である研究所は,一般に基礎研究の比重が高い. 過ぎないとする見解もある133).これらに従え. とされる125).博物館,教育研究機関はましてや. ば,独立行政法人 が 法律上,「法人」だ か ら と. である.果たして,これらには,研究者集団の. いって人権享有主体性があるなどとは,およそ. 自治という意味での「大学の自治」126)の保障が. 考えられない.独立行政法人の誕生は,いわゆ. 及ばないのか,疑問である.これについては,. る「法人の人権享有主体性」を肯定する通説・. このときの「大学」とは「高い程度の純粋学問. 判例の見直しの端緒となろう.独立行政法人,. の研究および教授を任務とする研究教育機関を. 第三セクター,純粋の私法人などを,私人間効. 意味する」という従来の通説127)に文字通り従. 力論も絡めて比例的に説明できる理論の再構築. えば,広く国立の研究所や博物館などまでも,. が,より一層求められていくことになろう134).. これに含まれる可能性もある.また,憲法 23 条を根拠に, 「すべての学校」において「学校 128). の自治」が保障されているという説. おわりに. によれ. 独立行政法人化は憲法学の関心の薄い問題で. ば,少なくとも高等専門学校や,文部科学省管. あった.しかし,新たな形態の行政組織の誕生. 轄外の大学校は自治を有する筈である.それが. は,新たな憲法問題提起の瞬間でもあったので. 129). 大学に限ってのものであるという通説. に従っ. はなかったか.あまりにも図式的な行政観から. ても,大学・短期大学相当のこれらの教育機関. 脱却し,自らの理論の妥当性を検証する機会で. に「大学の自治」の趣旨すら及ばないのかは,. あったように思える.その曖昧な性格が,かえっ. 疑問であろう.この点を検討した憲法学説はほ. てかなりの原理論的問題を示唆するように思え. ぼ皆無であり,検討が待たれるところである.. てならない.多くの研究者によって関心が持た. 独立行政法人は,第三セクターのように鵺的. れることを望みたいものである.. なものではないが, かといって全くの国家機関,. 以上の検討を経てみると,憲法学の関心の相. 国家権力自身ではないため, それが憲法上の 「法. 対的に強い国立大学法人の問題であるが,国立. 人」かという問題も提起しよう.通説によれば,. 大学法人化そのものには憲法違反はないような. 「人権規定が,性質上可能なかぎり法人にも適. 予感がする.大学が国立でなければならない憲. 用されることは, 」 「法人が現代社会において一. 法上の根拠は希薄である.また,それが私立で. 個の社会的実体として重要な活動を行っている. なければならない根拠もない.寧ろ憲法問題は,. こと」などからして,それが人権享有主体性を. その法制化の際に「大学の自治」が換骨奪胎さ. 有するという結論は「妥当であろう」というの. れた点に集約されるのではあるまいか.そして. である. 130). .確かに通説は, 「公法人に原則とし. そ の こ と に よ り,私立大学 や 諸研究所等 に も. て人権享有主体性が認められない」131)とも述. 共通する問題を浮き彫りにできる筈である135).. べるが,それは原則であり,独立行政法人につ. ただひたすらに国立大学は国立であるべきだと. いても,国家権力行使の場面でなければ,これ. 連呼して,特権官僚と我との違いを不明確にし. を限定的に肯定してよいことが帰結となるよう. て孤立する愚は避けたいものである.. にも思われる. しかし,これに対しては,近代人権思想が自 然人の人権を前提にしてきたという原則論など からして,法人の人権享有主体性否定説は根強. 注 1)この概念を講学上最初に用いたのは田中二郎.

(10) 10. (512). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). で あ る.田中二郎『新版行政法中巻』〔全訂第 2 版〕187 頁(1976).ここでは,特殊法人である, 公社,公団,事業団,公庫,特殊銀行,その他 (金庫,営団,株式会社,基金,共済組合,協会, 振興会,研究所,センターなどの名称を有する) が 事実上念頭 に 置 か れ て い た.以上,山本隆 司「独立行政法人」ジュリスト 1161 号 127 頁, 127─128 頁(1999)の教示による.以下に引用 するもののほか,生田忠秀「霞が関の深層─数 合わせに終わるのが明白な行革の目玉─独立行 政法人創設」週刊 ダ イ ヤ モ ン ド 85 巻 2 号 122 頁(1997),小沢弘明「幻想の独立行政法人化」 未来 398 号 1 頁(1999),田端博邦「独立行政 法人 と は な に か?」同 6 頁,「特集・独立行政 法人 の ス タート に 向 け て」Science & techno news Tsukuba 56 号 2 頁(2000),田口重憲「独 立行政法人制度上の課題について」横浜国際経 済 法 学 10 巻 1 号 93 頁(2001),岡 本 信 一「独 立行政法人制度概説」季刊行政管理研究 96 号 59 頁(2001),宇賀克也「独立行政法人評価 に おける政策評価─独立行政法人評価委員会の役 割」ジュリスト 1225 号 66 頁(2002),「なんじゃ こりゃ─独立行政法人の大甘自己改革」国会画 報 45 巻 10 号 16 頁(2003),水野清「民営化の さらなる前進に向けて─独立行政法人は次への ワンステップだ」時評 48 巻 5 号 100 頁(2006) など参照. 2)国立大学法人法(平成 15 年法律 112 号)で設 立されたものには,国立大学法人のほかに,大 学共同利用機関法人の人間文化研究機構(2004 年 4 月,文部科学省の大学共同利用機関であっ た 1981 年設立 の 国立歴史民俗博物館,国文学 研究資料館,国際日本文化研究センター,総合 地球環境学研究所,国立民族学博物館により誕 生した.主たる事務所は東京都港区虎ノ門にあ る),自然科学研究機構(2004 年 4 月,文部科 学省 の 大学共同利用機関 で あった 1888 年設立 の国立天文台,核融合科学研究所,基礎生物学 研究所,生理学研究所,分子科学研究所により 誕生した.主たる事務所は東京都港区虎ノ門に ある),高エネルギー加速器研究機構(1955 年 設立の東京大学原子核研究所を起源とし,特定 大学に附置しない大学の共同利用の機関であ る 国立大学共同利用機関 の 草分 け と し て 1971 年に設立された高エネルギー物理学研究所を 1997 年 に 改称 し,2004 年 4 月,大学共同利用 機関法人 と なった.主 た る 事務所 は 茨城県 つ くば市大穂にある),情報・システム研究機構 (2004 年 4 月,文部科学省 の 大学共同利用機関 で あった 1973 年設立 の 国立極地研究所,国立 情報学研究所,統計数理研究所,国立遺伝学研 究により誕生した.主たる事務所は東京都港区 虎ノ門にある)もある.. 3)本稿は,国レベルの独立行政法人を主として 取り上げるが,地方にもそれは存在する. 「潮 流・地方独立行政法人」都市政策 109 号 85 頁 (2002) ,田中孝男「地方独立行政法人制度の検 討─公営地下鉄を例にして」運輸と経済 62 巻 8 号 51 頁(2002) ,尾林芳匡「地方自治体 を め ぐ る『構造改革』の 現段階─構造改革特区 と 地方独立行政法人 を 中心 に」行財政研究 53 号 12 頁(2003) ,田中敦仁「地方公営企業 と 地方 独立行政法人制度に関する研究会報告書につい て」公営企業 34 巻 11 号 12 頁(2003) ,三野靖 「地方独立行政法人制度と自治体行政の多様化」 自治総研 29 巻 8 号 1 頁(2003) ,岡本信一「地 方独立行政法人制度の創設」季刊行政管理研究 101 号 63 頁(2003) ,宮本貴章「地方独立行政 法人制度について」地方公務員研究 74 号 16 頁 (2003) ,大串隆吉「地方独立行政法人法の危な い性格」月刊社会教育 47 巻 9 号 69 頁(2003) , 吉川浩民 ほ か「地方独立行政法人制度 に つ い て(1─10) 」 地 方 自 治 670 号 14 頁,671 号 19 頁,672 号 14 頁,673 号 32 頁(2003),674 号 33 頁,675 号 31 頁,676 号 65 頁,677 号 14 頁, 678 号 24 頁,683 号 32 頁(2004),尾 林 芳 匡 「地方独立行政法人制度」労働法律旬報 1581 号 24 頁(2004) ,高橋秀禎「地方独立行政法人 に 適用 す る 会計基準 に つ い て(1─3) 」地方自治 683 号 71 頁, (2004) ,大 泉 幸 二「地 方 独 立 行 政法人と自治体病院」季刊自治と分権 15 号 83 頁(2004) , 「特集・動 き 始 め た 地方独立行政 法 人(1─7・完) 」厚 生 福 祉 5317 号 5 頁,5318 号 2 頁,5320 号 12 頁,5321 号 8 頁,5323 号 2 頁,5324 号 5 頁,5326 号 6 頁(2005) ,門田美 和子「これからの地域経営─地方独立行政法人 (上 下) 」日 経 研 月 報 324 号 69 頁,325 号 70 頁 (2005) , 「特集・国立大学法人化 1 年と公立大学 の現状」日本の科学者 40 巻 6 号 283 頁,西山慶 司「地方独立行政法人の評価設計の特徴と課題」 自治総研 31 巻 10 号 1 頁,高橋秀禎「地方独立 行政法人に対する会計監査人の監査に係る基準 に つ い て」地方自治 695 号 77 頁(2005) ,三野 靖「自治体行政の流動化─指定管理者制度と地 方独立行政法人」市政研究 146 号 68 頁(2005) など参照. 4)取敢ず,鈴木眞澄「独立行政法人と国立大学」 山口経済学雑誌 47 巻 6 号 161 頁(1999) ,阿部 謹也「国立大学の独立行政法人化について」研 究技術計画 15 巻 1 号 4 頁(2000) ,蟻川恒正「国 立大学法人論」 ジュリスト 1222 号 60 頁 (2002) , 中川義朗「国立大学法人に関する若干の考察」 日本財政法学会編『財政法講座 2 −財政 の 適 正管理 と 政策実現』261 頁(勁草書房,2005) , 塩野宏「国立大学法人について」日本学士院紀 要 60 巻 2 号 67 頁(2006)など参照..

(11) 独立行政法人の憲法学(君塚). 5)石井陽一『民営化で誰が得をするのか』86─87 頁(平凡社,2007)は,毎日新聞 2005 年 11 月 20 日記事を引用しつつ,この推進役の中曽根 康弘元首相にとってすら,その主目的は,社会 党潰しの「戦後政治の総決算」であったことを 指摘している. 6)長谷部恭男「独立行政法人」ジュリ ス ト 1133 号 99 頁(1998). 7)稲継裕昭「独立行政法人 の 創設 と そ の 成果」 年報行政研究 41 号 42 頁(2006). 8)1997 年時点 で 132,職員数 38.6 万人 で あ る. 横関洋一「英国のエージェンシーと独立行政法人 制度」立法と調査 209 号 48 頁(1999).その他, 伊藤大一「 『エージェンシー』考」会計検査研究 14 号 5 頁(1996) ,渋川智明「イ ギ リ ス に お け る エ イ ジェン シー制度 の 現状」地方財務 531 号 71 頁(1998),加 藤 峰 夫「“Canadian Parks Agency” 法案の概要─独立行政法人(エージェ ンシー)による国立公園管理の参考例として」 エコノミア 9 巻 1 号 39 頁(1998),沖清豪「イ ギリスにおける中央教育行政とエージェンシー」 教育制度学研究 7 号 104 頁(2000) ,近藤真「国 立大学の独立行政法人化?─ニュージーランド 国立大学のエージェンシー化から考える」岐阜 大学地域科学部研究報告 9 号 107 頁(2001) , 西山慶司「政府部内 に お け る『エージェンシー 化』と 統制 の 制度設計」公共政策研究 3 号 106 頁(2003)など参照. 9)北沢栄『独立行政法人』4─5 頁(日本評論社, 2005). 10)藤田宙靖「国立大学と行政法人制度」ジュリ ス ト 1156 号 109 頁,110─111 頁(1999) が 行 政改革会議メンバーとして明言する.福家俊朗 「独立行政法人総論」福家 ほ か 編『独立行政法 人─その概要と問題点』112 頁,114─115 頁(日 本評論社,1999)も参照. 11)藤田同上 111 頁. 12)浦辺徹郎「行革渦中の国立研究所から」科学 69 巻 11 号 885 頁,886 頁(1999)は,こ こ に 議論が「移ると,まったく何の情報もでてこな くな」ったと批判している. 13)鈴木良男「再編 の 天王山 は 独立行政法人化」 論 争 東 洋 経 済 17 号 174 頁,176 頁(1999) の ように,「性根の座った民間が予算さえ肩代わ りすればお釣りの出るほど成果をだす」との勇 ましい言もあった. 14)宇賀克也「特殊法人と独立行政法人」公法研 究 62 号 94 頁(2000). 15)特殊法人など,明治期以降の公的事業体の歴 史については,八木俊道「政府事業分野の変遷 と 独立行政法人制度」季刊行政管理研究 87 号 39 頁,42─50 頁(1999)が詳しい.なお,総務 省 HP によると,特殊法人は 2007 年 10 月現在. (513). 11. で 以下 の 36 法人 で あ る.国民生活金融公庫, 中小企業金融公庫,農林漁業金融公庫(以上, 2008 年に日本政策金融公庫に統合予定) ,沖縄 振興開発金融公庫(2012 年以降 に 日本政策金 融公庫 に 統合予定) ,公営企業金融公庫(2008 年 に 地方公営企業等金融機構 に 移行予定) ,日 本政策投資銀行(2008 年 に 株式会社化) ,国際 協力銀行(2008 年 に 国際金融部門 は 日本政策 金融公庫に,海外経済協力部門は独立行政法人 国際協力機構にそれぞれ統合予定) ,商工組合 中央金庫(2008 年 に 株式会社化) ,日本私立学 校振興・共済事業団,日本放送協会,放送大学 学園,財団法人日本船舶振興会,日本中央競馬 会,地方競馬全国協会,日本自転車振興会,日 本小型自動車振興会,日本郵政株式会社,日本 アルコール産業株式会社,日本たばこ産業株式 会社,日本電信電話株式会社,東日本電信電話 株式会社,西日本電信電話株式会社,北海道旅 客鉄道株式会社,四国旅客鉄道株式会社,九州 旅客鉄道株式会社, 日本貨物旅客鉄道株式会社, 東日本高速道路株式会社,中日本高速道路株式 会社,西日本高速道路株式会社,首都高速道路 株式会社,阪神高速道路株式会社,本州四国連 絡高速道路株式会社,東京地下鉄株式会社,成 田国際空港株式会社,関西国際空港株式会社, 日本環境安全事業株式会社. 16)一例として,独立行政法人国立美術館「独立 行政法人国立美術館の 5 年間と今後の課題」文 化庁月報 452 号 10 頁(2006)参照. 17)石井前掲註 5)書 48 頁 の 指摘 す る よ う に, このようないわゆる「上下分離」がなぜ必要で あったかは不明である.第三セクター鉄道の場 合とも異なるのではなかろうか. 18)矢崎義雄「国立病院機構が目指すもの」日本 医師会雑誌 132 巻 9 号 1137 頁(2004)な ど 参 照.なお,全日本国立医療労働組合「独立行政 法人国立病院機構の現状について」国公労調査 時報 523 号 43 頁,46 頁(2006)によると,医師, 看護師の欠員は深刻な問題であるが,それを放 置して医業収支が良好な病院の管理者にも多く の賞与が支給されている矛盾があるという. 19)以上,北沢前掲註 9)書 3 頁以下など参照. 20)植村利男「公共部門の民営化と組織形態の選 択」亜細亜大学経済学紀要 29 巻 3 号 5 頁,22 頁(2005) . 21)西澤利夫「独立行政法人制度の現状と課題─ 制度発足から 6 年を振り返る」立法と調査 267 号 117 頁,118 頁(2007) .最大 は 国立病院機 構 の 47,423 人,最小 は 北方領土問題対策協会 と平和祈念事業特別基金の 19 人. 22)鈴木眞澄「独立行政法人化現象 と 国立大学 法 人」山 口 経 済 学 雑 誌 52 巻 3 号 91 頁,95 頁 (2004) .そして,次第に,行政組織部分の政策.

(12) 12. (514). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). 実施機関の独立行政法人化例が増えていった. 同論文 99 頁. 23)村上武則「わが国の特殊法人の改革について 思うこと」大阪大学法学部創立 50 周年記念『 21 世紀の法と政治』87 頁,96 頁(有斐閣,2002) は,一例として,統一的な奨学資金援助法など がないことを挙げる. 24)北沢前掲註 9)書 14 頁. 25)宮脇淳=梶川幹夫『「独立行政法人」と は 何 か』54─55 頁(PHP 研究所,2001).村上前掲 註 23)論文 92 頁の述べるように,会計検査院 はチェックできたが,利害関係人を除いて,国 民が会計検査院に審査を要求することはできな かった. 26)定義に従えば,独立行政法人も特殊法人の一 類型となる.宇賀前掲註 14)論文 95 頁.しかし, 一般的にはそう呼ばれない. 27)それを給付行政の組織の改革問題と言う論者 もある.村上前掲註 23)論文 89 頁. 28)山本前掲註 1)論文 128 頁. 29)稲継前掲註 7)論文 50 頁図表 2 参照.廃止 されたものの中にも,野菜供給安定基金のよう に,他と合併して独立行政法人化したものもあ る.このほかに 36 法人が民営化されたとある が,道路公団関係,東京地下鉄,空港などは現 在もなお特殊法人として数えるべきであり,文 字通りには受け取れない.桜井徹「特殊法人改 革を考える」国公労調査時報 475 号 4 頁,9─10 頁(2002)も参照. 30)柳町秀一「科学・技術の発展を阻害する『独 立行政法人』」前衛 700 号 103 頁,104 頁(1998) は,「国研」が「第一の標的」であり,それは 「国研を解体して,その人材,資源などを財界 が望む『新産業創出』などに総動員する」ため であると断じている.このほか,「特集・国立 研究機関の独立行政法人化」農林水産技術研究 ジャーナ ル 24 巻 1 号 7 頁(2001),「国立研究 所 の 独立行政法人化 に 伴 う 再編 に つ い て」炭 素 197 号 111 頁(2001),「特集・国立試験研究 機関 の 独立行政法人化」火災 51 巻 4 号 16 頁 (2001)など参照. 31)北沢前掲註 9)書 14─15 頁. 32)藤田前掲註 10)論文 113 頁.八木前掲註 15) 論文 50 頁は,「概ね,財団型構成を取ることが 多い」,「公団,事業団,研究所等」と「比較的 類似する」と予測していた. 33)榊原秀訓「独立行政法人とは何か─英国のエー ジェンシーと行政改革会議が提案したもの」賃 金と社会保障 1222 号 35 頁,37 頁(1998). 34)村上前掲註 23)論文 91 頁.晴山一穂「独立 行政法人通則法の概要と問題点」労働法律旬報 1482 号 4 頁,6 頁(2000)はこの法律の必要性 を主張していた.. 35)宇賀前掲註 14)論文 100─101 頁 は,自動車 検査独立行政法人を例に,この必要性を当初か ら訴えていた. 36)田 中 前 掲 註 1)書 193─194 頁 も,特 殊 法 人 絢爛期に, 「何を行政の対象として選択すべき か」 , 「行政の対象として選択した事柄を,どの ような手法で受け止めるか,これをどのような 行政の組織体制で処理していくべきか」につい ては, 「政治的・行政的裁量の問題であり, もっ ぱら合目的的判断にまつほかはない」と述べて いた. 37)中井孝「独立行政法人森林総合研究所」木材 工業 56 巻 9 号 429 頁(2001) , 「独立行政法人 水産総合研究センター,水産大学校,さけます 資源管理センター及び社団法人海洋水産システ ム協会発足」水産工学 38 巻 2 号 193 頁(2001) , 「新 し い 独立行政法人農業・食品産業技術総合 研究機構(NARO)の 目指 す も の(1─6) 」農 業 技 術 61 巻 10 号 471 頁,11 号 514 頁,12 号 556 頁(2006),62 巻 1 号 33 頁,2 号 86 頁,3 号 136 頁(2007)など参照. 38) 「特別企画・独立行政法人」経済産業 ジャー ナル 34 巻 6 号 20 頁(2001)は,製品評価技術 機構と日本貿易保険を取り上げるが,両者とも 明示的な歴史的沿革がないという共通点がある ように思われる.なお,同省管轄の独立行政法 人のHPには,沿革を載せていないものが多い ようである. 39)焦点は, 「何が民間に委ねられないか」とい う必要最小限の行政であり,エージェンシーも 民営化に繋がるものだったと言うべきであろ う.榊原前掲註 33)論文 40 頁. 40)福家前掲註 10)論文 118 頁. 41)北沢前掲註 9)書 21 頁. 42)関連して,磯崎道利「独立行政法人船員教育 3 機関の見直しについて」海上労働 57 号 75 頁 (2005)など参照. 43)福家前掲註 10)論文 121 頁.晴山前掲註 34) 論文 5 頁同旨. 44)福家俊朗「独立行政法人の虚像と実像」法律 時報 72 巻 5 号 1 頁,2 頁(2000) . 45)植村前掲註 20)論文 5 頁. 46)榊原前掲註 33)論文 42─43 頁同旨. 47)藤田前掲註 10)論文 112 頁. 48)宇賀前掲註 14)論文 96 頁. 49)晴山前掲註 34)論文 5 頁. 50)同上 9 頁. 51)山本前掲註 1)論文 131 頁. 52)福家前掲註 10)論文 121─122 頁. 53)古川俊一「独立行政法人の制度設計」公共政 策研究 1 号 166 頁,174 頁(2001) . 54)榊原前掲註 33)論文 37 頁. 55)晴山前掲註 34)論文 7─8 頁など..

(13) 独立行政法人の憲法学(君塚). 56)浦辺前掲註 12)論文 887 頁.そこで,イギリ スでも 43 もの国立研究所はエージェンシー化さ れずに残されているそうである. 57)観山正見「国立天文台の独立法人化について」 科学 69 巻 11 号 889 頁,890 頁(1999). 58)同上 891 頁. 59)総理府労連・航空宇宙技術研究所労働組合「宇 宙 3 機関統合で何がおこったか」国公労調査月 報 523 号 29 頁,30 頁(2006). 60)浦辺前掲註 12)論文 885 頁. 61)山本前掲註 1)論文 130 頁. 62)福家前掲註 44)論文 2 頁.なお,小堀眞裕「独 立行政法人は英国のエージェンシーよりも,英 国の特殊法人に近い」数学セミナー 466 号 38 頁,40 頁(2000)は,「英国のエージェンシー とそっくりな組織は,日本では国立大学」だと 述べている. 63)長谷部前掲註 6)論文 103 頁. 64)北沢前掲註 9)書 17 頁 な ど.そ れ ま で 審議 官以上の指定職が 0 であったのに,独立行政法 人化後 に は 理事長 1,理事 2,監事 2(う ち 1 は非常勤)の役員体制になった日本貿易機構の ような例もある.同書 39 頁. 65)2003 年 12 月.北沢同上 39 頁.こ の 点,元 官僚を排除すると適任者がいなくなる法人もあ る と い う.稲継前掲註 7)論文 54 頁.本当 で あれば問題の根は深い. 66)西澤前掲註 21)論文 119 頁. 67)立山紘毅「国立大学の独立行政法人化」法学 セ ミ ナー 540 号 69 頁,71 頁(1999).多 賀 谷 一照「独立行政法人論と行政制度」季刊行政管 理研究 82 号 3 頁,5 頁(1998)は,「機関委任 事務」類似のものと皮肉る.同論文同頁は,長 の任命は議会の同意を必要とするか,閣議を経 て政令でなされるなどの工夫が必要であると述 べていた. 68)北沢前掲註 9)書 18 頁.なお,イギリスでは, エージェンシー内部の運営に関して会計官とし て議会に報告義務を有するのは,事務次官では なくエージェンシーの長である.長谷部前掲註 6)論文 100 頁.しかし,大臣のための答弁に とどまり,他方で,業務の結果が思わしくなけ れば辞任に追い込まれるという.同論文 101─ 102 頁. 69)北沢同上 18─19 頁はそう「読み取るのが自然 であろう」と言う.通則法の外の事象ではある が,2007 年 7 月 26 日,山形大学学長選考会議 は,教職員投票による「学内意向聴取」では最 多得票ではなかった前文部科学事務次官を次期 学長に選出している.朝日新聞 2007 年 7 月 27 日朝刊. 70)北沢同上 31─32 頁.また,在職期間が短いの に退職金が多いという指摘もある.同書 46 頁. (515). 13. 参照. 71)2003 年度 の 指数(国家公務員行政職= 100) で,事 務・技 術 職 員 107.4,研 究 職 員 102.3 だ という.北沢同上 40─41 頁. 72)同機構 の 給与 は,平均 961 万円(平均年齢 43.6 歳)で あ り,原子力安全基盤機構 の 平均 997 万円(平均年齢 48.9 歳)に次ぐ第 2 位.指 数の低い方には,教員研修センターの指数 91.8 (平均年収 693 万円,平均年齢 46.3 歳)な ど が ある.週刊東洋経済 5950 号 130 頁(2005) . 73)立山前掲註 67)論文 71 頁など. 74)稲継前掲註 7)論文 51 頁. 75)藤田前掲註 10)論文 111 頁.西村美香「独 立行政法人導入で改革になるのか」世界 644 号 22 頁,25 頁(1998)は,非公務員型 で は 組合 の合意が得られず,1 ランク下の印象を与える ことがネックであったとする. 76)北沢前掲註 9)書 20─21 頁. 77)稲継前掲註 7)論文 51─52 頁は,これら行政 の無駄が発見できたのは独立行政法人化のお蔭 であると述べるが,疑問も多い. 78)稲泉博己「独立行政法人農業者大学校廃止と 地域 に お け る 農業教育 の 役割」村落社会研究 42 号 101 頁(2006)参照. 79) 「検証独立行政法人 こ の 1 年」総務省広報誌 16 号 11 頁(2002)は,消防研究所 と 通信総合 研究所を取り上げ,成果を強調していたが,両 者は後に事実上統合された. 80)北沢前掲註 9)書 62 頁. 81)同上 79 頁以下. 82)自民党恩欠連議員連盟が立法化に動いたため で,政府任せでは廃止は難しかったという声が ある.西澤前掲註 21)論文 128 頁. 83)このほか,売上げが減少して助成金も減る一 方,理事長 の 給与 が 約 1920 万円,文科省出身 3(理事長含む) ,財務省出身 2 の役員のいる日 本スポーツ振興センターについては,廃止論が 出ている.同上 126 頁. 84)朝日新聞 2007 年 9 月 1 日朝刊. 85)それがまさに憲法の私人間効力論である.君 塚正臣「法律行為と憲法の第三者効力論─日本 の憲法学は憲法の私人間効力をどのように考え ていくべきか(1) 」関大法学論集 52 巻 4=5 号 377 頁(2003) , 「団体内部紛争 と 第三者効力論 ─政党,宗教団体における憲法上の権利の調整 の 一場面 と し て」横浜国際社会科学研究 9 巻 1 号 1 頁(2004) , 「いわゆる憲法の第三者効力論・ 再論─諸学説 を 検討 し, 『新間接効力説』も し く は『憲法 の 最高法規性重視説』へ の 批判 に 答えて,憲法の私人間効力論を考え直す」早大 COE・季刊企業と法創造 4 巻 1 号 75 頁(2007) など一連の論文参照. 86)佐藤幸治『憲法』 〔第 3 版〕559 頁(青林書院,.

(14) 14. (516). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 4 ・ 5 号(2008年 1 月). 1995)は,それは「国家の財政目的などの理由」 であるとする.田中二郎『新版行政法下巻』 〔全 訂 第 2 版〕261 頁(弘 文 堂,1983) は,「専 売 とは,国が収入を得る目的をもって,特定貨物 の販売を独占する」もの,「独占価格を維持す ることにより,国の収入を図ることを目的とす るもの」と明言していた. 87)佐藤同上 560 頁注 3 は,「変動 す る 社会経済 は国家独占の意味を失わせ,独占のデメリット を大きくするというようなことがありうる」と も指摘している. 88)小林武「行政権の『民』化の憲法上の限界」小 林ほか編『 「民」による行政』3 頁,7 頁(法律文 化社,2005) . 89)同上 5─6 頁. 90)宮沢俊義『憲法Ⅱ』〔新版〕391 頁(有斐閣, 1971),芦部信喜(高橋和之補訂) 『憲法』 〔第 4 版〕 211 頁(岩波書店,2007),佐藤前掲註 86)書 559 頁など参照.長谷部恭男=杉田敦『これが 憲法だ!』155 頁(朝日新聞社,2006) [長谷部] は,基幹産業の国有化政策も憲法違反にならな いという. 91)このことはなお興味深い帰結を招く可能性が ある.合理的な理由があるとして国会が立法す れば国家独占事業が許されるのであれば,果た して,それより緩やかな規制が許されない,厳 格な合理性の基準で審査されるべきという議論 が成立するのか,という疑問も生じる.森林法 違憲判決(最大判昭和 62 年 4 月 22 日民集 41 巻 3 号 408 頁)が問題提起してしまったように, 規制目的二元論 に は 疑問 が あ ろ う.君塚正臣 「二重の基準論の意義と展開─『二重』は『三重』 ではない」佐藤幸治古稀記念『国民主権と法の 支配』掲載予定(成文堂,未刊)も参照.加え て,私有財産制度が制度的保障であって社会主 義化は違憲である,という一般的に解釈されて いるが,何をもって日本が「社会主義」化した と言うべきかも難しく,それは単に多くの国民 に対する財産権侵害と理解すべきではないかと も思える. 92)以下,藤田前掲註 10)論文 116 頁別表による. 93)総務省HPによる.国立大学法人がこの 5 年 間 で 1.7 万,郵政事業 が 2.9 万 の 定員 を 削減 し ているのに対し,国家公務員定員として残った 部分の定員減は 0.8 万に留まっている.定員減 の目的は相当程度果たしたようにも見えるが, 残存部分の削減は不十分である感がないではな い.また,藤田同上 109─110 頁によれば,10 年 間で,独立行政法人に移行するものを除いて定 員を 10% 削減することが 1997 年の最終報告の 目標であった筈であるが,どうもその達成は困 難であるか,トリックがあって達成されたよう に見えるかの何れかに思える.. 94)特殊法人 に は,1963 年 の 行政管理庁設置法 改正当時は,国の意思で設立され,国の業務を 代行するものであるというのが政府答弁であっ たが,第二臨調において「民間法人化された特 殊法人」との概念が認められ,特殊法人の全て が政府の一部という説明は放棄されたという経 緯がある.宇賀前掲註 14)論文 98 頁. 95)総務省HPによる. 96)防衛省HPによる. 97)市橋克哉「独立行政法人,そ の 何 が 問題 か」 国 公 労 調 査 時 報 445 号 4 頁,5 頁(2000)は, 国家公安委員会や防衛庁の準省扱いと連動させ て 考 え る.な お,2007 年 1 月,防衛庁 は 防衛 省となった. 98)但し,福祉国家とエージェンシー化の代表の ように言われるスウェーデンでは,本省組織の 4000 人弱に対して,エージェンシーには約 22 万人の職員がいるという.古川前掲註 53)論 文 168 頁. 99)小林前掲註 88)論文 6 頁.同論文 14 頁 は, 薬事法違憲判決(最大判昭和 50 年 4 月 30 日民 集 29 巻 4 号 527 頁)による距離制限の撤廃と いう規制緩和が,大手薬局の進出と弱小個人経 営薬局の駆逐という結果を招いたと指摘する. 100)福家前掲註 44)論文 5 頁は, 「国民ではなく 消費者という概念が重視され」ていると言う. この流れで行けば,公共部門の役割として残り そうなのは,養護学校などではあるまいか.そ の独立行政法人化の主張はおよそ目にしていな い.盲学校,聾学校及び養護学校への就学奨励 に 関 す る 法律(昭和 29 年法律 144 号.障害児 に つ い て は,1900 年 の 小学校令 で は「不具廃 疾」として就学免除とされ,1941 年の国民学校 令でもなお就学猶予事由であった.1947 年の教 育基本法で精神薄弱児等にも就学義務が生じた が,特殊教育は立ち遅れ,保護者の経済的負担 は大きく,就学率は低調であった.そこで 1954 年,本法は,国及び地方公共団体が盲・ろう・ 養護学校に就学する児童・生徒に必要な援助を 行い,義務教育の普及奨励を図る目的で成立し た.当初,受給希望の児童・生徒等に交付する 経費としては,教科用図書の購入費,学校給食 費,通学・帰省及び付添人の交通費,寄宿舎居 住経費が列記されていた.1960 年改正では修学 旅行費,1961 年改正 で は 学用品 の 購入費 が 加 ・ ・ わった.1958 年改正で法令名の「ろう」が「聾」 と さ れ た.受給申請 に は 就学奨励費受給調書 兼認定調書などの書類が必要である) ,公立養 護学校整備特別措置法(昭和 31 年法律 152 号. 1953 年,文部省は「教育上特別な取り扱いを要 する児童・生徒の判別基準」を通達し,実態調 査を実施したところ,精神薄弱児が 78 万人出 現したが,養護学校は 1955 年に 6 校しかなく,.

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