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教科の本質を発展させるメディア : コンピュータのハイパーメディアとしての利用 (第2回シンポジューム)

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Academic year: 2021

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教科の本質を発展させるメディア ー-コンピュータのハイパーメディアとしての利用一一 学校教育研究センター lミrtV-. 1. 問題の所在 教育へのコンピュータ導入は,今日的な課題として,急速な取組みがされ ている。 コンピュータの開発では,米国と並んで国際的に優位なわが国であ るが,教育における取組みは,諸外国と比較して遅れているのが現状である。 基本的には,教育へ新しいメディアを導入しても,教育の本質は変わらな いし,変わってはならない。 だが,教育の方法は,新しいメディアを導入に よって,多様な方法が開発されてきた。 コンピュータは科学の最先端機器であるが,元来は名称が示すとおり計算 機であった。 音声及び映像等の情報をデジタル化する技術の開発によって, コンピュータは一つのメディアを超える存在となったDまず,TheodorHolm NelsonがDTP(DiskTopPublishing)を開発し1967年に「ハイパーテ キスト」という言葉を初めて使ったDつぎに,電子メディアを統合して「meta media」,つづいて「hypermedia」へと転じ,一つのメディアを「超えた」 メディアとしてAlanKayがハイパーメディアと名付けた。 ハイパーメディ アの概念としては,それ以前にVannevarBushが1945年に提唱していたO 最近では,教育におけるコンピュータについて,「CAIやHAL(Heur isticallyProgrammedAlgorithmicComputer)の時代は終わって,ハイパ ーメディアとして蘇生させる」ことを提言しているo(浜野保樹,1990)教 科教育の主要な課題は,教科の本質は何か,その本質を如何にして授業に構 築し学習を成立させるかである。 この課題とかかわって,コンピュータの教 育への導入は多様に実践されてきた。 だが,教育メディアとしては,平成3 年3月で小学校教員ではコンピュータを操作できる教員が約1割で,普及し 難い問題点・課題が存在している。 (文部省,1992)その主な要因は,コン ピュータを一つのメディアとしてではなく情報科学機器として対処してきた ところにあるo新しいタイプのハイパーコンピュータは,プログラミングを 意識せずに,教具としての操作方法だけを習得することができる。 ここにお いて,教科教育における教育実践の貴重な遺産を継承し,発展させることが できるメディアとなりえることができるD

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2. ハイパーメディアとしてのコンピュータ 情報化社会に対応する教育のあり方は,国際化及び高齢化社会に対応する 教育と相侯って,教育関係者の大きな課題である。 わが国における学校教育 では,この教育をすべての教科及び領域で行うこととなっているDさらに, 教育と情報手段とのかかわりは,一つは,情報手段について理解することで あるo二つは,情報手段を教育の道具として活用することであるoすなわち, 第1は教育内容としてのコンピュータであり,第2は教育方法としてのコン ピュータである0 2. 1教具としての利用 教育方法としての情報手段を,坂元昂(1990)によると,学習の道具, 学校経営等への活用,及び教育研究のための道具とに分けている。 今日まで 教育にかかわったメディアで,コンピュータほど教育内容と教育方法との両 面にかかわったきたメディアはないであろう。 わが国においては,1980年代までは,教育内容としてのコンピュータが主 要なかかわり方であった1960年代の科学技術時代の発展として,コンピュ ータ科学の躍進,新しいコンピュータの開発,その技術者の養成等が急務と されていた。 このなかでは,コンピュータそのものの学習が主になって,教 育方法としてコンピュータを利用することは,コンピュータを学習した者だ けに許されるものとなっていたOこれは,ビデオ教材を作成するときに教材 とかかわってコンテ作成が主要な作業になるのとは,大きく異なるものであ るoハイパーメディアとしてのコンピュータは,ワープロと同程度の操作方 法を習得すれば利用できるようになってきたので,教具としてより利用でき ることが期待できるようになった。 2. 2ハイパーメディア開発の動向 教育工学関係の最も大きな研究会である教育工学関連学協会連合第3回全 国大会において,ハイパーメディアに関する研究が,本年度は数多く発表さ れたDこのなかで,日比美彦がハイパーメディアの機能について,次の6つ の機能にまとめている。 今後の課題としては,これらの機能が教育のなかで 具体的にどのように機能していくかを検証するが課題となる。 ・統合:形態の異なる情報を統合する ・連結:ばらばらの情報を関連づける ・検索:自在に情報を取捨選択する

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・推測:リアルなシミュレーションで予測する 編集:情報をまとめ,自分の文脈に並べる ・表現:自分のものとした情報を伝える 次に,注目した事項は,ハイパーメディア教材「人と森林」による学習と 指導に関する討議であるOこのなかで授業者が「ハイパーメディアとしての 機能要件が多すぎ,教材の調理法が未熟であったために,思い通りの学習効 果をあげることができなかった」と報告したことであるOこのことが,この ような大きな教材開発に対して,参加者に「論議の行方は不明確であった」 と言わせることになったO(井口磯夫,1992)機能が多ければ多いほど,メ ディアのどの機能をどのように具体化するかを明確にすることが必要である。 教育にメディアを積極的に導入した沼野一男(1971)が教育機器の可能性 と限界について「機器そのものよりも,それを利用するソフトウェア如何に かかっているといわなければならない」と提言している。 このことは,新し いメディアを教育に導入するときの重要な警鐘である。 米国におけるハイパーメディアに関する研究の動向を,ERIC(Edu eationalResourcesInformationCenter)に登録されている年次別文献数 で考察したO図1は,コンビュ タの教育への利用をCAI,C MI,及びHypermediaについて, 登録文献要録のキーワードとして 用いられている文献数をグラフに 示したものであるo ハイパーメディアに関する研究 論文については1986年が登録最初 の年である。 しかも,その論文数 は急激に年次がすすむと共に増加 している。 これに比べてCAIに 関する論文数は減少してきているO 米国では,コンピュータがハイパ ーメディアとして利用される時代 へ移りつつあることを示している。 図1ERIC登録文献数の推移について -CAI蝣-CMI-Hyper

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3. 教育工学への進展と問題点 視聴覚メディアによる教育が行われるようになったのは第二次世界大戦後 のことであるO米国の支援等もあり各地にフイルム・ライブラリーが設置さ れ,視聴覚教育の実践や研究が組織化されたOその後,1960年代になるとプ ログラム学習を原理とするティーチング・マシン論が,教育界をゆさぶるこ とになったOそして,視聴覚教育は急速な展開をみせ,1965年以降からカセ ット式テープレコーダ,OHP(OverHeadProjector),シンクロファッ クス,アナライザー,およびLL(LanguageLaboratory)等が学校で使用 されるようになってきた。 1980年代になると,科学技術 の進歩により「ニューメディア」 と呼ばれるビデオディスク, BS(BroadcastingSatellite) ,ビデオテックス,および CATV(CableTelevision) 等が普及し,視聴覚教育の概念 が変わってきたO伝統的な視聴 覚教育は,直感あるいは感性的 認識を重視していたが,ニュー メディアの時代になって,視聴 覚教育はコミュニケーションの 灘かI.* (Educational Technology) 教授工学 (histructional Technology) A\ ! 蝣: Hi拙与、とnft

(Audio Visijal Education) R&TV放送数台

(Education through Redio and Television) TMティーチングマシン (Teaching Machine) PIプログラム学習 (Programed Instruction)

図2視聴覚教育と教育工学との関連

過程として捉えられるようにな ったD視聴覚教育は,感性的認識だけを重視するものではなく,「構造化と 組織化」というシステム工学の考え方が取り入れられた。 (野津良夫,1989) ここで,視聴覚教育は教育工学へと進展し,伝統的な視聴覚教育はその下位 領域として位置付けられたD視聴覚教育と教育工学等の関連を,Ely,D. P. (1963)は図2のようにまとめている。 さらに,視聴覚教育から教育工学, 教育システム論へと進展していった状況を表1にまとめた。 わが国の教育工学は米国から導入されたものであるが,表1及び図2を考 察することによって,その問題点を明かにすることができる。 まず,米国で はCAI等のコンピュータによる教育が教育工学の一部あり,わが国におけ る教育工学センター等におけるコンピュータの位置付けとはかなり異なるO

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つぎに,CAIはプログラム学習,ティーチング・マシンを発展させたもの として米国では位置付けている。 わが国では,CAIはプログラム学習やテ ィーチング・マシンと一緒に論じられることはなく,学習理論,教育理論, 及び教育実践とかかわって系統的にしかも連続的に論じられることとが少な い。プログラム学習が1970年代に教育実践を通して敗退していった学習方法 なら,コンピュータを使用すればその敗退の原因をどのように修復し,その 学習理論を発展できるのかを明かにすることが必要である。 メディアの開発 に伴って,新しい教育の理念の追究が常に試みられてきた。 その主要なもの は,Dale,E. (1946)による「視聴覚教育論」,Skinner,B. F. (1958)によ る「プログラム学習,ティーチング・マシン論」,Bretz,R. による「教育 工学諭」であるOこれらの諭は, すべて米国で構築された理論あ り,米国での教育実践を基にし て構築されたものである。 これ らの理論を導入するに当っては, わが国における教育実践を十分 考慮して行わなければならない。 学校教育現場においては,新 しい教育機器が次から次へと流 行的に導入され,必ずしも定着 した教育実践として成果をあげ るに至らなかった事例も多い。 新しい教育機器を操作できる教 師が転任してしまえば,「峡を かぶった機器」として利用され なくなってしまう事例も多々あ った。(日比美彦他,1991)た とえ,コンピュータが操作でき なくても,コンピュータを利用 した教育の在り方だけは共通に 理解される論を確立する必要が ある。学校教育の成果を真に発

表1メディアによる教育の進展

年代 メ デ ィ ア に 関 す る 教 育 文 献 等 1935 46 48

Dale, E . Audio-visual me thods in Teaching 有 光成徳 訳 『学習 指導 にお ける視聴 覚的 方法』 1951 ≪視 聴覚 教育論 ≫ . 西本 三十二 訳 『デ - ルの視聴 覚教 育』 49 . 波多野 完治 『祝 雌覚教 育論 』 1950 51 . 飯島誠 四郎 『視 聴覚教 育の本 質』

54 Dale , E. 'Audio-visual me thods in Teaching 波多 野完治 訳 『心理 学 と教育 』

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≪テ ィI チ ン ク . マ シン論 ≫

Sk inner, B. F., Teach ing Machines 1960

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C rowder, N. A., 'Teach ing Machines and P rog rame Learn ing ≪プ ログ ラム学習 論 ≫ 1964 軸三十二他『教育工 学』 65 - 西本三 十二 『視 聴覚教 育 5 0 誠』 69 ≪教育 工学 論≫ 1970 71 72 . 慶応 大学学 習科 学研究 セ ンタI 『テ ィーチ ング l マ シンと プログ ラム学 習』

B re tz , R., Taxonomy of Com皿un ication Media (宇佐 美昇三 訳 『教 育工 学序 説』, 1972) . 坂 元昂 『教育 工学 の原理 と方 法』 74 76 77 . 文部省 , 経済 協力開 発機構 「カ リキュラム 関与もに関 する国際 セ ミナ ー」 , 工 学的接 近 (technological approach) と相生門 的接 近 (rashomon approach) . 沼 野一 男 『教 授工学 入門 』

. 元木 健 (描 ) 『探究 学習 と して の プログラ ミング』 Hoizman , W . H .. Computer Assisted Instruction , Testing and Guidance ., 木村捨 雄 訳 『C A I シス テ ム』, 1976 . 沼野 一男 『授業 の設 計入門 I ソフ トウエア の教授工 学』 . 教育 工学研 究成 果刊 行会 (描) 『教 育工 学 の新 しい 展 開』 1980 ≪C A - 論≫ 84 . 金子孫 市 『日本 の教育 シス テム』 86 87 . 後藤和 彦 『メデ ィア教 育の すすめ 』 . 社団法 人 日本 教 育工学 振興 会 『新 教育機 器教 育方法 開発研 究報 告書 』 . 佐 伯肝 『教 育 と機 械』 B8 . 坂元 昂 『教 育情 報科学 』 1990 . 浜野保 樹 『ハイ パー メデ ィア と教 育革命 』

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揮するためには,コンピュータを導入することによって,今までの教育実践・ 研究がより広がり,より深まるものでなければならない。 決して今までの教 育実践・研究を切り離してコンピュータによる教育が導入されたのでは,教 育の発展は望めないO重要な課題は,コンピュータを導入することにょって, 今まで積み上げてきた教育実践・研究を継承し,より発展させる新しい教育 の在り方を確立することである。 したがって,メディアは,教科の本質を引 き出し,発展させるために活用されなければならない。 4. 今後の展開 わが国では,教育へのコンピュータ導入に,昭和60年度から多額の文部 省予算を計上し,平成3年度ではハード関係だけでも441億円を計上して その普及に努めている。 ア-キテクチャーでは基本的に同じであるワープロ が広く普及し,コンピュータ利用が普及しないのは情報科学の専用機器とし て位置付けられていたからであるoワープロの利用に当って,文書処理理論 なり,プログラミングについて説明されることはない。 コンピュータについ ても,アーキテクチャーやプログラミングの説明なしに利用できるようにな ったハイパ-コンピュータが,教具としてより利用できるようになったo佐 伯肝(1987)が「コンピュータをどこまでも何かをするための道具としてみ なすことを徹底しなければならない」ことの主張にあらためて賛同する。 教科教育におけるメディアの開発は,あくまでも教科の本質をより発展さ せるためである。 科学技術が進展するにつれて数多くの教育機器が開発され, 教科教育の発展に寄与してきた。 今後の大きな課題は,これらの成果をあげ た教育機器を,ハイパーコンピュータによってそれらの機能を継承・統合・ 発展させることによって,その成果をより発展させることである。 引用参考文献 Ely,D. P. 1963,TheChangingRoleofAudiovisualProcessinEducation, AVCommunicationReviewVol. llNo. 1,36 浜野保樹 IllHこ)'蝣 井口磯夫 二日:>rI さ'.蝣蝣・;i1-と)-: i'rillJJ1-1990,ハイパーメディアと教育朗,アズ=ト出版局,140-173 1991,「大地に緑を心に韓きを」用件にあたって,放送教育第45巻第11号,日周送教育協会,35-39 1992,ハイパーメディアとコンピュータ,放調音第46巻第12号,日本脱教育協会,50-51 1992,学校における借舶青の実態等に関する粛査結果,中瑚育資料第41巻第2号,如禍書,90-94 1989,視聴覚教育の新しい朋,東信望,3-31沼野一男1971,教育工学日棚送教育協会,239 1987,網と掴岩波書店,282坂元昂1990,醐化の朋と獅禍宵,23-24

参照

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