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「映像メディア表現」の教材開発(I) : 「動く映像」を学ぶ教材研究

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「映像メディア表現」の教材開発(I) : 「動く映像」を学ぶ教材研究. Author(s). 伊藤, 隆介. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 53(1): 187-199. Issue Date. 2002-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/279. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平 成 14年 9 月. 3巻 第1号 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第5 fEduca i i i lo fHokka i i do Un l I t t t Journa on (Educa s on) Vo ver yo .53 . .No. Sept embe r .2002. 「映像メ ディ ア表現」 の教材開発 (工) - 「動く 映像」 を学ぶ教材研究 -. 伊. 藤. 隆. 介. 北海道教育大学ネ L I 幌校視覚・映像デザイン研究室. 1. は じめに 平成14年度から実施される学習指導要領 には, 中学校美術科および高等学校芸術科 (美術) の指導内容に 新 しく 「映像メ ディ ア 表現」 が加 わ っ た. その 内容 が扱うメ ディ ア や 視覚 的 な話 法と は イ ラス トレー シ ョ , ンや 図, 漫画, 写真, ビ デオ, コ ン ピ ュ ー タ な ど多 岐 に渡る.. しかし, 教育現場の現状を考慮した場合, この分野を指導するために充分な学校設備や教員の知識の蓄積 にはかなりの時間が必要であろうことなどが想像がされる. なぜなら 「映像メディア表現」 に属する内容や 表現は, 従来 「サブカルチャー」 として括られてきたものであり, 観察や描写よりも誇張や省略の表現 娯 , 楽性やマーケティングを優先させた 「楽しみ」 であり, むしろ美術教育とは対立する存在として教師にも児 童 生徒 にも 捉 え ら れてき た側 面 がある か らである. し ば し ば拙 い素描 な どを指 し 「マ ン ガの よう だ」 な どと 批 評 す る よう に, 「映像メ ディ ア 表現」 に 含ま れる 幾 つ かの 内 容 は 学 校 美 術 (ハイ ・ カ ルチ ュ ア) に対 す , る 「ロ ウ ・カ ルチ ュ ア」 と して 捉え ら れてき た. そ れゆ え 教 育 と して の 「映像メ ディ ア 表現」 の研 究や 体 , 系 化 は, ま だこ れか らの 分 野 と 言 え る. (例 え ば日 本 を代 表 する 映 像 表現 であ る 「ア ニメ ー シ ョ ン」 に 関す. る教育は, 主に制作現場か職業学校のみで培われてきたものである. 日本映像学会における教育部会 日本 , ア ニメ ー シ ョ ン学 会や 日 本マ ン ガ学 界の 設立 自 体も こ こ 数年 の 動 き である.). 現代における美術表現としての映像 (しばしば実験映画やビデオアートと総称される) の先駆となったア メ リ カ の マ ヤ ・ デ レン ( 1908~61 ) は, 1960年 の 論文 の 中 で造 形芸 術 (絵画 や彫刻) に対 する 映像 (写真芸 術) の特 性 の 違 いと して、 以下 の点 を上 げて いる.. 造形芸術: ・ 「意 味」 を効 果 的な 「外観 (アス ペク ト)」 で表 にあ らわす. ・ (表現 そ の も の は 現 実 で はな い の で) 現 実 のメ タ フ ァ ー をつ く り 出す .. 写真芸術: ・ ま ず 「外観 (現 実)」 があり, そ れを見 て 「知 識 と態 度」 が動 き 出す (「理解」 が 「外観」 を評価 する ) . . ・ (ま ず現 実 を写 し取 っ て いる の で) 現 実 を 観 念・概 念のメ タ フ ァ ー と する , .. この指摘は, 今日 「映像メディア表現」 を指導する際に その基本的な特性を再考するにも示唆的である , . しかし同時に, 映像メディアとはただ単にカメ ラで現実の事象を撮影し 編集などの段階で操作を加えるだ , けの 表現 では な い. そこ には デ レンの 呼ぶ 「造 形芸 術」 と 「写 真 芸 術」 の 中 間 に位 置 す る 領域 も存 在す る . そ れが動 画 表 現 による ア ニメ ー シ ョ ンである. 近年, 「メ ディ ア ・リ テラ シー (映像メ ディ アにお ける 読 み 書 き)」 教育 の 必 要性 が 論 じられて いる 多く .. 187.

(3) . 伊 藤 隆. 介. の場 合. リ テラ シー 教 育と は 「物 語」 がシー ンクエ ンス の連続 で どう 効率 的 に. ある いは懇意 ヒ的 に語 られて. E } 95年 にオ ウム 真 理教 の宣 伝 映像 いる かと いう, 狭義 の内容 と して捉 え られ がち である. しか し現実 に は, I や TBS のテ レ ビ 報道 で使用 さ れた と い う 「サ ブリ ミナ ル効 果」、 児童 がテ レ ビアニ メ ー シ ョ ンのフリ ッ カ ー 1997年) のよう に, 的効果を~ て い て紙欄 (て ん かん) に 似た 症 状 を 起 こ した い わゆ る 「ボ ケモ ンサ沼: 」( コマ 単 位の 映像操 作につ い て のリ テ ラ シー や 生 理 的 反応 な ども 注Hさ れつ つ ある. こ れ ら の例 は 「物 語」 や )」 f rame そ の た めのモ ン ター ジ ュ と い っ た 映像的「話 法」 のみ な らず, 動く 映像の 基 本構 成 単 位 である 「ゴマ( の レベ ル か らメ ディ ア の理 解 が必J要に な っ て いる こ と を示 して いる. 以上 のよう な“闘犬を考慮 した 上, 本稿 で は以-トの点 に重点 をお き 「映像メ デ ィ ア 表現」 の教 材 開 発 (アニ メー シ ョ ン) につ い て 考 察 した. コマ 単 位の 映 像原理 の 理 解 (リ テラ シー) 2 」. ぜ. 従来の美術教育との関連性 表現 と して の 「動 き」 の生 成. 設備や教員の現状に関わらず実施カー可能なもの (実践性) 映画 前 史の 映像メ ディ ア の 開 発や 歴 史につ い て は, 主 に 映画 史の 視 点 か らの研 究 は進 みつつ あ り 資 料も 既 二さ れ て いる 本稿 で はそ れ らを 「映像メ デ ィ ア 表現」 の教材 開 発の枠 組み か ら整理 再 考 した. に 多く 発行 , . 本稿 が 今後の 「映像メ ディ ア 表現」 教育 にお ける 教 材研 究 の 「た た き台」 と な れ ば幸 い である‐. 2. 映像メ ディアの技術的構成要素 「映 像」 と いう 言 葉 はも とも と 「 image」 の 訳語 であ り, そ こ か ら派生 した 映像メ ディ ア 表現 の 中心 要 素 i であ る 「動く 映 像 (mov ng image)」 に つ い て は, ア メ リ カ の ト マ ス ・ ア ル ヴ ァ ・ エ ジ ソ ン (1847~1931) 1891年), ) による キ ネ トグラ フ ( 1860~1935 とイ ギリ スの ウ ィ リ ア ム ・ ケ ネ ディ ・ ロー リ ー ・ ディ ク ソ ン ( 1895年) 64~1948 ) による シ ネマ ト グラ フ ( フ ラ ン ス の リ ュ ミ エ ー ル 兄 弟 (オ ー ギ ュ ス ト1862~1954/ ルイ18 i と い う, 「映 画 (Mot i ture on P c. 活 動写 真)」 の 発明を起 源 とする 考 え方 が一 般 的 である‐ そ の 「動 く 映像」. を 成 立さ せ る 基 本技 術 は. 1936年 の 「映 画 技 術 の 発展」 (ル ドル フ・ トゥ イ ン/ ドイ ツ) によ れ ば以 下 の 通 り である. ①. “段 階的な絵 が を 変 化させる こ と によ っ て 動 き を再 現する こ と ,. @ すばやく動くすき間 (スリッ ト) を通して, 連続的に動く絵を再現すること @ 大体同じないしは完全に同じ間隔で、 段階的な絵を間欠的に動かすこと ④. レ ン ズと鏡 によ っ て, 段 階的 な 絵の 動き を 光学 的によ り な め らか にす る こ と. @. 絵の長尺化. @ 動く絵の映写 上記の技術をさらに簡略に分類すると以下のようになる. ① 動画技術 (主に上記①, ②) ② 撮影技術 (主に上記①, ④, ⑤) ③ 投影技術 (主に上記①, ②, ③, ④, ⑥) 現実の 事 象 をフ ィ ルム な どの物 理 的メ ディ ア 上 に, 光学 的な ゴマ 単 位 の 静止 画 と して記 録 し, そ れを投 影 i ) と いう 「動く 映像」 の構 造 は, テ レ ビや ビ デオ, nl i t (pro na on ject umi on) も しく は透過 的 に照 射 する ( ある い は 今日 の デ ジタ ル 映像ま で基 本的 に大 き な変 化 はない. しか し, 前 述 の通 り 「映像メ ディ ア 表現」 を普 及さ せる た めの 現 実 的 な 課題 には, 専 門 機 器と そ の操作 の. 188.

(4) . 「- - リ t像 メ ディ ア 表現」 の 教 材 開 発 ” 」. 修 得 が必 要 であ る と いう, こ のメ ディ ア 自体 の性 格 が上 げら れる. つ ま り, 映画 機材 や ビ デオカメ ラ, ある い はコ ン ピ ュ ー タ な ど, 学 校 設備 の格 差 ・教 員個 人の技 術 的修 得 度 の差 が大 き い 分 野 である. 高 額な 機材 を. 設・ 置できた場合でも, それらの操作の機会を児童・生徒に均等に与 ‐えられるかなど課題は多い. ま た, そ のメ ディ ア や フ ォ ー マ ッ ト自 体 も 鎖 塩メ ディ ア (写 真 や 映 画 の フィ ルム) ビ デオ テ ー プ デ ジ , , タ ル情 報 な ど, 時代 と共 に変 化 して いる. こ こ に, メ ディ アの 変遷 に左 右 さ れず 従 来 の 造形 教育 を継 承 し ,. つつも普遍的な 「映像メディア表現の基本」 について学ぶ教材や教育法の開発の必要性がある. まず, 「動 く 映像」 を成 立 さ せ て いる 各技 術 の 共 通 要 素 であ る 「”段 階 的 な 絵” を 変化 さ せる こ と によ っ て 動 き を 再 , 現す る こ と」 を 理解 する 教育 と して, 「動画術」 に 関わる 指 導 を提 案 した い.. 3. 「動き」 の教育と, 美術教育の関連性 ′ .. 歴 史上, 多く の 美術 作 品 は動 か ない 素材 と 造 形 に 「生 命感」 「生 命 感」 を得る た め 「動 き」 を 感 じさせる , 代 償 的 な 表現 を 生 み 出 して 来 た. しか し, 映 像 を 含 め, 「動 き」 そ の も の を 表 現 の ボキ ャ ブ ラ リ と した 芸術. 作品の登場は19世紀以降と新しく, その可能性や造形的探究もまだまだ途上であると言える. 「映像メ ディ ア 表現」 は従来 の 「造形 表現」 と 同 様 に情 報伝 達の ツ ー ル と して の 機 能 を 持 っ て いる と 同時 に 「時 間 表現」 , と しての性 格 を色 濃く 持 ち 合 わせ ている こ と にも 意 識す べ き で ある 音 楽 (特 にイ ンス ツ ルメ ンタ ル なも の) . 同様 に時 間表 現 であ り, 視 覚 によ る 表現 でもあ る 映像メ ディ ア の性 格 は キ ネ ティ ッ ク 彫刻 や バ レエ な ど , , の パ フォ ー ミ ン グ分 野 に近 い. 「動 き の喜 び」 と で も 呼ぶ べ き 表現 である‐. 従来の図工や美術教育においても, 「動き」 を始めとする時間表現な要素を取り入れた教材は 取り上げ , られてきた. 小学校図工教育における動くおもちゃ, 指人形などの人形の制作などがそれである こ れら は . 広い意味で捉えれば, ア ニ ミ ズ ム (animism) と 語 源 (animate) を 同 じく し た ア ニ メ ー シ ョ ン (animation) 領域 へ展 開 できる と 考 え ら れる‐ また小 学 図工 では照 明 器具 の制 作 影絵 遊 び ピ ンホ ー ルカメ ラ (カメ ラ . , ,. オブスキュラ) など光を利用した造形も紹介されているが, 従来の中学校美術ではこれを引き継ぐ分野が薄 かっ たと言える. 今後は 「映像メ ディア表現」 における投影術に連なる 分野と してこれらの領域を継 承する ことは可能であろう. 加えて新しい中学校指導要領では, 各学年の指導内容( 2‐A‐ 2‐ア)にの中に形や色彩, 材 料と 同 時に 光も 取 り 上 げら れて いる‐ その例 と して紹 介さ れて いるイ ルミ ネー シ ョ ンな ど電飾 の 光 の効 果 で は, 電光掲 示 板 やネ オ ンサイ ンな ど点滅 やア ニメ ー シ ョ ン的な 「動 き」 を 生 み 出す 表現 が欠 かせ な い .. 本稿では,「映像メディア表現」教育における実現性の高い教材の第一段 階として まず歴史的映像装置(映 , 像玩具) の再制作を取り上げたい. 映画の発明以前に現れた多くの映像玩具は 現行の映像メディアの仕組 , みと の 共通 点 を 多く 含 み な が らも, 機構 自 体 は単純 で制 作 可 能 なも の が多 い ま た ルイ ・ ジ ャッ ク ・マ ン . , デ・ ダゲー ル (フ ラ ンス /1787~1851 ) による 写真 の 発明 (ダゲ レオ タイ プ/1837年) 以前 に現 れた 映像 玩. 具 (次項参照) は, 必然的にその視覚情報 (ゴマ単位の動画) の制作を手仕事 (描画) に頼ってきた 動画 . 表現はその属性の多くをまた絵画表現に因っ ている. 画材などの実材を使用し、 対象の形態や動きを作り出 すために日常での観察力が必要になっ てくるなど, 従来の美術教育とも共通点が多 い (詳細は教材の実践 . 例 の項 で触 れる.) 以下、 「動 画術」 を取 り入 れる 際の 目標 をま と める. ・ 実 際 に手 を動 かす 作 業 によ り, ゴマ 単 位 の 「動く 映像」 の原 理 を 体験 的 に 理解す る こ と が でき る . そ れを通 し, マスメ ディ ア 等 か ら流 れてく る情 報 (動 画 的情 報) の 質的量 感 を把 握 が可 能 になる , . (映像 の 基 本構 造 につ いて のメ ディ ア・リ テ ラ シー) ・ 「動 き」 その も の の 持つ 「表現」 の 喜 びや 豊さ を理解 し 表現 できる 感 受性 を 育 て られる , .. 189.

(5) . 伊 藤 隆 介. ・それらを利用することによって, 創造的な表現を追求 したり, 効果的な視覚伝達の方法を身につけるこ と が できる. 以 下、 「動 画 術」 にお ける 図工 ・ 美術 教育 との 関連性 を上 げる. ・ 自分 の手を使って物を創造するため, 従来の実材系の描写表現の延長と捉えることができる‐. .自然や社会の観察を通して, 物の 「動き」 とそれに関わる形態や機能を理解することができる. ・ 空 想画や シ ュ ー ルリ アリス ム 的 表現 な どに 「動 き」 を加 える こ と によ り, リ アリ ティ や ディ ティ ー ルを. 付加でき, 独創性や個性を生かした表現を深めることができる. .光の性質を理解し, それを使っ た時間的造形の概念を修得できる.. 4. 「動く映像」 の原理と表現を学ぶ教材例 1) ソ ー マ ト ロ ー ブ (Thaumat ( rope). 1785~1856 )、 イ ギリ ス の 医 師 ジ ョ ン・ エア トン・ パ リ ス ( ) に よ っ て1825年 こ ろ に 発 1780~1861 W ・ H・ フィ ト ン (. 明された玩具である. (図1) 表面と裏面にそれぞれ異なる絵が描かれた円板を, その内 径 を軸 と して早 い 速 度で回転さ せる こと によ り, 両 面 の 絵 が. 同一平面上に合成されて見えるという, 目の錯覚を利用した 映像 玩 具 である. ソー マ トロ ー プはも っ とも 簡易 に制 作 でき. る映像玩具であり, 構造的には両端にひも を通した, 直径 図I. 1ocm 程 度の厚 紙 の 円 板を作 れ ばよ い. た だ し, ソー マ トロ ー プで得 ら れる 「映像」 の特 性 と は基. 本的には視覚情報の合成であり, 必ずしも連続的な 「動き」 の生成や理解には向かない場合もある. 片面に小鳥, 裏面に 鳥かごを描いた有名な図案などがその例である. この場合, 回転 によ っ て小 鳥 が鳥 か ごに入 っ て いる よう な 視 覚 的 トリ ッ. ク は得られるが, 動きの表現とは無縁である. (図2) その 反面, 関連性のある2 枚の画 (少しの差異のある段階的な視 覚情報) を描き、 回転を比較的遅くした場合, 効果的に動き 図2. の感覚を得られる場 合もある‐ (図3) 教材としてソーマト ロープを採用する場合は, 「動き」 を導き出す図案を制作す るように指導する必要がある. 1962~) はソ ーマ トロ ー プ的 近年, 映 像作 家 の岩 井俊 雄 (. な原理を使用しつつも, 合成の特性を排除した教材を開発, 紹介している. 2枚の関連性のある画を, 重ね合わせた位置 にそれぞれ赤・青の線で描き, それを交互に赤・青色セロ フ ァ ン を 通 し て 鑑 賞 す る と, そ れ ぞ れ の 画 の 違 い だ け が 際 立 っ て動 いて いる よう に見 える. 児 童 ・生徒 がセ ロ フ ァ ンを 動 か す ス ピ ー ドを 操 作 す る こ と によ り, 「動 き」 そ の も の の 図3. 190. ス ピー ドも コ ン トロー ルできる 点 が優 れている..

(6) . . 「映像メディア表現」 の教材開発 (1). ( 2 ) フ ェ ナ キ ス テ ィ ス コ ー プ (Phenak i i t s scope / 驚 き 盤). 人間の視覚における残像現象を研究していたベルギーの物 1801~83 ) が, 1832に 開 発 した 理学 者 ジ ョ セ フ ・ プラ トー (. 動く映像を鑑賞する装置である. また, 同時期にウィーンの ジ ー モ ン ・ リ ッ タ ー ・ シ ユ タ ン ン プ フ ァ ー (1792~1864) が. 発明 した 同 様の装 置 をス トロ ボス コ ー プと 呼ぶ.. 中心に回転用の軸を持った円盤上に, 十数の動画とスリッ ト (のぞき穴) が交互に配置されている。 回転によって移動 する 動 画 を,一 定の 位 置 のス リ ッ ト(映画 にお ける シ ャ ッ ター. 図4. の働 き を して いる) か ら 分解 して 眺 める こ と によ っ て, 動 画 が動 い て い る よう な 錯 覚 を与 える 仕 組 み に な っ て い る. (図 ‐. 4). .外. こ の装 置 の使用 法 や バ リ エ ー シ ョ ンと して は, 以 下 の も の がある。 ①. . 鑑 賞 者 は 鏡 に 向 か い, ス リ ッ ト越 しに 鏡 像 を 眺 め る. (プ ラ トー の フ ェ ナキス ティ ス コー プ/ 図 5). ②. 2 人の 鑑 賞 者 がそ れ ぞ れフ ェ ナキス ティ ス コー プを持 ち, お 互 い の 回転 す るスリ ッ ト越 しに相 手 の動 画 を鑑 賞. 図5. す る.. ⑥ 動画が掛れた種板の手前に, スリッ トのみを開けた板 を配置し,その両方を回転させて動画を鑑賞する方式で, も っ とも 見 やす いタイ プである. ( 1850年 以後 / 図6). ′ 、 /. ト . ( 3 ) ゾー トロ ー プ (Zoet rope / ゾー イ トロ ー プ、 ゾ ー ア ト ロ ー プ). \ ′ \. ). 霊感 . ′ \ / \ ノ 」 . ・ / 、 ′ ・ - 、 - - ‐ - --. 1834年 にイ ギリス の 数学 者ウ ィ リ ア ム ・ホ ー ナー ( 1786~ 1837 ) が制 作 した, フ ェ ナキ ス ティ ス コー プの改 良 版とも 言 える 装 置 である.. 図6. 動 画 を帯 状 に な っ た横 長 の 紙 上 に 配置 し, こ の 紙 をろ く ろ. 状の構造になっ たに回転する筒 (筒の内側の円弧は, 紙と同 じ長さとする) の内側にはりつける. この筒の上部には動画 数と同数のスリ ッ トが開けられており, 筒を回転させながら ・(図7) スリッ トから動画の動きを鑑賞する. 前 出の フ ェ ナキ ス ティ ス コ ー プと の違 い は以 下 の 通 り であ る.. 教材 と して は フ ェ ナ キス ティ ス コー プよ りも 鑑賞 しや. ①. すく, 同時に他方向から複数の鑑賞者が利用できる. ②. フ ェ ナ キス ティ ス コー プよ り も多 く の動 画 を描く こ と も 可 能 である.. ③. 図7. 各動画の描写画面が四角形であるため,参加しやすい.. 191.

(7) . 伊 藤 隆 介. (フ ェ ナ キス ティ ス コ ー プの 各動 画 面 は扇 形.). 反面, 指導者は本体 (回転する筒) を制作する必要がある. 陶芸用のろくろ等を利用することができ る. 糸で釣って回転させるなどの工夫も可能だが, 構造的に安定した回転やスムーズな動きの鑑賞は得. ④. にく い.. ( 4 ) フ リ ッ プブ ッ ク ( f 1 i pbook / パ ラ パ ラ漫 画) 一 般 的 にも っ とも よ く 知 ら れ て いる 映 像 玩 具 がフリ ッ プ ブ ッ ク で あ る. (図 8) 数 十 枚 の 連続 した動 画 や. 写真を, 本の形などに綴じ, 素早くめくることで 「動き」 の残像が得られるという仕組みである. その普及 1898年), 写 真 を ドラム 状 に 綴 じエ ン は 映画 の 発 明 以後 と 考 え ら れ, 代 表 的な のも の にの フィ ロス コー プ ( 1895年), ドレス で鑑 賞す る ディ ク ソ ンらのミ ュ ー トス コー プ ( ‐. 家 庭用 の キノ ー ラ な どが ある.. .. 動きの原理を説明する場合に, 児童・学生の生活や遊 びの体. ′ r‘ r. 験 を通 しても っ と も 理解 しや す い例 がフリ ッ プ ブッ ク である.. 動きを生成するための必要枚数が多く, 教材としては表現でき る情報の多彩さに加え, 作業量の多さが課題となる. また, 児 童・生徒の興味が動きの原理の理解や表現を探究するよりも, 「起 承転 結」 や 「落 ち」 をつ け る な ど物 語 的 ( i ) な ve narrat 構 成 に傾 き がち で, テ レ ビア ニメ ー シ ョ ンな どの物 語 表現 の 短. 縮版に陥る可能性も大きい。. 図8. ( ) アジアで展開した映像玩具 5 以上は主に欧米において発明・普及された映像装置であるが, ア ジアにおいても動く映像の原形とも言え る映像表現は存在している. その代表的な技術としては, 投影術の祖先である 「影絵」 が知られる. とりわ け紀元前2世紀の漢の影絵劇や, 15世紀ころから現代もその 伝 統 が続くイ ン ドネ シ ア の 影 絵 人形芝 居 ワ ヤ ンが知 られて い る.. 2枚程度の静止画を瞬間的に入れ替え, その差異によって 動きを表現する装置には, 日本で江戸時代にからくりとして 上演された投影型の幻灯機 (写し絵/1779年) がある. 投影 の 原 理 自 体は西 洋 の幻 灯 機 (マ ジ ッ ク ラ ンター ン) の 影響 を. . 種板 ‘. , I . D. 投影用画像2. . ′-ー、・. . (展開). . . 画像2. 図9. 192. れる幻灯機で舞台上の幕 (スクリーン) に背後から投影した とさ れる. 現 在 で言う ス ライ ドのリ ア ・ プロ ジ ェ ク シ ョ ンと. 画像1. . 受けたもので,可動部分のある静止画(ガラス板に描かれた) をはめ込んだ木製の種板を作り, その動きを 「風呂」 と呼ば. . 画像l. 同じ構造であり, 前者の中には1枚の種板に2枚以上の静止 画をはめ込み, それを素早く入れ替えることにより 「変化」 や 「動 き」 を 表現する 場合 も あ っ た. ソー マ トロー プ的 な機. 構に投影術を加えた試みが早くから行われていたことがわか る. (図9).

(8) . 「映像メディア表現」 の教材開発 (工). 5. 映像玩具による教材の実践例 ( 1 ) 講義の内容とプロセス ここで報告する授業例は, 北海道教育大学札幌校における 「デザインA/B」 の授業の一部として実施し たものである。 本講義は1年生を対象に視覚伝達デザインにおける基本的知識や諸相を紹介, またコミニュ ケ ー シ ョ ン・ ツ ー ルと して の デザイ ン実習 を 伴 っ た概 論的位 置付 けの 講 義 である. 1 回90分, 全14回の 講義. のうち, 4回分を 「映像メディア表現」 に関する基本的理解を目的とした講義に当てており, 動画制作の実 習 では実 際に フ ェ ナキス ティ ス コー プの制 作 を 行 っ てい る.. 講義の流れは以下の通りである. ① 動く映像の構造と歴史( 1 )(講義/90分) : 資料やビデオを併用し, 動く映像の構造や映画前史についての内容. この段階で受講生に ゾートロー プ や フリ ッ プ ブ ッ ク, あ る い は 映 画 フィ ルム な ど実 際の 映像 玩 具 を触 っ て 鑑 賞 さ せ, 「動 き の 感動」 を. 体験させることが何よりも重要であることがわかった. 学習の興味や動機を引き出すと共に, 実際に作 ろう と して いる 動 き や 動 画 の性質 をイ メ ー ジさ せる こと も 重 要 であ る.. ② 動画制作の実習1 (実習/90分) :後述 ③. 動画制作の実習2 (実習/90分) :後述. ④. 動画制作の実習3 (講評/20分) :後述 現代 的 映像メ ディ ア の 諸 相 (講義 /70分) :. 資料やビデオを併用し, 映画の発明以降のメディアの歴史と, 現代社会での機能や問題点 (主にモンター ジ ュ な どに 関す るリ テ ラ シー) を紹 介する. ( ) フ ェ ナ キステ ィ ス コー プの制 作 実習 に必 要 な用 具 2. ・型紙 (図10 ) ・ B 3 大のイ ラス ト ボー ド (1 ~2 mm 厚). ・角 材 ( 1omm 角, 長さ450mm 程 度). ・画鋲 (長め) ・ 筆 記用 具, ス ケ ッ チ ブ ッ ク, コ ンパス ・ ハ サ ミ, カ ッ タ ー ナ イ フ. ・着 色 道 具 (ポス ター カラ ー, アクリ ル 絵の 具) B 3 大 か ら だ と360mm 程 度 の 円 板 を作 る こ と が. できる. 円板を制作する材料はボール紙などでも構 わないが, 薄さや材質によっ ては制作中や乾燥時に 反っ てしまう場合があり, 完成時に上手く回転しな い こと がある. ピ ン につ い て は, 一 般の 長 さ の 画鋲 だと 回転 中 に 抜 けて しまう の で, 軸25mm 程 度 の 長. 図lo. いも の を用 意 する.. ( 3 ) フェナキスティスコープの制作実習の進行・手順. ① 参考作品の鑑賞 古典的な図案例や教師・学生による作例を自由に鑑賞させ, 「動き」 の驚きや感動を養う. 作例は出. 193.

(9) . 伊 藤 隆 介. 来る だ け多 く 用 意 し,「動 き のよく わかる も の」「そう で はな いも の」 の比 較や 観察 を 自律 的 に行 わせる.. ② 原理の説明 フ ェ ナ キス ティ ス コー プ につ いて の説 明. 特 に動 画 とスリ ッ トの 関係 を重 点 的 に行う.. ③ 材料の準備 円板の切 り 出 し, スリ ッ ト作 り, 角 材 の切 断な ど. アイ デア・ス ケ ッ チ. ④. 自由 にエス キース を行う. この段 階で 「動 き」 のも と となる キー ・イ メ ー ジを 発想さ せる. 作 業 の 進 行 状 況 に合 わせ, 随時動 きやアイ デア につ いて の 説明や ア ドバイ ス を行う (後述).. ⑤ 動画制作 ま ず, ス ケ ッ チ ブ ッ ク な どに ア イ デア を も と に した 「原 画」 を作 成 さ せ, 「中割 り」 ま で 進ま せる. こ の場 合, フリ ッ プブ ッ ク 状 に原画 を別 個 の用 紙 に描 かせ た 方 が, 動 き の制 作 や 修正 に効 果的 である. そ れが完 成 た学 生 に は画 を 円板 に トレス さ せ て回転 さ せ, 点 検や 修正 を行 わせる. ま た, こ の段 階 で グルー. プ等で改善点などを検討させる. ⑥ 着色 こ れ につ い て は時間 の制 限で, 各 自 課題 とす る.. ⑦. 鑑賞/講評・評価 お互いの完成作品を①同様に鑑賞させる.. 4 ) 動画制作の指導 ( フ ェ ナ キス ティ ス コー プの制 作 にお ける 動 画 と は, 12枚程 度 で完 結す る ア ニメ ー シ ョ ンを制 作 する と いう こ と である. 「動 き」 を 認 識 しや す い 円板 の 回転 ス ピ ー ドは1 回転 につ き 1 ~ 2 秒 程 度 であ り, そ れ ほ ど複 雑 な 「動 き」 を生成 す る こ と は出来 ないも の の, 基 本的 な 「動 き」 の構 成 要素 につ いて は以 下 のよう に整 理 し説 明や ア ドバイ ス を行 っ て いる. ①. 平面 上 の動 き: ) A) 上下左 右 の動 き (図11. 図11. 2 ) B) 空間的な動き (手前から奥へ等/図1. ●. ● 図12. 194. ●.

(10) . 「映像メディア表現」 の教材開発 (1). 3 ) C) 大きさの変化 (図1. ●. ●. ●. ●. 図13. ※ B と C の 表現 は, 動 画 的 に は同 じ場 合 がある. B につ い て は, 反対 の動 き の 組 み 合 わ せ で, よ り 効 果 的 な 表 現 に なる 場 合 があ る. (動 き の コ ン トラ ス ト/ 図14 ). 図14. ②. 変形 (メ タモ ルフ ォ ー ゼ) の面 白さ :. A) 形の変形 ・2つ 以 上 の モチ ー フの 造形 的 な 共通 点 を見 つ け, 変化 ・ 変 身さ せ て みる. (図15 ). 図15. ・変化すると意外なモチーフを見つける (驚きの創出/図16 ). 図16. 195.

(11) . 伊 藤 隆 介. ・ 「中割 り」 の 使用 (図17 ) 一 連 の 動 き の 中 でキー と なるイ メ ー ジをま ず 描 き (原 画), 次 に そ の 原 画 同士 の 中 間 のイ メ ー ジを. 描く (動画). さらに各動画間のイメージを描いて 「動き」 を埋めてゆく. 原. 画. 原. 原. 画. 画. ●●・■■X 中割 り(動 画). 中割 り(動 画) 図17. B) 色彩の変化 .12色 相 環 な ど, 色 彩 には相 互 の 関 連性 (同系 色, 補色, グラ デー シ ョ ンな ど) がある‐ 形 の みな ら ず, 色 彩 も 「動 かす」 こ と が できる. 例 : 「緑→ 赤」 の 変化 を 「緑 →黄 緑→ 黄→ オ レン ジ→ 赤」 と 中割 り して ゆく ③. 動 き の 「質 感」 や 「表情」. 動画で表現する 「動き」 の速さや遅さの操作により, モチーフの形態や重量, 動力, 性格付けを行う こ と が でき る. 例 え ば、 同 じ薄 い平 面 的な 形態 で あ っ て も, 木の葉 と皿 の 落下 で はその動 きや加 速 度 は 全く 違う. 人間の歩 き 方 を一つ と っ ても, 我々 は動 き か らそ れ が子 供 な の か老 人な の かを判 別 で きる. ま た, 同 じ対 象 の動 き にお いて も, 多く の物 は同速 で は運動 しな い. 例 え ば手巷 (ま り) の バ ウ ンス. では, 巷は落下するに連れ重力で加速していき, 地面から跳ね返った場合は逆に減速してゆき, 頂上付 近 で一 瞬静止 して 見 える. ま た 野 球の ピ ッ チ ャ ー の投 球 で は, ま ず素早 い腕 の 振り 上 げがあ り, 次 に-. 瞬の制止状態 (力をためる動き) があり, 腕を大きく振り降ろす. この振り降ろし自体も初速から段々 と 速く, 大き な動 き にな っ てゆく. 以上の よう に 「動 き」 には, 視 覚 的表現 と しての多 く の情 報 と 表現 の可 能 性 が 内包 さ れて いる. こ れ を生 かす た め に は, 日常 か ら事物 の 固有 の 性格 をと らえる 「観 察力」 が必要 に な っ てく る.. ④ 動きの循環 ま た, フ ェ ナキス ティ ス コー プの にお いて 「動 き」 を効 果 的 に生 み 出す に は, 円 板 状 であ る 特 性 を 意. 識させるべきである. 即ち, 各動画の画面が扇形であること, 円板の中心部と外周部では速さが違うこ とを意識して, 画面全体を使用すること. (学生による作品には, しばしば外周部のスリッ ト間のみを 使用 す る 例 が見 ら れる.) ま た, フ ェ ナ キス ティ ス コ ー プの動 画 の 「動 き」 は 回転 す る こ と によ っ て 得 られる の で, 動 画 もス ター ト地 点 (始 めの動 画) へ と形 や動 き を循 環さ せ て いく 工 夫も ある と 望ま しい‐. 2枚の動画を制作する場合, 最初の動画と形や色彩, 位置な どで最も差異のある画 は, 6枚目付近に配 1 置さ れる こ と になる. 以上 の動 き, とり わ け違う タイ プの動 きの 併用 が, 豊 か な 表現へ 結 びつ いて ゆく と い える.. 196.

(12) . 「映像メディア表現」 の教材開発 (1). ( ) 動画制作における問題解決 5 動画の画そのものを描く力にはそれほど違いがないが, 動きそのものを発想する力についてはその差が大 き い. そ の 場 合, 多 く の 受 講 生 か ら 聞 か れる の は, 「どう いう “落 ち” をつ けた ら い い か 思 いつ かな い」 と. いう感想である. この原因の一つに, 彼らが通常見なれている動画表現 (映像体験) の多くであるテレビア ニ メ ー シ ョ ン な ど 「物 語 構 造 (narrat ives l )」 の 作 品 で は, 「動 き」 そ の も の の 表現 は物 語 に 奉 仕 す t uture. る 要素 であ り, 「動 き」 自 体の 楽 しさ / 豊 かさ につ い て は意 識 して 鑑 賞 して い な いと いう 理 由 があ る. (ここ. に 「映像メ ディア表現」 における鑑賞教育の重要性という課題あるが, 他稿にゆずる. ) その場合, 例えば 「 以下のような具体的な問いかけを行い, 動き」 の表現そのものを自覚的に抽出させることが有効であろう. 教 師 「あ な た が好 き な ア ニメ ー シ ョ ン作 品 は何 です か ?」 生 徒 「映画 の 『魔 女 の 宅急 便』 です。」 教 師 「どんな シー ンが好 き ?」. 生徒「キキ(王人公. 職. じ 」乗って空を飛ぶ ぶ る力. 織. った. です.」 教 師 「飛ぶ シー ンも色々 あ っ た け れ ど、 み ん な 同 じ風 に飛 んで いた かな ?」 生徒 「自 分 で飛 ぶ シー ンはゆ っ たり と した動 き で, 友 だち を助 ける シー ンの. 飛 び方は直線的で緊張感がありました.」 教 師 「そ の 違 い は ど ん な 動 き の 表 現 で わ か る の ?」. ‐. 騨、. . . 図18. に 映像 や 連 続 写 真 の 影響 を 見 る こ と は容易 であ る. ま た 「変 形一 の 技 法 を 巧 ,. みに取り入れた. M ・ C・ エ ッ シ ャ ー (オ ラ ン ダ. /1898~1972年) の 版画作 品 「メ タ モ ル フォ ー シ ス □」 ( 1939~40年 / 図19 ) や, サ ル バ ドー ル・ ダリ (ス ペイ ン/1904~1989年) の 「記 憶 の持 続」. ( 19 31年) など, 超現実的な描写の作品は発想の 自由さを促すものといえる.. 券*. ・ 夢. . . ・ r. 券*. ー 乾 け 漬、 メ 爾 可. き. ー. 犠 噂趣. 図19. ( 6 ) 評価 フェナキスティスコープなど映像玩具の制作は, その遊戯性も手伝い, 学生の興味や学習意欲を引き出す 教材である. また他の課題と比較して, お互いの成果を 「見たい/見せたい」 という学生同士の鑑賞や交流 や自発的に行わせる求心力 も持っ ている. その反面, 「楽しかっ た」 という以外に学習成果が出ない可能性 もあ る. そ の理 由 は1. でも 上 げた 様 に, 従 来 「映像メ ディ ア 表現」 が 身近 で 受動 的 な 「娯 楽」 と して しか. 認識されてこなかっ たために, 分析的な鑑賞を行う 姿勢が培われてこなかっ たためである . そ の 改 善 の た め に は, 3. で上 げた 目標 をも と に 講評 や 評価 の基準 を明確 にする こと が重 要 であ る 本 , . 授 業 で は以下 に示 す通 り, 「構 成」 「色 彩」 と い っ た 一 般 的 な デザイ ン課 題 にお ける 評価 要素 に加 え 「動 き 」 ,. の表現を作り出す視点に重点をおいている.. 197.

(13) . 伊 藤 隆 介. ①. 動きの表現の豊さ. ② ③. 観察 (リアリティ) や, 発想の飛躍からくる面白さ (絵画的) 描写力, 構成力, 色彩感覚. ④. 作業・工作の完成度. 以下は, 実際の生徒 が制作した作品例である. ”1 : . さ れて いる 作 品. 円板の 画 面 が表現 ダイ ク ナミ ッ な動 き . 一. . . . 全 体 に動く 要 素 をち り ばめ, 有効 に活用 しいる, .. ー . こむ { ・ モ h h リ , . . .. 細部の描写に気を取られ, 動きに乏しい作品. 要素の数 やスリッ トの大きさな どの的確さにも欠ける.. 作例2. ●. 作例 3 :. , , ,. 立 体・ 半 立 体の要 素や, 材 料の テク ス チ ャ ー を生 か した. ゾ. 作品も可能である. ただし, この場合は各動画の重さが 一 定 しな け れ ば, 円板 が上 手く 回転 しな い場 合 がある.. . . . . . . 6. おわりに 本稿では 「映像メディア表現」 を学ぶ現段階の一つの方法として, 映像玩具を教材とした動画教育を取り 「 上 げた. しか し,「映像メ ディ ア 表現」 と はコミ ュ ニケー シ ョ ンの表 現手段 を 学 ぶ 領域 であ っ て, 映像 原 理」. を学ぶことが第一の目的であるわけでは, もちろんない. 重要なのは, 動画を描くことにより 「動く映像」. 198.

(14) . 「映像メディア表現」 の教材開発 (工). の仕 組 み の 理解 や 表現 の喜 びを 体験 し, さ ら に高 度な 「映像メ ディ ア 表現」 技術 への フィ ー ドバ ッ ク を可 能 にす る こ と であ る. コ ン ピ ュ ー タ な ど映 像機 器 は高 度 にな っ て ゆく が, ま ず 設備 あ り き で はなく, 表現 の 主 体 はあく ま で人 間 である か らである. そ れ は, かつ て はそ の 時代 のハイ テクノ ロ ジー であ っ た様々 な 映像装. 置の時代から変わらないであろう. 以 降の研 究 で は, 現 行 の 映像機 器を 使用 した ビ ジ ュ ア ル表現 / 言 語 と して の 「動く 映像 (mov i ngimage)」 の教 材 開 発 につ いて も 報告 して ゆく つ も りで あ る.. 引用・参考文献 ・小学校学習 指導要領, 第7節図画工作, 文部省, 1998年12月 ・中学校学習指導要領, 第6節美術, 文部省, 1998年12月. 9 ・高等学校学習指導要領, 第2章第7節芸術/第3草第1 2節美術, 文部省, 1 9 9年3月 ・小学校学習指導要 領解説-図画工作編-, 日文, 1999年 5月 ・中学校学習指導要領 (平成10年12月) 解説- 美術編 -, 開隆堂出版, 1999年9月. ・遠藤友麗, 「学校教育における 「映像メディア表現」 の意義と展開」 3巻3」 号, 財団法人日本視聴覚教育協会, , 視聴覚教育5 1999年 3 月 p. 12~15. ・川上春男, 『映像教育 論』, 法政大学出 版局, 1968年 『 ・マヤ・ デレン, 「カメ ラ は何を創 造する か」 , フィ ルム・ワーク ショッ プ』 (西嶋窓生編 ・ 訳), ダゲ レオ出 版, 1983年 『 ・平岡正昭, 「アニメ ー ショ ンにつ いて」 , 映像工夫館展テーマ2 /アニメ ー シ ョ ン』, 財団法 人東京都 文化振興会東京都写真 美術館, 1995年, p‐ 9~15 ・ C. W. ツ ェ ーラム, 『映画の考古学』 (月 尾嘉男 訳), フィ ルム アー ト社, 1977年 ・ ジョ ルジュ ・サ ドゥ ール, 『世界 映画全 史1』 (村 山匡 一 郎・出 口丈 人訳), 国書刊 行会, 1992年 ・日本アニメー シ ョ ン協 会・編, 『 12人の作家による アニメ ー シ ョ ンフィ ルム の作 り方』, 主婦と生活社, 1980年 ‐ Laybourne 2 i t 2 7 爺研ぎのzβoo左 shers工nc :1979 ・2%B A7 .Crown Publ . ・ ,Ki , Jew York. ・テ レビ番組 「課外授業 よう こそ先輩 /岩井 俊雄: パ ラ パ ラ漫画がアー トにな っ た! ! 」 , NHK 総合, 1998年10月 8日放映 ・テ レビ番組 「動画の科学」 , 科学技 術振興事業 団サイ エ ンス チ ャ ンネル, 2001年5月17日放映. (札幌校助教授). 199.

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参照

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