資源分配の原則と集団への帰属感
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(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(HumanitiesandSocialSciences)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 資源分配の原則と集団への帰属感. 今 在 慶一朗 北海道教育大学函館枚社会文化情報コース. RulesofDistributiveJusticeandGroupIdentification IMAZAIKei−ichiro. DepartmentofPsychology,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 要 旨. Deutsch(1975)は,人々が資源分配の公正さを判断する際に用いる原則として,衡平性,均等性,必要 性があることを指摘し,それぞれが,生産性を優先する集団,対人葛藤の回避を優先する集団,集団成員の 養育を優先する集団で基準となりやすいと予測した.本研究では,対人葛藤の回避と集団成員の養育といっ た目標は,集団に対する帰属感が強められるほど集団成員から重要視されると予測し,集団への帰属感と重 視される資源分配の原則の関係について検討した.家族,友人関係,職場,国・社会の4種類の集団におい て,帰属感の程度と重視する分配原則についてたずねる実験を行ったところ,回答者の帰属感が強かった家 族や友人関係においては,必要性原則や均等性原則が重視されやすく,相対的に帰属感が弱い職場において は衡平性原則が重視されやすいことが示された.さらに,国・社会については単一の優勢な分配原則は確認 されなかったが,国・社会に対する帰属感の促進に伴って,均等性原則,必要性原則が重視されることが確 認された.. Keywords:distributivejustice,grOupidentification,disparity.. 日本のジニ係数が,過去二十年間ほぼ一貫して. (宮島,1999;佐藤,2000)など,近年,日本に. 上昇を続けている(橘木,1998),あるいは,所. おける経済格差の拡大を指摘する主張がある.ま. 得の格差が教育機会や家庭内の‘文化資本’の再. た一方で,使用する変数によって算出されるジニ. 生産と結びついて社会の階層化を促進している. 係数は大きく変動することや1,もともと格差が. 1.大竹(2005)によれば,総務省の“家計調査”をもとに算出した2001年のジニ係数は.280であるが,厚生労働省の“所得 再分配調査”を基に算出した同年のジニ係数は.498である.前者の算出で使用する‘所得’には公的年金による収入が含ま れるのに対して,後者では含まれない(当初所得)ことによって,両者の差が生じる.. 11.
(3) 今 在 慶一朗. 広がりやすい高齢者の人口に占める割合が高く. 力’に基づいて成績をつけようとすれば,それは. なったことが格差拡大の要因であることを指摘. 努力という原則を重視していることになる((丑).. し,実質的にはそれほど階層化は進んでいないと. また,‘レポートの枚数’,あるいは,レポートを. いう主張もある(大竹,2005).. 作成する際に読んだ‘本の冊数’を判断材料とし. ところで,客観的な経済格差の大きさと,それ. て利用すれば,レポートの枚数,もしくは本の冊. に対する人々の公平・公正感は必ずしも比例関係. 数が実際の基準となる(②).そして,親にレポー. にあるわけではない.たとえば,所得の格差を見. トを手伝ってもらうような生徒がいれば,本の冊. るための資料として,ジニ係数や,横軸に収入の. 数やレポートの枚数などの基準を使っても,実際. 累積,縦軸に人口の累積をとったローレンツ曲線. には努力の量が測られていないことになるため,. が用いられるが,これらの資料は収入の偏在の程. 真に生徒の努力について考慮できるようにする必. 度を示すものであり,人々の労働の質や量の違い. 要がある(③).さらに,どのようなことを重視. が考慮されているわけではない.厳しい労働環境. するか,あらかじめ生徒と教師が話し合い,評価. で長時間作業した結果,多額の報酬を得る人と,. 方法について生徒が納得していれば,生徒は評価. 負担の軽い作業を短時間しか行わないため,小額. を適切と感じやすくなるであろう(④).. の報酬しかもらえない人がいる場合,ジニ係数や. このように,資源分配に対する公正感は,四つ. ローレンツ曲線は,人々の働きを考慮することな. の要素によって変化するとされるが,このうち①. く,彼らが最終的に得られた収入の格差のみを示. の分配原則は,その内容が他の要素の性質を決定. す.人々の所得格差に対する態度は,そのような. することになるため,実際に人々がどのような状. 結果としての格差だけでは決定されないであろ. 態を公正と感じるかを強く規定すると考えられ. う.人々の格差に対する適切さの評価は,結果と. る.Deutschによれば,分配的公正感を規定す. して生じる格差だけではなく,格差が生じた経緯. る原則は,衡平性,均等性,必要性,能力,努力,. や背景を考慮することによってはじめて定まると. 業績,競争における均等な機会,市場原理に基づ. 考えられる.. く需要と供給,公益性,互恵性,最低限度の保障. 本稿では,このような資源分配における人々の. の11種類に分類できるとされ,このうち,衡平性,. 適切さの評価,それに伴う感情,すなわち分配的. 均等性,必要性は最も一般的に利用される原則で. 公正感とその要因となる社会的条件について検討. ある.. する.. 衡平性(equity)は,集団への貢献に応じて報 酬としての資源を与える原則である.Adams. 分配的公正の下位原則. Deutsch(1975)によれば,資源分配に対する 人々の公正感は,①分配において重視する原則 (Deutsch自身は価値(value)という言葉を使. (1965)やWalster,Berscheid,&Walster(1976) は,投入する資源量(Input)とそれによって得 られる報酬としての資源量(Output)の比率が,. 人々の間で一貫している場合,人々は分配の結果. 用している),②実際に適用する基準,③重視す. を公正であると感じやすいと主張した2.なお,. る原則の実質的な確保,および④決定手続きに. この‘資源’には,金銭のような経済的な価値だ. よって変化する.Deutschは,学業成績を資源. けでなく,時間や労力なども含まれるが,その. と見なした場合の,教師が成績をつける際の生徒 の公正感を例として挙げている.ある教師が‘努. ‘量’はあくまで主観的なものである.. Deutschは,衡平性の原則は,以下のような理. 2.‘働きに応じて資源を受け取る’ことを数式に表そうとすると,式は一義的には決まらない.これは‘働きに応じて資源 を受け取る’ことが,実は多義的であることを意味しているといえる.詳しくは奥田(1994)を参照.. 12.
(4) 資源分配の原則と集団への帰属感. 由から,利潤追求を目的とする集団において最も. 等性の原則に基づけば,人々が受け取る資源量は. 利用されやすいと予測している.まず,集団全体. 一義的に決まるが,成長や困窮の解決を援助しよ. の視点からすると,限られた資源を投入して集団. うとする場合には,そのような原則は硬直的であ. の利益を獲得しようとする場合,効率よく利益を. り,援助を達成するためには有効でない.成長や. 発生させる事業や設備などに投資を集中させるべ. 困窮の解決に必要になる資源量は,事例ごとに異. きである.従って,集団成員の誰にどの程度の報. なるからである.こうした必要性の原則に基づく. 酬を与えるかを決める際にも,さらに多くの貢献. 資源分配は,因っている人や危険にさらされてい. を期待できる人物に対して他の成員よりも多くの. る他人を救わなければならないという集団成員と. 報酬を与えるようにすることが適切であるといえ. しての自然な義務感に基づいていると考えられる. る.同じことは,集団成員個人の視点からみても. が(RawIs,1971),とくに個人の成長や福祉を. あてはまる.自己利益を追求する人々は,最小限. 目的とする集団において重視されやすいと推測さ. の労力でできるだけ多くの報酬を得ようとするで. れる.. あろう.このため,自分よりも少ない労力で自分. と同じだけの報酬を得る他者がいれば,自分もそ の他者と同水準まで投入する労力を抑制し,他の. 分配原則と集団帰属. Deutschは,衡平性は生産性を,均等性は情緒. 活動に労力を投入して,それによる追加報酬を得. 的連帯を,必要性は養育を,それぞれ目的とする. た方がよい.このような理由から,Deutschは,. 集団で採用されやすいと予測したが,Leventhal. 衡平性の原則は,生産性を主要な目的とする集団. (1980)によれば,現実の資源分配では,人々は. で採用されやすいと予測している.. 均等性(equality)は,全ての集団成員に対し. 分配的公正の三つの原則のうち特定のひとつを採 用するのではなく,それらに重み付けを行い,折. て同量の資源を与える原則である.衡平性は,貢. 衷した基準に従って分配状態の公正さを感じると. 献に応じた報酬を与える原則であるが,そうした. される.確かに,職場組織のメンバーを例にとる. 原則は,集団成員のなかに格差をもたらすことに. と,初任給が一律で,業績に応じて昇給し,扶養. なる.このため,集団が衡平性を採用したことに. 家族を抱えると手当が支給されるような場合,均. よって,相対的に少量の資源しか得られなかった. 等性,衡平性,必要性が同時に考慮されているこ. 成員は,自己を価値の低い人間であると感じたり,. とになる.また,実力主義を強調する組織であれ. 他者をうらやんだりしやすい.また,貢献に対す. ば,三つの原則のうち,均等性や必要性を考慮し. る評価をめぐって成員間に葛藤が生じやすくな. ながらも衡平性がとくに重視されて給与額が決め. る.そこで,成員の養育や成長,もしくは娯楽を. られるであろうし,社会参加を通した成員の生き. 主要な目的とした連帯志向の集団では,格差に. 甲斐を追求する組織であれば,均等性が重視され. よって不愉快な感情が発生しないよう,全ての成. るであろう.. 員が等しく尊重されるような均等性の原則が採用 されやすいと推測される.. 必要性(need)は,集団成員の困窮の程度に. このような各原則に対する重み付けの違いは,. 人々の集団に対する帰属感の強さに応じて連続的 に変化すると考えられる.まず,衡平性について. 応じて援助としての資源を与える原則である.. は,他の成員との獲得資源量と投入資源量の比の. Deutschは必要性が適用される例として家庭内で. 比較であり,対人的な関心がなくても機能しうる. 病気になった子どもや病院の例を挙げている.家. 原則であることから,帰属感による影響は少ない. 庭内で病気を患った子どもは他の家族よりも手厚. と考えられる.実際,Leventhal,Michaels,&. い援助を受け,重病人は深刻ではない病人よりも. Sanford(1972)の実験によれば,被分配著聞,. 病院内できめ細かい注意が払われる.衡平性や均. あるいは分配者一被分配者間の葛藤回避を目的と. 13.
(5) 今 在 慶一朗. した場合,人々は衡平性原則を適用しにくくなる. ては,衡平性よりも均等性,必要性が重視されや. が,反対に葛藤を危惧しないよう求められた場合. すい.. には,人々が衡平性原則を適用しやすくなること. ただし,職場組織のように,人々が利害の追求. を明らかにしている.これは,集団内葛藤によっ. を当初の目的として集まった集団であっても,成. て集団凝集性が低下しても構わないと考える人々. 員間に情緒的な結びつきが生じれば,やはり均等. の場合,衡平性原則を利用しやすいことを示唆し. 性,必要性が重視されることになるであろう.. 仮説2 同じ集団内であっても,帰属感の促進. ている.. これに対して,均等性,必要性は,集団内の人. 間関係や他の成員に対する関心に基づく原則であ. によって,衡平性よりも均等性,必要性が重視さ れやすくなる.. る.集団内での成員同士の葛藤は,集団に所属す. 方 法. る成員にとって,不快であり,回避したい状態で あろう.均等性は,集団内で他者との葛藤を避け. 被験者. ようとする人々によって採用されやすい原則であ. ることから(Leventhal,Michaels,&Sanford,. 被験者は,大学生85名(女性46名,男性39名). で,平均年齢は19.96歳(5∂:1.21)であった.. 1972),所属集団の成員であり続けようと思う成 員ほど,集団内の対人葛藤を抑制するために,均. 手続き. 被験者は,大学の心理学の講義時間を使って実. 等原則を重視するであろう.. また,一般に,他者に対する援助行動は,被援. 験に参加した.実験は質問紙を使用して行われ,. 助者に対する視点取得によって促進されるといわ. 家族,友人関係,アルバイト先などの職場,日本. れるが(Coke,Batson,&McDavis,1978),人々. の国・社会のそれぞれについて,帰属感の強さ,. が他者の視点を取得する場合,外集団成員の視点. および,当該集団内で資源を分配する際に衡平性,. よりも内集団成員の視点を取得する方が容易であ. 均等性,必要性をどの程度重視するべきかを回答. ろう.従って,集団に対する帰属感が強い成員ほ. した.友人関係,職場については,特定の集団を. ど,他成員を同一視し,援助を目的とした必要性. ひとつ想起させ,その集団について回答させた.. 原則を重視するであろう. 尺度と質問項目. 帰属感の強さについては,各集団に対する好意. 本研究の目的と仮説. 本研究では,分配的公正の原則と集団帰属感の. の程度をその指標とし,‘その職場をどのくらい. 関係について検討するため,以下のような予測の. 好きですか’(職場に関する質問の例)とたずね. 下,仮説を検証した.. た.回答者は‘非常に好き’‘好き’‘どちらでも. 集団には,家族や友人グループ,職場組織,国 など様々な種類のものがある.集団の性質が異な れば,Deutschが予測したように,異なる分配. ない’‘嫌い’‘非常に嫌い’の5段階で回答し た. 分配的公正の原則については,回答者は,‘職. 的公正原則が適切とされるであろう.とくに家族. 場内で報酬額を決定する際,どのようなことを考. や,友人グループのように成員が情緒的に結びつ. 慮して欲しいと思いますか’(職場に関する質問. きやすい集団では,他の集団成員に対する関心が. の例)という教示を読んだ後,衡平性原則(‘職. 高まることから,葛藤の回避や,他成員の養育を. 場への貢献や実力が考慮される’),均等性原則(‘. 重視するようになり,衡平性よりも均等性,必要. 他の同僚と均等・平等にされる’),必要性原則(‘. 性が重視されやすいであろう.. 各々の事情や必要性が考慮される’)それぞれに. 仮説1 成員が帰属感を強めやすい集団におい. 14. ついて,‘非常に重要’‘やや重要’‘あまり重要.
(6) 資源分配の原則と集団への帰属感. でない’‘全然重要でない’の4段階で回答した.. 人々が必要性を重視していることが示された.均 等性と衡平性については,‘非常に重要’と回答. 結 果 帰属感の集団間比較 各集団に対する帰属感の強さを調べるために, ‘非常に好き’から‘非常に嫌い’までの回答に. した人数に差は見られなかったが,均等性につい て‘やや重要’とする回答者がやや多く,衡平性 について‘全然重要でない’と回答した者がやや 多かった.. 対して,5点から1点の得点を与え,平均値を算 Tablel 分配原則の重視度(家族). 出した.この結果,Figurelに示したように, 家族(〟=4.25,5∂=.69),友人(〟=4.35,. 非常に重要 やや重要. 5β=.76),職場(〟=3.62,5∂=.94)の平均. あまり 全然 重要でない 重要でない. 4. 27. 40. 13. 5%. 32%. 48%. 15%. 4. 34. 38. 8. といえる.これに対して,国・社会(〟=3.28,. 5%. 40%. 45%. 10%. 5月=.63)の回答は,‘どちらでもない’に集中. 36. 35. 11. 2. 43%. 42%. 13%. 2%. 値はほぼ4点で,標準偏差の値がいずれも1未満 であることから,回答は‘好き’に集中していた. していたといえる.. 友人関係については,Table2に示すように, 均等性が最も重視され,‘非常に重要’と回答し た者が過半数を占めた.また,衡平性については, 過半数の回答者が‘やや重要’と答えていたが,. 必要性については,‘やや重要’と‘あまり重要 でない’に回答が分散した.. Table 2 分配原則の重視度(友人) 非常に重要 やや重要. Figurel帰属感の集I寸1別平均値 各集団の平均値の差を見るために,分散分析を 行ったところ,集団閻の違いに主効果が確認され たため(ダ(2.50,25.16)=41.39,♪<.01),多 重比較を行った.この結果,家族と友人について. あまり 全然 重要でない 重要でない. 10. 53. 19. 11.8%. 62.4%. 22.4%. 3. 3.5%. 48. 32. 56.5%. 37.6%. 10. 32. 32. 11. 11.8%. 37.6%. 37.6%. 12.9%. 4. 1. 4.7%. 1.2%. は差が見られなかったが,職場と凶・社会の平均 値については5%水準で,その他の平均値に関し. 職場集団については,Table3に示すように,. ては1%水準で有意な差があることが確認され. 衡平性が最も重視され,‘非常に重安’‘やや重. た.. 要’が回答の9割を占めた.均等性と必要性を比 較すると,‘非常に重要’‘やや重要’と回答した. 分配原則の集団内比較. 集団ごとに重視されやすい分配原則について分 析を行った.Tablelに示すように,家族内では,. 者は均等性で多く,‘あまり重要でない’‘全然重. 要でない’と回答した者は必要性で多く確認され た.. ‘非常に重要’‘やや重要’をあわせて85%の. 15.
(7) 今 在 慶一朗. Table 3 分配原則の重視度(職場) 非常に重要 やや重要. Table 5 帰属感と分配原則の相関 衝平. あまり 全然 重要でない 重要でない. 36. 37. 43.9%. 45.1%. 15. 30. 28. 18.3%. 36.6%. 34.1%. 11.0%. 13. 26. 33. 10. 15.9%. 31.7%. 40.2%. 12.2%. 9. 均等. 必要 .00. 家. 族. −.14. .07. 友. 人. −.16. .27*. 0. 11.0%. 0.0%. 職. 9. 場. 国・社会. −.08. .20†. .01. .10. .02. .20†. .23*. 坤<.05;†♪<.10. 考 察 分配原則の集団間比較. 国・社会については,Table4に示すように,. 各集団に対する帰属感の強さを比較した結果,. いずれの原則についても‘やや重要’と回答した. 被験者は,家族と友人関係に対して最も自己を帰. ものが最も多かった.ただし,他の原則と比較し. 属しやすく,次いで職場集団に対して帰属しやす. て均等性を‘あまり重要でない’と回答した者が. く,国・社会に対しては,否定的な反応ではない. 多かったのに対し,必要性と衡平性については,. ものの,相対的に最も帰属しにくいことが示され た.. ‘非常に重要’‘やや重要’をあわせた肯定的な. 回答全体についてみると,9割前後の回答者が両. 集団ごとに重視する分配原則についてみると,. 家族においては必要性が,友人関係においては均. 原則を重視していることが示された.. 等性が,職場においては衡平性が,最も重視され Table 4 分配原則の重視度(国・社会) 非常に重要 やや重要. あまり 全然 重要でない 重要でない. 33. 42. 10. 38.8%. 49.4%. 11.8%. 23. 35. 25. 27.1%. 41.2%. 29.4%. 34. 45. 40.0%. 52.9%. ていた.これはDeutschの予測と一致している.. 団については過半数の被験者が「あまり重要でな. 0. 0.0% 2. 2.4%. 6. 7.1%. これに対して,国・社会についてみると,他の集. 0. 0.0%. い」「全然重要でない」と回答した原則が少なく. ともひとつは存在していたが,国・社会について はそのように重視されにくい原則は確認されな かった.これは,人々が国・社会については,必 要性と衡平性を特に重視しやすいものの,3つの 原則いずれもが重要であると考えやすいことを示. 帰属感と分配原則の相関. 帰属感と3つの分配原則の関係について調べる. 唆している.以上のことから,帰属感の得点が高. かった家族と友人関係では,それぞれ必要性と均. ため,帰属感の強さと各分配原則を重視する程度. 等性が重視され,相対的に帰属感の得点が低かっ. の相関係数を算出した.Table5に示したように,. た職場では,衡平性が重視されたことから,これ. 家族に関しては,有意な相関関係は確認されな. ら3集団に関しては,仮説1が支持されたといえ. かった.友人関係に関しては,帰属感と均等性に. る.. ついて有意な弱い相関関係が確認された.職場組. ただし,最も帰属感の得点が低かった国・社会. 織においては,帰属感と衡平性の相関関係に有意. において必要性が重視されたことは仮説と一致し. な傾向があることが確認された.国・社会におい. ない結果である.国・社会に関しては,国はいわ. ては,帰属感と必要性について有意な弱い相関関. ゆる‘夜警国家’としての機能だけでは不十分で. 係が確認され,帰属感と均等性の相関関係に有意. あり,社会保障を充実すべきであるという考え方. な傾向があることが確認された.. や,社会に対して人々が情緒的に結びついた共同 体としての性質を求める意見が反映されているの. 16.
(8) 資源分配の原則と集団への帰属感. かもしれない.. さらに,帰属感の得点が同水準であった家族と. 性の相関値は有意であると確認されたことから,. 仮説2がほぼ支持されたといえる.これらの結果. 友人関係において重視された原則に違いがあった. から,家族や友人関係,職場に関しては,集団の. ことについても,帰属感という単一の要因によっ. 性質と分配原則の関係が固定的であるのに対し. ては説明しにくいことを示唆している.均等性も. て,国・社会に関しては,人々の国や社会に対す. 必要性も,集団内の他者に対する関心がなければ. る帰属感の強さに応じて重視される分配原則は変. 重視されない原則であると考えられるが,集団へ. 化しうると考えられる.また,相関係数の値の差. の帰属によって他者への関心が高められたとして. は決して大きくはなかったが,帰属感と必要性の. も,人々は所属する集団の性質に応じて,他者へ. 係数の方が帰属感と均等性の係数よりも大きかっ. の関心のうち異なる点を重視するようになると考. たことから,帰属感が促進されることによって均. えられる.家族内で一時的に葛藤状態が発生して. 等性よりも必要性がより重視されやすくなること. も,それによって葛藤当事者同士の親族関係が解. が示唆された.さらに,有意でなかった結果を積. 消されることはないであろう.これに対して,友. 極的に解釈することはできないが,帰属感と衡平. 人関係においては,一回の葛藤によって当事者同. 性に関して相関関係は確認されなかったことか. 士の関係が悪化し,修復が困難になることもまれ. ら,均等性や必要性に比較して,衡平性を重視す. ではないであろうし,同じ住まいで生活する家族. る態度に変化は生じにくい可能性もあると考えら. のように,他の成員に必然的に接触することはな. れる.. いため,関係を修復する機会も少ないといえる.. 国・社会において単一の重視されやすい分配原. このため,友人関係においては,家族以上に葛藤. 則がなかったこと,また,帰属感の強さによって. を回避する必要があるため,必要性よりも均等性. 重視される分配原則が変化しやすいことを併せて. が重視されやすいと考えられる.また,家族は友. 考えると,国・社会は,家族や友人関係,職場な. 人関係と異なり,成員同士の養育や介護を目的と. どとは異なり,人々にとって多義的な意味を持っ. して共同生活する集団であるため,均等性よりも. ている,あるいは,人々が期待する役割が変化し. 必要性が重視されやすいと考えられる.. やすい性質を持っている集団であるのかもしれな い.国や社会のあり方については,‘大きな政府’,. 帰属感の促進による分配原則への効果. 集団別にみて,帰属感と分配原則の相関係数に. ‘社会主義’,‘福祉国家’といった雇用や社会保. 障を通じた国民の保護を重視する考え方と,‘小. ついては,全体的に一貫した傾向は見られなかっ. さな政府’,‘資本主義’,‘自由主義’といった整. た.このことから,帰属感の促進によって均等性,. 備されたルールに基づく自由競争の保障を重視す. および必要性が重視されやすくなるとした仮説2. る考え方のいずれを優先すべきかがしばしば論じ. は支持されなかった.とくに,友人関係では帰属. られる.このような議論を,資源分配という観点. 感と均等性の関係が有意とされ,職場では帰属感. から捉えれば,国民の保護を優先することは必要. と衡平性の関係に有意な傾向があることが確認さ. 性原則の重視に,自由競争の保障を優先すること. れたことから,帰属感の促進によって,分配原則. は衡平性原則重視に相当するといえる.また,近. は集団の性質に関係なく一律に変化するというよ. 年の経済格差拡大に関する主張には,社会階層が. りも,集団の性質に応じて重視されやすい分配原. 固定化することへの批判が込められており,格差. 則が,一層重視されやすくなることが示唆された. 是正を訴えることは均等性原則重視に相当すると. といえる.. いえる.こうした複数の主張について,一般的,. ただし,国・社会に関しては,帰属感と均等性 の相関備には有意な傾向が,また,帰属感と必要. 包括的に優劣をつけることはできないが,それだ けに,国・社会のあり方を論じる際には,家族,. 17.
(9) 今 在 慶一朗. 友人関係,職場のあり方を論じる場合とは異なり, 複数の分配原則が機能しやすいといえよう.. 島鈎次(監訳)(1979).正義論 紀伊国屋書店) 佐藤俊樹(2000).不平等社会日本 さよなら給中流 中. 公新書 橘木俊詔(1998).日本の経済格差一所待と資産から まとめ. 考える一岩波新書. 人々は,家族と友人関係のどちらに対しても自 己を帰属しやすいが,集団の性質の違いから,重. 視する分配原則については差があり,家族におい. Walster,E.,Berscheid,e.,&Walster,G.W.(1976).New directionsin equity research.Advancesin Ex− ♪gγオ∽ゼ〃ねJ50Cオ〟7月町Cノわわ幻′,9,1−12.. ては必要性が,友人関係においては均等性が重視 されやすい.また,家族や友人関係と比較して,. 相対的に自己を帰属しにくい職場においては,衡 平性が重視されやすい.国・社会については,他. の集団のように,一種類の優勢な分配原則は存在 しないが,人々は衡平性を重視しつつ,国・社会 への帰属感を強めるに従って,均等性,および必 要性を重視するようになる.. 引用文献. Adams,J.S.(1965).Inequityinsocialexchange.Advan− Cg∫オ〃且ゆゼカ∽g〃由J5∂Cオ〟J旦びCゐ∂J噌ツ,2,267−299.. Coke,J.S.,Batson,C.D.,&McDavis,K.(1978). Empathicmediationofhelping:Atwo−StagemOdel. ノ「川r〃〟/「イ凸・/・ふ〃〃〃/小(川(Jバーけ′(J/八■l・(、/川/rJ藍l・.諏. 752−766.. Deutsch,M.(1975).Equity,equality,andneed:What determines which value will be used as the basis of. distributivejustice?JournalofSocialhsues,31, 137−149.. Leventhal,G.S.,Michaels,J.W.,&Sanford,C.(1972). Inequityandinterpersonalconflict:RewardAlloca−. tionandsecrecyaboutrewardasmethodsofpre− Ventingconflict.JournalofPersonalityandSocia1 月汐Cノわわg)′,23,88−102.. Leventhal,G.S.(1980).Whatshouldbedonewithequi−. tytheory?NewapproachestothestudyofFairness in socialrelationships.In K.J.Gergen,M.S.Green− berg,&R.H.Wills(Eds.)Socialexchangt?:Advances ダガfゐゼ∂り′α乃d柁∫gβγC九pp.27−55.. 宮島 喬(1999).文化と不平等 社会学的アプローチ 有斐閣 大竹文雄(2005).日本の不平等 格差社会の幻想と未来. 日本経済新聞社 奥田秀幸(1994).社会的交換における不公正感の定量モ. デル.社会心理学研究10,1−10. RawIs,J.(1971).Atheo7Tq/justice.(ロールズ,J.矢. 18. (函館校助教授).
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