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アイヌ文化教材化の要点について(2) : 本学学生による「未開」イメージの変化とその問題点に関して

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(1)Title. アイヌ文化教材化の要点について(2) : 本学学生による「未開」イメー ジの変化とその問題点に関して. Author(s). 百瀬, 響. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 65(1): 45-54. Issue Date. 2014-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7548. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 5巻 第 1号 J o u r n a lo fH o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n lVo . l6 5,No. l. 平成 2 6年 8 月. Augus . t2 0 1 4. アイヌ文化教材化の要点について ( 2 ) 本学学生による「未開」イメージの変化とその問題点に関して. 百瀬. 響. 北海道教育大学札幌校文化人類学研究室. A Studyont h eE s s e n t i a l so ft h eAinuC u l t u r ea st h eTeachingM a t e r i a l s( 2 ) - Aboutt h eProblemsw i t ht h eC u r r e n tChangeo fS t u d e n t s '" U n c i v i l i z e d "Image-. MOMOSEH i b i k i C u l t u r a lA n t h r o p o l o g yL a b o r a t o r y,Departmento fE d u c a t i o n,S a p p o r oCampus,H o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n. 概要 本稿では,現在,北海道教育大学の学生が,アイヌ文化に対して抱いている既存イメージが 変化しつつある状況を示しその形成過程を分析することによって,その問題点を明確化しよ うと試みる。前稿でも指摘したように,「アイヌ丈化の未開性」認識の「根拠」は,多分に, 同文化が縄文時代との強い継続性を持つというイメージに依拠している。このような不正確な 「未開」イメージの形成を忌避する方策として,前稿では北海道独自の文化区分,すなわち縄 文文化からアイヌ文化に至るまでの考古学・歴史学的知識教授の必要性を論じた。これらの知 識に加え,どのような知識の「運用」が既存イメージの形成に対して学生各自の考察を促すこ とにつながるのか。高等教育における役割を果たし得る方策を探る上で,本学の学生の対アイ ヌイメージを紹介・分析し,アイヌ文化を理解し教材化するための知識習得上の問題点につい て,考察する。. はじめに 本稿で紹介する学生の対アイヌ文化イメージは,北海道教育大学札幌校において,筆者が担当した北方丈 化論での調査結果に基づいている。 2 0 1 3年度に開講した北方文化論では,例年の約 3倍近い学生が受講した 10 これは,教員免許取得科目と重複していた同講義が,カリキュラムの変更により受講可能になったことなど が,その要因と考えられる。この受講生急増を受け,授業の初期に既習項目に関する調査を行ったが,北海 " 知 道出身の学生が大多数を占めるにもかかわらず,その結果は,アイヌ文化に関する知識は「覚えていない J1. 45.

(3) 百. j 頼 響. らない」との回答が大部分であった。すなわち受講生の一般的傾向として,アイヌ丈化に関して既習はして いるもののあまり興味を持っているわけではなく,これまでの授業などでアイヌ丈化について積極的に調べ た経験のない学生が大部分を占めることがわかったえ 加えてこの調査では,アイヌに対する「未聞」イメージが,他の先住民文化や歴史と混同される傾向が強 まり,かつより現実と希離したイメージへと変化しつつあることが予想される結果となった。以下ではまず, 学生によるアイヌ丈化に関する知識のあり方を示す上で,そのイメージの現状を紹介し,特徴を分析する。. 1.アイヌ文化に関する知識およびイメージの現状 ( 1 ) 質問内容と各回答率 北方丈化論における学生への質問内容は,北海道の文化に関する既習項目を確認するものであった。具体 的にはアイヌ文化以前の先史文化とその後のアイヌ丈化に関し,時代区分とその特徴を書くというものであ る 。 A4用紙 1枚を配布して,これらの内容について自由に記すという,おおまかなものである。質問項目 は以下の 3点であったえ ①. 縄文文化からアイヌ文化までの時代区分を記す. ②. ①の答えを書いた人は,それぞれの特徴を記す. ③. アイヌ丈化の特徴を記す. ( ③ ,. Iアイヌ丈化とはどのような丈化と思うか」を書く). ここで③'について説明する。回答時間中,机間巡視して確認したところ,特に③の質問項目について, 大部分の学生が白紙のままであり,その間,質問事項に関し,「覚えていない J I何も書けない」との声が多 くあがった。そのため③'の質問を新たに設け,正誤は問わないので,アイヌ文化に関して知っている知識 を書くように伝えた。その上で「どうしても何も書くことができない」という学生に対しては,「どのよう な文化と思うか」という何らかのイメージを書く形でも構わないと指示した。 その結果,③または③'については全員から回答を得た。一方,①および②の回答率は以下のような結果. 2名である。 となった。なお,当日の提出者は 8 ①. 回答率. 28.0%. 縄文時代からアイヌ文化にいたるまでの時代については,北海道独自の文化区分であることを事前にアナ ウンスしている。総数回名のうち,①について記述があったのはお名であり,全員が北海道出身の学生であ る。正答者は 3名(うち 2名は筆者の研究室の指導学生)で,正答率は 3.7%となった。この正答率につい ては,前稿でも記したように,例年とほぼ同様である。. 5名(回答者の 65.2%。以下,カッコ内 各時代区分について指摘があったのは,「続縄文文化」の記述が 1 1名 ( 4 7 . 8 % ),擦文文化 6名 ( 2 6 . 1 % ) であった。 は回答数に対する割合を示す),オホーツク文化 1 他に,縄文丈化から弥生文化を経てアイヌ丈化に至る,と回答した学生は,. 5名 ( 2 1 . 7 % ) であった(表. 1。 ). ②. 回答率. 15.9%. 1 3名が回答した。回答率は全体で 15.9% (①に何等かの回答を記した者では 56.5%)であった。その他は, 無回答ないし「わからない」と記述している。 内容については,正解で、はなかったものの,擦丈土器の形態に関する記述があった。最も多いのは生業に 関する記述で,狩猟採集の他に,非定住的であることが指摘されている。また,オホーツク丈化の特徴とし て漁労(魚、の骨など)をあげる例もみられた 40 縄文時代以後に弥生時代が続くと記した学生を除き,それ以降の文化では,「北海道では稲作が発達しな. 46.

(4) アイヌ文化教材化の要点について ( 2 ). かったノできなかった」ことが指摘されているが,やはり例年と同様,「本州からの稲作が伝わらず,その まま縄文文化を発展させた」との記述がみられた。. ( 2 ) 縄文文化からアイヌ文化に至る文化編年理解のパ. 表 1 学生による文化編年理解のパターン. ターン. 文化編年理解の種類. 人数. 続縄文文化ーオホーツク文化一擦文文化. 3. 続縄文文化擦文丈化貝塚文化 続縄文文化ーオホーツク文化. 1. 続縄文文化擦文文化 擦文文化ーオホーツク文化. 1 5. と記されている例がある。恐らくこれは教科書などでア. 続縄文丈化 オホーツク文化. 2. イヌ丈化と併記されている,沖縄の文化編年と混同した. 弥生. 5. 縄丈丈化からアイヌ文化に至るまでの文化編年に関し ては,様々なパターンがみられる。表 1に記したように, 正答である「続縄文文化ーオホーツク文化一擦文文化」 と回答したのは 3名であり,他に,. 3種類の文化名をあ. げているものでは「続縄文文化一擦文文化一貝塚文化」. 5. 1. 結果ではないかと考えられる。 次に縄文文化とアイヌ文化の聞に 2つの文化名をあげている例では,「続縄文文化ーオホーツク丈イ七」が 最も多く,これに反して「擦文文化」の名称をあげる例は少なかった。. 2名と最も多く,①の回答率の項でも記したよう 文化名を 1つのみあげている例は,他のパターンに比べ 1 に,「続縄文文化が一番学生の記憶に定着しているようである。一方,「擦文文化」の指摘は皆無であった。 また,アイヌ丈化以前に,「弥生文化」が存在するとした学生は,. 5名であった。同じ「先史時代」の丈. 化という類推から記したのかもしれないが,北海道の文化の特徴である,「寒冷な気候のため,米作が出来 なかった」という条件が無視されている。. ( 3 ) 地域学習に関する認識. 以上の結果から,「続縄文丈化 J 1"オホーツク文化」に比べると,「擦丈丈イヒ」の認知度が低いことがわかっ た。また,正答率をみると,学生の先史時代の北海道の文化に関する知識は,やはり希薄であると判断せざ るを得ない状況となっている。しかしながらここで注意を要するのは,回答者は全員が北海道出身者という 点である。すなわち小学校の副読本など,全員が何らかの形で,これまで居住地域の文化についての学習を 習得していると考えられる。 したがって,「弥生文化」をあげた学生についても,北海道独自の文化に関する知識がないわけではなく, 単にこれまで学習した本州の文化編年に依拠して回答した結果,「縄文一弥生一アイヌ丈イ七」と回答した可 能性が考えられる。実際,講義において,個々人に確認した場合には,これらの時代区分について「聞いた ことがある」あるいは「そういえば習ったことがある」等の答えが返ってくることが多い。このような経験 から鑑みると,従前の地域学習が日本史の知識に位置づけられておらず,本調査の答えとして認識されてい ない可能性も大きいと考えられる。. 2 . アイヌ文化に関する既成イメージ ( 1 ) 既成イメージのパターン. 質問の③の回答において,学生から提示されたイメージは,大別して次の二点であった。第一点としてあ げられるのは,これまでと同様,アイヌ文化(この場合は縄文文化も含むと予想される)に関して,「未開」 や「野蛮」という単語が用いられている点である。二点目は,日本人によるアイヌへの歴史上の不平等であ. 4 7.

(5) 百瀬. 響. る。加えて,江戸時代あるいは明治時代(ないし屯田兵)に「虐殺された」ことが, 一部の学生によって歴 史的事実と捉えられている現状が判明した。この点は,従来にはみられなかった回答である。 具体的な回答内容としては,アイヌは I~ヒ海道の先住民」であり,「特有の」ないし「独特の」言語(地. 名を含む),芸術(踊り,歌,楽器,木工),生活(衣食住,衣装の特徴や文様などを含む)を持つと指摘さ れたほか,生業(狩猟採集や食物・特定の動物との関わり)とそれに関連する「自然との共存」を含めた宗 教観などがあげられている。また,コシャマインやシャクシャインなどの歴史上の人物,本州との関係性(対 立や差別,孤立)などがあった。他に「白老のポロトコタン」や「北海道開拓記念館」など,博物館名があ げられる例や,「顔の彫りが深い/顔が濃い」という身体的特徴の指摘もみられた。 次に指摘の多い上位 7項目について, I } 買にその総計 を示すと,アイヌ語 87,踊り・芸能(儀式での踊りを 含む) 60,衣服 57,宗教(アニミズム。「精霊コロボックル」という理解が示 されていたので,便宜上この 項目に含めた) 35,和人との関係 35,生業(狩猟・漁労) 34,自然との共生 32となっている 。図 1は,出身 地・性別ごとの傾向を示したものである。. 出身地・性別{回答数) 進外(女):61. I. 道外(男 ):6. I. 7. 10. 5. 2. 2. 道内{女):加 │ 道内(男):凶 │. 。%. 10%. 20%. 30%. 40%. 50%. 60%. 7 0%. 80%. 90%. 100%. ロアイヌ語ロ衣服ロ狩り・漁ロ宗教ロ自然と共生口和人との関係ロ踊り・芸術ロその他 図 1 主な回答項目と出身地・性別(出身地・性別の横の数字は回答数の総数を 示す). アイヌ語,衣服および踊り・芸能(儀式での踊りを含む)が上位 3項目となるが,踊りについては,道外 出身者による指摘はなかった。道外出身者男子では,他にも 言及がみられない項目がいくつかあるが,回答 数が極端に少ないことから,その傾向を判断することは難しい。道外出身者(女子)の傾向として,衣服や 生業(狩猟・漁労)および自然との共生に関する指摘の割合が大きいことがあげられる。アイヌの衣装や北 海道の自然が,主要なアイヌイメージとして持たれているのかもしれない。 一方,道外出身者と比較してその割合が明らかに異なるのは,道内出身者において,「和人との関係」の 割合が多いことである。社会科などでの学習経験の他にも,受講した学生の年代が, (公)アイヌ文化研究 推進センター・北海道アイヌ協会の編集による『アイヌ民族:歴史と現在. 未来を共に生きるために」 を小. 学校ないしは中学校で副読本として使用していることから,その影響も予想される 。. ( 2 ) 各イメージの概要. ①. 言. 語. アイヌ語の存在と北海道の地名がアイヌ語由来であるという指摘が最も多かった。学生自身が知っている 単語をいくつか示していたほか,スポーツチーム名の「レラカムイ J Iレパンガ」などもあげられている 50 アイヌ語が文字を持たないことや,口頭伝承を持つことや「アイヌ語ラジ、オ講座」の記述もあった。. ②. 芸術(踊り,歌,楽器,木工など). 「アイヌ民族特有の言語,踊り,歌,楽器,格好」という回答があったように,踊り,歌,楽器(ムック. 4 8.

(6) アイヌ文化教材化の要点について ( 2 ). リ),木彫りなどの木工品,丈様,衣装に見られる刺繍が指摘されている(なお,便宜上衣服や刺繍は,後 述の生活の項目で示す)。 " ム ッ 踊りについては,「踊りが好き」という表現から,「楽器があって,アイヌ特有の歌や踊りがある J 1 クリを奏でたり,踊ったりしながら,昔話等を語り継ぐ」等の回答があった。また,「火のまわりで踊る(祭 り ?)J 1"熊を使った儀式等や踊りもある J 1"呪術的:踊り,祈り」といった宗教との関連を指摘する例もみ られた。 図 1は火の回りを踊る,輪舞の図を描いたものである。「テレビで見たイメージ」と記されているように, この図は,テレビで紹介された儀礼などの映像を元に描かれたものなのであろう。このような図は,従前, 筆者が担当したアイヌ文化や北方文化に関する授業の中でも,何度も描かれてきた類のもので,アイヌ文化 に関する典型的なイメージの一つでもある。 他にも,「毎日踊っている J 1"舞いなどの儀式が多く,初めて踊った人でも一緒に踊れば,健康でいられる. テLどず E 存 イl μソ. など様々な言い伝えがある」というような,観光地等で聞き及 んだ知識ではないかと思われるものもあった。 音楽や楽器については,「儀式と結びついた音楽 J 1"歌とか踊. J r. i. 内. J. りが印象的 J,あるいは昨今の風潮を受けて,「ポップな音楽」 「アーティスティックな感じ」などの,現代風にアレンジされ た若手アーテイストの作品を指すと考えられる指摘もあった。 一方,楽器について指摘があったのは,ムックリのみであった。 さらに「独得な手工芸品」として,「木の彫刻 J 1"木彫りが得 意 ?J 1"木工品が多い文イヒ」などがあげられている。他にも,「丸. ラ メ ラ 中 fJ~\ f 図 2 踊り(輪舞)のイメージ. ③. 木舟」や「木や石でつくった道具をつかう」などの回答があっ たが,その一方で鉄器に関する言及は皆無であった。. 生活(衣食住). 衣服については,「刺繍がすごい J1"服にアイヌ独特の刺繍がほどこされていた J1"衣類などに独特な模様(刺 繍) Jがあるというように,衣装および刺繍やその文様が指摘されている。「織物」と記した例が多かったが, 同時に「染め物 J 1"藍染め」というように,従来のアイヌ文化では行われていない技術も記されている。こ れについては,一部に観光施設での藍染め体験を記した例が見られたことから,観光施設等での体験学習の 記憶と混同されている可能性も考えらえる。 やはり衣服について詳しく書いた例では,「アットゥシ織という,独得な刺繍の入った服を着る。その刺 繍は,模様ごとに魔除けなどの意味が込められている」というものもあったが,このように,一部不正確な 部分がある知識が散見された 60 それ以外では,「鮭皮製の靴J (半数は「鮭皮製衣服」であった。しかしながら近代には,鮭皮製衣服が北 海道アイヌではほとんど見られなかったといい 7,博物館に現存しているものは樺太アイヌの衣服である), 「寒さ対策」など寒冷地であることへの言及に加え,「毛皮」があり,「熊?の毛皮をとってきているイメー " 羽 み ジ、」あるいは,「クマの毛皮が好き」以外に,「毛皮を着てそう J 1"服がモコモコ J 1"モフモフの帽子 J 1 たいなのがついてる感じ」などがあった。 " 羽 」 図 3については,そのようなコメントは付されていなかったが,まさに上記のイメージである「毛皮 J1 と「モフモフ」の帽子や「モコモコ」の服を表しているようにみえる。恐らくはイヌイットなど,他の北方 少数民族の衣装や文化に対する知識の一部,あるいはイメージとの混同の産物と予想されるが,このような. 49.

(7) υ. ア. j 頼. 響. イメージは,筆者の担当する授業では, やはり従来みられなかったも のである。 特に注意を要するのは,腰につけられている腰みの状の物体である が,この葉のような形は,他の例でも 3点見受けられた 8。なお,図. パV1. fJfdJVA. Hy!i. vul. //υd. 3の人物が手に持つ木の枝と思われる棒とこの「腰みの状物体」に関 しては後述する。 食に関しては,「動物を食べてそう J1"動物や魚など狩りで、食料確保」 などの記述があり,「熊と鮭」という指摘が多かった。特に鮭につい ては,「主食は鮭 J 1"鮭,メッチャ食う J 1"鮭が好き」に続き,「鮭の 壊 d. 製をつくっていた J1"保存食に鮭干してるイメージがあります J1"魚(鮭 など)の干し物が干しである J,あるいは,「冬は作物などがとれない ので,干した魚などを食べたりして冬を堪えていた」とあることから,. 図 3 羽と毛皮をつけた人物. 博物館や観光施設などで実際に見聞した経験を書いているのではない かと思われる記述が散見された。. 数名が「鮭が主食」という記述をしていたが,どこから得た知識かは不明である。また動物に関しては, 北海道に生息しない猪をあげた者が 2名いた。それに反して,主要な食料であった鹿に関する記述は,皆無 であった。食に関しては生業との関連も強いため,次項でもいくつか紹介する。 住居については,「チセ」という名前や図解が多く示されていたが,中には「ワラのような住居」という ように,カヤではなく,「ワラ」を利用していると勘違いしている例もみられた。他に,例えば「川などの 水場と山がある地形に定住」というような,定住性に関する指摘もあったえ ④. 生. 業. 生業に関しては,狩猟採集,漁業,弓の使用,毛皮などのイメージが中心に述べられていた。例をあげる と,「稲作ではなく,採集,漁を中心に生活 J 1"狩り(漁業・採集)をして生活している J 1"動物や魚など狩 りで、食料確保J,さらに,「必要最低限の狩りしかしない J 1"必要なものだけを採集する」と,アイヌ丈化の 鮭J 1 " 熊 , 美徳としての性質を記す例がみられた。他に狩猟・漁労との関連から,③と重複する例として, 「 毛皮!J のような,紋切型表現が散見された。. " ' 教 ⑤ ブ 刀 三 アイヌの宗教観に関しては,アニミズム,熊送り儀礼,「イヨマンテ J,熊(神),しまふくろう,儀礼と火・ 踊りなどのイメージの他に,「精霊コロボックル」などと記されている例もあった。ここでは,自然との共 生や未開観との相関性を考察する上で,具体例を大きく 3種類に分けて記述する。. a . アニミズムの解釈 アニミズムの宗教観については,次のような理解がなされている 0 ・いろんな神様を信じている(自然の) -独自のアイヌ語を持ち,自然の生物や現象には神が宿ると考える ・神(カムイ)をあがめ,もの一つ一つに魂がこもっているという考え方 このように,アニミズムを「自然(ないし自然現象) J を対象とし,それらが「魂」を持っており,神 として信仰されていると説明している。他にも「八百万の神」や崇拝対象が自然以外に器物も対象になる という指摘が,わず、かで、あるが存在した。 旬. hu. 自然への信仰心と態度 さらに信仰心に触れ,神に感謝し,神を大切することが, その特徴として記されている。 このような信. 5 0.

(8) アイヌ文化教材化の要点について ( 2 ). 仰のあり方は,他の宗教でも同様であるが,神が自然とほぼ同義語との解釈から,学生は特にアイヌの宗 教観の特徴としてあげていると考えられる。 -神に感謝する .神などの存在を大切にしている -自然などに神(カムイ)が宿っていると考え,感謝を忘れずに過ごしている ・動植物などに敬意をこめて名前の最後に「カムイ」をつける -熊が神さま?←教科書に熊が主役のお祭りの写真が載ってた -自然界の色々なものを神様として大切あつかうので,無駄な殺生などはしない C.. 自然と命の尊重の解釈. 自然への「感謝」や「敬意」のあり方の発展形として,自然を「大切」にすることし,上述の「無駄な 殺生をしない」等,採集や狩猟は必要分のみを獲ることが,「命の尊重」と結びつけて理解されている例 である 0 ・自然との共生(採集は必要分のみ,犠牲を弔う). *1犠牲」についての言及があるため,この項で紹介している. 0. .命を大切にする みんな仲良し. -人とか神様とか命とかを重んじそう. 他にも,「イヨマンテ J 1特徴としてアイヌの言葉があったり,熊をつかった儀式?がある」等のクマ送 り儀礼に関する言及や「呪術的←踊り,祈り J 1火のまわりで踊る(祭り?)J 等,儀礼についての記述が みられた。. ⑥. 自然との共生 自然との共生に関するイメージは,⑤の宗教観での考え方と類似点をもっ -自然との共存. /. O. 自然と共存してそう. -自然と一緒に生きてく文化 -自然を重んじる. /. -自然に感謝している. 自然を大切にしていそう /. 自然を大切にしている,敬っている. ・自然を壊さず,自然と共に共存するような文化 -必要なものだけを採集. / 動物と密接な関係. / 物を無駄にしない. しかし,このような宗教観と「自然との共生」理解が,次の⑦および⑧のようなイメージと容易に結び っく点には注意を要する。 ⑦. 1野蛮 J) ・戦闘 「原始 J (縄文) ・ 「野生 J (. -原始的な文化だと思う -移動しない縄文人. / 原始的. / 縄文時代っぽい感じの丈化. .森の中にいるイメージ -鮭などを獲ったり,野性的生活していた。狩りをしたり 魚などを獲って食べていた. /. 狩猟文化のような文化. ・野性的? / 野蛮 -戦闘部族ぽい ⑧孤立・閉鎖的 ・本州との関わりを嫌う. 本州きらい. -仲間意識がとても強そうなイメージがある. /. 閉鎖的. 5 1.

(9) 百. j 頼 響. -言葉が独特で他の民族との関わりが少ない. 〉 ぜ = * ' 1 Z イf??. γ する闘 ti. -今で言う本州との関わりは薄く,シャクシャイン・コ シャマインと言ったリーダーを筆頭に独自の文化を誇っ ていた 図 4は,ヒグマではなく北海道に存在しない猪を相手に,. 私 、. 木の棒を持って格闘する人物を描いたものである。頭に羽飾 りらしきものをつけ,上半身裸で腰みの状の物体をつけた姿 は,どちらかというとネイティブ・アメリカンなどの表象に 近いように思われる 100 これも学生によるイメージ図として. 図 4 羽と腰みの状物体をつけ,動物と 格闘する人物. は,従来みられなかったタイプのものである。 また,一方の手に烏を縛り付けた棒を持ち,一方の手から. は交と波模様で何かを発する様子が描かれている。これは恐らくは呪術的な状況を表していると解釈される ことから,前述の図 3の人物が両手に持っている木の棒も,何らかの呪術的意味を持つ(日本文化における 榊の役割のようなものか?)と考えることも可能かもしれない。 繰り返しになるが,図 3と合わせて,このような現実から希離した先住民イメージが提出されたのは,今 回がはじめてである。しかしながら注意を要するのは,⑦において列挙した「狩りをする J i野性的生活」 といった「未聞文イ七」イメージの表象として,どちらも「頭上の羽飾り J i腰みの状物体J i呪具と解釈する ことができる棒」が描かれている点である。両方ともに北海道出身の学生によって描かれたものであるが, 博物館やテレビの儀礼に関する映像,教科書で見たアイヌ文化というよりは,何らかの媒体(例えばマンガ, アニメーション,映画などが予想される)において表現された様々な「先住民イメージ、」のコラージ、ユであ る点が指摘される。 同時に,アニミズムや神の尊重が,特にアイヌ文化独自の宗教観であると意識されていること(日本文化 にもアニミズムは存在するが,その比較から論じる例はみられない点)や,本州以南の文化との孤立,他の 民族との関わりを嫌う閉鎖的集団イメージの存在は, (明治時代まで)孤立した丈化状況がゆえに,縄文丈 化に近い文化状況が継続された,という類推を補足している可能性は否めないと考える。その意味では,誤っ た. 様々な「先住民イメージ」のコラージュによる. イメージ形成への関与を指摘しうるのではないか。. さらに次のような和人との関係性に関する理解も,このような孤立イメージを強めている可能性が考えら れる。. ⑧. 和人との関係性 ・和人により支配されていた -和人と交易を行う(ロシアとたくさん交流する) -和人と不平等な貿易が行われていた. / 本州の人に不平等な物々交換でだまされていた. .北海道に先住していたが後から来た民族に追い出された -和人との戦い(シャクシャインの戦い) -何回か本州の人に侵略されて反乱を起こしている(シャクシャインの反乱) シャイン・コシャマインの三大偉人がいる -シャクシャインだまされて殺されたような気がする -江戸期に日本人と武力衝突。以降,差別されていた ・過去に虐殺されている. アイヌは差別されていた. / 江戸時代の人に殺されたりした. -開拓によってアイヌ人が減少した. 5 2. /. /. 虐殺された。屯田兵?. アテルイ・シャク.

(10) アイヌ文化教材化の要点について ( 2 ). 学生からアイヌの「虐殺」という表現が提出されたのは,やはり今回が初めてである 110 和人との関係性 については,北海道出身者であれば,既習事項として差別や不平等な交易に関する学習を経験していると予 想されるが,これもアイヌ対和人の二項対立的関係に,他文化における先住民の歴史が混同されたり,ある いは類推して判断がなされたりした可能性が考えられよう。. おわりに 本稿の作成は,筆者が担当した授業における既習項目調査において,従来みられなかった対アイヌイメー ジが,学生から提出されたことが契機となっている。対アイヌイメージの現状を紹介するとともに,それら がどのような認識を背景に形成されたと考えられるかについて,考察した。紹介したイメージのいくつかは, 従来以上に現実との希離がみられ,かっ他の先住民丈化・歴史との混同が進んでいるが,これらが高等学校 までの授業や生活を通して,学生たちが獲得してきたイメージであることは紛れもない事実である。 例年と同様, 2 0 1 3年度の北方丈化論においても,北海道の丈化編年をあげることができる学生は,非常に 少なかった。しかし同調査を通じてわかったのは,文化編年に関して「習っていない J,あるいは「記憶が ない」というのではなく,それらの知識が「歴史の項目として認識されていない」可能性である。これは前 稿で指摘したように,歴史上の各事項が点として記憶されているためであり,「理解」に至っていない。す なわち,従前の地域(ないし郷土)学習が,既習の歴史の流れに位置づけて理解されることなく,個別の「知 識」となっている証左ではないかと予想される 120 換言すれば,自らの居住地に関する学習が,歴史(や社 会の変遷)と関連付けられない(あるいは歴史的事象として包摂されない)ままに「記憶」されているとす るならば,それは単なる「昔話」の域を出ない「物語」に過ぎないのではないか。そのような意味でも,地 域学習については,先史時代のみならず現代に至るまで,歴史の流れや社会の変化に位置付けつつ,理解す る学習の必要性が痛感される。 また,対アイヌイメージ、については,イヌイットやネイテイブ・アメリカンに類似した表象が,極端な例 としてではあるが提出されるようになった。「未開丈化」のイメージとしてより親しんでいるのが,恐らく はメディアを通じた他の先住民文化のイメージなのであろうか。さらに「未開」に関わる表象が,羽・毛皮・ 腰みの状物体・呪術と呪具(木の棒)のような「アイテム」のコラージュとして表現されたことは,現在の 生徒・学生を取り巻く文化的状況をよく表しているのかもしれない。 一方で,アニミズムがアイヌ丈化独自の宗教観であると意識されていることや,他の民族との関わりを嫌 う閉鎖的集団イメージと差別,そして「虐殺」を伴う和人との関係性についての「理解」とがあいまって, 近代に至るまでアイヌは「縄文文化に近い文化状況」を継続したという類推を生じる要因のーっとなってい ると考える。 前稿で紹介した,「『自然と共生する民である」アイヌは,『現在でも一部の人は昔ながらの生活をしてい るので、はないか」と考えているなど,現実とはほと守遠い認識を持っている例」も,今回考察したような同様 の経過を経て形成されている可能性がある。それは,アイヌ文化を「未開」文化として理(誤)解させ続け, 教育現場において,さらにその認識を再生産しかねないものである。 本稿では,これらのイメージや「知識」の現状およびその形成過程を報告するにとどまった。次稿では, アイヌ丈化教材化における要でもある,「アイヌ丈化とはどのような丈化か」という考究を促すために必要な, 丈化人類学的知識および理論に関して論じる予定である。. 5 3.

(11) j 頼 響. 百. 注 1 最終レポート提出者は 98名であり,うち 2名は,留学生であった。 1年生から 4年生までが受講し,女性が 7割弱を占めた。 3名であり,北海道で教育を受けたと考えられる学牛ーは 84.7%であった。 本州以南出身と答えたのは 1 2 教養科目として開講している同講義は,複数の必修科目と主E 複していたため,これまでは受講牛が 30人介を超えることは. なし結果的にアイヌ文化(ないしは北方文化)に何らかの形で興味を持つ学生が受講する傾向がみられた。 3 さらに,受講生の中でも特に本州出身者(および留学生)は,質問事項について「習っていない」という回答することが 予想されることから,北海道出身者でない場合はその旨を明記するよう指示した。 4 骨角器を意味すると考えられる。魚の骨も利用されてはいたものの出土例は少なく,海獣の骨や牙の方が一般的であろう。. 5 一般公募によって決定した北海道のプロバスケットボールチームである「レラカムイ J (アイヌ語で風の神の志)は,後に 「レパンガ北海道」に改称されたが,これは「がんばれ」の逆さ言葉によって名付けられたものであるため,アイヌ語で はない。 日独得な刺繍が発達しているのは,アットゥシ織よりも木綿衣などの着物に加工した例の方が一般的であろう。 7 永田方正による報告では,鮭皮製衣服の存在が「十に八九」は忘れられており,鮭靴のみが残っていることが記されてい. る〔河野. 1974:1 5 9 J。平取町の萱野茂二風谷アイヌ資料館・札幌市アイヌ文化交流センターに,複製品が展示されてい. るが,これらが学生の記憶に残っているのかもしれない。 8 人物図は本稿で示したものも含め,全部で 5点提出された 5点の人物図のうち 1点は I森の妖精」のようなイメージで描 かれており,腰みの状スカートについては,葉をつづったもののような印象を受けた。提出時点で、半分消してあったため, ここで、は不していない。 9 I 川なとε の水場」は,川筋共同体を指すと思われる。「山のある地 }I~J というのは不明で、あるが,狩猟を行うことをさして. いるのかもしれない。 1 0 例えば羽飾りとの関連では,提附されたアイヌイメージの一つに. I自然を大切にする。特に雨?J. というものがあった。. この説明は,ネイティブ・アメリカンにみられる宗教観を指していると思われる。羽飾りについての説明には. I 概要・鷲. I 鷲は「雨をもたらす雷を呼ぶ烏」と言われ,アメリカ先住民にとって大切な存在で、す J (IYAHOO 知恵袋」最終閲覧日 2014年 3月25日 h t t p : / / d e t a i . l c h i e b u k u r o . y a h o o . c o . j p /q a /q u e s t i o l l _d e t a il /q1 361251528)と記されている。 を使う理由」として. 1 1 他の北海道論の授業などにおいても,明治時代に「屯出兵に虐殺された」という理解を学生が不す事例がみられるという。. この点に関しては. I北海道の文化財と教育」を担当されている,本学の今尚之先生から情報をいただいた。. 1 2 このような状況から, 2013年度の北方文化論では,一部内容を変更し,アイヌ文化の説明を巾心に講ずる形とせざるを得. なかった。. 〔補注〕 前稿で, ~III }JI詳説日本史図録(第 5 版)~における「弥牛文化の成京②」で 比表が掲載されていると紹介した〔詳説日本史図録編集委員会. 1. 統縄文文化に「北 j 毎道と本土」の文化対. 2012:1 8 J。しかし,同対比表はオホーツク文化に関する年. 代に数百年のずれがあることがわかった。現行の第 6版も同様であるため,授業や指導案作成に利用する場合には,. ト分に注. 意し,誤った理解を教授しないよう留意されたい。なお,山川出版社では第 7版から訂正するとのことであった。. 参考文献 (公)アイヌ文化研究推進センター・北海道アイヌ協会編. 2012. ~アイヌ民族:歴史と現在. 未来を共に生きるために』. 北海道発行. 洋. 宇田川. 1988. ~アイヌ文化成立史』. 北海道出版合同センター. 複森進. 2007. ~アイヌの歴史」. 河野常占. 1974. Iアイヌ自製の衣服 J ~川野常占著作集~. 百瀬. 2013. 響. 草風館 I 北海道出版企画センター:153-159. アイヌ文化教材化の要点について ( 1 ) :アイヌ文化形成期までに関して J ~北海道教育大学紀要(教育科. 学編 ) J 第 64 巻第1 号 :33-42. (札幌校教授). 5 4.

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参照

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