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構成作品の色彩教育への応用について(2) : max bill "die grafischen reihen"における作品研究

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(1)Title. 構成作品の色彩教育への応用について(2) : max bill "die grafischen reihen"における作品研究. Author(s). 八重樫, 良二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 56(2): 175-186. Issue Date. 2006-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/406. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育人学紀要(教育科学編)第56巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.56,No.2. 平成18年2月 February,2006. 構成作品の色彩教育への応用について(2) maxbill”diegra玉schenreihen”における作品研究. 八重樫 良. 北海道教育人学旭川校デザイン研究室. Aboutapplicationofgeometricalartworkstocolorstudy Studyaboutmaxbill’sworksonthebook”diegra貢chenreihen”. YAEGASHI Ryoji DepartmentofDesign,HokkaidouniversityofEducation,Asahikawacampus. 要 旨 本稿はマックス・ビルの作品集「die grafischen reihen」に関する考察の第2報である.先の稿ではその 色彩理論を探ることを目的に,その全体概要と1つの作品シリーズを取り上げて考察を行った.本稿では新 たに2つの作品シリーズについて,その平面構成と配色の手法をさらに探る.これらの各シリーズにおいて, その平面の分割や配色について何らかの規則性を設けて展開されたことが分かる.この考察ではその図形展 開の手法と色彩計画の規則性を解明した.その考えを色彩教育の学習課題に応用することは可能であり、有 益なことと思われた.本稿では作品の考察を通して得られたマックス・ビルの色彩理論を記し,その考え方 に基づいて筆者が設けた演習課題の事例を記した.平面構成の造形要素として色,形が挙げられるが,本研 究はその視覚的な印象に色彩の要素がどのような効果を与えるか,という問題に関連が深い.. されている.実際,それが構成作品であるか,単. 1.はじめに. なるカラーサンプルであるか,の別は鑑賞者の主. 先の稿1)ではマックス・ビルのシルクスク. 観に委ねられる面もあろう.いずれにしろ,その. リーン技法による作品集,maXbill”diegrafis− chenreihen”に紹介される各作品シリーズ2). 両分割や配色の仕方など,その作品シリーズは何 の. らかの厳格な規則にのっとって創作された印象が. 概要を記した.それらはあたかも色彩研究のため. あり,理論的で精緻なデザインの作風で知られる. のサンプルかのような形式をとっていながらも,. マックビルらしさがよく表れている.抽象表現で. 作品ナンバーとマックス・ビル自身のサインが記. ある平面構成にあって,その造形を制約する何ら. 175.

(3) 八重樫 良 二. かの規則性は秩序による美的感覚に訴える方策と. る大学生に対する色彩学習に関する2つの演習課. も言えるが,前稿では特に配色計画について,規. 題例について記す.前稿を含め考察で取り上げた. 則性がよく表れている事例としてNO.6の「5. 各作品シリーズにおけるマックス・ビルの考え方. つの正方形における色変換」と題される作品シ. を基に,筆者が題材開発した事例である.. リーズをとりあげて,考察を行った.. その配色の対比感に着目する時,色相について は大きな差,中間的な差,類似した差に大別して. 3種の差にある関係での配色が意識されているこ とが判った.マックス・ビルのこのような配色方. 2.「7scarions」におけるバリエーション 展開. NO.3 「7scarions」のシリーズ作品は元図. 法は,個々人の美的感覚に頼らざるを得ない配色. の一部を隠して,つまりマスキングしてシリーズ. の方策について,客観的な手立てをもってそれを. を展開していることが明確に理解される作品と. 得る可能性を導くものと思われた.こうした配色. なっている.マックス・ビルの作品について,同. の考え方は造形表現に有益であることと考え,そ. 様に作凶の一部を隠す手法は,最初の作品シリー. の考えを色彩教育における学習課題に応用するこ. ズ,NO.1「多角形のバリエーション」の中で既. とへの可能性を前稿で指摘した.. に行われている.そこでは原画となる最初の構成. 作品の上に,数種の形状をもって穴5)のあいた. 本稿では先の稿に引き続き同作品集から, NO.3「7scarions」と題されるシリーズと,. 白紙を置いて,あらためて穴を通して見える面だ. NO.12「8つの色変換」と題されるシリーズに. けを表現する,といった方法がとられている.そ. ついて,新たな考察を行うものである.マックス・. れに比べ「7scarions」では一見してマスクの形. ビルの作品では元図の一部を覆い隠すこと,即ち. 状がすぐ分かり,その手法がわかりやすい作品と. マスキングする3)ことによって,そのバリエー. なっている.. ションの展開が計られたシリーズが複数見られ る.. 「7scarions」はその典型的な作品例であり, マックス・ビルが試みる図形のバリエー. ション展. 開の方法の一端をよく伝えてくれている作品と なっている.そのことへの考察は,次に取り上げ. る「8つの色変換」の作品シリーズにおける平面 分割の仕方を探ることにも関連が深い.. また配色効果に関して,画面全体の中で大きな 面積を占める色が,その画面の主たるイメージを. 担う4)とされるが,「8つの色変換」の作品シリー. *色記号はPCCSによる。. 図1「7scariollS」の第1原画. ズでは各分割面の面積の大′ト差が大きく,主要色. とアクセントカラーといった配色面の大小の効果. このシリーズでは赤(v3),黄(b6),青(v19),. が感じられるものとなっている.その分割の仕方. そして黒(bk),の4色6),4面に塗り分けた正. や配色方法にも同様に規則性が見られる.そのこ. 方形を画面水平に対して45度角度に傾けて置き,. とへの考察は,その色彩の選択とともにその色面. それをシリーズ最初の画面,つまり第1原画(図. の大′トとの関係についてのマックス・ビルの考え. 1)としている.ここで記す第1原画とは,バリ. を知るヒントが得られるものと思われた.. エーション展開される際の基となったシリーズ最. これらの考察に基づき本稿では,美術を専攻す. 176. 初の作品画面を指す..

(4) 構成作品の色彩教育への応用について(2). この場合のバリエーション展開について,例え. このことは色面の形や大きさの要素が視覚的印. ば,第1原画の上から同形の正方形の形で切り抜. 象にどのように影響を与えるか,それを比較でき. いた,窓枠のように穴の空いたマスクをかぶせる. る事例としてこの作品シリーズが有効であること. こととする.そうすると正方形の穴を通して見え. を意味する.色彩効果は複雑であり3属性の内,. る形,つまり斜めに置かれた正方形の4つ角を45. どの要素が視覚的印象にどれだけ影響するのか,. 度に裁ち落としたかのような八角形が見えるよう. それを探るにはできるだけ色彩要素を限定的に扱. になる.そのマスクを一度取り去り原画に戻した. うことが好ましい.. 上で,今度はさっきのマスクでは切り抜かれてい. 色彩効果は配色のみならず,当然その色面の面. た正方形を水平に原画の上にかぶせて見ると,隠. 積,形の意味なども,その視覚的印象に影響を与. れずに残って見える上下左右の角部だけの図形が. えている.そのため,純粋に色彩効果を探るため. 見えるようになる.これで第1原画をもとに新た. にはこうした要素の何れかを定め,何れかを変化. に八角形のもの,そして上下左右の角部だけのも. させるといった態度が不可欠となる.この作品シ. の,というように2点の作品が展開されたことに. リーズ「7scarions」では色数,配色の位置,面. なる.こうした方法によって,このシリーズでは. 積比を定め,色面構成の形状だけを変化させた事. 1点の構成作品から6種のバリエーションを得て. 例になっている.このことにより赤,黄,青,黒 という4色について例えば,接するように配色し. いる.. 仮に,下面を隠す普通のマスク(オフの状態). と,かぶせた箇所だけが見えるようになる特別な マスク(オンの状態)があるとしたなら,この作 品シリーズ. 「7scarions」では,3種類の形状の. マスクで元図を覆い,そのオン・オフを切り替え. た場合と離して配色をした場合との印象の違いを 知ることができる.. このシリーズで用いられた4色という数は,日 本の古代から方位を表す色として知られる青 (東),白(西),赤(南),黒(北)の4色を思. ることで6通りの図形を得ているとも説明でき. わせる.これは中国大陸から伝搬したとされる四. る.3種類の形状のマスクは,元図と同じ面積の. 神思想一昔龍・白虎・朱雀・玄武一に由来してい. 止方形A,互いの色曲が接する元の止方形にお. るとされる.その延長上に新羅万障を色彩に象徴. ける4つの中点が形作る正方形B(このときBは. してとらえる五行説という考えがある.このとき. 元図の半分の面積にあたる),そして正方形Aの. の第5の色として付加される色は黄色であり,. 真ん中を正方形Bで切り抜いた形,言わば額縁の. マックス・ビルが白紙の上に赤,黄,青,黒を取. ような枠型の図形C,を指す.以上の3種のマス. り上げたことには,それらの色を初原的な原色と. クのオン・オフによって図示した6種のバリエー. して考え,その配置についても原理的なバリエー. ションが得られている(図2次頁参照).. ションを展開したように感じられる.先の稿で考. こうした単純な方法で得られた計7種の平面構. 察した「5つの色変換」の作品シリーズにおいて,. 成を見るなら,それらの配色は同じでありながら,. はっきりとした違いをもつ色として4色相を意識. 色面の見え方の違いだけで変化が与えられてい. されていることを指摘したが,性格の異なる要素. る.その印象は,例えば,画面中央に置かれた正. として4種の色が挙げられることは他のシリーズ. 方形内に接して配色される場合と,画面中央箇所. にも共通していて興味深い.ただし,4種の色は. が白く抜けていて四方に各色が離れて置かれる場. どの作品でも同じ色という訳ではない.例えば黒. 合とでは,後者の方が軽やかな印象を受ける.人. は無彩色であるので,その代わりに緑が当てられ. によって主観の差はあるが,このように同じ配色,. たり,相対的に違いの大きい4色相であったりす. 同じ面積関係であっても,配置の仕方によってそ. る.いずれも3種ではなく4種としていることが. の印象に違いがあることに気が付く.. 色の対比の関係と結びついて興味深い.. 177.

(5) 八重樫 良 二. 第1原画. 第1原画. l. 黒(bk). =〉. 黄(憾) ・ ___ ____ _ ___」. J以下の形状のマスクで覆うと右図が得られる. J以下の3種の形状の. マスクでも展開できる 覆った所だけが見える. ON ■l. l. l. l. l. l. l. ..細萱.. (マスクA). −. .l OFF. l. l. l. :覆った所が見えない (3). 覆った所が見えない. 0Ⅰ甲 ■l. .1釧制服馳ll (マスクC). ■ −. 1 覆った所だけが見える l l. l. l. l. (5). 覆った所だけが見える l. l. l. l. l. l. l. ぎ・. ON. ■l (6): l. / 、 / /\/\. .‘‘i鏑鮎l. ⇒;. −. l. l. l. l. l. (7):. ↑掲載される7点の作品 (上からの傾が原書での掲載順). 図2 「7scarions」のシリーズ展開に関する説明図. 178. OFF. l 覆った所が見えない. l. .l. l. l. l. (マスクB).

(6) 構成作品の色彩教育への応用について(2). この作品においてマックス・ビルは最初に与え. 左右対称にしたものとを1組として提示してい. た配色,配置を変えず一定にし,その上からマス. る.第1原画を90度ずつ回転して4種の位置関係. クをかぶせるだけで見え方の変化を与えている.. を作り,それぞれ左右対称にしたものと組み合わ. このように配色の組み合わせを探求する際に,色. せて,計4組を制作している.以下にその作品考. 面の面積や形,あるいは色相や彩度など視覚的要. 察を記したい.. 素となる何かしらの要素を一定にした上で,着目. 第1原画にあたる図(図3)は「7scarions」. する要素だけを変えて効果を確かめるといった態. のシリーズと同様に,菱形においた正方形を基と. 度は,バウハウスの教師を務めたイッテン7)や. して,大′ト3つの三角形と残る大きな六角形の面. アルバース8)の色彩研究の手法と類似し,その. の計4面に分割されている.各面への配色を変え. 末期の学生であったマックス・ビルヘの影響が大. ることによって,2点1組の4組,全部で8点を. きかったことと推察される.実際,本書に紹介さ. バリエーション展開している.基本的にそのバリ. れるマックス・ビル作品とイッテンの色彩研究事. エーション展開は配色の違いによるものであり,. 例には類似感が高いものが含まれている.. マスキングの手法とは無関係である.. この作品で注目されるのは,分割された各色面 3.「8つの色変換」の作図法とその面分割 このように本書で提示される作品シリーズにお. の面積比である.本書で紹介される作品について,. 例えば A面:B面:C面:D面=1:1:1: 1というように等面積に分割されている作品が14 ズあり,その多くを占めて. いて,マックス・ビルは配色を変えずに原作のバ. シリーズ中で8シリー. リエーションを得る方策の一つとして,マスキン. いる.また他の大′トを伴う作品でもその分割の仕. グの手法を用いている.この場合にはバリエー. 方は,たいていは1:2:4など半分,そのまた半. ション展開された各画面は,その構成において配. 分といったとわかりやすい.ところが,このシリー. 色関係と各色面の概念的な配置関係は共通しなが. ズでは1:9:16:70という面積比になっている.. らも,色面の形状変化をもったシリーズとなるこ. 一見,不揃いにも思える面積比9)をもつのはこ. とに特徴がある.ところがそれとは別種のバリ. のシリーズのみである.止方菱形の外形に対し,. エーション展開でありながら,その原画の制作に. わずかな傾きをもって分割されていることから. 関連した発想が見られるシリーズとして,. も,同図書中での他の作品に比べて異色な印象を. NO.12「8つの色変換」が挙げられる.このシ. 受ける.この作品シリーズについては,図書中で. リーズでは,マックス・ビルは第1原画とそれを. は頁毎に2点を左右対称に並べて掲載している (図7参照).. この作品における分割の仕方をみると,幾何学 的でありながら,その分割の基準線には微妙な傾 きを感じる.その傾きは幾何的で厳格なイメージ が支配する平面構成に微妙な変化感を与えてい る.あたかもマックス・ビルが審美的な観点から,. つまり好みによって適当な「揺らぎ」を与えたの ではないか,との印象も受けたが,やはりこの分 割にはルールがあり,主観的なものではなかった. B色. 青線∼オレンジ∼紫の 何れか1色. 図3 「8つの色変換」の第1原画. 図4はそれぞれの角を占める三角形の形が暗示す るもう一つの正方形を補って図示したものであ る.. 179.

(7) 八重樫 良 二. *AB,C,3つの三角形は相似形。 それぞれ三辺の比は3:4:5 * A:B:C:D=1:9:16:70の面積比. 図4 第1原画(図3)の作図説明. 図5 各辺のプロポーション. つまり,この作品は組み合わせた2つの正方形. ス・ビルは最初に三角形AMNの関係を導いた. の内,一方の外形線を消し去って得られた図形. と思われる.MはABの中点にあたり,AM=. だった訳である.こうした方法で導かれている点. BM=1/2である.:Nは線分DAを3分割して割. でこのシリー. ズはマスキングの発想と関連してい. り出している.AN=2/3となっている.このと. ると思われる.この作品に関するマックス・ビル. きのルールは線分の1/2,1/3といった簡単な比例. 自身による説明が図書中に記されている.それに. 分割にすぎない.線分MNに沿って正方形. よると直角三角形の3辺の比に関する有名なピタ. MQSRが置かれている.正方形の置き方は角度. ゴラスの定理,3:4:5の関係に着目して,正方. 関係を規定する要素によらないので,30度とか45. 形の3つの角に置かれる大・中・小の3つの三角. 度といった,90度を割り切れる角度にはならない.. 形を設けたことが記されている.回申にそのこと. このため,図3の各分割面に微妙な傾きが生じる. を示すよう,各三角形の3辺の比を補記した.説. 訳である.このように正方形ABCDの上に正方. 明では2つの正方形をずらして置くことで各分割. 形MQSR置くことで得られる,各角を頂点とす. 面を得る,というようには記されていないが,正. る大・中・′トの3つの三角形は相似形で,いずれ. 方形をその関係に沿うよう分割するには,図4に. もその3辺の比は3:4:5の割合となっている.. 表す考え方が,容易で理解しやすい方法となって いると思われた.. 図5は正方形の1辺を1とした時,具体的に分. 次に各分割面の面積比がどのような関係である. かを考察したい.便宜上,元にした正方形の1辺 を24という長さに置き直す.BとCの底辺はその. 割される各辺の長さの割合をしている.先に記し. 中点で接している.このとき線分AMは12,線. た1:9:16:70という各分割面の比率もこの固. 分ANは16という長さになる.三角形MBLと. から得られる.. 三角形OUPは合同であり,こうした関係から各. 正方形の各角をA,B,C,Dとし,各辺上. 線分の長さの比率を割り出していくと,線分BL. にそれぞれの三角形の各頂点にあたる分割点を. は9,線分PDは3,線分DOは4の長さという. M,N,L,0,Pとした.補助的にマスクされ. 備になる.これらを基に各色面に相当する各三角. 正方形のM以外の各頂点をQ,R,Sとし,正. 形の面積を求めると,改めて一番′トさな三角形O. 方形の1辺を仮に1という長さとする.マック. DPを1とした時,中ぐらいの三角形MBLは9,. 180.

(8) 構成作品の色彩教育への応用について(2). この8色をグルーピングするなら,大まかには. 大きい三角形AMNは16,そして,残る六角形 となっている一番大きな面は70という面積比にな. ①②⑨と④⑤と⑥と⑦⑧の4グループにまとめ. る.前稿においては,こうして得られた面積比の. て,4色相をもってとらえることもできる.それ. 結果のみを報告していた.. らは,オレンジ,赤紫,青,黄緑の4つの色相に 相当し,色相環状では大きな四角形を形作って互. 4.「8つの色変換」における配色の手法. いにはっきりと違う対比的な色相関係にある.こ のとき四角形の対角に相当する色グループ同士の. 前述したよう,この「8つの色変換」の作品シ. 関係は,色相環の反対側に位置して強い対比関係. リーズは,その各分割面への配色を変えることで. にあり,一辺を共有して隣り合う角に位置する色. バリエーション展開が計られている.マックス・. グループ同士はそれに比べて,明確に違いはある. ビルが用いた色は①v6 ②v5 ⑨v3 ④紫みの. が中間的な対比関係にあることが分かる.この場. マゼンタ(色相については23:rp)⑤b22 ⑥. 合,1つにグルーピングされる色同士の関係は近. b18 ⑦b12 ⑧bllの8色の中から選択され. 接する色相関係にあり,類似している.PCCS. る4色である10).マックス・ビルの解説ではこ. の色相環上で①∼⑧の各色の位置を表すと図6の. れらの色名を ①黄 ②オレンジ ⑨赤 ④カル. ようになる.. ミン(洋紅色,明るいピンク) ⑤ヴァイオレッ. 先に「7scarions」のシリーズについて赤,黄,. ト(紫) ⑥青 ⑦ターキッシュ(緑) ⑧明る. 青,黒の4色が使用されていることを記したが,. い緑(黄緑)と記している.(以降,このシリー. 無彩色の黒を除く他の3色は,色相環上では人き. ズで用いられている色については,ここで記した. な三角形を形作る位置関係にある.一方,「8つ. 円囲み数字で記載する.). の色変換」のシリーズでは8色について大まかに. これらの色について,黄色は暖かみを持つオレ. は4つの色相に区分されることを記した.古典的. ンジに寄った色相であり,赤についても同様にオ. な秩序の原理による配色の形式では色相環を3等. レンジに寄った色相としていることは,本書での. 分する位置にある配色を三色調和(トライアド). マックス・ビル作品の多くに共通していて特徴的. と呼び,4等分する配色を四色調和(テトラード),. でもある.この点,赤と黄の選択に関して色彩調. さらには5等分について五色調和(ペンタード). 和への示唆を含むように感じている.. と呼ぶなど,配色の調和感を求める上で色相の規 則的な配色形式を重視していたとされる.マック ス・ビルのシリーズ作品が示す4色の選択は,そ うした古典的な調和理論を思わせる点でも興味深 い.. しかし,実際には「8つの色変換」のシリーズ では,4つの色相に属する色が1画面に同時に配 置されることは無い.例えばオレンジみの赤,オ レンジ,オレンジみの黄,というように,類似す. る色が8色に含まれ,既に記したようにそれらの 色を順番に配色されるため,必ず類似した色相が −:実線は配色されている8色相の位置関係。 :点線はオレンジ(5:0)を起点とする時の. 4色調和(テトラーデ)の関係にある4色. の位置を示す 図6 8色の色相環上での位置関係. 4色の中に含まれることになるからである.つま り配色される4色は色相環上で等距離に位置する 色の組み合わせにはならず,類似した色と違いの 大きい対比的な色とが同時に配色されることにな. 181.

(9) ⑦. ⑧. ⑧. ①. ①. ②. ⑥. ⑦. ⑧. ①. ②. ③. ④. ①. ③. ②. ③ ③. ② ⑤. ⑥. ④. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ⑥. ⑤. ⑦. ⑧. ④. ①. ⑤. ① ②. ⑧ ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ⑧.

(10) 構成作品の色彩教育への応用について(2). 画面上では最も′トさな分割面の箇所には,他の3. な色相の関係にある色が置かれるため,その色が. 色に対して色相として最も対比的な関係にある色. 全体に対するアクセントカラーとなる.その面積. が置かれることになる.先に,この作品シリーズ. は正方形全体に対して,わずか1%程にすぎない.. では各分割面の面積の大′ト差が大きく,主要色と. 一方,一番大きな色面は全体の73%程を占め,さ. アクセントカラーと関連して配色面の大′トの効果. らに残される2つの三角形にも近い関係にある色. が感じられるものとなっていることを記したが,. が置かれるため,そこに配置された色が画面全体. それはこれまで記した配色の手法に起因していた. のイメージを担う主要色となる.例えば,赤,オ. ことがわかる.. レンジ,黄など暖色系が主要色となった場合には,. 色相差であれ明度差であれ,隣り合わせに並ぶ. 画面全体の印象は暖かなものとなり,寒色系の青. 2色について,3属性の何れかの差が大きい配色,. の場合にはクールで知的な印象となるなど,主に. 即ち大きな対比がある配色の長所は明快であり,. 色相の属性からのイメージと結びつくものであ. 強い印象を与える組み合わせとなることである.. る.このとき面積比1%にすぎないアクセントカ. その度が過ぎると,はっきりしすぎてどぎつく,. ラーが,主要色に対してどのような効果を与える. 下品な印象を与えることになりかねないのでその. のか,それを色替えによってバリエーション展開. バランスに注意を要する.こうした対比の強弱の. される8つの画面を比較することで知ることがで. バランスは色の要因のみならず,その配色面の大. きる.. きさにも密接に関係する問題である.全体の中で. このように「8つの色変換」のシリーズにおい. その色が占める面積によって,当然その印象は変. ては,配色とその色面の人きさとの関係が色彩の. わるものである.全体画面の中で大半を占める色. 調和感にどのように影響するかを考えることので. を主要色,または基調色と呼んでいる.主要色は. きるシリーズとなっている.筆者の印象では,⑨. 画面全体の地色となって,見た目の主要な印象に. が主調色で⑧がアクセントカラーの場合と,⑥が. 大きな影響を持つ色である.例えば,主要色が単. 主調色で⑨がアクセントカラーの場合の2つの場. 色として明度が低く彩度も低い,といった暗く地. 合が最も効果的に感じられた.この2つの場合で. 味な色であれば,おのずから全体の印象は暗い画. はPCCSの色相環上での色相差は,どちらも問. 面として映る.その中に′トさく,明るい色や鮮や. に8色を置いて9番目にある関係であり,視覚的. かな色を置かれると,その色は一層明るく鮮やか. な反対色として映る.理屈上は正反対に位置する. に,主要色の暗さはより暗く感じる,というよう. 色は12番目に位置する色であるが,その位置から. に両方の色の性格が強められる.この場合の鮮や. は3色分ずれている点が興味深い.この点もまた. かな色は,アクセントカラーとして小さな色面で. 色彩調和への示唆を含むように思える.. ありながらも,全体の印象を引き締めて,その互. いの色味を一層際だたせる役目を担っている.こ の時,その色面をだんだんに大きくしたならば, どのようであろうか.大きくするに連れて,それ. 5.色彩教育における学習課題への応用 前稿での記述に習って,本稿で取り上げた作品 「8つの色変換」に関してその表現の規. まで主と従という関係に置かれていた配色関係を. シリーズ. 変え,しまいには逆転してしまうことであろう.. 則となった形と色への条件付けについてまとめて. このようにアクセントカラーは,主要色に対する. 記す.. 属性の差と共にその色面の面積にも留意する必要 がある. この作品シリーズでは画面の中で一番′トさな三. 角形の箇所に,配色される4色の中で最も対比的. 1.色面の形状:正方形の3つの角に三辺が3:4: 5の比率をもつ三角形が作られるよう分割. (正方形を回転して,ずらして重ねることで得られ. 183.

(11) 八重樫 良 二 る.). 2.色面の大きさ:結果的に,一番小さな三角形の面. NO.12「8つの色変換」における色面の面積比 に応じた配色とその効果に着目することを意図し. 積を1としたとき,1:9:16:70の関係の面積. た課題例である.以下に学生に配布する課題票か. 比となる.. らの抜粋を記す.. 3.使用する色数:各画面4色(8色から4色選択) 4.色の選択の仕方:大きくはオレンジ,赤紫,青,. 黄緑の4色相,さらに各色相の近接色相から各1 ∼3色,明るく鮮やかな調子の色を8色選択.. 課題事例1. (「5つの正方形における色変換」11)を参考とした。) 課題タイトル:. 5.色の配置の仕方:8色から4色を順繰りに配色.. 「5色相による四季のイメージ表現」 一イメージカラーの抽出とトーン調整一. 既に前稿で記したように,これらの条件付けは. 内容:. そのまま色彩練習のための学習課題での条件にな. 春・夏・秋・冬のイメージをそれぞれ5色の配色に. りうるものと考える.この場合には,1番目の条. ょって表しなさい.色面の大きさ・形は別紙12)の寸. 件によることで配色するための色面の形が決定さ. 法指定に従って所定の箇所に表現すること.以下の課. れる.3番目と5番目の条件によって色違いの8. 題条件に沿って配色計画を立案すること.. 画面を配色することができる.そして4番目の条 件を守ったならば,マックス・ビルと同様の印象. 課題条件:. 1.使用する色数は任意の4色相(各色相から2種の. をもつ作例が再現されることになる.もしマック. トーン)の選択色8色に1t22十の色を加えて,合計. ス・ビルの作品を美的な規範と定めてしまうなら. 9色を課題制作に用いるカラーパレット13)とする. ば,そのままその条件に従うことになるが,実際. こと.. には配色の調和感は人それぞれであり千差万別で ある.多様であるがため,色彩教育の実践もまた. 複雑な問題を有していることを先の稿で指摘して いる.. 2.季節毎の配色は,カラーパレットとした9色から 5色を選択して使用すること.. 3.その季節のイメージカラーと221t十は必ず用いる こと.. 全く自由に望むまま色彩体験を積むことに対 し,マックス・ビルの作品に見るよう,何らかの. 条件付けに基づく色彩学習は対極にある考え方で あろう.そのどちらにも長所と短所は併せ持つこ とと考える.前稿において,こうした実際の作品. また同一色相から2色は選択できない.. 4.季節毎のイメージカラーは,寸法指定に示す一番 大きい色面にあたるAの面に配色すること. 課題意図:. イメージに基づく配色計画とトーン調整の体験・配. 分析から得られた何らかの制作条件を学習課題に. 色イメージが色相,トーンの対比感によって影響され. 応用する長所として2つの点を挙げている.1つ. ることを知ること.同じ色でも色面の大きさ,隣色や. は色彩練習を作品表現と直に関連づけて学習でき. 全体との関係で印象が異なることを知ること.. る点,もう一つは条件の改変によって学習内容の 発展性が望める点である.筆者は大学において色 彩の授業を担当しているが,こうした観点に立っ て設けた2つの課題例の概要について記したい.. 1つは前稿で考察した作品,NO.6「5つの正 方形における色変換」における配色の考え方を参 考として,配色の調和感を考えることを意図した 課題例であり,もう一つは本稿で考察した作品,. 184. 課題事例2 (「8つの色変換」を参考とした。) 課題タイトル:. 「4色配色による4種のイメージ表現」 一カラーイメージスケール14)に基づく配色一 内容:. スケール中のイメージグループから4つの言葉を選.

(12) 構成作品の色彩教育への応用について(2). 択し,それぞれ4色の配色によって表しなさい.色面. の必要性から生み出した課題例である.授業実践. の大きさ・形は別紙(13)の寸法指定に従って所定の. を重ねて課題の改善を計ると共に,こうした実際. 箇所に表現すること.以下の課題条件に沿って配色計. の構成作品への考察をその学習課題に応用してい. 画を立案すること.. きたいと考えている.. 課題条件:. 1.参考資料15)に示すイメージスケールで区分され るグルーピングの中から4つのイメージワードを選 択し,それぞれをカラーイメージで表すこと.それ. ぞれの配色面に使用する色数は任意の4色とする. 2.それぞれに任意選択される4色については,重複 利用や無彩色利用など可である.特に制限は無い.. 6.まとめ. 前稿においてNO.6「5つの正方形における 色変換」を取り上げて考察し,その配色の規則の 沿うものとするならば,最初に5色を選択するだ けで配色のバリエーションが自動的に生成される. 課題意図:. ことを指摘した.本稿でとりあげたNO.12「8. 言語イメージに基づく配色計画の体験・配色計画が求. つの色変換」でもその特徴は同様である.このよ. める造形イメージに影響を与えることを知ること.. うに何らかの規則を設けることで作品のバリエー. ション展開を計っていることが,この作品集 この2つの課題例は,どちらも配色する分割面. maxbill”diegrafischenreihen”に掲載される全. をマックス・ビルの作品から借りて,色の選択ま. 14作品のシリーズを通した特質であり,マック. たは色の選択と配色の筒所を学年が考えることと. ス・ビルの個性ともなっている.造形規則を創造. している.いずれの課題でも基本的に配色効果と. すること自体に作家の個性,独創性が表れている. その調和感を探ることは共通した課題意図であ. のであり,重要な創作価値があると考える.この. る.それぞれ,課題の理解には色彩知識への理解. 作品シリーズを通してマックス・ビルは,両分割. を必要とし,同時に実際に着色する技能,PCCS. と配色の仕方について,自己の手法を提示してい. の色見本の使用法など実技としての学習体験する. る.デザイン分野の特質として思考を中心とする. ことを直接の目的としている.これらは色彩学習. 美術分野であることが挙げられるが,マックス・. に関する教材として,どのような内容が望まれる. ビルのこうした配色論理をもって表現を研究する. かを模索して得た一試案であるが,学生達は課題. 態度は一種のデザイン行為にあたるものとしても. を通してマックス・ビルの考えた秩序美を追体験. 受け取れる.. することになる.その際,色の選択について条件. 本稿で取り上げた2つの作品シリーズについ. 立てをどのように提示するかは重要なポイントで. て,NO.3「7scarions」では同じ配色,配置. あり,課題が単に塗り絵的な内容に留まるか,創. 関係にあっても構成によって,NO.12「8つの. 造的な要素を含ませることができるか,といった. 色変換」では同じ構成であっても配色を変えるこ. 課題性質に関わっている.. とでその印象が変わることを示している.平面構. 前者は配色の対比的な要因について自由に考え. 成を形成する造形要素として色彩,形,そしてそ. ることを許容しながらも,その配色箇所を指定す. の構成,という3つの要素が挙げられようが,こ. ることによって,ある程度マックス・ビルの考え. の2つの事例を含めて”die grafischen reihen”. 方が再現されるように条件を与えている.後者は. に紹介される各シリーズにおいて,マックス・ビ. 配色する面の形のみを借りて,配色条件について. ルは色彩効果を探るために何かの要素を一定にし. はマックス・ビルの考え方とは無関係で自由なも. て何かの要素を変えるといった方法を試してい. のとしている.望まれる学習課題は授業者の意図. る.つまり視覚的な印象にとって,前者のシリー. によって異なるが,どちらも授業計画に沿ってそ. ズでは配置される色面の大きさや形の違いがどの. 185.

(13) 八重樫 良 二. ように影響するのか,後者においては配色の違い がどのような効果をもつのかを試している訳であ る.これまでの考察を通して,マックス・ビルは. まるで科学者のように色彩の実験を行い,その結 果を報告しているかのような印象が残った.改め て,これら一連の作品シリーズは本来,感覚的な. 色彩美を客観性,論理性をもって表現した事例と して挙げられよう.. ∼は原著で付されるナンバーであり、制作順を意味す. る。 3)一般にペイント塗装などで,一部分をテープなどで 覆い隠すことをマスキングと呼ぶが,本稿では覆い隠 すことを広くマスキングとして捕らえている. 4)画面の大部分を占める色は画面全体を支配する主要 な色何となって,全体イメージについて大きな要因と なる.そこに用いられる色のことを主要色,または基 調色とも呼んでいる.. 5)穴の形はそのシート毎に小円や線形,矩形といった. 色彩教育にとって実際の表現実技を通して教え ることは,その美的感覚の育成に有益であり,そ. のことについての課題は学習内容とその目的,意 図を十分に反映したものでなければならない.そ のため,単なる描画課題に比べて色彩学習に関す る課題の場合には,画材や色数,その構成など課. 題提示にあたって考慮すべき要素が多くなるのが 通例と思われる.こうした形と色への条件付けを どのように設けるかは学習課題の性格と課題作品. の評価の仕方に影響を与える.マックス・ビルの 観点を課題に応用する可能性を感じて,その事例 として2つの課題例を記した.何れも授業実践を 行っているが,学習課題で示す色の選択への条件 付けは学習興味を喚起する要因ともなり,作品評 価の際にも評価観点を明示できる点で有効である と思っている.また,配色のバリエーション展開. ように変化させている. 6)本研究では色を示す色記号について,日本色彩研究 所が提唱するPCCSの体系でのトーン記号を用いて表 記している.場合に応じて()内に一般的な色名を 補足した.. 7)ヨハネス・イッテンJohannesItten スイス生 18881967. 8)ジョセフ・アルバースJosf Albers ドイツ生 19881976. 9)前稿では71:16:9:1と記されている.70:16: 9:1が正しく,本稿をもって訂正する.. 10)掲載作品の印刷色とPCCSの色見本とを目視し,そ の視覚的印象が最も近似するトーン記号を挙げてい る.. 11)前稿において,この作品シリーズを取り上げ考察した. 特に配色の考え方についてその特質を挙げている. 12)別紙の掲載は省略する.参考としたマックス・ビル 作品と同様になるよう,配色何の外形と分割する寸法 を凶で指示する内容のプリント. 13)色の選択にあたってはさらにトーンについて条件が. が自動的に生成される点はコンピュータ上での展. 付加される.4色相,各2色で8色が選択色となる.. 開に有利な点があり,教材への応用に新たな可能. 14)カラーイメージスケールとは,日本カラーデザイン. 性も感じている.一方,色彩調和の観点からは暖. 色系に属する赤,黄の選択の仕方や反対に位置す. 研究所の提唱による,客観性をもってイメージを把握 するための一手法である. 15)資料の図示は省略する.カラーイメージスケールで. る色の選択の仕方など,考察を通してマックス・. は言語イメージと色とを相関させて提示しているが,. ビルの色彩感覚に学ぶ点も多く,イッテンの色彩. この別紙では言語イメージだけを知らせ,その言葉か. 研究との関係も興味深い.今後は色彩調和の理論. ら連想する色を学生各自が選択すること,としている.. と実際の表現,そしてその教育とを関連づける観 点に立って,研究を続けたいと考えている.. 参考文献 小林重順/日本カラーデザイン研究所 編・著 「新・カラーイメージ辞典」1993年講談社. 註. 「ヨハネス・イッテン 造形芸術への道」 20032004年 同展覧会図録(東京国立近代美術館 等). 1)北海道教育大学紀要教育科学編第54巻第1号「構成. (前稿で既に挙げた参考文献の記載は省略.). 作品の色彩教育への応用について(1)」175頁∼189頁 2)本稿では各作品タイトルについてドイツ語での原題 を翻訳して記している.不明なものについて原題のま ま記した.また作品タイトルのはじめに付されるNO.. 186. (旭川校 教授).

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参照

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