東日本大震災 危機発生時の対応について考える:10.震災報道 メディアはいかに伝えたか-放送局・新聞・出版-
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(2) 4 日目頃からはライフラインの復旧情報が中心とな. たとえば『週刊文春』3 月 31 日号では,福島原発. り,各市町村の給水情報が繰り返し放送された.. 事故を総力検証し,すでにこの時点で,津波に対す. 被災地が震災の後始末に入りつつあった時期は,. る致命的欠陥や東京電力の低い危機意識を追及して. 同時に避難所で暮らす人たちのストレスが高まって. いる.また当時テレビや新聞が近付こうとしなかっ. いった時期でもある.日頃からリスナーと双方向の. た「原発 20 キロ圏」に,いち早くジャーナリストの. 関係を築き,聴く側がラジオに何を求めているかを. 青沼陽一郎氏を派遣.「見捨てられた町」の現状を伝. 体感していたことが災害時に活かされた形だ.. えていた. さらに『週刊現代』4 月 2 日号は,仙台在住の直. 新聞による震災報道. 木賞作家・伊集院静氏が書いた「被災地から見たこ. 朝日新聞や読売新聞などの全国紙は,震災 3 日. の国」を掲載.そこには実際に体験した地震の凄ま. 目からライフライン特集の掲載を開始した.これは. じさだけでなく,非常時にこそ国の経済を支えるべ. 1 ページ丸ごとを使ったものであり,被災地の読者. き投資やファンドの会社が株を投げ売る姿への怒り,. にとって有効なものだった.また,全段ぶち抜きに. またワイドショーに登場するキャスターやゲストが,. 近い形で,東北地方の被害状況を伝える紙面を構成. 「口先では大変だと言っているが内実はそうではな. したことも評価できる.広範囲にわたる震災のスケ. い」ことが透けて見えるという憤りなどが述べられ. ールがひと目で把握できた.さらに被災地のルポル. ていた.. タージュも現地の状況を具体的に伝えることに寄与. 原発報道に関して,週刊誌によっては読者に過剰. していた.. な危機感を与える記事も散見する.しかしその報道. 一方,被災地にある新聞社はどう対応したのか.. を,一概に「パニックを煽る」として退けられないの. 仙台を拠点とする河北新報では新聞制作システムが. も現状である.情報過多ともいえる活字報道が行わ. 水をかぶって一時ダウンした.新聞制作が困難にな. れている一方で,本当に知りたいことが分からない. ったが,緊急時の災害協定を結んだ新潟日報の協力. と感じている読者が多いのだ.いわゆる官制報道と. によって発行を続けることができた.河北新報側が. は違う,「情報を受け取る側の目線で伝えられる報. 書いた記事を回線経由で新潟日報に送り,紙面を作. 道」がますます求められている.. 成.そのデータが河北新報に返信され,自社の印 刷所で印刷した.震災翌日の 12 日付朝刊は 8 ペー ジ構成で,一面の大見出しは「宮城震度 7 大津波」. 津波で流された家屋が炎上している名取市の光景と, 仙台市の破壊されたビール工場の写真が載っている. その後,紙面も自社制作に戻った. 岩手日報も停電で輪転機は使用不能となる.12 日付と 13 日付の朝刊は青森の東奥日報社に委託し て印刷したが,やがて復旧している.自らも被災者 である現地の新聞が,一日も途切れることなく発行 され続けたことに敬意を表したい. . 出版の動き. 仙台市荒浜地区 写真:碓井広義 (2011 年 5 月 29 日受付). 週刊誌は新聞に比べて速報性において劣る.しか し,じっくりと行う取材によって,またテレビや新聞 とは違った角度からスポットを当てることにより,事 実の裏にある真相に迫ろうとする姿勢が見てとれた.. 碓井広義 ■ [email protected]. 上智大学文学部新聞学科教授.1955 年生まれ.慶應義塾大学法学部 政治学科卒業.千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了.博士 (政策研究).専門はメディア論.. 情報処理 Vol.52 No.9 Sep. 2011. 1081.
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