LSIの配線問題 -DAシンポジウムの配線問題解法コンテスト-:1.LSIの配線問題と解法コンテスト
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(2) 経路を決定する概略配線と詳細経路を確定する詳細. する(図 -3(c)).次に,今,距離 1 で更新された. 配線が存在する.詳細配線では,対象とする設計ス. 点の隣接点で,まだ距離が確定していない点を距. タイルによって,端子が配線領域の上下辺だけに存. 離 2 で更新する.以下,この処理を次々に繰り返. 在するチャネル配線と任意の位置に存在するエリア. し(図 -3(d)),点 B の距離が確定するまで繰り返. 配線とにクラス分けされる.チャネル配線に関して. す(図 -3(e)).今,点 B の距離が 7 と確定したので,. は,取り扱う問題の制約により,効率が良く,ほと. 今度は距離 6 → 5 → ... → 0 と頂点を選択し経路を. んどの場合経路が実現できる手法が知られている.. 確定する(図 -3(f)).. 一方,エリア配線に対しては,チャネル配線に対し,. この手法は,1 本のネットにおいては,探索開始. より一般的な問題となっている.. 点からの最短経路が保証される.しかし,結果の品. このエリア配線に対し,基本となる解法が迷路. 質が経路決定の順番に依存し,また,利用する配線. 法. 1). である.迷路法では,各ネットに対し,任意. 資源量の最小化の実現も保証されない.なお,これ. の 1 個の端子から探索を開始し,幅優先探索を利用. らの問題は,実際には,NP 困難と呼ばれる全列挙. して経路を探索する.このアルゴリズムを図 -3(a). 以外に最適解を保証できる手法がないと考えられて. の点 A-B 間に対し,適用する例を示す . まず,開. いる問題となっているため,決定的なアルゴリズム. 始点を点 A とし,点 A の距離を 0 で初期化する. で解く限り,最適解を保証できる効率の良い手法は. (図 -3(b)) .その後,点 A の隣接点を距離 1 で更新. 存在しないと考えられている.そのため,この配線. (a)入力. (b) 点 A を距離 0 で初期化. (c)点 A の隣接点の更新. (d)距離 3 まで更新. (e)点 B の距離が確定. (f)A ~ B 間の経路確定. 図 -3 迷路法の例. 1. LSI の配線問題と解法コンテスト 情報処理 Vol.59 No.3 Mar. 2018. 225.
(3) 小特集. Special Feature. 問題のアルゴリズムは,最悪計算時間を抑える発見. こととした.ナンバーリンクとは,格子状の盤面内. 的手法か,最悪の計算時間は問題とせずに最適解を. に置かれた同じ数字の間を線で結ぶパズルであり. 出すような手法のいずれかとなっている.小規模な. (図 -4),線を引く際に(1)線を交差させたり枝分. 部品レベルでは最適解を出す手法が採用される場合. かれさせたりしてはいけない,(2)数字の置かれ. もあるが,LSI 全体の配線問題を解くためには処理. たマスを通過する線を引いてはいけない,(3)1 つ. 時間の制約から発見的手法しか選択肢がなく,多く. のマスに 2 本以上の線を引いてはいけない,という. の場合迷路法を改良した手法が用いられる.. ルールを満たす必要がある.この問題設定は図 -3. 以上より,LSI 配線問題は,LSI が製造されるよ. の迷路法の問題設定と同じであり,単純でありなが. うになってから,常に存在する古典的な問題である.. ら LSI の配線問題の本質を反映したものとなって. その一方で,製造技術の進歩により,さまざまな制. いる.. 約が次々に課されるため,常に新しい問題として存. ただし,現実の問題は1つの配線層だけで配線が. 在している.. 可能であるとは限らない.たとえば,図 -4(a) の問. その中で,最もシンプルな問題が,2 端子ネット. 題で左端の 1 と 2 を入れ替えると,1層では解が得. だけからなる配線問題である.次章で紹介する解法. られない.具体的には,図 -5(a) のように 2 と 3 を. コンテストは,この 2 端子ネットに対する配線アル. 線で結ぶことはできるが,1 を線で結ぼうとすると. ゴリズムを競うコンテストとなっている.このアル. 2 の線と交差してしまい,正しく信号を伝達するこ. ゴリズムが高性能化,かつ,高速化できることによ. とができなくなる.一方,図 -5(b) のように 2 層の. り,配線性能の向上と配線実現に必要となる時間の. 配線層を使用すると,解を得ることができる.この. 短縮とが期待できる.. ようなケースも含めた問題設定とするため,2016 年からはナンバーリンクを多層に拡張した問題を出. 配線問題解法コンテスト. 題している.. 本会 システムと LSI の設計技術研究会が主催す. もあり,当初は 8 × 8 程度の小規模な問題しか解. る DA シンポジウム(DA:Design Automation). けない状態であったが,2014 年に SAT(充足可能. では,2012 年から配線問題の解法コンテストを開. 性判定)や ZDD(ゼロサプレス型二分決定グラフ). 催している.コンテストを開始するにあたり,配線. などのそれまでとは違った技術を使用したチームの. 問題の専門家以外でも参加できるようにするため,. 参加を得て,解ける問題のサイズが大幅に拡大した. ナンバーリンクというパズルを問題として採用する. (図 -6).これらのチームのメンバも配線問題の専. 3 1. 2. 3. 3 2. 1. 1. (a) 問題. 図 -4 ナンバーリンクの問題と解の例. 226. 配線問題の専門家以外の参加者ばかりだったこと. 2. 3 (b) 解. 3. 2. 1. 2. 1. 3. 2. 3. 1. (a) 1層では解なし. 2. 1. 3. 2. 1. (b) 2層だと解あり. 図 -5 多層化の効果. 情報処理 Vol.59 No.3 Mar. 2018 小特集 LSI の配線問題─ DA シンポジウムの配線問題解法コンテスト─.
(4) 門家ではなかったことから,誰にでも親しみやすい パズルを問題に選んだことにより多様な参加者を集 める効果があったと言うことができる.また,2016. 参考文献 1) Lee, C. Y. : An Algorithm for Path Connections and Its Applications, IRE Transactions on Electronic Computers, Vol.EC-10, No.2, pp.364-365 (1961). (2017 年 11 月 29 日受付). 年には多層化により問題のサイズが大幅に拡大した. なお,図 -6 における問題サイズとは,各層の升目 の数に層数を乗じたものである.2017 年には 72 ×. 72 × 8 層まで問題サイズが拡大され,小規模な部 品レベルであれば現実の LSI の配線問題にも適用 可能なサイズに到達している.. 105 最大問題サイズ. ■高島康裕(正会員) [email protected]. 104 103 新技術. 102 101. 1998 年東京工業大学理工学研究科博士後期課程修了.北陸先端科学 技術大学院大学 助手,北九州産業学術推進機構 招聘研究員を経て, 2005 年から北九州市立大学国際環境工学部 助教授~准教授として, 勤務.主に LSI 物理設計におけるアルゴリズム開発の研究に従事.. 多層化. '13. '14. ■島村光太郎(正会員) [email protected]. '15. '16. '17. 1990 年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了.同年より ( 株 ) 日立製作所に勤務.高性能プロセッサの開発,制御向けマイクロコ ントローラの開発,高信頼制御装置の開発などに従事.. 図 -6 解法コンテストの問題サイズの推移. 1. LSI の配線問題と解法コンテスト 情報処理 Vol.59 No.3 Mar. 2018. 227.
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