判例研究
(違法争議行為等を理由とする損害賠償請求事件)
大和 通事件・奈良地判(平成12・11・15 労判800号 31頁)
辻 村 昌 昭
㈠事件の概要 ⑴本件事案は,都合三事件よりなる。本件事件の発端は,平成7(1995)年7月の奈良地 区のタクシー運賃引き上げの認可に伴い,労働組合(カイナラタクシー労組,以下Y)が, 賃金引き上げを要求し,平成8年4月に三波にわたりピケを含むストを行ったことにより生 じた労 間のトラブルにある。なお,会社X内には,労 協調を基本方針として活動する大 和 通労働組合(以下「別労組」)がある。この別労組は,それまでどちらかというと労 協 調的であったYが,平成6年9月に,上部団体たる「県自動車 通労働組合」(以下「自 連」)奈良地方本部にオブザーバー加盟をしたことから,この方針に不満を有する者により, 本件事件発生時の少し前の平成7年4月に結成された。事件発生時のXの運転手は,約100余 名であるが,両組合の組織人員は,Y約55名,別労組約48名で,その擁する組織人員から みる限り,勢力はほぼ拮抗していたといえる。 ⑵本件事案の認定された事実は以下のとうりである。⑴平成7年7月,県地区事業者から 運賃引き上げ申請が,時短及び乗務員の賃金改善措置の実施と抱き合わせで認可された。⑵ これを受け,Yは,8月にXに運賃改善を申し入れ,数次の団 の後11月に初めて具体的な 回答がXよりなされた。しかし,同規模のタクシー会社Aの従業員基準の賃金額の引き上げ を求めたが,Xの受け入れることとはならなかった。⑶同年12月末に,多少の上積みの回答 がXよりなされたが,結局Yは拒否。この間,地労委斡旋申請もXの拒否により成立せず。 他方,Xと別組合との間では,この「上積み回答」でもって合意が成立した。⑷翌8年に, 「上積み回答」 の仮払い合意が,XY間で成立したものの,さらなる賃上げについては, 結局合意は成立しなかった。⑸Yは,この膠着状況を打開するために,一方で,市内の他社 の労組加盟の運転手約150名で,「市タクシードライバー共闘会議」(以下「共闘会議」)を結 成し,Y委員長Eがその議長となった。他方,陸運支局構内での座込み等を平成8年3月2 度, べ5日間にわる行政への示威行動を行い,結果的に事業者への行政指導をあらためて 行う旨等の内容を有する支局輸送課長名の「労働条件改善に係る業界指導方針」という名の ⑴文書を共闘会議宛てに提出せしめることに成功した。そして,この文書内容に うかたちで 同支局課長がXの代表取締役であるBを呼び出し,運賃改訂実施と従業員の賃金改善措置の 概要につき事情聴取を行った。行政が,Yを結果的に後押しすることになったが,結局事態 は進展しなかった。⑹すでに,平成7年9月の定期大会でスト権を確立していたYは,平成 8年3月31日付けで「4月3日以後の団体行動開始通告」をXになし,他方で地労委斡旋も 申請せしが,結局X動かず。団 も拒否。ために,同年4月7日のY執行委員会で4月8日 の第一波ストを決定した。 その際,Yの執行委員役員は争議経験が浅いために以下のような争議対応を決めた。イ・ 上部団体の「自 連」委員長Fが,経験豊富さを買われて戦略等を助言・立案(ただし, 直接争議指導をしたわけではない)。ロ・同Fは,弁護士Gに立合を依頼した。合わせて,Y 執行委員等に対し,「暴力ピケやスクラム,座込みの禁止」「出庫しようとする労働者の説得 に努めること」「営業車のみを止めること」「出庫車の前で説得」等のアドバイスを行った。 じて,平和的説得を基本とする行動指針の提示であると評し得る。⑺X側も,スキャップ や車両 散というアクチブなストへの対抗策を採用せず,証拠保全(ビデオやカメラ)と言 論によるスト回避策(立入禁止のプラカードや拡声器)を模索しただけである。 なお,X社の賃金水準がA社と比較して異常に低いわけではないが,他業種の常用労働者 と比較するとかなり低いと認定された。 ⑶ストライキ及び団体行動の具体的な態様は以下のようであった。イ・ストは,都合三波 (4月8日,9日,15日)であった。スト時間は,8日が早朝6時から13時40 まで,9日 が午前5時15 から午前9時まで,そして最後の15日が午前5時5 から12時40 までであ った。各日とも長くて7時間強から短い日で4時間弱で終日ストではなかった。ロ・(8日の 具体的態様)1・参加人員は,Y組合員39名及び外部支援2名で,場所は本社車庫,2・別 労組員Nが予約を理由に出庫せんとしたが,スト参加者数名がN車の前に「佇立」をしたた め,Nは結局出庫を断念,Xは,他の運転手で対応。 その他,運転手1名び職制3名が出 庫せんとしたが,同様スト参加者の「佇立」行動により出庫断念。その具体的行動は,運転 席に背を向けて立ちはだかる・しゃがみ込む・車への寄り掛かり・最後には長椅子を持ち出 しての腰掛け等である。3・Fは,開始から5時間参加,Gも中途一時間ほど抜けたが最後 まで立ち合う。支援演説やXからの抗議への反論等を行なったことが確認されている。4・ 出庫妨害された車は,5台である。5・スト終了後,団 がなされたが進展を見ず。ハ・(9 日の具体的態様) 1・参加人員は,Y組合員39名及び外部支援者6名で,場所は西ノ京営業 所車庫2・Xは,別労組員10名に出庫の業務命令を下すも,Y組合員等が,「佇立」(運転席 に背を向けて立ちはだかる)したり,数 間の「座り込み」等で対応。なお,急患にはY組 合員の担当者を決めて対応。3・F開始時から現場に臨み,Gもスト突入後一時間経過後か ⑵
ら共に最後まで立ち会った。Fは,Xより不退去即時中止・ 造物中止等の警告を受け,B も立ち会いながらメモをしたり,演説をしたりしたが,X敷地内からの退去を求められた。 4・出庫妨害された車は,10台である。5・Xに対し,Y労組員等は,不穏当発言(「あほ」 「詐欺師」等)をし,さらにはX代表取締役Bが,拡声器による退去勧告をしたさいに,耳 元で「 約を守れ」と怒鳴ったことなどが確認されている。ニ・(15日の具体的態様)1・ス ト参加者は,本社車庫ではY組合員28名及び外部支援者20余名,西ノ京営業所車庫ではY組 合員9名及び外部支援者16名,そして天理営業所車庫ではY組合員5名参加。2・Xは,別 組合員に業務命令を下すが,本社及び西ノ京営業所で若干の者が出庫を試みるが,Y組合員 の「佇立」行動や支援者の「座り込み」や「 蓙を敷いての座り込み」で出庫できず。なお, 顧客である急患には,Y労組員から担当者を選び自家用車で輸送した。3・Fは,本社車庫 でストに立ち会うが,Y組合員には直接指示はしなかった。Gは,西ノ京営業所で一時現場 を離れたが,スト終了間際まで立ち会い,テープ録音をしたりしたが,逆にXや別労組員か らの抗議を受けることもあった。4・結局この日は, 計40台の車が出庫阻止された。ホ・ スト態勢解除前の平成8年4月19日,上記⑸の「共闘会議」が,夕方(16時10 頃から16時 50 頃まで),Xのタクシー10台を初めとする他社のタクシー 計23台及び宣伝カー等4台で, 用者の許可なく「運賃値上げ認可条件遵守,労働条件の改善」等のスローガンを記載した 横断幕をテープで貼付し,陸運支局までの市内目抜き道路をパレイドした。執行委員会の議 を経てY組合員12名がこのパレイドに参加した。委員長E,副委員長Hらもこれに参加した。 なお,このパレイドの時間帯に相当するタクシー料金(35,470円)をYはXに納金した。以 上,イ∼ホがYのストライキ及び団体行動の具体的態様である。 ⑷これらの集団的な労働組合の集団行動に対し,Xは以下のような対抗手段を行った。a・ 組合委員長Eを,スト解除後「自宅待機処 」に付す。b・平成8年5月7日に,Xは,組 合三役(E,H及び書記長I)を違法ストの「企画・指導・実行」を理由に威力業務妨害罪 等で刑事告訴す(後に,不起訴処 )c・違法ストの企画・決定・指導,違法なタクシーパ レイドの企画・決定・指導及び別組合員Nと副委員長Hとの入庫めぐるトラブルの際に,N に脅迫・暴行を加えたとしてEを懲戒解雇(この効力を争う民事裁判は,奈良地決<仮>・ 平8・9・27労判714号,奈良地判<本訴>・平10・8・26労判750号,大阪高判<同控訴>・ 平11・6・29労判773号を参照)。違法ストの企画・決定・指導及び違法なタクシーパレイド を同じく企画・決定・指導したことを理由に,H及びIに7日間の出勤停止処 に付した。 さらに,Iを,翌年2月20日のタクシーパレイド参加したことを理由に3日間の出勤停止処 に付した(なお,当該パレイドの態様は,スト態勢時<(3)のホ>と同じであるが,制 度政策要求が主体で賃金改善それ自体を目的とはしていなかった)。e・さらに,Xは,<甲 事件>上記(3)のYがなしたストライキは,違法なストであるとして組合Y,委員長E, ⑶
「自 連」委員長F,及び違法スト積極的加功,助長したとして弁護士Gに対し,出庫不 能による業務損害及び信用失墜等による慰謝料等の支払いを民法709,719条の共同不法行為 により求めた。なお,原告はXの他にX代表取締役B及びCである。また,<丙事件>スト終 了後の5月に地裁裁判官宛ての解雇無効を求める要望書及び5月と11月の2回にわたって一 般市民へ配布された組合新聞が,Xの名誉等を毀損したとして,Y,E及びF等に対して不 法行為にもとづく慰謝料などの支払いを求めた。原告は,Xのみである。 ⑸なお,その他,Y,E,H及びIと労働組合側がX側の一連の法的対抗手段(刑事,民 事)及び 不当労働行為等を,不法行為であると会社側(X及びB,C,D)に対し商法266 条の3に基づき慰謝料等を請求した<乙事件>がある。 ㈡判決要旨(傍線筆者) ⑴<本件ストの違法性> 1・「ストライキは必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものであるが,その本質は, 労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり,その手段方法は,労働者が団結 してその持つ労働力を 用者に利用させないことにあ(る)」「ストライキの過程で不法に 用者側の自由意思を抑圧し,あるいはその財産に対する支配を阻止するようなことは許され ず,これをもって正当な争議行為と解することはできない。」2・「 用者」は,,ストライキ 期間中であっても,(操業を継続し得る)。」「右の理は,別組合または非組合員等により操業 を継続して,ストライキの実効性を失わせることが容易であると えられるタクシー等の運 行を業とする企業の場合であっても,基本的には異な(らない)」3・「労働者側が,ストラ イキの期間 平和的説得活動の範囲を超えて,当該自動車等を労働者側の排他的占有下置 いてしまうことなどの行為をすることは許されない」「右のような自動車運行阻止の行為(は) 正当な争議行為(ではない)」4・(具体的な評価)「別組合員の運転者や管理職がタクシーを 出庫しょうとするのに対し,(前方佇しゃがみ込み,寄りかかり等は,実力による出庫阻止で あり),Xの不誠実団 や地労委への斡旋辞退というXの不当な対応を斟酌しても,本件ピケ は違法」 ⑵<E・委員長の責任>違法ピケゆえ,これを企画,決定,実行した最高責任者として, Xへの損害賠償責任は免れない。<F・上部団体委員長の責任>「Yは独立した企業内組合で あり,本件スト及び本件ピケを敢行することを最終的に決定したのはEであり,Fは(Yに 指揮命令できる立場にない)」ので,不法行為責任なし。⑷<G・弁護士の責任>「(顧問弁 護士としての役割を超えるものではなく,ピケに参加したわけではなく),本件ピケを教唆, あるいは積極的助長しているものでもない。」ので,不法行為責任なし。 ⑶<Xの損害 甲事件> ⑷
1・「(本件争議の目的は労働条件改善が目的で)ストライキを敢行すること自体(は)違法 ではな(い)」「ストライキの過程において,違法なピケが実行された事案である」。したがっ て,民事上の債務不履行による損害賠償の責任はなく,「ピケが違法であることによる損害賠 償の範囲は,本件ピケによって出庫を妨げられたY組合員以外の者が就労できなかったこと によるXの損害にとどまる」2・したがって,その額は,Xの主位的請求であるストによる 「(スト前3か月間の同一曜日の1日あたりの)会社全体としての平 運輸収入を基礎にする」 のではなく,同予備的請求である「(スト前3か月の間の同一曜日につき,ピケ)により不就 労(運転手)の料金合計額を当該料金合計額に要した勤務時間で除し(た)時間単位運収 に各運転手の不就労時間を乗じて」算出すべきである。16万0043円。Y及びEへ遅 損害金 を含めて支払いを命ず。 ⑷<Xの不当労働行為 乙事件> 1・不誠実団 は,労組法7条2号違反,2・委員長Eに対する懲戒処 は,従前の同一事 案やH・I(他役員)へのへの処 の程度や弁明機会の瑕疵等から「実体的にも手続的にも 違法(で)無効」。XのE懲戒解雇処 は,「(違法な争議行為の指導責任を問うというより) Y組合活動一般を対象と(する)Eに対するXの差別的取扱いであると同時にYの組合活動 に対する介入を企図したもの」で,労組法7条1号及び3号違反に該当する。3・その他組 合役員H及びIへの出勤停止処 ,刑事告訴,タクシーパレード参加を理由とする組合役員 Iへの出勤停止処 等は,不当労働行為ではない。また,Y及び役員B,C,D等の別組合 結成への関与及びY組合員への脱退工作の証拠はない。4(結論)Xは,不誠実団 及びE の懲戒解雇につき,Y及びEに対して損害賠償責任を免れず。しかし,B,C,D等のYへ の一連の対応は適法な認識の下になされたもので商法266条の3の法律要件である「悪意又は 重過失」まであったとはいえない。Xに,Yへの不法行為による慰謝料50万円と弁護士費用 5万円及びEへ同慰謝料30万円と弁護士費用3万円を支払いを,遅 損害金を含め命ず。 ⑸<名誉毀損 丙事件>略 ㈢本件事件の法的論点 本件事案については,以下の検討すべき問題点がある。第一に, 通運輸労働者が労働争 議をなすさい,「前方佇立」「しゃがみ込み」「寄りかかり」等の行為は,いわゆる「平和的説 得活動の範囲」を超え違法な争議行為と評されるかである。このことは,本件争議行為の事 案に即しての「労働争議行為の正当性」の論議と絡めての 察が必要である。第二に,もし 本件争議行為が違法と評されるならば,損害賠償の範囲は,ストライキ(民事上の債務不履 行)による損失は含まれず,「違法なピケによって」出庫を妨げられた別労組員や管理職が就 労できなかったことによる会社の損害額としていることの是非である。これは,判示は損害 ⑸
賠償を労働組合Yに対してのみならず,組合委員長であるEに対しても是認していることと 合わせて論議・検討されるべきである。第三に,「納金行為」を付随させたタクシーパレード は,はたして違法な組合の団体行動であるか。そして第四に,判示は労働組合Y及び組合三 役(E,H,I)らの損害賠償請求を是認するさい,不誠実団 と合わせて,Eの懲戒解雇 を無効との法的評価を下し,そして該懲戒解雇を不法行為として損害賠償の請求を認めたこ との法評価である。つまり,旧来の論議では労組法7条が行政救済の規定であるか,司法救 済の準拠規定でもあるという点及びあらたな違法行為類型(事実行為類型=不法行為)を定 めたものと評すべきか否かが合わせて論議となった。本判示は法律行為上無効と評し,不利 益取扱いと同時に支配介入としてストレートに不法行為の成立を認めている論理の問題があ る。(第三の問題は,検討を割愛)。 第一の問題点から検討する。いわゆるピケの正当性については,最高裁が朝日新聞西部本 社事件・最大判(昭27・10・22 民集6巻9号857頁)で,いわゆる平和的説得論を展開して 以来,「争議行為の本質=労務不提供」論があたかも基調であるかに えられている。事実, 本件事案と同様な事件である御國ハイヤー事件・最二小判(平4・10・2 労判619号8頁) でも,そうである。しかし,市民法的な衡平性ではなく,集団的な労働関係における実質的 な衡平を争議行為の法的評価基準として 慮するとこの結論は,判例法理を 察しても必ず しも妥当とは思われない。事実,刑事事件ながら主婦の炭車前の座込みピケにつき,最高裁 は,三友炭礦事件で争議行為を消極的不作為的なものに限定せず,例外的に「諸般の事情」 からして積極的作為的な実力行為をも正当と認める余地を認めている(最三小・昭31・12・ 11 刑集10巻12号1605頁)。この争議行為の衡平性をめぐる議論は,他ならぬ本件事案と同じ 通運輸労働者の争議行為の特殊的な争議戦術である「キィ・車検証保管,車両確保,タイ ヤの空気抜き,およびタイヤの車輪はずし」等に関する判例法理を 察すれば問題点がより 明らかになる。これは,他ならぬスト脱落者やスト代替労働者による操業継続容易なタクシ ー業における争議行為の争議行為戦術の法的是非を巡り象徴的に論議されてきたといえるか らである。 タクシー労働者の「キィ・車検証保管戦術」に関する若干の判例をみても,争 議行為を消極的不作為的なものに限定するとは限らないものが下級審ほど顕著である。これ は,民事,刑事事件を問わずそうである。例えば,1・群馬中央バス事件・前橋地判(昭29・ 8・3 労民集5巻4号)は,キィ保管行為を「全面的排他的な職場占拠」でないことから, 違法ではないとする。2・川越自動車事件(刑)・浦和地判(昭38・1・16 高裁刑集17巻3 号)は,労 対等原則の えから,非組合員の就業阻止のためのキィ・車検証保管は,「ハイ ヤータクシー営業の運転手の争議行為として許容された範囲のもの」(傍点ー筆者)と評価す る。3・加賀 通事件(刑)・金沢地判(昭47・5・22 刑裁月報4巻5号)は,タクシー業 界がスト破り極めて容易である点あるいは慣行等の「諸般の事情」からキィ・車検証保管行 ⑹
為を正当な争議行為と評した。4・大阪平和タクシー事件・大阪地判(昭42・5・18 労旬 別冊660号)は,労 の流動する対立拮抗関係(会社の不当労働行為,第一次占有者たる運転 手からの任意の引渡し,スト脱落者の就労行動,暴力的なピケ破り等)を仔細に検討しつつ, キィ・車検証保管行為を可罰的違法性論から無罪とした。5・大洋運送事件(刑)・高 高判 (昭47・1・27労旬810号)は,スキャップ阻止,借り上げ車両による会社側の操業への対抗 等から「集団的な労務不提供」に争議行為の正当性を限定する えを採用せず,キィ・車検 証保管,車両前の座り込みを可罰的違法性論から無罪とした。これらの判例は,結局争議行 為の本質を「集団的な労務不提供」に限定するか,それとも「 用者の正常な業務の運営を 阻害するもの」という本質論議をからませながらも,結局集団的な労 関係の場において労 の実質的な衡平をいかに法的評価に構成すべきかいう試みの表現と見てよい。とりわけ, 争議行為の正当性は,本件の中心的テーマと関連づければ結局のところ民事損害賠償の是非 論と関連せざるを得ないわけであるから,団結権・争議権の保障を不可欠的な前提として, 正かつ対等な労 関係を自主的に形成せしめるという現行労働法の理念をどう法的に構成 するかであるといえる。これを具体的に論ずるならば,イ・労働組合がなす争議行為の態様 は,争議行為に対し 用者の施す対抗策に対応して相対的に流動するものであるから,この 具体的な態様を無視して争議行為の手段,方法の正当性の範囲を一般的に限定づけて 察す る えは,説得性を欠くものといわざるを得ない。ロ・それゆえ,実力行 の許容される限 度を固定的に えることは当を得ない。ハ・争議行為の補助手段たるピケもそれが説得のた めであり,団結示威行動であるかぎり適法なものと評してよい。そして,ニ・スト破り・ピ ケ突破等受けとめる限度が消極的・防衛的なものであるかぎり違法と評し得ないのではない か(刑事事件であるが,都民 通事件・最二小決<昭45・12・17>の色川幸太郎裁判官の反 対意見参照)。本件違法ピケと評された「前方佇立」「しゃがみ込み」「寄り掛かり」等よりは るかに作為的であり,その限りで違法評価にさらされ易い「キィ・車検証保管行為」の正当 性評価が争われた上記の判例中では,第一次的にキィ・車検証が運転手が占有していること などから単純な物権侵害とは評し得ない点を「非排他的職場占拠」と評したり組合員やスト 脱落者への就労行動を争議対抗行為,もっとわかり易い表現をなせば,労働組合の争議権侵 害と評せられる<スト破り>である評価して該キィ・車検証保管行為の法的評価を下したも のであるといえる。その意味で,上記イ∼ニをこと「キィ・車検証保管行為」に具体化した ものといえよう。もとより,この評価基準は,争議行為がなされた当該職種等で自ずと異な るのいうまでもない。これは,西ドイツ時代になされた連邦航空管制官の「のろのろスト」 (Bummelstreik),「遵法闘争Dienst nach Vorschrif t],「病気休暇戦術go sick,sickout],「スロウ・ダウン go slow」 という集団的労務不提供でしかないのに,その争議の影響力の故,社会的相当性を欠くとさ ⑺
れたことは,法制度の違いはあるがその基礎となる えには相通ずるものがあるとえよう。< しかも,この争議は,当初から管制官の組合である航空官制同盟[VDF]の指導の下にな されたわけではないが,連邦裁判所第六民事部・1978年1月31日判決は,国からの組合に対 する損害賠償請求を違法ストの幇助から是認した。後藤清「西ドイツ航空管制官の違法スト と連邦裁判所判決」・ジュリスト684号参照>。 以上のような基本的な論点から本件判旨を検討すると,⑴1は,上記イで指摘したように, まさに争議行為の手段,方法の正当性の範囲を一般的に限定づけて「集団的労務不提供」論 に限定して 察した。その後段の「タクシー等の運行を業とする企業の場合」でも,この理 は変わらないとう判文から見て,当該争議がなされている職種や業界の特殊性においても正 当性の一般的な範囲は変わらないと結論づけたものといえよう。これは,争議行為における 作為的な行為を「諸般の事情論」から正当性ありと評すべき場合もあるとした三友炭礦事件 最高裁判決とも異質なものといえる。また,本件事案よりもさらに積極的に車庫占拠行為を 労組側が行なった場合のピケの評価が争われた御國タクシー事件・最二小判(平4・10・2 労判619号)の場合よりも,争議行為の正当性評価につき限定的であるといえる。これをもっ と,具体的にいえば,まず,本件「前方佇立」「しゃがみこみ」「寄り掛かり」等は,団結示 威的な側面があり,ピケ破りをなす就労行動への消極的・防衛的なものでしかない。判示が 評するような操業妨害のために生産手段を組合側で占有し,労働力を近付けないという「(生 産手段たる)自動車等(を)排他的占有下に置いた」といえないものである。一部の営業所 での争議行為であり,終日ストでもない,出庫でき得なかった車も限定的でありるという事 は,争議の際には,操業それ自体「平常時」より限定的であるべきという集団法理の実質的 な衡平原則(大沼邦博「争議行為中における 用者の操業の自由」<ジュリスト増刊昭和53年 度重要判例解説>,拙稿「争議中の 用者の操業の自由と業務命令権<労判323号>参照,と もに山陽電気軌道事件最二決・昭和53年11月15日<労判308号>の判例研究)からみて格段に 違法性を強めるものとは思われない。しかも,顧客である急患には組合員が自家用車の代行 運転で対応したのであるし,本争議前に 裂結成された別組合員への就労阻止の側面を法評 価において欠落すべきではない。判示は,「動く職場」たる個別のタクシーだけをとらえて「生 産手段の排他的占拠」と断ずるのは的を得ないい。くわえて,本件ピケは,不誠実な団 や 陸運行政行政指導にも頑なに応ずることがなく,あえて別組合員及び管理職を 嗾させもっ て操業を継続させんとした会社側への対応行動としての「前方佇立」「しゃがみ込み」「寄り 掛かり」は,炭車前に座り込んだ組合婦人部長の作為的なピケを無罪とする「諸般の事情」 を 察するさいの内容である前記三友炭礦事件最高裁判決の<組合側が福利施設の改善を求 め,しかも賃金引き上げを要求するも経営側が会社側がこれを拒否または実施をネグレクト し,さらに,組合脱落者が就労を開始せんとしたことに対する抗議行動>という事情とさし ⑻
て変わりは無いように思われるが,判示はこの最高裁の論理を 察したようには思われない。 判示はタクシー業界という運輸業務の特性及び労働市場の特性(労働者の開放的な競争度が 著しく高いこと タクシー運転手の非正規雇用率の高さは,歴 的にも,現在においても 他の業種の比でない)を 察する中から該「前方佇立」「しゃがみこみ」「寄り掛かり」が損 害賠償を肯定づける程の加害行為としての違法性を有するか否かについてもっときめ細かな 判断をすべきであったと思われる。なお,これにはピケッティングの正当性につき平和的説 得論によりつつも,「スト破り」「スト脱落者」「統制違反者」には,作為的ピケが許容される とする東洋プライウッド事件・名古屋地判(昭50・5・21 労判239号)が参 となり得よう (蓼沼謙一「大法 巡歴/労働法 第 期> 3『ピケティングの正当・不当』法学セミナー 1981年5,6,7月号参照」は,操業の自由は文字通りに「操業」として機能したことがな い点を判例の事実 析から結論づけている)。なお,積極的作為的な争議行為の法評価は,争 議行為中の個別の違法行為の法評価の問題として法的処理がなされるべきであり,「 蓙を敷 いての座り込み」「長椅子を持ち出しての腰掛け」等が,該行為の部 的な違法性を導き出す が,本件争議行為それ自体の違法性に必ずしも直結するわけではない(なお,平和的説得を ピケッティングの正当性の限界であるとする下井教授も,労 対等原則から具体的事情を斟 酌することの必要性を強調しているが,<下井隆 「労 関係法」有 閣・1995年刊193頁> 本判決は,文言としてあたかもタクシー業の特性を 察しているかのような論展開している が,実態への 察は何もなされてない。) 第二の問題点を検討しよう。本判示は,本争議行為が,違法であるという前提に立って, 以下のような論理を展開している。イ・損害賠償の範囲であるが,集団的な労務不提供(債 務不履行)にかかわる損害については,賠償責任を認めず(労組法8条をあえて明示),ピケ により出庫を妨害されたY組合員以外の者が就労でき得なかった部 に限定をした。具体的 には,<スト前三ヵ月間の同一曜日につき,各不就労運転手の料金合計額を当該料金額合計額 に要した勤務時間で除して一時間あたりの平 運輸収入(時間単位運収)を算出し,これに 各運転手の時間単位運収に各運転手の不就労時間を乗ず>という算式方式を下に,各運転手 ごとの喪失運輸収入を算出し,これから必要経費や人件費等を差し引いた額をYの損害額と した。ロ・その責任主体をY(組合)及びE(委員長)とした。 イ・の方から検討しよう。違法争議の損害賠償の範囲をいかに画定するかについて,不法 行事の要件議論とならんで,従来の判例の主流が「違法争議と懲戒」事案であったため決定 的なな先例たり得る判例が必ずしもあるわけではない。本判示は,「前方佇立」「しゃがり込 み」「寄り掛かり」等の行為を就労希望者への違法なマスピケと評して,強制的な「債権侵害」 の不法行為と結論づけたものである。侵害された法益は,「営業権」という明確な権利性を意 識したというより「営業活動上の利益」としたものと思われる。「故意・過失」要件について ⑼
は,判示はストレートに是認しているが,「納金戦術」をともなうタクシーパレードが,かな り大々的になされている事実が認定されていることから,「前方佇立」「しゃが込み」「寄り掛 かり」等につき違法性の認識が果たしてどの程度であったかのかという点の議論がもっとな されるべきでなかったか。前述のタクシー業の特殊性等からみて,場合によっては違法性の 認識が欠如しているとなれば故意・過失要件が阻却されることも無きにしもあらずといえよ う(事実,納金スト戦術がタクシー業界の労働組合の特殊争議戦術でかなり採用され,これ に関する判例もかなりある(例・ユニバーサルタクシー事件・大阪高判・昭和47年2月10日・ 労判812号)。また,賠償範囲は,違法ピケにより非組合員(別労組・管理職 )が就労でき なかったことによる会社の損害にとどまるとし,トライキによる損失はふくまれないとした 御國ハイヤー事件・高 地判(昭和61年5月6日 労判537号)の論理を採用したものと思わ れる(前田達男「ピケティング 御國ハイヤー事件」・労働判例百選<第七版>218頁参照)。 労基法12条の平 賃金算定法に類比させたとも思われる手法による賠償額の計算であるが, その拠って立つと所は,条件説を排し,できるだけ偶発的要因をも排した「相当因果関係」 論に依拠した賠償額の範囲の画定であるといえよう。その意味で,会社全体の運輸収入を基 礎とする主位的請求を排し,各運転手の1時間あたりの平 運輸収入を基として賠償が画定 した えは,争議行為全体の法評価の問題はさておき,より理にかなっているものと思われ る。ただピケのために就労できなかった別組合員の賃金請求は,一種の不可抗力と評されて おり, 用者は休業手当を払う必要がないと一般に解されているが,この別組合員の賃金額 が損害賠償の範囲の中で検討されていないことに論旨不備の嫌いがある。 ロ・の点に移ろう。判示は違法な争議行為の損害賠償につき労組の委員長であるEもその 主体とした。違法な争議行為につき損害賠償を労組に対して請求できることにつては,異論 はないが労組委員長にまで賠償責任負うことを肯定した点からみて,判示は明言しているわ けではないが,結局民法44条第1項の準用ないし類推適用によったものと思われる<みすず 豆腐事件・長野地判・昭42年3月28日 労民集18巻2号参照>。この点につき争議意思を逸 脱したものでもないにもかかわらず,争議行為一般につき委員長に違法な争議行為の賠償責 任を認めるということは,争議行為の本質や労組と社団との法的な性格論議もさることなが ら,本件の場合,別訴懲戒事案で,労組委員長は「懲戒有効」という法判断が下されている こと<大和 通事件・大阪高判・平11年6月29日 労経速1719号,労判773号>と合わせて えるとEに対してあまりにも苛酷な現実に追いやることにならざるを得ない。まさに踏んだ り蹴ったりである。組合員の 意によりつつ,争議行為全般にわたり抑制的に組合員を統制 して来た委員長の所為や会社側Xの不誠実団 や運輸行政の指導の事実上のネグレクトを鑑 みると集団的な労 関係の場における労 の実質的な衡平やその原則の保障原理である争議 権保障の点からみてもきわめて疑念がある判決である。労働者が労働組合に結集し,組合を
通じてその要求を提示するという労働法原理そのものを否定することを意味する。判示は, ストライキを含めた争議行為が,「共同に企図された個別行為として多数の者によって担われ る(集団行動)」(G・A・Bulla「争議行為の二面的集団的本質」<ニッパーダイ還暦論集 C・ H・BECK SCHE VERLAGSBUCHHANDLUNG>182頁)という認識が決定的に欠如して いるといえよう。 第三の問題点は,本稿では割愛したので第四の問題点を検討する。判示はいう。〝Xの委員 長Eへの懲戒解雇処 は,「実体的にも相当性を欠(き)」「(手続的に)弁明の機会を一切与 えなかった(ので)違法・無効」" と結論づけた。そして,Eに対しては不利益取扱いを理由 に,Yに対しては支配介入と評価し,これらが「不法行為」に該当するとし損害賠償として 慰謝料及び弁護士費用の支払いを命じている。法律行為無効と合わせて損害賠償請求を是認 する結論であれば理解できないわけではない(判例・大日本印刷事件・最二小昭和54・7・ 20 民集33巻5号582頁)。しかし,本件は第二の問題点でも検討をしたように違法な争議行 為及びタクシーパレイド等の組合活動を違法とし,労組及び組合委員長へ会社Xに対して損 害賠償の支払いを命じておきながら,他方で組合委員長の解雇を不利益取扱い及び組合Yへ の支配介入であると評するならば,その「不当労働行為の意思の推認」についてどのように 立論すべきかが論ぜられるべきである。不当労働行為成立即不法行為成立といういささか荒 っぽい論理でもって,損害賠償を認めている。判示は,労組委員長への懲戒解雇が「組合活 動一般を対象としてXに対する組合活動一般を対象とする」差別的取扱いであると指摘して いる点からみると,「被侵害利益」を不法行為で保護すべき組合活動一般としたものといえる。 しかし,不当労働行為の意思の推認から,不法行為の「故意・過失」の認定判断をする手法 が,とりわけ支配介入を肯定する際に決定的に欠如している。この点で,判示は,第二番目 の法的論点と同様,理由不備の謗りを免れないと思われる。 (文中引用外の参 文献) 蓼沼謙一「争議行為のいわゆる民事免責の法構造」(一橋論叢第40巻第2号) 大沼邦博「「違法」争議行為と不法行為責任」(学会誌「労働法53号」) 浜田富士郎「違法争議行為に関する「損害賠償責任の帰属方」論 察」(学会誌「労働法53 号」) 横井芳弘「団結権の保障と不当労働行為」(片岡・横井編「演習 労働法」 青林書院新社 昭和47年 45頁以下) 山川隆一「不当労働行為と不法行為」(日本労働協会雑誌341号)
Eine Anmerkung uber eine Rechtsprechung vom
Arbeitskamp(Yamato Kohstu Fall).
Konnen Arbeitsgeber jederzeit einen Ersatzanspruch wegen entgagner Gewinn durch den Streikposten wahrend des Arbeitskamps erheben?
LG Nara v.15.1.2000Rodoh Hanrei 31/800
Masaaki TSUJIMURA
Yamato Kohtsu ist ein Taxiunternehmer. Bei einem Arbeitskamp hat der Unter-nehmer gegen eine Rheihe Aktionen einer Gewerkschafts und ihrer Fuhrer wahrend des Arbeitskampfs einen Anspruch auf Schadenersatz geklagt.Die Richter haben
den Anspruch auf Schadenersatz erkannt.Aber ich unterstutzt nicht die harte Meinung dieser Rechtsprechung vom Arbeitskamp.
Streikposten sind die bei einem Streik von der Gesamtheit der Streikenden bzw.ihrer Streikleitung ernannten und eingesetzen Personen,deren Aufgaben und Tatigkeiten zur wirksamen und erfolgreichen Duruchfuhrung eines Streiks beitragen konnen.
Das Recht der kampffuhrenden Partei,Streikposten bei Arbeitskampfen einzusetzen,ist Gegenstand des den Koalitionen durch Art.28 der japanischen Verfassung garantierten Ausubugs und Betatigunngs.
Fur Streikpostentatigkeit und Streikposteneinssatz gelten die gleichen Schr-anken fur das Streikrecht selbst besonderes bei dem Taxifahrerarbeitkampf. Soweit ein-e im Garantierereich der Koalitionsfreiheit liegend StreikpostenmaΒnahme mit Gurundrech-ten anderer oder mit sonstigen verfassungsrechtlich geschutzGurundrech-ten Rech-tsgutern kollidier-t,sind die wiederstreitenden Interessen nach dem Gurundsatz der praktische konkordanz zum Ausgleich zu bringen, wodurch der Streikpostenta-tigkeit weitere Schranken gezogen werden konnen.Aber nach der herrschende Meinung die rechtrichtige Schranken der Kampfhandlug sollen die Arbeitsniederlegung als solche.Die positive,uber die bloΒe Arbeitsniederlegung hinausgehen-de Kampfmittel als Eingriffe in das Vermogensrecht in Sinne von Art.709des japanische burgerlichen Gesetzes werden(eine Rechtsverletzung des Glaubigers <Arbeitsgebers>.)
Jedoch nach meiner Meinung muss eine rechtswidrige Kamphandlung in ihren Recht sfolgen unter der Berucksichtigen ihrer kollektiven Natur entschieden werden.
Es wird auch verlang ,die substantelle Gleichheit und Paritat im kollektiven Arbeit-sverhaltnis.Weil das Arbeitsgeber Arbeitsnehmersverhaltnis der Taxisfahrerarbeitern aus dem Atypischesformen ist und eine groΒer Prozent von Arbeitern nichctorganisier-ten sind.Dann ein Arbeitsgeber des Unternehmers ist leicht den Streikbrechern anzustel-len. Die in der Literatur und einige Arbeitsrechtfall verbretete Definition vom Arbeits-kampf stutzt sich auf einen statausbezogenen Ansatz. Diese Ansicht richtet nach vers-chiedenen Umstandenen (unfair labor prctice usw.). Ich bin dafur auch.