地域を基盤とした社会福祉の基礎的研究
渡 邉 洋 一
問題の所在 筆者は,拙著「コミュニティケア研究」(注1)において,地域福祉概念の曖昧さを指摘す るとともに,地域福祉概念の枠組みについては,「新しい社会福祉」という形態へと発展途上 にある止揚状況を示しているとした。その地域福祉の枠組みと新しい社会福祉との関係性を 察するために,次のような分析軸を設定をした。それは,「存在の認識に規定される地域福 祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」とする分析軸である。もちろん,「存在の認識に 規定される社会福祉」と「意識の認識に規定される社会福祉」という枠組みであってもほぼ 同意であるとした。しかし,同意であるとしたが社会福祉と地域福祉の差異は認識しなけれ ばならないことが前提である。その意味の差異について以下で 察するなかから問題を提示 したい。 上記の地域福祉の枠組みと分析軸に関して牧里毎治から,抽象的であって操作概念ではな いかとの疑問を投げかけられている(注2)。本稿では,それらの批判に対して応えるという よりも,前著において説明が不足していた側面を加筆するためにさらなる 察を加えること としたい。 いずれにしても,このような枠組みが求められる背景には,地域福祉概念が基本的曖昧さ をもつことがある。とりわけ,社会福祉概念と地域福祉概念の位置関係や差異について明確 な枠組みを提示することには困難があった。しかし,社会福祉基礎構造改革の動向や平成12 年の社会福祉法の制定によって,地域福祉という用語が社会福祉関係法律に定着しているな かで,社会福祉法がなぜ地域福祉の推進を理念とするか説明されていないことが危惧される。 厳格な概念を持たないまま,なんでも地域福祉として扱うのでは学問として問われることに なろう。 ⑴第1 地域福祉の構造問題 ① 社会福祉の把握方法の差異 社会福祉という領域が持つ特性と学問的な位置を 察するという行為なしに,社会福祉と 地域福祉の関係性や構造を論じること自体に矛盾があるといえる。このこと自体の検証は膨 大な作業であるために具体的な検討は今後の課題とする。しかし,前提条件の整理に取り組 むため次のような検証をしてみたい。 それは,既存の社会福祉概念の枠組みに関する検証である。社会福祉は,日常生活に支障 を持ち,なんらかの社会的支援を必要とする状態になった者への問題解決を目的とするとい う程度の理解が一般的である。戦後,我が国の社会福祉は,公的責任のもとに積極的に整備 されたとは言い難い側面もあるものの,この目的を持って構築されてきたといえる。この社 会的援助における制度的な側面としては,施設サービスと在宅サービスなどの包括的なサー ビス提供のシステムにあることはいうまでもない。しかも,社会福祉と保健・医療・教育な どの多くの領域との連携のもとに提供される総体であるわけである。このことが,制度的な 社会福祉の側面である。そして,この制度的社会福祉は,公的サービスの拡大と拡充として 21世紀の少子高齢社会に向けて整備が進んでいる。一方では,社会的援助における非制度的 な側面として,ボランティア活動や住民相互の支え合い活動などがある。この日常的な生活 に根ざす側面は,インフォーマルな社会福祉活動の側面であって,公的な権力に対置した「活 動性」や「参加性」を保持したものであるといえる。 基本的理解として,このような制度的な社会福祉と非制度的な社会福祉の領域が共に豊か になることが求められる。したがって,社会福祉のあり方が地域という福祉に転換している 状況では,制度的社会福祉と非制度的社会福祉を峻別して整理検討する必要がある。 この整理検討の視座は,価値認識の視点に着目しており,社会福祉の制度的なサービスの システムを仮に「存在の認識」,社会福祉の心や理解などを仮に「意識の認識」とする分析軸 を設定してみたい。地域福祉には,地域住民の社会福祉理解,当事者の福祉参加など意識に 表−1 制度的社会福祉と非制度的社会福祉 制度的社会福祉 非制度的社会福祉 具体的援助 精神的援助及び活動,福祉啓発 在宅保健福祉サービスや施設福祉福祉サービス 住民参加型活動やボランティア活動 存在の認識に規定される社会福祉 意識の認識に規定される社会福祉 ⑵
関わる側面が多いからである。表−1に示したように,「存在の認識」に規定される社会福祉 は,制度的社会福祉という枠組みに親和性を持ち,在宅保健福祉サービスや病院・施設福祉 サービスと親和性を持つと えることができる。そこでは公的責任が第一であって,介護保 険事業に見られるような具体的援助という特性を持っている。また,「意識の認識」に規定さ れる社会福祉は,非制度的な社会福祉という枠組みに親和性を持ち,住民参加型活動やボラ ンティア活動と親和性を持っている。しかも,自発的活動性という特性と意識性という特性 の両面を保持している。具体的な問題解決を図ることよりも,社会福祉理解や精神的援助の 側面が強いといえる。もちろん,「存在の認識に規定される社会福祉」と「意識の認識に規定 される社会福祉」は制度的社会福祉と非制度的社会福祉に単純に分離して説明はできない。 表−1のような平面的構造ではなく,立体的で交錯した構造であって,その両者の関係は親 和性を確保しているという程度の理解にとどめたい。 ② 社会福祉概念と公的責任 このような制度的社会福祉の側面と非制度的社会福祉の側面の位置関係や認識の強弱によ って,社会福祉概念と地域福祉概念の差異として説明されることも単純な理解としては可能 であろう。すなわち,公的責任と制度的社会福祉の側面の強調が社会福祉を意味しており, 非制度的社会福祉の側面の強調が地域福祉の意味を持っているという説明の方法である。 もちろん,この公的責任には,国家責任を第一とする「中央集権型社会福祉」を意味する 側面と,地方自治責任を第一とする「地方分権型社会福祉」を意味する側面がある。 さらに,視点を変えると次のような課題もある。市民生活の不都合や日常生活の障害の解 決にあたって,「行政依存型の福祉サービス」と「市民自治型の福祉サービス」との間の公的 責任の課題である。社会福祉ニーズをすべて行政責任型サービスをもって充足するというこ とは財政的にも困難である。重篤な社会福祉ニーズについては,行政責任型の福祉サービス によって充足されるとしても,日常的で簡易な社会福祉ニーズに対して,市民自治型の福祉 サービスもしくは,市民自治型の相互支援活動によって充足されるべきであろう。この市民 生活の不都合や日常生活の障害に対する公的責任と住民側との責任の関係性が見えにくいこ とがある。もちろん,個人や家族の責任,近隣地域社会の責任との間を同一に論議はできな い。とりわけ,既存の社会福祉概念では,「個人や家族の責任」と「国家責任」という極端な 対立概念をもって えられてきており,「個人や家族の責任」と「国家責任」との間にある, 「近隣地域社会の責任」と「地方自治体の責任」を曖昧にしたまま説明されてきた。また, 「近隣地域社会の責任」という視点は,既存の地域福祉研究では論議の対象とならなかった が,地域社会を基盤とした社会福祉のあり方を検討する枠組みとして重要であると えてい る。コミュニティ・ケア形成のためにも稿を改めて具体的な検討をしたい。 ⑶
当然なこととして,行政責任は,「国家責任」と「地方自治体の責任」を意味する。この責 任は地方分権という方向にあっても第一義的な責任は国家であるが,サービス提出の主体的 責任は地方自治体に委譲されつつあると理解できよう。しかし,そのための財政面の委譲が 行われていないことは事実である。したがって,社会福祉サービスに関して,どこまでの段 階を国・地方自治体の責任とすべきかという論議がある。この論議は,社会福祉サービスの 水準についての国・地方自治体との責任分担から,現行の国民負担率の水準と比較した国・ 地方自治体の提供責任に関する論議まで幾つかの論点がある。 このような公私の責任関係は,かって,家族・親族などの福祉力によって解決していた部 分と,近隣・友人などの地域の福祉力によって解決してきた生活問題・生活障害(育児問題 や老親介護問題など)を社会化するにあたっての,制度的社会福祉の側面と非制度的社会福 祉の側面の責任の強弱としてとらえることができる。この公的責任の問題は,社会福祉問題 の根本的な把握方法によって異なる。高度産業社会における資本主義的な構造問題として把 握する場合には,制度的社会福祉の側面の公的責任論が第一となる。一方では,新たな市民 社会の構築という視点から,例えば,「大きな政府より小さな政府」とする視点などからは, 制度的社会福祉の側面の公的責任を第一としつつも,非制度的社会福祉の側面を重視するこ ととなる。この視点の差異は,高度産業社会の構造的把握の視点であって論議がある。本稿 では,この課題を明記することに留めたい。 なお,三浦文夫が「社会福祉サービスの運営の公準」(注3)として課題を提起しているこ とが参 となる。この三浦が指摘する「社会福祉の公準」という視点は,社会福祉サービス の責任が,我が国にあって「市民契約化」しているのかという視点からは説明されていない ように える。それは,憲法第13条や第25条を背景とした「幸福を追及する権利」や「最低 生活の国家保障」という段階では,国および地方自治体と市民の関係であって,法律上(社 会福祉法など)にあっても租税負担の上からも成立をしているといえる。しかしながら,よ り積極的な社会福祉サービスの醸成の段階における市民の権利と義務は,「市民契約化」して いるのであろうか。例えば,知的障害者福祉法や身体障害者福祉法では,より積極的な社会 福祉サービスを受ける権利保障はしていない。老人福祉法においても,より積極的な社会福 祉サービスを受ける権利は未成立であるといえる。高齢者の領域での権利は,介護保険制度 が社会保険方式という手段を導入することで,重篤な高齢者への要介護認定による一部のサ ービス経費の自己負担という手段で権利保障を図ろうと試みている状態にある。しかし,高 齢者の生活障害に関すること自体を保障する権利ではない。あくまでも,社会保険方式によ る社会福祉サービスの経費負担と最低のサービス水準の問題論議でしかないといえる。すな わち,積極的な社会福祉サービスを受ける権利は,法律的にも保障はされていないといえよ う。国および地方自治体の努力目標であり,努力義務の範囲といえる。この視点からも,よ ⑷
り積極的な社会福祉サービスを受け,地域社会において自立生活を継続・維持していく権利 を高齢者や障害者に認知していくことが不可欠である。したがって,この視点から障害者福 祉の領域にあって権利法の制定が望まれる。 しかしながら,一般市民は過度な税金負担は容認していないといえよう。積極的な社会福 祉サービスを受ける権利には,高福祉高負担という論議が避けられない壁として存在する。 まして,社会の人口構成が従属人口の増化という現象にあっては,国民負担と世代間負担の あり方として重大な課題となっている。したがって,「社会福祉の公準」を「市民契約化」す ることが求められているといえる。 ③ 社会福祉から地域福祉への転換の視座 我が国の社会福祉は,制度的・法律による縦割りのシステムであって,国家責任第一主義 であったことがいえる。それは,老人福祉・障害福祉などの関係法律によってサービスを提 供し,国の機関委任事務体制として管理する え方であった。具体的には,我が国の固有な 措置制度として典型的に現れてきた。すなわち,措置型社会福祉は,縦割り管理型福祉であ ったわけで,社会福祉の制度自体が措置制度に依拠してきたわけである。 従来の社会福祉は,具体的日常生活の欠損として認識して,その解決のためのサービスを 提供する総体として制度的社会福祉の側面と非制度的社会福祉の側面があるとする説明が一 般的であった。 既存の社会福祉から地域福祉への転換の視座は,脱・中央集権型による「地方分権」,「規 制緩和」が軸となって進行してきた。包括的な社会福祉の一分野としての地域福祉ではなく, 社会福祉概念の地域化であって,地域社会を基盤とした社会福祉サービスとボランティア活 動などの総体である。ある種の地域型社会福祉であるといえよう。もちろん,英国のシーボ ーム改革の動向や北欧のノーマライゼーション思想,米国の自立生活運動などの影響が大き く,コミュニティケア型社会福祉へと構造が変革しているといえる。このような新しい社会 福祉の形態を地域福祉と呼ぶという程度の理解が一般的であった。しかし,社会福祉基礎構 造改革や社会福祉法の成立は,介護保険体制の整備充実の動向とあいまって,地域福祉の実 態概念化として進行している。理念型地域福祉が実態概念を保持して,新しい社会福祉概念 へと発展する止揚状態にあると理解をしたい。 この止揚状態にあるとする理解の視点からは,「存在の認識に規定される地域福祉」と「意 識の認識に規定される地域福祉」とする枠組みを設定しなければ,既存の地域福祉の延長が 地域福祉の実態概念であると理解される誤解が生じることとなる。社会福祉の発展過程にお ける地域福祉の位置は止揚状態にあって,絶えず変動・変革されている。この視点によって ⑸
「地域福祉の発展運動」を理解するという立場に立つ筆者は,「存在の認識に規定される地域 福祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」という分析軸を設定して「地域福祉の発展運 動」を整理したいと期している。この「地域福祉の発展運動」という認識が,社会福祉から 地域福祉の実態概念への転換の視座である。 ④ 社会福祉の管理構造の課題 筆者が「存在の認識に規定される地域福祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」とす る枠組みをあえて設定した視点は二つある。第一の視点は前記した「地域福祉の発展運動」 という視座である。第二の視点は「社会福祉の意識」と地域福祉が持つ「脱・社会福祉の管 理構造」という視座である。第一の理由は,住民意識や社会福祉理解に基づく社会福祉のソ フト面への着目にあった。第二の理由は,「社会福祉の管理構造」の強化への危惧という視点 にあった。これらのことを整理して社会福祉の管理構造として理論化したのは高澤武司であ る(注4)。 ここで,概念整理を試みると,「存在の認識に規定される地域福祉」と「存在の認識に規定 される地域福祉」は,既存の社会福祉が持つ管理構造に対する警鐘である。例えば,既存の 社会福祉が,障害者問題における「各種手帳問題」や縦割り法による分類収容主義の残存性 などを保持していることがあげられる。したがって,草の根運動的な地域福祉理念とは,相 入れない部分である。表−2の「社会福祉と地域福祉と管理構造」では,「存在の認識に規定 される社会福祉」と「意識の認識に規定される社会福祉」を,管理構造を基本軸として「存 在の認識に規定される地域福祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」との差異としてみ たものである。 表−2 社会福祉の地域福祉と管理構造 存在の認識に規定される社会福祉 意識の認識に規定される社会福祉 「脱・社会福祉の管理構造」 存在の認識に規定される地域福祉 意識の認識に規定される地域福祉 ⑹
第2 地域福祉の構造と二面性 ① 地域福祉概念の整理 積極的な社会福祉サービスを受ける権利保障と市民および企業による負担の問題という「市 民契約化」が未成熟な段階にあるからこそ,「存在の認識に規定される地域福祉」と「意識の 認識に規定される地域福祉」という分析軸を必要としたわけである。 前記した表−3のように,「制度的社会福祉」と「非制度的社会福祉」という視点を「制度 的地域福祉」と「非制度的地域福祉」と言い換えるならば,そこには「思想性」と「自治性」 という軸があるために,あえて言い換える必要性を見出すことができる。この「思想性」と 「自治性」及び「参加性」は,エンパワーメント概念に親和性があるとした。前記した拙著 に詳細に述べてあるので参照してほしい。 このように検討してくると,前記した表−4のように制度的地域福祉と非制度的地域福祉 の緊張関係を構築する必要があって,この緊張関係は「社会福祉の管理構造」が軸となると いえる。もちろん,社会福祉と地域福祉の差異についても同様に「社会福祉の管理構造」が 軸になると説明してきた。 将来,地域福祉が実態概念を保持した段階にあっては,前記したような分析軸は必要がな い。当然なこととして,牧里毎治が指摘したように,「存在の認識に規定される地域福祉」と 「意識の認識に規定される地域福祉」という説明の方法は成立しなくなるわけである。換言 表−3 制度的地域福祉と非制度的地域福祉 制度的地域福祉の側面 非制度的地域福祉の側面 「存在の認識に規定される地域福祉」 「意識の認識に規定される地域福祉」 社会福祉システム(存在の認識システム) 自治性 思想性 の担保 主体形成システム(意識の認識システム) 社会福祉の公的責任 地域福祉の主体形成 表−4 制度的地域福祉と非制度的地域福祉の緊張関係 制度的地域福祉の側面 非制度的地域福祉の側面 「存在の認識に規定される地域福祉」 「意識の認識に規定される地域福祉」 社会福祉サービスの拡充・強化 社会福 祉の 管理 構造 当事者・住民活動の促進・強化 社会福祉の公的責任 地域福祉の主体形成 ⑺
すれば,既存の社会福祉が主体形成を段階的に発展させていけば,「存在の認識に規定される 社会福祉」と「意識の認識に規定される社会福祉」を経て,さらにその止揚状態を再度経て, 「存在の認識に規定される地域福祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」を再々度経て, 「新しい地域福祉型の社会福祉」へと到達するという歴史認識と発展認識の視座が必要であ るといえよう。 ② 地域福祉概念の終焉 したがって,既存の社会福祉が主体形成を段階的に発展させ,さらに,「存在の認識に規定 される社会福祉」と「意識の認識に規定される社会福祉」の止揚状態を経て,「存在の認識に 規定される地域福祉」と「意識の認識に規定される地域福祉」の止揚段階を経て,さらに「新 しい地域福祉型の社会福祉」へと到達した段階では,既存の地域福祉概念は成立をしないと いえる。その段階の地域福祉概念にあっては単なる社会福祉の発展段階であるといえる。お そらく,その段階にあっても,さらなる矛盾と課題によって,社会福祉の主体形成と客体形 成が求められることとなる。したがって,既存の社会福祉が,地域福祉の段階を経て,新し い社会福祉の段階に到達し,さらなる社会福祉問題と直面して,次の段階の社会福祉概念が 求められるという歴史的な発達観を認識する必要があろう。 具体的な地域福祉に関する展望としては,社会福祉基礎構造改革を経て,社会福祉法など の改正が実施され,今後さらに,知的障害者福祉法,身体障害者福祉法,老人福祉法などが 収斂し,包括法としての仮称「社会サービス法」または,「コミュニティケア法」として対人 福祉サービスの法律および権利法等が将来成立したときに,前記した歴史発展認識において, 地域福祉概念が実態概念化したといえよう。その後の発展段階を経て,地域福祉概念は終焉 することになると指摘をしたい。 結びにかえて 地域福祉の存在基盤において,「自治性」と「思想性」を担保するためには,「意識」とい う側面を社会福祉システム(存在の認識システム)と対置させなければならない。なぜなら ば,基本的に,制度的な社会福祉システム(存在の認識システム)では,社会福祉の管理構 造の強化という傾向が危惧されるからである。例えば,介護保険制度におけるケア・マネージ メントのシステムでは,要援護者のケアプランを構築することによって,要援護者の生活を 管理するという危惧は拭えない事実である。特に,知的障害・精神障害というハンディキャ ップでで,制度的な社会福祉システム(存在の認識システム)に依拠することで社会福祉の 管理構造は強化されるといえる。地域福祉では,「自治性」と「思想性」などを担保しており, ⑻
「意識の認識に規定される地域福祉」という側面が,障害者の権利を擁護することとなる。 したがって,地域福祉の主体形成を図ることには「意識の認識に規定される地域福祉」とい う側面がなければならない。この地域福祉の主体形成を図ることを,「存在の認識に規定され る地域福祉」に期待してはならないのである。なぜならば,地域福祉では,「自治性」と「思 想性」を担保しているからこそ「意識の認識に規定される地域福祉」が位置を持ち,この意 識認識が地域福祉の主体形成を図ることとなる。反面,「存在の認識に規定される地域福祉」 は,制度的な社会福祉システム(存在の認識システム)を構築し,公的責任を問うこととな る。この文脈が社会福祉サービスの拡大発展には不可欠である。このような検討から,新し い社会福祉のあり方といえる「地域福祉」は,「存在の認識に規定される地域福祉」と「意識 の認識に規定される地域福祉」とを峻別する視点が必要であるといえよう。社会福祉の管理 構造という側面と,地域福祉の「自治性」と「思想性」を担保するためにも必要不可欠な歴 史認識による分析軸であって,地域福祉の歴史的発展性と運動性を説明するためには必要で あるとしたい。 このような視座に立脚して,地域福祉の実践研究とコミュニティケアの実践研究をもって, 本稿で検討してきた仮説を立証することにあることを残された課題としたい。 注1 拙著「コミュニティケア研究」相川書房 2000 注2 牧里毎治書評論文「根源的主体形成を問う地域福祉研究」社会福祉研究79号 鉄道弘済会 2000 P.125 注3 三浦文夫増補改訂「社会福祉政策研究」全国社会福祉協議会 1995P.90 注4 高澤武司「社会福祉の管理構造」ミネルヴァ書房 1976 ⑼
ReseatchNote
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YouichiWATANABE
ABSTRACT
Thismonographisastudyofsocialplanninglookedatfrom the community point ofviewpointforsocialwelfare.Thisviewpoint,inturn,isbasedonthe communit y-basedsocialwork inanew socialwelfaresystem.
Toreview thisnew conceptof communitybasedwelfaresystem istheaim ofthis study.Ittriestoreplacetheideaoftraditionalsocialwelfaresystem bytheideaof community-basedsocialwelfaresystem,withtheintroductionoftwonew conceptsof empowerment approachand de-centralizationbycommunity approach.
Thenew typeofsocialplanningrequiresanew wayofthinkingandanew system of communitycareandcommunity-basedsocialwelfare,bothofwhichcanbeexplained,in myview,onthecommunitymodel.
Myideaof community-basedsocialwelfare includescommunitycaredefinedbythe England-Modelas communitysocialwelfare.Inthispaper,therefore,myapproach takesforgrantedtheimportanceofthe community-basedsocialwelfaresystem