BvIと Nβg老ュrュο6研′
N嶋
長野県看護 大学紀要 16: 13-23,2014 退任記念特別寄稿看護研究 にお ける介入効果 の検証方法
多賀谷昭
D
【要 旨】 人を対象 とす る介入の効果の実験的方法による検証 にお いては,心
理的要因の制御が重要である が,そ
のための標準的方法である盲検化は,看
護介入の効果の検証では,通
常,使
用できず, ランダム化対照群 比較試験(RCT)の
みを行 うことが多い。 これ によって生 じ得 る問題 と対策 を検討 し,以
下 の見解 を得た。1) 心理的要因の影響は一般にかな り大きいと考えられる.2)プ
ラセボ効果は本来の効果の一部 として扱 う必要があ り,介
入方法は これを十分活用すべきである。3)ホーソン効果 とピグマ リオン効果の制御 には,前
向き観察研究 か開発前後の群間比較が現実的である.4)定
常的過程への介入の効果の有無の検証では, 1群
前後比較が妥当な 場合が多い。5)心理的要因は常に研究者の期待に沿 う方向に作用するので,そ
の対策がないRCTの
結果は信用で きない。6)効果の検証において論理的妥当性を重視する必要がある。7)注意深いイ ンタビユーによ り効果が生 じ る過程を明らかにできる可能性がある.【
キーワー ド】研究方法
,看
護介入
,効
果検証
,心
理的要因
,RCT
1.は
じめ に 看護学研究 における実態調査 につ いては,手
法や考 慮すべ き条件 についての知識が普及 し,研
究者間で意 見 の不一致 は ほ とん どみ られない。 しか し,看
護介入 の効果 の検証方法 にっいては,十
分な合意がないよ う に見 える。 この論考 の 目的は,そ
の合意形成 のための 議論 に資す る ことである。 介 入効 果 の検 証 には,一
般 に ラ ンダム化 対 照 試験randorrⅡzed controlled tttal(RCT)を 用 いる ことが 望 ま しい とされているが
,看
護介入 には特有の条件が 存在す るため に,そ
のまま適用す ることはできない。 た とえば,新
薬等 の効 果 を検 証す るた め のRCTで
は, 二重盲検化 を用 いて プラセボや既存薬 との比較が行わ れ るが,盲
検 化 も,盲
検化 に必要 とな るプラセ ボ に相 当す る介入 も,看
護介入では通常不可能である。 この ために生 じ得 る問題 につ いて検討 し,現
実 的な解 決方 法 を提案す る ことを本稿 の 目標 とす る。 以 下 で は,効
果検 証 の対 象 とす る介 入 を行 う群 を 「実験群」 と呼び,
これ と比較す る群 を 「比較群」, ランダム化 した比較群 を 「対照群」,試
験研究 の対象 者 を 「被験者」 と呼ぶ.2.実
験 的手法 による効果 検 証 の原 理 と条件 実験 的手法 によ る効果 の検証では,予
め選択 したア ウ トカム変数 と,十
分な検 出力をもつサ ンプルサイズ を用 い,予
め決 め られた時点 における評価 の統計分析 結果 に基づ いて,効
果 の有無や優劣 の判定 を行 う。そ のための方法 として理論上 もっともふ さわ しいのは,RCTと
盲検化 の併用である.RCTで
は,対
照 群 を使 用 し,実
験 群 と対 照 群 の ベース ライ ンの条件 と両群 に対す る (テス トされ る介 入以 外 の)全
て の操作 を同 じに揃 え,予
め決 め られ D長 野県看護大学 2013年11月 8日受付 2014年 3月 18日 受理多賀谷 :看 護介入効果 の検証方法 た時点で各群 のアウ トカム変数 を評価す る。その結果, 群 間に差が認 め られれば
,そ
の原 因は介入で ある と判 定できる。盲検化 は,両
群 にお ける心理的要因の影響 を同等化す るため に使用 され,心
理的要 因がアウ トカ ム に影響す る可能性が想定 され る場合 には不可欠であ る.RCTは ,統
計学 的手法 によ る効 果 の検 証法 の王道 とされ,医
療分野以外 にも広 く使われている.医
療分 野では単一研 究 として最 も高 いエ ビデ ンス・ レベルが 与 え られ てお り,メ
タ分析 は,RCTを
用 いた研 究 結 果 だけを使用す る ことが多 く,看
護研究 で も同様で あ る。 しか し,看
護介入では,心
理的要 因の制御 のための 常套手段で ある盲検化が通常不可能で ある.看
護介入 では,ア
ウ トカム 自体やそ の測定値 に心理的要因が影 響す る場合が多 く,盲
検化 に代わ る制御方法 を用 いる 必 要が あ るが,後
述す るよ うに,通
常それ はRCTと
は両立 しない。 したがって,看
護研究のエビデンス と してRCTの
結果 を無条件 に上位 に位置づける ことは できない.3.心
理的要因 とその制御 介入結果 に影響す る心理的要因としては,一
般 に3 つの要素があることが知 られている。効果を期待させ る介入操作の形式 (援助的儀式)が
もつプラセボ効果, 評価・観察者の期待 に応えようとするホーソン効果, 介入実施者が期待 をもって関わることによるピグマ リ オ ン効果で ある。(アウ トカムの測定結果 には,
これ ら以外に迎合や学習が影響する可能性がある。)3.1
プラセボ効果 プラセボ (偽薬や治療 目的には薬効がない薬)を
薬 と称 して投与 しても,実
薬 と同様の効果が表れること が知 られてお り,治
療のためのプラセボ投薬 も日本で も海外でも広 く行われてきた。 このプラセボ投薬につ いては,効
果 を疑 うメタ分析結果 (Hr6bjartsson et d"2001,2004)が
あるが,
“モ ノ"と
してのプラセボ ではな く,介
入における “援助的儀式"と
しての関わ りの形式によって生 じる実質的な効果 としての 「プラ セボ効果」 は,肯
定的に評価 されてお り(NCCAM,
2012),看
護研究 において も,プ
ラセボ効果 を考慮 Bとゴ′θ述アNtta′,ο6研そ舒OF Nとどこ鍵 ,V研′a2θどを に入れ た効果 の検 証方法が論 じられ て いる (Polit etalⅢ 2004,Sida五 et alり
2011).た
だ し 日本では,医
療行為 として のプラセボ投薬 に関す る倫理 的観点か ら の批判 的な調査研 究 (田中 ら
,2011)は
あ る ものの, 看護介入 に関 して,「
プラセボ効果」や 「プラセボ介 入」 とい う用語や概念 はほ とん ど使われ てお らず,看
護研 究法 に関す る小笠原 ら(2012)の
充実 した成 書 にお いて も,介
入 の プラセボ効果 は論 じられて いな い。 「プラセボ=偽
薬」 とい う観念連合 によるマイナスイ メー ジが,誠
実 さを重ん じる看護 の介入 に関す るプラ セボ効果 とい う言葉 の使用 を (そして,そ
れが表す有 用な概念 の使用 をも)妨
げているのか もしれな い。3.2
ピグマ リオ ン効果 とホーソ ン効果 ピグマ リオ ン効果 とホー ソン効果 も,迎
合 的評価 で は説 明で きな い実際の変化 をもた らす (Rosenthal etal,,1968/井
上 ら,1978よ
り31用;Rosenthal,1994;McCarney et al"2007),ど
の薬 を患者 に投与 して いるか を医師が知 る と, ピグマ リオ ン効果 によって, 実薬 を投与 した (と医師が信 じた)被
験者では効果 が 大 き く,偽
薬 を投与 した (と医師が信 じた)被
験者で は効果が小 さ くな る。 また,学
生 の能 力や 努 力を信 じ ない教師は,教
育効果 を上 げ られず,そ
れ を学生の能 力不足や努 力不足 のせ いに し,学
生 も教師 の “負 の期 待"に
応 えて能 力の発揮や努力 を控 えるので,ま
す ま す教育効果が低下す る という悪循環 が生 じる ことは, ピグマ リオ ン効果 とホーソン効果で説 明で きる。 プラセボ効果 を 「本来 の効果でな い効果」 とみな し, これ にピグマ リオ ン効果 とホー ソ ン効果 を含 めて 「プ ラセ ボ効果」 と呼ぶ場合が あるが, この用法 は誤解 と 混乱 を招 く.次
節で論 じるよ うに,実
証的研究 のため には,3つ
を明確 に区別す る必要が ある。3.3
心理的要因の制御 看護介入 の効果 に対す る心理 的要 因の影響は,盲
検 化が使えないので,測
定は困難であるが (Hr6bjartsson,2002),ほ
か の分野 の研 究結果 か ら推 測す る ことは 可能 で あ る。 過敏 性 腸 症候 群 の針 治 療 にお いて,心
理 的 要 因 の 影 響 を 盲 検 化RCTに
よ っ て 評 価 したKaptchuk et al,(2008)に
よれ ば,ホ
ー ソ ン効果, プラセボ効果, ピグマ リオ ン効 果は,す
べて統計学的 にも臨床的 にも意 味のある大 き さで あつた。特 に,プ
βロガθととソ蜘 οσο′′θgc οFハむ』鋭五3'宅工fa〃θ′塑 ラセボ効果 とピグマ リオ ン効果が組み合わさった場合, 効果 は大 き く安定 して いた。 この結果 は
,不
安や痛 み の軽減,体
調の改善な どを 目的 とした看護介入 にお け る心理的要 因の影響は極めて大きい ことを示唆 してい る。 ここで い うプラセボ効果 とは,介
入方法 自体 に依存 す る心理的効果,す
なわ ち,介
入 プログラムや特定 の 手法が対 象者 に喚起す る意 味付 けや期待 による効果 を 指す もの とす る。 このよ うに定義 した プラセボ効果は, 臨床応用時 にも実験時 と同 じよ うに作用 し,ま
た,通
常 の看護介入 の場合,本
来 の効果 と分離で きる操作的 定義 は不可能なので,本
来 の効果 の一部 とみなすべ き である. 介入方法,特
に,最
初 に開発す る介入方法 は, プラ セボ効果が存在す る場合,そ
れ を十分 に活用す る こと が望 ま しい。そ のためには,介
入 内容 の合理性 を対象 者が容 易 に理解で きるよ うにプログラム を構成す る必 要 が あ る。 明快 な意 味 づ けは,プ
ラセ ボ効 果 を高 め(Woli 1959),そ
の ことは,介
入 の効果全体 を高め る とともに,比
較対照 され る標準的介入方法 としての 適格性 を高める ことになる。 一方,ホ
ー ソン効果は評価 を受ける場合だけに作用 す る。 また, ピグマ リオ ン効果 は,臨
床試験 とい う状 況 にお ける介入実施者 の意識 に依存す る と考 え られ る. つ ま り, これ らは,プ
ラセ ボ効果 と異な り,応
用時 に 再現 され る保証がな い。 したが って,臨
床 に役立つ研 究結果 を得 るためには,ホ
ー ソン効果 とピグマ リオ ン 効果 の制御が不可欠である。 ただ し, ピグマ リオ ン効果 には,介
入実施者が群 問 比較 を意識す ることによって生 じる効果(CPE)以
外 に,関
係す るパ ラダイム を意識す る ことによって生 じ る効果(PPE)が
ある と考 え られ る。PPEは
実験 的方 法で は本来 の効果 と分離で きず,そ
の意 味で プラセボ 効果 に近 い性質 をもつが,文
脈依存性が あるので,本
来 の効果 の一部 とみなす には無理がある.PPEが
存在 す る場合,期
待通 りの介入効果 を得 るには,関
係す る パ ラダイムが介入実施者 に受 け入れ られ る ことが前提 とな る。 ホー ソン効果 とピグマ リオ ン効果の制御 は,理
論的 に も重要な意 味を持つ。 これ らは常 に研究者 の期待通 多賀谷 :看 護介 入効果 の検 証方法 りの研究結果が出る方向に作用す るので,そ
れ らの 制御な しの実験は仮説の検証にな らないか らである。 ホーソン効果 とピグマ リオン効果は,い
ずれ も効果へ の期待 の存在 を前提 とす るので,通
常 は,盲
検化 によ り期待 をもた らす情報 を遮 断す る ことでバイ アス を抑 制す るが,・ それが使 えな い看護介入では,両
群 の介入 実施者・被験者 とも,各
介入方法が最 良か 同等 で ある と信 じられ る状況 にす るほかな い。 この条件 を満たす 方法 としては,次
のよ うな ものが考 え られ る。1)優
劣が容易 に判 らな い場合 だけ群 間比較 によ る検 証 を行 う。2)群
間比較で はな く,独
立 した2つ の 自然実験 デザ イ ンの観察研究 とし,1群
前後 比較 の研 究 結果 を両 者で比較す る。3)新
しい介入方法 を開発す る前 に,最
良 と思 われ る 既存 の介入方法 を比較群 に実施 し,そ
の後,開
発 し た方法 を実験群 に実施 して結果 を比較す る。 この うち,1)で
は,心
理的要 因の制御 自体 が不要 に な り,2)で
は,比
較対象がな いので,介
入実施者が与 え られた条件下で最善の努 力をす る限 り,ホ
ー ソ ン効 果,
ピグマ リオ ン効果 とも2つ の研 究 間 に差 はな い と みなす ことができる。実際,よ
く計画 された前向き観 察研 究 の結果 はRCTの
結果 と同 じ傾 向 を示 す とい う 報告がある (Ioannidis et al.2001)。 外的妥 当性が 高 い ことも自然実験デザイ ンの長所で ある。3)は2)と 実質的 には同 じで あるが,一
つ の研究 として行 うもの である。 常套 的介入方法 の効果 が不確かな場合 の検証 は1)の 条 件 を満 た しやす く,RCTの
功績 の例 と して 引用 さ れ る研究 の大部分 は このタイ プである。例 えば,出
産 時 の会陰切 開に関す るRCT(HarrisOn et alり 1984) は この条件 を満 た して いた とされ (McCotlrt,200b), 術前処置 としての剃毛 に関す るRCTも
初期 の ものは1) を満足 して いた と考 え られ る.3.4
アウ トカムの種類 と心理的要因の影響 心理的要 因や迎合 の影響はアウ トカム の種類 によっ て異な る。Wechsler et al.(2011)に
よれ ば,喘
息 患者 の呼吸改善 を 目的 とした鍼治療 の プラセボ介入は, 呼吸 に関す る計測値 を改善 しなか ったが,主
観 的評価 では実薬 に匹敵す る効果 を示 した。 この結果は看護介多賀谷 :看 護介入効果 の検証 方法 入 にも当ては まるであろう。た とえば
,転
倒予防の介 入 の場合,転
倒回数 をアウ トカム とすれば,測
定 に対 す る心理的要 因の影響や迎合 を無視で きるが,転
倒 の 不安 の程度 をアウ トカム とした場合 には,そ
れ らを無 視で きないであろう。 また,肺
がん患者 の呼吸停止予 防に関す る看護介入 の場合,延
命率 をアウ トカム とし た場合 と,不
安 の程度 をアウ トカム とした場合では心 理的要 因や迎合 の影響は大 き く異なるであろ う。 生理 的効果 を目的 とす る介入では,心
理尺度 を効果判定 の ためのアウ トカム変数 とす る ことは避 けるべきで ある十4.群
間比 較 因果 関係 の証 明 には2群
比較が必要 とな る。 1群 比 較では,介
入前後で変化が ある ことを証明できて も, そ の原 因を特定できない。 た とえば,治
癒過程や妊娠 過程 のよ うな非定常的過程への介入 の場合, 自然治癒 や妊娠 の進行 による変化 と介入効果 を区別で きない。 また,ア
ウ トカム変数 によっては,実
質効果がな くて も介入前の測定 による学習や経験が介入後 の測定結果 を向上 させ る可能性 が ある。そ うした時期的要因の影 響がな い定常的過程 へ の介入 の場合 は,1群
前後比較 で介入効果 の有無は検証できるが,そ
の原 因が,い理 的 要因か介入 プログラムかは区別で きない。 群間比較 に伴 う欠点や 問題 としては,次
のような も のがある。1)1群
前後 比較 に比べて,多
くの被験 者 を必要 とす る。2)不
公平 に対す る倫理 的配慮 を要 し,比
較群 の被験 者 を確保 しに くい。 この うち1)につ いて は,後
述 す る ラ ンダム化 に伴 う制約 の ほか,介
入条 件 の 同等 化 に伴 う困難 が存 在 し,
これ には,介
入実施者 の割 り付 けや介入方法 の統 一な どが含 まれ る。2)につ いては,実
験デザイ ンとそ の意義 を被験者 に理解 して も らいに くい ことが問題 で ある。特 に,RCTの
場 合,イ
ンフ ォー ム ド・ コ ンセ ン トの署名が あつて も,そ
れが実質的な理解 に基づ く 同意 によ る ものか どうか疑 わ しい ことが 少 な くな い (Appebaum et al.,1982). 比較群使用 の代替法 としては,次
のよ うな ものが考 え られ る. Bとどゴ′θすn/ヽ惨gattο ('0′′θgθοFNwttF,3,観 faクθ」を1)実
験研究ではな く,比
較 に適す る対 象 の前向き観 察研 究 を行 う。2)1群
のみ を用 いて前後 比較 を行 う。 (ただ し,定
常的過程へ の介入で,測
定 に学習や経験 が影響 しな いアウ トカム を用 いる ことが条件で ある。)3)ベ
ース ライ ンの同等化 の有無 にかかわ らず,介
入 前後 の差 を比較す る。 この うち1)は,形
式上,群
間比較ではな く独立 した 観察研 究 にな り, これ とは独立 して行 う実験群 と結果 を比較す る ことにな るが,倫
理的な問題 が生 じに くく, 後述す る心理 的要 因の制御 にも有利 で ある.3)は
常 に 可能 で,RCTや
そ の他 の手法 と併 用 で き る。 この方 法では交互作用がチ ェックできな いが,一
般 に交互作 用 は主効果 に比べてかな り小 さいので,ベ
ース ライ ン の差が比較的小 さければ,無
視で きる.5.ラ
ンダム化
ランダム化 は,実
験群 と対照群 のベー ス ライ ン条件 の同等化 に用 いる。RCTが
gold standardとみな され るのは, ランダム化 によって未知 の条件 を含 むすべて の条件 を同等化できる とい う理論 上 のメ リッ トのため で ある。 しか し,次
のよ うなデ メ リッ トが ヌ リッ トを 上回る可能性 もある。1)同
時 に2つ の群 を扱 う必要が あ り,施
設 内で の実 施が難 しい。2)RCTの
研究 デザイ ンは被験者 に理解 され に くく, 真 のイ ンフォーム ド・ コンセ ン トが成立 しにくい。3)ラ
ンダム化 した後 の脱落者が多 く,同
等性が損な われ る。4)被
験者 の心理的特性 に偏 りが生 じるために,結
果 が一般化 しに くい。 この うち,2),3),4)は
, ラ ンダム化 が もつ一種 の不 自然 さが 人 の気 持 ちや判 断 をか き乱 す 結 果 で あ る。それ は,倫
理的な問題である と同時 に,研
究結果 の価値 にも悪影響 を与える。 これ らの ことか ら,研
究 の実施 にお いて も,研
究結果 の信頼度 の評価 にお いて も,RCTを
絶 対視 すべ きで はな い と考 え られ る。特 に2)の問題 は深 刻で,Appelbaum et al.(1982)に
よれば,無
介入対照群 に割 り当て られて も,治
療 を受 け られ る と勘違 い して いた被験者が多か つた。 また,B口FFθin/NttanO ω ′′θgθ OF州し題 奥勇V研 =aクθ=を
RCTで
は 4)以外 にも,選
択条件 の厳 しさな ど,標
本 代表性 を損 な う要素があ り,外
的妥 当性 は一般 に低 い (Rothwe■,2005).
上のよ うな問題が少ない代替法 として次 のよ うな も のが考 え られ よ う。 1)介入前後 の差だけを両群で比較す る。2)時
期 的要 因が無視 で きる場 合 は,時
期 を変 えて群 ごとに偶然 に任せたサ ンプ リングを行 うことによ り, ランダム化 に近 い同等化ができる。3)影
響要 因が既知 で あれ ば,同
等化 で きな くて も, 影響要 因 を測定 して補正す る ことが可能である。 この うち1)は,前
述 のよ うに,ベ
ース ライ ンの同等 化 に関す る要求水準 を緩和す る.2)と
1)の組み合わせ は,現
実 的な解決策 であ り,さ
らに3)も併用可能 であ る.6.ア
ウ トカム変 数 とサ ンプル サ イズ の設 定 効果 の評価 には,適
切なアウ トカム変数 とサ ンプル サイズ を採用す る必要が ある。 アウ トカム変数 もサ ン プル サ イ ズ も,事
前 に選 定す る必要 が あ り,結
果 を 知 つてか ら変更す る と,そ
の評価結果 は信用できない. 報告では,推
定 され る効果 (またはそ の差)の
大 きさ とサ ンプルサ イズか ら算 出され る検 出力を記載す る必 要 が ある.な
お,2群
比較 の場合,一
方 の群 だ けサ ン プルサイズ を増や して も検 出力はわずか しか上が らな い。た とえば,等
分散な ら25対 1000よ りも5螺寸50の 方が検 出力は高い.6.1
ア ウ トカム変数の選択 アウ トカム変導には効果 の有無等 を示す三分変量 と 効果 の程度 を示す連続変量 の二種類が ある。三分変量 は意味が明確 で扱 いやす いが,検
出力が低 く,連
続変 量 は検 出力が高 いが,効
果 の大 きさの実用 的な価値 は 判断 しに くい.し
たがって,効
果 の判定 には連続変量, 実用性 の評価 には三分変量 を使用す るのが合理的で あ る。 しか し,変
量 の種類 にかかわ らず重要な のは,心
理 的要 因 に対 す る頑健性 や安 定性 で あ り,特
にRCT
ではそれが不可欠である.6.2
サ ンプルサイズの算 出 サ ンプルサ イズは小 さす ぎて も大 きす ぎて も協 力者 の負担や研究費用 を浪費す る ことになるので,適
切な 多賀谷 :看 護介入効果 の検 証方法 サ ンプルサイズの設定 は,倫
理的 にも経済 的 に も非常 に重要で ある。先 にあげたHulley et al.(2001)の 日 本語版 (木原 ら,2004)で
は,320頁
中41頁
がサ ン プルサイ ズの見積 も りに関す る記述 にあて られて いる。 検 出力分析 のためのソフ トウェアは,イ
ンターネ ッ ト 上 に公 開されて いる.例
えば,
ドイ ッの デ ュ ッセル ド ル フ大学か らG*Power3と
い う無料 の分析ツールが提 供 されて いる。 検 出 力分 析 で は,ア
ウ トカム変 数 につ いて,文
献 や経験,そ
の他 の情報か ら介入 の効 果 の大 き さeffect SiZeを推測 して,そ
の検 出 にかな りの確率で成功す る た め のサ ンプルサ イ ズ を算 定 す る.通
常 は有 意 水 準0.05,検
出力80%∼ 90%に
設定 して計算す る。 ただ し, 効果 に差がない ことを示す ことが 目的の場合は,検
出 力を95%以
上 に設定す る。 検 出力 を100%に
近づ けれ ば,必
要 なサ ンプルサイ ズは急激 に上昇す るので,経
済 的 に研 究が成 り立 たな くな る。 したが って,量
的研 究 を行 う者 は,10%か
ら20%程
度 は有意 差 の検 出 に失敗 す る可能性 を受 け 入れなけれ ばな らない。 これは決 して低 い可能性では ないが,複
数 のアウ トカム変数 を使用すれ ば,実
際 に 差が あるのに有意差が全 く検 出で きな い とい う事態 は, まず避 け られ る。 これ によって,一
部 のアウ トカム変 数だけ有意 にな る確 率 も高 くな るが,複
数 のアウ トカ ム変数が質的 に異なって いれば,結
果 の解釈 に窮す る ことはな い.都
合 の良い結果だけを報告す る ことは研 究倫理 に反す る。 看護介入では,対
象者や協 力施設 の負担 を伴 う場合 が多 く,倫
理的 にも経済的 にも,検
出力分析が必要な ことは明 らかで あるが,実
際 には行 われず に検 出力が 低す ぎる研究が多 くみ られ る。検 出力が低す ぎる研 究 は,有
意差が検 出で きな い場合 は結果 を公表で きず に 研究協力者 の善意 を無 に し,運
よ く有意差が検 出され た結果だ けを報告 して他 の研究者 の判 断 を誤 らせ る こ とにな る。 介^研
究 に事前登録 が求 め られ る理 由の1 つは, この公表バイ アスを防止す るためで ある。 実際 には,効
果 の大 きさは通常何 らか の方法で推定 で きるはずで,全
く推定で きない とすれば,準
備不足 である可能性 が大 きい。それで も情報 が不足す る場合 は,臨
床的 に意 味がある効果 の下限 を用 いる。 どう工多賀 谷 :看 護介入効果 の検証方法 夫 して も有意 差 の検 出 (あるいは差 が な い とい う証 明
)に
必要なサ ンプルサイズが非現実的な大 きさにな る場合 は,実
施 して も意味のある結果が得 られ る見込 みが小 さいので,研
究 デザイ ンを変更す る必要が ある。 アウ トカム変数 として三分変量 を採用す る ことは, ほ とん ど常 に可能 で あ る.例
えば,既
存 の介 入方 法 は被験 者 の40%に
改善 を もた らし,開
発 した方法 は70%程
度 に改善 を もた らす と推 定 され る場合,検
出 力 を90%に
す るには,各
群62人の被験者が必要 にな る.効
果がある被験者 の割合が推定できない場合 は, 臨床上意 味がある と考 え られ る最低 限の割合 を使用す れ ば よい。 上 の例 で60%の
被験 者 に改 善 を認 めれ ば 開発 した方法 に意味がある と考 えられ るな らば,各
群 139人 としてお く。研 究 を行お うとす る事象 につ いて, この程度 の見積 も りができないことは,ま
ず あ り得 な いので,検
出力分析 は常 に可能だ と考 えて差支 えな い. ただ し,臨
床上意 味が ある と考 え られ る最低限の割 合 を使用す る場 は,サ
ンプルサイズが過大 に見積 も ら れ る可能性が大 き く,効
果 を証 明す る十分 なデー タが 得 られた段階で 中止す る方が,倫
理的 にも経済的 にも 望 ま しい。 中間 の有 意 差検 定 は多重仮 説検 定 にな る ので,オ
ブライエ ン・ フ レミング法 (O'Brien et al"1979)な
どによ る有意水準 の補正 を行 う。 また,中
間の評価 は,介
入 に携わ らない実験管理者が行 い,実
験継続 中は評価結果 を介入実施者 に秘匿す る必要が あ る.7.現
実 的な研 究デ ザ イ ン 以上 の ことか ら,心
理的要 因の影響 を考慮 した現実 的な研究デザイ ンは次 のよ うになる。 なお, ここで特 に触れない事項 については,一
般 の 試験研究 と同 じとす る。 た とえば,季
節性や実施施設 の特性,非
定常 的過程 にお ける被験者 のステー ジな ど, ベース ライ ンの条件 をできるだけ同等化 し,ま
た,効
果が継時的 に変化す る場合は,効
果 を測定す る回数 と 時点 を決定 してお く必要が ある。7.1
効果 の優劣や違 いの検証 既存 の介入方法が存在す る場合 には,そ
の効果 と新 規 開発 の介入方法 の効果 の優劣や性質 の違 いを比較す ることが望 ま しい。それ によって,無
介入の比較群 を B口′′θFin/Naga′ョο働′′(】g(】οFヽゞ鍵 ,レ宅江Fa 2οF4 用 いる ことによる倫理 的な問題 を回避す る とともに, (2つの方法 の心理 的要 因が等 しい とみなせ ば,)介
入方法 自体 の実質的な差 を明 らか にす る ことが可能 に なる.た
だ し,効
果 の差 の検証 は,効
果 の有無 の検証 に比べはるか に多 くの被験者 を必要 とす るので,次
の 7.2の方法 によ って,新
規 開発 の介入方法 に効果 が あ る ことを確認 した上で実施すべきで ある。 検 証 には群 間比較が必要で,形
式 上,次
の2つ が あ り 得 る。1)1つ
の実験的研究 の中の群間比較 として実施す る.2)独
立 した2つ の観察研 究 として実施 し,そ
の結果 を比較す る.RCTを
実施す るには1)を採用す る必要があ り,心
理 的要 因を制御で きる ことがそ の前提 となる。 テス トす る介入方法 を開発す る前 に比較群 に既存 の介入 を実施 す る場合や,優
劣が推測 しに くい場合は, この研究デ ザイ ンを採用す る ことが可能で ある。一方,2)は
,介
入実施者 も対象者 も比較 を意識 しな いので,ホ
ー ソ ン 効果や ピグマ リオ ン効果 の影響 を受 けにくい とい う利 点 が あ る。 いずれ に して も,RCTを
使用 しな い場合 は,介
入前後 の差 を比較 に用 いるな ど,ベ
ース ライ ン の同等化 の不完全 さへの対策 を行 う必要がある。7.2
効果の有無 の検証 効果 の有 無 を検 証す るための研究 デザイ ンは,介
入 の対象 となる過程が定常的か否かによって異なる。特 別な場合以外 は,無
介入比較群 を用 いる必要が あるが, そ の場合,好
ま しい と考 え られ る介入 をあえて控 える ことで倫理的な問題が生 じる可能性がある。その代償 として研究 の後で行 う介入は,定
常的過程で は可能で あるが,非
定常的過程では不可能で ある。介入方法 の 開発前 に行 った実態調査 の結果 を比較 に用 いれ ば この 問題 を回避で きる。 いずれ に して も,通
常,看
護介入 の実質効果 と心理 的要 因の影響 を分離す る ことはで きないので,実
質 的 効果 の存在 を主張す るには,心
理的要 因の影響 を受 け に くいアウ トカム変数 を使用す る とともに,介
入 プロ グラムの内容 に理論的な妥 当性が ある ことを示す こと が重要 にな る。 また,観
察やイ ンタ ビュー も実質 的効 果 の存在 の証明 に役立つか もしれな い.7.2.1
定常的過程への介入の効果の有無B口′ゴθπら
/蜘
ο Cb′′θgθοFハむ養劫xち レЫ Fa〃θヱを 慢性的症状や睡眠な ど,定
常的過程や 日常的 に繰 り 返 され る非定常的過程 に対す る看護介入の効果 の有無 は,ア
ウ トカム変数 の値が介入以外 の影響 を受 けな い な らば,ア
ウ トカム変数 の値 を介入前後で比較す るだ けで検証で きる.こ
の場合,被
験者が少な く,か
つ, 検 出力が大 き くなる点が好都合であ り,ま
た,無
介入 による倫理的問題 も生 じない。 記銘 カテス トの場合 のよ うな学習効果や血圧 な どの よ うな平均回帰が存在す る場合 は,無
介入 の比較群 を 使用 して学習効果や平均回帰 によるアウ トカム変数 の 変化 を測定す る必要がある。7.2.2
非定常的過程への介入の効果の有無 治癒 過程 や 妊 娠 ・ 出産や 退 院な ど, 日常 的 には繰 り返 され な い非定常 的過程 に対 す る看護 介 入 の場 合 は,群
間比較が不可欠である。被験者 のステー ジを揃 えた上で,比
較群 には全 く介入 を行 わず に (非定常的 過程 にお ける)変
化 を追跡 し,実
験群 の変化 と比較す る。 アウ トカム変数 の測定の回数 と時期は,予
備試験 によって慎重 に決 める必要がある. ただ し,効
果 の持続期 間が比較的短 く,そ
の期間内で 局所的 に定常的過程 とみなす ことが可能であれば,上
述 の定常 的過程 へ の介 入 (7.2.1)の場合 に準 じて扱 うことがで きる.7.3
検 出力分析 妥 当で敏感 なアチ トカム変数 を選定 し,様
々の知識 や経験 を活 か して効果 の大 きさを推定 し,サ
ンプルサ イズ を算 出す る。推定 が困難 な場合はアウ トカム変数 に三分変量 (binary outcome variable)を用 いて効 果 の出現率 を推定す る。複数 のアウ トカム変数 を用 い て効果 を多面的に評価 す る ことがで きるが,同
じ側面 を複数の変数で測定す る場合 は,そ
の うち どの変数 を 判定 に用 いるか を予め決めてお く必要が ある.連続量 (continuous outcome variable)を 用 いる 方が
,一
般 に検 出力が高 くなるが, ビジュアル・ アナ ログ・ スケール(VAS)を
採 用す る場合 には注 意 が 必要である.効
果 自体 への心理的要 因の影響 の有無 に かかわ らず,VASに
よ る測 定値 が〃い理 的要 因の影 響 を受 ける ことは明 らかで,使
用す る場合は心理的要 因 の制御が不可欠である。・ 算 出 したサ ンプルサ イズが どのアウ トカム変数 につ 多賀谷 :看 護介入効果 の検 証方法 いて も大 き過 ぎて
,実
現不可能な場合 は,研
究 を実施 して も有意差 を検 出で きる見込みがな いので,研
究 デ ザイ ンを変更す る必要がある。それ は,評
価方法 の変 更だ けで済むか もしれないが,実
験 デザイ ンの大幅な 変更が必要か もしれな いので,検
出力分析 は,研
究計 画作成 の早 い段階で実行すべ きで ある。7.4
実験の管理 必要 に応 じて実験 を中止す るため に介入結果 を監視 す る場合は,介
入 を実施 しないで監視 を行 う実験管理 者 を置 く。途 中で有意差検定 を行 う場合は,多
重仮説 検定 にな るので,オ
ブライエ ン・ フ レミング法な どで 有意水準 の補正 を行 う.7.5
イ ンタ ビューによる効果の検証 量的方法で有意な効果が認 め られ る場合や,理
論的 に効果が確実視 され る場合,イ
ンタ ビュー によって効 果 を生 じるプロセ スを明 らか にす る ことによ り,効
果 が介入 プログラム 自体 に起 因す る ことを確 認できる可 能性がある。ただ し,心
理的要 因の影響 を避 けるには, 介入 を受 けて初 めて表現できるよ うな語 りに着 目す る 必要があ り;介
入 の効果 の有無や程度 を直接尋ねて も あま り意味がない.8.効
果検証 の 限界8.1
実験 的検証結果の情報 としての価値 実験 的手 法 によ る効 果検 証 の重 要 度 は,看
護 介入 プ ログ ラムF堀発 の場 合 と新薬 開発 の場 合 とで は異 な る.多
くの看護介入で は,(心
理的効果 を含 めた介入 全体 として)効
果がある ことは,ほ
ぼ確実 である。 ベ イ ズ統計学 の用語で表現すれ ば,効
果が ある とい う事 前確率が きわめて高 い。 したが って,そ
れ を証 明でき た として も,総
合 的判 断 における情報 としての重要度 は相対的 に低 い.つ
ま り,全
く新 しい介入 プログ ラム の開発では,確
認 のために効果 の有 無 を検 証す る こと は研究 の手続 き として不可欠ではあるが,情
報 として は,事
前確率を高める介入 プログラム の内容 に主な価 値が ある。それ に対 して,既
存 の介入方法 の効果検証 や,新
旧の介入 プログ ラムの間で効果 を比較す る場合 は,実
験結果が重要な情報 とな る。研究 によって得 ら れ る情報 の価値が文脈 に依存す るだけでな く,後
述す るよ うに,実
験結果 自体 も文脈 に依存す る.多賀谷 :看 護介入効果 の検 証方法
8.2
心理的要因 によるバイアス 上述 したよ うに,看
護介入の効果 に心理的要 因が影 響す る場合 は,盲
検 化 な しで実施 され たRCTの
結果 の信頼性 には疑 問が あ り,エ
ビデ ンスの序列 を再検討 すべ きで ある。特 に,そ
のバイ アスが,常
に研究者が 期待す る方 向に作用す る ことは大 きな問題で ある。心 理的要 因の影響が想定 され る場合,メ
タ分析 に盲検化 を伴 わ な いRCTの
結果 を使 用す る と,い
く ら多 くの 研 究 結果 を用 いて も分析 結果 は信用 で きな い.結
果 の誤 差 に一定 の方 向性が な い点で,観
察研 究 の方 がRCTに
優 る。8.3
実験的検証の文脈依存性8.3.1
必要なエ ビデ ンス・ レベルの文脈依存性 検証 に要求 され るエ ビデ ンス・ レベルは文脈 に依存 す る.論
理的妥 当性 によって因果関係が十分説 明で き, 特 に危険がな い場合 に レベル の高 いエ ビデ ンス を求 め る ことは合理性 を欠 く。 さ らに,検
証 の結果 自体 も, 次 の例で示す よ うに,歴
史的文脈 に依存す る。 実証的研究 の重要性 を示す例 として,手
術 前の剃毛 が術後感染予防 に役立たない ことの証明が しば しば引 用 され (例えばDiCenso et al.(1998)),近
年 も多 くの実験 的研究 が行 われて いる (Jose et alⅢ2013).
しか し,
この問題 に関 して,実
験 による確認 は手続 と して必須ではあるが,そ
の意義は限 られて いる。 皮膚 と体 毛の解剖学的・生理学的・細菌学的特徴 か ら,剃
毛が皮膚 の身体保護機能 と皮膚 自体 の健康 を損 な うこと,ま
た,体
毛は皮膚 よ り消毒 しやす く,剃
毛 には作業を容易にする以外の意味がないことは,実
験 を待たず とも明 らかである。さらに,下
腹部や頭部の 剃毛が患者の精神的健康 を害することも自明である。 したがって,作
業の難易に影響がなければ,術
後感染 リスクは剃毛 した場合の方が大きいことには理論的な 根拠がある。 この検証では,一
応,身
体の各部で剃毛の有無 と消 毒後 の皮膚の細菌学的状態 との関係を確認 した後,手
術の種類 ごとに体毛の存在が作業に影響す る程度 を査 定 し, どの程度 まで剃毛な しの手術が許容できるか を臨床試験 によって確認す る ことにな る。 近年,頭
部 の手術 にお いて さえ,術
前剃毛が術後感染率 を減 少 させな い ことが示 されて いる (Sebastian,2012,B口′′θ五/ヽ軽anο∽ ′′θgθοFN口ぉI疑勇1化班Faクθ′を
Broekman et al"2011)。 したが つて, これ よ り作 業が容易な手術 にお ける実験的検証は理論 的 には不要 で ある。
8.3.2
検証結果の文脈依存性 臨床試験では,ホ
ー ソン効果や群 間比較 によって生 じるCPEは
観察研究的方法で制御で きるが,パ
ラダイ ム によるPPEは
制御 で きない。た とえば,剃
毛 しな い 場合,切
開や縫合 の作業は体 毛 を避 けて行 うため,よ
り多 くの注意 と時間 を要す る.こ
の作業 中,実
験 の意 味 を理解 している医師は清潔や手術部位 の状態 に剃毛 した場合 よ り多 くの注意 を払 うので,実
験 結果 は常 に 研究者 の期待 に沿 う方 向にずれ るで あろ う。 したが っ て,臨
床試験で検証で きる仮説は,「
剃 毛な しで も, 他 の条件が 同 じな ら,術
後感染 の リス クは変わ らな い かむ しろ下が る」 とい う命題ではな く,「
剃毛な しで も,改
革精神 をもって十分注意 して手術すれば,術
後 感染 の リスクは変わ らないかむ しろ下が る」 とい う下 線部 の条件がつ いた命題で ある。 この ことが示す よ うに,PPEの
影響 を受 ける介 入の 効果 の実証的検証 は,特
定 のパ ラダイム を前提 とす る 条件がつ いた仮説 しか扱 えないので,検
証結果 は前提 とな るパ ラダイムの文脈で しか効 力がな く,ま
た,そ
の条件 のあいまいさに起 因す る誤差 は メタ分析では克 服で きない.さ
らに,ほ
ぼ定説 とな った仮説 の検証で は,公
表バイ アス も大 き くな りやす い.(定
説 と異な る結果は公表 され に くい。)EBMの
パ ラダイ ム とは無 関係 に,剃
毛 しな い方 が よい ことは信用で きる.し
か し,そ
の根拠は理論的妥 当性 と精神的なダメー ジを回避で きる とい う明 らかな メ リッ トお よび不確実性 ゆえにPPEが
働かなか った フ ロンテ ィアにおける臨床試験 の結果 にある。その後確 認 のた め に行 われ た多数 のRCTや
そ の メタ分 析 の結 果 は,勇
気づ け られ る ものではあるが,科
学的証拠 と して の効 力は疑わ しい。8.3.3
研究結果 の応用 における文脈依存性 介入方法 の臨床試験 の結果 はほぼ常 に特定 のパ ラダ イム を前提 とす るので,そ
れ を臨床 に導入す る際,期
待 した効果 を得 るには,臨
床試験 と同 じ文脈が前提 と な る。 さ らに,実
験 的研究 の結果 の外部妥 当性が低 い ことにも注意す る必要が ある。例 えば,手
術 内容や患BLどF′θとね9/L卜上名gκ迪90て,0′Fθge OFへむ面 ュ廷み`191 faクθ′を 者 の状態 によって術後感染 に対す る剃毛の影響は変化 す るが
,研
究では複雑な条件 の事例 は除外 され るので,RCTや
メタ分析 の結果 を絶対 視 す る ことはで きな い。 臨床へ の応用 にお いて期待 した効果 を得 る とともに機 械 的適用 による危険 を避 けるには,手
法 の伝達 だけな く,そ
の基盤 にあるパ ラダイム と根拠 となる理論的妥 当性 の理解 を伴 う必要がある。手術室か ら剃刀 を強制 的 に排除す るだけでは 目的は達成で きない。特 に,途
上 国 にお ける保健 医療 の状況 を評価 す るには,EBM
やEBNに
もパ ラダイ ム依 存性 が あ る ことに注意 す る 必要がある。・
8.4
実験的検証の位置づけ 研究 にお いて も実践 にお いて も,本
質的 に重要なの は,科
学的で批判的な思考方法で ある.そ
れは,実
験 的研究か ら応用へ とい う直線的過程ではな く,循
環的 な過程で ある (ヽにCourt,2005)。 すなわち,常
識 を 見直 し,問
題 に気付 き,分
析 し,対
策 を立て,そ
の結 果 を検証す る, とい う過程 を繰 り返す必要が あ り,検
証はそ の一部 にす ぎない。 また,既
存 の実験 的検証 の 結果 の総合的検 討は,機
械 的な メタ分析ではな く,文
脈 を考慮 した システマテ ィ ック・ レビュー による必要 が ある。 研 究 方 法 と して も,実
践 の た め の 根 拠 と して も, RCTが
最善 とイま限 らな い.雑
誌Evidence Based
Nursingの編集者 (DiCenso et alけ
1998)が
主張す るよ うなRCTの
絶対視 は,常
套 的介 入方 法 の改善 の ための政治 的正 当性 を有す るが,上
述 のよ うに心理 的 要 因が考慮 されてお らず,ナ
イー ブす ぎる見方である。9.ま
とめ 臨床試験の効果検証の一般的方法 とその基礎理論 を 参考 にして看護介入の効果判定方法 を検討 した結果, 次のようなことがわかった。1)プ
ラセボ効果 を実質的効果 と分離 して測定す るこ とは不可能で,本
来の効果の一部 とみなす必要があ る.2)心
理的要 因 の影 響 を受 け る介 入 方法 は,合
理性 が 明 らかで, プラセボ効果を十分活用できることが望 ましい.3)心
理的要因の影響 を受けにくいのは,観
察研究か 多賀谷 :看 護介 入効果 の検 証方 法 開発前後群 間比較であ り,倫
理的な問題 も回避 で き る。4)介
入 プログラム に実質効果 が あ り得 る ことをイ ン タ ビュー によって証明す るには,心
理 的要 因の影響 を避 けるスキル と分析方法が必要 で ある。5)妥
当で,か
つ,可
能な限 り心理 的要 因の影 響 を受 けな いアウ トカム変数 を選定 し,研
究計画 の早期 に 検 出力分析 を行 う必要が ある。6)看
護介入 に関す るRCTの
結果 は,研
究者 の期待 に 沿 う方向にずれ る可能性が大きく,エ
ビデンス・ レ ベルの序列の有用性を見直す必要がある。7)心
理的要因の影響が無視できない場合,メ
タ分析 には合理性がな く,文
脈 を十分考 慮 した システマ ティック・ レビューが必要である。 謝 辞 この論考の執筆は,紀
要の編集や倫理審査 に携わっ た経験がきつかけになった。多 くの重要な問題 に気づ かせて くださった投稿者,申
請者,委
員の皆様 に感謝 申し上げる。 文 献Appelbaum P.S.,Roth L.H.,Lidz C.(1982):The
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【Special contribution】
Probleltt h trね
ls Of nursng htervent輛
ns孤
運 the士
redね
uc solutbns
Akira TAGAYAl)
1)Nagano c01lege of Nursing
【Abstract】 since blinding and randOmizttion are usially uば ealistic by ehical and practical reasOns in testing erects
of nursing inteⅣ entiOns,証ternat市e solutions are requred fOr dealhg witt psycho10glcal biases and hequality Of baselhe c6nditiOns behveen groups.The follOwhg andingS were obtained。
1)The placebo P∬ect,HaMhome erect,and PJttalion
erect can be clinically very sig五 ncant.2)The placebo eIFect must be regarded as a pan Ofthe net erect of hteⅣ
entiOn becaus乳
!nlike oher ttO cOmponents Of psych010gical effects,it camot be con仕 011ed h quanitative studies,hence a completely new inteⅣ entiOn prOgranl should be persuasive tO me participants about its erectiveness tO maxll肥
e its placebo
erects,which will qualiIン the pЮ gram as a standard illteⅣ entiOn fOr reference.3)ObserVational research Or befOre― and―
aner_deve10pment備 O_group compansOn are reansic solutiOns fOr equanzing the IIa載
hOm and PygmaHOn efFects betteen groups.4)Use of one_group before_aner comp孤ねOn is Often justinable for inteⅣ
entiOns h non_transitiOnal prOcesses.5) Results Of RCTs are uばeliable withOut cOntrolling psychO10gical effects because resuliag biasesを
re always uュ favor Ofthe researchers'expectationsi hence evidence levels ofRCTs and Observations tequと
e reexaminatiOn.6)Reason面 喀is`sOmetimes
more apprOp五
年9 fOr eXaminれ On Of erects than an experimental ttal.7)InteⅣ iews can reveal he pЮ cess Of erects but cannot prOve existence Ofthe eIFects.
【
Kttywords】 research mehOdO10gy,側 rsing曲erveniOn,test Ofeffectぅ psychological erects,RCT 多 賀谷 昭 〒39併4117 長 野県 看 護 大 学 Tel:0265-81-5100 Fax:0265-81-1256Attra TAGAYA
NaganoPrefectureNagano c01lege of Nurs蛇
1694AkahQKomagane,Nagano,399-4117」
APAN
TEL:+81-265-81・