• 検索結果がありません。

放電加工における残留応力について 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "放電加工における残留応力について 利用統計を見る"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

放電加工における残留応力について

向山芳世

緒方勲

(昭和55年9月1日受理)

Study on Residual Stress in Electric Discharge Machining

YoshitsuguMUKOYAMA IsaoOGATA Abstract   In the electric discharge machining, the residual stress that arises on surface of workpiece causes mainly to produce cracks, stress corrosion and delayed fracture, and is extremely harmfull in the standpoint of some mechanical characteristics of products. Accordingly, it is necessary and important matters‘to measure stress that arises on surf− ace of workpiece practically in electric discharge machining. In this paper, the results of measurment and examination about the residual stress distribution on surface of electric discharge machining(for various working conditions)by the method of X−ray measuring are discussed. In X・ray measuring, the workpiece(non−stress condition)was machined by impulse discharging. Concequently, a lot of observations could be obtained.

1.緒

言  放電加工は,放電(過渡アーク)の発生に伴う熱エ ネルギーによる,電極(工作物,工具電極)素材表面 の蒸発・溶融現象と,加工液の爆発的気化作用によっ て発生する衝撃力の繰返しによって加工が進行する がドー発の放電により飛散除去の現象が終わると直ち に加工液が極間に復帰する形をとるので,加工部では 急激な加熱,冷却の熱的プロセスが数多く繰返される ことになり,表面近傍は熱的作用などによって応力が 発生することになる。工作物表面に発生する残留応力 は,これを積極的に利用(圧縮応力)する場合もある が,通常は,クラックの発生・成長,応力腐食,お くれ破壊などの要因,さらに製品の機械的諸特性の 低下,寸法形状の安定性などの点で極めて有害とな る。  そこで,工作物素材の初期応力の検討から始め,応 力の発生原因などを明確にするために,無応力状態工 作物を使用して,単発放電で実験を行い,応力分布の 状態をX線応力測定法により観察測定した。 2. 実験装置および方法  実験に用いた工作物試料は一般構造用圧延鋼材SS 41で,市販のものを切削および研削加工により約2μ Rm。x(t5×45×85mm)に仕上げ,後述するような方 法で初期応力を除去して使用した。単発放電に用いた 工具電極は,銅φ1mmであり, X線測定面積の関係 と測定の便宜上,試料表面に単発放電を一発ずつとぽ し,放電こん直径の1/2の寸法を規則的に順次移動し

て放電し,約7×10mmの面積を確保した。そして

その中心部における応力を測定した。加工液は白灯 油である。使用した放電加工機は三菱DIAX−・250N, DE−90TF型であり,単発放電は,単発放電可能な装 置を別に取付けた。  X線測定装置は,理学電機社製ゴニオメータSG−9 (平行ビーム型)に,歪測定用アタッチメントを装置 したものである。使用X線はC,K。線(Vフィルタ ー付)であり,F。(211)面の回折線で行った。試料面 へのX線照射面積は単発放電を考慮してφ1mm(照射 マスク使用)で行った。表一1にX線測定条件を示す。

(2)

表一1 x線測定条件 試 特 フ 測

X

ビ 料 性 材

X

イ  ル  タ 定  格  子 線 強 ム 質 線 而 さ 径 カウントフルスケー一ル 時 ビ 一  ム 定 走

査速

数 度 SS 41 Cr Kw

V

Fe(211) 40kV−30mA φ1mm 1000cps 10sec 2°/min  残留応力は,X線入射角ψを0°,15°,30°,45° に変化させたときのX線回折強度曲線(回折線)の角 度(2θ)変化により,2θ一sin2ψ線図を作成して求め た。また,サイマルスタート装置使用により,各入射 角に対して,2回ずつ回折線を得て測定精度の向上を 計った。回折線の角度測定は,放電による歪の存在に より,回折線がK。1とK。2に分離できないため,K。 線で行い,解析は半価幅中点法によって行った。  応力値Oの算出式は次のように導入される。  Braggの公式より,   nλ == 2d sinθ      (1)  ここで,n:正の整数    λ:X線の波長(A)       e      d:結晶面間隔(A) θ:Brag9角(deg.) (1)式を微分して

  dd/た一cotθ・dθ       (2)

歪と応力の関係と(2)式より ・一

]告誕θ・θii託・(180) (3)

   E:縦弾性係数(kgf/mm2)    v:ボアソン比    ψ:X線入射角(deg.)  ここで,(3)式中の定数は軟鋼のE=2.1×10‘kgf /mm2, v=・O・28として計算を行い, cotθのθはC。K、 線でのF,(211)面の理論値156.08°を使用した。  したがって(3)式は         ∂2θ        (4)   a=一一 30.33        ∂sin2ψ のように簡略化される。  また,深さ方向の応力分布測定は,電解研摩(過塩 素酸1:氷酢酸4)により順次加工表面を除去し,そ の都度X線測定を行う方法で測定した。

3.実験結果

3.1 実験試料(工作物)の製作 一般に,材料(多結晶体金属)内部では,各結晶粒 における微視的応力と広い範囲にわたる均一な応力と しての巨視的応力とが重畳される形で,材料製造過程 と前加工の応力が存在しているので,応力測定ではこ れらが付加された結果としての情報が得られる。通常 の金属は,製造過程および素材管理の段階で既に内部 応力を保持しており,素材表面近傍では,機械加工 (切削,研削加工など)に伴う残留応力,放電加工に よる残留応力がさらにこれらに重畳されるが,これら おのおのに基因する残留応力の分離測定は極めて困難 であるから,初期応力状態を十分把握し,可能な限り 除去することにした。  X線照射に際しては,素材の製造過程の圧延加工に 伴う結晶配列の方向性(方位配列)に対する配慮か ら,X線照射(入射角ψ=0°,15°,30°,45°)は常 に圧延方向に平行かつ垂直な面(図一1)で行い,前加 工の切削および研削加工は加工の方向性に対する配慮 から,常に圧延方向に一致させて加工した。  図一2は市販の素材(一般構造用圧延鋼材SS 41)を 切削加工で黒皮層を除去した後,研削加工の場合,研 削代を数段階に分けて表面から順次加工し,約2μ

c

X線ソーラ スリット方向 157.0 156.5 156.0 入射X線 回折X線 @ 卜   \ @   \ ψ。 ψ15 \ ラ方向 ‥ \ 2θ 切削, 圧.延方向 @研削方向)

図一1試料へのx線照射方向

ψ、5 o−一◎ 、、式料A(表)(σ=十12.2kgf/mm2) ●一一●試料A(裏)(σ=−6.0     ) tS−−A、,式料B  (σ=十6.4    ) ロトー』 L[式米1・C   (σ=−2.3      ) tS−一込試料D   (σ=−11.9    ) 155・50   0.1  0.2   0.3  0.4   0.5  0.6  0.7          sin2ψ   図一2 研削加工面の2θ一sin2ψ線図

(3)

Rm。xに仕上げたものの2θ一sin2ψ線図の一例であ る。同一素材から製作したにもかかわらず,±0∼12 kgf/mm2(+:引張応力,一:圧縮応力)の範囲でバ ラツキをもった応力値が観察される。また,同一試 料(試料A)について表裏を測定したが,表面が引張 応力(+12.2kgf/mm2)に対して,裏面が圧縮応力 (−6.Okgf/mm2)が作用している。これは前述の素 材の経歴に基因するものと考えられる。  図“−3は研削仕上面の加工方向による影響を観察した 一例であるが,通常(圧延方向に平行)の状態(図一1 参照)でX線を照射した場合と,同一照射点におい て,X線ビt−’一ムを回転軸として試料を90°回転させて 測定した場合(圧延方向に直角)との2θ一sin2ψ線図 である。前者の残留応力値が圧縮応力9.2kgf/mm2 に対し,後者は,圧縮応力11.5kgf/mm2であり, やや方向性に依存する結果となる。また,切削加工方 爲

c

157.0 156.5 156.0 155.5   0 0.1 157.0 156.5 156.0 155・50 ψ・    ψ1・      ψ,。       ∼女15 ◎一一一〇ll‘’延.ノ元lr1」に」1ξイr(σ=−9.2k ㊧鼈黷奄唐鰍k・延ノ了1自」{こ1白.∫「」(σ=−11.5  一一’ C ’    ,” C, ’ ”      ’ @ 一 ’ ” 黶@” 図一3 0.2  0.3  0.4   0.5  0.6  0.7    sin2ψ 応力値の加工方向性依存 〃 ) ◎−o 研肖IJ加]二而 (σ=−4.2kgf/mm2) tS一一ム 研削後電解石}F摩23μm除去(σ二十6.4 〃) ロー’一ロ         43μm除去(σ=⊥9.2 〃)         133μmll余去(σ=十10.6〃) 0.1  0.2   0.3  0.4  0.5   0.6  0.7      sin2ψ 図一4 研削後電解研摩除去の場合 向に垂直な場合は,回折角2θがやや高角度側に移動 する(約0.2°)傾向となるが,素材の圧延方向に伴う 結晶配列の方向性の影響と考えられる。  図一4は試料表面の研削による加工層を,電解研摩に より23μm,43μm,133μmの順に除去した場合の2θ 一sin2ψ線図を示す。研削加工最表面では圧縮応力が 4.2kgf/mm2であるが,23μm除去すると逆に引張 応力6.4kgf/mm2となり,43μmでは引張応力9.2 kgf/mm2となって,順次引張応力が大きくなる。し かし,深さが133μmでは引張応力が10.6kgf/mm2 であり,深さが大きくなっても引張応力値はあまり増 加しない。これは,表面近傍では研削による圧縮残留 応力が発生し,研削加工面の初期応力と重畳された形 となり,その結果,圧縮応力(4.2kgf/mm2)となる が,研削加工の際の残留応力を含む層が電解研摩に よって除去されるため,母材が保持する初期応力値に 近づくためと思われる。  次に,初期残留応力および機械(前)加工による残 留応力を除去するために,焼鈍(大気)処理を行った が,研削加工後熱処理なしでX線測定した場合と, 研削加工後,A1変態点よりやや高い750°Cで焼鈍 (2H,炉冷)した場合の2θ一sin2ψ線図を図一5に示す。 研削加工後は圧縮応力は6.Okgf/mm2であるが,焼 鈍後は4.1kgf/mm2となり,やや残留応力は減少す る。しかし,X線入射角ψ=45°における回折角2θ が急激に増加(高角度側へ移動)し,他のX線入射角 ψ=0°,15°,30°による回折角2θの線図より大きく 変動する傾向が観察された。これは,測定値の信頼性 の点で極めて有害となるが,要因として,焼鈍温度の 不適,あるいは焼鈍により発生するスケール(表面酸 爲 157.0 156.5 156.0 155.5   0   0.1   0.2  0.3  0.4   0.5  0.6  0.7          sin2ψ     図一5 研削後焼鈍の場合 ψ。    ψ15       ψ3。       ψ、5 o−一◎研肖IJ力1[二面(σ=−6.Okgf/m 「一一一△石汗削lz麦火尭£屯(σ=−4ユ   〃 @     (750°C・2H) _一 一 一 一 ___一一一一一 __一一一一一一 )

(4)

化層)の影響等が考えられる。  図一6は焼鈍温度を600,650,700,850°C(各2H後 炉冷)に変えた場合の2θ一sin2ψ線図である。各条件 とも±0∼7kgf/mm2となり,研削のまま (図一2) の場合よりも応力値のバラツキの度合は減少するが, 入射角45°における回折角2θは,いずれの場合も焼 鈍温度750°Cの場合と同様に,高角度側へ移動する 傾向がみられた。  焼鈍によるスケール発生防止処置として,研削後真 空焼鈍(焼鈍温度600,650,700,850°C各2H後炉 冷)を行った結果が図一7である。入射角ψ=0°,45° の場合と,焼鈍温度が650°Cの場合の全入射角にお いては,サイマルスタート装置により5∼6回の測定 157.0  156.5 惑 156.0 155・50 爲 1(トー◇川肖IJ後焼鈍(600°C・2H)(σ=−6.9kgf/mm2) (650°C・2H)(σ=−4.6  tf ) (700°C・2H)(σ=−5.5  〃  ) (850°C・2H)(σ=十5.5  〃  )  0.1   0.2  0.3  0.4   0.5  0.6  0.7       sin2ψ 図一6 研削後焼鈍(600,650,700,    8500C・2H)の場合 156.0 156.0 156.0 ψ。 ψ、5   ψ、。   ψ、,  850°C・2H(σニー4.1∼1.4kgf/mm2         ← 156・000.lO.20.30.40.50.60.7          sin2ψ  図一7 研削後真空焼鈍(600,650,     700,850°C・2H)の場合 を行って慎重を期したが,スケールが発生する大気焼 鈍(図一6)の際に観察された入射角ψ=45°の回折角 の変動は認められなかった。また,各焼鈍温度条件の うち,650°Cにおける応力値は±2.3kgf/mm2程度 であり,誤差範囲でほぼ初期応力がないものとできる ので実験に用いることにした。  3.2 放電加工面の回折線と半価幅  X線回折により得られた回折線は,結晶学的,金属 組織学的事項に関する種々の情報を含むが,強度極 大位置(回折角2θ)の変動による内部応力測定とは 別に,回折線の形状(プロフィル)の観察も有効とな る。  研削仕上をしたのみの面と研削仕上をした面に放電 エネルギーを変えて,単発放電で放電加工を行った場 合のX線入射角ψ=0°での回折線のプロフィルの一 例(放電電流ピーク値ち=68A一定,エネルギー供 給時間τ=1200,500,250,125μs)を図一8に示す。 研削面における回折線のプルフィルは,強度分布が明 確であるのに対し,放電面でのプロフィルは回折線の ひろがり(Line Broadeing)が著しく大きくなり・ ↑ 三 曇 蓑 イ1}1:Ftjljイ 1:  1 −_ lfli 放電加」1|∬1∬p=68A,τ ・= 1200,u s        〃 500〃        〃 250〃        〃 125〃     [LLI書斤∫ij 2θ (°) 図一8 放電加工面の回折線プロフィル   1ρ=68A    τ=125μs ↑  α一Fe(211)  C, Kα  ψ=0° ㌻ 蕎 ×   電解研摩深さ

  Omm

  51 −・−@105 〃 一・・−Q90 −580〃

・%べ

     回折角2θ(°)  一 図一9 電解研摩深さによる回折線    プロフィルの変化

(5)

加工エネルギーが大きくなると,その度合いも増加す るが,これは加工エネルギーが大きいほど熱物理的作 用を受ける度合いが大きいことを示している。  図一9は単発放電面を順次電解研摩した場合の,研摩 深さによる回折線プロフィルの変化の一例(ち=68A, τ=:125A)である。表面近傍ではひろがりの度合いが 大きいが,電解研摩により表面層を除去していくと, ひろがりの度合は次第に小さくなり,表面からの深さ が深いほど放電による組織的変化が少なくなる。  前述したように,プPフィルのひろがりの度合い は,種々の情報を含むが,半価幅と内部(残留)応力 とはある程度相関関係にあり1),半価幅が大きい条件 では残留応力(絶対値)も大きく,半価幅が小さい条 件では残留応力は小さい。回折線のひろがりに関する 解析には種々の方法(積分幅法,フーリエ解析法,統 計分散法など)があるが,便宜上,単一の値としての 半価幅B(°)(図一10)を用いて,単発放電したものを 研摩深さによるB(入射角ψ=0°)の変化を示したの が図一11である。最表面における半価幅B(°)は2.91° であり,ひろがりの度合いが極めて大きいが,深さが 40μmでは1.83°で急激に減少し,70μmでは1.75°, 100μmでは1.60°となり減少の度合が次第に小さくな り・160μm付近では1.44°となって最小の値となる。  4.0 寒3・o 曇・.・ 1.0 0 ↑ 三 曇 黄 ピー一ク位置 × 吋 日 \ c)     ミ 一 × 時 旨

s

B/2B/2    莞         日 \

N

バック グランド    回折角2θ(°)  → 図一10 半価幅B(°)  100     200     300     400     500     600     電解研摩深さDe(μm) 図一一11 研摩深さと半価幅B(°) その後さらに深さが大きくなると再び増大する傾向と なり,400μm付近では1.70°の極大値となり,後は逐 次減少して500μm付近で再び最小の値(1.44°)と なる。  半価幅Bの値は残留応力(絶対値)の相対的変化 を示すものであり,そのまま残留応力とは符合しない が,表面近傍では応力値(絶対値)が大きく,深さと ともに減少し,いったん最小となるが,さらに深さが 大きい部位では,再び応力が回復し極大となり,以後 は深さとともに次第に減少し,最小となることを示し ている。  3.3 放電面の2θ・sin2ψ線図と応力分布図  図一12は単発放電加工面を最表面から順次,電解研 摩で除去した場合の2θ一sin2ψ線図の一例(ち=25A, τ=10μs)である。最表面では直線の傾きが右下りで あり,引張応力(24.2kgf/mm2)が作用するが,研摩 を繰返し行い,深さ方向の応力を測定すると,次第に 直線が半時計方向に変化し,深さが90μm付近では ほぼ水平になって応力値が0となる。しかし,120μm 付近では右上がり(圧縮応力)となり,さらに深くな 157.0 こ156.5

c

156.0 155.5   0   0.1  0.2  0.3  0.4  0.5  0.6  0.7         sin2ψ 図一12 放電加工面の2θ一sin2ψ線図 妻1: き1:

一20 研摩深さ 残留応力σ

0μm +24.2kgf/mm2 △一一一「△ 6 〃 十20.2 〃 ロー一一1] 16 〃 十15.0 〃 一 ∫ρ =25A ●一・一● 24 〃 十 9.5 〃 τ=10μs

55 〃 十 5.3 〃 ■トー一■ 90 〃 十 0.9 〃 0−一一Φ 120 〃 ㎜ 7.2 〃 ▲一・・一ム 175 〃 十 0.9 〃 ・㌔A 、@、  、   、 × 、 \.. 一 一 一 一一一一一一 \ここ\ 一一 ’一一・ 一 一 ψ。 ψ、, ψ,。 ψ、, Ip=25A τ=10μs o 。理゜2。。3。。.4・・5。。6。。 oo O o  o 促解研摩深さD,(μm) 図一13残留応力分布図(1)

(6)

ると再び水平となって応力値はほぼ0となる。  以上の結果をもとに研摩深さと応力分布との関係を 示したのが図一13である。最表面では引張応力24.2kgf /mm2が作用しており,ほぼ軟鋼の降伏点応力(≒25 kgf/mm2)と同じ程度の強い応力が発生しているが,

深さが30μm付近では約12kgf/mm2となり,応力

値は急激に減少し,50μmで約7kgf/mm2,90μmで ほぼOkgf/mm2となる。深さがさらに増すと圧縮応

力に変化して,約200μmでは7kfg/mm2程度のピ

ーク値を示した後,次第に減少し,350μm付近でほ ぼ0となるが,これらの結果は前記した半価幅B(°) (図一11)の傾向とほぼ対応している。  3.4 単発放電による残留応力  通常の放電加工における極間現象は,極めて複雑で あり,加工表面近傍の諸特性に深くかかわりあいをも つ要因も多い。したがって,加工因子(放電電流ピー ク値,エネルギー供給時間など)が残留応力分布特性 にどのような形で関与するかを検討する場合は,でき る限り,他影響要因を排除し,より単純化された形式 で実験を行うことが先ず重要であるので,単発放電に よる実験を行った。  単発放電を行った加工面を電解研摩したものの深さ D,と,残留応力値σの関係の一例(放電電流ピーク 値み=68A,エネルギー供給時間τ=1200μs)を図一14

 40

盲 」…30 垂 b 20

ε10

短 o  −10 一20   40 盲 ミ 30

連20

u

R  10 恒 昼H  −10 一20 Ip =・68A τ==1200μs 100  200  300 電解研摩深さDe(ym) 図一14 残留応力分布図(2)

 800

曝○

電解イリ1’摩深さ 1)e(/αm) 400   500   600   700 \こ∼=三≡・’ 図一15 エネルギー供給時間変化vcよる残留応力 に示す。最表面の残留応力値asは引張応力約31kgf /mm2であり,軟鋼の降伏点応力(≒25kgf/mm2)を 上まわる値となる。研摩深さが50μmでは残留応力

が約25kgf/mm2に減少するが,100μmで約20kgf

/mm2,200μmにおいても8kgf/mm2程度存在して いる。応力の変化率(応力勾配)は深さとともに減少 し,引張応力値が0となる深さ(引張応力作用域深さ 1,)は300μm付近にも達する。応力値が0となった 後,電解研摩を行い観察を続けると,次第に圧縮応力 に変化し,深さが450μm付近でピーク値(約7kgf /mm2)となるが,さらに深さが大きくなると次第に 減少し,700μm付近で再び応力値は0となり以後は 変化しない形となる。  これらのことから,放電加工の際,加工表面近傍で は比較的大きい引張応力が発生しているが,深さの増 加とともに次第に減少し,いったん0となる。しか し,さらに深さが大きくなると,小さな圧縮応力が存 在するとともに,熱的影響が比較的深い領域まで作用 していることが観察できた。  図一15は放電電流ピーク値1pを68A(一定)にし て,エネルギー供給時間τを変えた(τ=1200,500, 250,125,50,20μs,加工エネルギーQ=2.45,1.02, 0・51,0・26,0・10,0・04Joule)場合の深さ方向と残 留応力の関係を示したものである。最表面における残 留応力値osは34.6∼24.2kgf/mm2の範囲に分布し, エネルギー供給時間(加工エネルギー)が大きいと σsも大きくなる傾向となるが,τ=1200μs(Q=2・45 Joule)の場合が31.Okgf/mm2に対してτ=20μs(Q =0.04Joule)の場合は24.2kgf/mm2であり,加工 エネルギー比に対するOsの差異は比較的小さい。引 張応力作用域深さ1,は,τ=1200μsの場合の約300 μmから,τ=20μsの場合の約110μmまでの比較的 広い範囲にわたって分布し,エネルギー供給時間(加 工エネルギー)が大きいほど引張応力作用域深さlt は大きく,逆にエネルギー供給時間(加工エネルギ ー)が小さいと1‘は小さくなる傾向が明らかにみら れる。  また,エネルギー供給時間が小さい領域(τ=:125, 50,20μs)では,最表面残留応力Os,引張応力作用域 深さltとも減少するが, asに比較して, ltの減少の 度合いが大きいので,エネルギー供給時間が短い領域 ほど応力の変化率(応力勾配)が大きくなる傾向とな る。したがって,エネルギー供給時間(加工エネルギ ー)が小さい領域(τ=125,50,20μs)では,圧縮応 力側へ変化する付近においても,比較的大きい応力勾

(7)

  40 ξ・・ き2°

 ー10 一20 lp ==68A  =51  =33  =12.5   8.3 ’ミSSSNsミー.. 図一16 電流ピーク値変化による残留応力 盲 ミ き

R

叢 40 30 20 10 0 一10 一20 一1ρ=68A,τ=・50μs (Q・=・O.10 Joule) 一一一1ρ=8.3A,τ=500μs (Q=0.12 Joule) 図一17 エネルギー供給形態と応力分布 配を保持しているから,圧縮応力の最大値は,エネル ギー供給時間が大きい領域(τ=1200,500μs)よりも 大きい値(8∼9kgf/mm2)となる。よって,圧縮応力 が発生する深さは,例えばエネルギー供給時間τ= 1200μsの場合が357μmに対して,τ=20μsの場合 は257μmとなり,引張応力作用域深さの場合と比較 してその差は少ない。  図一16はエネルギー供給時間τを500μs(一定)に して,放電電流ピーク値1pを変えた(lp=68,51, 33,25,12.5,8.3A,加工エネルギーQ=1.02,0.77, O・50,0・38,0・19,0・12Joule)場合の深さと残留応 力の関係である。  最表面残留応力asは34.6kgf/mm2から22.9kgf /mm2の間に分布し,加工エネルギーQの変化の幅 (Q=1.02∼0.12Joule)がIp=68A(一定)の場合 (Q・=2.45∼0.04Joule)よりも小さいにもかかわらず 広い範囲に分布する。  深さ方向については,Ip ・= 68A(Q=1.02 Joule) から石=8.3A(Q=0.12 Joule)の変化に対して, 引張応力作用域深さ1,はそれぞれ245μmおよび166 μmであり,比較的深い領域において狭い範囲に密に 分布する結果となるが,これはエネルギー供給時間が 比較的大きい条件(500μs一定)であるため,1pの 大小にあまり関係なく,深い部位まで熱的作用が影響 するためと思われる。  以上の結果などから,残留応力分布は,加工エネル ギーQによって一元的に決定されるのではなく,エ ネルギー供給時間と放電電流ピーク値が相互に関連し ながら応力分布に影響を与えるものと考えられるが, 加工エネルギーがほぼ等しい条件での,放電電流ピー ク値とエネルギー供給時間の差異による応力分布の比 較を例(図一17)にとると,Ip=68A,τ=50μs(Q= 0.10Joule)に対して,放電電流ピーク値が小さく, エネルギー供給時間が長い場合のち=8.3A,τ=500 μs(Q=O.12Joule)では,最表面残留応力値σsは それぞれ26・5kgf/mm2,22.9kgf/mm2であるのに対 し,引張応力作用域長さ1,は123μmおよび166μm となり,asが小さいにもかかわらず,後者,すなわ ちエネルギー供給時間が大きい条件の方が深い部位ま で引張応力が分布する結果となる。また,ち=68A, τ= 250pts(Q=・O.sl Joule)(図一15)と1p・=33A,τ= 500μs(Q=0.50Joule)(図一16)においても同様の傾 向となる。  以上より,加工エネルギーが等しい場合には,放電 電流ピーク値が比較的大きく,エネルギー供給時間が 短い条件ほど最表面の残留応力σ・は大きく,深さ方 向の応力分布への影響は小さくなり,逆に,エネルギ ー供給時間τが比較的大きく,放電電流ピーク値1p が小さい条件の方が最表面残留応力asは小さく,深 さ方向への影響が大きくなる。

4.考

察  通常の放電加工での加工対象(SKD, SKSなど) は,熱処理(焼入れ,焼もどし)の段階で熱歪を生じ, ある程度大きな初期応力を保有しているが,放電加工 によって表面近傍応力はさらに増加する。本実験は, 初期応力が0である工作物(軟鋼)についての単発放 電であり,放電除去プロセス〔放電発生(加熱開始) →溶融・蒸発・飛散(衝撃力発生)→放電停上(冷却 開始)→加工液復帰→凝固〕1サイクルによって,表 面近傍に発生する極めて単純化された形での残留応力 の測定である。同一材質,同一加工(放電)エネルギ ーの条件において,放電電流ピーク値が大きく,エネ ルギー供給時間が短い場合には,放電1発あたりのエ ネルギー密度が大きく,放電点近傍における溶融・蒸 発作用が急激となって,表面の残留応力も大きくな る。しかし,エネルギー供給時間が短いので,放電に よる熱的影響が深い領域に及ぽず,深さ方向に対する

(8)

残留応力の分布は浅くなる。放電電流ピーク値が小さ く,エネルギー供給時間が長い条件では,放電1発あ たりのエネルギー密度が小さいので,表面近傍への熱 的影響も小さく,したがって最表面残留応力も小さく なる。しかし,エネルギー供給の時間が長いので,よ り深い部位まで熱的作用が及び応力分布深さも大きく なる(図一17)。このように,加工エネルギーの供給形 態(エネルギー波形)によって,残留応力分布が異な る。加工エネルギーが同一の場合,放電電流ピt’一’ク値 Ipが大きいと,最表面残留応力値が大きく,引張応 力の作用する深さは小さい(浅い)範囲に密に分布す る(応力勾配が大きい)から,加工対象によっては, クラックが発生し易くなる。逆に,ちが小さく,エ ネルギーt供給時間τが大きい場合は,最表面応力値 は小さくなるが,応力が深い部位まで発生する。した がって,ちとτの組合わせにより,製品の品質に及 ぼす影響が異なってくるので,エネルギー供給形態の 適切な選択が重要となってくる。本実験条件範囲に おいては,最表面の残留応力値の最大値は,34.6kgf /mm2(ち=68A,τ=500μs)であり,軟鋼の降伏点を 越えた値となる。しかし,加工面にクラックは認めら れなかった。これは,軟鋼では延性が大きいことに原 因がある。  種々の仮定を設け,放電加工の際の電極(工作物 および工具電極)の加熱時および冷却時の温度分布 をモンテカルロ法により計算し,温度分布による応 力分布を計算する。エネルギー供給時間を加熱時間 とし,加熱時間と冷却時間をそれぞれある値に等分 (Aτ)すると,単位微小エネルギーdqは,格子間隔2) h=2〆兀・IJFであるから, dq−(Q・+Q・)/〔后・4.(2膓告)・N〕 となる。  ここに,Q,+Q2;加工(放電)エネルギー, J;熱 の仕事当量,α;材料の線膨張係数,do;放電柱の熱 源発生直径,」V;計算の繰返し数である。電極の深さ rv=bSe(constant)の位置におけるx方向(融解層の 半径方向)の加熱時の熱量分析をQh(X, Ptの,冷却 時の熱量分布をQ,@,yo)で表わすと,電極材料の 温度変化量dT(°C)は      {Qh(x, Ye)−Q,@,ッe)}〔ca1〕   C〔cal/9。C〕×ρ〔9/cm3〕×(2}/α・dτ)3〔cm3〕    =dT(x, Ye)〔°C〕 となり,熱応力ax⑰, Ye)は ax(鋤一ん・E・αQ

Z濃1芽諸1)

一一@1000 200 400・y(kgi/mm2)  100 yf=105    P ♂・y(200・y) S,(σy=33kgf/mm2) Q,十Q2=0.50Joule   =250μs 図一18理論的解析による応力分布 となる。  同様に c=Xe(constant)の位置におけるy方向 (融解層の深さ方向)の熱応力は ay(Ce・ツ)−k・E・αQ

舶f曉留)

で表わされる。したがって,熱応力σω@,orの, ay (Xe, or)は熱量分布Qh(x, Y,), Qc(q, yの, Q,(エe, or), Qc(Ze, or)を用いて計算することができる。  ここで,kは材料の拘束条件によって定まる無次限 の係数であり,普通0.5∼2.5であるが,放電加工にお いては,加工面は加工液に接していて無拘束に近い条 件であるのでk・=0・5とした。また,E;材料の縦弾 性係数,C;比熱,ρ;密度である。  このようにして,各格子の位置における熱応力を計 算し熱応力分布図を作成する。応力分布図より,応力 は融解層の中心よりその直径の約1/4離れた位置の値 が大きいようであり,その位置における応力値をもっ て,その条件における応力とするが,その一例が図一 18であり,実験による測定結果と大体一致する。 5. ま と め  無応力状態試料の製作および単発放電での残留応力 測定の実験を行った結果,次の結論を得た。  1) 通常の素材においては,加工過程,および材料   管理の段階で材料内部にある程度の初期応力を保   持しており,加工面の残留応力は,これら初期応   力と加工により発生した応力とが重畳され残留す   る。  2) 加工応力測定用試料(軟鋼)の内部応力を除去   する際は,A1変態よりもやや低い約650°Cで

(9)

 の真空焼鈍処理が有効である。 3)放電加工表面には,大きい引張残留応力が作用  しており,深さとともにその大きさは減少し,内  部に小さい圧縮応力が存在する形となる。 4) 放電こん内部に発生する圧縮応力は,表面近傍  に発生する引張応力の応力勾配と関係があり,引  張応力の勾配が大きい分布形態では,圧縮応力も  大きく,逆に引張応力の勾配が小さい場合は圧縮  応力も小さい。 5) 残留応力の分布形態は,投入された加工(放  電)エネルギーによって決まるのではなく,エネ  ルギー供給時間,放電電流ピーク値などが大きく  影響する。エネルギー供給時間は主として,内部  の応力分布に関係し,放電電流ピーク値は,主と  し,最表面残留応力値に影響する。 6)放電加工面に発生する残留応力は,電極の温度  分布から計算した熱的解析結果とよく一致するこ  とから,主として熱的作用によるものであること  が実験的に証明できた。

参考文献

1)B.D. Cullity,村松源太郎訳:X線回折要論,   p.266,アグネ社 2) 向山芳世,三橋真成:放電加工の研究一電極   の蒸発,溶融形状の解析一,電気加工学会誌,   Vo1.9, No.17,64(1975)

参照

関連したドキュメント

発電量調整受電計画差対応補給電力量は,30(電力および電力量の算

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

Arriba Soft Corp., ΐΐ F.Supp... Google

原子炉隔離時冷却系系統流量計 高圧炉心注水系系統流量計 残留熱除去系系統流量計 原子炉圧力計.

2017年 2月 9日 発電所長定例会見において、5号炉緊急時対策所につい

当社は、 2016 年 11 月 16 日、原子力規制委員会より、 「北陸電力株式会社志賀原子力発

東京電力(株)福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」と いう。)については、 「東京電力(株)福島第一原子力発電所