山梨大学1:学部研究報告 第52号 2003年
弾性波エネルギートラッピングを利用した
高結合・高安定のラブ波型弾性表面波基板
電気電子システム工学科垣尾省司 中川恭彦
1 はじめに 構造が得られることを理論的,実験的に示した結果 について述べる. 弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)は, 弾性体の自由表面に沿って伝搬する導波(Guided Wave)であり,代表的なものが1885年頃Rayleigh によって理論的に証明されたレイリー波である.古 くから材料の非破壊評価などに応用されてきた が,1965年に「すだれ状電極(lnterdigital Trans− ducer:IDT)」の発明によって圧電基板上で効率良 く波の送受波が出来るようになり,フィルタ・遅延 線・共振器・コンボルバなど様々な信号処理機能デ バイスに応用されるようになった.小型,高信頼 性,高安定性などの特徴を活かし,TV・VTR・BS チューナーの中間周波数フィルタ,携帯電話・カーナビなどの移動体通信用SAWデバイス, CATV
用フィルタ,無線LANなどに実用化されている
が,特に移動体通信の需要増大に伴いSAWデバイ スの高性能化が要求されている. これまでデバイス用圧電基板としては,水晶とニ オブ酸リチウム(LiNbO3:LN)が主に用いられて きたが,水晶は良好な温度安定性を持つ反面,電気 ⇔表面波の結合係数(電気機械結合係数:K2)が 小さく,LNは高結合であるが温度安定性に欠けて いる.このため水晶と同程度の温度安定性を有し, LN並みの結合係数をもつ基板材料が強く要請され ている.最近,水晶と同等の優れた温度安定性を有 する新しい圧電結晶としてランガサイト(La3Ga5 SiOl4:LGS)が注目されたが,レイリー波の結合係数はLNの約120であるためデバイス用途が限
定されている. 本稿では,基板上に位相速度の遅い高密度薄膜を 形成し,弾性波エネルギー分布を表面付近に集中さ せる「弾性波エネルギートラッピング」を利用する ことによって,高結合・高安定なランガサイト基板 2 弾性波エネルギートラッピング ラブ波型Shear Horizontal Wave(SH波)(1)は, 水晶(2)(3)やLGS(4)(5)上の特定の伝搬方向のみに現れ る,レイリー波とは異なるSAWモードであり,純 粋な横波成分よりなるためスプリアスが無い,比較 的温度特性に優れるなどのデバイス利用に有利な特 徴をもっている.しかし,弾性波エネルギー分布が 表面から10波長以上に及んでいるため,励振効率が 悪く,表面波以外にバルク波も励振されてしまう. そこで,図1にその概略を示すように,「波動は 速度の遅い領域へ向かおうとする」現象を利用し, 基板上に位相速度の遅い高密度誘電体薄膜を形成す ることにより,弾性波エネルギー分布を表面付近1 波長以内にトラッピングさせる.この効果を以下に 示す. 1.装荷前の電極下のトラッピング効果は弱いた め結合係数も小さいが,薄膜装荷によって大 きなトラッピング効果が得られK2が5∼10 倍に増大する. 2.装荷前の伝搬路ではトラッピング効果が無い ため,バルク波として伝搬してしまい大きな 伝搬損失を有するが,装荷後は無損失のラブ 波として伝搬させることが可能. 励振電極 高密度誘電体薄膜を装荷するlllligEggxptptx
受信電極 電極下 伝搬路 ラブ波型SH波鴫驚1溺膠嬬
基板 図1 弾性波エネルギートラッピングの概略図3.電極と伝搬路の境界におけるエネルギー分布 のミスマッチングによってバルク波放射損失 を生ずるが,装荷後はマッチングが良くバル ク波放射損失が大幅に低減する. これまでに著者らは,アモルファス五酸化タンタ ル(Ta205)薄膜が比較的大きな密度をもつ(約 7,200kg m3)ことに着目し, Ta205を装荷した水
晶とLGS上のラブ波型SH波に対して,これらの
効果を明らかにしている({川). また,同様の原理によって,LN,タンタル酸リ チウム(LiTaO3:LT), LGS上のリーキー表面波 (基板中にバルク波を放射しながら伝搬する表面波 モード)の低損失化に有効であることを明らかにし ている(8)∼m). ここでは,これらのうち高結合・高安定な基板構造として有望と考えられるLGS上のラブ波型SH
波について述べる.3 理論計算
3.1 位相速度と結合係数回転Yカット90°X伝搬LGS基板上(オイラー
角(0°,θ,90°))にTa205薄膜を装荷した場合 のラブ波型SH波の位相速度, K2を計算した.ま た,金薄膜(Au)を装荷した場合についても同様 の検討を行った.これは電極自体を高密度金属で形成した場合に相当する.LGSの材料定数はBungo
らの値(12)を用い,Auの材料定数はNeighboursら の値q3)を等方近似したものを用いた. Ta205装荷の 場合では,実験においてIDTとして用いたAlの厚 さ(波長λの2%)を考慮し,Ta205 Al LGSの構 造に対して自由,短絡表面の位相速度2!/,?・“、を求 め,2(?lf・一、・tbX、)?・∫よりK2を求めた.’t)∫を求める際 は,Au,あるいはAlの誘電率を仮想的に真空の誘 電率として計算した.また,Ta205の横波速度は 2,490msであり,θ=120°∼160°のSH波速度よ り速いため,この範囲でラブ波型SH波の解が存在 しなくなってしまう.そこで,Ta205の密度を仮想 的に25%増加させて計算を行った. Au装荷, Ta205 Al装荷におけるカット角θに 対する位相速度(短絡表面)をそれぞれ図2(a),(b) に示す.薄膜を装荷しない場合のSH波位相速度は 2,390∼3,320msの範囲である. Auの横波速度は 1,270msであるため, Auを0.08λ装荷すると 350◎ @E
)3000 ≧ 婁 タ25◎◎8
巴 CL 2000 Au/LGS(0°,0,9◎°), SH−一一type SAW 0 30 6◎ 90 12◎ 150 18◎ Cut Angle e (°) (a)with All Ta205/AlノしGS(0°,0,90°), SH−−type SAW 3500 奪E
)300◎ ≧ 旦 >M 2500 $ 雲 a200◎ 0 30 60 90 120 15◎ 18◎ Cut Angle e (°) (b)with Ta205/Al 図2 (0°,e,90°)LGS上のラブ波型SH波の位相速度 1,980∼2,145msにまで減少していることがわか る(図2(a)).Ta205 Al装荷の場合では, Au装荷 と比較すると位相速度を減少させる効果が小さいこ とがわかる(図2(b)). 図2に対応するK2の計算結果を図3(a),(b)に示 す.薄膜を装荷しない場合は,θ=15°付近の値 (0.15%)がK2の最大値である.薄膜装荷によっ て,全てのカット角において一κ2が増加しているこ とがわかる.Au装荷のK2は,θ=0°付近におい て約1%の最大値を示している(図3(a)).この値 は,90°X伝搬水晶と高密度金属膜を組み合わせた 場合のK2(3)の約3倍である. Ta205 Al装荷の場合 では,位相速度を減少させる効果が小さいものの, 最大で約0.7%のK2を示している(図3(b)).LGS上のSH波のTCDは,θ=20°付近でゼロ
になることが報告されている(4).θを20°に固定し 各薄膜の膜厚に対するK2を計算したところ(計算 値は実験値と共に図8(a)に示す),Au装荷では 0.021λ,Ta205 Al装荷では0.052λの膜厚で,そ弾性波エネルギートラッピングを利用した高結合・高安定のラブ波型弾性表面波基板 _1・2
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Au/LGS(0°,e,90°), SH−type SAW叉
0 30 60 90 120 150 180 Cut Angle θ (o) (a)with Au Ta205/Al/LGS(0°,e,90Q>, SH−・type SAW _O・8 £ 曳α66
§◎,4 止9
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0 3◎ 60 90 120 G50 180 Cut Angle θ (◎) (b)with Ta,2 Os/Al 図3 (0°,e,90°)LGS上のラブ波型SH波のκ2 れそれ0.69%,0.98%のK2最大値を示すことがわ かった. 3.2 遅延時間温度係数Au装荷(0°,θ,90°)LGS上のラブ波型SH
波のTCDを計算した.基準温度に対して±10°C
の位相速度の変化分を,伝搬方向の線膨張係数から 引くことによりTCDを求めた.Au規格化膜厚hλをパラメータとし,カット
角θに対するTCDの計算結果を図4に示す.薄膜 を装荷しない場合は,θ=21°と90°においてゼロ TCDを示す. Au装荷によって,全てのカット角 においてTCDは単調に増加するため,θ=0°∼ 21°と90°∼180°の範囲では,Au膜厚の調整によっ てゼロTCDが得られることがわかる.図3(a)との 比較より,特にθ=−10°∼10°では,ゼロTCDと 1%程度のK2が同時に得られることがわかる. 図5(a),(b)には,−20°∼20°の範囲でθをパラメータとし,Au規格化膜厚に対するK2とTCDの
8◎A“/LGS(0°・θ,90°)・ SH−type SAW §2: 8 −2◎・ F−40 −6◎ 一・8◎ .、\・< 0.02 ◎.Ol 0 3◎ 60 90 12◎ 15e 18() Cut Angle θ (°) 図4 Au装荷(0°, e, 90°)LGS上のラブ波型SH波のTCD _1・で 遥 cu 1 δ0.96
認 e.S9
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0.6 Au/LGS(0°,θ,90°), SH−type SAW 1二;1這 ◎ ◎.ol O.02 α03 0.◎4 ◎.05 0.06 h/λ (a)、κ2 40Au/LGS〈0°,θ・90°), SH−−typ・SAW 30ρ20
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8−10 トー−20 −・30 −40 ◎ O.Ol O.02 0.03 0.04 0.05 0.06 h/λ (b)TCD 図5 (0°,e,90°)LGS上のラブ波型SH波のκ2とTCD計算結果を示す.ゼロTCDと約1%のK2が同時
に得られるAu膜厚が存在することがわかる.特に θ=0°(Zカット)において,K2が最大値(1.06%) を示す膜厚とゼロTCDを示す膜厚が一致している (0.028λ). Ta205 Al装荷の場合では,その温度係数が不明であるため具体的な理論的検討はできないが,後述 するようにTa205はAuと同じ正の符号の遅延時間 温度係数をもつため,Au装荷と同様に,θ=0° ∼21°と90°∼180°の範囲で,膜厚の調整によりゼロ TCDが得られると考えられる. る放射コンダクタンス(図中G。)とサセプタンスB を求め,次式に代入することによってK2を求め た. K2一 f(Ga)f ==,fo×1・・(%) (1) K2測定値を計算値と共に図8に示す.(a)はθ
4 実験
4.1 試料の作製 (0°,θ,90°)LGS上のラブ波型SH波のK2と 温度特性を測定するための試料を作製した.θ= 20°の基板とレイリー波励振用として供給されてい るθ=140°の基板を用いた.これらの基板上に波長 λ=20μm,交叉幅100λ,対数1V=30のダブルIDT対をAuのDCスパッタリング膜で形成した.この
際,下地層としてCrを300A形成した.以後のAu
膜厚はこのCr下地層も含めた膜厚を示している. また,同じ仕様のIDT対をAl(膜厚0.02λ)で形 成した後,RFスパッタリングによりアモルファス Ta205薄膜をIDT上に装荷した試料も作製した. Ta205薄膜装荷前後の周波数特性の例(伝搬路長 L=50λ)を図6に示す.膜厚0.047λのTa205薄 膜装荷によって,挿入損失が約10dB減少している ことがわかる.挿入損失減少の要因として,伝搬損 失の低減とバルク波放射損失の低減が考えられる が,これらの詳細な特性は検討中である.なお,IDTアドミタンス特性より求めた変換損失は1対
あたり11.6dBであった. 4.2 κ2の測定 各試料のK2をIDTのアドミタンス特性より求め た.図7にその測定例を示す.中心周波数jl)におけ Ta205/Al/LGS(0°2◎°,90e> ◎ δ2◎9 ∫、/with・ut fHm
き4・ 曇6°』80
漕1摺i濃
10◎ 10◎ 120 140 160 180 Frequency(MHz) 図6 周波数特性の例 Ta20E/Al/LGS(0°,20°,9◎°) 20 15 CE 旦10 σ5
35 3◎ 砺259
00 2◎ 0 15 100 120 140 160 180 Frequency(MHz> 図7 1DTアドミタンス特性の測定例 しGS(0°,20°,90°)び1
二
/Au
:α8 tT°.6 星α4§α2 ≡::=
0
0 ◎.02 0.04 0.◎6 0.08 0,1 h/λ (a)θ=20° しGS(0°,140°,90°}芭α8 Calculated
●.O“Experiment 警α6 §㌢4
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0 0.◎5 0.1 0戊5 0.2 0.25 0.3 h/λ, (})}θ :14◎° 図8 (0°,θ,90°)LGS上のラブ波型SH波のκ2弾性波エネルギートラッピングを利用した高結合・高安定のラブ波型弾性表面波基板 = 20°,(b)はθ=140°の場合であり,横軸はAuま たはTa205の規格化膜厚hλである.
Auを装荷(AuでIDTを形成)した場合のK2
測定値は,θ=140°の場合で計算値とほぼ等しい値 が得られた.θ=20°の場合のK2測定値は計算値よ りも小さいが,0.015λの膜厚において0.80%の値 が得られた. 一方,Ta205 Al装荷の場合では, K2測定値と計 算値の差は大きいが,膜厚に対する変化は計算値と 同様の傾向を示している.θ=20°の場合では0.047 λの膜厚において0.61%のK2測定値が得られた. また,Al電極のみの場合の測定値(Ta205 Al装荷 の場合のhλ=0における測定値)は計算値より も0.2∼0.3%大きな値を示した.Al電極のみの場 合において,弾性波エネルギーの表面付近への集中 度が,予測される集中度よりも大きい可能性があ る. 4. 3 周波数温度変化の測定 ゼロTCDが期待できるθ=20°の試料を用いて ラブ波型SH波の温度特性を測定した.測定系を図 9に示す.ネットワークアナライザに接続した試料 を恒温槽に設置し,入出力IDT対の挿入損失とほ ぼ等しい減衰に調節したアッテネータを試料と並列 に接続すると,周波数領域では無数のヌル点を有す る干渉特性を得る.このうちの中心周波数付近のヌ ル点に注目し,試料の周囲温度を変化させ(0°C →100°C),基準温度Tc)(20°C)の周波数.fbに対す る周波数変化率(Aアノb)を10°Cおきに測定した. なお,Au装荷試料の伝搬路は, IDTと同じ膜厚の Au CrでMetallizedされており, Ta205 Al装荷試 料の伝搬路はTa205のみ装荷され,電気的な境界条 Network Ana Iyzer閂lw
図9 周波数温度変化の測定系 件はFreeである.また,伝搬路長はいずれの場合 もL=300λである. Au装荷, Ta205 A1装荷の測定結果を図10(a), (b)にそれぞれ示す.Au装荷の場合は計算値と共に 示してある. 図10(a)より,Au膜厚が0.0025λから0.014λに かけて,基準温度における周波数変化率の傾きの符 号が正から負へ(TCDの符号は負から正へ)変化 しており,測定値は計算値と概ね一致していること がわかる.Au膜厚が0.008λのとき,ほぼゼロ TCD(頂点温度が20°C)が得られ,20°Cから60°C までの周波数変化が約一100ppmの放物曲線が得ら れた. また,図10(b)より,Ta205膜厚が0.021λのとき, Au膜厚0.0025λの場合とほぼ同様の特性が得られ た.Ta205膜厚が厚くなると周波数変化が増加して おり,Ta205はAuと同様に正の遅延時間温度係数 を持つことがわかる.よって,Ta205 Al装荷にお 言9
) ξ Au/LGS〈0°,20°,90°) 400 燕:Calculated 200. eo・o:Experiment Au:O.0025λ o 這一200 一400 一20 0 20 40 60 80 1◎O Temperature(°C> (a)with Au 4◎。Ta・O・fAl/LGS(0°,20°・90°) 200 言毯 0
) ⊆ IEi−200 一400 τa205:0.021λ / 一20 0 20 40 60 80 ]00 Temperature(°C) {b)with Ta205/Al 図10 (0°,e,90°)LGS上のラブ波型SH波の周波 数温度変化40
30
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8一1◎ ←−2◎ −3◎ −4◎ しGS(0°,20°,90°) Au,Calculated Ta2 ・ピa,F,ee ....● ”ヴ の‘ 〆’ Au,Metallized Au,Free ◎ 0.01 0.02 ◎.03 0.04 0,05 ◎.0 h/ λ 図11 TCDの測定結果 いても膜厚の調整によりゼロTCDが得られる. 次に,TCD測定値と計算値を比較した結果を図 11に示す.ただし,TCD測定値は各周波数温度変 化の測定値を △ff。一α(T−T・)+b(T−T・)2 (2) の関数でフィッティングし,得られた1次温度係数αの符号を逆にしたものである.図中hλ=0に
おけるTCD測定値は伝搬路がFreeの場合であ
る.膜厚の増加に従い測定値と計算値の差が大きく なる傾向がみられることから,Au膜の温度係数が 計算に用いた値よりも小さいと考えられる.また, 下地層のCrの影響も考えられる.なお, Au膜厚 が0.008λのとき,α=0.35×10−6°C,b=−72× 10−9°C2であった. 図11には,同様にして得られたTa20・J. ’Al装荷 の場合のTCD測定値も示してある.この結果からも,Ta205はAuと同じ温度係数の符号をもつこ
と,膜厚の調整によりゼロTCDが得られることが わかる.Ta205膜の温度係数の算定が課題である.最後に,ほぼゼロTCDが得られたAu膜厚が
0.008λの測定値と,STカット水晶上のラブ波型 SH波の周波数温度変化の計算値を比較した結果を 図12に示す.Au LGSの場合と同様にして計算し たAu Quartz(0°,θ,90°)における,θ=127・6°・ Au膜厚ゼロ(Free)の場合,θ=132.8°, Au膜 厚0.01λの場合,θ=154.2°,Au膜厚0.02λの場 合の各計算値を示してある.これらはAu膜厚を固 定し1次温度係数がゼロとなるようにθを調整した 結果である.図12より,水晶の場合では2次温度係 数が最小となるθが存在することがわかる. Au LGS(θ=20°)の測定値は,θ=127.6°, 言 Ω ε < 10◎ 二、ニニニ:。Calculated, @ ●:Experiment Au/Quanz〈0°β,90°) `u/LGS(0°,2◎°, 0°) 0 │100 ,■’. 骨・ 奔 ’一 、㊨ D鷲’,。154.ピ,A、, ’・二: ’・・一一一.、 噺、∼q. O.02λ .、 、⇒、、、 A θ=132、8°,Au: 0.01λ 一20◎ eエ127.6°,Free Au:0.◎08λ 一30◎ 一40◎ 一40一20 0 20
@ Temperature 4◎ 6◎ @ (°C) 8◎ 栢 図12 STカット水晶上のラブ波型SH波の周波数温度 変化との比較 Freeの場合と一致していることがわかる. Kadota らにより報告されている高密度金属膜(WorTa) とST−90°X水晶を組み合わせた場合の周波数温度 変化(3)は,図12のθニ132.8°とほぼ同様の特性であ る.よって,Au LGS(θ=20°),膜厚0.008λの 2次温度係数は,水晶と高密度金属を組み合わせた ラブ波型SH波の場合の約2倍である. LGS上のラ ブ波型SH波に対して,2次温度係数の値とカット 角,装荷膜厚の関係を明らかにする必要がある.5 まとめ
「弾性波エネルギートラッピング」を利用し,高 結合・高安定の基板構造を得ることを目的として,Au膜とTa205誘電体膜を装荷した90°X伝搬LGS
基板上のラブ波型SH波に対して, K2と温度特性を 理論的,実験的に検討した結果について述べた.得 られた結果を以下に示す. 1.K2の計算結果より,薄膜装荷によって,全 てのカット角においてK2が増加し,その最 大値はAu装荷では1%, Ta205 Al装荷で は0.7%であることを明らかにした. 2.TCDの計算結果より,θ=0°∼21°と90°∼ 180°の範囲では,Au膜厚の調整によってゼ ロTCDが得られること,特にθ=一 10°∼ 10°では,ゼロTCDと1%のK2が同時に得 られることを明らかにした. 3.θ=20°のLGS基板を用いてK2を測定した 結果,Au装荷では最大で0.80%, Ta205/ Al装荷では最大で0.61%の値が得られた. これらは,水晶と高密度金属を組み合わせた弾性波エネルギートラッピングを利用した高結合・高安定のラブ波型弾性表面波基板 ラブ波型SH波の場合の約2倍の値である. 4.θ= 20°のLGS基板を用いて周波数温度変化 を測定した結果,Au膜厚0.008λのとき,1 次温度係数がほぼゼロ(0.35×10−6°C),2 次温度係数が一72×10−9°C2の温度特性が 得られた.この特性は,STカット水晶上, Freeのラブ波型SH波と同等の安定性であ ることを示した. 以上の結果より,基板のカットと装荷膜厚の最適