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JAIST Repository: ソフトウエア開発と知的所有権問題

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title

ソフトウエア開発と知的所有権問題

Author(s)

横山, 正幸; 丸毛, 一彰

Citation

年次学術大会講演要旨集, 2: 55-59

Issue Date

1987-10-16

Type

Presentation

Text version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/10119/5197

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す

るものです。This material is posted here with

permission of the Japan Society for Science

Policy and Research Management.

(2)

2 C 6 ソフトウエア 開発と知的所有権 問題

横山正幸,

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(

科学技術と経済の

会 ) 1 . 知的所有権 の考え方 (1) 「知的所有権 」の歴史的背景 人間は、 有史以来知的な 営みによって 多くの発明・ 創造を生み出し、 このよう な

発明・創造の

生産・積み重ねが

人類の進歩の

基本となってきた。

しかし、 長い 間 このような人間の 知的営為が生み 出した発明・ 創造は、 人類の共通の 財産とし て 、 いわば公共財として 多くの人々に 利用されてきた。 しかし、 産業社会の成立以来、 このような発明・ 創造は産業の 原動力ともなり 発明・創造の 創出に多額の 投資が為されるようになると、 発明・創造の 財産的 権 利を認め、 創造者の知的資産・ 私的射として 評価するという 考え方が生まれてき た 。 このため、 発明・創造のもっ 公共財・私的射という 2 つの性格に、 どのよ う に 社会的調和をみつげていくか 問題となったのであ る。 このような問題について、 初めての国際的コンセンサスは、 1883 年に生まれた。 1883 年に成立した「工業所有権 の保護に関するパリ 条約 ( バリ条約 ) 」は、 特許 権 ・実用新案権 ・意匠 権 ,商標権 の 4 つの知的所有権 を総称した工業所有権 の保 護を目的に、 パリで署名された 条約であ る。 日本は、 1899 年 ( 明治 32 年 ) にこの パリ条約に加盟した。 さらに、 1886 年には、 著作権 の国際的な保証を 目的とする世界初の 国際条約が ベルヌで調印された。 この「ベルヌ 条約」によって、 工業所有権 と同様に、 すべ ての条約加盟国では、 当該著作物の 著作権 者は内国民待遇が 与えられることにな った 。 また、 この「ベルヌ 条約」においては、 著作権 の成立に何の 手続きも必要 としない「 無 方式主義」が 採用された。 無 方式主義とは、 創作者が創作物を 完成 させたと同時に、 創作者に著作権 が発生するという 考え方であ る。 したがって 、 特許のように 出願・登録等の 手続きは必要要件としていない。 このような 無 方式主義に対して、 世界最大規模の 著作権 産業を有する 米国では、 著作権 の成立のための 登録手続きを 定めた「方式主義」を 採用し、 ベルヌ条約に は加盟していない。 このため、 1952 年ジュネ 一プ において、 ベルヌ条約加盟国が 方式主義要件を 課す米国に譲歩して「万国著作権 条約」が調印された。 その他、 この 3 つの条約を柱として 知的所有権 をめぐる様々な 条約が締結され ている。 このように、 知的所有権 をめぐる問題は、 1 9 世紀末から様々に 議論され、 時 代に対応した 形で幾多の改訂を 重ねてきているのであ る。 ちなみに現在のバリ 条 約は 、 1967 年のストックホルムでの 改正に基づく 条約であ る。 現在の知的所有権

(3)

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を をソ しれ (2) 知的所有権 の定義 現在議論されている 知的所有権 という概念に 含まれる知的財産は

①特許

②実用新案

③意匠

④商標

⑤著作物

⑥平群体回路

配置 ⑦トレード・シークレツ ト があ る。

このなかで①∼④の 工業所有権

(

特許・実用新案・ 意匠

・商標 )

は特許法等の

国内法、 またパリ条約に 基づく国際法の 長い伝統があ り、 法的整備は最も 進んで

いる。

⑤著作物については、 従来は音楽・ 絵画・文学作品・

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作品等のいわば 芸術

作品を対象として 考えられてきたが、 近年ではコンビュータ・プロバラム、 チ一 タ ・べ ー スなど新しい 新技術の成果物が 著作権 の対象に加えられてきていること が問題となっている。

⑥平群体回路配置を 知的財産として 認めるという 動きも、 近年の新技術に

よ る 新しい知的財産の 1 っ であ る。 日本では 1986 年に、 米国では 1984 年にこの知的財 産を法的に保護する 法律が施行された。

⑦トレード・シークレットとは、 「競争者に対して、 優位性を確保できる

内容

を持っ秘匿された 情報」のことであ り、 従業員名簿・ 顧客名簿・仕入れ

価格・ 研 究

開発計画・年間生産計画等、 その企業の持っじつに 多くの情報がその 中に含ま

れる。 米国では 1968 年から 1979 年にかけて、 統一企業機密保護法を 検討する作業 か 行われ、 これをもとに 1987 年 迄に 19 州で州法が制定されているが、 日本ではこ れを対象として 定められた法律はまだない。 あ

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3 . 企業の対応 このように知的所有権 問題は、 人類の知的生産物に 対する考え方という 本質的 な 問題と、 現在の経済・ 政治情勢を含んだ 国際的な問題の 2 つの大きな問題を 抱 えている。 企業という立場からみた 場合、 この 2 つの問題ともに 今後の企業戦略 に 多大な影 雙を 及ぼすことは 間違いない。 このような問題の 具体何として、 大きな問題となっているのがコンビュータ・ プロバラム ( ソフトウエア ) の取り扱いであ る。 周知のようにソフトウエアの 権 利 保証については、 ①プロバラム 構法という新しい 法的枠組みで 権 利保証を図る 、 ②著作権 法という既存の 法律の改訂により 権 利保証を図る、 という 2 つの方法を 巡って激しい 議論が行われたが、 結果的にその 是非は別として 著作権 法の改訂に よって権 利保護を行うことになり、 1986 年 1 月より改正著作権 法が施行された。 この問題には、 ソフトウエアの 著作物性、 すなわち文学作品や 絵画等の従来か らの著作物で 考えられた場合の 著作物性と、 果して同様の 性格をもつ創作物であ るのかという 議論があ る。 この問題については、 日本に先立って 著作権 法による 保護を施行した 米国でも同様の 詳論が再び提起されており、 今後の議論の 推移に よっては米国自身が 制度の変更を 行う可能性をもっている

描 し か し な が 企業における 現在の対応は、 当面著作権 法の枠組み・ 考え方に 従った対応を 行っていかなければならない。 企業においては、 1986 年 1 月の著作権 法改正以前から、 ハードウエアと 密接に関連したソフトウエアについては、 極力 特許法での権 利保護を図ってきた。 このため、 現在の自社ソフトウエアの 権 利 保 護の考え方は 、 ①特許化できるか、 ②著作権 で保証するための 要件 ( 独自の創作 性を備えているか ) 、 ③ソース,コード 等の一切を秘匿しトレード・シークレッ ト ( ノウハウ ) として権 利保証を図るか、 という 3 段構えの対応策を 実施してい る Ⅰ さらにその基礎として、 ラ イ センシング・ 開発委託・開発受託などを 実施する 際には民法 ( 契約法 ) 、 不法な権 利侵害が行われた 場合には刑法・ 不正競争防止 法などの法律にのとった 対応が行われる。

(5)

しかし、 最も大きな問題は、 ソフトウエアが 著作権 法の保護対象となり、 著作 物として考えられることになったための 対応であ る。 このため企業では、 つぎの ような問題に 直面している。 ①ソフトウエアという 工業生産物は、 既存ソフトウエアの 資産の上に新たな 開 発が進められる。 この場合、 既存著作物とそれに 基づく著作物の 著作権 上の 関係はどのようになるのか 明確ではない。 ②他社のソフトウエアが 開発者自身も 気づかないうちに、 自社で開発した ソフ トウエアに潜り 込むという、 いわぬ る コンタミネーションをいかにチェック し 、 排除するか。 ③自社ソフトウエアの 開発のために、 他社のソフトウエアにどの 程度アクセス してよいのか。 ハードウエアでは、 一般的に実施されているリバース・エン ジニアリンバがソフトウエアでは 許されるのか。 ④受託開発企業 (A 社 ) では、 受託ソフトウエアの 開発完了とともに、 著作人 格権 の不行便と著作財産権 の委託 元 ( B 社 ) への移転が行われることが 一般 的であ るが、 さらに他社 ( C 社 ) から類似のソフトウエアの 開発を委託され た 場合、 著作権 上その C 社からの開発依頼には 応じられないことになるのか。

⑤開発者の退社・ 移籍に伴う問題。 著作権 は第一義的にはまず 開発者個人に

帰 属する。 このため開発者の 属する企業に 著作財産権 を委譲する形をとるが、 著作人格権 は委譲できないため、 その開発者が 退職・移籍した 場合に著作権 上問題を生じることとなる。 これ以外にも 様々な問題があ るし、 とくに開発体制・ 開発管理体制にも 多大な 変動を生じている。 とくに社内体制の 整備のためには、 ソフトウエアの 著作権 法 上の取り扱いについて、 様々な実例 ( 判例 ) を基準として 体制整備を図る 必要が あ るが、 現状では判例がほとんどなく、 体制整備も手探りの 状況にあ る。 さらには、 ソフトウエア 開発と著作権 の問題について、 真剣な取り組みと 試行 錯誤を行っているのはごく 少数の企業であ り、 多くの企業では 対応が後手にまわ っていることは 否めない実状となっている。 著作権 は、 日本では何等の 手続きも必要なく、 著作物 ( ソフトウエア ) の公表 とともに権 利が生じるという 特許権 との大きな差異に 皿 頓着であ ると、 思わぬ 大 きな リスクを背負い 込むことになるのであ る。

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