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英国のコンサベーション-何を学び、どう取り入れるか-: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

英国のコンサベーション−何を学び、どう取り入れるか

Author(s)

大湾, ゆかり

Citation

沖縄県公文書館研究紀要 = OKINAWA PREFECTURAL

ARCHIVES BULLETIN OF STUDY(4): 85-104

Issue Date

2002-03-30

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/8136

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英国のコンサベ-ション

ー何を学び、 どう取 り入れるか一

大湾 ゆか り † はじめに 1 研修地の概略 1-1 英国国立公文書館 1-2 州立公文書館 1-3 キャンベル ウェル美術大学 2 資料保存の基本概念 3 コンサベ- ションの業務 3-1 予防的保存 3-2 処置的保存 4 保存方針 4-1 英国国立公文書館 4-2 ランカシャー州立公文書館

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何を学び、 どう取 り入れるか 一沖縄県公文書館 と対比 して -5-1 保存修復技術 5-2 保存方針 おわ りに は じめに 今 日の資料保存の基本的考え方は、酸性紙 問題 と1966年 に発生 したイタ リア、 フロー レンスの水 害事故を契機に築かれた といわれ る。その柱 となる新 しい考え方 には、予防的保存の重視、オ リジナ リテ ィー (原資料性)の尊重 と維持、大量保存への系統的 ・段階的アプ ローチがある 】。 これ らの考え 方は、今 日ではIFLA (国際図書館連盟)の 「資料保存の原則」 をは じめ、欧米 を中心 とした国々で マニュアル化 され、世界中に広 まっている。そ して、欧米の公文書館や図書館では、すでに政策的に も資料保存の体制を一新 させ、それ まで修復や製本 といった技術色の強かった保存活動か ら、所蔵資 料を維持管理するためのあ らゆる政策や計画 を包含 した活動へ と変化 している。 さて、筆者はそのような国々の一つである英国で、平成 11年 7月か ら 9月にかけて洋紙資料 の保 存修復 に関する研究のためのコンサベ-シ ョン研修 を受けた。その 目的は、沖縄県公文書館の所蔵資 料の大半を占める近現代文書について、洋紙素材特有 の保存上の問題 に対応するための技術 を取得す ることと、大量にある資料 を計画的に処置す るための方針や基準等 を作成す るノウハウを学ぶ ことに あった。 この研修は、沖縄県人材育成財団の国内国外派遣研究員 として助成 を得て実現 した もので、3カ月 間の派遣期間中には3つの公文書館 (英国国立公文書館publicRecordOffice、エセ ックス州立公文

†財 団法 人沖縄県文化振興会公文書管理部修復士

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書館EssexRecordOffice、ランカシャー州立公文書館LancashireRecordOffice)と1大学 (キャ ンベルウェル美術大学CamberwellcollegeofArts)で実務研修 を受け、さらに数カ所の類縁機関を 訪問 して、洋紙資料の技術取得 と資料保存の方針や政策、及び業務体系等 を調査す ることができた。 そ こで、本稿では、同研修 を通 じて筆者が学んだ英国のコンサベ- シ ョンについて事例 を交えて紹 介 し、そ こか ら何 を学び、 どう取 り入れ られ るか、その可能性 を考察 してみたい。なお、本稿は、平 成 11年 12月に沖縄県 人材育成財団へ提出 した 「洋紙 の保存 ・修復技術 に関す る研究」 (平成14年 3月に刊行予定) よ り必要部分 を抽出 し加筆 した ものである。 1 研修地の概略 ト1 英国国立公文書館 英国国立公文書館 は、1800年 に設置 された公記録委員会RecordCommissionを前身 として発足 した。1838年に最初の公文書館法が制定 され、その後の改訂 を経て1958年の公文書館法に基づき今 日の公文書館が運営 されている1'.1977年、 ロン ドン市内チャンス リー ・レー ンChanceryLaneに あった旧建物が手狭 になったため ロン ドン郊外のキュウKewに新館 を建設 し、1850年以降の文書を 移動。1996年 にはキュウに延長 ビル を建設 し、全ての文書 を移転 してチ ャンス リー ・レー ンを閉鎖 し た。現在、 同館では総延長 150km以上にのぼ る量の資料 を保存 している:う。 同館 のコンサベ- シ ョン部門 もまた、19世紀 の製本技術者達の功績のもとで始 まった という。 当 時のコンサベータ-はattendantrepairerといい、資料の製本、修復、写真、 レファレンス、クロー クルーム等、 いろいろな仕事 を受 け持 っていた。1951年、組織再編 に伴 い職種が分別 され、コンサ ベ- シ ョンは特殊な職種 となってmuseum technichanと呼ばれる人の トレーニ ングが開始 された。

コンサベ-シ ョン課は、1987年 に設立 し、この時か らmuseum technichanとは別 に学位 を持ったコ ンサベーターの養成が始め られた というO現在 のコンサべ- シ ョン課は、プ リザベー ション部門下 に あ り、常勤職員33名 (平成 11年現在)が6つのセ クシ ョン4に分かれて配置 されている. 1-2 州立公文書館 英国では、州countyが 日本の都道府県 とほぼ 同様な行政単位で、各州 には公文書館が設置され、 そ こで最終的に州庁 の作成 した公文書は もちろん、州内の市町村が作成 した公文書 も全て管理す るシ ステムになっている。 また、民間の記録資料収集や保存活動 も活発である。英国では公文書館の知名 度は高 く、近年 とくに個人の出 自探 し等で利用する人が急増 しているそ うである。そのため、書庫の 増設や新館建設、施設拡充等が各地で図 られ、サー ビス向上にも力が入れ られているO (1) エセ ックス州立公文書館 エセ ックス州は英国南東部に位置 し、 ロン ドン、ケ ンブ リッジ州,サ フォツク州、ケ ン ト州等 と境 をなす比較的広 い州である。 この州 の公文書館はチ ェルムス フォー ドChelmsfordの市街地 に2000 2 公文書館問題専門家研究全編 『行政上センターの実現と歴史資料の保存のために-大阪府公文書館の基本構想につ いての提言-』1983,P14 :' 英国国立公文書館の研修中にコンサベ-ション課長のマリオ ・アレッポ氏からいただいた資料、AngelaCraft, THENEWPUBLICRECORDOFFICEよ りQ

I 6つのセクションとは、Manusclipt(古文書)・PhotogrElph(写真)・MaporPlan(地図 ・図面)・Seelsand

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年 3月、新たにオープンした本館 とコルチェスター及びサ ウスエ ン ドに 2カ所の分館がある。 同館には2人のコンサベータ- (K.Dean氏 とR.Marsha11氏)がお り、両者 とも紙 の修復や製本技 能を兼ね備え、20- 30年 の経験 を有 している。通常は書庫等の保存環境管理、紙及びパーチメン ト (羊皮紙)の修復、各種製本、展示物の作成 ・管理、職員の指導等 を行 っているそ うだが、筆者が滞 在 した

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月は新館移転準備の真っ直中で、 コンサベー タ-はアーキ ビス ト (資料専門職)数 名 と一緒 に資料の防護処置や新館の配架計画 にあたっていた。 同館の新館建設計画は、収蔵資料の増加や施設の老朽化 によ り数年前に持ちあが り、以後設計段階 か ら職員との調整を幾多 とな く図って実現 したそ うである。その際、 コンサベ- シ ョン部門の作業場 や材料倉庫等 については、 コンサベータ- との細かい協議で彼 らの要望がほぼ取 り入れた設計 となっ ている。 (2) ランカシャー州立公文書館 ランカシャー州は英国中西部 に位置す る綿工業や鉄工業で栄 えた州である。北は湖水地方、南はマ ンチ ェスターや リバプール、東 は ヨー ク シャー州 と隣接 して いる。 同州 の公文書館 はプ レス トン Prestonの州庁舎の隣にある. ここには、州内の公文書のほかにマ ンチ ェスターが ランカシャー州 に 含 まれていた頃の古い記録 も保管 している。 また、同館 には レコー ドマネー ジメン ト機能 もあ り、本 庁の非現用文書 を公文書館 に引き継 ぐ前に近隣にある レコー ドセ ンター (中間書庫) に保管 して庁 内 の文書管理サー ビスを行 っている。 同館 には、現在2人のコンサベータ- (S.Tobutt氏 とM.Welmsley氏) と 1人の書庫管理担 当者 (S.Whelan氏)がいるo コンサ ベータ-の主な業務 は、保存環境 の管理、修復 ・製本、職員の指導 等で、また定期的に講習会 を開いた り、イベン トの展示や保存用品の販売企画 も行 っている。 さらに、 コンサベーターは資料保存 に関する館内の方針や基準の策定 にも深 く関わ っているO コンサベータ-の指導下 にある書庫管理担 当者は、運び込 まれた資料のク リーニ ングや保存容器へ の封入、書庫 に収める作業 を主に担 当している。 また、資料の状態記録や保存箱、包み紙への表示、 革装本の劣化止め処置を施す作業 も行 っている。 1-3 キャンベルウェル美術大学 ロン ドン南部にある美術大学で

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年 にブ ック ・コンサベ- シ ョンコースを開設

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年 に大学 として認可され 80年よ り修士及び博士課程でペーパー ・コンサベ-シ ョンコースを開いて いる。元々 は製本 コース を母体 とし、 コンサベー タ- のニーズが高 まった 60年代後 半 に国内で初めて コンサ ベ-シ ョンの専門コースを設置 した.現在、英国で活躍 しているコンサベータ-の多 くが同校の修 了 生である。 同校には上記の専門コース以外 にすでにコンサベータ-の在職者や将来 コンサベータ-を目指す人 のために短期コースを開設 している。筆者は今回 このコースに入校 し全部で5つの講義 をとった。そ の内容は、資料保存の基本概念 を学べる講義か ら、修復、保存容器の作成、マウン ト、化学薬品を使 っ た材質検査や シミ、接着剤の除去な ど多岐にわたっている。 2 英国における資料保存の基本概念

資料保存の基本 となる概念は、英語ではpreservation、conservation、restoration等の言葉で表 される。 これ らの用語の意味を理解す ることは本論 を進める上で不可欠なので、 まず初めに簡単 に整

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理 し、それ にともなって配置 されているコンサベータ-の位置づけについて若干触れてお くことにす る。なお、 ここでは、各用語の 日本 における定義 を便宜上 『文書館用語集』 5よ り引用 し、英国におけ るコンサベ- シ ョンの捉え方 と比較 しなが ら述べてみたい。 資料保存の最 も大きな概念は、プ リザベー シ ョン

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(保存)である。 「資料の損傷や劣 化 を防 ぐために、維持 し保護 して いく全行程 とその作業の こと6」と定義づけ られ、保存にかかる計画、 財政、組織改善か ら環境整備、保存修復処置、メデ ィア変換、職員研修、利用者への指導、防災対策、 書庫管理等のあ らゆる活動が含まれ ると解釈 されている。 プ リザベー シ ョンのもと、コンサべ-シ ョン

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(保存修復又は保護)というよ り具体化 した保存修復処置、あるいは技術 を意味す る概念が使われる。その定義は 「資料 を物理的あるいは科 学的に手当し、保存す るために行 うそれぞれの手段 の こと7」である。 コ ン サ ベ - シ ョ ン は、予 防 的 保 存

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と 処 置 的 保 存

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とに分け られ る。前者は、直接資料 に手を加えず、資料 を取 り巻 く劣化要因を排除する ことで劣化の進行 を抑制 しよ うとす る考 え方である。 これに対 して後者は、傷んだ資料 を修理 して保 存す る考え方である。 この2つの概念は1990年代 に入って とくに区別 され、それ まで主流であった 処置的保存 を見直 し、む しろ予防的保存の実施へ方向転換が図 られている。その根底 には、予防的保 存 を徹底す ることによって、大量で しか も年々増え続 ける資料 に対 し、できる限 り手を加えず に原形 を維持 し、従来最 も時間をかけた修復作業 を最少限に留めて多 くの資料 を公平に保存 しようという考 え方がある。 しか しなが ら、所蔵資料の中には依然 として劣化 して利用できないものもある。そ こで、そのよう な場合 に限って修復処置が施 される。 さて、修復 という用語は、 日本では通常 レス トレー シ ョン

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という英語 に訳 し、 「史料の 傷みを補修する こと8」と定義づけているOそ して、補修 とは可能な限 り資料の原形を崩 さず に直す意 味を含んでいる。 しか し、英国ではそのような修復は レス トレー シ ョンではな く、む しろコンサベ-シ ョンとみな し、レス トレー しろコンサベ-シ ョンは 「資料が元通 りの状態 になるまで直す こと9」を指す。つま り、コ ンサベ- シ ョンが資料 を利用できるよ う欠損部分等 を補填、補強する程度の処置で留めるのに対 し、 レス トレーシ ョンは資料の汚損の完全除去や欠損部分へのテキス ト ・色の挿入等、修復 した痕跡が残 らないほどに手を加える処置 を意味 しているのである。英国では同 じ修復現場でも両者の違 いを明確 に区別す るO普通、公文書館や図書館での修復はコンサベ- ションの範囲内で行われる0-万、絵画 等美術品を扱 う機関では レス トレー シ ョンを選択す る所 もあるOちなみに米国では レス トレーション に英国のコンサベ- シ ョンにあたる修復の意味を含むので、 日本ではそれ を採用 して解釈 されている と思われる。 最後 に、実際に修復処置 を講ず る際だが、そ こでは 「保存 ・修復の四原則」 という日本でも定説化 している基本原則が英国で も同 じように守 られている。その原則 とは、原形保存 ・可逆性 ・安全性 ・ 文書館用語集研究会編 『文書館用語集』 1997,大阪大学出版会 同上 P122引用 同上 P123引用 同上 P57引用 英国のコンサ ベー タ-か らの聞き取 りによる。

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記録化 というもので、資料 を処置する際にはできる限 り原形 を保存 し、元の状態 に戻せてかつ資料 に 影響のない方法や材料 を選択 し、必ず記録 を取 るということである。 これ らの原則 に従 って初めて資 料に手を加えることができるわけである。 以上述べた基本概念は、資料保存の根幹 を成す ことである。英国では これ に基づきコンサべ-シ ョ ン、すなわち全ての保存処置 において、判断や実作業はコンサベータ-が中心 となって行 っている。 そのような権限をもつコンサベータ- とは、保存修復の理念 を逸脱す ることな く科学的、経験的知識 を持って判断 し、適切 に手 を加えるだけの技術 を有す る者 との位置づけがある。 コンサベータ-は、 資料保存 に対 し絶大な権限をもつ とともに、資料 に適用す る修復技術や方法の選択 には重大な責任を 負っている。 したがって、原資料 に直接手を加えなければな らない時 には、前 もって十分資料 を観察 し、検査 し、適用す る方法や材料 を慎重 に選択す る。時には手 を下す前に原資料のコピーを作成 して 試験することさえある。そのような重責を担 うコンサベータ- との交流 を通 じて、個 々人の常 日頃か らの努力や確固たる信念 に敬服する思 いが した。 3 コンサベーシ ョンの業務 本章では、各館で実際に行われている作業 を事例 として、 コンサベ-シ ョンの業務内容 について説 明 したい. コンサベ- シ ョンには予防的保存 と処置的保存 にかかわ るそれぞれの作業があるOそれ ら は、国立の公文書館では組織 も大き く職員 も多いので作業分担 されているが、州立の公文書館では、 コンサベータ-が どち らも担 っている作業であるOちなみ に作業量の比は、近年では 7:3の割 合で 予防的保存 を行 っているそ うである。 3-1 予防的保存

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初めに、予防的保存の観点で行われる具体的作業 について説明 しよう. ここでは筆者が整理 した環 境管理、防災対策、保存容器の使用、代替資料の作成、 ク リーニ ング、脱酸処理、取扱 いの教育 ・指 導の7項 目について記述す る。 これ らの項 目は、資料の性質 に関わ らず全てを安全 に保存す るための 第一段階の手段であると考えてよい。 ①環境管理 書庫内の温湿度管理や照明、衛生面の管理を徹底 し、虫菌類 による被害を未然 に防 ぐためのモニタ リングを実施する。 英国のコンサベ-シ ョンでは、書庫の環境管理 を非常 に重視 している。現在、 ほとん どの施設で空 調設備が整っている書庫 を有 しなが らも、なお温湿度や虫菌類のモニタ リング、あるいは清掃等 に力 を注いでいる。では、筆者が研修 した 3つの公文書館の例 をあげてみよう。 まず、英国国立公文書館は、5階建ての新 旧 2つの建物各階に驚 くほど広 い書庫 を有 している。各 階にはそれぞれ10数名の出納員が常駐 し、資料 の出納や運搬のためのワゴ ン式電気 自動車が往来 し ている。同館 の書庫環境は、施設管理部 の管轄の もとで室内の温湿度 をコンピューターで年 中18℃ 55%に制御 しているが、コンサベ-シ ョン部門では独 自に各庫 に記録式温湿度計を設置 して定期点検 し、変動が生 じた ら即座に施設管理部 に改善 を求めるそ うである。 また、虫歯害対策 としては、各書 庫 に害虫用 トラップを仕掛けて監視 し続 けている。そ して、 もし虫やカビを発見 した場合 には、通常 その付近の資料 を戸外 に出 してブラシでク リーニ ング し、その後 1カ月間資料 を隔離 してモニタ リン

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グを続 け、再発生 しなければ書庫 に戻 しているそ うで、万が一被害が大 きければ業者 に委託 して冷凍 式殺虫を行 うとの ことだが、 これ までにそのような被害は報告 されていないという。 次 に、エセ ックス州立公文書館 の場合 には、移転前の同館 の書庫 も24時間空調ではあったが、機 械的故障によ り通常温湿度 を

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8℃ 55

%に設定 して も外気 に左右 されて湿度変化が著 しいばか りか、 冷水管か ら水が漏れ ることもあった。そ こで、 コンサベータ-は毎 日温湿度や水漏れ点検 にまわ り、 異常 を発見す るとその都度業者 を呼んで調整 したが、それでも噂があかず、ついにこれがきっかけと なって新館建設を要望す るにいたった という。新 しい館では、 コンサベータ- と業者 とが入念 に打ち 合わせた空調 システムが導入 され るそ うである。 ランカシャー州立公文書館は、所蔵資料の増加 によ り7年前に地上

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階建ての書庫 を増設 し、全部 で

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の書庫 を有 している。庫内の温湿度は

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℃55%

に自動制御 されほぼ安定 した状態だが、同館で もコンサベータ-が1週間に 1回手分け して書庫内の温湿度記録計のデータを記録 し、変動が生 じた ら即、施設管理部の技術者 に連絡 して調整 しているそ うである。 また、 ランカシャー州は英国の中で もとくに湿度が高い地域なので虫菌類の発生 にも注意が払われ て いた。 モニタ リングはコンサベータ-だけでな く普段の出納時等 に職員全員が行 って いる。そ し て、 もし不審な痕跡 を発見 した らす ぐにコンサベータ-が調べてク リーニ ング等で除去する。同館で は数年前まで薬剤煙蒸 していたが,環境保護 のため現在は これを止めている。その代わ り、虫やカビ の侵入 を防 ぐために書庫専任の清掃職員を雇用 し、庫 内の掃除を毎 日行 う方針 に切 り替えたそ うであ る。 このよ うに、英国ではモニタ リングや清掃作業 を重視 した環境管理が行われて いる。 これ らは、温 湿度管理や衛生的な環境づ くりが果たす効用、すなわち、資料 を虫菌害等か ら守 り、劣化 を防 ぐ最大 の方策であるとの認識が反映 した作業だ といえよう。 ②防災対策 火災、震災、水害等突発的な災害 に対応できうる防災管理 システムを構築 し、防災計画や被災資料 を救済する用具等の整備を行 う。定期的な防災訓練を実施 し、災害時の利用者の誘導や適切な判断を 職員全員が身につける。 英国は地震や台風があま りないにもかかわ らず、防災対策が しっか りしている。それは、1966年に 起 こったイタ リア ・フロー レンスの大洪水以来、 ヨー ロッパで災害意識が広 く根づいた ことも一因だ が、英国では7年程前にノー フォーク州の図書館が全焼するという事故が起 こり、その時の教訓か ら 防災計画が重視 され、各館で防災管理マニ ュアルが作成 されるよ うになった という。 防災管理マニ ュアル とは、緊急時の職員の対処方法や連絡網、被災後 の資料の救済方法や役割分担 まであ らゆる情報が詳細 に記 された もので、 どの公文書館で も独 自のマニ ュアル を作成 している。 例 えば、エセ ックス州立公文書館のマニ ュアル には、初めに緊急時の連絡網が記され、次に災害の 種類別 に具体的な対処法が、 さらに復 旧活動の内容、被災資料の救済方法等が載っている。マニ ュア ルは職員全員に配布 され、それ に沿 って防災訓練が実施 され るそ うであるo ランカシャー州立公文書 館の防災マニ ュアル も、 同様 に詳細な対処法等があ り、復 旧時に連絡 を要する関係機関の リス トや業 者の連絡先等 も記 されている。 次 に、 目を引いたのが防災用具や救援用備品 ・消耗品等である.防災用品等 を詰め込んだカー ト等 が各部署 に設置 され、 また壁面 には使用できる消火薬品が表示 されていた りす る。 このほか、 コンサ

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ベーターは、他の職員向けに被災資料の救済方法等の講習会 を開いている。 これ らの館では 日常の防災意識 もしっか りしている。例 えば、エセ ックス州立公文書館では、研修 生等の長期滞在者に対 して研修初 日に何よ りも先 に災害時の避難経路 と集合場所 を教えた り、1週間 に1回決 まった時間に防災マイクの点検等 をしている。 ランカシャー州立公文書館では、筆者は同館の職員 と一緒 に障害者用 リフ トを使 って階段か ら利用 者を避難 させるデモを見学 した。 この時は リフ トの導入 を検討す るためのデモであったが、 このよ う な実習は月に1度の全体 ミーテ ィングでたまに行 うそ うで、実際に体験 を通 して職員同士が互 いに感 想や意見述べ合 う場になっていた。 このように、英国では 日常業務の中で防災意識が非常 に根づいているし、意識の啓発 にも積極的で ある。 日本ではよ く危機管理の甘 さが指摘 され るが、今回改めてその意味を理解 した とともに、防災 対策の必要性 を痛切 に感 じた。 ③保存容器の使用 資料を外気や填、虫や微生物か ら保護するため、大きさや重 さに応 じて個別 に容器へ収納する。 英国では、資料 を保存箱等の容器 に入れて保管す る方法が広 く普及 している。保存容器は、空気中 の汚染物質や光、填、虫、カビ、出納、運搬、閲覧等 によるダメー ジか ら資料 を守 る効果がある。容 器には箱や ファイル、エ ンキャブス レー シ ョン、マウン ト、包み紙等様々な形態があ り、資料のサイ ズや性質に応 じて使い分けることができる。 また、エ ンキ ャブス レー シ ョンやマウン ト等 を組み合わ せた り、 さらに利用 しやすいように製本す る等の応用 も自在である。 このように容器 を幅広 く使 った 保存技術は、環境管理か ら一歩進んだ技術 として英国では非常 に発展 していた。 エセ ックス州立公文書館では、新館への移転 を目指 して約 1年前か ら準備 を開始。その中心的作業 が保存容器への収納であった。 同館では公文書の多 くは既製の保存箱 (中性ボー ド製) に箱詰め して いたが、規格外資料や革装の製本資料、地図 ・図面の大型資料は依然裸 のままであった。そ こで、移 転にあたって全ての資料 を容器 に収納 し、運搬の衝撃等か ら保護する ことが決め られた。 まず、市販の保存箱や地図用の筒 を大量 に注文 した。次 に、大きい資料や重 いものにはコンサベー タ- 自ら資料の大きさに合わせて頑丈な保存箱 を作成 した。箱の作成は、資料のサイズを測 って適 当 な厚みのボー ド (マニ ラ麻製、弱アルカ リ性) を選び、裁断、筋入れ、接着工程 を経て完成す る.で きあがった箱は、資料がぴった り収 まる大 きさで、多少の衝撃では ビクともせず資料 をしっか り保護 できるものであった。 さて、本来な らこの種の箱を作成 して資料 を収めるのが最善であるが、限 られた時間の中では全て の資料 を短期間で収納す ることは難 しい。だか ら、 コンサベータ一連は もっと能率的かつ経済的に容 器 を作成できる方法はないか と常々思案 している。

そ こで、近年開発 されたのが箱製造装置box-makingmachineである。 この機械 は資料保存機関 向けに開発されたもので、 コンピューター とつないで 自動的に様々なデザイ ンの容器 を作成す るもの である。

筆者は この機械 を初めて導入 したス コ ッ トラン ド国立図書館NationalLibraryofScotlandを訪 ね、機械導入による効果 を調査 した。機械操作はいたって簡単で、 まず資料サイズを入力 してデータ ベースを作成 し、 コンピューター上で希望するデザイ ンを選んで設計図に移す。そ して、機械 にボー ド紙 をのせスイ ッチを押す と、ボー ド紙 1枚 当た り箱4、5個がわずか4、5分のうちに筋付け、裁断

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写真-1ス コ ッ トラ ン ド国立 図書 館 のBox一makingmachine (箱 製造 装 置) 館内データベース とつながっているコンヒュ一夕-か ら資料の 情報を引き出 し、各々に適 したデザイ ンを選択 して画面上に映 し 出 し,確定ボタンを押す と自動的にボー ド紙の折 り目付けと裁断 を行 うことができる。 され るのである。後は箱 を折って完成するだ けという優れ物で、スコッ トラン ド国立図書 館では この機械で年間約

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個の箱やフォ ル ダ- を製造 して いるそ うで あ る。 これ に よって、個 々のサイズに応 じて糊 も使わない 丈夫な箱が作れ るし、資料のデータ管理や整 理 ・閲覧 とリンクした作業が図れていた。 ま た、箱が壊れ る等 して再度作 る時 もデ ー タ ベースか ら資料番号を読み込むだけで済む こ と、結果 として短期間で大量な資料 を容器に 収納できること等々、大変効果が大きいそ う である。 このように、保存容器 を使 った技術は 日々 進歩 してきている。そ うした最新技術が生ま れ る背景 には、予 防的保存 の考 え方が浸透 し、保存容器の効用が高 く評価 されていることがみえる。今回、実際に保存箱の作成作業 に加わ り、 容器 を使用す る意義がはっき りした。 ④代替資料の作成 利用を極力控えて原資料を保護するため、マイクロ、写真撮影、デ ジタル媒体への変換等を行い、 代替物を作成する。 公文書館等の機関では利用頻度 の高い資料 をマイクロフィルム等 に掘 し替え、原資料 を保護する方 法が一般化 して いる。マイ クロフィルムは紙以外では長期保存が可能な媒体 として信頼性があ り、ま たコピーサー ビス も容易に行 うことができる。一方、最近ではデ ジタル媒体 の普及 に伴い、CDやM 写真-2 ラ ンカ シ ャー州 立 公文 書館 にお け るボ ラ ンテ ィア に よ る資料 の整理 作業 l朋 官では、10年程前か ら歴史に興味をもつ一般の方に、マイク ロ般影等の前咋備のため、毎週2回 (月 ・水)紙 の伸展 とタイ ト ル取 り等の作業を補助 して もらっている。 Dに情報 を取 り込む方法が徐 々に広が りつつ ある。 これ らの保存性は全 くの未知数だが利 用の可能性が広がるので、将来 さらなる発展 が期待 されて いる。 さて、今回筆者が滞在 した公文書館では、 代替物はマイクロとゼ ロックスコピーによ り 作 成 され て いた。マイ ク ロ化 はプ リザ ベー シ ョンの範暗 に入 り、 コンサベ- ションとは 独立 した部門で実施 されている所が多い。 し か し、大方の場合、撮影前には綴 りを外 した り紙 を伸ばす必要があるので、実作業ではマ イ クロ化 とコンサベ- シ ョン部門は二人三脚 で作業 している。 ここではランカシャー州立 公文書館の例か らその内容 を説明 しよう。 同館では、利用度の高い資料群 に対 し必要

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に応 じてマイ ク ロ化事 業 を展 開 して いる。撮影 す る過程 で、事 前 にコンサ ベー タ-が保存状態 を観察 し、伸展や補修 を必要な範 囲で行 う。そ の際、 同館で はマイ クロ撮影 のスピー ドに合わせ るため、10 年 ほ ど前か らボ ランテ ィアを募 って一般市民 に 目録取 りや紙 の伸展 な ど一部 の作業 を補助 して も らっ て いる。参加者 は主 に公文書館 の利用者で、彼 らに資料 を1箱ず つ渡 し、文書 の表題 と作成年 を別 の 中性紙 に書 き込 んで も らう。そ して、畳 まれ た状態 にある紙 素材 の文書だ けを手で折 り目を正 して平 坦 に伸ば し、表題 を書 いた紙 を挟 んで麻 のテー プで結 ぶ.箱 の 中 にパ ー チ メ ン ト素材 が混 在 す る場 合、パーチ メン トだ けは コンサベー タ-が取 りま とめて別 の手法 で伸展す る. こう した事 業 を始 めて か らマイ クロ化 の速度が あが り、 またボ ランテ ィアの参加者へ の資料保存 の啓蒙 につなが って いる。 同館では、閲覧用 のマイ ク ロ リーダー機 が約30台 ほ どあ り、マイ ク ロ資料 は利用者 が 自由に とって 見 る ことがで きる。原資料 を閲覧す るよ り簡単 な手続 きで済 むので利用者 も非常 に多 いそ うである。 ⑤ ク リーニ ング 資料 に付着 した汚れ を落 と して清潔な状態 に保 ち、再び虫やカ ビが付 かな いよ う保護す る。 資料 を清潔 に保 つた め、紙 に付着 した境等 の汚 れや シ ミを取 り除 くのが ク リー ニ ングで あ る。 ク リーニ ングの方法 には ドライ とウェ ッ トの2通 り方法が ある。 ドライ ・ク リーニ ング とは表面 につ い た蝶 をブ ラシで穿 き取 った り、消 しゴム (削 って使 う場合 あ り)や脱脂綿で こす って除去す る方法で ある。 この作業 は紙 の大 きさや汚れ の度合 いによっては1枚 1時 間以 上か ける場合 もある。 ドライ法 はあ くまで も表面 のみの ク リーニ ングな ので、紙 の内部 に しみ こんだ汚れ まで は取 り除 け な い。そ こで、汚れ のひ どい資料 には ドライ法 の後 にウ ェ ッ ト ・ク リーニ ング を行 う。 ウェ ッ ト法 と は文字通 り紙 をぬ らして洗浄す る方法で ある。初 め に紙 に湿気 を与 えて湿 られ、繊維 が膨潤 した とこ ろで水 (ぬ るま湯) の中 に浸す。約20分 間放置 し、汚れ が水 に しみ 出す の を待 つ。 しみ 出 した頃 を 見計 らって水 を こぼ し、水が汚れて いた ら再 び新 しい水 に と り替 える。 これ を繰 り返 して汚れ が十分 落ちた ら必要 に応 じて脱酸処理 を行 い

涯紙 に挟 んで乾 かす。 資料 に嬢や汚れが溜 まって いる と、 虫や微 生物 の温床 とな りやす い。 ク リーニ ング には、 そ うした 環境 を排除 して虫や微 生物 を寄せつ けな い効果 が ある とい うので、英 国では大変重視 され て いる。 と くに、 pH検査、脱酸処理、 さ らに修復 の前処理 として必ず実施 されて いる。 ク リーニ ング した資料 は、再び蝶が付かな いよ うに保存容器 に収納 して保管す る。後 は適切 な環境 さえ保 てば十分資料 を防 護で きる。 この他、 まれ に資料 に しみ こんだ頑 固な シミ (水では取れな い油染み等) を落 とす ため に化学薬 品 を使用す る ことがある。そ の場合 には、で きる限 り薬 品の影響がな いよ うにサ クシ ョンテーブル とい う吸引装置 を使 った り、薬品が紙 に残留 しな いよ う洗浄す る等 の注意 が払われ て いる。 ⑥脱酸処理 酸性紙等の紙 中の酸 をアルカ リ剤 を使 って 中和 し、紙 の化学的劣化速度 を緩和 させ る。 洋紙 とは、 日本 にお ける椿、雁皮、三種等 の靭皮繊維か らで きた和紙 に対 して、 西洋 で独 自に開発 された紙 をい う。欧州 では中世 までパーチ メン トやベ ラム とい う羊皮紙 が主 な書写材 で あったが、16 世紀後半頃か ら綿や麻 のポ ロ布 (リンター) を抄紙 した洋紙 が登場 した。 当時 の洋紙 は比較的保存性 が高 く、現在で も状態 の良 い ものが多 い。 ところが、産業革命以後、木材パルプ を用 いた紙 の大量生

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産が始 ま り、その技術があっという間に世界 中に広 まってか らは、劣悪な素材の紙があ らゆる記録に 使われてきた。木材パルプ紙 (とくに枠木パルプ)は綿や麻 に比べ繊維が短 く、 また同時期か らイン クの惨み止め として採用 されたロジンサイズ法が、紙 中に酸性物質 を残 して紙質を低下させる原因を つ くった。 これがいわゆる酸性紙である。他方、紙 も大量生産、大量消費 という時代 に入 り、以後記 録資料の量は一気 に膨れあがったのである。 このよ うに欧州では19世紀前半か ら中半を境 に洋紙 自体 の材質が変わ り、 また資料の量 も飛躍的 に多 くなるので、 この時期 を区切 りにした様 々な保存修復方法が開発 されて いる。翻って沖縄県の公 文書館所蔵資料の素材 を鑑みた場合、そのほとん どが木材パルプ紙だ といって も過言ではない。 した がって、西洋で先駆的に発展 してきた技術 とは何か学ぶ必要があったわけである。 酸性紙 のよ うに紙 中に酸が残 っている紙は、酸 によ り加水分解反応が起 こるな どして繊維結合が崩 れて しまうといわれ る10。脱酸処理 とは酸 による劣化 をくい止めるため、紙 にアルカ リ剤 を添加 して 紙 中の酸 と反応 させ 中和する ことである。脱酸処理 によって紙の寿命が飛躍的に延びることが研究 さ れてお り、近現代文書のように大量の酸性紙か ら成 る資料群 をいかに延命 させるかが課題 となってい る現在では、必要不可欠な方法 となっている。 脱酸処理は、通常 クリーニ ングの最後 に行われ る。処理剤で最 もよ く使用 され るのが水酸化マグネ シウム溶液 と炭酸カル シウム溶液である.方法はウェッ ト・ク リーニ ング と同 じようにバ ッ ドにpH7 - 8に予め調整 した水溶液 をは り、そ こに資料 を20分間程度浸す。処理後 のpHが7(中性)程度 にあれば良 しとしている。 この他、PTDA という市販の脱酸液 を使 ってスプ レー した り、刷毛で塗 る方法 もある。 とくに冊子 体資料 を脱酸す るときは、 ドラフ トチ ャンバー (排煙装置)の中に資料 を立て、1枚ずつペー ジをめ くってスプ レーす る方法が とられているO ⑦取扱いの指導 ・教育 職員及び一般の利用者 に資料の取扱 い方を指導 し、人 による劣化を抑制する。 最後 に取 り上げ る資料の取扱 いに関す る指導 ・教育は、様 々な劣化原因の中で も人間によるダメー ジが ことさ ら大きいことに注 目し、できる限 り人的な被害 を抑えよ うという試みである。各館ではそ のための様 々な取 り組みが始め られている。 資料保存機関の職員であれば まず資料の取扱 いには熟練 しているのが当然だ と思われるが、実際に は案外不慣れな人が多 い。それは多 くの職員が資料の物理的性質や劣化要因等 を十分 に理解 していな いことに原因がある。そ こで、近年英国ではコンサベータ-が中心 となって、職員研修 を定期的に実 施 している館が増えている。 エセ ックス、 ランカシャーの両州立公文書館でも、そ うした 目的か ら職員を対象 とした資料保存研 修会を定期的に開いている。エセ ックス州立公文書館では、コンサベータ-の企画によ り年 に1回職 員を集めて研修会 を実施。`プログ ラムは資料保存の考え方、環境管理の方法、修復処置、 コンサべ-シ ョン部門の業務説明 と、修復作業の実習で構成 されている。 とりわけ、出納、整理、運搬、配架作 業等、直接 アーキ ビス トらが関わ る作業 にお ける資料 の取扱 い方 には詳 しい指導 を行 っている。 ま 川 鈴木英治 「紙の劣化 一酸性紙問題 と保存 -」記録 史料の保存 ・修復 に関す る研究集会実行委員会編 『記録史料の 保存 と修復 -文書 ・書籍 を未来 に遺す 一』 1995,アグネ技術セ ンター

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た、新職員や研修生への教育 として各種啓蒙 ビデオを活用 している。 同様 の研修はランカシャー州立 公文書館で も3カ月に1度の割合で行 っているそ うである。 これ に対 して、英国国立公文書館では一般の来館者 に向けてツアー形式の教育プログラムを組んで 指導 にあたっている。 このツアーは

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年春か ら開始 した もので、毎 日

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回ずつコンサベータ- を 含む職員が交代 して、初めてIDカー ドを申請 した来館者 を集め、閲覧室 に入室する前 に館の概要や資 料の検索方法、閲覧 申請の仕方、そ して資料の取扱い方等 を説明 している。 同館 には毎 日大勢の来館 者が詰めかけ非常 に忙 しい状況の中、あえて こうしたツアー を実施 している ことに筆者は驚 いて し まったが、ツアー を実施 してか ら閲覧による資料へのダメージが減少 し、結果的 に劣化 を未然に防いで 処置する量を軽減できるという話 を聞いて、予防的保存の実践的効果 を改めて理解す ることができた。 以上、予防的保存の具体的な業務内容 を7つの項 目に分けて説明 した。 これ らは資料保存 を実現す るためまず初めに実施することばか りであるが、通常①か ら順 を追 って整備 され、 とくに利用 に支障 のない資料は この範晴で処置 を終えている。

3-

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処置的保存

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これまで述べた予防的保存だけでは利用できないほど劣化 している資料 に対 し、修復 して利用で き る状態にまで回復 させることが本章で述べる処置的保存であるO コンサべ- シ ョンの概念 にある修復 は、すでに述べた とお り 「保存 ・修復の四原則」 を守った上で行われる。英国での修復方法はいろい ろあるが、大凡以下に記す

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つにまとめ られる。 〔英国で行われている主な修復方法〕 ①

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(裏打ち) 本紙の裏に別の紙 を貼 りつけて補強する方法。 日本の裏打ち技術 によ く似た技術で英国では古典的 方法 とされている。 ②

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(ウェッ ト ・リペア) 欠損部分 に補修紙 を埋めて両面か らサポー ト用の薄葉紙 を貼 る方法。資料全体 に水分 を含 ませて伸 ばすのでウェッ ト法 という

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という別称 もあ り、 日本の虫損補修 と原理的には同 じ 方法である 。 ③

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(ローカル ・リペア) ② と同様の方法だが、本紙の一部分だけを補修す る方法。 ④

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(ドライ ・リペア) 欠損部分に補修紙 を埋め、熱可塑性の薄葉紙 を電熱プ レスで圧着 させ る方法。熱 を使 って接着す る ので、 ヒー ト・リペアともいうO ⑤

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(リーフキ ャスティング) リ-フキャステ ィングマシンという修復機械 を使 って欠損部分 に紙 の繊維 を漉 き込む方法。サポー ト用に薄葉紙 を糊で貼って補強する。 これ らのうち、①は本紙の厚みが増えた り、裏面の情報が読めな くなる こと等の理 由か ら現在では あまり行われず、②か ら④ までの方法がよ く採用 されている。⑤の リー フキ ャステ ィング法 について は、英国国立公文書館 とエセ ックス州立公文書館ですでに リー フキ ャステ ィングマシンを導入 してい

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る。 とくに、英国国立公文書館では16世紀前後 の公文書修復 によ く活用 されていて、効率的な方法 と の高い評価 を得ていたが、他の機関ではあま り使用 されていなかった0 今回の研修では、 これ らの技術 を一通 り体験 し、 中で もウェッ ト ・リペアと ドライ ・リペアの技術 取得のため、原資料 を用 いて実際に練習 を積む ことができた。その方法 についての詳細は本稿では省 略す るが、 ウェッ ト ・リペアは基本的には 日本の虫損補修 と同 じ原理のもので、 ドライ ・リペアは欠 損部分 をラミネー ト加工す る方法であるといえる。すなわち、2つの方法の違いは、欠損部分 を埋め 別の紙でサポー トするために水 を使 うか熱 を使 うか という点である。概 して、 ウェッ ト法は各資料に 適 した材料 を吟味 して用 いる上、熟練 したコンサベータ一 によって全て手作業で行 う轍密な作業だ と いえ、 ドライ法は、 さほど貴重でない資料 を補修する簡易な修復方法だ といえる。 これ らの方法 をどの資料 に適用す るかは資料の性質 によって違 うが、英国ではウェッ ト法 と ドライ 法の区分けは、大凡1800年か ら1850年代 を境 にそれ以前の資料 を前者で、それ以後のものを後者 で処置 している。その理 由は、19世紀中頃を境 にして資料の素材が保存性の悪 い酸性紙 に変わ り、ま た資料数 も大量 にあるか らだそ うだ。酸性紙 を1枚ずつ時間をかけてウェッ ト法で処置 して も紙 中の 酸 によ りいずれ内部か ら繊維が崩壊す るので、 ドライ法で大量処理す る方法が採 られるようになった のである。 しか しなが ら、 ドライ法は熱 を使 い化繊紙 を接着剤で貼るため、資料への影響が懸念 される方法で ある。 また、一度接着 した薄菓紙 を剥がす ときには化学薬品を使用 しないと取れない性質がある。そ のよ うなマイナス要素があるにして も、英国では近現代資料の修復は この方法で大量 に処理すること が望 ましいとされていた。 この他、近現代文書の課題 の一つであるセ ロハ ンテープによってダメー ジを受けた資料や トレーシ ングペーパーの修復 も行われている.その際、溶剤 としてアセ トンや トルエ ン、工業用アルコール等 を使用するので、資料 に薬品が残留 しないようにサ クシ ョンテーブル を使 った り、作業の安全性 を確 保するため、防護器具の使用や作業時間、間隔等が予め決め られている。 また、英国では洋紙 の修復以外 にパーチメン トやベ ラム と呼ばれる羊皮紙資料の修復 も盛んだが、 それ らの技術研修は受けなか ったので本稿では省略する。 4 保存方針 この章では前章であげた保存 ・修復技術 を実際の文書 に適用 させ るため、公文書館が構築 している 保存方針 について述べてみたい。保存方針はプ リザベー シ ョンの概念 に基づいて各館が 自館の事情に 見合った作業方針 を定めるものである。英国では国立 レベルではコンサベータ-が 30名以上 とアー キ ビス ト及びプ リザベー シ ョン ・ア ドミニス トレター (保存管理担 当者)等の職員がいて、政策の上 では分業化が進んでいる。一方、州立 レベルではほとん どの館 に 2、3人のコンサベータ-がいるo コ ンサベータ-はアーキ ビス トらと連携 しなが ら保存修復活動の全て に関わ り、その指針 となる館の保 存方針はアーキ ビス トと協議の上で決定 している。それゆえ、 これか ら説明す る英国国立公文書館 と ランカシャー州立公文書館の保存方針は、 どち らもその館 の実情 にあった非常 に実用的内容になって いる。 4-1 英国国立公文書館 同館では膨大な数の資料 を所蔵 し、 また毎 日多数の閲覧者が資料 を利用する。そのような環境にあ る英国国立公文書館 の保存方針は、資料の性質等 によって作業 レベル を選択する方式になっている。

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図11は、同館か らいただいた保存方針のフローチ ャー トを翻訳 した ものである。それ によると、次の ような流れがみえる。 まず、対象 とする資料群は、内在的価値があるか、閲覧利用 に不適か、利用が多いか、保存上複製 が必要か、 という 4つの項 目のいずれかに該当す る場合 にのみ措置 を講 じ、それ以外は将来検討す る 仕組みになっている。次 に、依頼 された仕事が急 ぎか、それ とも通常の処理速度で良いのか を判定す る。通常の処理速度で良い場合には各項 目ごとに流れに沿って意志決定す る。 まず、内在的に価値がある資料群 と複製 を要する資料群 には適切な処置 を施す。複製作成の場合は 必要限の処置に留め、作成時 に解体 した資料は再編綴せず にお く。閲覧 に不適な状態の資料群は、そ の中で も代替物がな く利用が多いものにのみ適切な修復処置を適用 し、それ以外の場合は最少限の保 存処置に留める。 処置を急 ぐ資料群の場合は、代替物がな くコピー要求があるものと、 コピー要求がな くて も利用が 多 く処置が2- 3週間で終了する程度の ものであれば、適切な修復処置 を施す。それ以外の場合は最 少限の保存処置 に留め、またコピー要求があ り、利用が多い資料で も処置 に長期 を要す る資料群は、 次年度以降の計画 に委ねる。 通常の場合 適切な修復 ・代替物作成 (プロジェク ト化) 内在的価値のあるもの 閲覧に不適 - 代替物な し - 利用が多いもの 最少限の保存処置 閲覧に不適 - 代替物あるもの 閲覧に不適 - 代替物な し - 利用が少ないもの 必要な処置 (プ ロジェク ト化) 複製が必要な もの 急 ぎの場合 適切な修復 ・代替物作成 代替物な し - コピー要求があるもの 代替物な し - コピー要求な し - 利用が多 い - 2- 3週間で終われるもの 最少限の保存処置 代替物があるもの 代替物な し - コピー要求な し - 利用が少ないもの 次年度以降にまわす 代替物な し - コピー要求な し - 利用が多い - 長期かかる この方針 に基づ く実際の過程では、他 の部門の集計データか ら代替物の有無や利用頻度 を容易に照 会できるので、意志決定 もスムーズだそ うである。 こうして対象資料群 を絞 り込む ことによ り結果 と して最 も処置を要す る群だけを抽 出 し、優先的に適切な修復処置 を施 させるよ うになっている。処置 することが決定 された資料群は、各課でプ ロジェク ト化 して作業計画 を立て、年度計画 に組み込んだ 上で作業が開始 され る。

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英 国国立公文書館

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の保存方針

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月現在

CONSERVATlONPOLJCY

ThlsflowchartdemonstratesthedeclslonmakJngprocessforundertakingworklnuleCoTISen′atlonDepartment このフローチ ャー トは、 (pRO の)ConservationDepartmentにおける作業遂行上の意志決定過程を示すものである

DOESTHEREgUIREDWORKFALLINTOONEORMOREOFCONSERVAT10NISPRIORITYCATEGORIES?

要求された仕事は (次の)一つあるいはそれ以上の優先的保存処置の範晴に入るか ⅠntrlnslcallyValuabk

内在的価値がある Unnttobeproduced 閲覧利用に適さない HlghDemand

利用が多い PreSerVauonCopylng 保存上、複製が必要である

lrnoLanalternativepreservauonmeasuremlghtbesuggestedor.wheretherelssome justlLIcatlon.theworkaddedtoa)lstlsthepleeerequiredForfutureconslderatlon

もし上吉引こ当てはまらなか った ら、別の保存措置を考えるか、あるいはある程度それなりの理由が成り立つ 】烏合、将来の作業候補に入れておいてよい

lnLnnslcallyValuable 内在的価値がある

ApplyapproprlaLe levelor conservatlon/

PreSen′auon lreatment Consenrauon tTeatmentCarried outbyan experlenced conservator 適切 レベルの修復保存 処置を行う。修復保存 処dEは熟練 したコンサ ベータ-が行う。 lrapproprlate produCea surrogaLe もし代替物を作成する ことが適切であるなら ばそうする

UnnttobeproducedorlnHighdemand 閲覧利用に適さない Isasurrogate available? 代替物はあるか No いいえ - Yes+ はい Doestheplece rallwlthlnule topICnもorthe mostpopular classesつ この資料は、最も利 用の多い群の1CWoの 中に分斐貞されるか Ifappropriate. appJymlnlmum conselVaL10n/ preservauon treatmenL もし適切であれば、 最小限の保存処置 や保存管理を行う 】rapproprlate, applymlnlmum conservatlOn/ preservatlon treatment も し適切であれば、 最小限の保存処置 や保存管理を行う

Applyappropriate)evelor conservatlontreatmentandlrln

Hlghdemandconsidermaklng asurrogateCOpy 適切レベルの保存処置を行い、も し 利用が多ければ代替複製を検討する Applythenecessary leveloftreatment lnc)udlng deacldlncatlon, toensureboth handllngand micronJmlngcanbe safelycarriedout lrItem Was prevlouslybound butw上llnotbe OnOPerlaccess conslderleaⅥng ltunbound 手で扱ってもマイクロ 撮影をしても大丈夫な ように脱酸処理を含む 必要レベルの処壷をす る。もし資料がもとも と綴 じられていて、 し かも一般利用には供 し ない場合、再編綴 しな いことを検討する

Workrormu)atedintoprojectsro√eachsection 各セクションでプロジェク トトして定式化する Wasworksent onaShortTem WorkFormワ 急ぎの仕事か lsthepiece requlred rorcopylng7 1eCustomerorder その資料が利用者等 からコピーを要求さ れているか

Cantheworkbe compJetedwith 2-3weeksウ 作業は2- 3週間で 終われるか Applythe appropriatelevel orconservaUon/

preservauon treatment 適切なレベルの修 復保存処置を行う

IfapproprlaLe. applymlnlmum consen,atton/ preseⅣatlon treatment もし適切であれば. 最小限の保存処fE や保存管理を行う Applythe approprlatelevel oreonservauon/ presemauon Lreatrnent 適切なレベルの修 復保存処置を行う Irnecessarymake noteofreference rorpossible rollowlngyears busJnessplan もし必要ならば 次年度以降の業務計 画に包含できるよう 参照メモを作成する 吉羽訳協力 富永一也

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4-2 ランカシャー州立公文書館 同館の保存方針は、予防的保存 を主体 として9項 目にわたって詳細 に明記 されている。その項 目と は、収蔵環境の管理、防護保管、衛生管理、取扱 い方法、マイクロ化、選択的作業計画、最少限の処 置、コンサベ- ションの記録、設備/技術 の向上である。 これ らの項 目は次の

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点 に集約す ることが できる。 ランカシャー州立公文書館の保存方針 (要約) ①環境整備 書庫の温湿度は 16℃、60% (実際には 18℃、55%)に設定す る。 コンサベータ-は庫 内に設置 し た温湿度計で常時モニタ リング し、変動のある場合はシニア ・コンサベータ-か ら設備担 当者へ改善 をもとめることとする。 資料 を保護する容器の使用 を促進す る。 書庫専任の清掃員 を雇用 し、保存環境 を清潔に保つ。 ②利用 資料の取扱 いについて、職員研修 と利用者への啓蒙 を図るための広報や ビデオ制作 を実施 し、利用 に際 して必要な小道具の使用 を促進す る。 ③マイクロ化 日常業務 としては実施 しない (実際は行われている)が、アーキ ビス トの判断によ り実施。 ④保存修復処置 貴重度や利用度の高い資料 を優先 して作業計画 を立て、各資料の性質 を事前に評価 した上で最少限 の処置を行 うこととする。 この場合、代替措置 (現状維持、脱酸処理、エ ンキ ャブス レーシ ョン、 ク リーニ ング、伸展、写真複製等)が可能である場合はそれに留める。 保存状態の記録や処置内容の記録は、前者 をアーキ ビス トとテクニ ッシャン (現書庫管理担 当者) が行 い、後者 をコンサベー タ-が行 うもの とす るO さらに、記録作成 にお いて必要 に応 じてボ ラン ティアや学生の応援 を可能な ものとする。 これ らは筆者が要約 したもので実際の方針にはさらに細かい記載がある。 また、 当面取 り組むべき 対象資料 を群 ごとに明示 して いる。 このよ うに、具体 的な作業 内容 を盛 り込 まれた方針がある こと で、長期 にわたる作業の 目的や方向性、 さ らに個 々の役割分担が明確 に規定 され、次 に述べるよ うな 体系立った業務が行われているのである。州立の公文書館ではコンサベータ-の数 も少ないだけに、 1人の人が複数の業務 をこなさなければな らない。そ うした観点か らも、保存方針 を立てて実行 に移 す ことの重要性が伺えた。 最後 に、この方針 に基づいた実際の作業の流れ を図-2で記 し、説明 したい。 同館では書庫管理担 当 職員の配置 によって、資料 を受け入れた らまず ク リーニ ング して保存箱や包装紙 を用 いて資料 をカ バー し、取扱いの注意 を促す表示 (「重 い」 「劣化 している」等のシール) を貼付 して書庫 に配架 して いる。 これが、 いわゆる薬剤煉蒸 に代わる方策である。 これ によ り、資料の搬入か ら書庫 までの一連 の作業が流れよ く行われ るので作業の進捗状況がわか りやす く、 どの資料 も分け隔てな く適切に管理

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写共13 ランカシャー州立公文盲朋官のクリーニング ・ルーム 受 け入れた資料は貞 っ先 にこの部屋 に選ばれ、付着 した峡等 を 払 って保存符への収納や包み紙で包装す る。次 に、資料の取壊 い 上の注意 をシール等で表示 し、 占座 に収納す る。 図

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2

ラ ンカ シャー州 立公文書館 の作業 の流れ略 図 アーキ ビス ト 資料収集 ・受入 l

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資料搬入」

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受入台帳記入 -(タイ トル・ID No.のみ)

ンサベータ

庫 の環境管理 清掃者への指示 す る こ とが で き る。 また、資 料 整 理 が 終 了 し、閲覧等 の利用 に供 されて いる資料 は、資 料 の価値や利用頻度 によ り優 先順位 を定めて 計画的 にマイ クロ化や修復等 の処置 を行 って いる。書庫 の温湿度管理や衛生管理 も十分行 き届 き、職員全員の研修やボ ランテ ィアの採 用等 によ り必要最少限の範 囲で能率的 に資料 保存業務 が遂行 されて いる。 このよ うに、 ラ ンカ シャー州立公文書館では保存方針 に基づ いた体 系立 った業務 によって館員全体 が共通 した認識 をもち、 また コ ンサベータ- と他 の 職員 とが うま く連携 して 円滑な保存業務がで きて いるよ うに感 じた。 清掃者 [萱垂 の清掃 書庫管理担当者への指示 一 書庫管理担当者 「ラ勺 一二ング

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保存状態の記入

l 取 り扱い上の注意 シール貼付 資料整理 ・情報の記入 l

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豊坪へ配架」

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以上、2つの例 を挙げてみたが、これ らの事例か ら保存方針 を立てることは、保存業務 を円滑 に遂行 するために不可欠であるといって も過言ではなかろう。 ただ し、両館 ともこのよ うな方針 を立ち上げ るまでには様々な議論がなされ、け して容易ではなかった という。 ランカシャー州立公文書館 のシニ ア ・コンサベーターであるターボ ッ ト氏は、7年前にこの方針案 を打ち出 した後、現状の課題や職員、 機材、予算等あ らゆる問題 について館長以下、同館のコンサベ-ターや アーキ ビス ト達 と協議を繰 り 返 し、その過程で課題 となっていた事柄 を一つ一つ改善す る方向で案 を作 りあげて いったそ うであ る。 当時は丁度予防的保存への転換 を図る時期であ り、書庫の問題や燥蒸の中止で様 々な新 しい処置 方法を考える必要があったとの ことで、その集大成 として築 いた方針 を運用 してか らは課題の解決 に 大きく結びついた という。 5 何を学び、 どう取 り入れ るか 一沖縄県公文書館 と対比 して 一 前章までに、今回の研修 において主 として学んだ保存修復技術 と保存方針 に関 して述べてきた。そ こで、本章では これまでの事柄 をまとめ、沖縄県公文書館の現在の技術 と対比 して どのよ うな ことが 適用できるか、筆者な りの意見 を述べてみたい。 5-1 保存修復技術 保存修復技術 については以下の表 中で現況 と照 らし合わせなが ら、新たな方法 を導入できるか否か 可能性 を探ってみたい。なお、表中沖縄県 の部分の記号は

,

○が英国 と同様の技術 をすで に実施 して いる、△が大方実施 しているが状況が異なる、そ して ×が技術はまだ実施 していないという意味を表 わ している。 ①予防的保存 英 国 沖縄県 (現在) 改善の可能性 環境管理 空調設備

-温湿度管理 (定期点検)

-清掃

△ (

1

回 /月 .床のみ) 書棚 の清掃 を含める 虫菌害のモニタ リング

△ (

1999

年よ り実施) -非薬剤燥蒸 × (煉蒸実施) 煉蒸 に代わる方法へ 防災管理 防災管理マニュアル × マニ ュアル作成 防災訓練 △ 訓練実施 保存容器 保存容器の作成個別容器の使用

△ (琉政文書は箱単位) 簿冊単位 の箱収納 -保存容器の購入

-機材

○ (

2001

年整備) -代替資料 マイ クロ化

-クリーニ ング ドライ .ク リーニ ング × 近現代文書 に適用 ウエッ ト .ク リ-ニ ング △ 全ての資料 に適用 脱酸処理 水溶性脱酸処理

ク リーニ ング と併用 油溶性脱酸処理 × 薬品の調査後導入検討 取扱い指導 職員研修一般向け講習会

△ 回数増 /テキス ト作成ビデオ等の製作

(19)

(参処置的保存 英 国 沖縄県 改善の可能性 ウエッ ト .リペア 方法材料 △ (△ (虫損 に類似)和紙以外

×)

洋紙 の補修 に導入材料の調査 .購入 機材

△ (

2001

年整備) -ドライ .リペア 材料方法 ×× 可逆性がないので現時点では適用不可 機材 × (ホット.プレス機の導入) リー フ キャステ ィング 方法材料

- -機材

-テープの除去 方法材料 △× テープ除去 に導入薬品の購入 英国での技術 と沖縄県公文書館での現状 とを比較 した結果、今後の保存修復業務で改善できると考 え られ ることを表中右 に列記 してみた。 これ らはあ くまで も筆者の個人的意見であるが、少な くとも 洋紙の保存修復 を念頭 にした場合、英国のコンサベ- ションの方法か ら学ぶ ことは多いO研修 を終え て後か ら現在 までに、沖縄県公文書館では虫菌モニタ リングを開始 した り、保存容器の能率的作成や 使用 をめざ して備品や消耗品等 を整備 している。今後 も、上記の事柄 に留意 して可能な ものか ら段階 的に改善策 を検討 し、よ り能率的な保存修復処置につなげて いきたいと思 う。 所蔵資料の面では、琉球政府文書等の収納方法 について現状の保存箱の重量の問題や縦置き等によ る資料へのダ メージが懸念 されるO この研修 を通 じて保存容器の使用 による効果や様々な技術 を見聞 してみて、劣化予防の観点か らも何か改善できる点があるものと考えている。 このような ことを含め、 自らの館の課題 を一歩ずつ解決す ることで、公文書館の資料保存 という大 きな 目標 によ り迅速 に到達できることであろう。 5-2 保存方針 英国では、何 らかの形で各館が保存方針 を持 っている。保存方針は、各館の事情によ りそれぞれ異 なってはいるが、基本的には英国アーキ ビス ト協会

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が 提示 している基準等がモデル になっている。先述の通 り、保存方針は保存修復業務 を体系的に実践す るためには不可欠である。 また、保存方針の存在 によ り館員が現状 をよ り理解 し、課題抽出、それに 対す る改善策等 を検討す るための土場ができる。そ して、 アーキ ビス トもコンサベータ- も課題解決 に向けて相互 に議論 しあうことで、一層実用的な方針 を作成す ることができ、 また運用後 に改善を必 要 とす る場合にも、利用や整理等の側面か らも互 いに修正 していくことが可能になるのである。すな わち、保存方針の重要性 とは、コンサベ- シ ョン業務の能率的な遂行 とともに全館員が資料保存につ いて包括的に把握できるシステム として も寄与する ことだ と思 う。 ランカシャー州立公文書館の例のように、保存方針 に基づいた保存修復業務は非常 にスムーズに進 めることができる。 したがって、膨大な資料群 を有す る公文書館等の機関では、独 自の保存方針を明 確 にして常 に館員全員がそれ を頭 に描 きなが ら作業す ることが望 ましい。保存方針は各館で 自らの事 情 に照 らしなが らできる限 り早 く、 しか もできる限 り詳細 に設置すべきである。筆者 として も、 これ

(20)

か らも議論 を深め、 とくに洋紙 の保存修復 という他県 とは比類な資料群 を対象 とする沖縄県公文書館 の中で、着実 に課題 を解決 していけるよ う努力 したい。

おわ Uに

1

980

年代はconservation

、90

年代はpreservation、そ して

2000

年代はuseの時代である。 この一文は、キャンベルウェル美術大学のアラン ・ブシヤナ ン教授が資料保存の動向を端的に表現 したもので、研修 を通 して最 も印象に残った言葉である。 これが意味するところは、資料保存 と一 口 にいって も時代 によってその考え方が変化 し、それ にしたがって方針や作業の方向性 も違 うことを物 語っている。時代は、修復中心の考え方か ら予防的保存処置をもっと重視 して段階的、体系的に保存 する方向へ変化 し、さらにuseの時代 に入った今、資料の利用 を促進す るためにデ ジタル媒体への変 換等 に最 も関心が集 まっている。 この ことを返せば、 ます ます原資料 を保存 し、必要な情報だけを別 の媒体 に移 し替えるという予防的保存の方向へすすんでいるといえる。はた して

、2000

年代 には利 用を第一の目標 に掲げて どのような保存技術が生み出されるか興味あるところである。 しか し、筆者 としては原資料はけ してコピー資料 には見 ることのできない情報 を含み、その情報 を 壊す ことな くいかに活用 させるかが大切だ と考 えている。 したがって、その 目的のために資料保存の あ らゆる技術が発展 し、資料保存 に関わる全ての人がそれ を理解す る ことを願 っている。筆者は これ か らもこうした観点か ら技術取得 に努め、残 されてきた貴重な歴史の証言者たちを守 っていく一助 に なれれば と思 う。そのためには、英国のコンサベ-シ ョンか ら学び考 えた ことをさ らに整理 し、沖縄 県公文書館の現業務 に生か していけるよう努力す る所存である。 英国研修 については、研究助成 をしていただいた沖縄県人材育成財団にこの場 を借 りて深 く感謝す る。 また、英国で指導 にあた って いただ いた英国国立公文書館、エセ ックス州立公文書館、 ランカ シャー州立公文書館、及びキ ャンベルウェル美術大学のコンサベータ-の皆 さん とは将来 にわたって 杵を枯 らす ことな く交流 を続け、沖縄県 と英国 との窓 口の一つになれ るよ う努力 したい。最後 に、英 文の翻訳 についてご協力いただいた富永一也氏 に、 あわせてお礼 を述べる。 (おおわん ・ゆか り) 参考資料 ・安江明夫 「酸性紙問題か ら資料保存へ」『図書館 と資料保存』1995,雄松堂 出版 ・公文書館問題専門家研究会編 『行政情報セ ンターの実現 と歴史資料 の保存のために一大阪府公文書館 の基本構想 に ついての提言 一』1983

・AngelaClaft,THENEW PUBLICRECORDOFFICE,PublicRecordOffice

・文書館用語集研究会編 『文書館用語集』1997,大阪大学 出版会

・記録史料の保存 ・修復 に関す る研究集会実行委員会編 『記録 史料の保存 と修復 一文書 ・書籍 を未来 に遺す -』1995, アグネ技術セ ンター

・SocietyofArchives,BESTPRACTICEGUIDELINE4PRESERVATIONANDCONSERVATION,1997 ・PublicRecordOffice,CONSERVATIONPOLCY

・LancashireRecordOffice,CONSERVATIONPOLCY ・EssexRecordOffice,"STAFFTRAINING''

・Mark Sandy,WHAT IS CONSERVATION?,1999,textbook at the shortcourse of conservation,

(21)

・JohnN.DePew withC.LeeJones,LIBRARY MEDIA ANDARCHIVALGLOSSARY,1992,ABC-CLIO,

Inc.

図 1 1 は、同館か らいただいた保存方針のフローチ ャー トを翻訳 した ものである。それ によると、次の ような流れがみえる。 まず、対象 とする資料群は、内在的価値があるか、閲覧利用 に不適か、利用が多いか、保存上複製 が必要か、 という 4つの項 目のいずれかに該当す る場合 にのみ措置 を講 じ、それ以外は将来検討す る 仕組みになっている。次 に、依頼 された仕事が急 ぎか、それ とも通常の処理速度で良いのか を判定す る。通常の処理速度で良い場合には各項 目ごとに流れに沿って意志決定す る。

参照

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