源氏物語における助動詞キの会話文・心話文・消息文での文末用法 ; 1 : 終止形キの用法を中心に
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(2) 文学 。文化編 (2006年 3月. ). にキの文末 とシの 文末 とでは,そ の使 用傾向 に差異が. [8]こ れや この は らだ つ 大 納 言 の な りけ む とみ ゆ れ。かたへ はひが ご とに もやあ りけむ。かや う. あ る とかんが え られ る。 以下 ,使 用例 をあげる. に,こ となるをか しきふ しもな くのみ ぞあ な り. 例 ,連 体形 シが 6例 と非常 に使 用例 がす くな く,さ ら │。. [1]. か ら [3]ま でキの例 ,[4]か ら [6]が ザ リキの例. ,. し。. (「. 宿木」 1780-5). [9]御 かへ りはいかがなど, きこえに くくお IFし. [7]が ニ キの例 で あ る。 [1]御 は らか らのみ こた ち,む つ ま しうきこえた. たれ ど, ことごと しくお もしろかるべ きを りのこ. まひ し上達部 な ど,は じめ つ か たは とぶ らひ き こ. ヽ とならねば,た だ″ をのべ て/そ む く世の うしろ 亡. えた まふ な どあ りき。. (「. 須磨」427-4). めた くはさりがたきほだ しをしひてかけなはなれ. [2]お もひの ほか に,か な しき道 にい でた ちた ま. そ/な どや うにぞあめ りし。. ひ しか ど,つ ひ に は い きめ ぐ りきな む と,か つ. (「 若菜上」 lo67-10) へ [10]「 かたちさ あらまほ しか りきや」 など,な. は,お ぼ しな ぐさめ き。. 明石」469-6). (「. [3]院 に も,か の くだ りた まひ し大極殿 のいつ か しか りし儀式 に,ゆ. ゆ しきまでみ えた まひ し御 か. ヽ わろきつか うまつ り人は, うち しのびつつ ま′ 亡. ,. 「 うるさげなる御あ りさまよ りは」 な どいふ もあ. た ち を,わ す れが た うお ぼ しお きけれ ば ,「 まゐ. りて,い とほ しうぞみえ し。 (「 竹河」 1496-14). りた まひて ,斎 院 な ど御 は らか らの宮 々,お は じ. [H]上 の 町 も,上 臓 とて,御 回つ きどもは,こ. ます た ぐひにて , さぶ らひた まへ 」 と,御 虐、 所に. となることみえざめれ ど, じる しばか りとて,ひ. もきこえた まひ き。. [4]は じめ よ り,お. (「. 澪標」5H-8). とつふたつぞ とひききた りし。. しなべ ての うへ 宮 づ かへ した. まふべ ききはにはあ らざ りき。. (「 桐壺」 6-8). (「. 宿木」 1799-11). [12]七 月 にぞ后 ゐたまふめ りし。. [5]心 にまかせ て,み たて まつ りつべ く,人 も し. (「. 紅葉賀」262-1). たひざまにおぼ した りつ る年 月 は,の どか な りつ. [13]そ の 日の御装東 どもな ど,こ なたの上 なむ. る御心 お ご りに,さ しもお ぼ され ざ りき。. したまひける。禄 どもおほかたのことをぞ,三 条. 賢木」 336-9). (「. の北 の方 はいそ ぎたまふめ りし。. [6]ま ゐ りた まへ る まらうどども,た だあけ ぐれ の け ぢめ しな け れ ば,あ. リ なが ち に 目 もた た ざ ヤ. (「. 若菜上」 lo86-11). おな じ助動詞 キの文末での使用例 で も,連 体形 シの. 薄雲」609-9). ばあい,い わゆる「草子地」 とみなせ るような,語 り. [7]斎 院 は御 ぶ くにてお りゐた まひに しか ば,朝. ・ の例がそ の大部分 を し 手 の「今 ,こ こ」 か らの過去. 顔 の姫君 は,か は りゐた まひに き。. める。 たとえば,[8]で は,直 前 の帝 や薫 らの歌のや. き。. (「. (「. 賢木」 347-5). これ ら 7例 の お お きな特 徴 は ,い ず れ もが物 語 の 「今 ,こ こ」 の時点 に対す る過去. 2と. な ってい る点 であ. りとりのあ とで,そ れを語 り手 の視点か ら「歌 はそれ ほどの ものではない」 と批評 してい る。 ただ,[12]と. [13]の メ リシの例 は,文 の叙述内. る。 た とえば,[1]で は,須 磨 に蟄居 して い た光源氏. 容 だけでは「草子地」 ともかんがえに くい。藤壷 の立. と,皇 子 た ち上達部 は 当初手紙 のや りと りを して い た. 后 や光源氏四十 の賀 は,物 語 の 中心的な話題 とい うべ. が ,物 語 の現時点 で は,弘 徽殿 の大后 をはばか って. きものである。 しか し,こ れ らがメリシと断定的では. ,. それ はす で に過去 の こ とであ る とす る。「は じめ つ か. な く,「 ∼の ようだった」 と婉 曲的 にのべ たことか ら. た」 と現時点 とを対比す る時点 が 明示 され るの も,そ. すると,お な じ過去 で も語 り手 の確信性 の ない判断が. う理解す る根拠 となる。 同様 に,[2]で は「か な しき. ふ くまれるもの ともなる。高山 (2002)の 指摘 の よう. 道 にい で たちた まひ し」 とき,[3]で は「 いつ くしか. に, さらに検討 が必要な例である。. りし儀式」,[4]で は「は じめ よ り」,[5]で は「お ぼ. 以上みて きた ところか らすると,源 氏物語 の地 の文. した りつ る 年 月」,[7]で は現 時 点 で 「朝 顔 の 姫 君」. での助動詞キの文末使用例 は,終 止形キ と連体形 シと. は斎 院 となって い る,と い う ように,対 比す る過去 の. では,あ きらかに使用傾向に差異があ り,前 者が物語. 時点 が 明示 されて い る。. の現場 での過去 の時点,後 者が語 り手 の現在の視点か. それ に対 して ,係 り結 びの文末 となる シの場 合 は. ,. まった くこ となった傾 向 を しめす。以下 の 6例 は,い ず れ も係助詞 ゾ との係 り結 びの例 であ る。. らの過去の時点 となる。西田 (2005)で は,こ のよう な使用傾向 について,地 の文 での係 り結 びの使用傾向 とい う観点か ら1,助 動詞 キの 「直接体験」 とされる意.
(3) 西田 隆政 :源 氏物語 における助動詞キの会話文. (「. 味 の 問題 に検討 をすすめ たが ,次 章 以下で は,そ の 際. ど しはべ りき。. 検討 しなか った,会 話文等 にお ける助動詞 キの使 用 に. [22]か の 国 はなれ た まふ とて も,お ほ くの 願 た. つい て ,み て い くこ とに した い。. て 申 した まひ き。. 夕顔」 107-6). (「. 玉 質」 730-14). [23]み るめ もこ ともな くはべ りしか ば,こ の さ. 3. 会話 文 キの文 末使 用 例. が な者 をうち とけ た るか たにて , ときどきのか く ろへ み はべ りしは どは こ よな く心 とま りは べ り. 源氏物語 でのキの文末使用例 を,使 用文体 ごとに整. て ,い み じうな きた まひ き。 (「 手習」 2043-9) 1‖. 、 亡 地 の あ しさな ぐさみ き。 [25]み しかばノ. ン ヽ. キ. 需木」 53-6). [24]川 ち か き と こ ろ に て,水 をの ぞ きた ま ひ. 理 したのが ,下 の表 1で ある。 表. (「. き。. シ カ. 計 (「. 地 の文 会話文. [26]い ささか の こ との あや ま りもあ らば,か ろ 66. 34. 136. 心話文 7肖. ′ 自、 文. 和. 歌 計. 若紫」 179-1). 236. が ろ しきそ しりをやお はむ とつつ み しだに,な ほ. 24. す きず き し き咎 をお ひて ,世 に は した なめ られ き。. (「. 梅枝」990-10). [27]は やう,ま だ下贈 にはべ りしとき,あ はれ 39. 168. とお もふ 人 はべ りき。. 293. (「. 言木」48-8). [28]さ すがに口 と くな どははべ りき。 この表 か ら理解 されるように,会 話文等 では,連 体 形 シの例が地 の文 よりも使用比率がたかい。 これは. 帯木」61-4) [29]昨 夜 も,御 遊 びにか しこ くもとめ たて まつ. 西田 (2002)で みた,助 動詞 ツ・ヌ・ タリ 0り と同様. らせたまひて,御 気色あ しくはべ りき。. ,. (「. の使用傾向である。以下 ,会 話文 か ら,使 用例 をみて い くことに したい。 [14]か ら [40]例 は,キ が単独 で動詞 に接続する例 であ る。. (「. 人 々 ま じなひわ づ らひ しを,や が て とどむるた ぐひあまたはべtり. [30]去 年 の 夏 も世 にお こ りて. あ りき。 (「 橋女 [14]か く御消′ 自、 臣」 1532-13)". き。. [15]日 ごろ,い といみ じくもの をおぼ しい るめ. [31]お もふか たは. (「. (「. ,. 若紫」 151-4). (「. 横笛」 1279-9). [32]つ れづ れなるまぎらは しに もとお もひて. ,. 蜻蛉」 1935-10). さいつ ころ,宇 治 にもの してはべ りき。. [16]お のが寺 にてみ し夢あ りき。 (「. ,. ことにはべ りき。. りしか ば,か の殿 の,わ づ らは しげに,ほ のめか しきこえたまふ ことなどもあ りき。. 夕顔」 130-12). (「. 手習」 1994-5). 宿木」 1716-11). [33]一 日,か の母君 の文 はべ りき。. [17]こ のふたつ の ことをお もうた まへ あ はす る. (「. 東屋」 1841-10). に,わ か きときの心 にだに,な ほ さや うにもてい. [34]一 昨年 の秋 も,こ こにはべ る人の子 の,ふ. でたることは,い とあゃ しくたの もしげな くおぼ. たつ ばか りはべ しをとりて,ま うで きた りしか ど. えはべ りき。. [18]文 才 をばさる ものにてい はず,さ らぬ こと. も,み お どろかず はべ りき。 (「 手習」 1992-6) [35]い かで うしろやす くもみ た まへ おかむ と. の なか には,琴 ひかせ た まふ こ となむ一 の才 に. あけ くれかな しくお もうたまふるを,少 将殿 にお. て,つ ぎには横笛 ,琵 琶 ,等 の琴 をなむつ ぎつ ぎ にな らひた まへ る と,う へ もおぼ しのた まはせ. きたてまつ りては,故 大将殿 にも,わ か うよりま. き。. (「. (「. 言木」55-6). 絵合」572-9). [19]昨 日ほのかに ききはべ りき。 (「. 蜻蛉」 1945-5). [20]い づ ことては,お は しつ るぞ。 まろははや うしにき。. (「. 夕霧」 1363-9) と きなれたる手 して [21]か ,日 くかへ りごとな. ,. ゐ りつか うまつ りき。. (「. 東屋」 1801-2). [36]い と しの びてみそめ た りし人 の ,さ て もみ つべ か りしけ はひな りしか ば ,な が らふべ きもの としもお もひた まへ ざ りしか ど,な れゆ くままに あ はれ とお ぼえ しか ば,た えだえ,わ すれ ぬ もの にお もひた まへ しを,さ ばか りになれ ば, うち た のめ る気色 もみ え き。. (「. 言木」56-2).
(4) 甲南女子大学研究紀要第 42号. [37]み き。. (「. [38]さ ることみ き。. (「. 言木」71-9). 若菜下」 1202-13). [39]さ て,ま たおな じころ,ま か りか よひ しと. 文学 。文化編 (2006年 3月. ). 続 す る例 であ る。以上 ,キ が 単独 で接続 す る例 は,合 計 34例 で あ る。 つ ぎに,複 合形 の例 をあげる。. [49]い とか くはお もひ きこえ ざ りき。. ころは,人 もたちまさり,心 ばせ まことにゆゑあ. (「. 横笛」 1269-11). りとみえぬべ く,う ちよみ,は しりか き,か いひ. [50]い とか く地 の底 とほ るばか りの 氷 ふ り,雷. く爪音 ,手 つ き口つ き,み なたどたどしか らず. の しづ まらぬ こ とははべ らざ りき。. (「. み ききわた りはべ りき。. ,. 言木」53-4). [40]み しほどまでは,ひ とりはもの したまひき。 (「. 手習」2045-12). リ」,「 17」 が 「お IFゆ 」 [14]か ら [16]が 「あ ク ,. (「. [51]本 才 のか たが たの ものお しへ させ た まひ し に,つ たな きこ ともな く,ま た と りたてて この こ ヽ とと′ える こ ともはべ らざ りき。 亡. [18]が 「おぼ しのたまはす」,[19]が 「 きく」,[20] が 「 し ぬ」,[21]が 「す」,[22]が 「た て 申 す」 ,. 明石」 442-7). (「. 絵 合」 571-9). [52]か くて さぶ らふ これ か れ も,年 ごろだ に. ,. ゛ [23]が 「と まる」,[24]が 「な く」,[25]が 「な く. なにのたの も しげあ る木 の もとのか くろへ もはベ. さむ」,[26]が 「は したなめ らる」,[27]か ら. らざ りき。. [34]. (「. 総角」1590-13). が「はべ り」,[35]が 「 まゐ りつ か うまつ る」,[36]. [53]そ のの ち,音 に も きこ え じとお ぼ してや み. が 「みゆ」,[37]と [38]が 「みる」,[39]が 「み き. に しを,い かでか きかせ た まひけむ,た だ ,こ の. きわたる」,[40]が 「 ものす」である。17種 27例 で. 二 月 ばか りよ り,お とづ れ きこえ させ た まひ し。. H. 御文 はい とたびたびはべ め りしか ど,御 覧 じい る. あるが,存 在動詞 の「あ り」 と「はべ り」の例が計. る こ ともはべ らざ りき。. 例 と,使 用例がおおい。. [41]か ら [47]は ,形 容詞 にキが単独で接続す る. (「. 蜻蛉」 1955-9). [54]雲 の うへ ちか くては,さ しもみ えざ りき。. 例 である。. (「. ダ百可」 1490-14). [41]こ とごとし くもてな した まは ざ りけるを. [55]弁 もはなれぬ仲 らひにはべ るべ きを,そ の. いみ じくかな しびたまふ な り。は じめの,は た. かみはほかほかにはべ りて, くは しくもみたまへ. ,. ,. (「. いみ じか りき。. 手習」2043-6). [42]故 六条院の,踏 歌 の朝 に女方 にて遊 びせ ら れける,い とお もしろか りき。 竹河」 1491-11). [43]さ て もす ぐしはてねば,た つ ときもの う く. [44]執 念か りき。. (「. 宿木」 1763-9). [49]か ら [55]ま では,ザ リキの例 で あ る。 [49] が 「お もひ きこゆ」,[50]か ら [53]が 「はべ り」 [54]が 「みゆ」,[55]が 「みたまへ なる」 で,4種 7 ,. (「. 心 とまる, くる しか りき。. なれざりき。. (「 松風」589-11) 支」991-14) (「 梅本. 例 である。 [56]も しみたまふ こと もやはべ る と,は かな き つい で作 り出でて,消 虐、 な どつ かは した りき。. [45]わ れは しか,へ だつ る心 もなか りき。 (「. 夕顔」 138-2). [46]か しこ き上 の 人 々おほ くて,そ の心 ざしを とげて,御 覧ぜ らるることもなか りき。 (「 若菜上」 1030-1). (「. [56]は 夕. 1リ. 夕顔」 107-6). キの 1例 で ある。動詞 「つ か はす」 に. 接続す る。. [57]い とねぶた し。昨夜 もすずろにお きあか し て き。. (「. 浮舟」 1872-1). [47]う るは しくお もりかにて,そ の ことの あか. [58]も とよ りお くれ た るか たの ,い と どなか な. ぬか なとおぼゆることもなか りき。. か うご きす べ くもみ え ざ りしか ば,む つ か しくて. (「. 若菜上」 1166-1). [41]が 「い み じ」,[42]が 「お も しろ し」,[43]. かへ して き。. (「. [59]そ の 世 の 罪 はみ な科戸 の風 にた ぐへ て き。. が 「 くる し」,[44]が 「執念 し」,[45]か ら [47]が 「な し」 で,4種 6例 である。. (「. 朝顔」 642-12). [57]か ら [59]は テ キ の 3例 で あ る。 そ れ ぞ れ. [48]親 もな く,い と心 ぼそげて,さ らば この人 こそ はとことにふれてお もへ るさまもらうたげな りき。. 玉 重」 756-5). (「. 需木」56-7). [48]は 形容動詞 「らうたげな り」 にキが単独 で接. 「お きあかす」「かへ す」「た ぐふ」 に接続 す る。. [60]い み じきこ とを き こ え させ はべ りて ,い で させ はべ りに き。. (「. 蜻蛉」 1955-5). [61]故 宮 の 御忌 日は,か の 阿 閣梨 に さるべ き こ.
(5) 西田. 隆政 :源 氏物語 にお ける助動詞 キの 会話文 。心話文 。消虐、 文 での文末用法. [76]は 「のたまふ」 とメリキ,[77]は 「さむ」 と. とどもみない ひお きはべ りにき。 (「. (1). 宿木」 1718-11). ヌメ リキの例 で あ る。. [62]侍 従 とい ひ し人は,ほ のか におぼゆるは. [78]さ れ ど,大 原 野 の行 幸 に,上 をみ た て まつ. 五つ六つ ばか りな りしほどにや,に はかに胸 をや. りた まひては,い とめでた くお は しけ りとお もひ. みてうせにき。. た まへ りき。. ,. (「. 橋女 臣」1540-5). [63]親 たちははや うせたまひに き。 (「. ちた まへ りき。. [64]御 かたは,は や うせたまひに き。 玉質」735-3). (「 手習」2042-12). [65]う せたまひに き。. [66]か しらおろ しはべ りにき。. 藤袴」922-4). き山が つ とな りはべ りけ め ,親 ,大 臣 の位 をた も. 夕顔」 138-11). (「. (「. [79]前 の 世 の契 りつ た な くて こそ か く くち を し. (「. 明石」457-2). [79]は リキの伊1で ある。 ともに敬語 の補. [78]と. 助動詞 「たまふ」 を介 してい る例 で,動 詞 は [78]が 「お もふ」,[79]が 「たもつ」 である。. (「. 手習」2035-1). [67]昨 日,御 車 いてかへ りはべ りにき。 (「. 宿木」 1713-8). これ らのキの複合形 での使用例 は 32例 で あ り,単 独 での 34例 とほぼ 同数 で あ る。上接 す る助 動 詞 は 「ず (ざ り)」 「た り」「つ」「ぬ」「め り」「 り」 の 5種. [68]心 のを さなか りける ことは,よ ろづ に もの. で ある。動詞 の種類 は 25種 で,単 独 での使用例 が存. つつ ましか りしほどにて,え たづ ねて もきこえで. 在動詞 に集中するの とは相違 し,お お くの種類 の動詞. す ぐししほどに,少 弐 にな りたまへ るよしは,御. に接 続す る。そ の なかで,助 動詞 ヌ との使用 で は. 名 にて しりに き。. (「. 玉 髪」 740-2). ,. 「 うす」 (4夕1)「 なる」 (4例 )と 変化動詞 の例 がおお い。. [69]わ が 身 にて もしりに き。 東屋」 1806-14). 会話文 でのキの使用例 は,地 の文 での使 用例 と比 較. [70]い かにな りたまひにき。 (「 夕顔」 134-6). す る と,そ の使 用例 がおお い だ け で な く,使 用例 の パ. [71]こ よな くお もひけちた りし人 も,な げ きお. ター ン も多様 で あ る。 と くに,メ リキ の例 は,地 の文. ふや うにてな くな りにき。 (「 藤裏葉」 1008-5). で は係 り結 びでの メ リシ しか使用 されず ,会 話文 で は. [72]一 日まゐ りて,い で た まふ ほ どな りしか. 「婉 曲」 的 に過去 の 事態 をのべ る例 が キで使 用 可 能 で. (「. (「 東屋」 1837-12). ば,え をらずな りにき。. [73]さ て,わ れ もすみはべ らずな りにき。 (「. 4. 会 話 文 キ 十終 助 詞 の 文 末 使 用 例. (「. [75]ま か り申 ししに,殿. 手習」2027-4) に まゐ りた まへ りし. 日,ほ のみたて まつ りしかども,え きこえで,や みにき。. ちが い を しめす もの とい え よ う。. 浮舟」 1912-8). [74]束 の 御 方 は,も の ま うで した まひ に き と か。. あ るの は,地 の文 と会話文 での終止形 キの使 用範 囲 の. (「. 玉質」740-3). キの文末 には,終 助詞 の下接する例がある。地 の文 にも,つ ぎの 2例 がある。. [80]斎 院 は御 服 にてお りゐ た まひに きか し。. [60]か ら [75]は ニ キ の 例 で あ る。 [60]が 「い づ」,[61]が 「い ひ お く」,[62]か ら [65]が 「 う す」,[66]が 「おろす」,[67]が 「かへ る」,[68]と. (「. 朝顔」639-1). [81]ま ことや,か の衛 門督 は 中納言 にな りに き か し。. (「. 若菜下」1172-1). [69]が 「 じ る」,[70]か ら [73]が 「 な る」,[74]. ともに,ニ キ カシでの使用例 で あ るが ,地 の文 で は. が 「 もの ま うで す」,[75]が 「や む」 で,9種 16例. い わゆる「草子地」 ともされ る,語 り手 の視点 か ら批. である。. 評 的 にのべ られて い る文 で あ る。. [76]院 も,こ とのつい でに,も し世のなかお も. 会話文 には [82]か ら [93]ま での例 があ る。. ふや うな らば,ゆ ゆ しきかね ごとなれ ど,尼 君そ. [82]た だ ,朝 夕 に もてつ け た らむあ りさ まにみ. のほどまでなが らへ たまはなむと,の たまふめ り. えて ,心 くる しか りしか ば,た のめわたるこ とも. (「 若菜上」Hoo-1) い [77]「 で,こ の葛城の神 こそさが しうしおきた れ」 とむつか りて, もののぞきの心 もさめぬめ り. あ りきか し。. き。. き。. (「. 夕顔」 H2-2). (「. 帝木」56-6). [83]な ほ 昔 よ りた えず み ゆ る心 ば へ ,え しの ば ぬ をりをりあ りきかし。. (「. 柏木」 H254-1). [84]人 柄 の をか しか り し も, と こ ろが ら にや. ,.
(6) 文化編 (2006年 3月. めづ ら しうおぼえ きか し。. (「. 澪標」492-10). [85]あ や しくて,お は じところたづ ね られた ま ふ 日もあ りときこえきか し。 (「 浮舟」 1909-H) [86]昨 日今 日といふ ばか り,春 宮 にやな どおぼ 蜻蛉」 1976-5). [87]天 下 にいみ じきこととおぼ した りしか ど. ,. 東 にてかかる薫物 の香 は,え あはせ いでたまはざ りきか し。. (「. 宿木」 1784-7) ゛ [88]そ れはかや うに しも, お もひよ りはべ らさ りきか し。. (「. (「. 帯木」56-7). [97]か たちさへ あ らまほ しか りきや。 (「. [94]と. ダ百可」 1496-13). [95]が 動 詞 に下接 す る 例 ,[96]と. [97]. が形 容詞 に下接 す る例 であ る。 いずれ も物語 中 の話 し. し,わ れにも気色 ばませたまひきか し。 (「. ). 柏木」 1257-9). 手 が 聞 き手 に過去 の事態 につい て 質問す る例 で あ る。 この よ うに,会 話文 のキが 終助詞 の カシや係助詞 ヤ と共起 しやす い こ とは,会 話文 でのキが 文末 で 多様 な 用法 を もっていた こ とを しめす もので あ る。 これ は. ,. さきに西 田 (2005)で 検討 した地 の文 での キの文末 の 用法 とは一線 を画す る もので ,2章 でふ れ た メ リキの. [89]い とけ とほ くもてな した まひて, くは しき. 使 用例 もふ くめて ,逆 に,地 の文 でのキの使用 が限定. 御あ りさまをみならす ぃたて まつ りしことはなか. された もので あ った ことが 理解 され るのであ る。. りしか ど,御 まじらひのほどに, うしろやす きも の にはおぼ した りきか し。. (「. 朝顔」 655-5). 5. 心 話 文 ・ 消 虐、 文 キの文 末使 用例. [9o]故 院 の御 と きに,大 后 の ,坊 の は じめ の 女 御 にて い きまきた まひ しか ど,む げ の末 に まゐ り た まへ りし入道 の宮 に, しば しお された まひに き か し。. (「. 若菜上」 1042-12). [91]い か なる御 心 地 ぞ とお もへ ど,石 山 とま り た ま ひに きか し。. (「. ,手. 癌卜 」 19o2-3). 文 の キの使 用例 を 会話文 につづ い て ,心 話文 と消虐、 検討す る。心話文 は,[98]が タリキ ,[99]と. [100]. が ニ キ と助 動 詞 の み で の 使 用 例 ,[101]か ら [105] までが カシの下接 す る使 用例 で あ る。. [98]た ず ね む とおぼ した りき。. [92]宮 の うちにお ひい で て ,帝 王 の か ぎ りな く. (「. 若菜下」 1127-12). か な しきもの に した まひ,さ ばか りなで か しづ. [99]世 にお はせ ず な りに き。 (「 竹河」 1472-5). き,身 にかへ ておぼ した りしか ど,心 の ままに も. [100]か たちをかへ ,世 をそむ きに き。. お ご らず ,卑 下 して ,二 十が うち には納言 に もな らず な りに きか し。. (「. 若菜上」 lo31-12). (「. 夢浮橋」 2060-1). [lol]ま ず はかの御簾 の は さまも,さ るべ きこと. [93]は じめ の はた,い み じか りき。 ほ とほ ど出. か は,か るが る しと大将 のお もひた まへ る気色. 家 もした まひつべ か りきか し。. み え きか し。 (「. 手習」 2043-6). [82]か ら [86]が キ カ シの 5例 ,[87]か ら [93]. (「. ,. 若菜下」 1202-1). [102]え お はせ ざ りしほ どの なげ き,い とい とほ しげな りきか し。. (「. ,手. 丼卜 」 1909-13). [88]が ザ リ キ カ. [103]か の 空 蝉 の ,う ち とけ た り し宵 の 側 目 に. シ,[89]が タ リキ カ シ,[90]か ら [92]が ニ キ カ. は,い とわろか りしかたち ざまなれ ど,も てな し. シ,[93]が ツベ カ リキ カシで あ る。. にか くされて口 を しうはあ らざ りきか し。. が 複 合 形 の 7例 で あ る。 [87]と. 会話 文 で は,話 し手 の 「念 を押 す」 意味. 6を. もつ カ. (「. 末摘花」224-5). シが 多用 され るの は理 解 され る ところであ るが ,下 接. [104]そ のかみ も,け ちか くみ きこえむとは,お. しない例 が 66例 に対す る 12例 は,か な りたか い比率. もひ よらざ ヤ ,き か し。. であ る とかんが え られ る。. [105]ゆ ゑあ りて もて な した まへ り し心 お きて. また ,会 話文 には ,疑 間 の意味 を しめす係助詞 ヤが 下接 す る例 も 4例 み られ る。 [94]か ら [97]ま で で. (「. 若菜下」 1132-2). を,人 は さ しもみ しらざ ク ,き か し。 (「. 幻」 1414-10). キの複 合形 が 3例 とカ シが 下接 す る例 が 5例 で あ. あ る。. [94]頭 中将 の気色 は御覧 じしりきや。 (「. 藤袴」 921-4). [95]昨 夜 ,宮 は まち よろ こびた まひ きや。 (「. 野分」 869-7). [96]い さや , ことなる こ ともなか りきや。. る。使 用例 がす くな い こと もあ り,会 話文 と比 較す る と,使 用 パ ター ンは 限定 され て い るが ,そ の なか で は ,カ シの 下接 す る例 のおおいのが 注意 され る。. 3章 で もふ れ た よ うに,カ シは 話 し手 の「念 を押 す 」意味 とされ るが ,心 話文 のば あ い ,話 し手 と聞 き.
(7) 西田. 隆政 三源氏物語 にお ける助動詞 キの 会話文. 手 は同一 人物 なので,自 分 自身に対 して過去 の事態 を 「そ うい うこと」 と確認 してい ることになる。 た とえ ば,[101]は ,柏 本 が,大 将. (夕. 霧)の お も って い. の過去 を しめす とい うだけで な く,そ こに話 し手 の 間 き手 へ の はた らきか け を しめす例 があ る とい う点 で. ,. よ り使 用範 囲が ひろ い とい う ことになる。. た,女 三の宮 の「かるがる し」 い欠点が,御 簾 のは さ. 次稿 で は,こ の終止形 キの使用傾 向 をふ まえて ,連. まの ときにもみえたのだった,と 今 にして認識 してい. 体形 シや 已然形 シカの文末 での使用例 につ い て ,検 討. る例 である。. して い くこ とに した い。. 文 では,3夕 1み ることがで きる。 消虐、. [106]一 日の御 こ とは,阿 閣梨 のつ たへ た りし に, くは しくききはべ りにき。. (「. 宿木」 1735-1). [107]か しこの寝殿 ,堂 になすべ きこと,阿 閣梨 にい ひつ け はべ りに き。. (「. 宿木」 1765-2). [108]昨 日,上 は み た て ま つ りた ま ひ きや。 (「. 行幸」888-7). この なかで は,[104]の ヤの下接 す る例 が 注意 され る。手紙 の なかで ,光 源氏 が玉 質 に,帝 を拝見 な さっ たか と,質 問 して い る例 で あ る。使 用例 はす くない も のの ,地 の文 にはな い疑 問文 の例 の あ る こ とか ら,会 話文 に通 じる もの とみ る こ とがで きる。. )王. 1)源 氏物語 の 引用 は,池 田 (1953)に よる。そ の 引用 に際 して,適 宜 ,か なづ か い をあ らため,濁 点 をほ ど こ し,漢 字 をあて,句 読点 をつ けた。. 2)糸 井 3)糸 井. (1995)の 用語 による。. (1995)の 用語 に よる。井 島 (2002)で は「表 現時」 とし,ほ ぼ同義 とかんがえられる。. 4)表. 1に は,終 助詞 カシや係助詞ヤ の 下接 した例 をふ. くんでい ない。 5)会 話文等 の引用 では,一 文 ご とに引用 し,「 といふ」 「とお もふ」等 の引用 をしめす部分は省略する。 6)中 村 。岡見 ・阪倉 (1982)で の カシの意味記述 に よ る。. 心話文 と消息文 は,基 本 的 に会 話文 と同様 の傾 向 を しめす もの とみて よい で あ ろ う。使用例 の す くない こ. 参考文献. と もあ り,会 話文 ほ どの使用 パ ター ンの 多様 さはな い. 池 田亀鑑 1953『 源氏物語大成校異篇』 1∼ 3(中 央公論 社 ・調査 は第 9版 による. もの の ,地 の文 とは こ とな り,会 話文 に よ りちか い使. 井島正博 2002「 中古和文 の表現類型」 (『 日本語文法』2. 用傾 向 とみ る ことがで きる。. ). -1). め. 糸井通浩 1981「 源氏物語 と助 動詞 「 き」」 (源 氏物語探 求会編 『源氏物語 の探求』6 風間書房 ). 糸井通浩 1995「 中古 の 助動 詞 「 き」 と視 点」 (『 京都教 育大学国文学会誌』24・ 25). 本稿 で は,助 動詞 キの終止形 キ使用例 と して ,会 話 文 66例 ,心 話 文 3例 ,消 虐、 文 2例 と,終 止 形 キ に助 詞 の 下接 す る会話 文 16例 ,心 話 文 5例 ,消 虐、 文 1夕 J の計 93例 を検討 して きた。 そ の 結 果 と して,こ れ ら の使用例 は ,地 の文 での使用例 よ りも,使 用数がおお い だけで な く,終 助詞 カシの使用 や疑 問文 での使用等 で ,よ り使 用範 囲 の ひろ い こ とが 確認 された。 地 の 文 で は,終 止 形 キが基 本 的 に物 語 の「 今 ,こ こ」 の 時点 か らの過去 を しめす もので あ ったの に対 し て ,会 話文等 での終止形 キは会話等 の発話 の時点 か ら. 高山善行 2002『 日本語 モ ダリテ イの 史的研究』 (ひ つ じ 書房. ). 中村宗彦 ・岡見正 雄 ・阪倉篤 義 1982『 角 川古 語 大 辞 典』 1(角 川書店. ). 西 田隆政 2000「 助動詞 「つ」「ぬ」 と係 り結 び一源氏物 語 を中心 に一」 (『 表現研究』71) 一―一 - 2002「 源氏物語 における「た り」「 り」 の文末 用法 一係 り結 びの使用頻度 と文体差 の 関連 をめ ぐって 一」 (『 甲南女子大学研究紀要 文学 。文化編』40) ――一 - 2005「 助動詞 キ と「直接体験」―地 の文 での係 り結 びの使用傾向 をめ ぐって一」 (『 国語 と国文学』8211).
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