Title
[報文]ゲットウ葉の精油成分について
Author(s)
池間, 洋一郎; 島袋, 勇; 照屋, 輝一
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 5(1): 11-16
Issue Date
1989-03-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/13998
Vol. 5 No.1 1989
報 文
ゲットウ糞の精油成分について ゲ ッ ト ウ 糞 の 精 油 成 分 に つ い て 他 聞 洋一郎●,島 袋 勇日,照 屋 輝 -I ('沖縄県工業試験場 化学室,= ㈲ インテックス)Theconstituentsofessentialoilobtainedfrom leavesofAIpiniaspeciosaK.Schum (Getto) YoichiroIKEMA暮,IsamuSIMABUKURO‥,KiichiTERUYA`
YhdustrialResearchI7WtituteofOhL'nawaprefecture,Naha,Ohil∽u)a902
IntexLTD,Urasoe,OkiTZauJa 901-21
Thecomposit,ion oftheessentialoilfrom theleavesofAIpinia speciosa K. Schum (Getto)Wereinvestgatedbygaschromatography.
1)Theessentialoilwasobtainedin0.073 yieldbysteam distillation.
2)Theoilwaschemi cally separated intothreefractions.Theneutralfraction had the characteristic aroma of Getto.The characteristic oilaroma was mainly composed of volatilecompoundsinthen-pentan:Other(70:30,50:50)fractionselutedfrom achromat一 graphiccolumn.
3)Thevolatilecompoundsincluded 8-pinene,p-cymene,camphor,a-humulene,cis-hexsenl
1
-
0
1
,1inalool,terplnen-4
-
ol,borneol, α-terpineol,myrtenol,geraniol,geranylacetate,methylcinnamate,cineole,cumina】dehyde,benzylacetonandisothymol.
Keywords;essentialoil,alplnia.getto,gaschromatography,steam distillation
キーワー ド ;しょうが科,ゲ ットウ,水蒸気蒸留,エーテル抽出,精油成分, ガスクロマ トグラ フィー, シリカゲルクロマ トグラフィー 緒 言 ショウガ科の植物ゲットウGllpiniaspesL'osa K.Schum)は九州南端か ら沖縄,台湾,南 中 国,インド,マ レーシアに分布 し,高 さ
2-3
mになる多年生の大型草本で6
0
m前後の長楕円*
沖縄県工業試験場〒9
0
2
沖縄県那覇市寄宮ト8-
3
9
系の集を持つり.全株に芳香を有 し,沖縄で は 昔か ら葉を餅の包装用や香 り付けに利用 されて いる.ゲ ットウは虫害が少なくて生長が速 く, 栽培 も容易であることか ら,大量生産の可能な バイオマス資源植物の一つと考え られる2). ゲ ットウの成分に関 しては,沖縄産ゲットウ 種子中の脂質3
),値茎について ジテルペ ン頬の 研究4)がある.また葉茎の精油成分については, -ll-他 聞 洋一駄 島 袋 勇,照 屋 輝 一一 台湾産ゲ ッ トウ葉茎5)及 び沖縄産 ゲ ッ トウ棄 6) の精油に,合計8種類の精油成分が確認 されて いるが,その他の精油成分についての報告 はほ とんど見あたらない. 本研究 は,沖縄地域の重要 なバイオマス資源 である,ゲ ットウの多 目的高度利用を目的 とす るもので,本報ではゲットウ特有の香 りを有す る精油を香料その他への利用を図 るため沖縄産 ゲットウ葉精油を構成する精油成分の存在を推 定 したので報告す る. 実験方法 試 料 試料 は,1987年 8月に高 さ約 2mのゲ ッ トウ の長 さ約
3
0
-5
0
mの葉を採取 し,-30℃の冷凍 庫に保存 して必要時に取 り出し実験に供試 した. 水蒸気蒸留 ゲ ットウ葉の水蒸気蒸留 は水蒸気発生容器 と して3リットル容三角 フラスコを使用 し,試料 投入苓器には4
リットル容三角フラスコを用い, 冷却装置 は実験室用蛇管を用 いた. 蒸留条件 は,試料500gに水 2リッ トルを加 え,一定速度で水蒸気を吹 き込んで蒸留を行い, 冷却には水道水を用いた.蒸留速度 は, 18.1m2 分で行 った.得 られた蒸留液 は,ゲ ットウ特有 の香 りを有 していた. 精油の分赦 毎回,細断 したゲ ッ トウ糞500gずつ水蒸気 蒸留を行 って留液1.5リッ トルを得 て, これを 10回繰 り返 して15リットルの蒸留液を得た. 留出液か ら精油の抽出にはエーテルを使用 し た.留出液を2回振 とう抽出 した後,エーテル 部を合わせて無水硫酸ナ トリウムで乾燥 し,ロー タリーエバポ レーターを用いて40℃,減圧下溶 媒留去を行い,淡褐色の精油が得 られた. 精油の分別 ゲ ットウ葉精油1.0gをェーテルに溶解 し,常 法により5%炭酸水素ナ トリウム溶液で処理 し て可溶部 と不溶部に分け,可溶部を5%塩酸で 微敢性 に し,エーテルで抽出 してカルボ ン酸部 南方資源利用技術研究会誌 を得た.不溶部 は更 に5%水酸化ナ トリウム水 溶液で処理 し,可容部を5%塩酸で微酸性にし, エーテル抽出を行 ってフェノール部を得た,水 酸化ナ トリウム水溶液不溶部 は, エーテルを留 去 して中性部を得た. 次に中性部0.65gを, シ リカゲル (70-230 メッシュ,Merk社製 )50gを充填 した カラム(
2
.
0×3
5
m)
に通 してn-ペ ンタン300mlで溶 出 した.各溶出区画 は溶媒を減圧下,40℃で留去 した後,得 られた残留油をガスクロ分析に供 し た.各区画の残留油 はn-ペ ンタ ン画分0.06g, 混合溶媒のエーテル10%では0.06g,エーテル3 0%では0.31g,エーテル50%では0.1g, エーテ ル100%では0.07gが得 られた. 標準試料 東京化成工業 (樵 )及 びAldrich社製 の もの をガスクロマ トグラフィー (GC)で純度 を調 べた後使用 した. 分析条件 精油成分の分析 はGCで行 った. ガス クロマ トグラフ (GC-9A島津製)及 びデータ処理装 置 クロマ トパ ックR-3Aを用 い,カラムは島津 溶融 シリカキャピラ リーHicapCBP-20 (化学 結合型PEG-20M),内径0.33mmx50mおよびC BP-1,内径0.53皿×25mを使用 した. 測定 は,前者 においては, スプ リット比3
8:
1,55℃ 2分間保持後,200℃ まで, 後者 にお いてはスプ リッ ト比8 :1,50℃ 2分間保持後, 200℃まで,共に 3℃分の速度で昇温 させて行 っ た.注入口温度 は250℃, キ ャ リアーガスには ヘ リウムガスを用 い,検出器 はFIDを使用 した. 成分の推定には, これ ら強極性及び無極性2 種のキ ャピラリーカラムを使用 して標準試薬の 保持時間の一致で行 った.推定成分の相対含量 は,CBP-20カラムの ピー ク面積パ ーセ ン トか ら求めた. 結果と考案 精油の性状vol. 5 No.1 1989 精油 は表1に示す よ うにゲ ッ トウ葉4・8kgか ら3.54gの精油が得 られ収油率0・073%の結果 を 示 した.色 は淡褐色 を呈 してお り, ゲ ッ トウ特 有 の強 い香 りを有 していた. 挿油の成分 の検索 精油 をGC測定 し,CBP-20カラム (極性 ‥強) による結果 を図1に,CBP-1カ ラム (極性 : 無 )による結果 を図2に示 した. これ らの クロマ トグ ラムか ら,CBP-20カ ラ ゲットウ葉の精油成分について 表1 ゲットウの柵油含有量 ゲ ッ トウ新鮮重量 4.8k9 精 油 重 量 3.529 収 油 率 0.073形 比 重 (d……) 0.9476 図1 強極性カ ラムによるゲ ットウ精油の クロマ トグラム 使用 カ ラム :CBP-20.0.33皿 ×50m 19 器 3)3I (令) 図2 無極性カ ラムによるゲ ットウ精油の クロマ トグラム 使用 カ ラム :CBP-1,0.53m×25m -1
3-池 問 洋一郎,島 袋 勇.照 崖 輝 - -ム条件 で は少 な くと も105成 分が,CBP-1カ ラ ム条件 で は92成分 が認 め られ た. 化学処理 を行 って得 られ た各分画液 の うち. 図 1に認 め られ た精 油 の主要成分及 びゲ ッ トウ 特 有の香 りが中性部 に存在す ることか ら. 中性 部 の シ リカゲル クロマ トグラフ ィーを行 って, 各溶 出区画 に存在 す る成 分 の推定 を行 った.
川
n-ペ ンタ ン 溶 出区画 本区画 の主要成分 と してEgllの ク ロマ トグラ ムの ピー クNo.32,41, 52及 び微 小 ピー クNo. 5,12が認 め られ,特 にNo.41は全量 の88%の 含量 を示 した.No.41の ピー クは,GCの2条 件 にお け る標準物 資 の保持 時間 との比較 によ り a-7ム レン,N0.5は β-ピネ ン,No.12は p-シメ ンと推定 した. 南方資源利用技術研究会詰 れ,No.16は シス-ヘ キ セ ン-1-オ ー ル,No.53 は酢酸 ゲ ラニル と推定 した. (3) ∩-ペ ンタ ン :エーテ ル(70:30)溶 出区 画 本 区画 に は, ゲ ッ トウ葉 の特有 の香 りと関係 が深 い と思 われ る成分 が存在 し, また,全 中性 部重量 の41%が この区画 に存在 して いた.図1 上 の精 油主要成 分No.9,27,29,34,42, 5 6,79,84,85,87,89の ピー ク及 び そ の他 の 微量 成分 の ほ とん どが この区画 に存在 していた. 標準試薬 の保持 時間 の比較 によ り,N0.9は, シネオール,No.27はD-カ ンフ ァー,No.29は ル,No.42はボルネ オ - ル,No.56は ク ミンア ルデ ヒ,No.87はけい皮酸 メチル と推 定 した. その他 の含有量 の少 な い成分 の ピー クNo.9, 41,56,68,82, 101の うち,No,68は ベ ン ジ 表2ゲットウ精油中の成分組成 No E2日のと一クNo 図2のヒ-クNo. 1 5 13 ? 9 lg 3 12 18 4 16 7 5 27 30 6 29 26 7 34 35 8 41 b5 9 42 33 0 46 36 成 分 ′∫ ヒネン シネオール P シメン シスーヘキセン- 1-オール D カンファー リナロール テルヒネン-4-オール α-フムレン ボルネオール α テルヒネオール 53 Ll6 酢酸ゲラ二ル 2 56 41 3 59 37 4 67 43 5 68 40 6 87 45 クミンアルデヒド ミルテノール ケラ二オール ベンジルアセトン けい皮酸メチル 101 48 イソチモール 項 跡 48 03 0.1 6 1 7.1 2.0 29 211 2.0 0.3 2.5 03 2.0 3 1 0.7 (2) ∩-ペ ンタ ン :エ ーテル (90:10) 溶 出 区 画 本区画 の主要 ピー クと して図1上 のNo.9. 56,84が認 め られ た.GC分 析 の結 果,N0.9 は シネオール,No.56は ク ミンア ル デ ヒ ドと推 定 した, この他 に比較 的小 さい ピー クNo.12, ルアセ トン,No.101はイ ソチ モ ー ル と推 定 し た, (4) n-ペ ンタ ン :エー テル (50:50) 溶 出 区 画 本 区画 に は, ゲ ッ トウ特有 の香 りが認 め られ るが,明 らか に ペ ンタ ン :エーテ ル (70:30) 16,22,32.49,50,78,79の8成 分が認 め ら 溶 出区画 よ りも香 り強度 が弱 く,香 りの質 もやVol.5 Nol1989 や異なっていた. 図 1のGCクロマ トグラム上 の ピークNo.38,
4
2
,4
4
.4
6
,59,6
3
,6
7
が確認 され, この うち No.42はボルネオール,No.59は ミルテノール,No
.
6
7
はゲラニオールと推定 した. (5)エーテル溶出区画 本区画 は,図 1におけるピークNo.75の成分 が クロマ トグラムの上で量的に最 も大 きい面積 を占め,約38%の値を示 した. 本溶出区画のGCクロマ トグラムの特徴 と し て,分析温度が高温度側170℃以降 に成分 ピー クが出現す る傾向を示 した.No.75の ピ-クの 他 にNo.87,89の ピークが確認 され,ピークNo. 75は,図1の分析条件で はβ-フユネチルアル コールの保持時間 と一致 したが,図2の分析条 件では,他の ピ-クに重複 して成分の推定 まで にはいた らなか った. 以上の結果,各溶出区画か ら合計17種の成分 の存在を推定 し,推定 した成分を表2に示 した. 17成分以外の他の ピークは,文献等の手がか り が得 られなか ったことや,標準試薬が入手でき なか ったことか ら推定で きなか った. 化学処理を行 って分画 したカルボ ン酸部並 び にフェノール部 については,ゲ ッ トウ特有の香 りが官能的に認め られなか ったので, ここでは 検討 しなか った. 推定 した17成分の うち,ゲ ットウ精油中にボ ルネオ-ルが最 も多 く21.1%占め,その他 の主 要成分 シネオール,D
-カ ンファー, リナ ロー ル,けい皮酸 メチルの含量を合わせると全体の4
2
%
を占めていた.推定 した成分 の うちβ-ど ネン, シネオール,D
-カ ンファー, けい皮酸 メチルはすでに台湾産ゲ ッ トウ5)に認 め られて お り, リナロール,ボルネオ-ル,ゲラニオー ル, a-テル ピネオール,酢酸 ゲ ラニルの成分 は,ゲ ットウと同 じショウガ科の シ ョウガ6)に 認め られている成分で もある. 外聞 7)は沖縄産ゲ ットウ中に,台湾産 ゲ ッ ト ウに認め られたα-ピネン, β-ピネン,カンファ I,カ ンフェンの他 に, リモネ ン, p-シメ ン ケ ソトウ葉の精油成分 につ いて の2成分の存在を報告 している.著者 らは,同 じ沖縄産ゲ ッ トウ葉精油に確認 した17成分の う ちβ-ピネ ン,カ ンファー, p-シメ ンは確認 し たが, a-ピネ ン, カ ンファー, リモネ ンの3 成分 は精油中に微量 に存在 あ るいはGC分析 に おいて他の成分の ピークに重 なるためか,その 存在を推定で きなか った.また, これ ら6成分 のなかではp-シメンが最 も多 く6.
0
2
%
含 まれて いると報告 されている6)が,著者 らによればG
Cによる分析条件が違 うもののp-シメ ンの量 は 少な く0.3%であった. これ らの外聞の報告 との差 は,精油の分離条 件すなわちl【司の蒸留に使用す るゲ ットウ量, 水蒸気蒸留機の構造及び蒸留液か ら精油を分離 す る溶媒抽出操作の有無及びゲ ッ トウの採取時 期の違 い等の理由か ら,得 られた精油の成分組 成が異なったためと考え られる. 要 約 ゲ ットウ葉精油の収油率及び構成成分を明 ら かにす る目的で,葉を水蒸気蒸留後エーテルで 抽出 して精油を得た. さらに精油の中性部を分 別 して これを2種類のキ ャピラリーカラムを使 用 してGC分析を行 い,精油成分存在 を推定 し た結果,次の結果が得 られた. 1)ゲ ットウ薫の収油率 は,0.073%であ った. 2)ゲ ットウの特有番 は中性部に存在 し, シリ カゲルクロマ トグラフィーのn-ペ ンタン : エーテルの混合比70:30及び50:50の溶 出区 画に存在 した. 3)ゲ ッ トウ葉精油の構成成分 は,少な くとも 105成分が存在 し.中性部にテルペ ン系炭化 水素類4種 (β-ピネ ン,p-シメ ン,D-カ ン ファー,
a-フム レン) ア ル コール類7種 (シスー-キセ ソー1-オール, リナ ロール, チ ル ピネ ン-4-オール, ボルネオ-ル, α-チ ル ピネオール, ミルテノール, ゲ ラニオー ル)ェステル頬 2種 (酢酸 ゲ ラニル, けい 皮酸 メチル) その他 シネオール, ク ミンア ルデ ヒ ド, ベ ンジルアセ トン, イ ソチモ 15 ソチモ-他 聞 洋一郎.島 袋 勇.照 屋 輝 -ルの計17成分の存在を推定 した.
文
献
1.平良喜代志, (1987)「沖縄の樹木」404.2.
照屋照一,他聞洋一郎 (1987)沖縄県技術 情報,ll,1.3.KozoHokama(1966)Bull.Artsand Sci.Diy.,RyukyuUniv,9.13.
4.ItokawaH,MoritaM,Mihashis,(1966)
Tokyocolt.Phamacy.chem.Bull,28. (ll) 5.奥田治 (1975) 「香料化学総覧1