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末廣昭・田島俊雄・丸川知雄編『中国・新興国ネクサス―新たな世界経済循環―』(紹介)

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Academic year: 2021

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(1)

末廣昭・田島俊雄・丸川知雄編『中国・新興国ネク

サス―新たな世界経済循環―』(紹介)

著者

上垣 彰

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

60

4

ページ

81-81

発行年

2019-12

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00051528

(2)

19-10-362 081_紹介-上垣彰様.mcd Page 1 19/11/28 14:04 v5.51

末廣昭・田島俊雄・丸川知雄編

『中国・新興国ネクサス

―新たな世界経済循環―

東京大学出版会 2018 年 v + 369 ページ 上 垣 彰 本書は,「中国と新興国の経済関係の現状を現場 に近い視点から明らかにするとともに,今後の課題 を明らかにすること」(10 ページ)を目的として書 かれた著作である。以下,1 章ごとに紹介していく ことにしよう。 第 1 章(伊藤亜聖)は,「一帯一路」構想の概要を 時系列的に整理し,さらに,やや詳しい研究サーヴェ イを行った後,2013 年以降の同構想の動きを,新興 国・途上国全般を範囲としてとらえるという視点か ら検討している。著者は,「一帯一路」が「濃淡ある 進展」と「インフラ一辺倒からの多角化の模索」と でもいうべき変貌をみせつつあると結論づける(68 ページ)。第 2 章(丸川知雄)は,「中国との貿易関 係が相手国の GDP と製造業にどのような影響を与 えているかを統計データをもとに明らかに」(75 ページ)したものである。その結論は,新興国の中 国向け輸出の伸び率がその国の GDP 成長率に小さ いながらも有意な正の影響を与えているが,中国の 輸出増大は輸入先国の製造業の衰退を招く可能性が あるというものである。第 3 章(末廣昭)は,「中国 化」をキーワードに,そのプロセスを,東南アジア 地域で検証することを目的としている(100 ページ)。 全体を総括して著者は「2015 年以降になると,中国 と ASEAN 諸国の経済関係は次第に『WIN = WIN』 の関係ではなくなりつつある」と主張する(130 ペー ジ)。第 4 章(宮島良明・大泉啓一郎)は,第 3 章と ほぼ同じ題材を扱いながら,より詳細な統計分析に 主眼をおいている。興味深いのは,中国からの工業 製品の流入が ASEAN 諸国の工業化におよぼす負 の影響を表す指標を計算し,それによって ASEAN 諸国を 3 つのグループに分類している点である (157∼158 ページ)。 第 5 章から第 9 章までは,商品・産業部門別の分 析がなされている。第 5 章(李海訓)は,中国の農 産物需要の増加が輸入先国(新興国)にどのような 影響を与えているかを検討している。第 6 章(堀井 伸浩)は,中国の石炭輸入国としての台頭が国際石 炭市場の秩序にもたらしたインパクトを分析してい る。第 7 章(丸川知雄)は,中国の鉄鋼超大国化と 輸出競争力の強化が,「果たして中国政府の支援策 の結果なのか,それとも中国の鉄鋼メーカーの生産 性上昇を反映しているのか」(275 ページ)という問 題に答えようとするものである。著者によれば,後 者の可能性を否定できないという(277 ページ)。第 8 章(田島俊雄)は他の章とは異なり,長期的な視野 から,中国におけるセメント産業の発展を包括的に 描いたものである。本書全体の問題意識との関連で は,2012 年以降,セメント業界においても「走出法」 戦略,すなわちプラント受注や労働輸出を含む国際 的展開を提唱する意見が強くなっている状況を紹介 している(319 ページ)。第 9 章(丁可・日置史郎) は,生産・流通面での産業高度化の動きは,「中国の 産業集積による新興国市場開拓に,どのような影響 を与えている」のかという問題に,義烏の雑貨集積 と深圳の携帯電話集積とを事例にして,答えようと するものである(326 ページ)。終章(丸川知雄)は, 直近の米中対立を念頭に,トランプの保護主義への 急旋回は,中国・新興国ネクサスを強め,中国の台 頭をかえって速めると予想している。 本書は,「一帯一路」戦略を,それ自体としては(第 1 章を除いて)詳しく論じずに,中国・新興国ネクサ スというより広い文脈の中において分析し,そうす ることによって中国と世界経済との関係の今後を占 おうとするものである。個別産業分野の詳細な分析 を含んでいる点が類書にない特質をなしている。な お,「ネクサス」という語は,広汎な研究課題を想起 させるうまいネーミングだとは思うが,執筆者全体 に浸透しておらず,せっかくの言葉が宙に浮いてい るきらいがある。 (西南学院大学経済学部教授) 『アジア経済』LⅩ-4(2019.12) ⓒ IDE-JETRO 2019 https://doi.org/10.24765/ajiakeizai.60.4_81 紹 介

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