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ニューラルネットワークを利用したデジタルカメラによる粉じん濃度測定の実用化

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(1)土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. ニューラルネットワークを利用した デジタルカメラによる粉じん濃度測定の実用化 進士 1正会員. 2学生会員. 正人1・岸田. 展明2. 山口大学大学院理工学研究科(〒755-8611 山口県宇部市常盤台2-16-1) E-mail: [email protected] 山口大学大学院理工学研究科(〒755-8611 山口県宇部市常盤台2-16-1) E-mail: [email protected]. トンネル建設など坑内作業中に発生する粉じんは,建設作業員がそれを吸引することでじん肺症を引き 起こす原因のひとつと言われている.平成20年より,半月に1回の粉じん濃度測定がトンネル施工管理者 に義務化された.従来,粉じん濃度測定にはデジタル粉じん計がよく使用されるが,測定に時間がかかる ことや測定機器固有の換算係数を設定する必要があることからより迅速で簡単な計測法が望まれていた. そこで,著者らはデジタルカメラを用いて坑内に浮遊する粉じん濃度の測定方法を考案した.しかし,実 用化に向けての課題も明らかとなってきた.本研究では,フラッシュ撮影画像から粉じんの反射画像のみ を抽出したうえで統計分析し,その結果をニューラルネットワークに学習させることにより,従来法以上 の精度を有する粉じん濃度測定方法を提案する.. Key Words : neural network, density measurement, suspended dust, mountain tunnel, digital camera. 1.. はじめに. 簡易さから相対濃度測定法が利用され,ガイドラインで は光散乱式デジタル粉じん計(以下,本文中では“デジ タル粉じん計”と略称する)での測定が義務付けられて いる.デジタル粉じん計は,測定管内に吸引した坑内空 気にレーザー光を照射すると,粒子の物理的性質が同一 であればレーザー光の粉じんによる散乱された光の強さ が粉じん濃度に比例すること5)を利用し,散乱光の強さ から浮遊粉じんの濃度を換算する測定方法である.しか し,価格が高価なこと,設置地点で継続的に10分以上の 測定を行わなければならないことなどにより,より安価 で簡単な粉じん濃度測定方法が望まれていた. トンネル坑内のような閉空間において,カメラでフラ ッシュ撮影を行うと,坑内の浮遊粉じんなどがフラッシ ュに反射して写真-1(a)のトンネル坑内写真が写真-1(b) の写真のように白斑として撮影されることはアナログカ メラの時代からトンネル技術者の中では知られており, そのためフラッシュを使用せずに明瞭な坑内写真を撮影 する種々の工夫がされてきた.それに対して,著者らは あえてフラッシュ撮影して得られた画像(以下,本文中 では“フラッシュ撮影画像”と略称する)を利用して粉 じん濃度を測定する方法を考案した6).この測定方法考 案の背景には旧来のアナログカメラでは写真フィルムに 撮影し,現像,焼き付けと画像を得るのに時間がかかる. トンネル建設時に発生する代表的な浮遊粉じんには, 発破や機械掘削により地山を掘削する際に発生する掘削 粉じんと,掘削後,地山面に吹付けコンクリートを吹き 付ける作業時に発生する吹付け粉じんがある.これらの 粉じんの大部分は,人体に一旦吸引されても気管支の再 喀出機能により体外に排出される.しかし,10m程度 以下の微小な粉じんは排出されず,肺胞内に滞留し,や がて肺胞を充填する.そのため,場合によっては,肺の 主要な役割である呼吸機能が失われ,「じん肺症」を引 き起こす原因となると言われている1), 2).じん肺症を未 然に防ぐ目的で,厚生労働省は,トンネル坑内の作業員 を対象とした「ずい道等建設工事における粉じん対策に 関するガイドライン」(以下,本文中では“ガイドライ ン”と略称する)を定めた.それに基づき,平成20年3 月より,トンネル坑内の所定の位置において半月毎の定 期的な粉じん濃度測定が義務化された3). 粉じん濃度測定方法には,粉じんの粒子数濃度を測定 する粒子数濃度測定法,光の散乱や吸収を利用した相対 濃度測定法,及び,粉じんを含んだ空気をろ紙を通して 一定量吸引し,ろ紙の質量の増加量を求める質量濃度測 定法の3種類がある4).トンネル建設工事では取り扱いの. 194.

(2) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. (a)フラッシュ無し. (b)フラッシュ有り. 写真-1 フラッシュの有無による坑内写真の違い. のに対し,近年のデジタルカメラでは撮影したその場で 画像を確認できること,画像自体もデジタル化されてお り画像処理しやすいことなどのデジタルカメラの急激な 性能向上と普及がある.加えて,デジタル粉じん計を用 いた測定方法に比べ測定機器としてデジタルカメラを使 用するため安価で,その上,粉じんの浮遊状況写真とし ても利用できる特徴を有する.しかし,提案した方法6) は,写真画像に写る粉じんの個数を計数し,その総数に あらかじめ調べておいた粉じんの粒度分布をもちいて粉 じん濃度に換算するため,精度は保障できるものの実用 的に利用するには手間がかかっていた. 本論文では,著者らが提案した粉じん濃度測定方法の 精度向上と更なる実用化を目指し,人間の刺激と反応に 関する脳神経組織の働きを数学的に模擬したコンピュー タアルゴリズムであるニューラルネットワークを用いた 粉じん濃度測定方法7)を提案する.その際,フラッシュ 光の照射角度の違いによる輝度の変化が粉じん濃度測定 精度に大きく影響を与えることが分かった8)ため,画像 全体の輝度の変化を極力除去する画像処理を行ったうえ でニューラルネットワークを適用する手順を新たに考案 した.そして,適用性を検証するため,実際に吹付けコ ンクリート作業中のトンネル坑内において,デジタル粉 じん計と同期させながらフラッシュ撮影を行い,ニュー ラルネットワークで推定した粉じん濃度とデジタル粉じ ん計で測定した粉じん濃度を比較した.その結果,デジ タル粉じん計と本研究で推定したそれぞれの粉じん濃度 の間に高い相関を確認した.. 2.. と,粒子の粒径が照射光の波長と同程度以上の大きさの 粉じんによってミー散乱9)が起こり,散乱光として浮遊 粉じんが観測できる.この現象はチンダル現象としてよ く知られた現象であり,この現象を利用して浮遊粉じん が多く発生する作業空間を暗くし対象に強い光を照射す ることで浮遊粉じんの発生状況を観測したり,カメラで 写真に記録する方法が提案されている10).そして,さら に,散乱光を撮影した画像から散乱光強度,輝度を解析 し,粉じんの個数,濃度及び粒径を測定する方法が研究 されている11), 12).本研究では,デジタルカメラでフラッ シュ撮影し,フラッシュ光による粉じんの散乱光を記録 し,粉じん濃度の測定に利用した. (2) デジタルカメラを用いた粉じん濃度測定原理 一般に,カメラのフラッシュ光の波長は0.5m付近の 波長域にピークを持つ13).トンネル坑内では0.5m程度 以上の粉じんが多数浮遊している6)ことから,先に述べ たミー散乱により0.5m~数m程度の浮遊粉じんがカメ ラに写り,写真-1(b)のような写真が撮影されると考え られる.ここで,散乱光強度,すなわちカメラに写る浮 遊粉じんの明るさは,ほぼ粒子径の2乗に比例する13). そして,カメラに撮影される浮遊粉じんの大きさは,実 際の浮遊粉じんの大きさとは無関係にカメラの絞りによ る回折現象によって直径が決まる. また,浮遊粉じんがカメラに写る領域はフラッシュの 発光量に依存し,レンズの極めて近傍付近に限定される ことがわかっている6).また,デジタル粉じん計が対象 とする浮遊粉じんの粒径分布は,0.1m~10m程度とい われている.そのため,カメラのフラッシュ光で散乱す る粒子の粒径分布とデジタル粉じん計が対象とする粒径 分布が異なる.このように対象とする粒径分布に若干の ずれを有する両者の測定結果からニューラルネットワー クを構築するため,適用する現場環境によっては誤差が 生じる可能性もある.. カメラを用いた粉じん濃度測定方法の現状. (1) カメラを利用した粉じんの測定 建設工事中のトンネル坑内などの浮遊粉じんが存在し ている暗い空間内でレーザー光などの強い光を照射する. 195.

(3) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11 表-1 デジタルカメラによる粉じん濃度測定方法の比較. 測定方法 粒子抽出換算濃度法. 統計量換算濃度法. 6). 6). ニューラルネットワーク を用いた粉じん濃度測定 方法. 7),8). 測定概要 フラッシュ撮影画像に 写る粉じんの個数から 粉じん濃度に換算する 方法 フラッシュ撮影画像を 処理し算出した特徴量 と粉じん濃度との相関 関係を調べ,粉じん濃 度に換算する方法 フラッシュ撮影画像を 処理し算出した特徴量 と粉じん濃度で学習さ せて最適化したニュー ラルネットワークを用 いて粉じん濃度に換算 する方法. (3) デジタルカメラを用いた粉じん濃度測定方法の概 要と問題点 写真-2に示すように,デジタルカメラを用いた粉じん 濃度測定には,携帯可能な大きさのブラックパネル (900×1200mm)に向かってフラッシュ撮影した画像が 用いられる.表-1に,これまで著者らが提案したデジタ ルカメラを用いた粉じん濃度測定方法の比較一覧表を示 す.この表に示すように,著者らが提案した方法には, 大別して「粒子抽出換算法」,「統計量換算法」がある. 粒子抽出換算法6)は,デジタルカメラのフラッシュで撮 影される浮遊粉じんの粒子数と粒度分布から浮遊粉じん 量を算出し,粉じんが撮影できる範囲の体積で除すこと で粉じん濃度に換算する.また,統計量換算法は,フラ ッシュ撮影画像全体の輝度の分散値を算出し,あらかじ め求めておいた分散値と粉じん濃度の換算式を用いて粉 じん濃度に換算する.この方法は,粒子抽出換算法に比 較して測定精度は劣る.しかし,粒子抽出換算法では粒 子数を計数する必要がありその自動化のアルゴリズムは 複雑なものとならざるをえないのに対し,統計量換算法 はフラッシュ画像から粉じん濃度を算出するまでが簡単 な画像処理で済む.従って,本研究では簡単な画像処理 から粉じん濃度を算出する統計量換算法を用いると同時 に,ニューラルネットワークを新たに採用することで粉 じん濃度算出の精度向上を図る.. 3.. ニューラルネットワークの構築. (1). ニューラルネットワークの適用 ニューラルネットワークとは,人間の刺激と反応に関 する脳神経組織を数学的に模擬したコンピュータアルゴ. 196. 事前準備 対象粉じんの粒度 分布とデジタルカ メラの撮影範囲を 調べる室内試験 特になし. 特徴 粉じんの計数に手間はか かるが,正確な粒度分布 を用いることで高い精度 が期待できる. 処理が簡単で,処理手順 を自動化することができ るが,測定精度が低い.. 特になし. ニューラルネットワーク を利用することで,処理 手順を自動化することが できる上に,学習機能を 有するため高い精度が期 待できる.. 写真-2 現場適用状況. リズムである.これは,入力した多数の刺激(特徴量) による反応を経験として自動的に学習するため,定式化 やモデル化が困難な事象の判別解析に適している.特に, ニューラルネットワークは学習時に与えた入出力値に誤 差を含んでいる場合も許容誤差を適度に設定することに より,その範囲内でなめらかでかつ連続な入出力関係が 実現されるため,誤差に強いコンピュータアルゴリズム を構築できる特徴も有している14). ニューラルネットワークを用いて従来より高精度な粉 じん濃度を換算するためには,粉じん濃度の変化に関連 が深い刺激(特徴量)をフラッシュ撮影画像から入力値 としてニューラルネットワークに学習させる必要がある. これまでの研究により,フラッシュ撮影画像は,粉じん 濃度が高いほど粉じん数が多く写り,画像全体が白色で 輝度の高い部分が増えることが分かっている.そこで, フラッシュ撮影画像の輝度を基に算出した特徴量を刺激 として入力層に入力し,出力層から出力された反応(粉 じん濃度)と別途デジタル粉じん計で測定した粉じん濃 度との誤差を計算した.そして,この誤差が最小になる 様に出力層から入力層の方向にネットワークの重みを修.

(4) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. 入力層. 中間層. 出力層. 分散値. 粉じん濃度. 平均値. 小ブロック毎の画像ベクトルの大きさ. 小ブロック内の最小値で差分. 画像を小ブロックに細分化. グレースケール化. フラッシュ撮影画像. デジタル粉じん計での粉じん濃度. ニューラルネットワーク. 特徴量. 比較 重みを調整. 図-1 ニューラルネットワークを利用した粉じん濃度測定方法の概略図. (a)原画像写真. (b)カラーコンター. (c) 差分無し. (d) 差分有り. 図-2 差分有り無しの比較 フラッシュ撮影画像. 正する誤差逆伝播法を使用する階層型ニューラルネット ワークを構築した(図-1参照).. 小ブロック. y. n 1. m. ステップ(2)図-3に示す様に,画像内に m  n ピク. 197. m×n. x. a  [1,2,3, , i, , m  n] 図-3 画像中の小ブロックと画像ベクトル. 輝度. 輝度. (2) 特徴量の検討 図-2(a)にフラッシュ撮影時の原画像写真を示す.写 真からわかるように,写真は全体がほぼグレーで一様, その中に淡白に粉じんが撮影されている.しかし,この 画像をグレースケール化した図-2(b)から明らかなよう に,輝度分布は画像中心部が高く,周辺部が低い分布を 持つ.なお,この図ではグレースケールをカラー表示で 強調して表現している.これはブラックパネルへのフラ ッシュ光照射の影響である.この画像をそのまま粉じん 濃度測定に適用する場合,背景として利用しているブラ ックパネルに対するフラッシュ光の輝度が解析結果に影 響を与えることが考えられる.また,輝度の高い領域は ブラックパネルとフラッシュ光との照射角度により,そ の位置や範囲が変化するため,フラッシュ光の照射角度 の影響を低減する方法をあらたに考案する必要が生じた. そこで,ブラックパネルに反射するフラッシュ光の影 響を除去し,粉じんの反射光のみの輝度を抽出するため に,以下に述べる前処理を行いニューラルネットワーク への入力データとした. ステップ(1)フラッシュ撮影された画像全体をグレ ースケール化し,輝度値を1ピクセルあたり0~255の数 値に変換する.. i. min(a). a[1] a[2] a[3]. a[i ]. a[1] a[ 2] a[3]. a[i ]. 図-4 画像ベクトル成分の最小値差分. セルの小ブロックを作成する.その結果,画像全体は. k  l 個の小ブロックの集合体となる. ステップ(3)それぞれの小ブロック内のピクセルの 輝度値を m  n 次元の画像ベクトルに変換する. ステップ(4)図-4に示す様に各画像ベクトル内の最 小値 min(a) j で,画像ベクトル成分を差分し,小ブロッ ク j 毎にフラッシュ光による輝度分を除去する. ステップ(5)小ブロック毎の画像ベクトルの大きさ を式(1)を用いて算出し,小ブロック j の輝度とする.従.

(5) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. って,画像全体は k  l 個の小ブロックの輝度の変化分 布a. が得られる. ( j). m n. a. ( j). .  a  min(a) j i. (1). i 1. 図-2(c)と(d)に,小ブロック化後に画像ベクトルの最 小値で差分した結果と差分しない結果の比較を示す.図 からわかるように,差分することでフラッシュ光の輝度 の影響を適切に除去できていることがわかる.. 写真-3 一眼レフデジタルカメラとリングフラッシュ 表-2 デジタルカメラの撮影パラメータ. 現場実験によるニューラルネットワークの適 用検討. (1). 現場実験の概要 現場実験は,山岳工法発破掘削(補助ベンチ付全断 面)で施工している2車線道路トンネル内の吹付け作業 中に実施した. フラッシュ撮影はブラックパネルをレンズから1.5mの 位置に設置し,ブラックパネルに向かってデジタルカメ ラ(PENTAX製“k-m”)を床上1.3mの高さに設置し実 施した.実験はブラックパネルにできるだけ均一にフラ ッシュ光を照射させるため,写真-3に示すリングフラッ シュを用いて,レンズの中心から一様な明るさのフラッ シュ光が発光するように撮影を行った.ここで,実験で 使用したデジタルカメラの撮影パラメータを表-2に示す. デジタルカメラでの撮影と,デジタル粉じん計(柴田 科学製“LD-3K2”)を同期させるため,1分間隔のデジ タル粉じん計の測定に併せてフラッシュ撮影を行い,合 計343回のフラッシュ撮影画像とその時の粉じん濃度を 測定した.表-3にデジタル粉じん計の測定精度表を示す. (2). ニューラルネットワーク 図-1に示すように,本論文で採用したニューラルネッ トワークは,階層型ニューラルネットワークモデルであ り,入力層1,中間層3(ニューロン数は5,8,5),出 力層1の総計3層モデルである.また,ニューラルネット ワークの学習には誤差逆伝搬法を用いた.そして,画像 処理ではフラッシュ撮影画像全体を32×32ピクセルの小 ブロックに細分化して式(1)により算出した小ブロック の輝度の変化分布の平均値,分散値をニューラルネット ワークの入力値とし,粉じん濃度を出力値とした.. デジタルカメラ. PENTAX k-m. フラッシュ. リングフラッシュ 3872×2592ピクセル. 撮影画素 レンズF値. F8.0. レンズ焦点距離. 40mm. シャッタースピード. 1/125 秒. 絞り ISO感度. F8.0. ホワイトバランス. 自動調整なし. 800. 表-3 デジタル粉じん計の測定精度表. デジタル粉じん計 質量濃度変換係数 測定精度 測定感度 測定範囲. 撮影枚数(枚). 4.. 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0. 5). LD-3K2. 15). 0.002 mg/m /cpm 較正粒子に対して±10%. 3. 3. 1CPM = 0.001 mg/m 3. 0.001~10.00 mg/m. 再現性用 汎用性用. デジタル粉じん計濃度 (mg/m3). 図-5 粉じん濃度の頻度分布. 重要である.そのため,学習のための入力データは,適 用される粉じん濃度の範囲より広いことが望ましいとい われている16).図-5に,本実験においてデジタル粉じん 計で測定された粉じん濃度の頻度分布を示す.この図か ら,今回のガイドラインで基準値として定められており, 高い測定精度が求められる3.0mg/m3前後に幅広くデータ が採取できており,ニューラルネットワークの学習に使. (3). 実験結果 ニューラルネットワークの機能を精度よく発揮させる ためには,ニューラルネットワークへの効果的な学習が. 198.

(6) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. 10.0. 換算粉じん濃度 [mg/m3]. 換算粉じん濃度 [mg/m3]. 10.0. 8.0. 6.0. 4.0. 2.0. 統計量換算濃度法 ニューラルネットワーク. 8.0. 6.0. 4.0. 2.0. 0.0. 0.0 0.0. 2.0. 4.0. 6.0. 8.0. 0.0. 10.0. デジタル粉じん計での粉じん濃度 [mg/m3]. 図-6 再現性試験結果. (赤×印)を併せて示す. ニューラルネットワークの相関性を調べるため,これ. . i. .  x yi  y. i 1.  x n. i. x. . 2. .   x   y   . 6.0. 8.0. 10.0. なお,相関係数  は1.0に近いほど相関性が強く測定精 度が高いことを表している.本研究で提案するニューラ ルネットワークを用いた粉じん濃度測定方法では,再現 性試験結果と汎用性試験結果の相関係数はそれぞれ0.93, 0.77となった. この結果から,ニューラルネットワークの学習は十分 相関性が取れており,学習に基づく汎用性試験は信頼の 高い結果が得られたことがわかる.なお,参考までに, 統計量換算法での相関係数は0.01と極めて低い結果であ った. これらのことから,本論文で提案したニューラルネッ トワークの信頼性は十分に高いものと確認できた.した がって,既往の研究で提案した統計量換算濃度法と比べ て本論文で考案したニューラルネットワークを適用した 粉じん濃度測定方法の方がその取扱いが簡便であると共 に精度と実用性が高いことが確認できた.. 5. まとめ トンネル坑内において,フラッシュ撮影を行うと浮遊 粉じんが写真に白斑として写る.この現象を利用した粉 じん濃度測定方法の実用化を目指して,ニューラルネッ トワークを用いた粉じん濃度測定方法を考案し,フラッ シュ光の輝度を取り除く画像処理を行うと共に,粉じん 濃度測定の自動化と測定精度の向上を図った. 現場実験の結果,本論文で提案した粉じん濃度測定方 法は従来の統計量換算濃度法に比べ高い相関を示し,測 定精度の向上を確認することができた. 今後の課題として,実用的に安定した粉じん濃度測定 を行うため必要とされるフラッシュ撮影画像の最適枚数 の検討やSVM(サポートベクターマシン)17)などのより 最新の識別手法を用いた粉じん濃度測定方法の検討など. らの図の相関係数  は式(2)から求めた..  x. 4.0. 図-7 汎用性試験結果. 用するデータとして十分に有用であることがわかる. そこで,フラッシュ撮影画像343枚中273枚を粉じん濃 度分類別に無作為抽出し,これらの画像ごとに求めた平 均値,分散値と,撮影と同時に測定したデジタル粉じん 計の粉じん濃度をニューラルネットワークに学習させた. その結果,学習に使用したフラッシュ撮影画像から算出 された粉じん濃度とデジタル粉じん計で測定したそれを 比較した結果を「再現性試験結果」と呼ぶ.図-6にその 結果を示す.この図から両者はよく一致し,良好な学習 ができていることがわかる.次に,ニューラルネットワ ークの学習では未使用のフラッシュ撮影画像70枚のデー タを同様の手順で平均値と分散値を求め,学習を終えた ニューラルネットワークに入力し粉じん濃度に換算して 実測のデジタル粉じん計での粉じん濃度と比較した.そ の結果を「汎用性試験結果」と呼ぶ. 図-7にその結果 を示す.この図から汎用性の確認に用いたデータは少な いもののほぼ相関が取れていることがわかる.なお,図 -7には,既往の研究で提案した統計量換算法と比較する ために,換算係数 K 6)から粉じん濃度に換算した結果. n. 2.0. デジタル粉じん計での粉じん濃度 [mg/m3]. (2). i 1. :デジタル粉じん計により測定した粉じん ここで, x 濃度 x の標本平均. y :換算粉じん濃度 y の標本平均  x :デジタル粉じん計により測定した粉じん 濃度 x の標準偏差  y :換算粉じん濃度 y の標準偏差. 199.

(7) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,194-200,2010.11. を行っていきたい.加えて,撮影方向に設置したブラッ クパネルを用いずに,粉じん濃度を測定する方法の開発 や,携帯電話機に内蔵されたLED照明を用いたカメラ撮 影による粉じん濃度測定も検討していきたい.. 8). 9). 謝辞:本研究の遂行にあたって,現場実験に多大なるご 協力を頂いた飛島建設株式会社 筒井隆規氏,平間昭信 氏をはじめ,関係各位に深く感謝致します.なお,本研 究は,科研費(19656107および21560486)および中国建 設弘済会技術開発支援の助成を受けたものである.. 10). 11). 参考文献 1) 2). 3) 4) 5) 6). 7). 12). (財)労働科学研究所:日本のじん肺と粉じん公害 ―その予防と対策のために―,pp.77-78,1977. 名古屋 俊士:粉じんの健康影響とその最近動向につ い て , セ イ フ テ ィ ダ イ ジ ェ ス ト , Vol.55 , No.4 , pp.12-19,2009. 厚生労働省:ずい道等建設工事における粉じん対策 に関するガイドライン,p.8,2008. 名古屋 俊士:粉じん濃度測定の変遷(その 2),骨 材資源,No.87,pp.184-193,1990. 楠 恭信:デジタル粉じん計 LD-3K2 型(特集 計測と 制御),工業加熱,Vol.41,No.6,pp.28-30,2004. 進士 正人, 岸田 展明:トンネル坑内におけるデジタ ルカメラを利用した簡易粉じん測定法, 土木学会論文 集 G, Vol. 66, No. 1, pp.1-8, 2010. 樫本 陽史, 岸田 展明, 進士 正人:ニューラルネットワ. 13) 14) 15) 16) 17). ークを用いたデジタルカメラでの粉じん濃度計測, 土 木学会第 64 回年次学術講演会,pp.207-208,2009. 平野 充剛, 筒井 隆規, 岸田 展明, 進士 正人:ニューラ ルネットワークを適用したトンネル坑内のデジタル カメラを使った粉じん濃度計測法の適用, 土木学会第 65 回年次学術講演会,pp.57-58,2010. Hecht, E.(尾崎 義治,朝倉 利光訳):光学 I-基礎 と幾何光学-, p.142, 丸善, 2008. Health and Safety Executive: The Dust Lamp -A Simple Tool for Observing the Presence of Airborne Particles-, Methods for the Determination of Hazardous Substances, 82, pp.1-12, HSE Books UK, 1997. 野村英一:空気中の浮遊粉塵を撮影,写真工業, Vol.51,No.3,pp.76-80,1993. Ohzu, A.: Remote Particle Counter Using Backscattered Light Imaging, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No. 2A, pp.1012-1014, 2006. (社)可視化情報学会:PIV ハンドブック,pp.25-27, 森北出版,2002. 田辺和俊:NEUROSIM/L によるニューラルネットワ ーク入門,p.70,日刊工業新聞社,2003. 厚生労働省:ずい道等建設工事における粉じん対策 に関するガイドライン,p.15,2008. 吉富 康成:ニューラルネットワーク,p.144,朝倉書 店,2002. 小野田 崇:サポートベクターマシン,オーム社, 2007. (2010. 4. 26 受付). THE PRACTICAL DENSITY MEASUREMENT OF SUSPENDED SPRAYED CONCRETE DUST BY USING ARTIFICIAL NEURAL NETWORK Masato SHINJI and Noriaki KISHIDA The suspended dust generated in the tunnel construction work is one of the causes for tunnel workers becomes Pneumoconiosis. Therefore, the ministry of Health, Labor and Welfare of JAPAN dictated the employer has a management duty to measure the density of suspended dust twice a month from 2008. Ordinary, the density measurement of suspended dust had done by the digital dust meter. However, the digital dust meter is expensive and it need the measuring time for 10 minutes. In addition, it require the conversion coefficient factor individually. The simpler measurement method for the density measurement becomes stringent. It is well known among the tunnel engineer that the suspended dust reflects flashlight during flashed photography. By using this phenomenon, the authors proposed the dust density measuring technique for suspended dust by the flashlighted image of digital camera. In this study, the authors propose the simple dust measuring technique by using artificial neural network. And the authors applied it in real tunnel construction site, and compare with the results obtained by the digital dust meter, and the effectiveness of this method was confirmed.. 200.

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