• 検索結果がありません。

生涯現役社会の自律神経学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "生涯現役社会の自律神経学"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

生涯現役社会の自律神経学 (23) 我が国の少子高齢化の進展は,経済,社会保障に大きな 影響を持つに至っている.生産年齢人口の減少と,自立し た生活が難しい期間の延伸は若年世代への大きな負担と なっている.世界の中で少子高齢社会の先頭を切り,また 世界で最も健康関連情報が蓄積されているわが国におい て,社会の基盤となる広義の産業活動が維持され,人々が 活躍できる社会が持続的に発展することを示すことは,国 際的にも重要な役割とも考える1).最近の研究では,人に とって働くことは社会参加の大きな機会であり,これが多 くの人にとって生きがいとなり,健康増進の要因であるこ とが社会科学研究や実感として示されている5) 加齢は生理的機能の低下を伴うが,個体差の広がりでも ある.就業の中断が健康度を下げる事例が多い一方,働き 方は変えていくことが健康状態の維持に貢献するとされ る3)6).仕事を辞めると,精神的健康度の低下,認知能力 の低下を生むが,フルタイムからパートタイムなどの仕事 に変わった場合は,こうした負の変化は少ない4).加齢に より自律神経系のバランスや歪みが生じやすく,また種々 の疾患発症の原因となるが,対策が可能なものも多いとさ れる3)7).個人にあった良い働き方を実現するため,社会 システムと医学生理学的対策の両面からのアプローチが必 要となる. 企業,組織による働く人の健康に配慮した就労環境の整 備,適性配置,能力開発への支援は企業の成長や生産性の 向上だけでなく,健康な社会創りへの貢献に繋がるとし て,現在,働き方改革に合わせて,健康経営,産業保健活 動の役割が需要となっている1)2).働くことで日常生活の 可能性が広がり,自立心や責任感が強まり,自分らしい生 き方が実現できる人が多い3)6).産業医学分野の研究や推 進を担う職として,産業保健の目的は広義の「適正配置」 と考える.生涯現役を目指す活力ある社会への貢献は,喫 緊の重要なテーマと捉える. 働く人の健康は企業の力を高め,また,持続可能でやり がいのある仕事は個人の健康度を高める,相互に正の相関 をもつ2)4)7).就労環境の整備,労働態様の改善,職務設計 の至適化,健康管理や能力開発は人の働く選択肢を広げ る.高年齢者の活躍できる環境整備では,心身の生理的機 能の変化ととともに,加齢は個体差の拡大とも捉えた個々 人の特性に合わせたサポートが重要となる2)6).女性や身 体障碍者の就労機会の確保や治療と就労の両立支援と同 様,ノーマライゼーションの一環と考える. 自律神経系の機能評価は,個々人によって異なる加齢変 化に対する対応の他,現在では,技術的に血圧や脈拍の変 動,呼吸の状況,体温などをモニターし,覚醒度,ストレ ス対応力,熱中症などの心身の状態をリアルタイムに心身 の状態をモニターできるものになっている.将来,消化管 や肝臓の活動,排尿や排便,体温の調節,ホルモンの分 泌,瞳孔の調節不具合に対する作業要因,加齢の影響と機 能保持に関わる要因を評価し,こうした機能を統合的に制 御する神経性・中枢性の制御機構の解明が対策に結びつく ことが期待される1)7) ビッグデータの活用が科学,社会に大きな変化を生む時 代,より学際的な連携研究が推進され,医学分野であれば 人が「活きる」ことに貢献する成果が生まれると考える. 世界に先行する高齢社会を迎えた日本が,経済的な視点 だけでなく,個人が目的をもって社会参加することによ り,健康を維持し,活力ある社会を創ることに,自律神経 学,産業医学・産業衛生学は貢献できるものと考える. 利益相反について:本文は特別講演内容についての要で, 内容,論旨に関わる開示すべき利益相反はない. ● 第 72 回日本自律神経学会総会 / 特別講演 3 / 東 敏昭 司会:荒木信夫

生涯現役社会の自律神経学

東 敏昭

キーワード:高年齢労働,自律神経系機能,センサー技術,データ処理(AI)技術,労働と健康  ageingofworkforce,neurophysicalfunction,sensor,datascience,workandhealth (自律神経,58:23–24,2021) 一般財団法人西日本産業衛生会 〒 805-0071 福岡県北九州市八幡東区東田 1-4-8

(2)

自律神経 58 巻 1 号 2021 年 (24) PloSOne2015;10:e0144069.  5)ニッセイ基礎研究所.70 歳雇用促進の背景と今後の課題 ―企業や個人の状況に合わせたより多様な定年制度の実施 を―.2016.https://www.nli-research.co.jp/report/detail/ id=61906?site=nli

 6)The Department of Health & Human Services, State Government of Victoria, Australia. Work and your health.  2014. https://www.betterhealth.vic.gov.au/health/ healthyliving/work-and-your-health?viewAsPdf=true  7)Zacher H, Kooji D, Beier ME. Active aging at work:

contributingfactorsandimplicationsfororganizations.2016. https://www.researchgate.net/publication/311415922 引用文献  1)中 央 労 働 災 害 防 止 協 会. エ イ ジ ア ク シ ョ ン 100.2018. https://www.jisha.or.jp/age-friendly/pdf/ageaction100_ gaiyou.pdf  2)厚生労働省.高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル. 2010.https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/ gyousei/anzen/dl/0903-1a.pdf  3)後藤幸生.レーダーチャート表示による自律神経機能評価法. 自律神経 1994;31:660-667.  4)MinamiU,NishiM,FukuyaT,etal.Effectsofthechange in working status on the health of older people in Japan.

Abstract

The role and significance of neurovegetative research to support creative aging

ToshiakiHigashi NishinihonOccupationalHealthServiceCenter,Fukuoka805-0071,Japan Recentresearchessupportthelongerandadequateworkinglivescontributethehealthofagedworkersamidpolicy concernsaboutthecostsofsocialwelfare.Somecomprehensiveresearchesshowedactivitytheorythatolderadultswho quitfromfull-timejobsdeterioratedbothmentalhealth.Inthefieldofoccupationalhealth,properplacement,keepthe workabilityandemployabilityconsideringtheindividualneurophysicalstatus,alongwithpreventiveactionforworkers inworkplace.Inmanycases,workingisaneffectivewayofsocialparticipationforolderpeopleandkeepthehealth statusbetteroverinJapan.Neurovegetativeresearcheswithaviewpointoflabourscienceandoccupationalhealthcan findouttheevidencewhichcontributethegoodpracticeforhappinessandhealthofagedworkersespeciallyusingdata sciencemethods. (TheAutonomicNervousSystem,58:23 ~ 24,2021)

参照

関連したドキュメント

昨年の2016年を代表する日本映画には、新海誠監督作品『君の名は。」と庵野秀明監督作品『シ

 彼の語る所によると,この商会に入社する時,経歴

このような状況下、当社グループ(当社及び連結子会社)は、中期経営計画 “Vision 2023”

在学中に学生ITベンチャー経営者として、様々な技術を事業化。同大卒業後、社会的

[r]

[r]

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課

同総会は,作業部会はニューヨークにおける経済社会理事会の第一通常会期