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歯内療法前処置へのフロアブルコンポジットレジンの応用

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臨床講座

昭 歯 誌 27:305-308, 2007

歯 内療 法 前 処 置 へ の フ ロア ブル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ンの応 用

伊 佐 津 克 彦,長

谷 川 篤 司

昭和大学歯 学部総合診療 歯科

(2007年10月1日

受理)

Pre-endodontic

Treatment

using Flowable

Light-cured

Composites

Katsuhiko

ISATSU and Tokuji HASEGAWA

Department of Comprehensive Dentistry, Showa University School of Dentistry

(Received October 1, 2007)

要 旨 簡 便 に 隔壁 形 成 を行 うポ イ ン ト 1. 通 法 どお り軟 化 象 牙 質 除 去 し,根 管 口明 示 を行 う. 2. 根 管 口 に ボ ン デ ィ ング 材 が 流 れ込 ん で し ま う とそ の 後 の 処 置 が 困 難 に な る の で ブ ロ ッ ク ア ウ トが 必 要 で あ る.ス トッ ピ ン グ や ガ ッ タ ーパ ー チ ャ ・ポ イ ン ト等 を使 用 して 最 小 範 囲 の ブ ロ ッ ク ア ウ トを行 い,隔 壁 の歯 質 に対 す る接 着 面 積 を最 大 限 に確 保 す る. 3. フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン を盛 り上 げて い く.一 回 に盛 り上 げ る量 は シ リ ン ジ の 先 端 径 程 度 の 太 さ(約1mm)が 適 当 で あ り,足 りな け れ ば光 照 射 後 に 追 加 築 盛 す る.ま た フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン は歯 質 へ の 濡 れ も良 い の で,そ の他 の イ ン ス ツ ル メ ン トは必 要 な い. 4. ブ ロ ッ ク ア ウ ト材 を除 去 す る.余 剰 の コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン は 回 転 切 削 器 具 で 除 去 す る が,探 針 や ピ ンセ ッ ト等 で容 易 に除 去 で き る こ と も多 い.

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昭和 歯学 会雑誌 第27巻

第4号

図1a 図1b 図1c 図1d 図1e 図1f 図2a 図2b 図2c 図2d 図2e 図2f

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平 成19年 12月 307 近 年,予 防 歯 科 医 療 の 発 展 や8020運 動 の 推 進 等 に よ り,歯 を保 存 す る こ との重 要 性 はわ れ わ れ歯 科 医 師 だ け で な く患 者 さ ん に も広 く認 識 さ れ,従 来 抜 歯 の適 応 と考 え られ て い た 歯 を で き るか ぎ り保 存 した い と希 望 され る こ とは 少 な くな い.わ れ わ れ 歯 科 医 師 に は そ の ニ ー ズ に 答 え る べ く,さ まざ まな 知 識 や 診 療 技 術 が 要 求 さ れ る. 一 般 的 に は 歯 質 が 崩 壊 し骨 縁 下 に う蝕 が 進 行 した 場 合,抜 歯 の 適 応 と考 え られ て い た.し か し,歯 槽 骨 の 削 除 を行 っ た り,矯 正 的 な 挺 出 あ る い は 自然 挺 出 させ る こ とで,修 復 物 辺 縁 を精 密 印 象 可 能 な 自浄 性 の 良 い位 置 に 設 定 で き,か つ,生 物 学 的 幅 径 を確 保 して 歯 周 組 織 の状 態 を改 善 す る こ とで 歯 を保 存 す る こ とが 可 能 と な っ て き た.そ れ で もな お 歯 冠 崩 壊 が 著 し い残 根 状 態 の 症 例 や 歯 肉 縁 下 に う蝕 が 存 在 す る症 例 で は,適 切 な 歯 内 療 法 が 可 能 か ど う か とい う こ とが 歯 の 長 期 保 存 の可 否 に多 大 な影 響 を与 え て い る1). 歯 内 療 法 を行 う際 に は,無 菌 的 処 置 は欠 くべ か らず 事 項 で あ り,無 菌 的 処 置 を行 うか 否 か が,歯 内療 法 の 予 後 を 大 き く左 右 す る と い っ て も過 言 で は な い.こ の 無 菌 的 処 置 をす る た め の 代 表 的 な 方 法 と して ラバ ー ダ ム 防 湿 法 が あ る.こ の ラ バ ー ダ ム防 湿 を行 う と き に は ラバ ー ダム シ ー トを固 定 す る ク ラ ン プ を装 着 ・保 持 す る た め の 歯 質 が 確 保 され て い な くて は な らな い.加 え て,歯 質 崩 壊 が 激 しい 歯 で は,ク ラ ン プが 歯 に装 着 で きた と して も ラバ ー が 歯 に フ ィ ッ トしな い 部 位 あ るい は歯 頸 側 の 実 質 欠 損 部 位 か ら唾 液 が 根 管 内 に流 入 す る こ と に な る.こ の よ う な症 例 に対 し て は,崩 壊 し た歯 質 を補 填,補 強,整 形 す る こ と を意 図 して 隔 壁 を形 成 す る こ とで よ り確 実 な ラバ ー ダ ム 防 湿 ,ひ いて は無菌的処置 を行 うこ とが で きる. 隔壁 を形 成 す る に あ た り,従 来 は ア ル ミキ ャ ップ や レ ジ ン キ ャ ッ プ を ブ ロ ッ クア ウ ト材 と して 用 い,コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン あ る い は即 時 重 合 レ ジ ン を使 用 し て 隔壁 を作 製 後,セ メ ン ト等 で歯 に装 合 着 す る 方 法 や,マ トリ ッ ク スバ ン ドを用 い て コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン を填 塞 す る 方 法 が 主 体 で あ っ た2).ど ち らの 方 法 も唾 液 の 排 除 が 必 要 で あ る だ け で な く,そ の操 作 を確 実 に行 う に は十 分 に熟 練 し た 技術 や ア シ ス トが 不 可 欠 で あ り,合 着 用 の セ メ ン トあ る い は填 塞 さ れ た レ ジ ンで 根 管 を一 時 的 に閉 鎖 して し ま う こ と も少 な くな か っ た. しか しな が ら,そ の操 作 性 の 良 さ か ら近 年 広 く使 用 さ れ て い る フ ロ ア ブ ル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン を隔 壁 形 成 に応 用 す る と短 時 間 で 容 易 に コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン を築 盛 す る こ とが 可 能 と な っ た3).特 に低 流 動 性(ロ ー フ ロ ー タ イ プ)の フ ロア ブ ル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン は歯 質 へ の 濡 れ の 良 さ を保 ち つ つ,不 必 要 に 流 れ る こ とが 少 な く,根 管 を 簡 便 に ブ ロ ッ クア ウ トし た だ けで も根 管 を 閉鎖 して し ま う危 険 性 が著 し く低 下 し た.さ ら に,こ の よ う に操 作 性 の 優 れ た コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン と高 出 力 の照 射 器 を併 用 す る こ とで 数 回 に わ た る積 層 充 填 もス トレ ス を感 じず に実 施 で き,ア ル ミキ ャ ッ プや レ ジ ンキ ャ ッ プ あ る い はマ ト リ ッ ク スバ ン ド とい った 器 具 を使 用 し な くて も可 能 な 操 作 とな っ て き て い る. フ ロ ア ブル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ンが 臨 床 に役 立 つ 多 くの 性 質 と し て,(1)流 動 性 が あ る,(2)薄 く延 ばせ る,(3)自 ら の性 状 で 平 坦 に な る,(4)早 く填 入 で き る,(5)細 か い と こ ろ に 入 る,(6)加 圧 しな い で 窩 壁 に密 着 す る,(7)材 料 に 無 駄 が で な い,(3)操 作 を容 易 にす る,等 が あ る4).な か で も,加 圧 し な い で もそ の 濡 れ 性 能 で 窩壁 に密 着 す る性 質 は,残 存 歯 質 が 複 雑 な 形 態 を し て い る場 合 や 残 根 状 態 で 十 分 な 隔 壁 の 幅 や 接 着 面積 の 確 保 が 難 しい 場 合 に は非 常 に有 用 な性 質 で あ る`).こ の 性 質 に よ り窩 壁 と レ ジ ン の 問 に 気 泡 が 混 入 す る こ と を防 止 し,よ り緊 密 な封 鎖 性 が 得 られ る と考 え られ る.加 えて,根 管 治療 終 了 後 もフ ロ ア ブ ル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ンで 形 成 し た部 分 は支 台 と して 応 用 す る こ と に も可 能 で あ る6)こ とが 報 告 さ れ て い る. 実 際 の 手 順 は以 下 の通 りで あ る. 1. 通 法 どお り軟 化 象 牙 質 除 去 ・根 管 口 明 示 を行 う. 2. 歯 質 辺 縁 が 歯 肉縁 下 の 場 合,歯 肉縁 上 に な る よ う に 電 気 メ ス 等 で 歯 肉 切 除 を 行 う(骨 縁 下 の 場 合 も,保 存 を試 み る場 合 に は,歯 槽 骨 の 削 除 を行 う か,挺 出 させ,歯 質 辺 縁 が 歯 肉縁 上 とな る よ う に 図 1a 術 前 図 1b 軟 化 象 牙 質 除 去 ・根 管 口 明 示 図 1c 歯 質 辺 縁 が 歯 肉 縁 上 に な る よ うに 歯 肉 切 除 図 1d ス ト ッ ピ ング で ブ ロ ック ア ウ ト 図 1e フ ロ ア ブル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン の築 盛 図 1f ラバ ー ダ ム の装 着 図 2a ガ ッタ ー パ ー チ ャ ・ポ イ ン トで 根 管 の ブ ロ ッ ク ア ウ ト,セ ル ロ イ ドス ト リッ プ ス の 設 置 図 2b 歯 面 処 理 図 2c フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン の填 入 図 2d フ ロ ア ブ ル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ンの 築 盛 図 2e ブ ロ ッ ク ア ウ トに 用 い た ガ ッ タ ー パ ー チ ャ ・ポ イ ン トの 除 去 図 2f ラバ ー ダ ム の 装 着

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第4号

す る). 3. 根 管 口 に ボ ン デ ィ ング 材 が 流 れ込 まな い よ う に ス トッ ピ ン グや ガ ッタ ー パ ー チ ャ ・ポ イ ン ト等 を使 用 して,最 小 限 の ブ ロ ッ ク ア ウ トを行 い,隔 壁 形 成 時 の歯 質 に対 す る接 着 面 積 を最 大 とな る よ う に す る. 4. フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン を シ リン ジ の 先 で 表 面 張 力 を利 用 し誘 導 しな が ら,築 盛 す る.フ ロ ア ブ ル コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン は歯 質 へ の濡 れ も良 く 優 れ た付 形 性 を有 す る た め,一 回 に盛 り上 げ る量 は シ リ ン ジ の 先 端 径 程 度 の 太 さ(約1mm)が 適 当 で あ り,足 り な け れ ば 光 照 射 後 に追 加 築 盛 す る.は じ め に,少 量 の レ ジ ン を築 盛 す る こ とで, フ ロ ア ブル コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン の 流 れ を利 用 し て 十 分 な 接 着 と辺 縁 封 鎖 製 を獲 得 し,順 次 追 加 築 盛 に よ って 隔 壁 を形 成 して い く.こ の 間,そ の他 の イ ンス ツル メ ン トは必 要 な い こ とが 多 い. 5. ラバ ー ダ ム を装 着 後,ブ ロ ック ア ウ ト材 を除 去 す る.余 剰 の コ ンポ ジ ッ トレ ジ ン は回 転 切 削器 具 で 削 除 す るが,探 針 や ピ ン セ ッ ト等 で 容 易 に 除 去 が 可 能 で あ る こ とが 多 い. この よ う に記 載 す る と多 くの 時 間 が か か る と感 じ るか も しれ な いが,わ ず か 数 分 で で き る作 業 で あ り,歯 肉 縁 下 に 実 質 欠 損 が お よぶ 症 例 で は必 須 の 前 処 置 と思 わ れ る.ラ バ ー ダ ム 防 湿 は根 管 治 療 の ス タ ン ダ ー ドで あ るべ きで,治 療 器 具 や 薬 剤,根 管 洗 浄 液 の誤 飲 事 故 等 か ら患 者 を保 護 す る ばか りで な く,治 療 の 成 功 率,術 後 痺 痛 に 大 き く影 響 して い る.さ ら に は,ラ バ ー ダ ム 装 着 に よ り,根 管 長 測 定 ばか りで な く,歯 内療 法 全 般 にわ た っ て 快 適 な診 療 が で き る もの と考 え られ る. 特 に 当 科 に お い て は,卒 後 問 もな い 臨 床 研 修 歯 科 医 師 が 治 療 す る に あ た り,基 本 に忠 実 で,よ り安 全 な 治 療 を 習 得 す るた め に も,有 用 な術 式 と して 繁 用 して い る. 文 献

1) Strassler

HE : Isolation of the field more

impor-tant than ever. J Esthet Dent, 3 : 154-155, 1991

2) 戸 田 忠 夫,中 村 洋,中 川 寛 一:カ ラ ー ア ト ラ ス ハ ン ド ブ ッ ク 歯 内 治 療 臨 床 ヒ ン ト集 .東 京,2004, ク イ ン テ ッ セ ン ス 出 版,pp24-26 3) 日 野 浦 光:フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン と は ど の よ う な も の で す かP歯 界 展 望 別 冊 使 い こ な そ う コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン ーMinimalInterventionの た め の 修 復 テ ク ニ ク ー,東 京,2004,医 歯 薬 出 版,pp14-17

4) Cohen S, Burns RC : Pathways of the pulp. 8th ed., St. Louis, 2002, Mosby, pp 136

5) 中 村 三 夫:フ ロ ア ブ ル コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン の 使 い 方 を 教 え て く だ さ いP歯 界 展 望 別 冊 使 い こ な そ う コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン-MinimalInterventionの た め の 修 復 テ ク ニ ク ー,東 京,2004,医 歯 薬 出 版,pp71-73

6) Gu S, Rasimick BJ, Deutsch AS, Musikant

BL :

In

vitro evaluation

of five core

materials.

J

Prosthodont,

16 : 25-30, 2007

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