き
のくに
わか
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木造のすすめ
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―非住宅建築物木造化
非住宅建築物木造化
非住宅建築物木造化の
非住宅建築物木造化
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平成28年3月
発行:和歌山県 農林水産部 森林・林業局 林業振興課
編集:一般社団法人 和歌山県建築士事務所協会
-本書の目的-
この手引きは、公共施設や商業施設といった非住宅建築物において和歌山県産の木材で ある紀州材の利用を促進することを目的に、木造施設の設計、施工に携わる方々を対象と して、非住宅建築物の木造化を進める上で必要とされる基本的な知識や情報等を取りまと めたものです。
-目 次-
第1章 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.和歌山県の森林・林業・木材産業のあらまし ・・・・・・・・・・・・・・2 (1)和歌山県の森林・林業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (2)和歌山県の木材産業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2.紀州材を使用することの意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第2章 建築材料としての木材 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 1.木材の特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (1)木材の異方性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (2)心材と辺材 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (3)木材と水分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 (4)木材の比重 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 (5)木材と火 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2.紀州材の樹種 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (1)スギ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (2)ヒノキ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 3.木質系材料のいろいろ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (1)製材品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (2)集成材 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (3)合板 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (4)LVL(単板積層材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 (5)CLT(直交集成板) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 (6)その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 4.日本農林規格(JAS)について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (1)JASとは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (2)製材のJAS ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (3)集成材のJAS ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 5.木材の劣化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 (1)腐朽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 (2)シロアリ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 (3)紫外線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18第3章 非住宅建築物の木造化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 1.紀州材を利用するにあたっての留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・20 (1)住宅と非住宅建築物の相違点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 (2)木材の発注方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 (3)必要とされる木材の量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (4)構造用材料としての紀州材調達 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 (5)紀州材の強度性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 (6)木材の乾燥 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 (7)接合部の加工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (8)木材の長寿命化のために ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 2.構造設計のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (1)構造設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (2)構造計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 3.木造・木質化にかかる耐火・防火のポイント ・・・・・・・・・・・・・・44 (1)耐火・準耐火 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 (2)防火・内装制限 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 第4章 和歌山県内の木造事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59 (1)あがら花まる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 (2)粋の杜(きのもり) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 (3)藤並学童クラブ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 (4)認定こども園 うえのやま学園 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 (5)かぜのこ保育園 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64 (6)みなべ町立清川保育所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 (7)新宮市立丹鶴幼稚園 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 (8)橋本市立高野口小学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 (9)みなべ町立清川小学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 (10)紀州梅の里 なかた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 (11)道の駅くしもと橋杭岩 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 (12)和歌山県紀南児童相談所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 (13)和歌山県土砂災害啓発センター ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72 補足 参考資料、お問い合わせ先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73 1.非住宅建築物の木造化にかかる参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・74 2.各種お問い合わせ先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
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第 1 章
はじめに
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1.和歌山県の森林・林業・木材産業のあらまし
(1)和歌山県の森林・林業
和歌山県は古くから「紀州・木の国」と呼ばれ、優れた木材を生み出す林業地として位 置づけられてきました。和歌山県の森林面積は、36 万 1 千 ha で、県土総面積(47 万 2 千 ha)の約 77%を占めており、全国的に見ても非常に森林の割合が高いといえます。 [出典:和歌山県林業振興課業務資料] そのうち、民有林(国有林以外の森林)の面積は 34 万 4 千 ha で、森林面積の約 95%と なっています。そして、民有林のうち、スギやヒノキといった人工林の占める割合(人工 林率)は約 61%となっています。また、民有林蓄積は約 1 億 m3で、そのうち人工林は約 8 割の 8 千万 m3を占めており、豊富な木材資源量となっています。 [出典:和歌山県林業振興課業務資料] また、県内の民有林人工林の齢級*構成は 9 齢級以上が 8 割を占めており、紀州材とし て利用可能な資源が増加してきています。人工林の樹種別構成については、面積比ではス- 3 - ギ 42%、ヒノキ 54%であり、材積比ではスギ 48%、ヒノキ 50%となっています。 (*)齢級とは、森林の年齢を 5 年の幅でくくったもの。人工林は、苗木を植栽した年を 1 年生とし、1〜5 年生を 1 齢級、6〜10 年生を 2 齢級・・・と数える。
[出典:和歌山県林業振興課業務資料] しかし、昭和 55 年次と比較して素材生産量は約 1/3、林業生産所得に至っては約 1/10 まで減少しています。近年は横ばい状況を保っているとはいえ、人工林資源が十分に活用 されておらず、また林業で十分に所得が得られない状況にあることが伺えます。
[出典:生産林業所得統計報告書、木材需給報告書] 以上のことから、和歌山県は森林率が高く人工林が充実していながら、林業は厳しい状 況にあり、その資源が有効に活用されていないことが伺えます。
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(2)和歌山県の木材産業
丸太から製材品への加工を行う和歌山県の製材工場数は年々減少の一途をたどっており、 平成に入ってから現在までに約 1/3 まで減少しました。特に外材を扱う工場の減少が著し くなっており、原木の輸入から製品の輸入にシフトしていることが伺えます。 [出典:木材需給報告書] 一方、国産材の使用比率は年々高まってきています。現在、県内で取り扱われる素材は、 和歌山県産材をはじめとした国産材が占めるようになっており、その比率は 80%近くにな ってきています。 [出典:木材需給報告書] ただし、使用される量そのものは横ばいの状況が続いているため、紀州材の活用が進ん でいるとはいえない状況となっています。- 5 -
2.紀州材を利用することの意義
和歌山県では先に述べたように、戦後に植栽されたスギやヒノキなどの人工林資源が充 実し、本格的に利用していく時期を迎えています。しかし、山村地域の過疎化、林業採算 性の悪化などによって、せっかくの人工林資源が十分に活用されていないのが現状です。 その結果、間伐をはじめとした適切な森林整備が行われないところも多くなってきていま す。森林整備が適切に行われなければ森林は荒廃し、水源のかん養、土砂災害の防止など 森林の持つ様々な機能が失われかねません。 そうならないようにするためには、どうすればよいでしょうか。木材は「植える」「育 てる」「伐る」「使う」のサイクルを確立すれば永続的な生産、利用が可能な資源です。紀 州材の利用を進めることでその利益を県内の人工林に還元し、適切な森林整備を続けてい くことが、資源の有効利用だけでなく、森林機能の高度発揮にもつながります。 また、森林で育つ木は、大気中から取り込んだ二酸化炭素に含まれる炭素を固定して成 長します。その後、伐採・製材された木材を建築用の材料や家具などに使うことで、炭素 がそのまま中に蓄えられることになります。よって、木材を利用することは、地球温暖化 の防止に貢献することにもなるのです。 さらに、紀州材は他の建築材料と違い、県内で生産から加工までできることから、紀州 材の利用を進めることで地域経済の活性化にも一役買うことができます。 以上のように、紀州材の利用を進めることは、資源の有効利用、地球環境の保全、地域 経済の活性化など、様々な効果を生み出します。 図 木材利用のサイクル 木造建築・家具- 7 -
第2章
建築材料としての木材
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1.木材の特性
ここでは、木材の基本的な特性、特に水分との関係について説明します。(1)木材の異方性
樹幹に平行方向を繊維方向(軸方向)、 樹幹に 垂直で年輪の円周に沿った方向を接線方向、樹幹 に垂直で丸太の中心(髄)を通る方向を半径方向 (放射方向)といいます。それぞれの方向で強度 的性質や乾燥に伴う寸法変化などの性質が大きく 異なります。 なお、樹幹に直角の面を木口面、樹幹に平行で 年輪の接線方向に沿う面を板目面、樹幹に平行で 髄を通る方向に沿う面を柾目面といいます。(2)心材と辺材
原木の木口面を見ると、外周部が淡色でその内 側が濃色となっています。淡色の部分を辺材(白 太)、濃色の部分を心材(赤身)といいます。 辺材は水分や養分を通すパイプの役目を持って おり、伐採直後は大量の水分を含んでいますが、 乾燥しやすいメリットがあります。 心材は、樹種にもよりますが辺材に比べて腐朽 に対する抵抗力(耐朽性)が優れている一方、乾 燥しにくいのが特徴です。 なお、樹齢の高い木ほど木材全体に占める心材 の割合が高くなります。 図 木材の各方向 辺材 心材 写真 心材と辺材(スギ) 半径方向 (放射方向) 接線方向 繊維方向 (軸方向)- 9 - (3)木材と水分 伐採してから間もない木材には、細胞中の内孔という空隙に自由水と呼ばれる水分が、 細胞壁には結合水と呼ばれる水分が含まれています。 木材中にどれだけ水分が含まれているかを示す指標として含水率があります。水分を含 んでいる状態での木材の重量をWu、その木材を 100℃以上で重量変化がなくなる状態に なるまで乾燥させた場合の重量(全乾重量)をWoとすると、含水率は以下の式で表され ます。 含水率(%)=(Wu-Wo)/Wo×100 つまり、木材中に含まれている水分の重量を木材実質部分の重量で割って算出します。 なお、伐採直後の木材では自由水が大量に含まれているため、含水率が 100%を超える場合 もあります。 細胞内孔中の自由水が全てなくなり、かつ細胞壁に最大限の結合水を含んだ状態の含水 率を繊維飽和点といい、30%前後の値といわれています。さらにそこから乾燥が進んで含水 率が減少していくと細胞壁が収縮し、それに伴い木材は収縮していきます。 乾燥が進んでいくと、やがて周囲の湿度環境に応じて安定した含水率状態となります。 その状態を気乾状態といい、そのときの含水率を平衡含水率といいます。平衡含水率は周 囲の湿度環境によって変化しますが、和歌山県では年間を通じた平均的な平衡含水率は約 15%となっています。ただし、室内環境では空調や暖房などの影響によって湿度が低くなる ことが多く、その場合 10%前後まで含水率が下がることとなります。 木材の細胞と水分の関係についてイメージした図を以下に示します。 図 木材の細胞と水分のイメージ ※図中の水色箇所は水分で、内孔中の水分は自由水、細胞壁中の水分は結合水を表す。なお、実際は全乾状態 であってもわずかに残った結合水が存在する。 [状態] [含水率] 生材 繊維飽和点 気乾 全乾 30%超 約30% 約15% 0% 細胞壁 内孔
- 10 - 気乾状態の木材は、周囲の湿度が上昇すると吸湿して膨潤し、逆に湿度が低下すると放 湿して収縮します。これら吸放湿による湿度環境の適度なコントロールは調湿機能と呼ば れ、木材の持つ優れた特性となっています。 下図は湿度の高い日にミニハウス(1 部屋の小型プレハブ)の窓を閉め切った場合、室 内の湿度変化がどのように変化するかを示したものです。内装にビニールシートを貼り付 けたミニハウスでは調湿機能がないことから、外部の湿度を表す百葉箱のデータと同様に 大きな湿度変化が生じますが、内装に全て木材を貼り付けたミニハウスでは調湿機能が働 き、外部の湿度変化に関わらずほぼ一定の湿度環境が保たれていることが分かります。 なお、吸放湿は木材の寸法変化を伴うことから、木材を使用する際はそのことを考慮に 入れておく必要があります。 図 内装の違いによるミニハウス内の湿度変化 木材の乾燥にともなう収縮については、繊維方向、半径方向、接線方向の順に大きくな り、その比率については、繊維方向:半径方向:接線方向=0.5~1:5:10 といわれてい ます。接線方向の収縮が大きいことは、板目面の寸法安定性が柾目面に比べて劣る原因と なっています。 図 乾燥に伴う木材断面の形状変化例 【乾燥前】 【乾燥後】 〈柾目板〉 〈板目板〉
- 11 - (4)木材の比重 木材の細胞自体の比重は樹種にかかわらず約 1.5 といわれています。一方、気乾状態の 場合、紀州材のスギで約 0.4*、ヒノキで約 0.5*です。このことは、木材は多くの空気を 含んでいることを意味しています。そのため、熱伝導性が低く断熱性能に優れた材料とい えます。 比重の低い木材ほど加工しやすく断熱性に優れますが、強度性能が低く傷が付きやすく なります。一方、比重の高い木材ほど加工が困難で断熱性が悪くなりますが、強度性能が 高く傷がつきにくくなります。 (*)和歌山県農林水産総合技術センター研究報告第 4 号「県産柱・横架材の強度性能に関する研究」より (5)木材と火 木は燃えるというイメージがありますが、決して火に弱いというわけではありません。 例えば、鉄やアルミニウムは 500~800 度になると急速に強度が低下してしまいます。しか し、木材が燃えるスピードは 1 分間に約 0.6mm と非常にゆっくりしたものです。よって、 木材はある程度の厚みがあれば、中心部まで燃えるのに時間がかかるため、急速に強度が 低下することはありません。
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2.紀州材の樹種
ここでは、紀州材の主要樹種であるスギとヒノキについて説明します。 (1)スギ スギは県内の蓄積量が豊富な樹種で、樹幹が通直 なのが特徴です。県内の蓄積量は 37,147 千 m3で、 全国第 15 位*となっています。 気乾比重は約 0.4 で、軽軟で加工しやすく、反り や曲がり、ねじれなどの狂いが発生しにくいため、 建築材料として優れた特性を持っています。 一方、伐採直後の含水率が高いうえにバラツキが 大きく、乾燥が難しい面があります。また、心材の 写真 スギの原木 色も淡い褐色から黒色までバラツキが大きい、軟ら かいため傷が付きやすいなどの欠点があります。 (2)ヒノキ ヒノキは県内で最も多く植林されている樹種です。 また、県内の蓄積量は 38,480 千 m3で、全国第 3 位* を誇っています。ただし、成長がスギよりも遅いた めに、建築材料として利用可能な量はスギほど多く ありません。 気乾比重は約 0.5 で、木材としては比較的軽軟で 加工もしやすい部類に属します。また、狂いが少な く独特の芳香があり、強度性能や心材部分の耐朽性 写真 ヒノキの原木 がスギと比べて高いことから、建築材料として特に 優れた特性を持っています。また、スギより乾燥し やすいのも利点です。 ただし、価格はスギよりも高くなります。特に直 径 30cm 以上の大径材になると資源量が少なく、価格 が大幅にアップします。 (*)林野庁「森林資源の現況(平成 24 年 3 月 31 日現在)」より- 13 -
3.木質系材料のいろいろ
ここでは、各種の木質系材料、特に構造用材料として用いるものについて説明します。(1)製材品
製材品とは、原木を所定の長さや断面形状に加工して、 そのまま使う、いわゆる「ムク材」です。木造建築物の構 造部材をはじめ、内装材などに幅広く利用されます。 [特長] ・寸法にもよりますが、県内各地の製材工場で調達する ことができます。 ・加工できる寸法が原木の径と長さに依存するため、断面の大きなものほど、また長い ものほど調達が困難となり、価格もアップします。 ・十分に乾燥して使用しないと、曲がりや反りなどが発生します。(2)集成材
集成材とは、板状に加工した材料(ラミナ)を、厚さ方 向に積層して接着し、製造した材料です。 [特長] ・製材品では調達が困難な寸法の材料を作ることができ ます。 ・ラミナの状態で乾燥してから製造するため寸法安定性 に優れています。 ・原木からの歩留まりが製材と比べて低くなります。 ・構造用集成材を製造する場合、県内で加工できるのはラミナまでであり、その後の積 層接着の工程は県外となるため、紀州材を用いる場合は製造コストが高くなります。(3)合板
合板とは、原木をかつら剥きに加工した単板(ベニヤ) を、繊維方向が直交するように積層接着して製造した材料 です。主に面材料として使用します。 [特長] ・原木をかつら剥きして加工するため、原木からの歩留 まりが優れています。 ・寸法安定性が高く、取り扱いが容易です。 写真 製材品(スギ平角) 写真 集成材(スギとベイマツ のハイブリッド) 写真 合板(スギ)- 14 - ・積層接着前のベニヤへの加工を含めて和歌山県内では製造できる工場がありません。 (※県外には和歌山県産の原木を利用して合板を製造している工場があります。)
(4)LVL(単板積層材)
LVLとは、ベニヤを繊維方向が平行になるよう積層接 着して製造した材料で、主に軸材料として使用します。 [特長] ・合板と同様に、原木からの歩留まりが優れています。 ・集成材と同様に、製材品では困難な寸法の材料を製造 することができます。 ・積層数が多いため、性能のバラツキが小さく、品質が安定しています。 ・接着剤を多用しているため、製材品と比べて比重が高く、加工が難しくなります。 ・合板と同様、積層接着前のベニヤへの加工を含めて県内に製造できる工場がなく、和 歌山県産の原料を用いる場合は製造コストが高くなります。(5)CLT(直交集成板)
CLTとは、ラミナを幅方向に配列し、さらに厚さ方向 に積層接着して製造した材料です。 [特長] ・大きな寸法に製造することでそのまま壁や床の構造用 材料として利用できるため、工期の大幅な短縮が可能 となります。 ・平成 25 年にJASが制定されたばかりの新しい材料で あるため、使用実績が少なく、建築材料としては未開 拓の部分があります。 ・構造用集成材と同様に、県内ではラミナまでしか製造できないため、紀州材を用いる 場合は製造コストが高くなります。(6)その他
木材を小片に破砕したものを成形加工したパーティクルボード、木材をさらに細かく繊 維状にしたものを成形加工したファイバーボード(繊維板)、また、その他にも木質系セメ ント板などがあります。これらはいずれも面材料です。 写真 LVL(スギ) 写真 CLT(スギ)- 15 -
4.日本農林規格(JAS)について
ここでは、JAS制度及び非住宅建築物の構造用材料に関連する製材、集成材のJAS について説明します。(1)JASとは
JASは、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」に基づき、農林物資 の生産及び流通の円滑化、消費の需要に即した農業生産等の振興ならびに消費者の利益の 保護に寄与することを目的とした制度です。 木質系材料については、素材、製材、集成材、枠組壁工法構造製材、単板積層材、構造 用パネル、合板、フローリング、直交集成板の 9 種目で基準が設けられています。ちなみ に、パーティクルボード、ファイバーボード、木質系セメント板については、JIS(日 本工業規格)で基準が設けられています。 JAS製品は、農林水産大臣が認可した登録機関によって認定された工場(以下「JA S認定工場」という。)から下図に示すマークを付けて出荷されます。JAS認定工場は、 製材及び枠組壁工法製材については一般社団法人全国木材検査・研究協会のホームページ、 また、集成材、単板積層材、構造用パネル、合板、フローリング並びに直交集成板につい ては公益財団法人日本合板検査会のホームページにそれぞれ掲載されています(素材につ いては北海道以外にJAS認定工場はありません)。 図 JASマーク JAS製品を出荷する場合は、製品の品目ごとに認定を受ける必要があります。例えば、 JAS認定工場であっても、出荷できる製材品として認定されているものがスギの 105mm 角、3m 材の場合、寸法の異なるスギ製材品やヒノキ製材品をJAS製品として出荷できま せんのでご注意ください。 また、JAS認定工場であっても、JASの品質基準に適合する製品全てをJAS製品 として出荷しているとは限りません。- 16 -
(2)製材のJAS
製材JASの中では、さらに造作用製材、目視等級区分構造用製材、機械等級区分構造 用製材、下地用製材、広葉樹製材の各規格に分類され、それぞれについての品質が規定さ れています。ここでは、構造用製材について説明します。詳細については、農林水産省ホ ームページに掲載されている製材のJASを別途ご参照ください。 構造用製材は、目視等級区分製材と機械等級区分製材に分類されています。目視等級区 分とは、節や丸み等、材の欠点を目視により測定することで等級別に区分するものです。 そのうち、主として高い曲げ性能を必要とする部分に使用するもの(梁、桁など横使い するもの)は甲種構造材、主として圧縮性能を必要とする部分に使用するもの(柱、束な ど縦使いするもの)は乙種構造材と規定されています。さらに、甲種構造材のうち、たる 木や根太など断面の小さなもの(木口の短辺が 36mm 未満のもの、及び木口の短辺が 36mm 以上で、かつ、木口の長辺が 90mm 未満のもの)は構造用I、大引や梁など比較的断面の大 きなもの(木口の短辺が 36mm 以上で、かつ、木口の長辺が 90mm 以上のもの)は構造用Ⅱ と規定されています。 一方、機械等級区分は機械により曲げヤング係数(たわみにくさを表す指標)を測定す ることで等級別に区分するものです。 目視等級区分では 1 級から 3 級までの 3 区分、機械等級区分では下表に示す E50 から E150 までの 6 区分となっており、平成 12 年建設省(現国土交通省)告示第 1452 号では、それ ぞれの区分と樹種に応じて引張り、圧縮、曲げ及びせん断の各基準強度が定められていま す(P32 参照)。また、等級区分を行っていない木材(無等級材)についても基準強度が定 められています。 表 機械等級区分構造用製材における 曲げヤング係数の基準 曲げヤング係数 (GPa又は103N/mm2) E50 3.9以上5.9未満 E70 5.9以上7.8未満 E90 7.8以上9.8未満 E110 9.8以上11.8未満 E130 11.8以上13.7未満 E150 13.7以上 等級- 17 -
(3)集成材のJAS
ここでは、特に構造用集成材の概要について説明します。なお、詳細については農林水 産省ホームページに掲載されている集成材のJASを別途ご参照ください。 構造用集成材のJASにおいて、ラミナの等級区分には目視によるものと等級区分機(ラ ミナの曲げヤング係数を測定する機械)によるものがあり、等級区分機によるものでは下 表の通り製材のJASと異なる曲げヤング係数の基準があります。同じ等級区分のラミナ を積層したものを同一等級構成集成材、内層から外側に向かうにしたがい強度の高いラミ ナを配置して積層したものを異等級構成集成材といいます。さらに、異等級構成集成材に ついてはラミナ構成に応じて対称構成、非対称構成、特定構成に分かれます。一般的によ く用いられるのは、柱などの縦使いでは同一等級構成集成材、梁、桁などの横使いでは対 称異等級構成集成材です。 集成材の各基準強度は、平成 13 年国土交通省告示第 1024 号で定められています(P33 参照)。 表 等級区分機によるラミナの強度性能の基準 ※ラミナの引張り強さの基準については、ラミナの幅方向の辺長に応じた下記の係数を乗じて数値を調整 する必要があります(詳細は集成材JASを参照してください)。 試験片の幅方向の辺長(mm) 係 数 150以下 1.00 150超 200以下 0.95 200超 250以下 0.90 250超 0.85 曲げヤング係数 平均値 下限値 平均値 下限値 L200 20.0 81.0 61.0 48.0 36.0 L180 18.0 72.0 54.0 42.5 32.0 L160 16.0 63.0 47.5 37.5 28.0 L140 14.0 54.0 40.5 32.0 24.0 L125 12.5 48.5 36.5 28.5 21.5 L110 11.0 45.0 34.0 26.5 20.0 L100 10.0 42.0 31.5 24.5 18.5 L 90 9.0 39.0 29.5 23.5 17.5 L 80 8.0 36.0 27.0 21.5 16.0 L 70 7.0 33.0 25.0 20.0 15.0 L 60 6.0 30.0 22.5 18.0 13.5 L 50 5.0 27.0 20.5 16.5 12.0 L 40 4.0 24.0 18.0 14.5 10.5 L 30 3.0 21.0 16.0 12.5 9.5 曲げ強さ 引張り強さ※ (MPa又はN/mm2) (MPa又はN/mm2) 等級 (GPa又は103N/mm2)- 18 -
5.木材の劣化
ここでは、木材を劣化させる主な原因について説明します。 (1)腐朽 腐朽は、木材腐朽菌により木材成分が分解されることによって生じます。木材腐朽菌が 繁殖する条件として、温度、水分、酸素の 3 つが挙げられ、そのうち1つでも条件が整わ なければ木材腐朽菌は繁殖せず、腐朽が進行することはありません。木材を腐朽させずに 長持ちさせるためには、3 条件の中で最もコントロールすることが可能な水分の管理が必 要となります。 (2)シロアリ 木材を加害する代表的な害虫としてシロアリがあります。和歌山県内で見られる主なシ ロアリはイエシロアリとヤマトシロアリで、その他にはアメリカカンザイシロアリがあり ます。 イエシロアリは1つのコロニー(巣)が数十万~数百万頭と大きく、建物の下部から侵 入し、上部の方まで食害するため、最も被害が大きいのが特徴です。 ヤマトシロアリも被害頻度の高い種類ですが、コロニーは数万~数十万頭でありイエシ ロアリほどの被害は生じません。 アメリカカンザイシロアリは直接飛来、もしくは家具など輸入された木製品とともに建 物に進入し、乾燥した木材を食害します。ただし、湿気を嫌うため高温多湿の日本の環境 では大発生することはなく、被害は散発的です。 (3)紫外線 主として直射日光に起因する紫外線は、木材の成分を分解する能力を持っています。屋 外にさらされている木材には、紫外線の影響を受けることによって退色や材面が痩せる現 象が見られます。 紫外線による劣化は、腐朽やシロアリ被害ほど著しいものではありませんが、美観が損 なわれたり、材面に発生する干割れに雨水が浸透して腐朽やシロアリ被害を誘発したりす ることがあるので注意が必要です。- 19 -
第3章
非住宅建築物の木造化
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1.紀州材を利用するにあたっての留意点
ここでは、非住宅木造建築物で紀州材を利用するに当たって、特に注意しておくべきこ とについて説明します。(1)住宅と非住宅建築物の相違点
紀州材の主な用途は住宅資材であることから、住宅資材としての注文があった場合は速 やかに紀州材を供給できる体制が比較的整っています。一方、公共施設や商業施設などの 非住宅建築物では住宅と以下の点が異なるため、迅速に供給することが困難な場合があり ます。 ① 規模の違い 住宅では延床面積が 100~150 ㎡、木材使用量が 15~20m3程度のものが中心ですが、 非住宅建築物では住宅よりも規模の大きなものの割合が高くなります。そのため、1 棟当たりの木材使用量も多くなります。 また、室内空間については住宅の場合は 4m のスパンでカバーできる場合が多いのに 対して、非住宅の場合は住宅よりも大きな空間が求められる場合が多くなります。 さらに、階高についても住宅では 3m 材で十分対応できるのに対して、非住宅建築物 の場合は 3m 材では高さが不足し、4m 材もしくはそれよりも長い材料で対応しなけれ ばならない場合があります。 ② 用途の多様性 人の居住に用途が限定されている住宅と違い、非住宅建築物では様々な用途があり、 用途に応じて建物の仕様が千差万別となるため、材料の規格化がきわめて困難といえ ます。 ③ 需要の一過性 住宅は1棟当たりの規模が小さいものの、比較的安定した需要が存在します。一方、 非住宅建築物では年度や地域によって需要に大きなバラツキがあります。 以上の通り、非住宅建築物では比較的短期間で多くの木材が必要となるにも関わらず、 規格化されていない木材を使用しなければならないことも多いため、非住宅建築物の建築 に当たっては計画段階から木材の調達について十分に考慮しておく必要があります。- 21 -
(2)木材の発注方式
一般的には、建築工事の中身には木材の調達も含まれているので、建築工事の受注者が 木材を調達します。 一方、建築工事と木材調達を分けて発注する、いわゆる分離発注方式があり、県内でも 公共事業で採用されている事例があります。 ① 分離発注のメリット ・地元の原木や地域の木材産業を活用するなど、発注者側の意向を強く反映させるこ とができます。また、そのことによって地元が受ける恩恵を大きくすることができ ます。 ・原木の手配から製材加工、乾燥など、木材の調達期間に余裕ができます。 ・施工前の他の業務(詳細設計等)と並行して調達を進めることができます。 ② 分離発注のデメリット ・供給者側と需用者側で品質基準が一致していないと、材料の受け渡し時にトラブル が発生します。 ・必要な木材の数量を詳細に把握していない段階で発注する場合が多いことから、施 工時に木材の過不足が生じる可能性があります。 ・木材を施工者側に引き渡すまで保管しておく必要があるため、使用までの品質管理 や保管、横持ち(保管場所までの運搬、保管場所からの運搬)に手間やコストがか かります。 以上のように分離発注にあたっては、メリットだけでなくデメリットを十分に認識した うえで、トラブルの発生を未然に防ぐよう努めねばなりません。特に、JAS製品を要求 する設計にあっては、木材の仕様を明確に記載しておくことが重要です。また、施工段階 における木材の過不足に対応できるよう、あらかじめ準備しておく必要があります。- 22 -
(3)必要とされる木材の量
木造建築に必要とされる木材の総量については、用途や規模にもよりますが床面積 1 ㎡ 当たり約 0.20~0.25m3が目安です。そのうち構造材として必要な数量は 70~80%です。 延べ床面積 500 ㎡の木造建築を想定してみます。ここでは、前述の目安のうち最大の数 値を用いて試算します。 この場合、必要な木材の量は、500 ㎡×0.25m3/㎡=125m3となります。 そのうち、構造材として必要な数量は、125m3×0.80=100m3となります。 ちなみに、100m3という数字を 105mm 角、長さ 3m の柱材に換算すると、1m3当たり 30 本 であるので、100×30=3,000 本となり、かなりの量であることがわかります。 では、100m3の木材を調達するために必要な原木(丸太)の量はどうなるでしょうか? 製材品の場合、原木からの歩留まりは 60%~65%程度ですが、必要とされる品質に満たな いものも含まれますので、原木からの歩留まりを 50%と仮定します。 そうすると、必要な原木の量は、100m3/0.5=200m3となります。 なお、集成材の場合は製材品よりも原木からの歩留まりが低く、さらに多くの原木が必 要となるのでご注意ください。原木の品質や集成材の仕様にもよりますが、歩留まりの目 安は 25~35%です。 このように、計画当初段階から大まかな木材使用量を試算することは、調達に必要な期 間やコストの試算に役立ちますので、その後の設計を進めるうえでも非常に重要なことと いえます。- 23 -
(4)構造用材料としての紀州材調達
① 製材品の場合 非住宅木造建築物に使用する紀州材を調達するに当たっては、まずどのようなもの が調達しやすいか、また、逆にどのようなものが調達しにくいか、ということをあら かじめ把握しておく必要があります。 調達しやすいものは、住宅建築において規格材としてよく使用される寸法のもので、 それ以外の寸法については在庫が期待できず改めて製材加工する必要があったり、場 合によっては原木から手配したりしなければならない場合もあります。 ○調達しやすい製材品の長さ ・3~4m のものが最も容易に調達可能 ・5~6m の場合は調達可能だが、3~4m より品薄 ・6m を超える長さのものは特注品となり、原木から手配する必要あり ○調達しやすい製材品の断面 ・柱などで使用される 105mm 角、120mm 角が最も容易に調達可能 ・スギで幅が 105mm 又は 120mm の場合、梁せい(梁断面の長辺)が 300mm 以下のもの が比較的調達しやすい ・ヒノキの場合、150mm 角までは比較的調達しやすい 大きな断面や長尺の製材品を調達する場合は、山林の資源状況、乾燥に要する期間、 運搬上の支障の有無など、考慮すべき事項が多くなります。 樹種についてはスギ、ヒノキどちらも利用できますが、コスト的な面ではスギの方 が有利です。和歌山県は全国的に見てヒノキの蓄積量が多いのが特徴ですが、それで もヒノキはスギに比べて成長が遅く、供給される原木の寸法がスギと比べて小振りで あるため、梁や桁などの断面の大きなものにヒノキを使おうとすると、大幅にコスト アップしてしまいます。 ヒノキはスギと比べて耐朽性が高いことから、床下の高湿環境下にある土台での利 用や、スギよりも傷が付きにくく、色のバラツキが少ないという特性を活かした内装 材としての利用に適しているといえます。- 24 - ② 集成材の場合 県内で紀州材をラミナに用いた構造用集成材は生産されていないため、必ず注文生 産となります。 集成材の場合、断面が比較的小さなラミナから製造するので、大きな断面の木材あ るいは長尺の木材を必要とする際、 ・製材品のように原木寸法の制約を受けない ・含水率 15%以下までの乾燥が容易 というメリットがあります。6m を超える長尺の集成材を必要とする場合、希少な原木 から製材品を生産するよりコスト的に優位になる場合もあります。さらに、製材品を 用いる場合に比べて金物によるシンプルな接合が可能で大空間を実現しやすいのも特 徴です。ただし、 ・製材品と比べて原木からの歩留まりが低下するので、より多くの原木が必要 ・県内に構造用集成材を生産できる工場がなく、地元に還元される恩恵が少ない などのデメリットがあります。 構造用集成材の場合、樹種についてはコスト的な面からスギを使うのが一般的です。 なお、ヒノキはスギに比べて全般的にヤング係数が高いので、スギを使用する場合よ りも集成材の断面を小さくすることができます。 内装材で使用する造作用集成材は県内でも生産されており、製材品の場合と同様に スギと比べて傷が付きにくくて色のバラツキが少ないヒノキがよく用いられます。
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(5)紀州材の強度性能
一定の規模を超える木造建築においては、建築基準法の規定により構造計算が必要とさ れます(P30 参照)。その場合、使用する木材がどれくらいの強度性能を持っているかを把 握する必要があります。 強度性能を把握する上で重要なのが曲げヤング係数です。以下の図は、和歌山県林業試 験場が調べた紀州材のスギ、ヒノキ 105mm 正角材の曲げヤング係数の分布です。 図 紀州材(スギ・ヒノキ)105mm 正角材の曲げヤング係数分布 スギでは E90、ヒノキでは E110 の等級に最も出現頻度が高くなっていることがわかりま す。なお、正角材よりも断面の大きな平角材の場合は、分布が全体的に低い等級側に移動 する傾向がありますのでご注意ください。 以上のことから、紀州材を使用する場合、スギは E70、ヒノキは E90 を基準として設計 を行えば基準以下の製品割合が少なく、スムーズな調達が可能であるといえます。一方、 スギで E110 以上、ヒノキで E130 以上を基準として設計してしまうと、基準を満たす材料 が少ないために調達が非常に難しくなるということを理解しておく必要があります。 また、構造用集成材を使用する場合、ラミナのヤング係数が非常に重要となります。前 述のデータは製材のJASに基づく機械等級区分であるため、集成材のJASに定められ ているラミナの等級区分とは異なりますが、スギで L50 未満又は L110 以上、ヒノキで L70 未満又は L125 以上のラミナの出現頻度はあまり高くないことが想定されますので、紀州材 をラミナに用いて製造する構造用集成材の強度等級を決めるうえでの参考となるでしょう。 0.0 0.9 25.7 47.1 24.8 1.5 0.0 0 10 20 30 40 50 60規格外 E50 E70 E90 E110 E130 E150
0.0 0.0 0.6 9.4 48.8 32.2 9.1 0 10 20 30 40 50 60
規格外 E50 E70 E90 E110 E130 E150
等級 等級 出 現 率 (% ) 出 現 率 (% ) ヒノキ スギ
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(6)木材の乾燥
木材乾燥は、寸法安定性の向上をはじめ、軽量化、接着や塗装、防腐処理などの性能向 上、腐朽や変色の予防などの理由から、必要不可欠な工程です。木材の乾燥方法は大きく 分けて天然乾燥と人工乾燥があります。 ① 天然乾燥 天然乾燥は主に屋外で太陽熱や風など自然の エネルギーのみを活用して乾燥せさる方法で、 ・広い場所を必要とする以外、特に設備を必要 としない ・木材本来の香りや色つやを活かせる といったメリットがあります。その一方で、 写真 天然乾燥 ・乾燥期間が長期にわたり、一般流通材の柱角でも数ヶ月、特に断面の大きなもので は 1 年を超える乾燥期間が必要となる場合もある ・心持ち材の表面割れが発生しやすい ・含水率が約 20%までしか下がらず、それ以上乾燥させるためには人工乾燥が必要 などのデメリットがあります。 ② 人工乾燥 人工乾燥は乾燥設備を用いて人為的に乾燥さ せる方法で、蒸気式、除湿式、高周波式、減圧 式などの方式があります。また、それらを組み 合わせたハイブリッド式もあります。 人工乾燥の主なメリットは、 写真 人工乾燥設備 ・天然乾燥と比べて大幅に乾燥期間を短縮(柱角で 7~10 日程度) ・天然乾燥では到達できない含水率まで乾燥させることが可能 ・心持ち材の表面割れを防ぐ乾燥も可能 一方、デメリットは、 ・乾燥設備が高価であるため、導入している工場が限られている ・特に高温式の乾燥方法では、木材本来の色つやや香りが損なわれる などが挙げられます。 非住宅木造建築物では、特に調達期間の短縮、また、安定した品質の製材品が要求され る場合が多いことから、人工乾燥が優位といえます。天然乾燥によって木材を調達したい 場合は、乾燥に必要な期間、場所をはじめ、人工乾燥と比べて寸法安定性に劣ることから、- 27 - 施工後の木材の変形について十分に考慮したうえで採用する必要があります。 含水率は、対象となる木材の重量変化が完全になくなるまで乾かしてから測定すること で正確な数値を求めることができますが、実際に使用する木材ではそのようなことはでき ませんので、含水率計(水分計)が用いられています。 含水率計は、携行型のものと製材工場の生産ラインに組み込まれた設置型のものがあり ます。携行型は主に高周波式、設置型は主にマイクロ波式のものが使用されています。 ・高周波式含水率計(携行型) どこでも簡単に含水率を測定できるメリットがある一 方、測定領域が材面から数 cm の範囲に限られ、柱角以上 の断面の大きな木材では中心部の含水率状態が測定結果 に反映されくいという難点があります。 写真 高周波式含水率計 ・マイクロ波式含水率計(設置型) マイクロ波を材面から反対側の材面まで透過させて測 定するため、中心部の含水率状態も測定結果に反映され るのが特徴です。ただし、携行型と比べると設備費がか なり高価となります。 写真 マイクロ波式含水率計 ちなみに、製材のJASにおいて、構造用製材の含水率基準(人工乾燥処理したもの) は下表の通りです。 構造用製材の乾燥材を調達する場合、寸法安定性を考慮すると含水率 15%以下が望まし いのですが、構造用製材は乾燥が難しく、特にスギで断面の大きなものは 15%以下の製品 に限定して調達することは極めて困難だということを認識しておく必要があります。その ため、構造用製材の乾燥材調達については含水率 20%以下が目安といえます。 【構造用製材】 区分 表示 含水率の基準 SD15 15%以下 SD20 20%以下 D15 15%以下 D20 20%以下 D25 25%以下 表 製材のJASにおける含水率の基準(人工乾燥処理) 仕上げ材 未仕上げ材
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(7)接合部の加工
木材と木材をつなぎ合わせる接合部の加工について は、従来は大工による手刻みによるものでしたが、現 在は機械によるプレカット加工が主流となっています。 住宅では 9 割以上がプレカットといわれており、工 期短縮のため必要不可欠なものとなっています。また、 最近では非住宅木造建築物でも活用されています。 写真 プレカットされた材料 主な接合方法は以下の通りです。 ① 在来構法による接合 木材同士のかみ合わせによって力を伝達する方法で、木造建築で最もよく用いられ ている接合方法です。金物はT字型金物や羽子板ボルトなどで、補強のために用いら れます。製材品、集成材のどちらにおいても使用されている接合方法です。 ② 金物工法による接合 細い溝や穴あけなどシンプルな加工を施した部材を突き付けし、専用の金物で接合 する方法です。在来工法の接合と比べ、木材の断面欠損が少ないというメリットがあ ります。構造部材が主として集成材の場合に使用されます。 ③ 特殊金物による接合 個別の接合部ごとに特注で生産した特殊金物を用いる接合方法です。在来構法や金 物工法による接合で対応できない場合に用いられますが、特注品のため金物代が高く なります。 県内にはいくつかのプレカット工場がありますが、金物工法の場合は工場によって使用 できる金物メーカーが限定される場合があります。また、特殊金物を用いる接合では、県 内のプレカット工場で対応できない場合があります。県外のプレカット工場での加工や大 工による手刻み加工が必要となれば、工期や建設コストに影響してくることになりますの で注意が必要です。- 29 -
(8)木材の長寿命化のために
第2章で述べたように、木材は腐朽やシロアリ、直射 日光の影響を受けることがあります。特に床下や水回り 付近は注意が必要です。また、外壁や建物外部に構造材 を露出させる場合は、施工上の配慮が欠かせません。 例えば、 ・風通しを良くする ・庇を大きくとる ・水はけを良くし、水を滞留させない ・水を吸収しやすい木口を保護する などが挙げられます。 写真 シロアリによる被害 また、木材そのものを長持ちさせるためには、 ・防腐処理(薬剤注入)した材料の使用 ・屋外用塗料による塗装(クリア系塗料は紫外線に弱いので注意) ・熱処理木材の使用(熱処理により強度性能が低下するため構造用材料では不可) など、使用箇所によって様々な処理を使い分けることも重要です。- 30 -
2.構造設計のポイント
(1)構造設計
木造建築であっても、正確な構造設計がなされ、施工されていれば、耐震性において も鉄筋コンクリ-ト造(RC造)や鉄骨造(S造)と比べて安全性に優劣はありません。 ① 木造建築で行わなくてはならない構造計算の方法は、規模によって異なります。 建築物を木造とする際、 ・階数が 3 以上 ・延床面積が 500 ㎡を超える ・高さが 13m を超える又は軒高が 9m を超える 場合のうち、いずれかに該当する規模であるときには、構造計算が必要となります。 なお、これらの規模に該当しない一般の木造 2 階建て住宅等においては、構造計算 を行う必要はありませんが、仕様規定を満たすものでなければなりません。 また、枠組壁工法やログハウス工法など特殊な構造方法については、別途国道交通 大臣が定めた技術的基準に適合させる必要があります。 構造計算の方法としては、 ・壁量計算 ・許容応力度計算(一次設計) ・保有水平耐力計算(二次設計) ・限界耐力計算(損傷、安全) ・時刻歴応答解析 などがあります。詳細については、別途専門書(例:建築物の構造関係技術基準解説 書)をご参照ください。- 31 - ② 設計法と使用材料 各計算方法と使用材料との関係は下表の通りです。 無等級材 JAS 構造用製材 構造用集成材、 LVL 等 新しい木質材料 壁量計算* ○ ○ ○ ○ 許容応力度等計算 ○ ○ 限界耐力計算 ○ ○ ○ 時刻歴応答解析 ○ ○ ○ ○ *壁量計算は、戸建住宅を前提。延床面積 500 ㎡以下。 ③ 構造計算を行う際の木材の許容応力度 許容応力度とは、部材の抵抗力の限界を示す値です。そのうち、長期に生ずる許容 応力度とは、屋根などの固定荷重や家具などの積載荷重に対するものであり、短期許 容に生ずる許容応力度とは、地震力、風圧力など短期的に加わる荷重に対する許容応 力度を表します。 長期及び短期に生ずる力に対する許容応力度は、建築基準法施行令第 89 条第 1 項に おいて下表の通り定められています。 表 長期に生ずる力に対する許容応力度(N/mm2) 圧縮 引張り 曲げ せん断 1.1Fc/3 1.1Ft/3 1.1Fb/3 1.1Fs/3 表 短期に生ずる力に対する許容応力度(N/mm2) 圧縮 引張り 曲げ せん断 2Fc/3 2Ft/3 2Fb/3 2Fs/3 上表のFc、Ft、Fb、Fsは、それぞれ木材の種類及び品質に応じて国土交通大臣 が定める圧縮、引張り、曲げ及びせん断に対する基準強度(N/mm2)を表します。 なお、国土交通大臣が定める木材の各基準強度については、次の項目④の通り定められ ています。
- 32 - ④ 製材及び集成材の基準強度 製材(目視等級区分、機械等級区分、無等級)及び集成材(同一等級構成、対称異 等級構成)の基準強度は、以下の表の通り定められています。 【目視等級区分製材】 圧縮 引張り 曲げ せん断 一級 30.6 22.8 38.4 二級 27.0 20.4 34.2 三級 23.4 17.4 28.8 一級 30.6 18.6 30.6 二級 27.0 16.2 27.0 三級 23.4 13.8 23.4 一級 21.6 16.2 27.0 二級 20.4 15.6 25.8 三級 18.0 13.8 22.2 一級 21.6 13.2 21.6 二級 20.4 12.6 20.4 三級 18.0 10.8 18.0 【機械等級区分製材】 圧縮 引張り 曲げ せん断 E50 11.4 8.4 13.8 E70 18.0 13.2 22.2 E90 24.6 18.6 30.6 E110 31.2 23.4 38.4 E130 37.8 28.2 46.8 E150 44.4 33.0 55.2 E50 19.2 14.4 24.0 E70 23.4 17.4 29.4 E90 28.2 21.0 34.8 E110 32.4 24.6 40.8 E130 37.2 27.6 46.2 E150 41.4 31.2 51.6 【無等級材】 圧縮 引張り 曲げ せん断 すぎ 17.7 13.5 22.2 1.8 基準強度(N/mm2) 樹種 ひのき 20.7 16.2 26.7 2.1 2.1 1.8 ひのき すぎ すぎ 甲種 構造材 1.8 乙種 構造材 等級 基準強度(N/mm 2 ) 樹種 表 製材の基準強度(平成12年建設省告示第1452号より抜粋) 乙種 構造材 ひのき 2.1 樹種 区分 等級 基準強度(N/mm2) 甲種 構造材
- 33 - 積層方向※ 幅方向 E170-F495 38.4 33.5 49.5 35.4 E150-F435 33.4 29.2 43.5 30.6 E135-F375 29.7 25.9 37.5 27.6 E120-F330 25.9 22.4 33.0 24.0 E105-F300 23.2 20.2 30.0 21.6 E95-F270 21.7 18.9 27.0 20.4 E85-F255 19.5 17.0 25.5 18.0 E75-F240 17.6 15.3 24.0 15.6 E65-F225 16.7 14.6 22.5 15.0 E65-F220 15.3 13.4 22.0 12.6 E55-F200 13.3 11.6 20.0 10.2 ※積層方向の曲げの基準強度は、上表の値に対して下表に示す集成材の厚さ方向の辺長に対する係数を乗じた値 ひのき 積層方向 3.6 幅方向 3.0 す ぎ 積層方向 2.7 幅方向 2.1 基準強度(N/mm2) 表 対称異等級構成集成材の基準強度 (平成13年国土交通省告示第1024号より抜粋) 強度等級 圧縮 引張り 曲げ せん断 めり込み ひのき 7.8 す ぎ 6.0 辺長(mm) 係数 辺長(mm) 係数 100以下 1.13 750超 900以下 0.89 100超 150以下 1.08 900超 1050以下 0.87 150超 200以下 1.05 1050超 1200以下 0.86 200超 250以下 1.02 1200超 1350以下 0.85 250超 300以下 1.00 1350超 1500以下 0.84 300超 450以下 0.96 1500超 1650以下 0.83 450超 600以下 0.93 1650超 1800以下 0.82 600超 750以下 0.91 1800超 0.80 圧縮 引張り 曲げ※ せん断 めり込み E190-F615 50.3 43.9 61.5 E170-F540 44.6 38.9 54.0 E150-F465 39.2 34.2 46.5 E135-F405 33.4 29.2 40.5 E120-F375 30.1 26.3 37.5 E105-F345 28.1 24.5 34.5 E95-F315 26.0 22.7 31.5 E85-F300 24.3 21.2 30.0 E75-F270 22.3 19.4 27.0 E65-F255 20.6 18.0 25.5 E55-F225 18.6 16.2 22.5 ※曲げの基準強度は、上表の値に対して下表に示す集成材の厚さ方向の辺長に対する係数を乗じた値 ひのき 積層方向 3.6 幅方向 3.0 す ぎ 積層方向 2.7 幅方向 2.1 強度等級 基準強度(N/mm 2) 表 同一等級構成集成材(ラミナの積層数4枚以上)の基準強度 (平成13年国土交通省告示第1024号より抜粋) ひのき 7.8 す ぎ 6.0 辺長(mm) 係数 辺長(mm) 係数 100以下 1.00 200超 250以下 0.90 100超 150以下 0.96 250超 300以下 0.89 150超 200以下 0.93 300超 0.85
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(2)構造計画
中大規模建築物の構造計画では、「広い空間をつくる」、「高い空間をつくる」、「開放的 な空間をつくる」ことが求められます。 ① 広い空間をつくる 戸建住宅では、8~12 畳の部屋をつくるのに 2~3 間(3.64~5.46m)のスパンが求 められますが、中大規模建築物ではさらに広い空間が必要となってきます。 その「留意点」としては、 ・鉛直荷重に対する小屋梁、床梁の強度、剛性 ・入手可能な木材の長さを踏まえた継手仕様、配置 ・耐力壁間の距離増大に対する水平構面の強度、剛性 ・クリ-プ変形絶対量の増大 ・乾燥による断面、材軸方向の縮み ・床の遮音、防振性能 などが考えられます。 この場合、主な木材の使用方法は以下のア~エの通りです。 ア 大断面集成材、LVL 等でスパンを飛ばす 品質、強度性能が保証された木質系材料(エンジニアードウッド)を使用します。 写真 8mスパンの教室の床を支える大断面集成材の梁- 35 - イ 鋼材を組み合わせてスパンを飛ばす
定尺材を基本にし、長スパン部分に鋼材を組み合わせます。
- 36 - ウ 小中断面材を組み合わせてスパンを飛ばす 力学的に強い形を作ることで、小中断面材を使えるようにします。 写真 茂木町中心市街地拠点施設(仮称)の屋根架構 (写真提供:山田憲明構造設計事務所) エ 太く長い丸太や大断面の製材でスパンを飛ばす 地域で供給可能な大径材や長尺材を活かします。 写真 地元の丸太や太鼓材が使われた庁舎(五木村役場)
- 37 - ② 高い空間をつくる 戸建住宅の階高はせいぜい 3m程度であるのに対し、学校や庁舎、工場の中大規模 木造建築では 3.5m~6m程度の階高になります。材長としては定尺の 4~6m材で足り ますが、様々な力学的課題が生じます。 その際、「留意点」としては、 ・柱の座屈 ・壁面積、受風面積の増大による地震、風圧荷重の増大 ・水平荷重時における耐力壁両端柱変動軸力の増大 ・受風外壁、柱の面外応力、変形の増大 などが考えられます。 この場合、木材の主な使用方法は以下のア、イの通りです。 ア 大断面集成材、LVL、大断面製材の使用 品質、強度性能が保証された木質系材料(エンジニアードウッド)を使います。 写真 大断面集成材を用いた吹抜け空間周りの柱
- 38 - イ 小中断面材の組み合わせ トラス、重ね、合板重複柱等を使います。 写真 トラス柱を用いた教会(駿府協会) ※壁の後ろに透けて見えているのがトラス柱 (写真提供:金箱構造設計事務所)
- 39 - ③ 開放的な空間をつくる 例えば、校舎では窓側や廊下側の採光、通風、眺望のための大きな開口が必要とさ れ、また、庁舎などの広大な執務、接客空間では壁を設けにくくなります。 その際、「留意点」としては、 ・耐力要素設置スペースの限定 ・吹抜け部の床水平構面の剛性、強度 ・吹抜け部に面する外壁、柱の面外座屈補剛、耐風 などが考えられます。 この場合、木材の主な使用方法は以下のア~ウの通りです。 ア 高耐力壁の使用 高倍率の耐力壁を用いることで開放性を確保できます。 写真 2 重耐力壁が使われた事例
- 40 - イ ラーメン構造の採用
耐力壁に頼らないラ-メン構造で開放性を確保できます。
写真 東北大学大学院環境科学研究科エコラボ (写真提供:山田憲明構造設計事務所)
- 41 - ウ 強固な耐震コア(RC造やS造)の設置
耐震コアを設けて水平力を集中的に負担させます。
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【参考】最近の中大規模木造建築における動向
平成 22 年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されて以 降、中大規模建築物における木材利用の意識が高まりつつあります。そのような状況のも と、地域の木材を中大規模木造建築で使用するために、新たな試みも行われています。 [例]組立梁(重ね梁) 大断面集成材の代わりに、一定の大きさの製材品を重ねて一体化し、梁せいを大き くしたものです。 写真 組立梁(3 本の製材品を三段重ねし、梁せいを 800mm としたもの) また、中大規模の木造建築物では接合部を強化した木質ラ-メン構造がよく採用されて います。ラーメン構造とは、長方形状に組まれた部材同士の接合部が変形しないよう剛接 合されたものを表します。木質ラーメン構造では、柱脚及び柱・梁接合部に係る力(モー メント)に抵抗するため、強固な接合方法が必要とされます。 以下に木質ラーメン構造における接合方法の例を示します。 ・鋼板挿入ドリフトピン接合 部材にスリットを設けて鋼板を挿入し、あらかじめ空けられた先穴に鋼材の丸棒(ド リフトピン)を打ち込んで形成する接合方法です。 写真 鋼板挿入ドリフトピン接合 ドリフトピン- 43 - ・鉄筋挿入接着工法(グルードインロッド、GIR) 木材に鋼棒を挿入し、樹脂系接着剤で包埋して鋼棒の引き抜き抵抗を高める接合方法 です。 ・ラグスクリューボルト(LSB)接合 大型の木ねじ状金物であるLSBを、引張りのみを伝達する接合部に使用する接合方 法です。 上記以外にも様々な工法があり、併せてそれらの設計法の整備も進められています。
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3.木造・木質化にかかる耐火・防火のポイント
大規模な建築物や不特定または多数の人が利用する建築物では、火災が発生した場合、 人命への危険性や周辺へ被害が広がる可能性が高くなります。建築基準法では、このよう な建築物に対して火災により建築物が倒壊することがないように、火災に対する防火措置 を施さないまま木造等で建設することを制限し、地域、規模または用途に応じて耐火建築 物または準耐火建築物としなければならないと規定しています。(1)耐火・準耐火
① 高さが13mを又は軒の高さが9mを超える木造建築物は原則として耐火建築物にす る必要がありますが、技術的基準(用途により異なります)に適合する場合は、耐火 要件が緩和されます。延べ面積が3,000㎡を超える木造建築物は耐火建築物にする必 要があります。 ※関係法令 【建基法 21 条:大規模の建築物の主要構造部】 1 高さが 13m 又は軒の高さが 9m を超える建築物(その主要構造部(床、屋根及び 階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の 可燃材料を用いたものに限る。)は、第 2 条第九号の二イに掲げる基準に適合する ものとしなければならない。ただし、構造方法、主要構造部の防火の措置その他の 事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物(政令で定め る用途に供するものを除く。)は、この限りでない。 2 延べ面積が 3,000 ㎡を超える建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除 く。)の前項の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可 燃材料を用いたものに限る。)は、第 2 条第九号の二イに掲げ基準に適合するもの としなければならない。 【建基法施行令 109 条の 4:法 21 条第 1 項の政令で定める部分】 【建基法施行令 129 条の 2 の 3:主要構造部を木造とすることができる大規模の建 築物の技術的基準等】 【建基法2条九の二:耐火建築物】- 45 - ② 建物の用途、床面積や階数、また防火地域や準防火地域内外によって、次表の通り、 耐火上の要件が定められています。 耐火建築物 準耐火 建築物 耐火建築物 準耐火 建築物 技術的 基準 耐火建築物 準耐火 建築物 ① 集会場 3階以上の階 3階以上の階 3階以上の階 客席の床面積 客席の床面積 客席の床面積 200㎡以上 200㎡以上 200㎡以上 階数が3以上 左記以外 地階を除く 500㎡超 地階を 100㎡超 階数が4以上 1,500㎡ 除く階数 1,500㎡超 以下 が3 ② 病院 3階以上の階 2階が 3階以上の階 2階が 3階以上の階 2階が 診療所 300㎡以上 300㎡ 以上 300㎡ 以上 共同住宅 宿泊施設 階数が3以上 左記以外 地階を除く 500㎡超 地階を 保育所 100㎡超 階数が4以上 1,500㎡ 除く階数 老人ホーム 1,500㎡超 以下 が3 ケアハウス ③ 学校 3階以上の階 2,000㎡ 3階以上の階 2,000㎡ 3階以上の階 2,000㎡ 幼稚園 以上 以上 以上 体育館 博物館 階数が3以上 左記以外 地階を除く 500㎡超 地階を 美術館 100㎡超 階数が4以上 1,500㎡ 除く階数 図書館 1,500㎡以上 以下 が3 ④ 店舗 3階以上の階 2階が 3階以上の階 2階が 3階以上の階 2階が 3,000㎡以上 500㎡ 以上 3,000㎡以上 500㎡ 以上 3,000㎡以上 500㎡ 以上 階数が3以上 左記以外 地階を除く 500㎡超 地階を 100㎡超 階数が4以上 1,500㎡ 除く階数 1,500㎡以上 以下 が3 ⑤ 事務所 階数が3以上 左記以外 地階を除く 500㎡超 地階を 畜舎 100㎡超 階数が4以上 1,500㎡ 除く階数 1,500㎡以上 以下 が3 防火地域 準防火地域 その他の地域 注:平成27年6月の法第21条及び法第27条の改正により、以下の場合に、大断面木材などを活用し て耐火性の高い材料で被覆する等の措置によらずに準耐火構造等にできることとなりました。 ア 延べ面積が3,000㎡を超える大規模な建築物について火災の拡大を3,000㎡以内に抑える防 火壁等を設けた場合(法第21条) イ 3階建ての学校等について、天井の不燃化又は庇・バルコニーの措置など、区画を超えた早 期の延焼を防止する措置を講じた場合(法第27条)