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戦後に発泡スチロール (PSP) 容器が開発され 機械による大量生産ができ個食化になった 昔は内容量が1 個 100gだったが 50g 30gの小さな容器になり そのまま食べる たれの味や大豆の粒径も大粒 中粒など色々な嗜好が出てきた 大豆の産地も昔は中国だったが アメリカ カナダ 国産 国産でもど

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平成

30 年度 東海大豆現地検討会の講演概要

(1) 東海産大豆へのこだわり 株式会社 小杉食品 代表取締役 小杉 悟 氏 納豆はどのぐらい売れているのか、どうやって作るのか。そのような背景も知っていただ きたい。 1世帯当たりの家計消費金額は、家計調査年報から、1世帯で1年間に、1970 年は 400 円位だが、倍々と増えていった。これは日本中が高度経済成長の時代。その後バブルが崩壊 し、2000 年頃からデフレスパイラルで納豆の消費も伸びず、値段も安くなった。最近はT Vの健康番組の影響もあり、2016 年、2017 年は過去最高となった。 しかし、納豆は全国でも消費にかなり差がある。北海道、東北、関東、北陸はよく食べる が、東海は平均より少ない。最近、近畿、中国、四国、九州がよく食べるため、全体的に底 上げをして売れている。 納豆売り場に行くとたくさん並んでいるが納豆は安い。安い納豆は輸入の大豆が7、8割 で国産大豆が2、3割しか使われていない。私の所でも輸入大豆を使っているが、北海道の 大豆もよく使っている。しかし、北海道は遠く、もう少し近くの大豆の畑を肌で感じながら 成長具合や農家の方とのコミュニケーションをして、三重県の大豆で納豆ができないかと 思い10 年ぐらい前に菰野町の生産者の方にすずおとめの大豆の契約栽培をお願いした。 大豆は畑のお肉と言われている。納豆は大豆を納豆菌で発酵させ、納豆菌を生きたまま食 べるので非常に整腸作用があって良い。ねばねばの中に、納豆キナーゼなどの色々な酵素や ビタミンK2、ポリアミンがあり、とても体にいいと報道されている。納豆は、大豆と納豆 菌がくっつき初めて納豆になる。納豆菌はバチルスサブチルスと言い、枯草菌の仲間で枯れ た草の中に眠っている菌。その中でもワラの中に眠っており、このワラを使い納豆を作った のが始まり。今は、ワラから純粋に納豆菌を取り出し、水に混ざった白い納豆菌がある。こ の納豆菌があるため、ワラでなくても色々な容器で納豆を作ることができる。 工場では、大豆はすべて30kg の袋できれいに選別したものを入荷している。安い納豆を つくるなら輸入の大豆をトラックでばら積みし、大きなサイロに入れ朝から晩まで同じも のを作ればいいが、私どもは、全国に安い納豆を届けるのではなく、東海の地元の方の要望 などに応えるため、20 種類ぐらいの大豆を毎日使う。納豆は基本的にブレンドして混ぜて 使わず、どこの大豆で作った納豆か別々に管理をしている。 小杉食品は祖父母が新潟から出てきて昭和8年に納豆を作り始めた。新潟では当たり前 にあった納豆が三重県にはなく自分で作った。昭和37 年に株式会社となり、平成 10 年に 今の工場に移った。1 日 20 万食、売上げが年間約 12 億~13 億位、従業員は全員で 80 人 ~85 人。平成 13 年に有機 JAS の認証を取得し、平成 15 年に国産の有機大豆納豆を販売、 平成16 年に菰野の生産者の方の大豆で地産地消を始め、平成 21 年からは、いなべのフク ユタカの大豆も使っている。平成22 年には三重県で HACCP の認証も取得。

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戦後に発泡スチロール(PSP)容器が開発され、機械による大量生産ができ個食化になっ た。昔は内容量が1個100gだったが、50g、30gの小さな容器になり、そのまま食べる。 たれの味や大豆の粒径も大粒、中粒など色々な嗜好が出てきた。大豆の産地も昔は中国だっ たが、アメリカ、カナダ、国産、国産でもどこの産地となっている。また、大豆の栽培方法 も、慣行栽培でなく特別栽培や有機栽培、さらに地産地消により生産者の顔が見える大豆な どが注目されるようになった。そして、今では納豆菌を変えて、納豆菌の違いにより臭いや 糸引き具合、硬さ、健康機能の違う納豆も作っている。その中でもDC15 菌納豆。この納豆 は食後の血糖値の上昇を抑制すると昨年から大流行している。また、乳酸菌も納豆菌も一緒 に食べられる乳酸菌入りたれの納豆も発売している。最近では食物アレルギーが話題にな り、学校給食でアレルギーフリーの納豆提供の話があり、グルテンフリーの納豆を提供して いる。 今までは、納豆は価格の安いもの、特に旨味もなくあっさりし、たれの味を工夫して食べ ればいいと言われ、大豆も大量生産に向いている大豆と言われてきた。これからは、臭いが 無い納豆ではなく、いい香りがする納豆や、たれで食べる納豆、たれの味だけではなく豆か ら旨味の強い納豆、また常温でも日持ちのする納豆、乾燥や冷凍など色々な発展がたくさん あると思う。 実際に売れている納豆は、全国納豆協同組合連合会のデータから、購入価格帯は90 円~ 100 円未満のものが多く、100 円~140 円より高いものは少ない。最も良く購入する納豆は、 あまり特徴の無い普通の納豆。一方で納豆を購入する時に最も重要視するのは、価格、日付 が新しいことと納豆の種類。また、2017 年は、大豆の産地を気にして買う人が増えている。 まとめてみると、納豆はいつも決まった納豆を買う。次に決まっていないが一番安い納豆 を買う。その次にこだわりのある納豆を買う。おいしさや安全安心はもちろんだが、国産や 産地が明確なもの、地産地消、顔の見えるものを買う人が増えている。 最近、昔よりも納豆を食べる人が多く、食べる回数も増え、今後はこだわりの消費者が増 えるだろうと考えている。 最後に、安全安心でおいしいのは当たり前だが、できる限り安定な供給をお願いしたい。 色々な方に栽培の研究していただいているが、安定な供給とは品質、数量、価格、特に品質 について納豆は最初の豆の形、豆の顔が最終の製品になる。お客様が製品を食べる時まで目 に入ってくるということ。豆の見た目もとても大切になる。 そのような大豆がこれからも売れていき、注目されると考えているので、地元東海の大豆 をぜひお願いしたい。 (2)2年3作体系下におけるチゼル深耕体系の効果について 三重県農業研究所 生産技術研究室 農産研究科 主幹研究員兼課長 小倉 卓 氏 麦・大豆を県内で何か所か調査をした。全部で 15 軒から 20 軒の農家の方にお願いし、

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同じ農家の圃場で良く取れる所とそうでない所にどのような違いがあるのかを調査した。 麦の生育が良くない圃場へ行くと雨が降ったあとの作土層(ロータリーで耕す作土層は、 10cm から 15cm)は湛水期間が長く、その下の層は土が締め固まり空気の入る隙間が少な いことが分かった。その他麦の低収に影響する要因は、播種時期が遅いために生育量が十分 でない。肥料の施用量が充分ではないのが要因と考えられる。 大豆が取れない圃場での要因は、播種時期が遅いことがあげられる。梅雨の後半になり、 雨が降ると圃場が乾くまで作業ができず、そのため播種時期が遅くなると作業適期も少な くなり、中耕培土の回数も少ないといった状況が発生している。そして、地下水位や麦と共 通で降雨後の湛水時間が長いと湿害になりやすい。また、カメムシによる吸汁被害も多いこ とが多収阻害要因として考えられる。 麦・大豆に共通して言えることは、作土層の排水性、作土下層が締め固まり気層が少ない ことがあげられる。麦も大豆も畑作物なので排水性が悪いならば、湿害を減らす。作土下層 の締め固まったものを柔らかくし気層、隙間を作る必要がある。そこで目をつけたのがチゼ ルプラウ。これは鋤で20cm 以上のところをザクッと深く起こす。三重県では一部で導入し ているが、今後、普及していく見込みはある。チゼルプラウで起こし、縦軸駆動ハローで表 面を砕土整地、その後、小明渠浅耕播種機を使う。小明渠浅耕播種機は平畦を立てながら播 種し、畦と畦の小明渠を作り、播種後発芽までの排水を確保する。 チゼルでの深耕とロータリー耕の違いは、ロータリーは10cm から 15cm のところを耕し 土はかなり細かくなるが、その下の層は、気層が少ない。チゼルの良いところは、ロータリ ーより深い20cm から 25cm を非常に土塊が荒い状態で耕す。その後、縦軸ハローで砕土す ると下はざっくり、上はふかふかになり、下の方の降水後の透水性が良くなる。ロータリー で耕すと降雨後の作土層部分の水がなかなか抜けないが、チゼルで耕すと大きな土塊の間 に隙間があり、水が早く落ちて表面の乾燥も早く、根の入る隙間がある。 試験圃場の例では夜に20mm 以上雨が降った次の日の昼に同じ深さをスコップで掘ると ロータリー耕では地表下10cm のところに水があり、チゼル耕では地表下 22cm まで水がな い。 まとめると、チゼル体系の効果は、作土層が水につかっている時間が短くなる。作土下層 を耕しているので柔らかくなる。降雨後の乾きが早く、今まで雨が降って3、4日作業でき なかったが1、2日でできる。チゼルで起こして、縦軸ハローで砕土をかける作業は、播種 時期より少し早い時期に行うため、播種時期には耕起せず播種作業のみ行い短期間に播種 ができる。圃場の土が乾き畑地化が進む。プラウをかけ稲わらを深くすき込むことができる。 水稲収穫後、小麦生育中、小麦収穫時、大豆生育中、大豆収穫時の作土下層の孔隙率、作 土下層の土の中の隙間(空気や水の隙間や根が生えていたり)の孔隙率を測定した。ロータ リー耕の圃場での孔隙率は40 数%、チゼルを使った方が土の中の孔隙率 50%少しとロータ リーを使った時より土の中の隙間が多くなっている。他の調査で麦と大豆の収量の向上は、 孔隙率50%が境目となっており、チゼル体系により地中の物理性改善効果がある。

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チゼル深耕体系は、ロータリー体系に比べると、チゼルプラウと縦軸ハローと1回作業が 増えるが、作業適期も増え、播種時の作業がまとめてできるので作業能率は遜色ない。 収量は、小麦は調査した中では、チゼル体系の方が多収であった。 大豆播種前の土壌水分は、ロータリー耕の方が若干多い。大豆を播く前で湿っていると播 種作業がやりにくいが、稲刈り後から麦を播く前にチゼルをかけるだけでも土の中の孔隙 (隙間)は大豆を収穫するまで残っており、大豆を播く頃にもほ場水分はロータリーの場合 よりも低くなっている。そのため、大豆の収量もチゼル体系の方が多収となっている。 今後の予定は、これから麦を播き、来年大豆を播くのでこれまで得られた知見を確認しな がら進めていく。 (3)三重県における吸実性カメムシ類の予測と防除 三重県農業研究所 基盤技術研究室 農産物安全安心研究課 主幹研究員 西野 実 氏 イチモンジカメムシ、ホソヘリカメムシ、アオクサカメムシの3種は、ダイズを加害する 主要なカメムシ類であるが、三重県ではそれほど問題にはなっていなかった。しかし、ミナ ミアオカメムシの分布拡大とともに、かなり問題になっている。ミナミアオカメムシは、 2007 年頃から、三重県の伊勢平野まで分布を拡大し、ダイズに被害を与えている。ミナミ アオカメムシにやられるとしわや、でこぼこや黒い斑点やシミができ商品価値が落ちる。被 害粒が増えると収量も落ちる傾向にある。ミナミアオカメムシがいなかった時は被害が少 なく、ミナミアオカメムシが県内のダイズ生産地に侵入してから被害粒率も多くなり、非常 に大きな問題になっている。 ミナミアオカメムシは、ダイズを加害する他のカメムシに比べ、卵を産む個数が多い。卵 塊として産卵されるため、孵化直後から若齢期は集団で生息しているが、終齢幼虫、成虫に なると分散する。イチモンジカメムシ、ホソヘリカメムシ、アオクサカメムシはマメ科植物 を加害するが、ミナミアオカメムシは広食性でダイズ、水稲も加害するが、ナスやトマトの 果菜類にも加害する。 三重県内におけるミナミアオカメムシの分布と寄主植物を数年間、調査をした。その中で 一番特記する事項は、土地利用型で水田作の小麦、水稲、ダイズを餌植物として利用してい ること。 三重県では、ミナミアオカメムシが年間3世代を経過して3世代目成虫が越冬世代にな る。翌春には越冬世代は小麦にやってくる。ただ小麦では繁殖する前に収穫される。そのた め、1世代目は、様々な雑草で繁殖する。その後水稲にやって来て、2世代目が水稲で繁殖 をして3世代目がダイズで繁殖する。 ミナミアオカメムシの越冬可能地域を予測するため、小麦とダイズで5年間、分布調査を おこなった。伊賀ではダイズで第3世代が少し見つかるときもあるが、越冬世代は見つから ない。伊賀は気温が低いためミナミアオカメムシが定着できない。一方、伊勢平野では、分

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布が拡大していった。 これについては、桐谷氏による報告では、1月の平均気温が5度のところとミナミアオカ メムシの分布は大きく一致するとされている。しかし、例えば三重県のいなべ市は冬期の気 温は低いが、小麦でもミナミアオカメムシが見られ越冬していることが確認される。このこ とは桐谷氏からの報告とは一致しない。そのため分布調査結果をもとに新たに越冬可能地 域予測モデルを作成した。冬期の気温条件(気温が低いほど死亡率は高まるが)、越冬に入 る前の第3世代の発生量(発生量が多いと越冬し生存個体が増える)を利用したモデルであ る。 2016 年の冬の条件を使って 10 月の発生量が非常に少ない条件でモデルに当てはめると 伊賀や山間部では越冬できない。これが多発条件としてモデルに当てはめると伊賀や県の 至る所で越冬できる。一方、南の温暖な地域では、密度の多少に関わらず越冬できる分布域 は変わらない。これにより越冬が可能かどうか予測できる。 現在は、ダイズでカメムシ類がどれぐらい発生しているのか予測するための研究を行っ ている。普通、害虫の発生の予測にはフェロモンなどを使って誘引して調査する。ミナミ アオカメムシのフェロモン剤は開発されているが、ほ場に設置しても取れないために使え ない。そこで、農研機構が開発したミナミアオカメムシに対し誘引力の強い波長の光源を 使ったLED トラップでモニタリングができるか調査をしている。トラップに何頭取れた ら、ほ場に何頭位いて、被害が何パーセント位になるか予測する技術を研究中である。こ の研究は、農林水産省委託「収益力向上のための研究開発」プロジェクト「多収阻害要因 の診断法及び対策技術の開発」のなかで農研機構中央農業研究センター北陸拠点と山口県 農林総合技術センター、三重県農業研究所の共同で行っている。 最後に防除では、中村2009 のでは論文でフクユタカの場合、ダントツとトレボンを使い、 開花20 日後、40 日後の2回防除が一番効果的で、一回防除ならば開花 30 日後、2回防除 をするとかなり被害粒を抑えられるとされている。ただ、1回は防除すべきだが、カメムシ 類密度が高い場合は防除をしても被害が多い場合もある。発生量が多い時は一回防除では なく2回防除が必要な場合もある。1回防除、2回防除した場合のカメムシ類の発生量に応 じた被害予測に取り組んでいる。 最後に、今回紹介したトラップでカメムシ類を大量にとって防除できると考えている方 もいるかもしれないが、それは誤解である。このトラップでカメムシ類を捕獲するのは、そ の地域での発生量を把握するためであり、大量に捕獲して防除するためではない。 (4)安定生産に寄与できる難裂莢性大豆品種と多収品種開発の現状 (国研)農研機構 次世代作物開発研究センター 畑作物研究領域 大豆育種ユニット ユニット長 高橋 浩司 氏 日本の大豆の単収は、1980 年、1990 年位から変わっていない。むしろ若干減る傾向にあ り変動の幅が非常に大きくなっている。それに対して、大豆の主要な生産国である、アメリ

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カやブラジルは一貫して増加傾向にあり、日本との差が大きく広がっている。 東海地域の大豆の単収は、平成19 年~平成 23 年の5年間と平成 24 年~平成 28 年の5 年間を比べると低下傾向となっており、愛知県では若干増えているものの、岐阜県、三重県 では低下、特に三重県ではここ数年 100kg/10a を下回る低収となっており、収量の底上げ が必要である。 この東海地域の大豆の低収の要因の一つとして、「フクユタカ」の加工適性が優れるなど の理由から実需者の根強い人気があり、ブランド化していることが新しい品種へ置き換え にくくしていることが考えられる。 低収要因としては、播種時の降雨により播種の遅れ、播種後の干ばつ、開花から登熟期に かけての高温干ばつで落花や落莢、そして収穫時期の長雨による刈り遅れが考えられる。そ の他、害虫や台風による倒伏もある。他の要因では、規模拡大により麦との作業競合が生じ ており、収穫作業が遅れる。そのため裂莢しやすい現在の品種では、成熟後2、3週間経過 すると自然裂莢し、収量の低下に結びつくと考えている。 「フクユタカ」の成熟莢を60 度で3時間通風乾燥すると、ほとんどの莢がはじける。一 方新しく品種となった難裂莢性の「フクユタカA1 号」や「サチユタカ A1 号」はほとんど はじけない。 難裂莢性品種「フクユタカA1 号」は、難裂莢性を有する「ハヤヒカリ」に「タチナガハ」 や「ふくいぶき」を交配し、その後、その後代を「フクユタカ」に6回交配し、「フクユタ カ」に似た草姿や品質の系統を選抜して育成した品種である。 つくばの圃場で難裂莢性の生産力検定試験をした。元の品種との違いは、成熟期が「えん れいのそら」と「ことゆたかA1 号」では若干遅いが、「サチユタカA1 号」「フクユタカA1 号」は元品種とほぼ一緒で、主茎長と収量もほぼ同じである。粒の大きさは、「フクユタカ A1 号」「えんれいのそら」「ことゆたか A1 号」で元品種より若干大きい。豆腐を作る時に 大きく影響する蛋白質含有量は、4品種とも元の品種とほぼ同じだった。 愛知県知立市で実施した難裂莢性の現地試験では、「フクユタカA1 号」の自然裂莢によ る脱粒はほとんどないが、「フクユタカ」はかなりはじけていた。また、コンバイン収穫時 にコンバインとの接触による脱粒も「フクユタカA1 号」で少なく「フクユタカ」で多く発 生した。その結果、コンバインでの全刈収量は「フクユタカ」と「フクユタカA1 号」で 60kg の差が生じ、難裂莢性の減収の低減効果が確認できた。 「えんれいのそら」と「フクユタカ A1 号」について、蛋白質、粗脂肪、全糖、少糖類、 遊離アミノ酸組成の違いを調べた。エンレイ系とフクユタカ系ではショ糖含量に違いがあ り、フクユタカ系でショ糖が少し高くなったが、「フクユタカ」と「フクユタカA1号」で はいずれの成分にも差は見られなかった。 実需者における加工適性の評価試験を 2016 年からの 3 年でおよそ 100 試験を行い、そ のうち 90 の試験で元の品種と同じという結果が出た。品種群設定を行えば、「フクユタカ A1 号」「サチユタカ A1 号」「えんれいのそら」はそれぞれ元品種、「フクユタカ A1 号」な

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らば「フクユタカ」、と同じ名前で流通することができる。 「関東 127 号」は難裂莢性の系統で三重県が「フクユタカ」に変わる品種として有望視 している系統で、「フクユタカ」に難裂莢性を付与し早生化した系統である。耐倒性がフク ユタカより優れている。三重県の試験場での奨励品種決定調査試験の3ヵ年の結果の平均 では、成熟期が5日ほど早く、倒伏程度もフクユタカが2.3 に対して 0.3 と非常に少ない。 フクユタカに比べ主茎長は若干短いが多収。フクユタカより成熟期が早く、蛋白含量が少し 低い。 2010 年にアメリカで 10a の収量が 1000kg 超えの世界記録を達成し、その後、世界記録 は更新され2016 年に 1141kg の結果が出た。栽培上の注目点は、鶏糞を多用して土作りを 行い多収の記録を出していることである。 これを受けて農研機構内では多収に向けたプロジェクトを実施し、早播栽培による多収 化を目指した品種比較試験を実施した。その結果、海外遺伝資源で多収を示すものが多く、 アメリカの品種で「UA4910」が 10a 当たりの収量が 500kg を越えた。このときの「サチ ユタカA1 号」や「フクユタカ」は 300kg を超えていない。「5002T」「Santee」も 400kg 台後半の単収となり、多収を示す海外品種が多く見られた。ただし、百粒重は日本品種より 小さく、20g に達していないものがほとんどであった。また、豆腐で重要な蛋白質含有率は 40%程度と低いことから、今後、品種改良の余地がある。 最近における次世代作物開発研究センターでの人工交配は年に 100 組合せ以上行ってお り、その後、F2〜F4 の集団選抜、F5 の個体選抜でも従来よりも多くの材料を取り扱うよ うになっている。F6 の系統初年目試験では草姿や莢付き等を評価して系統選抜を実施して おり、供試系統数は1組合せあたり100〜200 系統、全体で 2000 系統を越えており、従来 育種の2倍以上の系統数を評価している。その後の系統選抜では原種を作り純系化を進め るとともに、作系系統または関東系統として各県に配付し収量試験を行っており、これら収 量試験の規模も以前と比べると2.5 倍以上になっている。 昨年実施した収量試験の中で、多収系統の「関東138 号」では 500kg 以上となる事例が 見られ、極多収系統として有望と考えている。 新しい系統には難裂莢性がほぼ導入されるようになっており、今後は葉焼病やウイルス 病の抵抗性も付与するように育種試験を進めている。 「UA4910」や「Delsoy5500」は初期の生育は緩慢で開花期までは主茎長が短く、一方、 「サチユタカ」「フクユタカ」は長くなる。この初期生育が緩慢な系統として「関東138 号」 (無限伸育型)や「作系242 号」(有限伸育型)があるが、この特徴を利用すれば耐倒伏性 に寄与できると考えている。 育種の効率化を進めるための試みとして、真空播種機による播種や、プロットコンバイン で収穫することを検討している。これまでの収穫は手刈りで行い、系統ごとに網袋に入れ、 乾燥してから脱穀するという方法で行っており手間がかかっていたが、試験用のプロット コンバインの導入により、畑で脱穀まで一気に行えることから、育種の効率化が図れるもの

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と考えている。 その他、黒根腐病抵抗性の導入を進めており、現在有望な遺伝資源が見出され、本病に関 わるDNA マーカーも開発されつつある。今後、本病や葉焼病、ウイルス病等に関する DNA マーカーを利用して、育種をスピードアップして進めていく方針である。 【質疑】 Q.三重県農業研究所のチゼル深耕体系の効果については、チゼル深耕をした場合の孔 隙率は上がり、水分は下がり、気相率は上がるという結果が示されており物理性が改 善されることが効果として分かった。実際に収量が高くなっていることも考えると、 窒素やリン酸カリなど肥料成分の吸収が良くなっており化学性の変化の推移について 継続的な調査は行っているのか。 A.研究所の土壌肥料担当で土壌中の養分は別途検討している。 Q.毎年大豆が取れなくなっている。地力増進のために毎年堆肥の散布を行っているが増 収になっていない。他に効果のあるものがあるのか。 A.鶏糞が結構効いているような感じがしている。アメリカの多収の事例でも、鶏糞を毎 年入れて対応し、多収になっている事例がある。また、農研機構のつくばの圃場でも以 前、毎年、鶏糞を入れていた圃場があった。そこで大豆を栽培していた研究室で非常に 出来が良かった。鶏糞は微量要素から考えても施用する価値があるのではないか。また、 「フクユタカ」という品種が、ここ東海地域では、最近の極端な気候変化に対応できず、 播種の失敗や苗立ち不良、倒伏等の発生によって生じているように考えられる。長期的 には「フクユタカ」からの転換も検討する必要がある。 Q.今年のような極端な乾燥・小雨(冠水できないほ場)の場合、栽培管理対策について 教えてほしい。 A.大豆は播種の時には水が多いともちろんダメだが、今年のように水が全くない時は播 種する前に畑に水を入れるなどして水を確保する必要がある。干ばつになったところ では播種して芽が出たとしても、根は活着しないので生育は悪く、枯死してしまうこと がある。今年、実際に見た農家さんの例では、8月に播き直しをした農家の方は、水を 入れてから耕起をして播き直しを行い、苗立ちを確保していた。苗立ちさえしっかりで きればなんとかなる。せめて播種時だけでも水を確保する仕組みづくりを検討してほ しい。 Q.海外遺伝資源を利用した多収系統の選抜については、海外では種子の質もあるが播種 量が非常に多いと認識している。それに対して、播種量については栽培法の範ちゅう だが、選抜は一般的な日本の播種量、株数でやっているのか、播種量を増やしていくこ

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とや、選抜候補の中でも選抜の条件も検討していくことはあるのか。

A.試験は従来どおりの畦間 70cm、株間 13cm で実施しており、今のところ密植栽培試 験はやっていない。現在、真空播種機を用いた試みを行っているが、これを利用すれば 密植試験もやりやすくなるので、今後はそのような試験も実施できるようになると考 えている。

参照

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