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原著論文 日本生理人類学会誌 Vol.22,No , 夜の青色光と赤色光の生理作用 : 測定項目間の違いと印象評価との関連性 落合将太郎 * 1 原田和樹 * 1 李相逸 * 2 樋口重和 * 2 PHYSIOLOGICAL EFFECTS OF BLUE LIGHT A

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1.諸  言 眼の網膜に入射した光の情報は、網膜視床下部路を 介して、体内時計の中枢である視交叉上核に伝達され、 概日リズム、内分泌、自律神経、体温、覚醒度などに 作用する。これらは、光の明るさや色の知覚とは異な るため、光の非視覚作用(non-visual effects)または非 撮像系作用(non-image forming effects)と呼ばれてい る。視蓋前野を介して引き起こされる瞳孔の対光反応 も非視覚作用の一つである。これらの光の非視覚作用 の大きさは、光の量だけではなく、光の波長にも依存 することが知られている。例えば、夜間の光曝露によっ て引き起こされる概日リズム位相の後退、メラトニン 分泌の抑制、深部体温の上昇、眠気の抑制などは、短 波長の青色光で強くなることが報告されている1- 4) この青色光による強い作用は、メラノプシンと 呼ばれる光感受性タンパクを含む網膜神経節細胞 (melanopsin containing retinal ganglion cell: mRGC)が 寄与している。mRGCはヒトも含めた哺乳類の網膜に、 桿体と錐体以外に新たに存在することが発見された光 感受性細胞である5) 6)。mRGC は青色光に反応のピー クを持ち、脳の視交叉上核に直接投射して、様々な非 視覚作用を引き起こしている。メラトニン分泌抑制や 瞳孔の対光反応も約460 ~ 480nm 付近の青色光で最 大となることが分かっている1) 4) 7) 一方で、視覚作用とは、外側膝状体を介して脳の視 覚野に伝達された光の情報によって生じる明るさや色 の知覚および、それに伴う心理的または生理的な作用 を指す。一般的に、色から受ける主観的な印象を調べ た研究では、青色は静的であり、赤色は動的である8) 有彩色照明を用いた実験でも同様の印象評価が得られ ている9)。心理的な評価だけではなく、色光の生理的 な影響を調べた研究もあるが、統一的な見解は得られ ていない。脳波を用いた研究では、青色光で覚醒作用 が強かったとする報告もあれば10)、反対に赤色光で覚 醒作用が大きかったという報告もある11)。脳波以外に

夜の青色光と赤色光の生理作用:測定項目間の違いと印象評価との関連性

落合 将太郎* 1・原田 和樹* 1・李 相逸* 2・樋口 重和* 2

PHYSIOLOGICAL EFFECTS OF BLUE LIGHT AND RED LIGHT AT NIGHT: MEASUREMENT DEPENDENCE AND CORRELATION OF SUBJECTIVE IMPRESSION

Shotaro OCHIAI, Kazuki HARADA, Sang-il LEE, Shigekazu HIGUCHI

Abstract

The aim of the present study was to determine the measurement dependence of the effects of color light and to clarify the correlation between physiological responses and subjective impression. Seventeen male university students without color vision deficiency were exposed to blue light and red light (200 lx at eye level) at night for three hours. The effects of blue light on pupil constriction and melatonin suppression were significantly greater than the effects of red light. On the other hand, heart rate tended to be higher under the red light condition. There was no significant difference between the effects of blue light and red light on rectal temperature or alertness. Individual variations in the subjective impression of light were correlated with heart rate and rectal temperature but not with melatonin concentration or pupil constriction. The results suggest that the physiological effects of light depend on measurements and that these variations may be influenced by subjective impression.

キーワード: 光の非視覚作用,メラトニン,直腸温,心拍数,覚醒度

Key words: Non-visual effects of light, Melatonin, Rectal temperature, Heart rate, Alertness

*1九州大学大学院統合新領域学府

Graduate School of Integrated Frontier Sciences, Kyushu University

*2九州大学大学院芸術工学研究院

Department of Human Science, Faculty of Design, Kyushu University

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心拍数、血圧、皮膚温なども測定した実験では色光に よる生理的な影響に違いがなかったことが報告されて いる9) 光の生理作用には、視交叉上核を介した光の非視覚 的な作用だけでなく、視覚的な色知覚から生じる心 理的な作用が何らかの形で含まれている可能性があ る。また、光の非視覚作用には測定項目間でのばらつ きや個人差が大きいことも報告されている12)。これら が、色光の生理作用の評価が一致しない原因かもしれ ない。したがって、本研究では赤色光と青色光に曝露 したときの生理作用と印象評価を同時に行い、測定項 目間での影響の現れ方の違いと印象評価の個人差と生 理作用の相関を明らかにすることを目的に実験を行っ た。 2. 方  法 2.1. 被験者 被験者は健康で色覚異常のない男子大学生17名(平 均年齢±標準偏差 : 19.3±1.4歳)であった。夜勤や交 替制勤務に従事していないこと、1ヶ月以内に時差が 5時間以上ある海外旅行をしていないことを被験者の 条件とした。被験者には実験内容を書面と口頭で説明 した後に書面で同意を得た。本研究は九州大学大学院 芸術工学研究院の研究倫理審査委員会の承認を得て 行った。 実験に先立ち、被験者の朝型夜型指向性を日本語 版の質問紙(Morningness-Eveningness Questionnaire: MEQ)を用いて測定した13)。その結果、ほぼ夜型が2 名、中間型が14名、ほぼ朝型が1名で、極端な朝型 や夜型の被験者はいなかった。被験者には実験の1週 間前より7:00 ~ 9:00起床、23:00 ~ 1:00就寝の睡眠統 制を実施した。この間の睡眠活動パターンは睡眠覚醒 判定の可能な生活習慣記録機(ライフコーダ GS, スズ ケン)によって記録された14) 2.2. 光条件 光条件は青色光と赤色光の2条件とした。光の照 射方法は天井照明で、光源にはカラー蛍光灯(青色 : FPL36CB, National, 赤色 :FPL36CR, National)を用い た。赤色蛍光灯にもわずかながら青色成分が含まれ ていたため、本実験では赤色のセロハンを用いて青 色成分をカットした。光の測定には分光放射照度計 (CL-500A, コニカミノルタ)を用いた。分光放射照度 については図1に示す。本研究では光の条件を放射照 度ではなく照度(目の位置での鉛直面照度で200 lx)で 統一した。光の非視覚的な作用を評価する際は放射照 度で統一することが多いが、本研究では視覚からの心 理作用のことも考慮して心理物理量である照度で統 一した。なお、赤色と青色の放射照度はそれぞれ86.9 μW/cm2と191μW/cm2であった。 実験はクロスオーバー・カウンターバランスデザイ ンで実施した。各光条件の間には最低1週間の間隔を 設けた。なお、本実験では、コントロールとして白色 光(色温度5000K、照度200lx)での実験も行ったが、 本論文の目的からずれるため分析の対象外とした。ま た、慣れの影響を取り除くために、本実験の前に練習 も兼ねて Dim Light(15 lx 以下)での実験を一度実施 している。 2.3. 測定項目 各色光条件に対する生理的反応として、唾液中メラ トニン濃度、心拍数、血圧、瞳孔サイズの測定を行った。 唾液中のメラトニン濃度はコットン製のサリベット (51.1534J, SARSTEDT)を用いて唾液を採取し、放射 免疫測定(Radioimmunoassay: RIA)法を用いて分析を 行った(RK-DSM, Buhlmann)。心拍数は、双極誘導法 (心電図)を用いて検出された R-R 間隔から算出した。 心電図は小型マルチ生体アンプ(Polyam4, ニホンサン テク)を用いて1000Hz のサンプリング周波数で測定 した。測定中は2秒吸気、2秒呼気の4秒周期で5分 間の呼吸統制を行った。血圧は電子血圧計(HEM737, オムロン)のカフを左上腕に装着させ、収縮期血圧と 拡張期血圧をそれぞれ計測した。瞳孔径は電子瞳孔計 (FP-10000, テイエムアイ)を用いて右目を5秒間測定 した。測定中は被験者に前方の注視点に注目させ、瞬 きをしないように教示した。また、直腸温を測定する ために、プローブカバー(RC5020-A, 日機装サーモ) をかぶせた温度センサ(LT-ST08-11, グラム)を直腸に 挿入させ、データロガ(LT8A, グラム)にて1分単位 の深部体温の記録を常時行った。 図1 実験に用いた色光の分光放射照度 (眼前での実測値)

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覚醒度の評価には主観的評価としてカロリンス カ 眠 気 尺 度(Karolinska Sleepiness Scale: KSS)を 用

いた15)。客観的な評価としてはヴィジランス課題

(Psychomotor Vigilance Task: PVT)を行った。PVT は 機器のディスプレイに2~ 10秒のランダムな時間間 隔で表示される視覚刺激に対してできるだけ早くボタ ンを押す課題で、客観的覚醒度の指標としてよく用い られる16)。計測は5分間行い、反応時間の平均値を求 めた。また、反応時間が500msec 以上の回数を Lapse 回数(見落とし回数)として記録した。 色光に対する心理的な印象評価は SD(Semantic Differential)法によって行われた。質問項目は、先行 研究8) 9)を参考に、「快―不快」、「好き―嫌い」、「元 気が出る―疲れる」、「安定―不安定」、「自然―不自 然」、「美しい―醜い」、「軽い―重い」、「熱―冷」、「陽 ―陰」、「動―静」、「強い―弱い」、「激しい―穏やか」、 「浮ついた―落ち着いた」、「覚醒―鎮静」、「うきうき ―しみじみ」、「派手―地味」の16項目で、VAS(Visual Analogue Scale)法で回答させた。 2.4. 実験手順 実験は7月に行われた。実験室環境は室温26℃、 相対湿度50%とし、被験者全員の服装は半袖 T シャ ツ・トランクスに統一した。1回の実験につき複数人 の被験者(平均3~4名)を同時に測定した。被験者 は19:00に実験室に来所し、着替えや電極などの装着 のための準備を行った。21:00から0:00まで Dim Light 条件で安静に過ごし、その後の0:00から3:00まで色 光曝露を行った。実験中は唾液中のメラトニン濃度、 心拍数、KSS、印象評価のアンケート、PVT、血圧 の順で1時間おきに測定を行った。瞳孔径の測定は、 22:30と0:30に2回行った。直腸温は実験開始から終 了まで記録した。実験中、被験者には椅子に座って安 静状態で過ごすように指示した。光曝露前の時間帯 (21:00 ~ 0:00)では暗い画面での PC やタブレット端 末の操作、読書、DVD の鑑賞などを許可したが、光 曝露中の時間帯(0:00 ~ 3:00)では視点を固定するた めに被験者の目の高さで、約40 cm 前に置かれた小型 の DVD プレーヤーによる映画鑑賞を義務付けた。映 画の内容は感情を喚起させにくいドキュメンタリー形 式の内容を選定した。ディスプレイの明るさは被験者 の鉛直面照度に差異が見られない程度に輝度を下げ調 整した。実験終了後は実験室で睡眠をとらせた。被験 者は9:00までに起床し、その後退所した。 2.5. 統計処理 光曝露後の各測定値の分析には、光曝露前(23:30) の値を基準とした変化量を用いた。その理由として、 被験者によって色光間で光曝露前の値が異なる場合が あったことと、光の印象評価との相関を見る際に、絶 対値では個人差が大きい測定項目もあり、相関関係を 正確に分析できない場合があったからである。統計 解析は、色光・時刻を要因とする反復測定による二 元配置分散分析、または対応のある t 検定を用いた。 p<0.05を有意差ありとした。 印象評価の結果には光曝露後である0:30、1:30、2:30 の印象評価の値を平均したものを用いた。主因子法を 用いて、バリマックス回転による因子分析を行い、固 有値上位3位までの因子を抽出し、因子負荷量と因子 得点係数行列、因子得点を求めた。因子得点と生理デー タの関係はピアソンの相関分析を用いた。相関分析に 用いた測定項目の変化量は、曝露中(0:30, 1:30, 2:30) の3回の変化量の平均を個人の代表値とした。 3. 結  果  3.1. 生理データおよび覚醒度の結果 唾液中メラトニン濃度に関して、Dim Light 条件で 事前に測定したデータにおいて、メラトニン濃度が低 いままで(常に3pg /ml 以下)、光の影響を検出できな かった1名、夜間に上昇するはずのメラトニン濃度が 逆に低下していた1名、Dim Light 条件の方が光曝露 条件よりもメラトニン濃度が低かった2名については 分析から除外した。図2a に唾液中メラトニン濃度の 変化量を示す。分析の結果、光条件の主効果(F=6.843, p<0.05)と時刻の主効果(F=11.388, p<0.001)がそれ ぞれ認められた。両要因の有意な交互作用はなかった (F=0.148, ns)。両条件とも夜間にメラトニンの分泌 が高まっていた。色光間の比較では青色光条件で赤色 光曝露時よりも唾液中メラトニン濃度が有意に低かっ た。 直腸温の変化量については、時刻の主効果は見られ たが(F=88.81, p<0.001)、色光の主効果はなかった (F=0.135, ns)。両要因の有意な交互作用もなかった (F=0.994, ns)(図2b)。両条件とも夜間に有意に直 腸温が低下していた。 心拍数の変化量については、時刻の主効果があった (F=16.344, p<0.001)。光条件の主効果は有意な傾向 が見られた(F=4.307, p<0.1)。両要因の有意な交互作 用はなかった(F=1.161, ns)(図2c)。心拍数は夜間 に有意に減少した。色光の影響としては赤色光の方が 青色光よりも心拍数の低下が小さい傾向にあった。 KSSの変化量については、時刻の主効果があった (F=7.078, p<0.01)(図2d)。光条件の主効果は見ら れず(F=0.107, ns)、両要因の有意な交互作用もなかっ た(F=0.294, ns)。

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PVTの反応時間について、機器トラブルによって 青色光条件で複数のデータが失われてしまった2名 と、外れ値が認められた1名(スミルノフ・グラブス 検定にて有意差を確認)を分析から除外した。平均反 応時間の変化量について、時刻の主効果(F=2.263, ns)、光条件の主効果(F=0.468, ns)、両要因の交互 作用の全てにおいて有意ではなかった(F=0.007, ns) (図2e)。 瞳孔径の変化量は光曝露前(22:30)の値から光曝露 中(0:30)の値の差分である(図2f)。1sample t-test の結果、両条件とも光曝露前に比べて有意に瞳孔 が縮瞳していた(赤色光 : t=-3.77, p<0.01; 青色光 : t=-21.16, p<0.01)。色光間の違いについては、青色光 で赤色光よりも縮瞳量が有意に大きかった(t=13.47, p<0.001)。 3.2. 色光の印象評価の結果 色光に対する印象評価について因子分析を行った結 果、三つの因子が抽出された(表1)。先行研究に従っ て8) 9)、それぞれを活動性、評価性、力量性と命名し 図2 各色光条件における生理値の変化量の平均値と標準誤差。 a: 唾液中メラトニン濃度の変化量(n=13)、b: 直腸温の変化量(n=17)、c: 心拍数の変化量(n=17)、d: KSS 点数の変化量(n=17)、 e: PVTの平均反応時間の変化量(n=14)、f: 瞳孔径の変化量(n=17)。 ***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、† p<0.1

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た。印象評価の項目を因子別に並べ替えた結果を図3 に示す。赤色光と青色光の印象評価を比較したところ、 活動性の全ての形容詞(陽、動、熱、浮ついた、不安 定)と力量性の一部の形容詞(強い、激しい、重い)に 関して赤色光で有意に高い値を示した。逆に、評価性 の一部の形容詞(好き、快、美しい)に関して青色光 で高い値を示した。 3.3. 生理値と印象評価の相関 色光別に生理値の変化量と各因子の得点の相関を求 めた。メラトニンはどの因子得点との間にも有意な相 関はなかった(図4a)。直腸温は赤色光で力量性との 間に有意な正の相関が見られ(r=0.560, p<0.05)、赤 色光に対して力量性が高いと感じた被験者ほど直腸温 の低下が小さかった(図4b)。また、赤色光で直腸温 と活動性との間に正の相関の傾向があった(r=0.439, p<0.1)。心拍数は青色光で評価性との間に有意な負 の相関関係があり(r=-0.693, p<0.001)、青色光に対 して評価性が高いと感じた被験者ほど心拍数の低下が 大きかった(図4c)。瞳孔面積、主観的覚醒度、反応 時間においてはどの因子得点とも有意な相関はなかっ た。 4. 考  察 本実験で色光の生体への影響は測定項目間で異なっ ていた。また、印象評価との相関も測定項目間で異なっ ていた。光の非視覚的な作用を強く受ける測定項目、 言い換えると青色光の影響を強く受けるものとして、 唾液中のメラトニン濃度と瞳孔があった。これらの測 定項目は印象評価との相関もなかった。一方で、心拍 数および直腸温には青色光の非視覚的な影響は認めら れなかったが、印象評価との相関がみられた。以下の 考察では、測定項目毎に色光の生理作用および印象評 価との関連について考察する。 メラトニンは青色光で赤色光に比べて有意に分泌が 低かった。夜間のメラトニン分泌に関しては、青色帯 域の短波長光がメラトニンの分泌抑制に強く影響する ことが過去の先行研究からわかっており1) 4)、本研究 の実験結果も過去の知見を支持するものであった。ま た、印象評価との有意な相関は認められなかった。メ ラトニンは光以外の影響を受けにくいことから概日リ ズムの有効な指標としてよく用いられている17)。また、 光をイメージしても影響を受けないことも報告されて いる18)。本研究でも光の色光から受ける印象はメラト ニンに影響していなかった。以上のことから、メラト ニンは mRGC を介した非視覚的な作用に強く依存す る測定項目であることが改めて示された。 瞳孔もメラトニンと同様に青色光の作用が顕著であ り、青色光で赤色光に比べて有意に縮瞳していた。こ れは先行研究で報告されている通り、mRGC を介し た光の非視覚作用による影響が強く引き起こされたた めと考えられる7) 19)20)。瞳孔は光以外でも自律神経系 支配の影響を受け、交感神経の活動が高まれば散瞳し、 副交感神経の活動が高まれば縮瞳する21)。したがって、 何らかの印象評価と関係がでてくる可能性も考えられ 表1 因子分析の結果(因子負荷量) 因子 因子の 解釈 Factor1 Factor2 Factor3 陽 0.858 0.102 0.076 活動性 動 0.829 0.047 0.214 熱 0.708 -0.009 0.187 浮ついた 0.698 -0.062 0.213 不安定 0.684 -0.380 -0.245 元気 0.314 0.941 -0.148 評価性 好き -0.112 0.878 -0.009 快 -0.149 0.870 0.063 美しい -0.454 0.537 0.070 強い -0.064 -0.154 0.921 力量性 激しい 0.219 0.214 0.711 重い -0.081 -0.287 0.606 派手 0.249 0.037 0.585 覚醒 0.059 0.399 0.541 うきうき 0.387 0.286 0.446 固有値 7.563 2.746 1.129 寄与率(%) 50.42 18.31 7.52 累積寄与率(%) 50.42 68.73 76.26 図3 各色光条件における印象評価の平均値と標準誤 差(n=17)。 ***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05

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たが、本研究では印象評価と有意な相関は認められな かった。 直腸温は夜間に概日リズムを反映して両条件とも有 意に低下していたが、色光による違いはなかった。過 去の青色光と緑色光で比較した実験では、青色光の方 が直腸温の低下が小さいことが報告されている2)。今 回の実験でも青色で直腸温の低下が小さいことを予 測していたが、赤色光と青色光で差はなかった。印象 評価では赤色光で青色光と比べて活動性と力量性が高 かった。相関分析でも力量性と活動性の得点が高い人 ほど直腸温の低下が小さかった。以上のことから、赤 色光に対する心理的な影響の大きさとその個人差が直 腸温に影響を及ぼした可能性があり、その結果として 青色光で強く作用するはずの非視覚的な作用が明確に 見られなかったと考えられる。 心拍数も夜間に概日リズムを反映して両条件とも有 意に低下していた。色光の影響については、有意では ないが青色光の方が赤色光に比べて低下が大きい傾向 にあった。この結果は、青色光で非視覚的な作用が強 いとする過去の研究2)とは逆の結果である。光の印象 評価では、赤色光は活動性と力量性において青色光よ り高かった。また、心拍数と光の印象評価では、青色 光に対する評価性(「快」「好き」「美しい」など)が高い ほど心拍数の低下が大きかった。以上のことから、色 光に対する心理作用が生理反応に影響した結果、心拍 数は赤色の方が高い傾向にあった可能性が考えられ る。 客観的覚醒度の指標である PVT の反応時間と主観 的眠気尺度である KSS はどちらも夜間に増加してい たが、2:30だけ低下していた。これは実験の最後の測 定で、被験者の覚醒度が一時的に増加したことが理由 と思われる。色光条件による主効果は認められなかっ た。先行研究では夜間の青色光には緑色光と比較して 主観的な覚醒度を高めていた2)。しかし、赤色光と比 較した今回の実験では色光条件間で有意差が見られな かった。mRGC の刺激量は青色光で大きいにも関わ らず、覚醒度には差が認められなかった。この結果は、 赤色光の覚醒作用を報告した先行研究を支持する結果 と言える11) 22)23)。主観的な印象との相関は認められな かったが、赤色光では mRGC を介さない視覚的な作 用が覚醒度に影響していた可能性が考えられる。 最後に、本研究では光の印象評価も同時に行ったた め、過去の先行研究に従って、光の条件を心理物理量 である照度で統一した9) 22)。しかし、光の非視覚作用 について先行研究の結果と比較するには光強度を物理 量である放射照度やフォトン密度で統一した実験も必 要である1- 3)10)。さらに、過去の非視覚作用を調べた 研究では網膜に到達する光の量を統一するために散瞳 図4 各色光条件における生理値と印象評価の関係。 a:唾液中メラトニン濃度の変化量と評価性の相関関係(n=13)、 b:直腸温の変化量と力量性の相関関係(n=17)、c: 心拍数の変 化量と評価性の相関関係(n=17)。 ***p<0.001、*p<0.05

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薬を用いた実験もある1) 3)。本研究では散瞳剤を用い ていないので、青色での瞳孔の収縮が強く起こった状 態で実験を行っている。このことが青色光の非視覚的 な作用を減じた可能性もある。色光の生理反応と心理 反応の関係を明らかにするには、光の条件を心理物理 量と物理量の両方の影響を網羅できるような実験を重 ねていく必要がある。また、本研究では測定項目の間 の関連について検討していない。それぞれの測定項目 は相互に関連しあっている可能性も報告されている ことから(例えば瞳孔面積とメラトニン抑制24)など)、 それぞれの測定項目間の協関性についての検討も将来 的に必要と思われる。 5. 結  論 本研究の結果から、mRGC による非視覚的な影響 を受けるとされていた生理反応の中でも、メラトニン や瞳孔のようにその影響を強く受ける測定項目と、心 拍数や体温のように非視覚作用の影響を受けにくい測 定項目があることが分かった。また非視覚的な作用を 受けにくい測定項目においては、光の印象評価によっ て反応が異なる可能性も示唆された。 《謝  辞》 本研究は JSPS 科研費24657176、 15H02426の助成を 受けたものです。 《引用文献》

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