• 検索結果がありません。

Vol.39 , No.1(1990)002所 理恵「『成実論』と譬喩者・経量部」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Vol.39 , No.1(1990)002所 理恵「『成実論』と譬喩者・経量部」"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

﹄と

﹃ 成 実 論 ﹄ の 所 属 の 部 派 に つ い て、 現 在 一 般 に 認 め ら れ て い る の は 経 量 部 所 属 説 で あ る。 一 方 ﹃ 成 実 論 ﹄ の 根 本 的 立 場 は、 真 俗 二 諦 ・ 中 道 ・ 空 で あ る。 こ の 二 つ の 前 提 か ら、 ﹃ 成 実 論 ﹄ の 空 思 想 は 経 量 部 の 思 想 と 何 ら か の か か わ り が あ る は ず で あ る、 と 考 え ら れ る。 し か し 又、 経 量 部 の 思 想 と い う も の も 独 自 の 論 書 が 残 さ れ て い る 訳 で な く、 更 に 従 来 の 研 究 で は < 経 量 部 の 思 想 の 先 駆 的 形 態 が 讐 喩 者 で あ る> と し、 思 想 的 に は、 ﹁ 讐 喩 者 ・ 経 量 部 ( Darstantika-Sautrantika) ﹂ と 一 つ の も の と し て 捉 え ら れ る の が 一 般 的 と な っ て い る。 そ こ で、 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 八 十 六 回、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 三 回、 経 部 師 説 二 十 一 回、 そ し て ﹃ 順 正 理 論 ﹄ 中 の 讐 喩 師、 讐 喩 部 師、 讐 喩 論 師 説 等 三 十 九 回、 経 部 等 の 説 十 回、 さ ら に 上 座 説 百 三 十 四 回 を 互 い に 対 照 さ せ、 そ れ と ﹃ 成 実 論 ﹄ と の 対 応 箇 所 を 探 っ た 結 果、 次 の こ と を 知 る こ と が で き る。 (1)﹃ 成 実 論 ﹄ に は ﹃ 大 畏 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 と 対 応 す る 説 が 多 く 見 ら れ る こ と。 (2)﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 ( 三 回 の み) は す べ て 世 親 が 反 論 す る も の で あ り、 そ れ に 対 し て ﹃ 成 実 論 ﹄ で は こ れ ら の 讐 喩 者 説 と 同 じ 立 場 で あ る こ と。 (3)経 量 部 所 属 と い わ れ る ﹃ 成 実 論 ﹄ の 中 に は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ に 示 さ れ る 種 子 (bija) 思 想、 ﹁ 相 続 の 特 殊 な 変 化 ( Samtati-parinama-visesa)﹂ と い っ た 経 量 部 の 思 想 と い わ れ る も の は 全 く 見 ら れ な い こ と。 以 上 の 三 点 で あ る。 ま ず(1)に つ い て は 水 野 弘 元 博 士 が ﹁ 讐 喩 師 と 成 実 論 ﹂ と 題 す る 論 文 の 中 で 詳 し く 考 察 さ れ、 讐 喩 師 と ﹃ 成 実 論 ﹄ の 対 応 箇 所 の 多 い こ と を 指 摘 さ れ て い る。 し か し 筆 者 は こ こ で は ﹁ 大 毘 婆 沙 論 中 の 讐 喩 者 説 ﹂ と 限 定 し た い。 な ぜ な ら ば ﹃ 順 正 理 論 ﹄ 中 で は 上 座、 讐 喩 師、 経 量 部 の 三 者 を 全 く 等 し い も の と 見 な し て い る の で あ る が、 し か し ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 と、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ 中 の 讐 喩 師 説、 上 座 説、 経 部 説 と の 印 度 學 佛 教 學 研 究 第 三 十 九 雀 第 一 號 準 成 二 年 十 二 月

(2)

-11-﹃成 実 論 ﹄ と 磐 喩 者 ・ 経 量 部 ( 所) 問 に は 必 ず し も 同 様 で は な い も の が 見 ら れ る か ら で あ る。 従 っ て こ れ ら を 単 に 一 つ の 思 想 と し て み な す こ と に は 疑 問 が 生 じ る。 ﹃ 成 実 論 ﹄ に は 讐 喩 老 説 と 同 様 の も の が 多 く 見 ら れ る が、 こ の 讐 喩 者 説 は、 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 に 挙 げ ら れ る も の で あ る こ と を 指 摘 し て お き た い。 次 に(2)の ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 の 警 喩 者 説 と ﹃ 成 実 論 ﹄ の 説 に つ い て 検 討 し て み よ う。 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 は 前 述 し た 如 く 三 回 見 ら れ る が、 こ れ ら は い ず れ も 業 論 中 に あ り、 こ の 中 二 度 は 同 一 問 題 中 で あ る か ら 正 確 に は 二 回 で あ る と 言 え る。 一 箇 所 目 は 善 悪 の 業 の 現 れ る 時 期 に つ い て 述 べ た 所 で あ り、 讐 喩 者 の 立 て る 八 種 の 業 に 対 し、 世 親 は そ れ を 否 定 し て い る こ と が わ か る。 二 箇 所 目 は ﹁ 警 喩 者 言。 貧 瞑 邪 見 即 是 意 業 ﹂ で あ る が、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ で は こ の 直 前 に 論 主 の 説 と し て ﹁ 謂 非 意 業 貧 瞑 邪 見。 貧 等 離 思 別 有 体 故 ﹂ と あ る こ と か ら 讐 喩 者 説 と の 異 な り は 明 ら か で あ る。 さ ら に 業 と 煩 悩 の 関 係 か ら 同 文 を 挙 げ て い る 所 で は ﹁ 讐 喩 論 師 執 貧 瞑 等 即 是 意 業 ﹂ と い い、 依 何 義 釈 彼 名 業 道 ﹂ の 問 い に 対 し て は ﹁ 応 問 彼 師。 然 亦 可 言 ﹂ と 世 親 は 答 え て い る。 こ の 讐 喩 者 説 の ﹁ 貧 瞑 邪 見 即 是 意 業 ﹂ を 否 定 す る の は 簡 潔 に 言 え ぽ、 世 親 は 有 部 の 主 張 す る 心 心 所 同 時 倶 起 説 を 支 持 し て い る か ら で あ る。 即 ち ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 は、 心 は 次 第 生 起 す る も の で あ っ て 心 心 所 相 応 は な い と い う 主 張、 す な わ ち 善 不 善 の 心 が 相 い 前 後 し て 次 第 生 起 す る の で あ る か ら、 心 所 と し て の 大 地 法、 各 種 の 煩 悩 心 等 は す べ て 意 す な わ ち 思、 即 ち 心 の 差 別 に 他 な ら な い、 と い う 讐 喩 者 の 主 張 に 対 し て、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ の 世 親 は、 心 心 所 相 応 説 を 認 め、 心 心 所 別 体 を 支 持 す る 立 場 に あ る 故 に 讐 喩 者 を 否 定 す る こ と と な る。 尚、(1)で 述 べ た 如 く の ﹃ 順 正 理 論 ﹄ 中 の 上 座 説 と 讐 喩 者 説 の 相 違 が 最 も 顕 著 に 見 ら れ る の が こ の 心 所 法 に 関 し て で あ る。 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 が、 心 の 次 第 生 起 を 主 張 し 一 切 の 心 所 の 別 立 を 認 め な い こ と は 今 述 べ た 如 く で あ る が、 そ れ に 対 し ﹃ 順 正 理 論 ﹄ 中 の 上 座 説 で は 受 想 思 の 三 心 所 を 認 め < こ れ は 次 第 生 起 す る も の の、 残 り の 種 々 の 心 所 は 思 の 差 別 で あ る> と 主 張 す る。 そ こ で ﹁ 説 貧 瞑 等 名 意 業 故 ﹂ と い い、 ま た ﹁ 説 貧 瞑 等 為 意 業 故。 知 作 意 等 思 為 体。 ﹂ と し、 故 に ﹁ 執 貧 瞑 邪 見 即 是 意 業 ﹂ と い う 主 張 が 上 座 説 と し て あ て は ま り、 讐 喩 者 と 同 一 で あ る が 如 く に み え る。 し か し ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ の 讐 喩 者 は ﹁ 思 慮 是 心 差 別。 無 別 有 体。 ﹂ と あ り 繰 り 返 し 述 べ た 如 く、 一 切 の 心 所 別 体 を 認 め な い 立 場 に お い て ﹁ 負 瞑 邪 見 即 是 意 業 ﹂ と 説 く の に 対 し、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ の 上 座 は 思 を 心 所 の 一 つ と し て 認 め る 立 場 か ら 貧 等 は 意 業 で あ る こ と を 主 張 す る こ と と な る。 即 ち こ の 問 題 に 関 し て は、 結 果 に お い て 同 一 の 主 張 と な る が、 し か し 立 場 の 違 い は あ き ら か で あ る。

(3)

-12-以 上 の 如 く ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 で は 二 つ の 讐 喩 者 説 に 対 し て 世 親 は 異 を 唱 え て い る が、 ﹃ 成 実 論 ﹄ で は、 初 め の 八 種 の 業 に つ い て は ﹁ 三 報 業 品 ﹂ ﹁ 六 業 品 ﹂ 等 の 中 で 讐 喩 者 と 同 様 の 説 を 説 い て い る。 ま た 後 の ﹁ 貧 瞑 邪 見 是 意 業 ﹂ に つ い て は、 ﹃ 成 実 論 ﹄ で は ﹁ 心 は 次 第 し て 生 ず る ﹂ も の で あ り ﹁ 受 想 行 等 は 皆 心 の 差 別 の 名 ﹂ で あ っ て 心 所 別 体 を 否 定 す る の で あ る か ら、 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 と 全 く 同 一 の 立 場 を と っ て い る こ と を 知 る。 さ て 次 に(3) に つ い て 述 べ よ う。 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 中 の 経 部 説 の 中 に は、 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 警 喩 者 説 と 同 一 の も の、 あ る い は 讐 喩 者 説 よ り 発 展 さ せ た も の、 そ し て 発 展 で は あ る が 全 く 新 し い 説 と な っ た も の、 の 三 種 に 分 か つ こ と が で き る。 つ ま り、 一 般 に 経 量 部 特 有 の 説、 あ る い は 言 葉 と さ れ る 種 子 (寓 ja) 功 能 ( samarthya) 薫 習 ( Vasana) 相 続 の 特 殊 な 変 化 ( sam tati-parinama-yisesa) と い っ た 思 想 は、 ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 讐 喩 者 説 を も と に し つ つ も、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ の 中 で 経 部 師 の 名 の も と に 新 し く 取 り 上 げ ら れ た も の で あ り、 讐 喩 者 の 中 に は み な れ な い も の で あ る。 そ し て ﹃ 成 実 論 ﹄ の 中 に は こ れ ら の 経 量 部 特 有 と さ れ る 説、 あ る い は 特 有 の 言 葉 は 一 切 見 る こ と が で き な い。 こ の こ と は ﹃ 成 実 論 ﹄ が ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ の 讐 喩 者 説 の み を 知 り 得 る 年 代 に 位 置 す る も の で あ っ た の か、 或 い は 地 域 的 に 経 量 部 の 思 想 を 知 り 得 な い と こ ろ に あ っ た の か、 の い ず れ か で あ る と 考 え ら れ る。 確 か に、 現 在 推 定 さ れ て い る 世 親 の 年 代 の 上 限 と 下 限、 ハ リ バ ル マ ン の 推 定 年 代 の 上 限 と 下 限 と を 組 み 合 わ せ る と、 ﹃ 成 実 論 ﹄ の 成 立 は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ よ り も わ ず か に 早 い と 考 え ら れ る。 ま た ハ リ バ ル マ ン が シ ュ リ ー ラ ー タ の 弟 子 で あ っ た と す る 説 の 如 く な ら ば、 や は り ハ リ バ ル マ ン は 世 親 よ り 一 世 代 前 の 年 代 と な る。 し か し ま た、 シ ュ リ ー ラ ー タ が ﹃ 順 正 理 論 ﹄ に い う 上 座 で あ り 経 部 師 で あ る と す る な ら ば、 た と え ﹃ 成 実 論 ﹄ が 経 量 部 の 名 称 が 存 在 し て い な い 時 代 に 造 ら れ た と し て も、 同 時 代 の し か も 兄 弟 弟 子 で あ る シ ュ リ ー ラ ー タ の 説、 即 ち 経 量 部 説 を 知 ら な か っ た と は 考 え ら れ な い。 そ れ に も か か わ ら ず、 ﹃ 成 実 論 ﹄ の 中 に は 経 量 部 特 有 の 説 に つ い て 全 く 触 れ ら れ る こ と さ え な い。 従 っ て、 冒 頭 に 挙 げ た 三 点 よ り 鑑 み て も、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ の 世 親 は ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ 中 の 響 喩 者 の 思 想 を 先 駆 と し て 独 自 の 個 人 的 見 解 を 経 部 の 名 の も と に 示 し た の で あ ろ う、 と 考 え ら れ 得 る。 ま た 以 上 の こ と か ら、 従 来、 讐 喩 者 ・ 経 量 部 と ま と め て 一 つ の 思 想 と し て 捉 え ら れ て き た が、 こ れ は 誤 り で あ る と 言 え よ う。 従 っ て ﹃ 成 実 論 ﹄ は 讐 喩 者 の 所 属 で あ る と 言 い 得 る が、 経 量 部 所 属 で は な い こ と と な る。 < キ ー ワ ー ド> 経 量 部、 讐 喩 者、 ﹃ 成 実 論 ﹄、 世 親 ( 高 野 山 大 学 大 学 院) ﹃ 成 実 論 ﹄ と 讐 喩 者 ・ 経 量 部 ( 所)

参照

関連したドキュメント

Results: Five categories of difficulties experienced in the family relationships were as follows: they were bewildered at cultural differences with regard to child rearing and

ともわからず,この世のものともあの世のものとも鼠り知れないwitchesの出

 回報に述べた実験成績より,カタラーゼの不 能働化過程は少なくともその一部は可三等であ

まずフォンノイマン環は,普通とは異なる「長さ」を持っています. (知っている人に向け て書けば, B

スライド5頁では

For this reason, we make a comparison among three algorithms: the spherical interpolation algorithm implemented by using the zone structure on the sphere, the algorithm where

III.2 Polynomial majorants and minorants for the Heaviside indicator function 78 III.3 Polynomial majorants and minorants for the stop-loss function 79 III.4 The

191 IV.5.1 Analytical structure of the stop-loss ordered minimal distribution 191 IV.5.2 Comparisons with the Chebyshev-Markov extremal random variables 194 IV.5.3 Small