• 検索結果がありません。

電子地域通貨を用いたゲーミング・シミュレーション

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "電子地域通貨を用いたゲーミング・シミュレーション"

Copied!
29
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

- 1 -

電子地域通貨を用いたゲーミング・シミュレーション

——自己対コミュニティの行動分析を中心として——

1

三上 真寛2,西部3

キーワード:電子地域通貨(electronic community currency),ゲーミング・シミュレーション(gaming

simulation),トレーサビリティ(traceability),メディア・デザイン(media design) 1.はじめに 近年,情報通信技術の進展に伴い,新たな種類の地域通貨が登場し普及しつつある。従来の地域通 貨は,その発行と流通の方式によって,紙幣方式(集中発行・転々流通型),手形方式(分散発行・転々 流通型),口座方式(分散発行・相互決済型)に分類できるが(西部 2002, pp. 36–43),情報通信技術 はそれらを電子化するのみならず,第4 の種類(集中発行・相互決済型)の地域通貨をもたらした4 ネットワーク技術とそれを実現する端末・回線設備が普及した結果,集中発行された価値媒体(ICカ ード等)が分散的に所有されている場合でも,それらの媒体上の記録情報をサーバーで集中的に管理 し,相互の価値移転により決済することが技術的に可能となったのである5 もっとも,そのような決済技術は,小売業や物流業を中心とする B2C(企業-消費者間)の商取引 において発達してきたものである。特に,近年急速に普及した非接触 IC 方式の電子マネーは,企業 が顧客を囲い込み,オンラインの情報とオフラインの実店舗とを繋ぐ O2O のマーケティング手段と しても利用されている。しかしながら,そのようなプリペイド型の流通系電子マネーの中にも,利用 金額の一部が特定地域の自治体や基金に寄付されたり,ボランティアにポイントが付与されたりする など,地域通貨の性質を帯びたものが現れてきた。非商業取引(ボランティア)を主とする地域通貨 と,商業取引(ビジネス)を主とする電子マネーは,今後,ますます融合していくことが期待される。 そのような集中発行・相互決済型の電子地域通貨は,電子的な記録と集計によって個々の決済の利 便性・効率性を高めるだけでなく,2 つの側面において地域通貨の運営方法を変化させる。第 1 に, 複雑かつ多様なメディア・デザイン(通貨制度設計)が可能となり,1 つの媒体上に複数の通貨を搭 載することができる。また,各通貨のプレミアム率(円で地域通貨を買う時の交換比率1+p),換金手 数料率(地域通貨を円に売る時の交換比率 1-q),減価率(時間とともに通貨価値を減少させる複利 (1-d)t,残高上限・下限,取引毎のポイント・手数料といったパラメータを,その導入時のみならず 運用期間中にも変更することができる6。第2 に,取引データのトレーサビリティ(捕捉可能性)が 1 本研究は,旭硝子財団平成 23 年度採択人文・社会科学系研究奨励,および,科学技術融合振興財団平成 22 年度調査 研究補助金の助成によるものである。 2 北海道大学大学院経済学研究科 専門研究員 [email protected] 3 北海道大学大学院経済学研究科 教授 [email protected] 4 電子地域通貨を含む様々な地域通貨の分類と長所・短所,ボトムアップの政策論との関連については,西部・三上 (2012)を参照されたい。同論文には,本実験の原型となった試験実験の概要と結果も含まれている。 5 そのような方式を採用した地域通貨は,口座方式(分散発行・相互決済型)の地域通貨に近いが,対面決済を容易に するIC カード等の媒体を持ち,通貨を集中的に発行する点が異なる。たとえば,スイスの WIR,アメリカのコミュ ニティ・ヒーローカード,日本の地域通貨モデルシステム,杉並区電子地域通貨事業(導入予定)などがそうである。 6 従来の紙幣方式の地域通貨の場合,その価値を時間とともに低減させていく(減価させる)には,紙幣裏面に定期的

(2)

- 2 - 向上し,個別取引の記録,総発行量,総取引量,流通速度,流通経路,流通ネットワークなどの分析 がリアルタイムで可能になる 7。そのような情報は,地域通貨の発行運営主体が自己の目的や用法に 応じたメディア・デザインを策定し,参加利用者の動向に沿った運営や情報公開を行うために活用す ることができよう。 このような地域通貨の運営方法の変化は,参加利用者が地域通貨やコミュニティに関して受け取る 情報を変化させ,その認知や行動にも多大な影響を及ぼすに違いない。地域通貨それ自体に関する各 種パラメータや流通量,地域通貨を用いた取引・活動の総量といった集計情報を,個々の参加利用者 へとフィードバックすることは,個々人のコミュニティに対する意識や地域通貨に対する理解を変容 させ,コミュニティ内の商業取引や非商業取引を活性化させる有効な方策となりうるかもしれない。 本研究では,このような電子地域通貨の可能性を検証するため,実験室内のゲーミング・シミュレー ションと事後のアンケート調査を行い,電子地域通貨のプレミアム率,その利用者の自己・コミュニ ティに対する意識,コミュニティ全体に関する情報の有無によって,地域通貨利用者の行動様式がど のように変化しうるかを検討した。 2.実験方法 本研究では,非接触ICカード型の決済システムを実験室内に構築し,大学生および大学院生からな る被験者12 名を集めて,ゲーミング・シミュレーションによる実験を行った8。実験室内には,都市 型コミュニティにおける電子地域通貨の利用を想定して,域内商店街2 軒,域内NPO2 軒,域外大型 店2 軒,地域住民(消費者)12 名からなるコミュニティを仮想的に設定した。すべてのプレイヤーは, 法定通貨「円」と地域通貨「クラーク」の額を記録する電子通貨カードを持っており,各自の座席の パソコンで,消費者は円をクラークに交換する「チャージ」(店舗の場合には,クラークを円に交換す る「換金」),残高照会,取引履歴確認を行うことができる。取引をするには,消費者が域内商店街, 域内NPO,域外大型店の座席に移動して,対面で財・サービスの購入やアルバイト・ボランティア・ 寄付を選択し,その対価の支払いまたは受領を行う。域内商店街ではクラークまたは円を組み合わせ て,域内NPOではクラークのみ,域外大型店で円のみを使うことができる(図1)。 この実験の主眼は,コミュニティ内に地域通貨が導入された場合の経済行動にあるため,地域通貨 と直接無関係な要因はできるだけ捨象し,ゲームが円滑に進行するようにしなければならない。もち ろん,実際の市場取引においては,交渉相手の発見,交渉内容や取引条件の伝達,成約に至るまでの 様々な駆け引き,契約の締結,契約条項の遵守を確かめるための点検,等々の事柄が必要であり,そ れらに関わる費用(取引費用)は取引の様式はもとより取引の成立自体を左右しかねないであろう (Coase 1937; 1960)。地域通貨を用いた取引でもこれらの事柄は不可欠だが,ここでは地域通貨に固 有のものでない取引費用は極力捨象し,地域通貨と法定通貨の間の選択という点にプレイヤーの関心 を集中させることにする。そのため,ゲームが地域通貨の特性とは無関係な価格交渉や需給のマッチ にスタンプを貼らなければ使用できなくする等の煩雑な仕組みが必要であった。 7 従来の紙幣方式の地域通貨の場合,取引毎に紙券裏面に利用者名を記入してもらい,償還期限後に全紙幣を回収して からでなければ,その流通実態を知ることができなかった。 8 実験の総所要時間は 3 時間であり,実験に参加した被験者には 2,000 円分の図書カードを配付した。

(3)

- 3 - ングに終始しないよう,各プレイヤーが提供する財・サービスの種類と価格はあらかじめ設定されて おり(表1),それらの在庫は無限に存在すると仮定されている。 図1 地域通貨「クラーク」と法定通貨「円」の流れ方 また,今回の実験では,単純化のため,地域通貨コミュニティにおける一般消費者の行動に焦点を 合わせ,商店およびNPOは受動的な役割のみを果たすものとした。すなわち,域内商店街,域内NPO, 域外大型店は実験補助員が担当し,消費者の求めに応じ(円やクラークが不足しない限りにおいて), 財・サービスの販売(クラークまたは円の受取り),アルバイトの受入(円の支払い),ボランティア の受入(クラークの支払い),寄付の受付(クラークの受取り)を行う。他方,被験者が担当する消費 者は,各ゲームの開始時に付与される所得5 万円と余暇時間 48 時間の範囲内で,各自必要な額のク ラークをチャージ(購入)し,それらの使途を自由に選択しながら能動的に行動できる。ただし,被 験者には,各ゲームの開始前に「自分」と「コミュニティ」のどちらを優先して行動するかを各自の 通貨カード裏面に記入してもらい,ゲーム内ではその行動目標に沿って行動するよう求めた9 ゲームは1 回 20 分で,条件を変えながら計 5 回行った。ゲームごとに変えたのは,地域通貨のメ ディア・デザインに関するパラメータと,トレースした取引データの集計情報を被験者にフィードバ ックする方法である(表2)。地域通貨のパラメータについては,今回はプレミアム率のみを変化させ (10%/15%/20%),減価率や残高上限,取引毎のポイント・手数料は導入せず,残高下限はゼロ で固定とした。また,換金手数料を支払う域内商店街には地域通貨への参加・退出,商品の価格設定 といった行動の余地を与えていないので,換金手数料率も常にプレミアム率と同一とした。集計情報 のフィードバック方法については,個々の取引データに基づく集計量の表示方法を3 種類用意し(非 表示/棒グラフ/折れ線グラフ),ゲーム間または各ゲームの開始後10 分経過時点で変化させた。本 実験における集計量とは,各種取引・活動の量を示す11 種類の集計情報である(表3)。 9 さらに,実験後に行ったアンケート調査では,ゲーム中の行動における「自分」と「コミュニティ」の実際の比重が どのくらいであったかを10:0 から 0:10 の 11 段階で尋ねた。被験者の行動を完全に統制することはできないが,こ のように行動の型を選択させ,それを定量化すれば,実験の再現可能性と分析可能性は確保できると考えられる。 ④換金による収入 ③換金 ⑧ 給 与 ア ル バ イ ト 財 ・ サ ー ビ ス 財 ・ サ ー ビ ス ⑪ 購 入 代 金 ⑨寄付 ボランティア ⑩謝礼 ①チャージ ②チャージによる支出 域内商店街 域外大型店 消費者 所得 5 万円 余暇 48 時間 発 行 主 体 域 内 N P O クラークの流れ 円の流れ 財・サービスの流れ コ ミ ュ ニ テ ィ 域 内 ⑥ ⑦ 購 入 代 金

(4)

- 4 - 表1 取引される財・サービスのメニュー 販売(提供)主体 購入(受入)主体 メニュー 対価(謝礼) 所要時間 域内商店街A 消費者 1. お惣菜・お弁当 1,500 円/クラーク — 2. お酒 2,000 円/クラーク — 3. キッチン用品 7,500 円/クラーク — 4. 文房具 1,700 円/クラーク — 5. 本 1,150 円/クラーク — 6. 音楽CD 1,400 円/クラーク — 7. 映画DVD 1,700 円/クラーク — 8. ゲームソフト 11,500 円/クラーク — 9. 喫茶店 1,000 円/クラーク 2 時間 10. 定食屋 1,000 円/クラーク 2 時間 域内商店街B 消費者 1. バッグ 11,500 円/クラーク — 2. 服 8,000 円/クラーク — 3. 靴 5,800 円/クラーク — 4. スポーツ用品 20,000 円/クラーク — 5. 日曜大工道具 10,000 円/クラーク — 6. 園芸用品 4,000 円/クラーク — 7. ペット用品 5,000 円/クラーク — 8. キャンプ用品 30,000 円/クラーク — 9. 自転車 23,000 円/クラーク — 10. カラオケ 3,500 円/クラーク 2 時間 域外大型店A 消費者 1. お惣菜・お弁当 1,300 円 - 2. お酒 1,700 円 - 3. 靴 5,000 円 - 4. バッグ 10,000 円 - 5. 服 7,000 円 - 6. キッチン用品 6,500 円 - 7. インテリア用品 20,000 円 - 8. 文房具 1,500 円 - 9. カフェ 2,000 円 2 時間 10. レストラン 5,000 円 2 時間 域外大型店B 消費者 1. 本 1,000 円 - 2. 音楽CD 1,200 円 - 3. 映画DVD 1,500 円 - 4. ゲームソフト 10,000 円 - 5. 自転車 20,000 円 - 6. パソコン 50,000 円 - 7. カラオケ 3,000 円 2 時間 8. ボウリング 2,000 円 1 時間 9. 映画館 1,800 円 2 時間 10. 国内旅行 70,000 円 24 時間 消費者 域内NPOA10 1. 青少年の育成活動 (キャンプなどの手伝い) 1,000 クラーク 24 時間 2. お祭り・イベントの手伝い 200 クラーク 3 時間 3. 子供たちの見回り,夜回り,交通安全活 動 100 クラーク 1 時間 4. 地域の清掃活動,花植え活動 150 クラーク 1 時間 5. フリースクールの家庭教師 450 クラーク 3 時間 寄付 1,000 クラーク - 域内NPOB11 1. 子育てサポート(一時保育など) 500 クラーク 5 時間 2. 高齢者サポート(買い物代行など) 300 クラーク 2 時間 3. 高齢者の介護(身の回りのお世話など) 800 クラーク 8 時間 4. 隣人の手伝い (庭の手入れやペットの世話など) 300 クラーク 3 時間 5. 近隣農家の畑仕事 600 クラーク 6 時間 寄付 1,000 クラーク - 域内商店街A アルバイト 1,000 円 1 時間 域内商店街B アルバイト 1,000 円 1 時間 ※網掛けの財・サービスは同一名称の財・サービスで代替可能 10 域内 NPOAでのボランティアは,地域内で集団で行うイベントや活動に関わる内容となっている。 11 他方,域内 NPOBでのボランティアは,地域内で特定個人を手助けする内容となっている。

(5)

- 5 - 表2 各ゲームにおける条件の変化 ゲーム進行 プレミアム率・換金手数料率 集計量のフィードバック方法 (矢印は 10 分経過時点での変化) ゲームⅠ いずれも 10% 非表示 → 棒グラフ表示 ゲームⅡ いずれも 10% 非表示 → 折れ線グラフ表示 ゲームⅢ いずれも 20% 非表示 → 棒グラフ表示 ゲームⅣ いずれも 20% 非表示 → 折れ線グラフ表示 ゲームⅤ いずれも 15% 棒グラフ表示 → 折れ線グラフ表示 表3 ゲーム中で表示した集計量 ①消費者のチャージ額累計(クラーク) ②消費者のチャージによる支出額累計(円) ③域内商店街の換金額累計(クラーク) ④域内商店街の換金による収入額累計(円) ⑤域内商店街での消費額累計(すべて)(=⑥+⑦) ⑥域内商店街での消費額累計(クラークのみ) ⑦域内商店街での消費額累計(円のみ) ⑧域内商店街でのアルバイト給与額累計(円) ⑨域内NPO への寄付額累計(クラーク) ⑩域内NPO でのボランティア謝礼額累計(クラーク) ⑪域外大型店での消費額累計(円) ※表中の番号は,それぞれ図1中のクラーク・円の流れに対応している。 以上のゲームデザインは,次のような仮説に基づいている。 まず,プレミアム率について,円でクラークを購入する際のプレミアム率が上昇すればするほど, 被験者は多くの円をクラークに交換し,その率が下落すればクラークのチャージ額も減少するという 仮説を設けた。消費者は,プレミアム率をふまえて域内・域外の実質価格を比較し,安い方で消費を 行うのではないだろうか。本実験では,一部,同名の財・サービスを域内商店街と域外大型店の両方 に用意し,プレミアム率10%の時には域外,プレミアム率 20%の時には域内,プレミアム率 15%の 時には商品により域内または域外のいずれかの実質価格が低くなるよう商品価格を設定した。 集計量の表示/非表示については,被験者がそれらを目にすることでコミュニティ全体の状況や他 者の行動を意識するようになり,その被験者の円やクラークを使った行動も変化するのではないかと いう仮説を設けた。また,表示する場合でも,その表示の仕方によって影響は異なるかもしれない。 一時点での各集計量の差を表す棒グラフと,通時的な各集計量の推移を表す折れ線グラフとでは,後 者の方がコミュニティ全体の動向が分かりやすく,被験者に影響を与えやすいのではないだろうか。 これらのプレミアム率や集計量表示方法の変更については,被験者には事前に知らせていない。 最後に,被験者については,各々の自己・コミュニティに対する意識がその行動を大きく左右し, 地域通貨コミュニティの活性度にも影響を与えるのではないかという仮説を設けた。この点を検証す るため,被験者には各ゲームの開始前に優先する行動目標(「自分」または「コミュニティ」)を選択 してもらい,実験後のアンケート調査で実際の行動を確認した。これには,仮想的なコミュニティの 中で,「自分優先の消費者」と「コミュニティ優先の消費者」という役割..(ロール)を被験者に自ら選 択して演じて...もらうこと(ロールプレイング)により, そのような曖昧な行動目標が,地域通貨を含

(6)

- 6 - む特定の制度構造の下で,いかにして特定の具体的行動に結びつくかを見るという狙いがあった12 3.実験結果およびアンケート結果とその含意 3.1 通貨量および流通速度 一般に地域通貨のおおよその流通状況は,その発行量,換金量,発行残高と,その通貨を用いた取 引の総額によって知ることができる。また,それらの集計量をもとに,地域通貨がコミュニティの活 性化に貢献した度合いとして流通速度を算出し,法定通貨と比較することが可能である。本実験の枠 組みでも,クラークの発行量(①),換金量(③),発行残高(①-③),クラークによる総取引額(⑥ +⑨+⑩),円の域内流入量(所得 50,000×12 名分=600,000),域外流出量(⑪),域内流通残高 (600,000-⑪),域内での円による総取引額(⑦+⑧)を集計することができるし,次式によりクラ ークと円の流通速度を求められる。 =ゲーム開始時点から終了時点までのクラークによる総取引額(⑥+⑨+⑩) クラークの流通速度 ゲーム終了時点におけるクラークの発行残高(①-③) =ゲーム開始時点から終了時点までの円による域内総取引額(⑦+⑧) 円の域内流通速度 ゲーム終了時点における円の域内流通残高(600,000-⑪) 全5 ゲームの各々について,これらの指標を集計すると下表を得る(表4)。 表4 各ゲームの期間全体における通貨量と流通速度13 ゲーム 進行 クラーク による 取引額 クラーク 発行量 クラーク 換金量 クラーク 発行残高 クラーク 流通速度 円による 取引額 円域内 流入量 円域外 流出量 円域内 流通残高 円 流通速度 ゲームⅠ 270,000 306,658 217,350 89,308 3.02 218,700 600,000 298,900 301,100 0.73 ゲームⅡ 476,750 476,740 312,400 164,340 2.90 209,900 600,000 185,400 414,600 0.51 ゲームⅢ 479,300 473,334 269,600 203,734 2.35 202,000 600,000 289,800 310,200 0.65 ゲームⅣ 641,500 657,737 349,500 308,237 2.08 231,400 600,000 156,800 443,200 0.52 ゲームⅤ 482,500 562,806 328,500 234,306 2.06 248,000 600,000 190,500 409,500 0.61 これを見ると,総じて,クラークの流通速度は円の流通速度よりも高く,円の流通速度の 3~6 倍 であったことが分かる。これは本実験における地域通貨コミュニティの制度的構造に起因している。 クラークと円の流れ方(図1)を見ると,消費者が所得またはアルバイト給与として手にした円は, コミュニティ域内に限れば(域外大型店を除外すると),域内商店街で使うか,クラークに交換するし かない。他方,円からの交換かボランティア謝礼により手にしたクラークは,域内商店街か域内NPO で使うことができるが,消費者自身が円に換金することはできない。このように消費者にとって域内 で複数の使途(流通経路)を持つクラークは,円よりも複数回流通しやすい構造になっており,した がって,域内での流通速度が円に比べて格段に高く,取引の活性化に寄与するのである。 12 この点において,本実験は,完全に統制された環境を作り出すという意味での実験室実験とは異なり,むしろ一定の 自由度のある社会的文脈を与えて,被験者にとってのリアリティを再構成することに主眼がある。 13 クラークの円への換金を行えるのは域内商店街のみだが,換金は必要に応じて実験補助員の裁量で行われるため,各 ゲーム終了時にも域内商店街にクラークが残っている(表8-1~表8-5参照)。したがって,流通速度の計算か らそのような恣意性を取り除くため,域内商店街のクラークはすべて換金されるものと想定すると,ゲームⅠ~Ⅴの 終了時点での流通速度は,それぞれ3.92,3.91,5.92,5.51,3.57 と,円の流通速度に比べてさらに高くなる。

(7)

- 7 - さらに,クラークと円の1 分ごとの流通速度を,それぞれ次式により計算できる。 1 1 1 t t t t t + + = + ゲーム開始後 分から 分のクラークによる取引額 ゲーム開始後 分から 分のクラーク流通速度 ゲーム開始後 分におけるクラークの発行残高 1 1 1 t t t t t + + = + ゲーム開始後 分から 分の円による取引額 ゲーム開始後 分から 分の円流通速度 ゲーム開始後 分における円の域内流通残高 これにより,各ゲーム内での流通速度の推移をグラフにしたものが,図2-1~図2-5である。 図2-1 ゲームⅠにおける流通速度の変化 図2-2 ゲームⅡにおける流通速度の変化 図2-3 ゲームⅢにおける流通速度の変化 図2-4 ゲームⅣにおける流通速度の変化

(8)

- 8 - 図2-5 ゲームⅤにおける流通速度の変化 これらのグラフから,各ゲーム内の1 分ごとの通時的な変化として見たとしても,クラークの流通 速度は円の流通速度より総じて高かったことが確認できる。クラークの流通速度の推移をゲーム間で 比較してみると,ゲームⅠとゲームⅤの推移が特徴的である。ゲームⅠでは,開始後 15 分時点まで 流通速度がゲームⅡ以降のゲームより低くなっており,終了5 分前になってようやく流通速度が上昇 している。逆に,ゲームⅤでは,開始後5 分時点までの流通速度がゲームⅣまでと比べて非常に高く なっている。 このような流通速度の変化は,ゲーム条件の変更,すなわち,プレミアム率の引き上げ・引き下げ や集計量の表示方法の変更,あるいは,被験者の行動目標とどのような関係にあったのであろうか。 以下では,まず3.2節で,ゲームを大きく左右しうる被験者の属性を確認した上で,被験者がとり うる様々な行動の量的推移,そして,それに対するプレミアム率の影響を確認する。さらに,続く3. 3節では,被験者の行動とその行動目標との関係,3.4節では被験者の行動と集計量グラフとの関 係を考察する。 3.2 被験者の属性,プレミアム率と諸活動量の推移 実験後のアンケートによると,今回実験に参加した被験者の大多数は,地域通貨について事前の知 識や経験をほとんど持っていなかった。被験者12 名のうち,「あなたは地域通貨のことを知っていま すか」という質問に対して,「よく知っている」と答えたのは僅か2 名で,「よく知らないが,聞いた ことはある」が9 名,「全く知らない」が1名であった14。また,「あなたは地域通貨を使用したこと がありますか」という質問に対しても,「使用したことがある」と答えたのは僅か2 名(先の 2 名と 同一)で,「受け取ったこともなければ,使用したこともない」が10 名であった。したがって,被験 者の大多数は,ゲームの進行とともに地域通貨の役割,とりわけ本実験で設けた仮想コミュニティ内 での電子地域通貨の位置付けや機能を理解していかねばならない状況に置かれていたと言える。被験 者には,実験室内の配置図や通貨の流れ方に関する図(図1)を配付していたが,ゲームの構造は実 際に体験して初めて理解できたことであろう。 そのような被験者の累積的な活動量の変化を,クラークまたは円の額で示すと,図3-1~図3- 14 なお,「地域通貨についてどのようなイメージを持っていますか」という質問(単一回答)では,「ボランティア」「地 域活性化」,「エコロジー」,「人と人とのつながり」,「よくわからない」の選択肢から,12 名中 11 名が「地域活性化」 (残り1 名は無効回答)を選んだ。

(9)

- 9 - 5のグラフになる。なお,これらのグラフは,ゲーム中に被験者へ集計量をフィードバックする際に 「折れ線グラフ」として表示したものと同一である。これらのグラフと先ほどの流通速度のグラフを 関連づけるため,再び,流通速度の計算式を想起されたい。クラークの流通速度は,クラークによる 取引額を発行残高で除した値であり,その発行残高はチャージ額と換金額の差であった。したがって, ここでクラークについて注目すべきは,クラークの総取引額を決定する「域内商店街での消費額累計 (クラークのみ)」,「域内NPO への寄付額累計(クラーク)」,「域内 NPO でのボランティア謝礼額 累計(クラーク)」と,クラークの発行残高を決定する「消費者のチャージ額累計(クラーク)」,「域 内商店街の換金額累計(クラーク)」の推移である。 図3-1 ゲームⅠにおける各種集計量の推移 図3-2 ゲームⅡにおける各種集計量の推移

(10)

- 10 -

図3-3 ゲームⅢにおける各種集計量の推移

図3-4 ゲームⅣにおける各種集計量の推移

(11)

- 11 - ゲームⅠのグラフ(図3-1)では,開始直後のクラークのチャージは,ゲームⅡ以降と比べても 劣らない伸びを見せているが,クラークによる取引は,ゲームⅡ以降と比べると出遅れていることが 分かる。したがって,ゲームⅠのクラーク流通速度(図2-1)は,開始後 15 分時点まで非常に低 迷していたのである。クラークによる取引額については,終盤5 分間で既にチャージ済みのクラーク を使った取引が急増し,流通速度も上昇した。しかし,取引に使われるクラークのチャージ額自体が, 中盤以降,頭打ちになったため,終了時の取引額累計はゲームⅡ以降よりも非常に少ない(表4参照)。 ゲームⅡ・Ⅲ・Ⅳのグラフ(図3-2~図3―4)では,ゲームⅠとは異なり,ゲーム開始後すぐ にクラークを用いた取引が行われている。これらのグラフは,「域外大型店での消費額累計(円)」(= 円域外流出量)が異なる点を除けば,総じてすべての集計量がよく似た推移をしているため,ゲーム Ⅱ・Ⅲ・Ⅳにおける流通速度(図2-2~図2-4)の推移の仕方も酷似していたのである。なお, ゲームⅡからゲームⅢに進む際に,プレミアム率を 10%から 20%に引き上げたが,集計量の推移か らその影響を読み取ることはできない。 ゲームⅤのグラフ(図3-5)は,クラークのチャージ額と取引額の差が一貫して少ない点に特徴 がある。ゲームⅠ~Ⅳでは,ゲーム開始直後に相当額のクラークがまとめてチャージされているのに 対し,ゲームⅤでは,ゲーム途中で必要額がその都度チャージされているようである。発行残高と取 引額の乖離が小さければ,少額のクラークで多額の取引が行われるため,クラークの流通速度(図2 -5)は序盤に突出して高くなっている。なお,ゲームⅣからゲームⅤに進む際に,プレミアム率を 20%から 15%に引き下げたが,上記のようなチャージ方法がその影響か否かは定かでない。 以上のような各ゲームにおけるクラークのチャージ額や各種取引額を左右した要因は,果たして何 であったのだろうか。2 節で提示したわれわれの仮説によれば,その要因の 1 つはプレミアム率であ ろうと推測される。しかしながら,実際に各ゲームにおけるプレミアム率と全消費者の各種活動量の 関係を見てみると,下表(表5)のようになり,統計的に有意な相関関係は1 つも見られない。 表5 各ゲームにおけるプレミアム率と活動量の関係 ゲーム 進行 プレミアム率 消費者の チャージ 額累計 (クラーク) 消費者の チャージ による支 出額累計 (円) 域内商店街 での消費額 累計 (すべて) 域内商店街 での消費額 累計 (クラーク) 域内商店街 での消費額 累計 (円) 域内商店街 でのアルバ イト給与額 累計(円) 域内NPO への寄付 額累計 (クラーク) 域内NPO でのボラ ンティア謝 礼額累計 (クラーク) 域外大型 店での消費 額累計 (円) 域内商店街 での消費額 --- 域外大型店 での消費額 ボランティア 謝礼額 --- アルバイト 給与額 ゲーム Ⅰ 10 306,658 278,780 279,550 237,850 41,700 177,000 21,000 11,150 298,900 0.935 0.062 ゲーム Ⅱ 10 476,740 433,400 391,800 354,900 36,900 173,000 105,000 16,850 185,400 2.113 0.097 ゲーム Ⅲ 20 473,334 394,445 411,400 392,400 19,000 183,000 73,000 13,900 289,800 1.419 0.076 ゲーム Ⅳ 20 657,737 548,114 553,700 541,300 12,400 219,000 86,000 14,200 156,800 3.531 0.065 ゲーム Ⅴ 15 562,806 489,388 441,600 397,600 44,000 204,000 74,000 10,900 190,500 2.318 0.053 プレミアム率 との相関係数 0.670 0.565 0.745 0.785 -0.830 0.663 0.265 0.010 -0.144 0.481 -0.291 p-値 0.216 0.321 0.148 0.116 0.082 0.222 0.667 0.987 0.817 0.411 0.634 そこで,消費者ごとにゲームⅠ~Ⅴを通してのプレミアム率と諸活動量との相関係数を調べたもの が下表(表6)である。これを見ると,仮説通りにプレミアム率が上がるとチャージ額が増え,域内

(12)

- 12 - 商店街での消費額が増えるという行動をとったのは,被験者 12 名中わずか 2 名(消費者A・C)のみ である。このうち,特に消費者Aについては,プレミアム率が上がると域内商店街でのアルバイトが 増え(給与がより多くのクラークと交換できるため),域内 NPO への寄付が増え(より多くのクラーク が手元に残るため),域内商店街で円を全く使わず,域外大型店での消費額も減る(域内でのクラーク による買い物が実質的に安いため)という相関関係も見られる。また,他の 2 名(消費者B・G)に ついては,プレミアム率が上がると域内 NPO でのボランティアを減らす(ボランティアの謝礼に比べ て円からのチャージがさらに有利になるため)という相関関係が見られる。このようにプレミアム率 に対する反応は被験者ごとに異なっていたのだが,平均化して全体の傾向を見ると,本実験において プレミアム率の影響は少なかったと言える。 表6 全ゲームを通してのプレミアム率と活動量の関係 ゲームⅠ~Ⅴ を通しての 「プレミアム率」 との相関係数 チャージ 額累計 (クラーク) チャージ による支 出額累計 (円) 域内商店街 での消費額 累計 (すべて) 域内商店街 での消費額 累計 (クラーク) 域内商店街 での消費額 累計 (円) 域内商店街 でのアルバ イト給与額 累計(円) 域内NPO への寄付 額累計 (クラーク) 域内NPO でのボラン ティア謝礼 額累計 (クラーク) 域外大型 店での消費 額累計 (円) 消費者A 0.940* 0.939* 0.937* 0.937* - 0.896* 0.913* -0.559 -0.892* 消費者B 0.108 0.060 0.044 0.074 -0.140 0.824 0.502 -0.907* 0.192 消費者C 0.910* 0.898* 0.932* 0.932* - - 0.792 -0.265 -0.165 消費者D 0.554 0.518 0.869 0.751 0.180 -0.066 -0.456 0.208 -0.559 消費者E -0.244 0.310 -0.193 -0.197 0.020 0.591 -0.280 -0.434 0.388 消費者F -0.842 -0.890* -0.475 -0.475 - - -0.280 0.770 0.242 消費者G -0.187 -0.247 -0.183 0.292 -0.559 0.749 -0.563 -0.906* 0.754 消費者H -0.496 -0.542 -0.783 -0.711 -0.908* -0.498 0.273 0.326 0.544 消費者I 0.829 0.727 0.375 0.375 - 0.688 -0.144 -0.205 -0.493 消費者J 0.553 0.644 0.201 0.201 - -0.494 0.570 0.400 -0.662 消費者K 0.669 0.609 0.755 0.753 -0.559 -0.227 0.354 0.407 -0.521 消費者L 0.018 -0.034 -0.051 0.023 -0.559 -0.030 0.157 -0.028 0.303 - 該当額ゼロ,* 5%有意水準で相関 以上は被験者の行動結果..に基づく分析であったが,以下ではその動機..をふまえて分析してみよう。 3.3 被験者の行動目標と自己対コミュニティの意識 本実験において,被験者に与えられた行動のルールは以下の3 つであった。 ・カード裏面で「自分」または「コミュニティ」のどちらかに○をつけ,それを優先するように行動し て下さい。 ・与えられた所得と余暇時間をどのように使うか,あるいは残すかはあなたの自由です。 ・他の人の通貨カードやPCには触れず,なるべく見ないようにして下さい。 通貨カード裏面には,「あなたはこのゲームで自分とコミュニティのどちらを優先しますか」という 問いかけがあり,被験者には各ゲームの開始前に「自分」または「コミュニティ」を選択して丸を付 けてもらった。そして,全ゲーム終了後のアンケート調査では,「ゲーム~の全体を通して,自分とコ ミュニティに関するあなたの実際の比重はどのくらいでしたか」という質問項目をゲームごとに設け て,自身の感覚に最も近い「自分:コミュニティ」の比率を10:0 から 0:10 の 11 段階で選んでもらっ

(13)

- 13 - た。すなわち,本実験で被験者に求めた合理性や内的整合性があるとすれば,それは自己利益の一貫 した追及ということではなく,「自分」対「コミュニティ」という比重の一貫性であったと言える17 実際にそのような一貫性があったのか否かを確認してみよう。まず,事前の行動目標について見て みると,各ゲームの開始前に各被験者が選択した行動目標と,そのゲーム別,被験者別の集計は,下 表のようになった(表7)。被験者が全 5 ゲームを通じて「自分」と「コミュニティ」を選ぶ回数に ついては何の制約もないため,全ゲームを通して被験者別に集計すると,自分優先が 37 回,コミュ ニティ優先が 23 回という不均衡な結果になっている。また,ゲーム別に集計してみると,ゲームⅠ では自分優先が11 人,コミュニティ優先が 1 人と極端に分かれているが,ゲームⅡ以降は 5 人対 7 人または7 人対 5 人に分かれており,その推移には全体を通しての傾向は特に見られない。 表7 被験者が事前に選択した行動目標 ゲームⅠ ゲームⅡ ゲームⅢ ゲームⅣ ゲームⅤ 自分優先 コミュニティ優先 消費者A 自分 自分 コミュニティ 自分 自分 4 回 1 回 消費者B 自分 コミュニティ 自分 コミュニティ コミュニティ 2 回 3 回 消費者C 自分 コミュニティ 自分 自分 自分 4 回 1 回 消費者D 自分 コミュニティ コミュニティ 自分 コミュニティ 2 回 3 回 消費者E 自分 コミュニティ 自分 自分 コミュニティ 3 回 2 回 消費者F 自分 自分 コミュニティ 自分 自分 4 回 1 回 消費者G 自分 コミュニティ 自分 自分 自分 4 回 1 回 消費者H 自分 自分 自分 コミュニティ コミュニティ 3 回 2 回 消費者I 自分 コミュニティ 自分 コミュニティ 自分 3 回 2 回 消費者J 自分 自分 コミュニティ 自分 コミュニティ 3 回 2 回 消費者K コミュニティ 自分 コミュニティ コミュニティ 自分 2 回 3 回 消費者L 自分 コミュニティ 自分 コミュニティ 自分 3 回 2 回 自分優先 11 人 5 人 7 人 7 人 7 人 37 回 23 回 コミュニティ優先 1 人 7 人 5 人 5 人 5 人 ここで,「自分優先」または「コミュニティ優先」を行動目標とした被験者は,具体的に何を目的に 行動したのであろうか。実験後に行ったアンケートで各ゲームの前半・後半における行動の目的(複 数回答可で3 つまで)を尋ねたところ,全ゲームを通しての集計結果は下図(図4)のようになった。 図4 全ゲームを通しての被験者の行動目的 17 それゆえに,本実験では,被験者にゲームの結果とリンクした報酬(現金)の支払いを事前に約束して被験者間の競 争を引き出すという手法はとらなかったし,被験者の実験参加に対する謝礼は現金以外の形で配付した。

(14)

- 14 - これを見ると,「自分優先」の被験者の多くが選んだのは,「できるだけ円を稼ぐこと」,「できるだけ 多く消費すること」,「できるだけ域内商店街でアルバイトをすること」という項目であり,他方の「コ ミュニティ優先」の被験者の多くが選んだのは,「できるだけ域内商店街で消費すること」,「できるだ け域内NPO でボランティアすること」,「できるだけ域内NPO に寄付すること」という項目である。 他方,被験者の実際の活動量を一覧にしたものが表8-1~表8-5である。 被験者を事前の行動目標ごとにグループ化して,各種活動量の平均値を見ると,ゲームⅠ~Ⅴのす べてについて次の法則が成立していることが分かる。まず,各グループの特徴として, 自分優先の消費者群: 域外消費 > 域内消費,アルバイト時間 > ボランティア時間 コミュニティ優先の消費者群: 域外消費 < 域内消費,アルバイト時間 < ボランティア時間 さらに,両グループ間を比較した場合の特徴として, 自分優先の消費者群の域外消費 > コミュニティ優先の消費者群の域外消費 自分優先の消費者群の域内消費 < コミュニティ優先の消費者群の域内消費 自分優先の消費者群のアルバイト > コミュニティ優先の消費者群のアルバイト * 自分優先の消費者群のボランティア < コミュニティ優先の消費群のボランティア * 自分優先の消費者群が行った寄付 < コミュニティ優先の消費者群が行った寄付 * 金額と時間数の両方に関して成立 このように事前の行動目標の自分優先/コミュニティ優先のグループごとに,被験者の各種活動量の いくつかの間に対照的な特徴が見られることが分かった。なお,ゲームⅠ~Ⅳにおいては,上記に加 えて「自分優先の消費者群のクラークチャージ < コミュニティ優先の消費者群のクラークチャージ」 という法則も成立しているが,ゲームⅤにおいては成立していない。 以上の分析結果は,各ゲームの開始前に被験者が選択した行動目標(自分優先/コミュニティ優先) に基づいているが,そのような行動目標は実際のゲームの中でも遵守されたのであろうか。被験者に 自ら選択した行動目標に沿った行動をとれるような一貫性があるとは限らないし,電子地域通貨を体 験する中で行動目標が事前の選択とは異なってくる可能性もある。そこで,被験者の事前の行動目標 の分布と,事後にアンケートで尋ねた「自分:コミュニティ」の感覚とを併せて分析してみよう。被 験者が事前に選択した行動目標(自分優先/コミュニティ優先)によって,各ゲームの被験者を2 つ のグループに分け,それぞれのグループ内で事後的な「自分:コミュニティ」の比重の分布を示した ものが,下図(図5-1~図5-5)である。

(15)

- 15 - 表8-1 ゲームⅠ終了時点における各主体の残高と取引額累計 主体名 円所得 余暇 時間 チャージに よる円支出 クラークの チャージ 換金による 円収入 クラークの 換金 円による 域外消費 すべての 域内消費 円による 域内消費 クラークによ る域内消費 円によるアル バイト給与 クラークによ るボランティ ア謝礼 クラーク による寄付 アルバ イト時 間数 ボラン ティア 時間数 域外で の消費 時間数 域内で の消費 時間数 円残高 クラー ク残高 時間 残高 域内商店街A 0 0 0 0 81,135 -90,150 0 117,850 15,200 102,650 -88,000 0 0 88 0 0 14 8,335 12,500 102 域内商店街B 0 0 0 0 114,480 -127,200 0 161,700 26,500 135,200 -89,000 0 0 89 0 0 10 51,980 8,000 99 域内NPOA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -5,100 12,000 0 86 0 0 0 6,900 86 域内NPOB 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -6,200 9,000 0 59 0 0 0 2,800 59 域外大型店A 0 0 0 0 0 0 78,900 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 78,900 0 8 域外大型店B 0 0 0 0 0 0 221,300 0 0 0 0 0 0 0 0 22 0 221,300 0 22 消費者A 50,000 48 -20,200 22,220 0 0 -61,800 -22,500 0 -22,500 32,000 1,200 0 -32 -12 -2 -2 0 920 0 消費者B 50,000 48 -15,000 16,500 0 0 -41,200 -16,000 0 -16,000 10,000 500 0 -10 -5 -7 0 3,800 1,000 26 消費者C 50,000 48 -20,000 22,000 0 0 -6,800 -10,700 0 -10,700 0 450 0 0 -3 -2 0 23,200 11,750 43 消費者D 50,000 48 -10,000 11,000 0 0 -20,000 -7,500 0 -7,500 8,000 0 0 -8 0 0 0 28,000 3,500 40 消費者E 50,000 48 -23,800 26,180 0 0 -26,200 -27,450 0 -27,450 0 1,600 0 0 -30 -2 -2 0 330 14 消費者F 50,000 48 -7,280 8,008 0 0 -32,600 -6,000 0 -6,000 0 0 -2,000 0 0 -4 -2 10,120 8 42 消費者G 50,000 48 -22,500 24,750 0 0 -6,500 -44,500 -23,000 -21,500 20,000 1,800 -1,000 -20 -14 -1 0 18,000 4,050 13 消費者H 50,000 48 -20,000 22,000 0 0 -8,500 -19,750 -7,200 -12,550 28,000 0 0 -28 0 -4 -6 42,300 9,450 10 消費者I 50,000 48 -40,000 44,000 0 0 -10,100 -30,650 0 -30,650 2,000 1,750 0 -2 -30 -2 -2 1,900 15,100 12 消費者J 50,000 48 -30,000 33,000 0 0 -52,600 -33,050 0 -33,050 38,000 800 0 -38 -8 0 -2 5,400 750 0 消費者K 50,000 48 -50,000 55,000 0 0 0 -31,450 0 -31,450 3,000 2,900 -18,000 -3 -41 0 -4 3,000 8,450 0 消費者L 50,000 48 -20,000 22,000 0 0 -33,900 -30,000 -11,500 -18,500 36,000 300 0 -36 -2 -6 -4 20,600 3,800 0 発行主体 0 0 278,780 -306,658 -195,615 217,350 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 83,165 -89,308 0 自分優先 の消費者の平均 50,000 48 -20,798 22,878 0 0 -27,291 -22,555 -3,791 -18,764 15,818 764 -273 -16 -9 -3 -2 13,938 4,605 18 コミュニティ優先 の消費者の平均 50,000 48 -50,000 55,000 0 0 0 -31,450 0 -31,450 3,000 2,900 -18,000 -3 -41 0 -4 3,000 8,450 0 全消費者の平均 50,000 17 -23,232 25,555 0 0 -25,017 -23,296 -3,475 -19,821 14,750 942 -1,750 -15 -12 -3 -2 48 13,027 4,926 ※網掛けされた消費者は,「コミュニティ優先」

(16)

- 16 - 表8-2 ゲームⅡ終了時点における各主体の残高と取引額累計 主体名 円所得 余暇 時間 チャージに よる円支出 クラークの チャージ 換金による 円収入 クラークの 換金 円による 域外消費 すべての 域内消費 円による 域内消費 クラークによ る域内消費 円によるアル バイト給与 クラークによ るボランティ ア謝礼 クラークに よる寄付 アルバ イト時 間数 ボラン ティア 時間数 域外で の消費 時間数 域内で の消費 時間数 円残高 クラー ク残高 時間 残高 域内商店街A 0 0 0 0 143,100 -159,000 0 189,400 25,400 164,000 -58,000 0 0 58 0 0 16 110,500 5,000 74 域内商店街B 0 0 0 0 138,060 -153,400 0 202,400 11,500 190,900 -115,000 0 0 115 0 0 8 34,560 37,500 123 域内NPOA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -8,050 50,000 0 128 0 0 0 41,950 128 域内NPOB 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -8,800 55,000 0 84 0 0 0 46,200 84 域外大型店A 0 0 0 0 0 0 25,600 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 25,600 0 0 域外大型店B 0 0 0 0 0 0 159,800 0 0 0 0 0 0 0 0 55 0 159,800 0 55 消費者A 50,000 48 -4,000 4,400 0 0 -70,000 -4,400 0 -4,400 24,000 0 0 -24 0 -24 0 0 0 0 消費者B 50,000 48 -53,100 58,410 0 0 0 -68,000 -12,900 -55,100 16,000 600 0 -16 -6 0 -4 0 3,910 22 消費者C 50,000 48 -25,000 27,500 0 0 -3,000 -7,500 0 -7,500 0 1,600 -3,000 0 -30 0 0 22,000 18,600 18 消費者D 50,000 48 -2,100 2,310 0 0 0 -13,000 -11,500 -1,500 0 1,850 -2,000 0 -17 0 0 36,400 660 31 消費者E 50,000 48 -46,200 50,820 0 0 -3,800 -48,500 0 -48,500 0 2,900 -5,000 0 -41 -3 -4 0 220 0 消費者F 50,000 48 -7,000 7,700 0 0 -32,600 -8,000 0 -8,000 0 300 0 0 -3 -2 -6 10,400 0 37 消費者G 50,000 48 -85,000 93,500 0 0 0 -41,500 0 -41,500 35,000 1,500 -50,000 -35 -12 0 0 0 3,500 1 消費者H 50,000 48 -50,000 55,000 0 0 0 -47,000 -11,500 -35,500 32,000 1,700 -20,000 -32 -14 0 -2 20,500 1,200 0 消費者I 50,000 48 -27,000 29,700 0 0 0 -11,850 0 -11,850 0 2,750 -18,000 0 -41 0 -4 23,000 2,600 3 消費者J 50,000 48 -64,000 70,400 0 0 -6,000 -69,300 0 -69,300 25,000 1,600 0 -25 -17 -2 -4 5,000 2,700 0 消費者K 50,000 48 0 0 0 0 -70,000 -1,150 -1,000 -150 21,000 450 0 -21 -3 -24 0 0 300 0 消費者L 50,000 48 -70,000 77,000 0 0 0 -71,600 0 -71,600 20,000 1,600 -7,000 -20 -28 0 0 0 0 0 発行主体 0 0 433,400 -476,740 -281,160 312,400 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 152,240 -164,340 0 自分優先 の消費者の平均 50,000 48 -25,000 27,500 0 0 -35,720 -25,970 -2,500 -23,470 20,400 810 -4,000 -20 -7 -10 -2 7,180 840 7 コミュニティ優先 の消費者の平均 50,000 48 -44,057 48,463 0 0 -971 -37,421 -3,486 -33,936 10,143 1,829 -12,143 -10 -25 0 -2 11,629 4,213 11 全消費者の平均 50,000 48 -36,117 39,728 0 0 -15,450 -32,650 -3,075 -29,575 14,417 1,404 -8,750 -14 -18 -5 -2 9,775 2,808 9 ※網掛けされた消費者は,「コミュニティ優先」

(17)

- 17 - 表8-3 ゲームⅢ終了時点における各主体の残高と取引額累計 主体名 円所得 余暇 時間 チャージに よる円支出 クラークの チャージ 換金による 円収入 クラークの 換金 円による 域外消費 すべての 域内消費 円による 域内消費 クラークによ る域内消費 円によるアル バイト給与 クラークによ るボランティ ア謝礼 クラークに よる寄付 アルバ イト時 間数 ボラン ティア 時間数 域外で の消費 時間数 域内で の消費 時間数 円残高 クラー ク残高 時間 残高 域内商店街A 0 0 0 0 76,080 -95,100 0 127,400 4,000 123,400 -63,000 0 0 63 0 0 14 17,080 28,300 77 域内商店街B 0 0 0 0 139,600 -174,500 0 284,000 15,000 269,000 -120,000 0 0 120 0 0 0 34,600 94,500 120 域内NPOA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -5,700 43,000 0 109 0 0 0 37,300 109 域内NPOB 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -8,200 30,000 0 81 0 0 0 21,800 81 域外大型店A 0 0 0 0 0 0 48,900 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 48,900 0 6 域外大型店B 0 0 0 0 0 0 240,900 0 0 0 0 0 0 0 0 52 0 240,900 0 52 消費者A 50,000 48 -72,700 87,240 0 0 -21,300 -86,150 0 -86,150 44,000 0 -1,000 -44 0 0 -4 0 90 0 消費者B 50,000 48 -5,800 6,960 0 0 -64,200 -4,450 0 -4,450 20,000 0 0 -20 0 -2 -2 0 2,510 24 消費者C 50,000 48 -47,000 56,400 0 0 -2,700 -43,000 0 -43,000 0 800 -10,000 0 -8 0 0 300 4,200 40 消費者D 50,000 48 -6,600 7,920 0 0 0 -27,000 -17,000 -10,000 0 2,100 0 0 -35 0 0 26,400 20 13 消費者E 50,000 48 -46,000 55,200 0 0 -5,000 -57,600 0 -57,600 1,000 2,400 0 -1 -38 -2 -2 0 0 5 消費者F 50,000 48 -3,834 4,601 0 0 -34,800 -5,000 0 -5,000 0 2,200 -1,000 0 -19 -4 0 11,366 801 25 消費者G 50,000 48 -55,011 66,013 0 0 -20,000 -53,000 0 -53,000 48,000 0 -3,000 -48 0 0 0 22,989 10,013 0 消費者H 50,000 48 0 0 0 0 -70,000 -2,000 -2,000 0 24,000 0 0 -24 0 -24 0 2,000 0 0 消費者I 50,000 48 -43,500 52,200 0 0 -1,800 -49,300 0 -49,300 12,000 750 0 -12 -6 -2 -4 16,700 3,650 24 消費者J 50,000 48 -60,000 72,000 0 0 0 -34,100 0 -34,100 10,000 2,550 -40,000 -10 -38 0 0 0 450 0 消費者K 50,000 48 -50,000 60,000 0 0 0 -45,000 0 -45,000 0 3,100 -18,000 0 -46 0 -2 0 100 0 消費者L 50,000 48 -4,000 4,800 0 0 -70,000 -4,800 0 -4,800 24,000 0 0 -24 0 -24 0 0 0 0 発行主体 0 0 394,445 -473,334 -215,680 269,600 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 178,765 -203,734 0 自分優先 の消費者の平均 50,000 48 -28,759 34,510 0 0 -33,386 -30,593 -286 -30,307 18,429 564 -1,857 -18 -7 -8 -1 5,998 2,910 13 コミュニティ優先 の消費者の平均 50,000 48 -38,627 46,352 0 0 -11,220 -39,450 -3,400 -36,050 10,800 1,990 -12,000 -11 -28 -1 -1 7,553 292 8 全消費者の平均 50,000 48 -32,870 39,445 0 0 -24,150 -34,283 -1,583 -32,700 15,250 1,158 -6,083 -15 -16 -5 -1 6,646 1,820 11 ※網掛けされた消費者は,「コミュニティ優先」

(18)

- 18 - 表8-4 ゲームⅣ終了時点における各主体の残高と取引額累計 主体名 所得 余暇 時間 チャージに よる円支出 クラークの チャージ 換金による 円収入 クラークの 換金 円による 域外消費 すべての 域内消費 円による 域内消費 クラークによ る域内消費 円によるアル バイト給与 クラークによ るボランティ ア謝礼 クラークに よる寄付 アルバ イト時 間数 ボラン ティア 時間数 域外で の消費 時間数 域内で の消費 時間数 円残高 クラー ク残高 時間 残高 域内商店街A 0 0 0 0 126,960 -158,700 0 267,900 12,400 255,500 -99,000 0 0 99 0 0 10 40,360 96,800 109 域内商店街B 0 0 0 0 152,640 -190,800 0 285,800 0 285,800 -120,000 0 0 120 0 0 6 32,640 95,000 126 域内NPOA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -6,500 52,000 0 101 0 0 0 45,500 101 域内NPOB 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -7,700 34,000 0 72 0 0 0 26,300 72 域外大型店A 0 0 0 0 0 0 30,800 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 30,800 0 10 域外大型店B 0 0 0 0 0 0 126,000 0 0 0 0 0 0 0 0 27 0 126,000 0 27 消費者A 50,000 48 -98,000 117,600 0 0 0 -116,200 0 -116,200 48,000 0 -1,000 -48 0 0 0 0 400 0 消費者B 50,000 48 -69,600 83,520 0 0 0 -86,100 -9,400 -76,700 29,000 0 -5,000 -29 0 0 -4 0 1,820 15 消費者C 50,000 48 -50,000 60,000 0 0 0 -41,500 0 -41,500 0 800 -7,000 0 -8 0 0 0 12,300 40 消費者D 50,000 48 -20,000 24,000 0 0 0 -23,000 0 -23,000 7,000 500 0 -7 -6 0 -2 37,000 1,500 33 消費者E 50,000 48 0 0 0 0 -71,000 -1,000 -1,000 0 22,000 0 0 -22 0 -24 -2 0 0 0 消費者F 50,000 48 -4,504 5,405 0 0 -31,800 -6,000 0 -6,000 0 750 0 0 -5 -10 -2 13,696 155 31 消費者G 50,000 48 -22,010 26,412 0 0 -50,000 -25,000 0 -25,000 37,000 0 0 -37 0 0 0 14,990 1,412 11 消費者H 50,000 48 -30,000 36,000 0 0 -4,000 -4,500 -2,000 -2,500 9,000 3,750 -37,000 -9 -34 -3 -2 23,000 250 0 消費者I 50,000 48 -43,000 51,600 0 0 0 -15,400 0 -15,400 6,000 2,950 -13,000 -6 -39 0 -2 13,000 26,150 1 消費者J 50,000 48 -74,000 88,800 0 0 0 -89,500 0 -89,500 24,000 1,000 0 -24 -24 0 0 0 300 0 消費者K 50,000 48 -56,000 67,200 0 0 0 -56,500 0 -56,500 6,000 2,650 -13,000 -6 -40 0 -2 0 350 0 消費者L 50,000 48 -81,000 97,200 0 0 0 -89,000 0 -89,000 31,000 1,800 -10,000 -31 -17 0 0 0 0 0 発行主体 0 0 548,114 -657,737 -279,600 349,500 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 268,514 -308,237 0 自分優先 の消費者の平均 50,000 48 -38,359 46,031 0 0 -21,829 -43,171 -143 -43,029 19,714 436 -1,143 -20 -6 -5 -1 9,384 2,295 16 コミュニティ優先 の消費者の平均 50,000 48 -55,920 67,104 0 0 -800 -50,300 -2,280 -48,020 16,200 2,230 -15,600 -16 -26 -1 -2 7,200 5,714 3 全消費者の平均 50,000 48 -45,676 54,811 0 0 -13,067 -46,142 -1,033 -45,108 18,250 1,183 -7,167 -18 -14 -3 -1 8,474 3,720 11 ※網掛けされた消費者は,「コミュニティ優先」

(19)

- 19 - 表8-5 ゲームⅤ終了時点における各主体の残高と取引額累計 主体名 所得 余暇 時間 チャージに よる円支出 クラークの チャージ 換金による 円収入 クラークの 換金 円による 域外消費 すべての 域内消費 円による 域内消費 クラークによ る域内消費 円によるアル バイト給与 クラークによ るボランティ ア謝礼 クラークに よる寄付 アルバ イト時 間数 ボラン ティア 時間数 域外で の消費 時間数 域内で の消費 時間数 円残高 クラー ク残高 時間 残高 域内商店街A 0 0 0 0 76,415 -89,900 0 200,000 29,000 171,000 -58,000 0 0 58 0 0 20 47,415 81,100 78 域内商店街B 0 0 0 0 202,810 -238,600 0 271,600 15,000 256,600 -146,000 0 0 146 0 0 4 71,810 18,000 150 域内NPOA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -7,800 20,000 0 175 0 0 0 12,200 175 域内NPOB 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 -3,100 54,000 0 29 0 0 0 50,900 29 域外大型店A 0 0 0 0 0 0 81,300 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 81,300 0 6 域外大型店B 0 0 0 0 0 0 115,700 0 0 0 0 0 0 0 0 12 0 115,700 0 12 消費者A 50,000 48 -30,200 34,730 0 0 -63,800 -33,400 0 -33,400 44,000 0 -1,000 -44 0 0 -4 0 330 0 消費者B 50,000 48 -71,000 81,650 0 0 0 -76,800 0 -76,800 21,000 0 -4,000 -21 0 0 0 0 850 27 消費者C 50,000 48 -22,000 25,300 0 0 -26,500 -11,500 0 -11,500 0 1,000 -10,000 0 -24 0 0 1,500 4,800 24 消費者D 50,000 48 -15,000 17,250 0 0 0 -25,300 -11,500 -13,800 5,000 1,500 -2,000 -5 -29 0 0 28,500 2,950 14 消費者E 50,000 48 -21,500 24,725 0 0 0 -45,900 -28,500 -17,400 0 2,850 -10,000 0 -40 0 -8 0 175 0 消費者F 50,000 48 -7,261 8,351 0 0 -35,000 -8,800 0 -8,800 0 450 0 0 -4 -8 -2 7,739 1 34 消費者G 50,000 48 -82,690 95,103 0 0 0 -31,850 0 -31,850 33,000 0 -20,000 -33 0 0 -4 310 43,253 11 消費者H 50,000 48 -33,921 39,011 0 0 0 -34,000 -4,000 -30,000 0 2,000 -11,000 0 -48 0 0 12,079 11 0 消費者I 50,000 48 -38,000 43,700 0 0 -1,800 -25,050 0 -25,050 13,000 1,100 0 -13 -11 -2 -6 23,200 19,750 16 消費者J 50,000 48 -40,000 46,000 0 0 -10,000 -32,000 0 -32,000 0 2,000 -16,000 0 -48 0 0 0 0 0 消費者K 50,000 48 -47,826 55,000 0 0 -50,000 -55,000 0 -55,000 48,000 0 0 -48 0 0 0 174 0 0 消費者L 50,000 48 -80,000 92,000 0 0 -9,900 -92,000 0 -92,000 40,000 0 0 -40 0 -8 0 100 0 0 発行主体 0 0 489,398 -562,820 -279,225 328,500 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 210,173 -234,320 0 自分優先 の消費者の平均 50,000 48 -43,997 50,598 0 0 -26,714 -36,800 0 -36,800 25,429 364 -4,429 -25 -6 -3 -2 4,718 9,733 12 コミュニティ優先 の消費者の平均 50,000 48 -36,284 41,727 0 0 -2,000 -42,800 -8,800 -34,000 5,200 1,670 -8,600 -5 -33 0 -2 8,116 797 8 全消費者の平均 45,455 44 9,200 -10,580 -25,384 29,864 -12,109 -32,855 -4,000 -28,855 12,636 991 -6,273 -13 -19 -2 -2 25,798 -14,853 9 ※網掛けされた消費者は,「コミュニティ優先」

(20)

- 20 -

図5-1 被験者が事前に選択した行動目標と事後の感覚(ゲームⅠ)

図5-2 被験者が事前に選択した行動目標と事後の感覚(ゲームⅡ)

図5-3 被験者が事前に選択した行動目標と事後の感覚(ゲームⅢ)

(21)

- 21 - 図5-5 被験者が事前に選択した行動目標と事後の感覚(ゲームⅤ) これらを見ると,「自分優先」と「コミュニティ優先」の程度..は,少なくとも被験者自身による事後 的評価において様々であったことが分かる。事前に選択された行動目標の分布では傾向性が見られな かったゲームⅡ以降においても,事後の「自分:コミュニティ」の比重の分布で見れば,ゲーム間で 大きく異なっている。すなわち,ゲームⅠ・Ⅱ・Ⅳでは,「自分優先」グループの分布と「コミュニテ ィ優先」グループの分布の間に大きな開きが見られるが,ゲームⅢ・Ⅴでは,2 つの分布が重なって おり18,特にゲームⅤの分布は一様に散らばっていて平坦である。この点を数量的に捉えるため,自 分:コミュニティ=a:bの場合のb(0≦b≦10)を「コミュニティ優先度」と呼び,全被験者のその平 均値をゲームごとに計算した。ゲームごとの被験者の「コミュニティ優先度」の平均値と消費者の各 種活動量との相関関係を調べたものが下表(表9)である。 表9 各ゲームにおける被験者のコミュニティ優先度と活動量の関係 ゲーム 進行 「コミュニティ 優先度」 の平均値 消費者の チャージ 額累計 (クラーク) 消費者の チャージ による支 出額累計 (円) 域内商店街 での消費額 累計 (すべて) 域内商店街 での消費額 累計 (クラーク) 域内商店街 での消費額 累計 (円) 域内商店街 でのアルバ イト給与額 累計(円) 域内NPO への寄付 額累計 (クラーク) 域内NPO でのボラ ンティア謝 礼額累計 (クラーク) 域外大型 店での消費 額累計 (円) 域内商店街 での消費額 --- 域外大型店 での消費額 ボランティア 謝礼額 --- アルバイト 給与額 ゲーム Ⅰ 2.92 306,658 278,780 279,550 237,850 41,700 177,000 21,000 11,150 298,900 0.070 0.063 ゲーム Ⅱ 4.92 476,740 433,400 391,800 354,900 36,900 173,000 105,000 16,850 185,400 0.566 0.097 ゲーム Ⅲ 3.75 473,334 394,445 411,400 392,400 19,000 183,000 73,000 13,900 289,800 0.251 0.076 ゲーム Ⅳ 5.17 657,737 548,114 553,700 541,300 12,400 219,000 86,000 14,200 156,800 0.548 0.065 ゲーム Ⅴ 4.33 562,806 489,388 441,600 397,600 44,000 204,000 74,000 10,900 190,500 0.388 0.053 「コミュニティ優先度」の 平均値との相関係数 0.856 0.900* 0.825 0.800 -0.394 0.524 0.902* 0.625 -0.937* 0.992** -0.291 p-値 0.064 0.037 0.085 0.104 0.512 0.365 0.036 0.259 0.019 0.001 0.635 * 5%有意水準で相関,** 1%有意水準で相関 このように,被験者(消費者)のコミュニティ優先度と各種活動量の関係を調べてみると,クラー クのチャージおよび域内NPOへの寄付と強い正の相関関係,域外大型店での消費(円の域外流出)と 強い負の相関関係があったことが分かる(表7-1の網掛け部分)19。特に,被験者のコミュニティ 18 特にゲームⅢとゲームⅣでは,事前にコミュニティ優先を選んだ被験者各1名が,事後評価ではコミュニティよりも 自己に重きを置いて行動したと回答している。 19 なお,クラークのチャージに関する 2 つの活動量のうち,「消費者のチャージ額累計(クラーク)」には,コミュニテ

(22)

- 22 - 優先度が最も低かった(12 名中 11 名が自分を優先した)ゲームⅠにおいては,域内の消費額累計が 域外の消費額累計を下回っていることに留意されたい。ここから,被験者は,地域通貨の購入(チャ ージ)や地域通貨の域内NPOへの寄付がコミュニティに資すると考え,他方,域外大型店での消費は コミュニティにとってマイナスであると理解していたことが伺える。また,域内商店街での消費額と 域外大型店での消費額の比をとると,それと被験者のコミュニティ優先度との間には,非常に強い正 の相関関係が見られることから,被験者は域外よりも域内で消費を行うことがコミュニティに寄与す ると考えて行動したことが推測される。 さて,それでは前節のプレミアム率の場合と同様に,今度は消費者ごとにゲームⅠ~Ⅴを通しての コミュニティ優先度と諸活動量との相関係数を見るとどうであろうか(表10)。被験者 12 名中 9 名 (消費者D・E・F・G・H・I・J・K・L)のコミュニティ優先度は,域内 NPO への寄付額また は域内 NPO でのボランティア謝礼額との少なくとも一方と非常に強い正の相関関係を持っており,コ ミュニティへの比重が高まるほど寄付やボランティアをしていることが分かる。また,12 名中 2 名(消 費者B・K)のコミュニティ優先度は,域外大型店での消費額と非常に強い負の相関関係があり,コ ミュニティ優先度が高まれば域外消費が減ることを示している。特に消費者Bについては,コミュニ ティ優先度が高まるほどクラークのチャージ額が増え,それを使った域内消費も増えるという相関関 係が見られる。このように,「コミュニティ優先」の意味内容も被験者により異なるのである。 表10 全ゲームを通してのコミュニティ優先度と活動量の関係 ゲームⅠ~Ⅴ を通しての 「コミュニティ優先度」 との相関係数 チャージ 額累計 (クラーク) チャージ による支 出額累計 (円) 域内商店街 での消費額 累計 (すべて) 域内商店街 での消費額 累計 (クラーク) 域内商店街 での消費額 累計 (円) 域内商店街 でのアルバ イト給与額 累計(円) 域内NPO への寄付 額累計 (クラーク) 域内NPO でのボラン ティア謝礼 額累計 (クラーク) 域外大型 店での消費 額累計 (円) 消費者A 0.314 0.319 0.307 0.307 - 0.683 0.748 -0.250 -0.18 消費者B 0.994** 0.997** 0.993** 0.997** 0.526 0.548 0.782 -0.147 -0.976** 消費者C -0.465 -0.439 -0.596 -0.596 - - -0.588 0.749 -0.272 消費者D -0.759 -0.768 0.219 -0.672 0.946* -0.904* 0.553 0.919* 0.431 消費者E 0.291 0.330 0.510 0.137 0.655 0.655 0.935* 0.764 0.677 消費者F -0.875 -0.868 -0.714 -0.714 - - 0.161 0.982** 0.420 消費者G 0.803 0.842 0.107 0.317 -0.281 -0.038 0.989** 0.407 -0.706 消費者H 0.357 0.303 -0.293 -0.262 -0.354 -0.473 0.938* 0.923* -0.382 消費者I -0.177 -0.289 -0.718 -0.718 - -0.349 0.915* 0.845 -0.727 消費者J 0.059 -0.012 -0.517 -0.517 - -0.871 0.924* 0.869 -0.468 消費者K 0.685 0.676 0.418 0.422 -0.610 -0.858 0.951* 0.976** -0.974** 消費者L 0.603 0.594 0.538 0.545 0.299 -0.396 0.993** 0.994** -0.689 - 該当額ゼロ,* 5%有意水準で相関,** 1%有意水準で相関 ここで,コミュニティ優先度と活動量の間に全く相関関係がない 2 名(消費者A・C)に注目され たい。この 2 名は,全ゲームを通してのプレミアム率と活動量の間に強い相関関係があった2 名に他 ならない(表6参照)。すなわち,全12 名の被験者のうち,消費者A・Cは主としてプレミアム率の ィ優先度との相関関係が認められなかった。これはチャージ額=チャージのための円支出額×プレミアム率であり, そのプレミアム率がゲームごとに変化しているためであるので,チャージ行為とコミュニティ優先度との相関関係を 否定するものではない。

(23)

- 23 - 変化に,残りの10 名は自身のコミュニティ優先度によって行動を規定されていたため,全体の傾向 としては,コミュニティ優先度によって全体の各種活動量が左右されていたと言えるであろう。この ことは,プレミアム率との相関関係(表5)やコミュニティ優先度との相関関係(表9)に着目しな がら,ゲームⅠ~Ⅴにおける各種集計量の推移(図3-1~図3-5)を見れば確認できる。 ゲームⅠ(図3-1)とゲームⅡ(図3-2)を比較すると,プレミアム率がともに10%で変化し ていないにもかかわらず,コミュニティ優先度が2.92 から 4.92 へと上昇したために,クラークのチ ャージ額と域内NPO への寄付額が増大し,域外大型店での消費額は減少している。ゲームⅡ(図3 -2)とゲームⅢ(図3-3)を比較すると,プレミアム率が10%から 20%に上昇したにもかかわ らず,コミュニティ優先度が4.92 から 3.75 へと下降したために,クラークのチャージ額は増大せず, 域内NPO への寄付額が減少し,域外大型店での消費額が増大している。ゲームⅢ(図3-3)とゲ ームⅣ(図3-4)を比較すると,プレミアム率は20%で変化していないにもかかわらず,コミュニ ティ優先度が3.75 から 5.17 へと上昇したために,クラークのチャージ額と域内 NPO への寄付額が 増大し,域外大型店での消費額が減少している。ゲームⅣ(図3-4)とゲームⅤ(図3-5)を比 較すると,プレミアム率が20%から 15%に下降したが,コミュニティ優先度も 5.17 から 4.33 へと 下降したために,クラークのチャージ額と域内NPO への寄付額がともに減少し,域外大型店での消 費が増大している。このように,本実験において最も支配的な要因はコミュニティ優先度であった。 最後に,集計量の表示方法と被験者の行動との関係を見てみることにしよう。 3.4 集計量表示方法の変更と被験者の行動 ゲーム中に被験者に対して集計量(表3参照)を提示したことは,被験者の行動に影響を及ぼした のであろうか。各ゲームにおいて被験者が集計量グラフを参照した回数(画面表示を切り替えた回数) を調べてみると,下図(図6)のように参照されていたことが分かる。 図6 被験者による集計量グラフの参照回数

参照

関連したドキュメント

算処理の効率化のliM点において従来よりも優れたモデリング手法について提案した.lMil9f

地域の名称 文章形式の表現 卓越もしくは変化前 断続現象 変化後 地域 風向 風向(数値) 風速 風力 起時

12―1 法第 12 条において準用する定率法第 20 条の 3 及び令第 37 条において 準用する定率法施行令第 61 条の 2 の規定の適用については、定率法基本通達 20 の 3―1、20 の 3―2

(注)本報告書に掲載している数値は端数を四捨五入しているため、表中の数値の合計が表に示されている合計

10 特定の化学物質の含有率基準値は、JIS C 0950(電気・電子機器の特定の化学物質の含有表

■鉛等の含有率基準値について は、JIS C 0950(電気・電子機器 の特定の化学物質の含有表示方

各テーマ領域ではすべての変数につきできるだけ連続変量に表現してある。そのため

(注)本報告書に掲載している数値は端数を四捨五入しているため、表中の数値の合計が表に示されている合計