• 検索結果がありません。

平成 23 年度修士論文 白色腐朽菌を利用した染料の生分解 Biodegradation of dyes using white-rot fungi. 高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻 物質 環境システム工学コース 堀澤研究室修士 2 年 加藤紘將 1

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "平成 23 年度修士論文 白色腐朽菌を利用した染料の生分解 Biodegradation of dyes using white-rot fungi. 高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻 物質 環境システム工学コース 堀澤研究室修士 2 年 加藤紘將 1"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

平成23年度 修士論文

白色腐朽菌を利用した染料の生分解

Biodegradation of dyes using

white-rot fungi.

高知工科大学大学院 工学研究科 基盤工学専攻

物質・環境システム工学コース

(2)

2

目次

1.概要

2.緒言

3.実験方法

3-1. 供試菌

3-2. 分解対象

3-3. 菌体の培養方法

3-4. それぞれの実験における染料除去率の測定方法

4.結果と考察

5.結論

6.参考文献

7.謝辞

(3)

3

1.概要

白色腐朽菌は木材を白色に腐朽させる担子菌である。白色腐朽菌が木材を腐朽させる過 程で分泌するリグニン分解酵素は基質特異性が低いという特徴がある。このためリグニン と部分構造が類似するダイオキシン類に代表される難分解性化合物の分解が可能である。 染料(インジゴ、コンゴーレッドなど)もまた難分解性である。本研究では白色腐朽菌を用 いて染料を生分解処理することを考えた。これまでの研究で、担体を用いて菌体を固定化 することによりリグニン分解酵素の生産性が増加することがわかっている。しかし、白色 腐朽菌染料分解は、菌糸への吸着、培養器内の他材料への吸着、pHの変化による分解、物 理化学的要因による分解など、菌が生産する分泌するリグニン分解酵素による貢献度には まだ議論の余地がある。また、生物的な分解のために物理的処理に比べて処理速度が遅く 効率が悪いなどの問題点が挙げられる。そこで本研究は、白色腐朽菌が分泌するリグニン 分解酵素を利用し、より効率的な染料の生分解を目的とした。分解対象の染料をレマゾー ルブリリアントブルーR(RBBR、0.4 g/l (6.4×10-4 M))、クリスタルバイオレット(0.005 g/l (8.8×10-6 M))、コンゴーレッド(0.1 g/l (1.4×10-4 M))、p-(フェニルアゾ)フェ ノール(0.05 g/l (2.5×10-4 M))の4種類とした。液体培養の際に菌体が空気面への接触 の有無での影響を比較検討、菌体外酵素による染料分解の検討、白色腐朽菌の培養の際に 培養液上面の面積(気液接触面積)の染料分解に対しての影響の検討、そして、菌体成長 後に染料を添加すること、最後に、染料分解後の培養液の分析を行った。 菌体外酵素による染料の分解では、菌体を7日間前培養した培養液を粗酵素液として染料 を含む水溶液に毎日1.5mlずつ添加した。菌体の培養の際に気液接触面積の違いによる染料 分解では、気液接触面積20 cm2と75 cm2の培養容器を用い、染料を加えた培養液に菌を接 種した。そして菌体成長後の染料添加と染料分解後の反応液の分析では、75 cm2の培養容 器を用い、菌接種7日後に培養液に染料を無菌的に加えた。すべて25℃の暗所で静置培養と した。培養液中の染料の測定方法はそれぞれの上澄み液を4倍希釈し、吸光度(RBBR、ク リスタルバイオレットが593 nm、コンゴーレッドが497 nm、p-(フェニルアゾ)フェノール が390 nm)によって残存染料濃度を測定した。 菌体の培養において空気面に接触させて培養を行ったほうが、接触していないものと比 較するとRBBR とクリスタルバイオレットでは前者の条件で染料分解が進んだ。粗酵素液 による染料の分解において、カワラタケはRBBR を 90%以上除去した。また、アラゲカワ ラタケでは約20%、ヒラタケでは約 60%の除去率だった。クリスタルバイオレットの分解 では、カワラタケ、アラゲカワラタケで約70%、ヒラタケで約 45%の除去率を示した。コ ンゴーレッドの分解では、カワラタケ、ヒラタケで約40%、アラゲカワラタケで約 30%を 示し、白色腐朽菌のリグニン分解酵素によって染料が分解されていることが示唆された。 気液接触面積の違いによるに白色腐朽菌の培養でのRBBR の分解は、カワラタケ、アラゲ

(4)

4 カワラタケの2 種類で、気液接触面積が大きいほうが 4 日目から除去速度が上がり、最終 的な除去率も高いことが分かった。一方クリスタルバイオレットの分解では、最終的な除 去率はカワラタケ、アラゲカワラタケの 2 種類では差がなかった。どの供試菌においても 気液接触面積の小さい培養器のほうが除去速度が大きかった。菌体成長後の染料添加では、 RBBR においてはカワラタケで染料添加から 1 日で約 90%の除去率を示し、すべての菌体 で最終的に除去率が90%を超えた。コンゴーレッドでは、カワラタケが約 90%、アラゲカ ワラタケ、ヒラタケはそれぞれ約75%の除去率を示した。コンゴーレッドは以前の実験で、 染料を混合した液体培地での培養では菌が増殖できず死滅したが、菌体の成長後に添加す ることによって、分解が可能となった。p-(フェニルアゾ)フェノールでは、アラゲカワラタ ケで約 70%、カワラタケで約 55%、ヒラタケで約 30%の除去率を示し、クリスタルバイ オレットでは、すべての供試菌で90%を超える除去率を示した。染料分解後の培養液の可 視紫外吸収スペクトルを測定したところ、すべての染料において最も高いピークが消失し た。しかし、RBBR においては 593nm のピークが、分解後では 300nm 付近にシフトし、 色も黄色のような色に変化した。リグニン分解酵素によって分解された染料がどこまでの 化学構造に分解されているかまだ明らかではないため、今後詳細な分析が必要である。

(5)

5

2.緒言

担子菌である木材腐朽菌には大きく2つに分類される。木材中のセルロースのみを分解 し木材を褐色に腐朽させる褐色腐朽菌と、セルロースのみだけでなくリグニンを分解して 木材を白色に腐朽させる白色腐朽菌である。白色腐朽菌が木材を腐朽させる過程で分泌す るリグニン分解酵素(マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ラッカー ゼなど)は基質特異性が低いという特徴があり、リグニンと部分構造が類似するダイオキ シン類などに代表される、複数の環状構造を持つ難分解性化合物を分解する事が可能であ る。 染料も複数の環状構造を持つ難分解性化合物である。古代より染料としては、様々な動 物や植物から抽出した天然色素が用いられてきた。植物由来の染料が種類としては最も多 く、アカネ、アイ、ウコンなどが古代から利用されている。動物由来のものとしては、イ ボニシ等から得られる貝紫やエンジムシから得られるコチニールがある。これらの染料の 多くは大量の天然物を処理してもわずかな量しか得ることが出来ないため、希尐品であり 使用が制限されてきた。しかし、1856 年にウィリアム・パーキンにより最初の合成染料が 作られて以来、現在では数 百種が工業生産されてお り、使用されている染料の ほとんどが合成染料であ る(図1)。化学構造によ る分類ではアゾ染料(コン ゴーレッド、オレンジⅡな ど)やアントラキノン染料 (スレンレッド 5GK、スレ ンブラウンR、スレンブリ リアントグリーンB など)、 インジゴイド染料(インジ ゴ、白藍など)などの染料が あげられる。染料は環状の 構造を持つ化学的に安定 な構造であるため、分解さ A B C 図1.工業生産の染料

(6)

6 れにくいという特徴をもっている。染料工場の排水処理槽には、このような環状構造の染 料が複数混在していると考えられる。 処理槽中の染料除去方法として従来は活性炭による吸着、沈殿による除去、光によって 結合を開裂させる光分解、化学物質を使用する環状構造の開裂分解などの物理的な処理に よって除去されている。 本研究では、工場排水の処理槽で、生物である白色腐朽菌による染料の生分解を目指す。 生物を利用する方法の利点は、生物的分解のため環境負荷が尐なく、常温・常圧にて除去で きることである。また、小規模な工場などでは物理的処理の際のエネルギーやコストの準 備が困難な場合があるため、生物的な処理を採用する意義がある。 しかし白色腐朽菌を用いる生物処理では、染料分解におけるリグニン分解酵素が貢献し ているのかどうか、また物理的処理に比べて処理速度が小さいことをどう改善するか、な どの問題点が挙げられる。従って本研究では、染料がリグニン分解酵素による分解である かどうかの検証や、より効率的な染料分解の条件を検討することにした。一方で我々はこ れまでに、担子菌の液体培養時に菌糸を担持させる担体を用いることで、その種類や有無 によってリグニン分解酵素、セルロース分解酵素の生産量に違いがみられる(1)ことや、担体 を用いて菌体を培養することで、菌体の色素除去能力が増加すること(2)を見出してきた。そ こで本研究では、最終的な目標として処理槽での染料分解システムを想定し、そのための 基礎的なデータを得るため液体培地で培養した白色腐朽菌と、菌体から分泌されたリグニ ン分解酵素のみによる染料分解力を比較し、培養条件の影響を評価した。

(7)

7

3. 実験方法

3-1. 供試菌

カワラタケ Trametes versicolor FFPRI1030 、アラゲカワラタケ Trametes hirsuta

KUT0807 、ヒラタケ Pleurotus ostreatus NBRC6515 の3種の白色腐朽菌を実験に供し た。各菌株の継代培養及び実験の前培養にはポテトデキストロース寒天(PDA)培地を用 い、25℃の暗所で培養した。

3-2. 分解対象

Remazol Brilliant Blue R(RBBR)、クリスタルバイオレット、コンゴーレッド、p-(フ ェニルアゾ)フェノールの 4種 の染料を実験 に供し た。RBBR はアントラキノ ン系 の染料であり 水溶液 中で青色を呈する(図2-A)。 吸光 度によってリ グニン 分解 酵素活性の評 価が出 来る ことから様々 な研究 にお いて白色腐朽 菌の選 定に使用されてきた。クリ スタルバイオレットは pH 指示 薬やグラム陽 性の染 色液 として用いら れてお り、水溶液中で紫色を呈す る(図2-B)。殺菌消每効果 もあるため、微生物培養検 査に おける発育阻 止剤な どにも使用されている。コ ンゴ ーレッドはア ゾ系の 染料 で水溶液中で は赤色 を呈し、pH 指示薬にも用 A B C D 図2.使用した染料の化学構造 A; RBBR、B; クリスタルバイオレット、 C; コンゴーレッド、D; p-(フェニルアゾ)フェノール

(8)

8 いられている(図 2-C)。セルロース繊維に強い親和性を持っており、また每性が強い染料 である。p-(フェニルアゾ)フェノールは水溶液中で黄色を呈し、アゾ染料として基本的な構 造をもつ(図2-D)。アゾ染料は現在合成染料として、種類が多く価格も比較的安いことか ら最も多く使用されている染料であるといえる。なお染料の濃度はそれぞれ RBBR、クリ スタルバイオレットが593 nm、コンゴーレッドが 497 nm、p-(フェニルアゾ)フェノールが 390 nm の吸光度で測定した。それぞれの染料の濃度は、RBBR が 0.4 g/l (6.4×10-4 M)、 クリスタルバイオレットが0.005 g/l (8.8×10-6 M)、コンゴーレッドが 0.1 g/l (1.4×10-4 M)、 p-(フェニルアゾ)フェノールが 0.05 g/l (2.5×10-4 M)で液体培地に添加した。 3-3. 菌体の培養方法 本研究で使用した液体培地の組成を表1に示した。 この液体培地30 ml を 100 ml のマヨネーズ瓶、また は 270 ml の細胞培養用フラスコに分注した。マヨネ ーズ瓶での培養では液体培地を分注後に、細胞培養用 フ ラス コで の培養 では分 注前 にオ ートク レー ブ で 121℃・20min 滅菌した。供試菌であるカワラタケ、 アラゲカワラタケおよびヒラタケを PDA 培地に前培 養し、そのコロニーの先端部を直径11.5 mm のコルク ボーラーで打ち抜き、実験1〜実験 5(3-4 に記述)の それぞれの液体培地に接種した。種菌接種した後それらを 25℃の暗所にて静置培養を行っ た。それぞれの菌体、染料ごとのサンプル繰り返し数は4本ずつとし、染料の除去量は4 本の平均値とした。 3-4. それぞれの実験における染料除去率の測定方法 実施した〔実験1〕〜〔実験 5〕の内容を以下に記述する。 〔実験1〕菌体が気液面における接触の有無においての染料分解への影響 染料を添加した液体培地にフロー担体としてスギ炭2 g を投入し、一方は菌体が気液面に 接触するように添加した。もう一方は、担体に潜り込ませるように菌体を添加し、気液面 への接触がないようにした。フロー担体とは、液体培養において菌体が培地の気液面と接 触しやすいように支持する資材である。実験 1 では菌体が確実に空気面に接触しているも のとしていないものを作るため、フロー担体としスギ炭を投入した。反応液を250 μl 採取 し、750 μl の蒸留水を混ぜ合わせ、吸光度計でそれぞれの染料の吸光度で測定を行った。 表1. 液体培地の組成 Glucose 0.1% NH4NO3 0.1% KH2PO4 0.08% Na2HPO4 0.02% MgSO4・7H2O 0.05% Yeast extract 0.2% 脱イオン水

(9)

9 測定日は菌体添加後0, 2, 4, 6, 8, 10, 14, 18 日目とした。 〔実験2〕白色腐朽菌が分泌するリグニン分解酵素による染料分解の検証 液体培地に供試菌を接種したものを培養し、その培養液を粗酵素液とした。培養から 7 日後の粗酵素液を染料が溶解した水溶液に毎日1.5 ml ずつ添加した。なお培養している液 体培地の量は30 ml を保つため、粗酵素液を採取後に液体培地を 1.5 ml 継ぎ足した。その 反応液を250 μl 採取し、750 μl の蒸留水で希釈し、吸光度計でそれぞれの染料に適切な 波長で測定を行った。染料濃度の測定日は粗酵素液添加後0, 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15 日目に 行った。 〔実験3〕気液接触面積の違いが染料分解に及ぼす影響の検討 気液接触面積20 cm2のマヨネーズ瓶(100 ml 容,ガラス製,TPX ねじ口フタ付)と 75 cm2の細胞培養用フラスコ(270 ml 容,ポリスチロール製)の2種類で菌体を培養し、染 料の除去量を実験1 と同様に反応液 250 μl と 750 μl の蒸留水で希釈し、吸光度により 評価した。測定日は菌体添加後0, 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 18 日目とした。 〔実験4〕菌体成長後の染料添加における分解 液体培地で菌体を7 日間または 3 日間培養した培養液上清に終濃度が各染料の濃度にな るように添加した。アラゲカワラタケでは,他の 2 つの供試菌と比較すると成長が速いた め、7 日間培養した培養液中では分泌されたリグニン分解酵素の活性が下がっていることが 考えられることから 3 日間だけの培養も試みた。染料の除去量の評価は、反応液 250 μl と750 μl の蒸留水で希釈し、吸光度を評価した。測定日は染料添加後 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 日目に行った。 〔実験5〕染料分解後の反応液の解析 実験4 と同様に菌体成長後に染料を添加し、分解された8日目の反応液を吸光度計で 800 nm~200 nm の波長における吸光スペクトルを測定した。

(10)

10 除去率の算出方法は、ブランク(菌体を添加せず、液体培地に染料だけ(実験1におい ては担体のみ)を添加したもの)の測定値を分母、分解された反応液の測定値を分子とし て算出した。なおそれぞれの実験方法の概要を図3に示した。 20 cm2 75 cm2 図3.それぞれの実験方法の概要 (上から順に実験1、実験2、実験3、実験4、5) 供試菌 液体培地 染料が 溶解した 水溶液 供試菌 染料を添加した 液体培地 供試菌を7日間(3日間)培養し、 染料をそれぞれの濃度で添加 供試菌

(11)

11

4. 結果と考察

4-1. 実験 1 菌体が気液面における接触の有無においての染料分解への影響 〔実験1〕において、RBBR およびクリスタルバイオレットの除去率の経時的変化を図4 に示した。 図4.菌体が気液面に接触の有無における除去率. 上:RBBR,下:クリスタルバイオレット. 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

菌体添加後日数

RBBR

アラゲカワラタケ(接

触有)

アラゲカワラタケ

カワラタケ(接触有)

カワラタケ

ヒラタケ(接触有)

ヒラタケ

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

菌体添加後日数

クリスタルバイオレット

アラゲカワラタケ(接

触有)

アラゲカワラタケ

カワラタケ(接触有)

カワラタケ

ヒラタケ(接触有)

ヒラタケ

(12)

12 RBBR における菌糸の気相への接触の有無に対する影響では、カワラタケ、ヒラタケで 最終的な除去率の差が生じた。アラゲカワラタケでは最終的な除去率に差はなかったが、4 日目から除去速度が上がった。カワラタケにおいては3 種類の供試菌の中でも最も顕著な 差があり、気相に菌糸が接触した方では最終的な除去率が約50%も上回った。クリスタル バイオレットにおいても、RBBR と同様にカワラタケ、ヒラタケで最終的な除去率に差影 響が認められ、カワラタケでは気相に接触した方で2 日目から除去速度が増加した。 今回実験を行った供試菌では、3 種類とも同様に菌糸が気液面への接触している条件で染 料分解の効率が上がることがわかった。特に抗菌性のあるクリスタルバイオレットでは成 長速度などからみても気液面への接触の条件の違いだけで大きな差が生じた。この要因と しては、菌体への酸素供給量の差がそのまま除去率にも反映されたと考えられる。この結 果より今後は、気液面に接触した菌体培養を最低条件として実験を進めた。

(13)

13 4-2. 実験 2 白色腐朽菌が分泌するリグニン分解酵素による染料分解の検証 〔実験2〕について、染料除去率の経時的変化を図5、培養の様子を図6に結果を示した。 図5.菌体外酵素による染料除去率 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

粗酵素液添加後日数

RBBR

アラゲカワラタケ

カワラタケ

ヒラタケ

カワラタケ(菌体あり)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

粗酵素液添加後日数

クリスタルバイオレット

アラゲカワラタケ

カワラタケ

ヒラタケ

アラゲカワラタケ

(菌体あり)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

粗酵素液添加後日数

コンゴーレッド

アラゲカワラタケ

カワラタケ

ヒラタケ

(14)

14 RBBR の除去ではカワラタケの粗酵素液は高い除去率を示した。アラゲカワラタケ、ヒ ラタケではカワラタケと比較すると除去速度は遅いが、粗酵素液を添加するごとに尐しず つ分解していることが認められた。クリスタルバイオレット、コンゴーレッドでは3 つの 供試菌間で除去速度に差は表れず、初めはあまり分解が進んでいないが粗酵素液を毎日添 加していくことで除々に分解した。なおコンゴーレッドの場合は染料を液体培地に混合し た条件で菌糸の培養を行った際には、菌体が死滅したため分解が全く見られなかったが、 菌体外酵素のみを添加していくと(実験2の条件)染料濃度を低下させることが可能であ ることが示された。 菌体が存在している状態での染料分解では、菌体への吸着によって染料が除去されてい るように見えた可能性も考えられたが、〔実験2〕結果では粗酵素液(菌体外酵素)を添加 し続けることでも、菌体が存在している状態と同様に染料の分解がなされていることが確 認できた。 図6.菌体外酵素による染料の分解. A; RBBR(カワラタケ)、B; クリスタルバイオレット(アラゲカワラタケ)、 C; コンゴーレッド(ヒラタケ),それぞれ左のビンは無処理,右のビンは粗酵素添加区を示す. A B C

(15)

15 4-3. 実験 3 気液接触面積の違いが染料分解に及ぼす影響の検討 〔実験3〕の RBBR およびクリスタルバイオレットの除去率の経時的変化を図7に示し た。 図7.気液接触面積の違いによる染料分解 気液接触面積が染料分解に及ぼす影響を検討したところ,まずRBBR で、カワラタケ、 アラゲカワラタケの2 種類の供試菌で気液接触面積の大きい方が 4 日目から除去速度が増 加し、最終的な除去率が高まることがわかった。一方クリスタルバイオレットの分解では、 最終的な除去率はカワラタケ、アラゲカワラタケはほとんど変化がなかった。気液接触面 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

日数

RBBR

アラゲカワラタケ

(面積大)

アラゲカワラタケ

カワラタケ(面積大)

カワラタケ

ヒラタケ(面積大)

ヒラタケ

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20

日数

クリスタルバイオレット

アラゲカワラタケ

(面積大)

アラゲカワラタケ

カワラタケ(面積大)

カワラタケ

ヒラタケ(面積大)

ヒラタケ

(16)

16 積は、どの供試菌においても気液接触面積の小さい従来のマヨネーズ瓶の培養で除去速度 が速いことが示された。 抗菌性のあるクリスタルバイオレットとそうではないRBBR では気液接触面積の影響が 異なることがわかった。したがって、気液接触面積はその影響が染料や菌種によって異な る可能性があると考えられる。

(17)

17 4-4. 実験 4 菌体成長後の染料添加における分解 〔実験4〕における4種類の染料の経時的除去率を図8−1〜2に示した。 図8−1.菌体成長後の染料添加. 上:RBBR,下:クリスタルバイオレット. 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10

日数

RBBR

アラゲカワラタケ

(7日目)

アラゲカワラタケ

(3日目)

カワラタケ(7日

目)

ヒラタケ(7日

目)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10

日数

クリスタルバイオレット

アラゲカワラタケ

(7日目)

アラゲカワラタケ

(3日目)

カワラタケ(7日

目)

ヒラタケ(7日

目)

(18)

18 まずアラゲカワラタケの培養日数について、アラゲカワラタケはほかの2 種類の供試菌 と比較すると成長が速く分泌されるリグニン分解酵素の活性が低下していることが考えら れたため、菌体培養後3 日目に染料添加する試験区を設定した。 RBBR においては、カワラタケで染料添加 1 日に約 90%の除去率を示し、すべての菌種 で最終的な除去率が90%を超えた。クリスタルバイオレットでは、すべての供試菌で 90% を超える除去率を示した。アラゲカワラタケの培養日数がRBBR およびクリスタルバイオ 図8−2.菌体成長後の染料の添加. 上:コンゴーレッド,下:p-(フェニルアゾ)フェノール 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10

日数

コンゴーレッド

アラゲカワラタケ

(7日目)

アラゲカワラタケ

(3日目)

カワラタケ(7日

目)

ヒラタケ(7日

目)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10

染料添加後日数

p-(フェニルアゾ)フェノール

アラゲカワラタケ

(7日目)

アラゲカワラタケ

(3日目)

カワラタケ(7日

目)

ヒラタケ(7日

目)

(19)

19 レットの除去に対して異なる影響を示した原因としては、それぞれの染料分解に働く酵素 が別のものであると考えられる。コンゴーレッドでは、カワラタケが約90%、アラゲカワ ラタケ、ヒラタケはそれぞれ約75%の除去率を示した。コンゴーレッドは以前の実験で、 染料を混合した液体培地での培養では菌体が死滅したので除去率は0%であったが、菌体成 長後に染料を添加することによって菌体を死滅させることなく分解出来ることが示された。 p-(フェニルアゾ)フェノールでは、アラゲカワラタケで約 70%、カワラタケで約 55%、ヒラ タケで約30%の除去率を示した。また、p-(フェニルアゾ)フェノールにおいてのみほかの 3 種類の染料とは異なり、アラゲカワラタケで培養7 日目に染料添加を行ったもののほうが 高い除去率を示した。 菌体成長後の染料添加においては、RBBR やクリスタルバイオレットの分解で染料添加 後1 日目で高い除去率を示したことから、染料を連続的に添加し分解処理が考えられる。 また菌体の成長段階によっても除去率が変化することが新たに判明した。

(20)

20 4-5. 実験5 染料分解後の反応液の解析 〔実験5〕の可視紫外光吸収スペクトルおよび培養ビンの様子を図9−1〜3に示した。 図9−1.染料分解後の培養液の可視紫外吸光スペクトル(RBBR) および培養ビンの様子(左:無処理,右:培養後). 図9−2.染料分解後の培養液の可視紫外吸光スペクトル(クリスタルバイオレット) および培養ビンの様子(左:無処理,右:培養後).

(21)

21 可視紫外吸光スペクトルを測定した結果、RBBR、クリスタルバイオレットは 593nm、 コンゴーレッドは497nm にピークがあったものが、それぞれそのピークが減尐し 300nm 付近にシフトしていることがわかる。このことによって添加された染料が別の化学物質に 分解されていること予想できる。しかし、もとの染料の構造がリグニン分解酵素によって どのような分解過程を経過するのか、また最終的にどんな構造に分解されているかなど不 明な点が多くさらなる解明が必要であると考えている。 図9−3.染料分解後の培養液の可視紫外吸光スペクトル(コンゴーレッド) および培養ビンの様子(左:無処理,右:培養後).

(22)

22

5. 結論

白色腐朽菌を利用した染料の生分解において、染料濃度の低下は酵素による分解、菌体 への吸着、物理化学的劣化、pH の変化による色調変化など、様々な要因が染料除去に関与 している可能性があったため、純粋に酵素分解の寄与を明らかにする必要があった。本研 究の〔実験2〕の結果では粗酵素液を添加していくことで、菌体がある状態と同様に染料 の分解が起こっていることが確認できた。 これまでの研究で、菌体が気液面に接触している場合のほうが染料除去率が高い傾向が みられることが分かっていた。本研究の〔実験1〕から菌糸が気相に接していると除去率 が高いことが示され、菌体への酸素供給が酵素生産に影響を与えることで除去率が増加す る可能性が示された。特に、抗菌性のあるクリスタルバイオレットついては、成長速度な どからみてみても、菌体が気相に接触したときに顕著な除去率増加があることがわかる。 今後、染料分解を行う際の白色腐朽菌の培養については、気液面に接触している場合での 培養が最低条件であると考えられる。 〔実験3〕における気液接触面積の違いが染料分解に及ぼす影響の検討では、RBBR の 分解でカワラタケ、アラゲカワラタケの 2 種の菌体で除去率増加が見られたが、クリスタ ルバイオレットの分解では見られなかった。この原因としては、空気に接触している面積 は大きいが、それに伴って浮遊している面積も大きくなるため、菌体の成長が遅れたため と予想出来る。しかしこの課題については担体を用いて菌体を固定化することで克服でき るのではないかと考えられる。 〔実験4〕の菌体成長後の染料添加における分解においては、初期増殖を終えた時期に 染料を添加することで安定して高い除去率を得ることができた。すなわち、増殖中の菌体 に負荷を与えることを避け、酵素生産力を獲得した後に染料を添加する方法を見いだした。 これは、処理槽での染料分解のための基礎的なデータを得ることには一定の成果があった ように思う。これは、RBBR やクリスタルバイオレットの分解で、染料の添加後、1 日目で 高い除去率を示したことから、染料を連続的に添加し、分解処理が考えられる。 〔実験5〕の染料分解後の反応液の可視紫外吸光スペクトル測定では、どの染料でも最 大吸収波長のピークが下がり、クリスタルバイオレットにおいてはほぼ分解していること がわかった。しかし、RBBR のように青色から分解され赤色となり染料の化学構造をどの 段階まで分解しているかが不明である。コンゴーレッドでもピークは減尐しているものの RBBR と同様に分解後の化学構造はわからない。

(23)

23 本研究での課題としては、まず、白色腐朽菌が分泌する酵素が、染料の化学構造をどの 段階まで分解しているのかがわからないことである。 そして、様々な化学物質が混在する処理槽での除去に際して、生物である白色腐朽菌の 活性や成長の低下が考えられる。また処理槽において菌体が生育できない可能性もあり、 生育が可能だとしても白色腐朽菌の酵素分泌が著しく阻害されることも考えられるため、 菌体の生存能力強化、染料除去能力の向上のためのリグニン分解酵素生産量の増加が必要 であると考えている。

(24)

24

6. 謝辞

本論文のご指導いただいた堀澤先生に深く感謝いたします

7. 参考文献

1)A.Asano. “担体を用いた白色腐朽菌による色素除去”(2006)高知工科大学修士論文 2)K.Katou. “担体を用いた白色腐朽菌の酵素活性変化量”(2010)高知工科大学卒業論 文 3)N.Nishida. “白色腐朽菌を用いた染料の分解”(2011)高知工科大学卒業論文 4)G.Suzuki. et al. “難分解性物質含有排水の分解処理技術に関する研究開発”(2003)

参照

関連したドキュメント

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. hirai@mist.i.u-tokyo.ac.jp

情報理工学研究科 情報・通信工学専攻. 2012/7/12

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

高機能材料特論 システム安全工学 セメント工学 ハ バイオテクノロジー 高機能材料プロセス特論 焼結固体反応論 セラミック科学 バイオプロセス工学.

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

高村 ゆかり 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 寺島 紘士 笹川平和財団 海洋政策研究所長 西本 健太郎 東北大学大学院法学研究科 准教授 三浦 大介 神奈川大学 法学部長.