長野工業高等専門学校紀要第32号(1998) 7
TRIP型複合組織鋼板の深絞り性に及ぼす温間加工の影響
‑第2報:スウィフトカップ試験‑
長坂明彦 和田一秀
Effects of Warm Forming on Deep Drawability of a TRIP‑aided Dual‑phase Sheet Steel (2nd report, Swift cup test)
Akihiko NAGASAKA and Kazuhide WADA
Toimprovethedeepdrawingorahigh ‑strengthTRIp‑aideddual‑phaseq'DP)Sheetsteel,theerrectsorwarm ror‑ ngonthedeepdrawabilityinSwiftnat‑bottom cuptestwasinvestigatedabout0.19C‑1.54Si‑I.52M n (mass%)TDPsteel.Thesteelexhibitedalargerlimitingdrawingratio(LDR)than thoseortheconventional rerrite‑bainiteandferrite‑martensitedual‑phasesheetsteelswithoutretainedaustenite.TheLDRwasenhanced bywarmdrawingatabout150cc,atwhichthestrain‑inducedtransformationortheretainedausteniteparticlesis suppressedthemost.Thiswascausedbylargelocalneckingresistanceduetothetransformationhardeningand stressrelaxationresultingfromthestrain‑inducedtransformationatthecupwalljustabovetheradiusorthe
punch,asweltasalowerdrawingresistanceoftheshrinkingflange.
キーワー ド:深絞 り性,温間加工,残留オーステナイ ト,変態誘起塑性,ひずみ誘起変態
1.は じめに
近年,乗用車の車体軽量化と衝突安全性の向上を 目的に開発された高強度鋼板の中で,残留オーステ ナイ ト (γR)の変態誘起塑性(TRIP)1)を有効に利 用 したTRIP型複合組紙鋼2‑ll)(TDP鋼)は とくに優 れた張出し性2・8)と深絞̀り性6・7)を有する。γRは衝撃 特性10)および疲労強度11)も改善するので,現在,軽 量化の期待できるフロン トサイ ドメ ンバやサイ ドシ ルなどの衝撃吸収部品10)およびロアアームなどの足 回り部品への適用か積極的に行われているO‑体難
* 平成10年5月14El AsianConr.onlleatTreatmentof Materialsにて一部発表
本研究の一部は平成8年度 (財)谷川熟技術振興基金およ び平成9年度長野高専教育研究特別経費の助成を受けて行わ れた.
** 機械工学科 助教授
*** 技術室 第‑技術奴 技術専門職員 原稿受付 1998年10月30日
成形プ レス部材の深絞 り性のさらな る改善の ため, 限界絞 り比 (LDR)をよ り高 くする必要があ る。こ の方策 (高r値化,潤滑剤,成形法)の一つとして, 温問加工か考え られる。
ところで,γRのマルテンサイ ト変態 開始温度 ( MB点)は室温以下 にあ るので,ひずみ誘起変態 ( SIT)は室温以上の温間加工によって適度に抑制され る。このため,深絞 り性も伸び3‑5),張出し性8)およ び伸びフランジ性9)と同様に, 温間加工 によって改 善され ると予想 されるが,深絞 り性 について温間加 工の影響を系統的に調査 した研究は見当たらない。
そこで本研究 では,探絞 り成形の さらなる改善を 目的と して,深絞 り性に及ぼす温間加工の影響を実 験的に調査 した。そして,γRのひずみ誘起変態挙動 か ら温問加工 に よる深絞 り性の改善機構 を検討 し
た 。
2.実験方法
8 長坂明彦 ・和田‑罪 供試鋼には0.19C‑1.54Si‑1.52Mn‑0.039Al(mass%
)の冷延まま鋼板 (坂厚1.2m )を用いた。この鋼 板 に図1の2相域焼 なま し十オーステンパ処理を施 し,フェライ ト(aE)+ベイナイ ト(ab)十γRの 3相組紙とした。 2相域焼なまし温度には, γR体墳 率かほぼ最大 とな る温度 を採用 した4)。比較のた め,低Siか らなる0.14C‑0.21Si‑1.74Mn‑0.037Al(
mass%)冷延まま鋼板を用い,760℃で2相域焼なま し後油焼入れ, その後400℃×lhの焼戻 し処理 した αl十マル テ ンサイ ト(αm)複合組絞鋼 (MDP 鍋),および780℃で2相域焼なまし後400℃ ×loo°s のオーステ ンパ処理 したα「卜αb複合組紙鋼 (BDP 鍋)と した.以後, aEを母相,ab, γRおよびam を第2相と呼ぶことにする。
0.Q. A・C・
Time(S) A.C.
図1 熱処理 曲娩
引張試験には.圧延方向に平行に作製 したJIS13B 号引張試験片を用い,イ ンス トロン型試験機 により 行 った。試験片の加 熱 には,一対のプレー トヒー ターを用い,試験温度はT=20‑ 250℃の範囲,クロ スヘ ッ ド速度は1mm/minとした。
深絞 り性は限界絞 り比 (LDR)で評価 した.図2に スウィフ トカップ試験の実験装置を示す。スウィフ トカップ試験には.直径41‑48mmの円形 ブランク
試験片 (1mm間隔)を用い,万能塑性加工機 (イン ナ荷重784kN,アウタ荷重490kN)により行 った.
平頭ポンチ直径20.64mm,ダイス径24.40mmで,肩 半径はいずれも4mmの金型を用いて行 った.試験片 両面には乾燥潤滑剤 (日本工作油 (秩),G‑2576) を塗布 した.加工条件は しわ押え力10kN,成形温度 はT=20‑250℃の範囲,成形速度はY=200mm/mi n, 試験片の加熱は環状炉によって行 った.なお,ポン チ温度 は室温と したoLDRは絞 り抜ける最大 のブラ ンク径 (Do)とポンチ直径 (Dp)の比 (Do/Dp)と して求めた.
(Dp=20・64mm,Rp=4mm,Dda4・40mm,Rd=4mm) 図2 スウィフトカップ試験装置
γR体積率Uγo)はX線回折法によりMo‑Ka線 (5 ピーク法11))で定量 した。また, γR中の炭素濃度C γo(mass%)は,Cr‑Ka線の回折面(220)γか ら求めた 格子定数αγo (×1010m)を次式13)に代人 して計算
した。
aγo=3・5467+0・0467×Cγo (1)
ここで,格子定数に及ぼすSiとMnの影響は炭素濃度 に比べてかな り小さいこと14)か ら無視 した。
SEM観察およびビッカース硬さ測定 (荷重9.81N )は必要に応 じ行った.
3.実験結果
3・1 組織と引張特性
図3にTDP鋼の組織写真を示す。本TDP鋼ではαbと γRか らなる硬質第2相がαf粒界に沿って存在する。
このγR粒子は主にαb島と孤立または隣接 して存在 するoまた, γR初期体墳率′γOは113vo1%, γR中 の炭素濃度CγOは1130mass%, γRのMs点の計算値は
‑9.2℃である。
TRIP型複合組織鋼板の深絞 り性 に及ぼす温間加工の影響 表 1 供試鋼の室温での引張特 性
Steel YS TS UB TEI TSXTEI YR n r HVo r r70 CTo
ys:0.2% orrsetproorstressoryleldstress,TS:tensilestrength,UEL‥uniformelongadon,TEE:total̲91Tongation,TSX TEL:strengthーductilitybalance,m :yieldrabo(=YS/TS),a:workhardeningexponent(a=5115%),r:meanrvalue(
e=10%).HVo‥lnltlalVickershardness(load=9・81N),I:volumeFractionorsecondphase,′γollnitial volumerrac110n orretainedaustenite,Cγo・lnitialCarbonconcentrationinretainedaustenlte・
TFiI
・,・Il、.
㌔.
.py
ダ′J サ}・ヽl 日加 ′′
at i
些璽璽『l HEZLiil 即 TDP鋼の(a)SbMおよび(b)TEM写月
表 lに供試鋼の室温での引張特性を示す。TD欄 は 大きな全伸び (TEE)と高い ′l伯を有 す る机 r値は
他の複合組織鋼 と同様1,0以下 と低 い。
図4にTDP鋼の引張特性の変形温度依存性を示す。
変形温度 (T)が高 くなるにつれて全伸び (TEE)は 大き くな り,変形温 度か 150℃で約50%と最 大にな る。引張強 さ(TS)はこれ と逆の変形温度依存性を 示 し. この温度 範囲でほぼ最小 とな る。 この ような 引桝 仕の変形 温度依存性は安定なγRを含むTDP鋼 に軸fJの現象 で あ り,他の複 合組織 鋼に は現れ な い。l汀細は文献Jを参照されたいo
ooo純80。70。純湖棚弼‖H(f!(‑M)S14S^ 50叫3020(%)T3ト.E)⊃
l l l l l J
(a)
TS
̲O ‑0‑‑や Y‑S‑〇一‑‑O ‑̲̲二)
f I l l l l
(b) TEl O‑̲
′ ヽ
′ ヽ
恕 UEt
●一〇
I I l l l l
100 200 300 T(oC)
図4 TDP鋼の 引張特 性の試験温度依存性
1200 1000
tq
き空 言800
ヽ̲′
ら 600
・100
0.4
・=u3 0.2
0.1
l l l l l l l
義 dTdDS ooocD'P C Top(150○C)
a (.+
l l L
b f l L l
'p'/:芸pB'20○Cg' ,0
/
/
㌔△△ TD (150○C A△少\
0 0.1 0.2 0.3 0.4 e
図5 真応力および瞬間n値と真ひずみの関係
図5に引張試験における真応力 (q)および瞬間/I 倍 (n')と其 ひずみ (C)の関係を示す。こ こで瞬 間n値は,伸び0.83%毎の荷重を荷重 一伸び曲線か ら
10 長坂明彦 ・和田一秀 読み取 り求めた。図5(a)の塑性曲線か ら, TDP鋼は最
適試験温度 (150℃ )により,真ひずみか C=04程 度 まで と20℃のそれ よ り高いひずみ硬化 率を維持 し たoまた典型的なTRIP鋼のn+は,低ひず み域におい て低 く,高いひ ずみ にな るに したが い単調に増加す る傾向 を示す15)o Lか しこれに対 し,TDP鋼は低ひ ずみ域でn'が低 く高ひずみ域まで比較的高 く, 150
℃では20℃ よりさ らに高ひず み域まで増加 した。一 方,MDP鋼のn*は,低ひずみにおいて高 く,蛮形 に
ともない単調に減少 した 3‑2 温間深絞 り性
図6にス ウ ィフ トカ ップ試験 後の外 観を示 す。 20
℃ と150℃か ら,限界成形高 さに温間加 工の効果か 顕著に現れてい る。また,破断位置 は全てポ ンチ肩 部であった。
図7にスウィフ トカ ップ試験における(a)LDRおよび (b)最大絞 り荷重 (pmax)の成形温度依 存性を示す.
TDP鋼のLDRは成形温度 によってかな り影響され, た 150℃で最大 とな るか, BDP鋼およびMDP鋼には 顕著 な温度依存性 は現れな いQ また, TDP鋼のL,DR はた 150℃での温間深絞 りによって2.08か ら2.28に 上昇 したO‑方,pmaスは150℃で成形 したとき,最小 になることがわか る。
図8にス ウ ィフ トカ ップ試 験のポ ンチ荷重 ‑ス ト ロー ク曲線を示すo絞 り比DR=2.08にお いて.Top 鋼の最大絞 り荷重は, 150℃で20oCより10kN以上荷 重低下 するか, ポ ンチス トローク(♂)は変化 しな いOさらに150℃において.DR=2.28へ苗絞 り比にな ることによりポ ンチス トロークの放 犬侍か右 にシフ
トし,荷重を上昇 させ る。
図9に各鋼における引張強 さ (TS)とLDRの横,す なわち強度 ・深絞 り性 バ ラ ンス (TSXLDR)を示 す0本TDP鋼は図9に示され るように,強度 ・延性バ
(a)
「IT
T=20℃
LDR=2・08(Do=43mm)
(b)
ランス (TSXTEL)と同様に極めて高 く(25GPa%以 上) (表1),優れた強度 ・深絞 りバ ランス (TSX LDR)を併せ持つ ことかわか る.
18 60 Z 莞tq 50
l= a. 40
30
I l t L I I
(a) TDP
l
̲
一 口 ‑ ‑ 一 一 二 ‑ ̲ 垂 )
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(b)lDR±2.
●一
08)T D
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)I (2.l18)l■● l
‑
BDPp ‑(1.',2i73'‑二 三 ‑(i..‑8,‑i‑2gOi'
0 100 200 300 T(oC)
図7 スウィフ トカップ試験における限界絞り比と 最大絞り荷重の成形温度依存性
7060 朗
叫30201 ( N 1 )d
lllll TDP(DR=2.08,2げC) Top(2.28,150℃)TDP(2.08.150○C)
,′,7、、、、、
Ⅶ 5 10 15 20 25 30
∂(皿皿)
図8 コニカルカップ試験の絞り荷重‑ス トローク曲放
(C)
T=150℃
LDR=2.28(Do=47mm)
図6 スウィフ トカップ試験後の外観
」璽璽璽蔓
lou T=150℃
(Do=48mm)
TRIP型複合組澱鋼板の深絞 り性 に及ぼす温間加工の影響 ll
4つ一086422211L
(tZ([C))tlUIXSト
20○C
T=150℃
TDP ゝⅡ)P BDP
図9 強度 ・深絞 り性バ ランス
3‑3 スウィフ トカップのひずみ分布とひずみ誘起変 態挙動
図10に各鋼で絞 り抜けたカ ップの(a)板厚ひずみ ( fl=1n((/lo))とビッカース硬 さ (HV)の分布 を示 す。図 *,横軸 の番号は,カップ断面の番号 に対応 する。これ らの図か ら以下のことかわか る。
(%)13> 叫3020100‑10‑20.3。祁350m25
lBDP ((a)T=20 ○ll.C \99T=画20○C2.03'.,i,,I,,‑Di i o8' L
0‑ 二ot二8 、 ㌦◆ヽ 、′J′;,I .̀℃
\O. TDP(LDR=2,28) 'A T=150○C
t ) I I I l
(b)‡2lPB;2C8) こ ゝのP(2.03) / Tコ20○C
̲蓋て9‑屯 T,P(2.08)
、' ′ T=20○C
̲ ./一一一一BDP(1.99) T=20.C
r l r l l l
1 3 5 7 9 11
No.
図10絞 り抜けたカ ップの 板厚ひずみ と ビッカース硬 さの分布
(1)TDP鋼では,一様 で大 きな板厚ひずみか生ず る。版厚ひずみ は150℃加工 では さらに大 きくな る。また.ポ ンチの肩半径上のか ソプ壁の硬 さの増 加か顕著に現れ る。
(2)温間成形はひずみ と硬 さを増加させる。とくに ポンチ肩部のカ ップ壁で増加す るo
図11にTDP鋼のポ ンチ肩部 (4番)縦断面のSEM写 真を示 す。温間加工の場合,塑性流れが より大きく 生 じているにもかかわ らず,母相 と第2相の界面でボ イ ド発生か観察されない。
︻
(a)TDPs【eel,T=20℃,LDR=2.08(Do=43mm) (b)TDPsteel,T=150oC,LDR=2.28(Do=47mm)
図11 TDP鋼のポンチ何部縦断面のSEM写真 図12に成形温度 (T)におけるγRのマルテンサイ ト 変態放Vam)の変化 を示すO γRのひずみ誘起変態 皿をポ ンチ底 部でX線測定 したところ,図12に示 さ れるようにfamは成形温度の上昇につれ減少 し, 150
Z L l l J I L
● 2.18
; 、q y .28
● 、\ 4 DR=2.08 、ヽ
2 0、‑i ‑‑〇一
l r l l l J
0 0 100 200 30 T(oC)
図12 成形温度 に及 ぼすTRのマルテ ンサイ ト変態量の変化
12 長坂明彦 ・和田一秀
℃で飽和する傾向にあ る。 150℃加工において変態 量が最も少な く,
γRの安定性 は20℃ に比較 して高い ことかわか る (単軸 引張 りと同 じ傾 向)。またDR=2.28におい て,初期γR休債率 (′γo)の半分か150℃でひずみ
誘起αm変態せず に残存 していることか注 目に値す る。
4.考察
一般に,LDRはフラ ンジ部の変形と関係す る最大 絞 り荷重Pznaxと肩半径部での破断力Pcr16)(=7TDptoq p)の大小関係によって決まる。それ らの比をとった 次式のalmax7)(相対 的荷重)に よって関係づ けられ る。
Lum弧=PmajL/Per (2)
ここで,Dpはポンチ直径 (20・64mm),toは初期板 厚を示す。また, Jpは次式17)により推定できる。
qp‑(2/J3‑)・(J3'(1+r)/2J7E )1・n・qu (3)
ここで,n.T, quはそれぞれ単軸引張 りでのn値,r 値,TSを用いたo
ブランク直径Do=41mmの場合の各鋼のPmax,Pc,お よびalmaxを表2に示すoTSは温間加工 により低下す るため, qpは低下するが,Pnaxの低下が相対的に大 きいのでLUmaxは最 も小 さい値を示す 。このような PmaxとPc,の関係は図 13のように模式化することかで
きる。すなわち本TDP鋼の温間加工において,γRの ひずみ誘起変態が適度に抑制される温度㌔ではTRIP
効果か支配的とな りPmaxを低下させる机 Pc,の低下 は小さ く,結果的に両者の差は大き くなる。 これが LDRの増加をもた らしたと考えることができる (破 断することなく絞 り抜けるための余裕が大きい)0 なお,本rDP鋼のLDR上昇 (すなわち0.2)は準安定 な γ鋼のLDR上昇 (0.9)18)に比べて相対的に小さ い。それはγRの初期体積率が約11yo1%と少ないた
めである。
一般 に,スウ ィフ トカ ップの深絞 りでの破断ある いは局部 くびれはポンチの肩部上部のカップ壁で生 じる (図6(C))ので,深絞 り性 の改善は この部分で の破断や局部 くびれを抑制することによって成 し遂 げ られ る。そのため,r値および〝値を高 くすること が重要となる。本TDP鋼ではr値か1.0以下であるにも かかわ らず優れた深絞 り性を有 した。
(a) pc.
‑ ー一 . ‑ ‑ ‑
‑, . A̲
■‑I‑■P m a x
l l ↑TRIP
Ms20 Ts Md T(oC)
図13 最大絞 り荷重 と破断力 および限界絞 り比の成形温度依存性
樋疲ら7)によれば,この優れた深絞 り性は主にボン
表2 ブランク直径Do⇒ 1mmの場合の各鋼のPnax,Pcrおよび仇 nax
Steel T(○C) Pmax(kN) Jp(MPa) Per(kN) (Jmax TDP 20 54 1α)2 78.7 0.686 TDP 150 41 896 69こ4 \ 0.591 MDP. 20 42 872 65.2 0.644
Pmax:maximumdrawlngload・qp:fracturestressinplanestrain・Pc,:Cridcalfractureload・ a)max:diznensionlessmaximllm drawingload.
(辛:TS=786MPa,n=0.21,7功 .94)
TRIP型複合組綴鋼板 の深絞 り性 に及 ぼす温間加工 の影響
チ肩部のαm変態硬化によって破断強度が増加すると 考え られているo彼 らは,縮みフラ ンジ部では,氏 縮の平均垂直応力がγRの変態の進行を妨 ぐ (変形応 力を低 く抑える)ため,絞 り荷重か低 く抑え られる
ことを考察 している。
本研究の20℃加工においても,絞 り後の硬さはポ ンチ肩半径上の カップ壁で大幅に増加することか示 された (図10(ち))。 したがって, γRのひずみ誘起 変態に よるマル テンサイ ト硬化と応力集中の緩和か ポンチ肩部を強化するとともに,ボイ ドの発生を抑 制 し (破断を防ぎ),LDRを大き くしていると考え るのか安当であ ろう。この他,TDP鋼では引張応力 か負荷されたとき,未変態のγRにより母相に高い圧 縮の長範囲内部応力か発生する4)。この内部応力も ポンチ肩部の局部 くびれを抑制すると考え られる。
つぎに温間加工の効果について考察する。図8にみ るように,本rDP鋼を150℃で深絞 りしたとき,最大 絞 り荷重pnaxは上昇 し,高ひずみ域まで高いn値を有 していることが示唆される (図5(b))。またγRの変 態は20℃より抑制されたれ 肩半径部の厚 さ方向の ひずみはct=‑0.33と真ひずみ Cと同程度 (図5(a)) に大きく,かつ硬化は より大きく生 じた (図10)。 さらに,SEM観察か らも20℃加工のときに比較 して 母相と第2相の界面でのボイ ド発生か困難となってい ることが観察された (図11)。これ らの結果は, γ RのTRIP効果 によりくびれの発生か抑制され 板厚 ひずみが大きくなるため, γRが安定であるにもかか わ らずαm硬化は20℃よ り大き くなった ことを示唆 している。すなわち,この肩半径部の変形能の増加 (くびれ発生の抑制,破断ひずみの増加)机 LDR を大きくしたと考えてよい。
さきの研究によれば,TDP鋼か単軸引張 り4)と等2 軸引張り8)の成形域で変形されるなら, γRは100‑
200℃の温度でひずみに対 して最も安定となる。同 様な傾向は本研究のスウィフ トカップ試験のポンチ 底でも認められた (図12)。 したがって,温間加工 は7・Rを安定させる(k借3)を低 くする)ことによ り.加工の後期 (塑性ひずみか大きくなったとき)
に効果的にひずみ誘起変態すると考えてよい。一 方,縮みフランジ部に対 しては.これは変形抵抗の
減少をもたらす。
5.結言
(1)本TDP鋼はMDP鋼,BDP鋼に比べ,20℃で優れ
13 た深絞 り性を有すが,約150℃での温間加工は深絞
り性を さらに高めた。
(2)温間加工により,絞 り抜けたカ ップの板厚ひず みはポ ンチ底で一様に薄 くなり,ポ ンチ肩部で最も 薄 くなる。またポンチ肩部での大きなひずみ誘起変 態強化によって特徴づけられた。
(3)優れた温間深絞 りは,結果的にひずみ誘起マル テンサイ トと局部 くびれ を抑制することによ り,ポ ンチ肩部で加工硬化 したγRのTRIP効果によって引 き起こされた。 また縮み フランジ部の変形抵抗の低 下も,深絞 り性を高めた一因である。
最後 に,本研究を御支援いただき ました (財)谷 川熟技術振興基金ならびに平成9年度長野高専教育研 究特別経費対 し,深 く感謝の意を表するとともに, 潤滑剤を提供頂いた 日本 工作油 (樵)お よび平成10 年度卒業研究生の奥原和幸氏 ・坂内畳氏 ・北保智彦 氏 ・丸山泰宏氏に併せてお礼いた します。
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