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川啄木全歌集総索引川啄木全歌集総索引川啄木全歌集総索引

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(1)

川啄木全歌集総索引

(2)
(3)

一『 握

砂﹄

(4)
(5)

2 1 3

る歌

とうかい  こ じま  いそ  しらすな

  な 海の小島の磯の白砂に

泣きぬれて

蟹とたはむる

こはず

あく  すな  しめ    ひと  わす

握の砂を示しし人を忘れず

      ひとり

大海にむかひて一人

ななやうか

な       いへ  い泣きなむとすと家を出でにき

4

6 5

7

   さ       い

く錆びしピストル出でぬ

なやま

山の

な  ゆび    ほ

指もて掘りてありしに

  よ    あらしきた   きつ

と夜さに嵐来りて築きたる

  すなやまこの砂山は

何の墓ぞも   はか

ま  すな  はらば

山の砂に腹這ひ

初恋の

    とほ        い     ひ

たみを遠くおもひ出つる日

なやま  すそ       りうぼく

あたり見まはし    み 山の裾によこたはる流木に

ものい物言ひてみる

(6)

6  8

9

10

11      すな

ちなき砂のかなしさよ

さらさらと

ぎ    ゆび      お

ば指のあひだより落つ

しつとりと

    す     すな  たまなみだを吸へる砂の玉

    おもなみだは重きものにしあるかな

      じ   ひやく

といふ字を百あまり

砂に書き   か

し      かへ  きた

ことをやめて帰り来れり 目さまして猶起き出でぬ児の癖は         なほお   い     こ   くせ

    くせ

なしき癖ぞ

  とが

1213

1415   くれ  つち  よだれ

と塊の土に誕し

な   はは  に がほ泣く母の肖顔つくりぬ

なしくもあるか

 かげ    しつ  われ

なき室に我あり

  はは

と母

         つゑ      い

なかより杖つきて出づ

     はは  せ お

負ひて

     かろ    な

あまり軽きに泣きて

さんぽ

あゆまず

うぜん  いへ  い

と家を出でては

うぜん  かへ   くせ

と帰りし癖よ

とも

らへど

(7)

1617

18

19      ちぢ  せき    たび  か

るさとの父の咳する度に斯く 咳の出つるや き  い

なし

  な     をとめ ら

泣くを少女等きかば

まいぬ

犬の

月に吠ゆるに似たりといふらむ き  ほ       に

く      むし

らむかすかに虫のなくごとき

   ばそこころ細さを

 ふ

日もおぼゆる

  くら

と暗き

あな  こころ す       おも

を吸はれゆくごとく思ひて

    ねむ

20

21

2223 こころよく

      し ごと

らく仕事あれ

   し と     し       おも

遂げて死なむと思ふ

  あ     でんしや  すみこみ合へる電車の隅に

ちぢこまる

       われゆふべゆふべの我のいとしさ

あさくさ   よ

草の夜のにぎはひに

まぎれ入り

   い   き       こころまぎれ出で来しさびしき心

あいけん  みみき愛犬の耳斬りてみぬ

あはれこれも

もの  う      こころ物に倦みたる心にかあらむ

(8)

8  24

25

26

27

とり

あた      かほ能ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ

   あ      とき

き飽きし時

なみだなみだ

 し ぎ

議なるかな

     あら   こころおど

をもて洗へば心戯けたくなれり

あき      はは  ことば

る母の言葉に

けば

  はし   

もて敲きてありき

くさ  ね草に臥て

おもふことなし

  ぬか  ふん   とり  そら  あそわが額に糞して鳥は空に遊べり 28293031   ひげわが髭のしたむ   くせ

向く癖がいきどほろし

    にく  をとこ にこのごろ憎き男に似たれば

もり  おく   じゆうせいきこ森の奥より銃声聞ゆ

あはれあはれ

自ら死ぬる音のよろしさ  し     おと

く  みき  みみ

木の幹に耳あて

こ はんにち

半日

シ こ    スまカま    カシ

き皮をばむしりてありき

     こと   し

さばかりの事に死ぬるや﹂

     こと  い

さばかりの事に生くるや﹂

よ   よ   もんだふ

問答

(9)

33

9『一握の砂』

まれにある

  たひら  

る心には

と けい  な      き時計の鳴るもおもしろく聴く

  ふか  おそ    おぼ

と深き怖れを覚え

ぢつとして

   しづ    ほそ

静かに麟をまさぐる

      のぼ

山のいただきに登り

      ばうしなにがなしに帽子をふりて

くだ   き

り来しかな

ど こ      たくさん  ひと

処やらに沢山の人があらそひて

くじひ闇引くごとし   ひ

も引きたし 39 38 36

  とき

る時

       はち  わ

ならずひとつ鉢を割り

くひやくく じふく わ     し

りて死なまし

   あ   でんしや  なか  こをとこ

も逢ふ電車の中の小男の

ど    まなこ

稜ある眼

    きこのごろ気になる

  まへ  き

前に来て

  おどろ

と驚きぬ

      あゆ

すぼらしげに歩むものかも

何となく汽車に乗りたく思ひしのみ   き しや  の       おも

き しや  お

を下りしに

ゅくところなし

(10)

−0 40

きや   い

家に入り

草のみたることありき

     ひとり ゐあはれただ一人居たきばかりに

なしに

       で         をとこさびしくなれば出てあるく男となりて

 つき

月にもなれり 45

   あし

も足も

      な   だ

投げ出して

   しづ    お

静かに起きかへるかな

ももとせ  なが  ねむ    さ

き眠りの覚めしごと

あくび怯陣してまし

ことなしに

     つも    ゆき

らかに積れる雪に

     ほ   うつ

る頬を埋むるごとき

恋してみたし

46 うでく

    おもこのごろ思ふ

大いなる敵目の前に躍り出でよと   てきめ   まへ  をど  い

43

なしきは

あ      り こ   いちねん

飽くなき利己の一念を

も       をとこ

あましたる男にありけり 47

    しろ

白く

   だい

大なりき

 ぼん   ひと         をとこ あ

凡なる人といはるる男に会ひしに

(11)

4849

11 『一握の砂』

  51

ころよく

と  ほ

讃めてみたくなりにけり

り こ   こころ う

倦めるさびしさ

あめふ雨降れば

  いへ  ひとたれ  たれ  しつ    かほ

家の人誰も誰も沈める顔す

あめは雨霧れよかし

と  こころ

きより飛びおりるごとき心もて

  いつしやうこの一生を

をはるすべなきか

  ひ ごろこの日頃

    むね      くい

どりたる悔あり

   わら

を笑はしめざり 55 54 53      き

らひを聞けば

らだ

わがこころ

    われ  しあまりに我を知るがかなしき

知らぬ家たたき起して      いへ      おニ    く

遁げ来るがおもしろかりし

むかし こひ

恋しさ

 ぼん    ひと

凡なる人のごとくにふるまへる

後のさびしさは

なに

ぐへむ

      かれ  からだ

なる彼の身体が 憎かりき

  まへ        もの  い   とき

前にゆきて物を言ふ時

(12)

12 56

57

5859 じつむ     やく  た      びと実務には役に立たざるうた人と

  み   ひと

見る人に

りにけり

とほ      ふえ  ね

遠くより笛の音きこゆ

       ウゑうなだれてある故やらむ

   ながなみだ流るる

      ひと

もよしこれもよしとてある人の

  き

気がるさを

欲しくなりたり

死ぬことを

ぢ やく      われ

ごとくにも我はおもへり

こころ

60

61

6263

  いぬ       あくび

傍に犬ながながと怯坤しぬ

   き ねわれも真似しぬ

うらやましさに

しんけん       たけ   

ぬ  う

りて竹もて犬を撃つ

うに   かほ

小児の顔を

   おもよしと思へり

イナモの

も  うな

き稔りのここちよさよ

        もの  いあはれこのごとく物を言はまし

うきん  さが     とも  しにがほ

軽の性なりし友の死顔の

あを  つか

青き疲れが

   め

まも目にあり

(13)

6566

13 『一握の砂』

  67

き   かは  ひと  つか気の変る人に仕へて

くづくと

  よ

りにけるかな

りょう      そら  をど  い

ごとくむなしき空に躍り出でて

き       けむり消えゆく煙

      あ

ば飽かなく

     つかこころよき疲れなるかな

もつかず

し ごと       のち     つか

したる後のこの疲れ

そらね いりなまあくび

寝入生怯坤など

なぜするや

も       ひと

こと人にさとらせぬため 71 70 69 68

箸止めてふつと思ひぬ しと      おも

うやくに

よ       な世のならはしに慣れにけるかな

あさ

やく

き   す     いもうと

期を過ぎし妹の

こひぶみ     ふみ  よ

文あける文を読めりけり

しつとりと

  す       かいめん

る海綿の

も    に    ここち

さに似たる心地おぼゆる

し   し     おのれ いか

と己を怒り

もだしたる

こころ そこ  くら

きむなしさ

(14)

24 72

73

7475      かほ    くちけものめく顔あり口をあけたてす   みとのみ見てゐぬ

と  かた

るを

  こ

と子と

       こころ  しつ   むかはなればなれの心もて静かに対ふ

き      な

まづきや何ぞ

  ふね

船の

  かうかい  せんかく  ひとり

航海の船客の一人にてありき

るは

     か 目の前の菓子皿などを   まへ  くわし ざら

りかりと噛みてみたくなりぬ

もどかしきかな 76777879   わら  わか  をとこよく笑ふ若き男の・死にたらば      よすこしはこの世のさびしくもなれ

なしに

き      か   だ

きれるまで駆け出してみたくなりたり

くさはら などを

     せ びろ    きあたらしき背広など着て

   こ とし  おも  すしかく今年も思ひ過ぎたる

     ともしび  けことさらに燈火を消して     おもまちまちと思ひてゐしは

けもなきこと

(15)

80

さくさ  りよううんかく

草の凌雲閣のいただきに

うでく     ひ

し日の

  に き

き日記かな 84とかくして家を出つれば      いへ  い

日光のあたたかさあり くわう

き      す

かく吸ふ

81 じんじやう

尋常のおどけならむや

   も    しナイフ持ち死ぬまねをする

  かほ    かほ

顔その顔 85      ジつし

る牛のよだれは

らたらと

まんねん  つ

年も尽きざるごとし

82

   83

     になし       たかこそこその話がやがて高くなり    な

トル鳴りて

じんせいをは

とき時ありて

こ ども供のやうにたはむれす

    ひと        わざ

ある人のなさぬ業かな 86

ちばた  きりいし  うへ

傍の切石の上に

うでく

ら  み あ     をとこ

上ぐる男ありたり

らむ

       め つき

ならぬ目付して

るはし  う   むれ  み

哨を打つ群を見てゐる

(16)

16 88

8990

91

ころ   け ふ   に   さ

より今日は逃げ去れり

まひ   けもの

ある獣のごとき

 へいに   さ

逃げ去れり

     こころきたおほどかの心来れり

あるくにも

腹に力のたまるがごとし ら  ちから

     な

とり泣かまほしさに

き   ね来て寝たる

どや   や ぐ

宿

具のこころよさかな

ともよさは

 じき  いや   いと

乞食の卑しさ厭ふなかれ

う      とき  われり しか

る時は我も爾りき 94 93 92 あたら

しきインクのにほひ

けば

う        まら   し

る腹に沁むがかなしも なしきは

きをこらへつつ

よ ざむ  や ぐ       とき夜寒の夜具にちぢこまる時

ど     われ  あたま さ

一度でも我に頭を下げさせし

と    し

りてしこと

 に   とも  ふたり

似し友の二人よ

とり   し

死に

とり   らう  い     いまや

出でて今病む

(17)

98

17 『一握の砂』

  99

     さい  いだあまりある才を抱きて

       とも 妻のため

もひわづらふ友をかなしむ

うちあ     かた

明けて語りて

 そん       おも

せしごとく思ひて

ともとわかれぬ

どんよりと

    そら  みくもれる空を見てゐしに

ひと   ころ

したくなりにけるかな

となみ  さい  す

才に過ぎざる

  ともわが友の

  ふ へい

き不平もあはれなるかな

100 102 101

103

  み      をとこき

もとりどころなき男来て

 ば     かへ

りて帰りぬ

しくもあるか

はたらけど

     なほ    くらし らく

らけど猶わが生活楽にならざり

   て    みちつと手を見る

  ゅくすゑ  こと

もかも行末の事みゆるごとき

このかなしみは

あへずも

   ひとある日に

さけ

くてならぬごとく

け ふ     せち  かね  ほ今日われ切に金を欲りせり

(18)

105

]07 106

水晶の玉をよろこびもてあそぶ う たま

    こころわがこの心

なに  こころ何の心そ

こともなく

       こ

       ものた こころよく肥えてゆく このごろの物足らぬかな

  すゐしやう たま

   ほ る水晶の玉を とつ欲し

       もの  おも

はむ

  ぼ     ともうぬ惚るる友に

あひつち

槌うちてゐぬ

こし      こころ

るごとき心に

109 108

111 ユ]0

  あさ      ゆめある朝のかなしき夢のさめぎはに

鼻に入り来し な  い   き

 そ   に   か

る香よ

     あきち   いし         おとこつこつと空地に石をきざむ音

      き

き来ぬ

  い

るまで

なに

しに

あたま       がけ

ありて

日毎に土のくつるるごとし  ごと  つち

う  でんわ   りん  な

方に電話の鈴の鳴るごとく

け ふ   みみな

    ひ 日も耳鳴る

なしき日かな

(19)

113 112

  115 114

あか     あはせ えり

垢じみし袷の襟よ しくも

     くるみ や

るさとの胡桃焼くるにほひす

し       とき死にたくてならぬ時あり

     ひとめ   さはばかりに人目を避けて

こは  かほ怖き顔する

 へい  み おく

隊の兵を見送りて

なしかり

何ぞ彼等のうれひ無げなる   かれら        な

くにびと  かほ        いや

顔たへがたく卑しげに 目にうつる日なり       ひ

家にこもらむ

116 117

118 119

  つぎ  やすみ   いちにちねこの次の休日に一日寝てみむと

ごしぬ 年このかた み とせ

あ   とき

る時のわれのこころを

焼きたての

麺額に似たりと思ひけるかな  ん   に       おも

らたらたんたらたらと

あまだれ

痛むあたまにひびくかなしさ

  ひある日のこと

  しやうじ

障子をはりかへぬ

  ひ      こころ

日はそれにて心なごみき

(20)

122 12|

123

     を         おも

うしては居られずと思ひ

立ちにしが

もて   うま  いなな

外に馬の噺きしまで

き        らうか   た気ぬけして廊下に立ちぬ

     ドア  おあららかに扉を推せしに

  あ

ぐ開きしかば

ちつとして

くろ    あか        す

黒はた赤のインク吸ひ

      かいめん  み

堅くかわける海綿を見る

  み

われをなつかしくなるごとき

  て がみ  か      ゆふべ

き手紙を書きたき夕

124 125

127 ]26

うすみどり

     からだ   みつ      す

ば身体が水のごと透きとほるてふ

くすり薬はなきか

   にら      あ

も睨むラムプに飽きて

 か

日ばかり

らふそく  ひ

燭の火にしたしめるかな

げん      ことば

間のつかはぬ言葉

よつとして

    し       おも  ひ

るごとく思ふ日

     こころあたらしき心もとめて

名も知らぬ    し

まち    け ふ       き街など今日もさまよひて来ぬ

(21)

128 129

130

21 『一握の砂』

   131

とも       み    ひ

なわれよりえらく見ゆる日よ

  か   き

買ひ来て

としたしむ

なに

 こ   われ

此処に我ありや

とき     うちおどろ   へや  なが時にかく打驚きて室を眺むる

と     でんしや  なか  つば  は

ありて電車の中に唾を吐く

こころ

まむとしき

よ あ      ば しよ  ほ夜明けまであそびてくらす場所が欲し

おもへば

   つめこころ冷たし

133 ]32 134

135

と      いへ  も

持つてふかなしみよ

  い

るごとく

    ねむ

りて眠る

なに       ふ し ぎ   しめ

とつ不思議を示し

どろくひまに

き       おも消えむと思ふ

と      ひと

といふ人のこころに

とり     しうじん

一人つつ囚人がゐて

うめくかなしさ

られて

   な   だ   こどもこころわつと泣き出す子供心

  こころ

もなりてみたきかな

(22)

2

137

139 138

       あ     おも

ことさへ悪しと思ひえぬ

ここる    が なし

くれ家もなし

放たれし女のごときかなしみを な      をんな

   をとこよわき男の

    ひ

る日なり

   と けい

と時計をなげうてる

昔のわれの怒りいとしも       いか

      いか

あくる日は    ひ あかめ怒りしことが

さほどにもなきをさびしがるかな

14] 140 143 ]42

     こころ なれ

らだてる心よ汝はかなしかり

ざいざ

   あくびすこし怯坤などせむ

女あり

       そむ    こころくだわがいひつけに背かじと心を砕く

ばかなしも

なき

  ひ   もと  をんなら

日の本の女等を

あきさめ  よ

夜にののしりしかな 男とうまれ男と交り とこ      をとこ まじ

けてをり

       あき  み   し

るがゆゑにや秋が身に沁む

(23)

145 ]44 146

23 『一握の砂』

  147

  いだ  し さうわが抱く思想はすべて

      いん

きに因するごとし

あき  かぜふ秋の風吹く

     せうせつ  かくだらない小説を書きてよろこべる

男憐れなり とこあは

初秋の風 あき  かぜ

あき  かぜ

け ふ       か       をとこ今日よりは彼のふやけたる男に

くち  き        おも

を利かじと思ふ

   みはても見えぬ

ま すぐ  まち真直の街をあゆむごとき

    け ふ   もこころを今日は持ちえたるかな

149 148 150

15]

なにごと  おも

事も思ふことなく

がしく

く      ひとひ   わす     おも

暮らせし一日を忘れじと思ふ

と  かねかね

も金金とわらひ

   へすこし経て

   には    ふ へい      くまたも俄かに不平つのり来

誰そ我に    われ

ピストルにても撃てよかし

 とう         し     み

藤のごとく死にて見せなむ とばかり

らしゆしやうて 

相に手とられし夢みて覚めぬ

あき  ょ   に じ秋の夜の二時

(24)

24

153 152 154

病のごと まひ

きやう       わ   ひ

郷のこころ湧く日なり 目にあをそらの煙かなしも        けむウ

己が名をほのかに呼びて   な       よ

なみだ涙せし

じふし   はる       すべ

春にかへる術なし

あをそら  き      けむり

消えゆく・煙

     き       けむりさびしくも消えゆく煙    に

し似るか

155 156

158 ]57

  たび  き しや  しやしやう

旅の汽車の車掌が

ゆくりなくも

   ちゆうがく とも

中学の友なりしかな

     ポンプ   みつほとばしる卿筒の水の

ここち

よさよ

    わか       みしばしは若きこころもて見る

し   とも  し     せ

も友も知らで責めにき

なぞ  に

似る

  がくげふ       もとわが学業のおこたりの因

うしつ  まど    に

より遁げて

  ひとり

だ一人

  しろあと  ね   ゆ

寝に行きしかな

(25)

160 ]59 161

25 『一握の砂』

  162

こ ず かた    しろ  くさ  ね

来方のお城の草に寝ころびて

そら  す

じふご   こころ十五の心

しみといはばいふべき

もの  あぢ物の味

  な       はや

嘗めしはあまりに早かり 晴れし空仰げばいつも      そらあふ

くちぶえ  ふ口笛を吹きたくなりて

きてあそびき

ょるね   くちぶえふ夜寝てもロ笛吹きぬ

くちぶえ

じふご  われ うた十五の我の歌にしありけり

164 〕63 165

166

  しか  しよく叱る師ありき

髭の似たるより山羊と名づけて げ  に         や ぎ   な

くちま ね

似もしき

   ともわれと共に

 とり  いし  な    あそ

鳥に石を投げて遊ぶ

こうび たいゐ   こ

備大尉の子もありしかな

しろあと

石に腰掛け し  こしか

きんせい  こ   み        あぢは

禁制の木の実をひとり味ひしこと

  のち  われ  す     とも

後に我を捨てし友も

  ころ        ふみよあの頃はともに書読み

   あそともに遊びき

(26)

168

169 170

学校の図書庫の裏の秋の草 くかう  さと しよぐら  うら  あき  くさ

ぎ     はなさ黄なる花咲きし

ま  な し

今も名知らず

なち

ま   ひと      しろ  ふくき   いへい先づ人さきに白の服着て家出つる

我にてありしか

今は亡き姉の恋人のおとうとと ま  な   あね  こひびと

くせしを

    おも

しと思ふ

  は

果ててそのまま

   こ

り来ぬ

えいご   けうし

若き英語の教師もありき

172 171 174 ]73

     おも   い

トライキ思ひ出でても

ま  は   わ   ち をど

らず

    さび

淋し

もりをか  ちゆうがくかう

岡の中学校の

台の

欄干に最一度我を俺らしめ り   も いちど われ  よ

神有りと言ひ張る友を あ     い   に   とも きふせし

  みちばたくりき もと

傍の栗の樹の下

西

うちまるおほぢ   さくら は内丸大路の桜の葉

    ち     ふ

さこそ散るを踏みてあそびき

(27)

176 175 177

27 『一握の砂』

  178

     あいどく  しよ

読の書よ

方は

ま  は や

行らずなりにけるかな

とつ

さか

くだるがごとくにも

     ひ   いた  つ

けふの日に到り着きたる

うれ     

うねん  め   うらや

ある少年の眼に羨みき

ご  とり   と

鳥の飛ぶを

うたふを

 わけ

ちもかなしかり

  かうてい  もくさく  もと

庭の木柵の下

179

]81 ]80 182

     ち しき  よく  も     め

ぎりなき知識の欲に燃ゆる眼を

あね  いた姉は傷みき

ひとこ

るかと

そ ほう  しよ  われ  すす    ともにや

峯の書を我に薦めし友早く

う  しりど

退きぬ

まつしさのため

     て

どけたる手つきをかしと

我のみはいつも笑ひき        わら

くがく  し

学の師を

し   さい  み      ひと自が才に身をあやまちし人のこと

りきかせし

もありしかな

参照

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