業績評価が内発的行動 に与える影響
山 本 清
1 .はじめに
日本的経営の特性 とされる終身雇用 と年功制による人事管理の見直 しを巡 る 議論が盛んである。マスコ ミを始め経済学者,特に新古典派の市場重視者は, 従来の制度の経済合理性が低成長 とキャッチア ップ完了 という 2 点か ら失われ たため,今後は労働力の流動化を進め能力主義 と成果志向の人事管理が必要 と す る。一方,労働経済学者の うちで も実態調査を重視す る小池 ( 1 9 93 )や高 梨 ( 1 9 9 4 ) らは, もともと日本的経営 は年功でな く厳 しい同期採用者 間の競 争原理に基づいてお り,長期雇用 システムを変える必要 はないとする
。長期雇 用を維持すべきとす る論理は,経営学者や社会学者,産業心理学者か らもなさ れてお り,彼 らは年俸制や業績給 ・能力給の適用に見 られる成果主義の人事管 理のマイナス面に注 目して,安易な実力主義管理に慎重である
。例えば,Baron ( 1 988 ) は,社会学の見地か ら多 くの経済モデルで前提 と されている労働者の 「 努力回避」について疑問を呈 している。彼は,米国での
「 雇用の質調査 」( QES) において 「 働 くことが収入を得 ることよりも重要で ある」及び 「 要求 され る水準を超えて多 くの特別の物理的または精神的努力を 仕事に傾注 した」 ことに同意 した割合が過半数を超えていることを挙げ,労働 を労働者か ら引 き出され る犠牲 とみ る見方 は短絡的 と指摘 している。 もっと
も,労働をどのようにみなすかは新 しい論議ではな く,Herz berg ( 1 966 ) は 仕事を動機づける要因 として内発的 ( i nt r i ns i c )要因 と外発的 ( ext r i ns i c )
〔 1 4 3 〕
1 4 4 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2号
要因の 2 つを挙げている。後者 は賃金水準,作業条件等で衛生要因 とも言われ るものであ り,前者は働 くことそれ自身か ら得 られる要因で仕事の達成感,充 実感及び承認等が代表である。 したが って,Baronの指摘 は外発的要因のみ を経済モデルが扱 っていることを指 していると考え られ るが,心理学者か らの 批判は,外発的要因のみを対象に している経済モデルの限界にとどま らない。
すなわち,Dec i ( 1 97 2,1 97 5 ) ,Dec iandRyan ( 1 98 5 ) ,St aw ( 1 977 ) ら は,室内実験を行 って外発的な宰相 侶ま内発的な動機付けを逆に低下 させ る場合 があるとす る。Deci によると,報酬 ( 特 に金銭的報酬)には労働者の能力を 示す シグナ リングとしての情報要素 と統制要素があり,前者は経済学で扱 う誘 因要素であって他の事情が同 じであれば Laz ear( 19 87 )が述べ るように覇紺"
が多い方を好む ことになる。 一方, 後者 は しば しば見落 とされ る要素であって, 報酬 によって人間が統制 されてお り働 く原因が外的であると認識 させ るもので ある。内発的要因は正にこの後者によりマイナスの影響を受けることになり, 外発的要因の強化 は同時に統制側面を通 じて内発的要因を低下 させ るとされ る
。類似の主張 として,Kohn ( 1 993 ) は,報酬 は懲罰 と同 じく一時的にある 規範を遵守 させる効果を もた らせ るだけであり,心理学の内発的動機付けをも た らす行動の根底 にある態度を変化させず,それゆえ価値または行動への継続 的なコ ミッ トメ ン トを創 出 しないとしている。0' De l l ( 1 987 ) も,実態調査 に基づ き小集団のグループ ・イ ンセ ンティブ制度を有 している組織では活動的 な労働者の関与がほとんど兄いだせなか ったと報告 している。また,多 くの研 究蓄積がなされている仕事の満足度の規定要因及び満足度 と業績 との関連性に 関す る実証研究の結果 は,内発的誘因 と業績 との弱い関係を支持 してお り1 ), 内発的要因を考慮 した業績管理 ・人事管理の重要性を裏付けている。
特 に現在我が国で課題 になっているホワイ トカラーの生産性向上を実力主義
1 )過去の多 くの実証研究をメタ分析 した Pe t t y, Mc ge eandCav e nde r( 1 9 8 4 ) は, 職務満足度 と業績の間には正の相関があ り, これを満足度 の構成要素別 にみると賃金 等の外発的誘因よ りも仕事の内容 にかか る内発的誘因の方がより高い関係 にあること
を示 している。
業績評価 が 内発 的行動 に与 え る影響 14 5 による評価 システムへの変更を通 じて行お うとす る試みは,ホワイ トカラーの 仕事 において 目標の明確化及 び成果の計量化が困難なため,プロセス ( 努力) か らアウ トプ ッ ト ( 結果)重視‑ とい う意気込みに対 して必ず しも充分な成功 を納めていないよ うである
2'。確かに Baronが指摘 しているように,仕事の 内容があいまいであるとかチームワークが重要である場合,あるいは信頼関係 が基本であ り,専門的規範 ・社会的規範が仕事を規律 している場合 ( パブ リッ
クセクターの非現業公務員 はこの典型である)等は労働者を外発的に動機づ け られているとみな して管理す ることが逆効果 となる可能性がある。経済学者の Fama ( 1 9 9 1 ) も,最適 な報酬契約 は仕事の種類 によ り異 な り,企画 ・管理 業務の場合には外発的な報酬を業績 に応 じて支給す ることは困難であると認め ている
。人事管理の実務 においては当然かか る単純な成果志向の幸細 目 制度の問 題点を踏 まえてお り,メ リッ ト給を導入 している米国連邦幹部職員の業績評価 及び英国の非現業国家公務員 に対す る標準的な業績評価 は,図 1 , 2 に示すよ
うにいずれ も狭義の業績である成果 ( アウ トプ ッ トまたはアウ トカム)だけで な く,態度 ・能力のよ うな努力 ・行動 に関す る評定項 目も含め られているので ある。 これを成果志 向の業績管理の不徹底 とみなす ことも可能か もしれない が,む しろ業績測定の困難性への経験的対処 と考え るべ きか もしれない。
したが って,我々の課題 は社会学及 び産業心理学か ら投げかけ られた外発的 報酬だけのモデル分析 に内発的要因を組み込んで組織業績に与える影響を総合 的に検討す ることといえる.筆者 ( 山本 ( 1 9 9 4a) ) は内発的要因の一つ とさ れる昇進要因を考慮 した経済分析を先 に行 っているが, ここでの焦点 は伝統的 な代理人理論 における報酬 は成果のみに規定 されるという枠組みを拡張 し,成 果 と努力 とい う2元的要素か らなる現実的な業績評価制度を前提 に した場合,
2 ) 日本企業 において年俸制や能力主義が導入 されている場合で も,スタ ッフ部門や研
究開発部門での 「 評価のモノサ シ」の開発 は何を成果 とみなすか,どのように して測
定す るか とい う問題 に直面 して客観的 とはいえない状況である。 この状況 につ いて
は,例えば 「 選別 され るサラ リーマ ン」『 週刊 ダイヤモ ン ド 』1 9 9 4 .3.5 号参照。ま
た,長銀総合研究所 の調査 ( 茅野 ( 1 9 9 4 ) 参照) によると年俸制導入後の課題 ・問
題点の トップは 「 評価が難 しい」であ り,実 に84 .6%を占めている。
146
図 1 米国連邦職員
商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号
図 2 英国国家公務員 ( 非現業管理職)
業績 ( per f ormanc e ) 仕事の質
仕事の量 仕事の迅速性 仕事の正確性 人格特性 ( t rai t )
協調性
コ ミュニケイシ ョン技術 勤勉性
積極性 態度 忠誠 心
原典 : Syl v i a ( 1 99 4 )p. 21 2 .
仕事の活動状況 ( wor kac t i v i t y) 仕事の質
仕事の量 計画性
管理 ( manageme nt ) スタ ッフの管理 資源 の有効利用 コ ミュニケイシ ョン
対人関係 ( wor ki ngr e l at i ons hi ps ) 知識 ・技能 ( knowl edge/ s ki l l s ) 原典 : NAO ( 1 9 91 ) ,p. 27 .
両者 に対す る相対的誘因の強度 により組織業績 と労働者 の努力水準 ( 内発的行 動を含む)が どのよ うに変化す るかを検討 し,最適報酬契約を導 出す ることに
ある。
そ こで,次節で は内発的行動を考慮 したプ リンシパル ・エイ ジェン トモデル を提示 し,報酎膨i 成果 と努力の双方 によ り規定 され る実態を踏 まえた分析 を行 う
。次 いで第 3 節では,成果 と努力に対す る報酬誘因の強度 により行動が どの よ うに変化す るのかを検討す る。そ して,成果志 向の業績管理方式っま り結果 重視の実力主義人事管理 を強めると外発的行動水準 は向上 す るものの内発的行 動 は反対 に低下す ることを理論的に示 し,産業心理学の実験的 ・経験的知覚 に 対す る説明理論を提示す る。最後 にモデル分析の限界 と今後の課題が述べ られ
る。
業績評価が内発 的行動 に与 え る影響 1 47
2. モ デ ル
組織の経済学 における従来のモデル化では,管理者であるプ リンシパルと労 働者であるエイジェン ト問の情報の非対称性を前提にするため,基本的枠組み としてプ リンシパルはエイジェン トの行動 ・努力水準を観察で きないとみな し ている。 しか しなが ら,大部屋主義の我が国企業では管理者 と労働者が同 じ職 場空間を共有 してお り,その ことが 情報共有化を もた らし野中 ( 1990) のい う 「暗黙知」効果を生む ことになっている。 したが って,我が国の組織 は官庁 を含めて管理者が部下の行動を常時モニタ リングし,監督 ・指導 というリーダ シップ行為を しているとみなすべ きであ り,エイジェンシー理論の基本モデル のように部下の行動を観察不可能 とみるのは職場環境を的確に反映 したものと はいえない。そ して, 前節で例示 したとお り欧米の組織( 少な くとも政府組織) において も,観察不可能 という前提は極端に状況を単純化 した ものといえ,個 室主義の職場環境で もミーティ ングとか定期報告等を通 じて業績だけでな く部 下の態度 ・能力を継続的に観察 しているとみなす ことが妥当と認め られ る3
) 。全 く観察不能であれば,管理者 は先のような態度 ・能力に対す る評価を行 うこ
とができないか らである
。む しろ我が国 と欧米の差異は行動 ・努力水準の観察 誤差 ・精度 に求め られるべ きであろう
。3)Kanemot oandMacl eod ( 1 9 92 )では,エイジェン トの努力水準を事前 に契約 可能な要素( 勤務時間等)と特別な努力要素( 品質の維持,生産プロセスの効率化等) に区分 して,いずれの要素 もプ リンシパルは観察可能であ るとみな している。しか し, 後者 はあいまいで測定が困難であって予め明確に文書化 した契約を締結す ることがで
きないとして,成果 ( アウ トプ ット)を事後的に観察す ることによって検証 し成果 に 応 じてボーナスを支給するモデルを設定 し,名声効果によりエイジェン トが特別の努 力水準を選択す る自己強制契約 ( 均衡解)が成立す ることを示 している 。Kanemo‑
t oandMac l e odのモデル とは,プ リンシパルがエイ ジェン トの努力水準を観察可
能なこと,報酬が業績評価に基づ き事後的に支払われること及びエイジェン トの努力
水準を測定可能性の程度 によ り 2 つに区分 していることの 3 点では共通 しているが,
本稿のモデルではエイジェン トの努力水準の うち内発的行動はプ リンシパルにとって
観察不能 とみな している点及び報酬 は業績 ( 成果)だけでな く外発的行動の程度 に
よって も規定 される点が異なる。
148 商 学 討 究 第 45 巻 第 2号
もちろん管理者 は誤差を前提 に して も部下の全ての行動要素をモニタ リング して評価で きるわけではない。Herz berg の 2 要因説 に準拠 して,動機付けを 内発的動機付けと外発的動機付けに区分 し, さらにかか る動機付けに基づ き行 動 は内発的行動 と外発的行動 に分類 され るとしよう
。すなわち,内発的行動 と は労働者が純粋 に自己実現の欲求達成等のためにす る行為 ・努力であ り,必ず しも報酬の対象になるわけではな く,典型的な例 としては自己資金で専門的知 識 を取得す るため夜間の大学院に通 うことが挙 げ られ る。 この タイプの行動 は,管理者側のモニタ リングの範囲外で 自発的になされ る場合が多いため管理 者が観察す ることは一般 に困難である
。自己の存在を主張す るため,資格手当 が支給 され る公的資格を取得 した り,長時間残業を通 じて間接的に管理者 に部 下の努力を認識 させ る( 観察可能な状態 にす る)の と性質が異なるものである。
一方,後者の外発的行動 は,管理者にとって可視的な ものであ り,主 として業 績評価 ・人事考課の直接的対象 になるものである。外発的誘因は賃金,雇用環 境及び職場の人間関係等 にかか るものであって,賃金,作業環境及び地位 ( 例 えば大 きな机,肘掛 け椅子等)は業績評価 ・人事考課を通 じて規定 され るか ら である。
したが って,内発的要因及 び外発的要因を考慮 した業績 ( 成果) と誘因,行 動 との関係 は図 3 のように考え ることがで きる
。図 3 概念 モデル
内発的行動 \ ゝ
5 i
外発的行動
業績評価が 内発的行動 に与え る影響 149 ここで,以下のモデル分析の単純化のため,外発的誘因は外発的行動にのみ 作用 し,同様 に内発的誘因は内発的行動のみに作用す ると仮定す ることにす る。理論的には,高い賃金 という外発的誘因によって 「 仕事が趣味」 という内 発的に動機づけ られる場合 もあり,反対 に,仕事の充実感,仕事のお もしろさ により業績評価の対象 にな ってい る業績向上 に結 びっ く活動 につなが る場合 ( 例えば研究者でテーマの設定等に関する自己裁量が高いとき) もあるが, こ こではかかるパスを考慮 しない。む しろ, この概念図で重要なことは,従来の 経済モデルで無視 されていた内発的誘因が内発的行動を通 じて業績に関連す る プロセスを勘案 していることである。実際の ところ, Kal l ebergandRev e
( 1 993 ) は, 日米両企業 において内発的誘因が忠誠心及 び愛着心、 と有意な関 係 にあることを実証 しており,内発的誘因が企業へのコミッ トメン ト ( 本稿で の内発的行動に関連す る)を増加 させ るとしている。また,我が国企業に対 し て も蟻生 ら ( 1 99 4)は賃金 ・給与等の外発的誘因だけでな く 「 仕事の内容」,
「 仕事を通 じた自己の進歩」等の内発的誘因が職務満足度を高め,最終的に業 績を向上 させる循環を実証分析 してお り,外発的誘因特に金銭的誘因のみを考 慮 した経済モデルは一面的 といえる。
以上の概念的検討を踏まえると, ここでのモデル化 には労働者の行動 ・努力 水準に対する管理者による観察可能性及び内発的行動の 2要素を従来のプ リン
シパル ・エイジェン トモデルの分析枠組みに加えることが必要になって くる
。そこで,次のような分析上の前提条件をお くことにす る。
[ 前提]
1 )エイジェン トである労働者の活動内容は,外発的動機付けか らくる外発的 行動 と内発的動機付けか らくる内発的行動か らなる
。2 )プ リンシパルである管理者 は労働者の成果だけでな く活動内容について も ある程度観察可能である。すなわち,内発的行動 については観察不能であ
るが外発的行動については観察可能である。
3 )管理者が労働者に支給する報酬 ( 金銭的報酬に限定 されない)は成果 ( ア
150 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2 号
ウ トプッ ト)の他,活動内容 ( 努力水準)を評価基準 として決定 され る。
4) 管理者は リスク中立的,労働者は リスク回避的であり,その効用は指数関 数型 とす る。
5 )内発的誘因の うち昇進要因は除外する
。 4)6 )報酬 は期末に行われる業績評価に基づ き支払われ る。ただ し,事前に評価 項 目及び評価方式 ( 報酬係数)はエイジェン トとプ リンシパル間で合意が なされている。
これ らの条件は,外発的行動を e( ≧ 0) ,内発的行動を a( ≧ 0) とすると, 労働者の活動内容 (J)は
J‑ J(e,a)
管理者 によって観察される成果 (Ⅹ) は x ‑ f (e,a)+el
f:生産関数, E1 :成果の観察誤差 単純化のため生産関数が線形 とすると
x‑e+a+e1 報酬 (R) は
R‑α0+α1・Ⅹ+α2・e αi :報酬係数 (i‑0 ,1 ,2)
9‑ e+82
(1)
(2a)
(2b)
(3)
(4)
e : 管理者の認識す る労働者の外発的行動, e: 真の外発的行動水準 82 : 外発的行動の観察誤差
とそれぞれ記述できる。
4 )昇進要因 は Herz be rgの 2 要因説で も内発的要因の重要 な ものであるが,昇進誘 因をモデル化す るには トーナメ ン ト構造 を組み込む必要があ り,分析が煩雑 になるこ
とか ら除いてある。本稿の主眼は内発的要因のモデル化であるか ら昇進を除外 して も
本質的要素 は失われない。なお,昇進要因を考慮 したモデルは山本 ( 1 99 4 a) 参照。
業績評価が 内発 的行動 に与 え る影響 15 1 一方,労働者の費用関数 (C)を簡素化のため分離型 とす ると
C‑C(e,a)‑C1(e)+C2(a) (5)
ここで, C 1 ' > 0,C1 ' ' > 0,C 1 ' ‥> 0,C2 ' > 0,C2 "> 0,C2 ' ' ' > 0
とする。
また,労働者の リスク回避度を r > 0 ,成果及び外発的行動の観察誤差がそれ ぞれ平均 0 ,分散 c T12 , g22 の正規分布に従 うと仮定す る。
すると,プ リンシパルの効用 UP 及びエイジェン トの効用 UA は UP‑Ⅹ‑R
UA‑UA(R‑C)
したが って,プ リンシパル問題 は次のようになる。
maxCEP‑EUP s ubj ec tt o
e
∈argmaxCEA a
∈argmaxCEA CEA ≧0
ここで, CEP , CEA はそれぞれプ リンシパル及びエイジェン トの確実同値 である。 ところで,上記問題 は効用関数が t rans r e rabl e であるので, Hol m‑
s t r om andMi l grom ( 1 99 0 ) の定式化を準用す ると,以下のよ うに書 き直 す ことが可能である。
maxL‑CEP+CEA s ubj ec tt o
e
∈argmaxCEA a
∈ar gmaxCEA
( 1 2 )
前記定義及び仮定を用いて ( 1 2)‑ ( 14) を整理すると
maxL‑e+a‑C 1 (e)‑C2(a) ‑1 /2 ・r・a12 ・c T l2 ‑1 /2 ・r・ a22 ・022 ( 1 5 )
s ubj e c t t o
1 5 2 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号
∂CEA/ ∂e ‑0
∂CEA/ ∂a ‑0
したが って,
α2+α 1‑C 1' (e) ‑0
α1‑C2' (a) ‑0
1 ‑C1 ' (e) ‑r・ 01
2・ a l ・∂al /∂e‑r ・c T
22 ・a2 ・∂α2 /∂e‑0 1‑C2 ' (a) ‑r・ α 12 ・ α1 ・∂α1 /∂a‑r ・α
22 ・α2 ・∂α2 /∂a‑0 これを α 1 ,α2 について解 くと
a1‑〔 (q22 /01
2)† cl "( e ) /C2 " ( a )‑1 ) + † 1 / rc T 1
2C2 ' ' ( a ) ) 〕 /P α2‑ 1/ P
P‑1 +r 0 ‑
22 cl " ( e ) +c r
22 /0 ‑ 1
2t cl " ( e ) /C2 " ( a ) ‑1 J +1 /ro ・ 1
2C2 " ( a )
EiiiI Eiid F lu 2 3 4 2 2 2 ′し ( .(
3 .分析 と含意
前節の結果か ら,成果に対する報酬係数 と外発的行動 ・努力水準に対す る報 酬係数の相対的強度 (k) は
k‑al /a2‑02
2/01
2t cl ' ' ( e ) /C2 "( a ) ‑1 )+1 /r ・c r 1
2・ C2 ' ' ( a ) ( 25 ) となる
。したが って,上式か ら直ちに次の定理が導かれる
。定理 1
最適契約においては成果の努力に対する相対的な報酬イ ンセ ンティブは, ( 1 ) 成果の測定誤差が小 さいほど
( 2 ) 労働者が リスク回避的でな くなるほど
( 3) 労働者の内発的行動に対する統制可能性 C2 ' 'が小 さいほど
( 4) 労働者の外発的行動 と内発的行動 との相対的統制可能性 β ‑C1 ' ' /C2 "
が大 きいほど
高 くなる。
業績評価 が 内発 的行動 に与 え る影響 15 3 証明 k を 61
2,r,C‑ 2' ' , βについて偏微分 し,前記仮定を用いればよい。
定理 1か ら得 られ る含意を,エイ ジェン トのアウ トプ ッ トのみをプ リンシパ ルは観察可能であ り努力水準については観察不可能の伝統的な場合 と比較 して みよ う。す ると, ( 1 ) 及 び ( 2) の関係 は,成果 に対す る誘因強度を相対的な誘因強 度 に置 き直せば基本的には同 じであるが,パ ブ リックセクターにおいて給与格 差が民間部門よりなぜ小 さいかの一つの説明を与えて くれ る。すなわち,パ ブ
リックセクターの成果 は利潤のよ うな客観的な指標が存在 しないため,その測 定可能性 は大 きな制約を受 け成果の測定誤差は絶対的に大 きく,また,外発的 行動 に対す る相対的誤差 も大 きい。 このため, もし成果が測定不可能,つまり 測定誤差が無限大であるとす ると ,k は 0 とな り α1‑0 が成立 し,この場合, 成果 に応 じて支払われる宰相 桐まゼ ロとなる
。したが って,公務員 に代表 される パ ブ リックサー ビスにおいて成果によ らず,能力 とか態度で人事考課がなされ ていることは,あながち 「 非」合理的 とはいえないことがわかる
。もちろん, 成果の測定手法が開発 され人事管理 と業績管理が連動す ることが組織の トータ ル管理 として重要な ことであるが,その場合で も測定の相対誤差を勘案すべ き ことを無視 して成果のみによる報酬 システムの設計をす ることは不適切になる ことに留意すべ きである。また,パ ブ リックセクターの労働者 は民間部門より 一般 に リスク回避的 とみなされるか ら,成果報酬の比率を民間よ り低めること が望 ま しい ことになる
5)。一方 ,( 3) 及 び ( 4) は,伝統的モデルにはない含意である。 まず ,( 3) で示 された 内発的行動 の統制可能性が小 さいほど成果連動報酬割合を大 き くすべ きこと は,内発的行動の費用の 2階微分が小 さいほど外発的行動 に対す る成果の報酬 を増加 させ ることである。 したが って,内発的行動の限界費用の増分が小 さい ほど,つ ま り,内発 的行動の限界負担 の増加が小 さい者 ほどプ リンシパルに
5 )蟻生 ( 1 994 ) らの分析 によると,公務員 の属性 に近 い と推定 され る電気事業 ( 電
力会社) と一般企業の従業員の組織風土 に関す る意識を比較 して,実力主義 一年功重
視の軸で一般企業の方がより実力主義的 ( 反年功)であることを明 らかに している。
154 商
学討
究第 45 巻 第 2 号
よって観察される外発的行動連動報酬よりも成果連動報酬を鋭敏にした方がよ いことになる。また ,( 4) は,外発的行動 と内発的行動の費用関数の 2 階微分の 相対比率が高いほど成果連動を重視すべきことを示 している。内発的行動に対 する意識を一定 とすれば,人事考課の直接的な対象になる外発的行動の限界費 用の増加が大 きいタイプの者 ほど,換言すれば賃金を労働の対価 と考える者 ほ
ど成果報酬の割合を高めるべきことになる。
なお,以上の関係を具体的な数値事例で示 しためが下図である。 ここでは, C1 ( e)‑ e + e2 ,C2 ( a)‑ a + 1 /2 ・a2 ,成果の測定誤差の分散 α1 2 ‑ 2 と 仮定 した場合にリスク回避度 r と β により k がどのように変化するかが示され ており, r が大 きくなるほど,また, βが小 さくなるほど k が低下することが わかる
。図 4 成果報酬誘因の相対強度 ( k) と r ,βとの関係 (01
2‑2 の場合)
成 果 の 相 対 報 酬 係 数 k
6 5 4 3 2
0 1
0 . 1