未確定事項の事例研究
‑ 日本 の事例 を中心 に して‑
坂 柳 明
1. 日本 の未確 定事項 の事例 分析 の必要性
監査上の除外事項1)との対比で 「未確定事項」の特徴 を捉 え,未確定事項に 直面 した監査人の対応が理論的にどうなるのかを考 える際に,筆者は,未確定 事項 をタイプAとBの 2つに区別 した ([図 1] )。伝統的なタイプAの未確定 事項の他に,また,経営者の決定 した見積 もり数値に対 して,① :監査人が 「合 理的である」 と判断する場合 と,(参 : 「合理的ではない」 と判断する場合 (除 外事項 とする場合)以外に,新たにタイプBの未確定事項が成立することを主 張するために,筆者は,米国の監査報告書の事例 を用いてきた。
例えば, タイプBの未確定事項を示す事例 として,(1):坂柳 (2005a,178) では, PubcoCorporation1979年監査報告書,(2):坂柳 (2005b,247)では, DiversifiedMortgagelnvestors,Inc.1979年監査報告書,(3):坂柳(2006b,144, 146)では, TheFranklinCorporation1987年監査報告書 とTheArundel Corporation1974年監査報告書,(4):坂柳 (2007,92‑93)では, Fair‑Tex Mills,Inc.の1982年監査報告書 を取 り上げた。そ して,(5):坂柳(2008,131‑134) では, FlaggIndustries,Inc.1978年監査報告書, BerkeyPhoto,Inc.1977年 監査報告書, AmericanEnergyProductionJnc.2004年監査報告書, The SherwoodGroup,Inc.1988年監査報告書 を分析 ・紹介 して きた。
1) 「除外事項」については,坂柳 (2005a,164)の脚注4を参照。本稿でも,その ように捉える。
〔115〕
116 商 学 討 究 第59巻 第1号 [図1]‑ 2つの未確定事項
未確定事項(※) タイプA 将来に発生する事象の結果が経営者に見積 もれず, 監査人 も経営者のその判断に同意 している場合のそ の項 目
タイプB は見積 もっているが,その見積 もり額が正 しいか ど将来に発生する事象の結果を財務諸表上で経営者
※ :もちろん,将来に発生する事象の結果が将来 (の財務諸表)に金額的に重要な 影響 を与えるものを前提 にしてお り,当期の財務諸表についての監査人の対応 を決定する上でも,その金額的重要性ゆえに問題になるものを前提にしている。
また,「項 目」 という用語で,(1):経営者及び監査人が実際に直面する様々な状 況その ものを指す場合 と,(2):そうした状況下で,財務諸表監査上問題になる 特定の項 目を指す場合がある。
こう した筆者の一連の未確定事項 プロジェク トに対 して, 「タイプBの未確 定事項があるに して も,それは米国に固有の現象 (状況)であ り, 日本 にタイ プBの未確定事項 は存在 しない。だか ら, 日本 において タイプBの未確定事項 を主張す る意味 はない。」旨の批判が なされるか もしれない。そ こで本稿 では, 米国の事例 ではな く, 日本 において タイプBの未確定事項 を示す事例があるか どうか を確 かめ る。 この研究 は, これ までの未確定事項 プロジェク トの中で筆 者が取 り上 げた先行研 究では行 われていない。 もし, 日本 で もタイプBの未確 定事項 を示す事例が見つかれば,その事例 は, これ まで筆者が形成 して きた タ イプBの未確定事項の理論 フ レームワークを支持す る証拠 になる。 また,そ う した事例 は,今後, 日本の監査人が タイプBの未確定事項 に直面 した場合 の監 査報告書の記載表現例 を提供す ることになるので,本稿 の意義 は大 きい。
以上の点 を踏 まえて, 日本 にタイプBの未確定事項 を示す事例があるか どう か を確 かめ るにあたって,筆者 は,小樽商科大学附属 図書館所蔵の 『有価証券 報告書総覧』 に所収 されている監査報告書 を, 1社 ずつ調査 した。本稿 では, 調査 した 『有価証券報告書総覧』 の うち,整理が終 わった1963年か ら1969年の 間に決算 日を迎 える会社 の監査報告書 を分析対象 にす る。
予め本稿 の結論 を示す と,調査 の結果, 日本 において もタイプBの未確定事
未確定事項の事例研究 117 項 と解釈で きる事例が発見 された。その事例 については, 2節 と4‑ 6節で紹 介 ・分析す る。 3節では,特 に 2節で検討す る森永製菓株式会社の事例 との対 比で,除外事項に言及 した国際電気株式会社 の事例 を示す。 7節では,本稿が 学界 ・実務界に与 える貢献 を4点述べ る。 8節では,本稿の まとめを行い,残 された課題 を示す。
2.
森永製菓 の事例まず,森永製菓株式会社 (以下,「森永製菓」 とす る)の1966年 3月期の監 査報告書 (必要 な部分のみ示す。本稿 の以下の事例 について も,同様である。) を見てみ よう。
この森永製菓の監査報告書では,遊休 固定資産の処分が問題 になってお り,
「将来発生 しうる処分損失 に備 える」 ために,125,000千円が特別償却引当金 として計上 されていることがわかる。ある事例が タイプBの未確定事項 に言及 した ものであるための条件 として,坂柳 (2008,131)は,[図3]の①〜④ を 導入 したが,[図2]によると,(1):監査対象 として引当金が問題 になってお り, (2):この森永製菓の監査人 : 「公認会計士 西方康一事務所」 は,無限定適正 意見 を表明 していない。つ ま り, [図3]の① と③ の要件 は満たされている。
他方,この森永製菓の事例では,監査範囲の制限に言及 した箇所 はな く,「そ の計上額の当否 を判定するに足 る充分な根拠 を見出 しえない」との記逮 ([1]) が見 られる。監査報告書 には,「上記金額 を直ちに正当な引当金 としては認め 難 く」 との記述 ([2])も見 られるが,他方で,「私 はかかる引当金の設定 に 対 しては,必ず しも反対す るものではない」 との記述 ([3]) も見 られる。 こ の [2] と [3]の どち らが正 しいのかを決める根拠が,監査報告書 には記 さ れてお らず, また,上記 [1]の記述 もあることか ら, ここでの森永製菓の監 査人は,特別償却引当金の合理性が確かめ られなかった と推察 され, [図3]
の② と(むの要件 も満たされていることがわかる。
118 商 学 討 究 第59巻 第1号 [図2]
「Ⅱ 監査の意見
監査の結果,財務諸表 において,貴社 の経営成績及 び財政状態 に影響 を与 える 主 なる事項 に関 し,貴社 が採用 している会計処理の原則及 び手続 は,王室(1),(2)
及 び(3)の事項 を除 き,一般 に公正妥 当 と認め られている企業会計の基準 に準拠 し, 且つ前事業年度 と同一の基準 に従 って適用 されていること, また財務諸表の記載 様式及 び記載事項 は法令の定める ところに準拠 していることを認めた。
(1)貴社 は,従来,翌期初 に支給す る走時賞与相 当額 を毎期の未払費用 に計上 す ることを原則 として来たが,当期 よ り従業員賞与の支給規定が改訂 され, 定時賞与の制度がな くなった ことと,法人税法の改正 によ り賞与引当金制度 が新設 された ことと相侯 って,税法の認める範囲額 を基準 として未払費用 に 計上す ることに変更 された。
私 は今後 同一方法の継続 的適用 を条件 として, この変更に同意 したのであ るが,当期 に未払費用 に計上 した金額 は,特 に超過計上 を必要 とす る事情が 存在 しない に も拘 らず税 法上 の範 囲額 を50,000千 円超 過す る もので あった。 したが って上記金額 は当期の費用 とは認み難 く,当期純利益 は,同 額 だけ過少 に計上 されることとなった。
(2)貴社が特定引当金 として計上 した価格変動準備金 は,租税特別措置法の規 定す る範 囲額 を約180,000千 円超過 しているため,妥 当な会計処理 と は認 め難 く, したが って,その設定額406,000千 円全額が,本来の性 格 たる利益剰余金 に属す る もの となった。
(3)貴社 は,遊休 固定資産 に関 し,将来発生 しうる処分損失 に備 える意図の も 主里 ,当期 にその簿価合計額約250,000千 円の二分 の一 に相 当す る1 25,000千 円 を特別償却引当金 として特 定引 当金 に計上 し,繰越利益剰 余金の減少高 として処理 した。私 はかかる引当金の設定 に対 しては,必ず し も反対す る ものではないが,その計上額の当否 を判定す るに足 る充分 な根拠 を見 出 しえない以上,上記金額 を直 ちに正 当 な引 当金 と しては認 め難 く, 従 って,当期未処分利益剰余金が,同額 だけ過少 に計上 される結果 となった
と言わ ざるを得 ない。
以上 によ り,土 塾 1),(2)及び(3)の事項 は存す るが,私 は,財務諸表は, これを 綜合 して貴社 の経営成績及 び財政状態 を概 ね適正 に表示 している もの と認めた。」
(傍線筆者)
未確定事項の事例研究 [図3]
119
① :経営者が財務諸表上で見積 もりを行っている,と解釈で きる記述があることo
② :その事例中の監査人が,問題になっている項 目を除外事項にしていないことo
③ :その事例中の監査人の対応が,無限定適正意見ではないことo
㊨ :その事例中に,経営者の見積 もり数値の合理性 を監査人が確かめ られなかつ
以上の分析 を踏 まえると,森永製菓の1966年3月期の監査報告書の(3)の遊休 固 定資産の処分 に関す る記述 は, タイプBの未確定事項 に言及 していると考 え られ る。 この森永製菓の事例 は, タイプBの未確定事項 に直面 した場合であって も, 監査報告書で 「〜 を除 き」 とい う表現 を監査人が使 う余地があることを示 した事 例 と捉 え られ るが,その点では, この事例 は,坂柳 (2008,133‑134)に示 した TheSherwoodGroup,Inc.1988年監査報告書の事例 と性 質が同 じである。
3.国 際 電 気 の 事例
そ れで は,次 の 国際電気株 式会社 (以下, 「国際電気」 とす る) の1965年3 月期 の監査報告書 は どうだろ うか。 [図4] を参照頂 きたい2)。
2)1964年9月期の国際電気の監査報告書にも,以下に示す ように,棚卸資産の評価 減に関 して,[図4]に見 られる記述 と同様の記述が見 られる。
「2 監査の意見
監査の結果,次の事項が判明 した。
(2)棚卸資産中に,評価減を必要 とするものが含 まれている。 これは,会社は 個別受注生産を行っているのであるが,受注を見越 して生産することや,又 試作研究的要素 を含めて生産することもあ り,これ らが長期滞留することを 主たる原因として生 じたものであると考えられる。
しか しなが ら,会社が個別受注生産を実施 しているため,評価基準 として 適当な時価 もな く,又会社は,外部の鑑定人あるいは,同業他社 に鑑定を依 頼することは性格上不可能であるとし,更に私 自身鑑定人ではないか ら,秤 価減を要する金額の算定ができない。
120 商 学 討 究 第59巻 第1号
この [図4] に見 られ る棚 卸 資 産 に関 して, 国際 電気 の1965年3月31日時 点 の貸 借 対 照 表 上 の棚 卸 資 産 項 目及 び金 額 は, 以 下 の 通 りで あ り ([図5]),流 動 資 産 の合 計 は4,393,213千 円 で , 資産 合 計 は5,563,106千 円で あ った3)。
「評 価 減 を要 す る金 額 の算 定 が で きない」 との記 述 を見 る と, 国際 電気 の監 査 人 : 「竹 崎 木村 公 認 会 計士 事 務 所 」 は, この棚 卸 資産 の 回収 可 能 額 が 測 定 で
[図4]
「2 監査の意見
監査 の結果,棚卸資産中には,評価減 を必要 とされる ものが含 まれていると認 め られる。 これは,会社 は個別受注生産 を実施 しているのであるが,受注 を見越 して生産す ることや, また試験研 究的要素 を含 めて生産す ることもあ り,主旦 与 が長期滞留す ることを主たる原因 として生 じた ものである と考 え られる。
しか しなが ら,会社が個別受注生産 を実施 しているため,評価基準 として適当 な時価 もな く, また会社 は外部の鑑定人あるいは同業他社 に鑑定 を依頼す ること は性格上不可能である とし,更 に私 自身鑑定人ではないか ら,評価減 を要す る金 額の算定がで きない。 このため私 は,棚卸資産,売上原価,その他 これ らが影響 す る事項 について意見の表明がで きない。
以上のほか,会社の採用す る会計処理の原則お よび手続 は一般 に公正妥当 と認 め られている企業会計の基準 に準拠 し,かつ前事業年度 と同一の基準 に従って継 続 して適用 されてお り, また財務諸表の表示方法 は法令の定める ところに準拠 し ている もの と認めるが, しか しなが ら,上記事項の財務諸表 に及 ぼす影響 の重要 性 に鑑み,上記の財務諸表が国際電気株式会社 の昭和40年3月31日現在の財務状 態お よび同 日を以って終了す る事業年度の経営成績 を適正 に表示 しているか否か についての意見の表明 を差 し控 える。」 (傍線筆者)
[図5](単位 :千円)
製 品 323,428 仕 掛 品 1,731,071
このため私 は,貸借対照表 における棚卸資産,及 びその他 これ らが影響す る事項 について意見 を表明す ることが出来 ない。」
3)以上 については,国際電気1965年3月期 『有価証券報告書総覧』12頁 を参照。
未確定事項の事例研究 121 きなかった と推察 されるが,この [図4]には注 目すべ き記述がある。それは,
「棚卸資産中には,評価減 を必要 とされるものが含 まれている」 との記述であ る。「評価減 を必要 とされる」理由については,[図 4]の 「これは,会社 は個 別受注生産 を実施 しているのであるが,‑」以下の記述で説明 されているが,「評 価減 を必要 とされる」 との記述がなされているのは,少な くとも 「棚卸資産の 簿価では回収で きない」 と監査人が判断 しているか らであろう。
もし,簿価で回収で きる可能性があるな ら,回収可能額の候補 として 「簿価」
も考 え られるため,「評価減 を要す るか どうかが監査 人に判明 しない」 ところ の棚卸資産は,その簿価が回収可能額 (見積 もり額) として合理的であるか ど うかが判断で きない タイプBの未確定事項 になる。 しか し, [図4]では,棚 卸資産の簿価 に関 して,一定の評価減が必要な状況が想定 されているため,回 収可能額の候補 として簿価 は考えられてお らず,評価損がい くらになるかが監 査人に 「算定がで きない」ので, この国際電気の事例 は,財務諸表に与 える金 額 的影響 が監査 人 に把握 で きない除外事 項 の事例 とい うこ とにな り,坂柳
(2005b,260)の [図8]のパ ター ンⅢに該当する。
また,監査人の対応 について言 うと, この国際電気の事例の監査人の対応 は
「意見差控」であるが,1956年12月に公表 された 「監査報告準則 三 財務諸 表に対する意見の表明」の (≡)及び (四) には,それぞれ次の ように記 され ていた ([図 6](1)〜(2))0 [図4] に見 られる国際電気 の監査人 は,評価減 は 必要であるが,「評価減 を要す る金額の算定がで きない」 ところの棚卸資産 を 除外事項 とした上で,「財務諸表 に対する意見が無意義 となる」と判断 して 「意 見差控」 を選択 したのではないか, と考 えられる。
しか し,監査範囲の制限がなければ,本来除外事項がある状況の監査人の対 応 は,意見差控 ではな く,除外事項の金額的影響 ‑ [図4]では,金額的影 響 を監査人が把握で きていないが ‑ が,他 の財務諸表項 目に連鎖的に及ぶ と い う意味の浸透性4)があ るか どうか ‑ [図4]では,監査人が除外事項 とし 4)このような意味の 「浸透性」については,坂柳 (2006b,157‑166)及びそこで
参照されている文献を参照頂きたい。
122 商 学 討 究 第59巻 第1号
た棚卸資産,及 びその虚偽表示の影響が現 れる 「売上原価,その他 これ らが影 響す る事項」 が財務諸表全体 に及 んでいるか どうか ‑ を考慮 した,不適正意 見か限定意見 になるはずである。
[BiI6]
(1):「監査人は,次に掲げる場合には,その旨及び理由並びに第二号‑の場合に はその財務諸表に及ぼす影響を記載 しなければならない。
1 財務諸表の重要な項 目について,正規の監査手続が実施可能にして合理的 であるにもかかわらず省略された場合
2 財務諸表の重要な項 目が 「企業会計原則」 に準拠せずに処理 された場合
‑」 ((≡)) (傍線筆者)
(2):「監査報告書に (≡)の各号に掲げる事項を記載することによって,墜整準 表に対する意見が無意義 となる場合には,監査人は,意見の表明を差 し控え, その旨及び理由を記載 しなければならない。」 ((四))(傍線筆者)
この ような, タイプBの未確定事項ではない除外事項 に言及 した国際電気 の 事例 を挙 げることによって,2節の [図2]の森永製菓 の事例 の特徴 的な表現 が見 えて くる。それは, 「当否 を判定す るに足 る充分 な根拠」が なか った とこ ろの 「その計上額」 とい う表現である。 2節 の森永製菓 の事例 では,当否 を監 査人が判断す る際 に問題 になった金額 に,「その計上額」,即 ち,実際 に森永製 菓 の経営者が計上 した125,000千 円の特別償却引当金の額が含 まれてお り,監 査人に よって合理性 が判断 される回収可能額 の候補 として,棚卸資産の簿価が 入 っていなかった国際電気 の事例 とは,性 質が異 なっていることが わかる。森 永製菓 の1966年3月期 監査報告書 の事例 は,坂柳 (2005b,260)の [図8]
のパ ター ンⅡに該 当す る。
また, [図4]の国際電気 の事例 自体 は,監査上 の除外事項があ ることを示 した ものであるが,もし,棚卸資産の回収可能額の候補 として簿価 が考 え られ,
「評価減 を要す るか どうかが監査人 にわか らない」状況であれば,そのケース は タイプBの未確定事項 になる。 この国際電気 の事例 は,その状況 を一部変 え
未確定事項の事例研究 123 る こ とに よって,読者 に タイプBの未確 定事 項 の存 在 を想起 させ る よ うな事例 で あ る こ とが わか る。
4.
東 京 急 行 電 鉄 の 事 例次 に,東 京 急 行 電 鉄株 式会社 (以下 , 「東 京急 行」 とす る) の1963年9月期 の監査 報告書 を見 てみ よ う ([図7])5)。
[図 7]
「2 監査の意見
監査の結果,東京急行電鉄株式会社の採用する会計処理の原則及び手続は,王 記 を除 き一般 に公正妥当 と認め られる企業会計の基準 に準拠 し,且つ前事業年度 と同一の基準 に従って適用 されてお り, また財務諸表の記載様式及び記載事項は 法令の定めるところに従っているもの と認めた。
(1)当期末において過年度に設定 した債権償却引当金637,691千 円を有するが, この うち会社更生法による更生手続の開始が決定 した関係会社長期貸付金等 に係 る ものは507,000千 円である。 当該会社 に対す る長期貸付金 は当期末 に 8,263,873千円あ り, この うち一部は工場財 団等の担保 もあるが,当該会社 の更生計画認可の決定 によって明 らかになる償却 を要する債権額は,現在予 測がで きない。従ってこの債権償却引当金の金額の妥当性 についての意見 を 表明す ることはで きない。
(2)会社 は業績 に季節的変動があるので,固定資産税及び都市計画税 は賦課の 日の属する事業年度 (上期) に賦課金額 を計上することを継続 して実施 して いる。 このため当期の負担 となるべ き固定資産税及び都市計画税64,755千 円 は当期 に計上 してお り,従って当期の純利益 は同額だけ少な く計上 される結 果 となっている。 この処理は正当な理由に基 く変更 と認め られ妥当なもの と 考 える。
以上 を綜合 して,同会社の財務諸表については,上記(1)が今後の予測にかかる ため,昭和38年9月30日現在の財政状態及び同 日をもって終了する事業年度の経 営成績 に関 しての全体 としての意見 を表明することはで きない。」 (傍線筆者)
5)東京急行の1963年3月期 と1964年3月期の監査報告書 に も, [図7]の 「(1)当 期末において‑」か ら始 まる段落の記述 と同様の記述が見 られる。
124 商 学 討 究 第59巻 第1号
この東京急行の意見差控の事例では,関係会社 についての 「更生計画認可の 決定によって明 らかになる償却 を要する債権額」が 「現在予測がで きない」 こ とによって,監査人: 「公認会計士小沢弘事務所」が,「債権償却引当金の金 額の妥当性」 についての意見表明がで きなかった状況が問題 になっている。あ る事例 によって示 される状況が, タイプBの未確定事項であるためには,経営 者の見積 もり数値が合理的であるか どうかを監査人が確かめ られなかったこと が,監査報告書か ら推察 されなければならないが ([図3]の④ を参照),[図 7]
で問題 になっているのは,経営者の計上 した債権償却引当金の 「安当性」 とい う概念である。 ここでの 「妥当性」が,経営者の見積 もり数値がその状況に適 合 しているか どうか とい う意味の 「合理性」のことを指 しているのであれば, この東京急行の事例 は, タイプBの未確定事項 に言及 していることになるが, それでは,次の主張 ([図8]) は成立す るだろうか。
[図8]
「[図7]の(1)の段落を見ると,監査人は債権償却引当金を除外事項にしてい ない (※ 1) し,監査人が債権償却引当金の金額を合理的なものと判断している なら,[図7]の(1)の段落の記述も必要ないはずである。しかし実際には,[図 7]
の(1)の段落の記述がなされているので,監査人はこの見積 もり数値を合理的であ るとは判断していない (※2)。よって,以上※1,※2より,[図7]の事例中 の監査人は,債権償却引当金の合理性が判断できていないことになるので,墜査 人が行う見積 もりの 「妥当性」の判断と 「合理性」の判断の関係を議論すること なく,上記のような監査報告書の記述の分析のみによって,この東京急行の事例 は,タイプBの未確定事項に言及 していることが確かめられる。」 (傍線筆者)
この [図8]の主張 には, 2つの記述 に誤 りがある。 1つは,(彰: 「債権償 却引当金 を除外事項 に していない」 との記述であ り,② :もう1つ は,「監査 人はこの見積 もり数値 を合理的であるとは判断 していない」 との記述である。
とい うのは,監査人が行 う見積 もりの 「合理性」の判断 と 「妥当性」の判断 は 「異 なる」 と考 えると,上記① については,債権償却引当金が合理的な見積
未確定事項の事例研究 125 もりではないことを監査人が確かめていた として も,監査人の行動上,何かの 理由でその ことを監査報告書上指摘 した くないために,見積 もりの合理性の判 断については監査報告書で触れずに,代 わ りに [図 7]の(1)の段落にあるよう な,引当金額の妥当性 についての意見表明がで きない旨の記述 を監査人が行 っ ている可能性があるか らである。 また,上記(参については,仮 に [図 7]の監 査人が,当期末の債権償却引当金の金額が合理的なもの と判断 していた として ち,財務諸表利用者 に監査報告書上何 かの情報 ‑ [図 7]の場合 は,償却 を 要す る債権額が予測で きないので,引当金額の安当性 についての意見表明がで きない旨の記述 ‑ を残 してお きたい と監査人が判断 した ら,見積 も りの合理 性の判断が監査報告書で触れ られないまま,代 わ りに [図 7]の(1)の段落の よ
うな記述が出て きて しまう可能性があるか らである。
つ ま り,監査人の行 う見積 もりの 「合理性」の判断 と 「妥当性」の判断が異 なると考 える場合 には,監査報告書の記述上,「妥当性」 とい う表現が明示的 に使 われることによって,債権償却引当金の金額が 「合理的である」あるいは
「合理的ではない」 との監査人の判断が仮 になされていた として も,その判断 が監査報告書上見 えないまま,「妥当性」 についての意見 を監査人が表明で き ない状況のみが監査報告書 に現 れている, との解釈が, [図7]の事例 につい ては可能になって しまうのである。以上 を踏 まえると, [図8]の結論,即 ち,
「上記の ような監査報告書の記述の分析 のみによって, この東京急行の事例 は タイプBの未確定事項 に言及 していることが確かめ られる」 との結論は,成立 していないことがわかる6)0
6)本文では,監査人の判断する 「妥当性」と 「合理性」が異なると考える場合に, 監査報告書上 「妥当性」という表現が使われることによって,監査人による経営 者の見積 もりが 「合理的である」あるいは 「合理的ではない」 との判断が,監査 報告書上見えなくなる旨を指摘 したが,この2つの場合に加えて,見積 もりの合 理性が監査人に確かめられない場合,つまり,タイプBの未確定事項に監査人が 直面 している場合であっても,「妥当性」 という表現が監査報告書で使われるこ とによって,やはり監査人がタイプBの未確定事項に直面 している状況が監査報 告書上見えなくなる。
126 商 学 討 究 第59巻 第1号
それでは,東京急行の事例が タイプBの未確定事項 に言及 していることを論 証す るにはどうすればよいかであるが,そのためには,監査人が判断するとこ ろの引当金の 「合理性」 と 「妥当性」の関係 を議論すればよい。実際,先述の 通 り,監査人が判断す るところの見積 もりの 「妥当性」が,見積 もりの 「合理 性」 を指 しているのであれば, 2節 に示 した [図 3]の④ の要件が満たされて いるので,東京急行の事例 は, タイプBの未確定事項 に言及 していることにな る。その場合,[図7]に見 られる監査人の対応が 「意見差控」であることは, 理論的に見て正 しいことになる7)0
もっとも,監査人が判断す るところの 「合理性」と 「妥当性」の関係 は,[図 7]の事例で も示 されていない し,一般的な議論の レベルでは, どのようにで も整理で きる。「妥 当性」 は,必ず しも 「合理性」 を指 しているわけではない と捉 えれば, この東京急行の事例 は,「財務諸表の適正性 についての意見表明 が行 えるか どうか を決定す る際に,監査人が経営者の見積 もりの合理性 につい ての判断を監査報告書上で示 さずに,見積 もりの妥当性 についての判断を行い, その妥当性 についての意見 を表明することがで きなかった」事例 とい うことに な り,財務諸表利用者のためには,「監査人による見積 もりの合理性の判断 を 記載すべ きであった」 と評価 される事例 とい うことになる。
理論的には,経営者の見積 もりの合理性 を確かめた結果の対応 (例 えば,無 限定適正意見),あるいは見積 もりの合理性が確 かめ られなかった結果の対応 (タイプBの未確定事項 に直面 した場合の対応。例 えば,意見差控 (意見不表 明)。)を,監査人は決定すればよい。監査人が判断するところの 「合理性」 と
「妥当性」 は異 なる と考 えて, [図7]の東京急行 の事例が タイプBの未確定 事項に言及 しているとは言い切 れない,つ ま り,見積 もりの合理性 を監査人が 確かめ られていた可能性がある,と結論づけた として も,その場合は,[図 7]
に見 られる監査人の対応 (意見差控)が論理的に導けるものではな くなるので,
7)タイプBの未確定事項に直面 した監査人の対応 として 「意見差控」が導かれるこ とについては,坂柳 (2006b,157‑164)を参照頂きたい。
未確定事項の事例研究 127 その ような事例 にあえて注 目す る意義 は乏 しいであろう。 [図7] に注 目す る 意味がある場合 として,そ こでの監査人が タイプBの未確定事項 に直面 してい ると解釈す る場合 を挙 げることがで きる8)。
他方,将来の監査制度設計 に当たって, タイプBの未確定事項 に直面 した監 査人が,監査報告書上 どの ような表現 を使 えばよいかが問題 になるが, この点 については, これまでの未確定事項 プロジェク トで筆者が示 して きた米国の事 例や, 2節の森永製菓の事例 に見 られる表現 (「〜 を除 き」 とい う表現) に加 えて, [図7]に見 られるような 「妥当性」 は,「合理性」のことを指す とい う 共有事項 を設けた上で, この東京急行の事例 (意見差控) に見 られる表現 も使 えることがわかる。
5.
日東金属鉱 山の事例次の 日東金属鉱 山株式会社 (以下,「日東金属」 とす る)の1966年3月期の 監査報告書 ([図9]) には,後述す るように,「将来の特定事象 の発生 を前提 に した (仮定 した)」記述が見 られる。
まず,[図 9]の 「蔵王鉱業所」についての 「若 し再開の見込がない とすれば,
‑「処分可能価額 まで評価減 を行 ない,‑全額償却 を行 なうべ きもの となる」の 記述 に関 して, 日東金属の1963年3月期か ら1965年9月期 までの監査報告書 に は,それぞれ以下の ように記 されている ([図10] (1)〜(6))0 [図10](1)〜(6)の うち,監査報告書の 「附記」の欄 に示 されている記述 は(1)〜(3)であ り,残 りの (4)〜(6)の記述 は,監査報告書では 「補足的説明事項」 として示 されている。
8) 7節で述べるように,この東京急行の事例と, 5節で検討する日東金属鉱山,そ して6節で検討する東亜石油の事例は, 2節の森永製菓の事例ほど明確にタイプ Bの未確定事項を示 しているとは言えないものの,当時の未確定事項に関する監 査制度に不備があったことに起因して出された可能性がある監査報告書の事例と
しては,有用である。
128 商 学 討 究 第59巻 第1号 [図9]
「2.監査の結果,会社の採用する会計処理の原則および手続は,一般に公正 妥当と認め られる企業会計の基準に準拠 し,かつ,前事業年度 と同一の基準にし たがって継続 して適用 されてお り,また,財務諸表の表示方法は財務諸表規則 (大 蔵省令)の定めるところに準拠 しているものと認めた。
よって,私達は,上記の財務諸表が, 日東金属鉱山株式会社の昭和41年3月 31日現在の財政状態および同日をもって終了する事業年度の経営成績 を適正に 表示 しているものと認める。
附記
(1)蔵王鉱業所は昭和38年5月以降閉鎖 されている。今後再開するか どうか については会社で検討中であるが,若 し再開の見込がないとすれば,看形固 定資産および鉱業権については処分可能価額 まで評価減を行ない,その他の 無形固定資産,繰延勘定については全額償却を行なうべ きもの となる。同鉱 業所の当期末現在 における資産は次の通 りである。
有形固定資産 29,036千円 鉱業権 57,736
その他の無形固定資産 1,690(電気供給施設利用権)
繰延勘定 4,801(前払費用,開発費および試験研究費) 合計 93,263
‑」 (傍線筆者)
そ して, [図9] の(1)ち, [図10](1ト (3)ち,財務諸表が適正 であ るか どうか につ いての意見表 明が行 われた後 に,「阿描己」 と して記 されてい る。 [図10](1)
〜(3)に関 して,1963年3月期〜1964年3月期 の財務諸表 に対す る監査人の意見 表 明 につ いて は,本文 で は示 されて はい ないが,実際の 日東金属 の監査報告書 を参照頂 きたい。
他 方, [図10](4)〜(6)ち,財務 諸表 の適正性 につ いての意見 表 明が な され た 後 に, 「補足 的説 明事項」 と して記載 され てい る。 この点 につ いて も, 1964年
9月期〜1965年9月期 の 日東金属 の監査報告書 を参照頂 きたい。
[図10](4)〜(6)に関す る 「補足 的説明事項」 につ いては,1956年12月 に公表 され た 「監 査 報 告 準則 四 補 足 的説 明事 項」 ([図11](1))及 び 「監 査 基 準 第 三 監査報告基準 三」 ([図11](2))に説 明 はあ るが, 日東金属 の蔵王鉱業
未確 定事項の事例研 究 [図10]
129
(1): 「当社 の蔵王鉱業所 は採掘部門は当期末 に, また硫黄製錬部門は本年4月に 操業 を停止 し全面的 に閉鎖 されたo
よって,今後近 く再 開の見込みがない ものな らば有形固定資産 と鉱業権 につ いては処分可能価格 まで評価減 を行い,その他の無形固定資産 な らびに繰延勘 走 は全額償却 を行 うべ きである と思 われるo
しか し, これ らの問題 は翌期以後 において処理 されるべ きものであるが,今 後の処理方法の如何 によっては当社 の財政状態 に相 当の影響 を与 えるか も知れ ないo」(1963年3月期監査報告書 の 「附記」)(傍線筆者)
(2): 「(2)当社 の蔵王鉱業所 は当期か ら全面的に閉鎖 されたが今後再 開の見込が ない ものな らば棚卸資産,有形 固定資産お よび鉱業権 については処分可能価格 まで評価減 を行 い,その他の無形固定資産 な らびに繰延勘定 は全額償却 を行 う べ きであると思 われるo しか し, これ らの問題 は当期以後 において処理 される べ きものであるO‑」(1963年9月期監査報告書の 「附記」)(傍線筆者) (3):「当社 の蔵王鉱業所 は前期か ら全面的 に閉鎖 されてお り,今後近 く再 開 され
るか否かは未定であるが,若 し再開の見込みが ない もの とすれば棚卸資産,有 形固定資産お よび鉱業権 については処分可能な価格 まで評価減 を行 い,その他 の無形 固定資産お よびに繰延勘定 は全額償却 を行 われ るべ きであ る と思 われ るO ‑」(1964年3月期監査報告書の 「附記」)(傍線筆者)
(4):「(甲) 当社 の蔵王鉱業所 は昭和38年5月か ら全面的 に閉鎖 されてお り,全 後近 く再 開されるか否かは未定であるが若 し再 開の見込が ない もの とすれば棚 卸資産,有形固定資産お よび鉱業権 については処分可能な価額 まで評価減 を行 い,その他の無形固定資産お よび繰延勘定 は全額償却 を行 われるべ きもの とな るo」(1964年9月期監査報告書の 「(補足 的説明事項)」)(傍線筆者)
(5):「(甲) 当社 の蔵王鉱業所 は昭和38年5月か ら閉鎖 されてお り,今後 塗{垂 開 されるか否かは未定であるが若 し再 開の見込が ない もの とすれば,有形 固定 資産お よび鉱業権 については処分可能 な価額 まで評価減 を行い,その他 の無形 固定資産お よび繰延勘定 は全額償却 を行 われるべ きもの となる○」(1965年3月 期監査報告書の 「(補足 的説明事項)」)(傍線筆者)
(6):「(甲)蔵王鉱業所 は昭和38年5月か ら閉鎖 されてお り,今後近 く再 開 され るか どうかについては未定であるが,若 し再開の見込みが ない もの とすれば, 有形固定資産お よび鉱業権 については処分可能 な価額 まで評価減 を行い,その 他 の無形 固定資産お よび繰延勘定 は全額償却 を行 われるべ きもの となるO‑.」
130 商 学 討 究 第59巻 第1号
所が閉鎖 されたのは, [図 9]及 び [図10](4)〜(6)に よる と,「昭和38年 5月」
か らなので,監査 人が [図10](4)〜(6)の記述 を行 う際の,既 に過去 に発生 して しまった 「蔵王鉱業所 の閉鎖」 は,「監査年度経過後監査終了 日までに」発 生 した事象 ではな く,それ を [図11] 中の 「次期以後の財政状態及 び経営成績 に 重大 な影響 を及 ぼす事項」 と捉 えることはで きない。 その限 りでは, [図10]
(4)〜(6)に見 られる 「補足 的説 明事項」 は, [図11] に記 されている ような 「補 足的説明事項」 ではない ことがわか る。
[図
1 1 ]
(1):「監査年度経過後監査終了 日までに,合併,買収等次期以後の財政状態及び 経営成績に重大な影響を及ぼす事項が発生 した場合には,監査報告書に重畳立 て記載するものとする。」 (傍線筆者)
(2):「財務諸表に記載されない事項であっても,次期以後の企業の財政状態及び 経営成績に重大な影響を与える虞れがあると認められるものについては,監査 報告書に補足 して記載するものとする。」 (傍線筆者)
それな ら, [図10](4)〜(6)の 「補足 的説 明事項」 を どう理解 すれば よいかが 問題 になるが,先 ほ ど述べ た ように,監査報告書上の構造か ら言 うと,[図10]
(4)〜(6)の 「補足 的説明事項」 も,[図10](1)〜(3)の 「附記」 も,そ して [図 9]
ち,財務諸表の適正性 についての意見表明が なされた後 に記載 されているので, [図10](1)〜(6)や [図 9] の監査報告書上 の監査 人の対応 は,「適正性 につ い ての意見表明+α」 と整理 されることがわかる9)。
そ うす る と, ここでの 「補足 的説 明事項」 は, [図11]の意味の補足 的説 明 事項ではな く, よ り一般的な意味で,監査人が財務諸表利用者 (あ るいは (及
9)本文では,理論的にも 「適正性についての意見表明+α」 という監査人の対応が 導けるとは主張 していない。本文では,1963年3月期から1966年3月期までの日 東金属の監査報告書に見 られる監査人の対応を整理すると,「適正性 についての 意見表明+α」の形になると主張 しているだけである。
未確定事項の事例研究 131 ぴ)監査 人 自身) に便益が もた らされ る よ うに,財務諸表 の適正性 につ いての 意見表 明 に加 えて 「補足 的 に説 明 した事項」と捉 えてお けば よい ことがわか る。
この ように, 「補足 的説 明事 項」 を [図
1 1
] の意味 のみ に捉 えず, それ を含 む よ り広 い 「補足 的説 明事 項」 を用 意す る考 え方 は, 日下部 (1962, 2‑5) に も見 られ る ([図12])。 また, 「広義 の補足 的説 明事項 の 中に狭義 の補足 的説 明 事項 と付 記事 項 が含 まれ る」 旨を表 してい る 日下部 (1962,3)の 「第1表」も参照頂 きたい。
[図12]
「まず狭義の解釈は,補足的説明事項の内容 を次期以降の企業の財政状態およ び経営成績に重大な影響 を及ぼすおそれのある 「決算 日後の重要事件」‑に限る ものであって,わが国の監査報告基準がこの立場をとっていることは,同基準の 第3および監査報告準則の第4によって明 らかである。そこでは,補足的説明事 項 としてとりあげる対象 を 「監査年度経過後監査終了 日までに」発生 した重要事 件に限ってお り,会社の合併や買収などがその具体例 とされているのである。‑
次に,補足的説明事項に関する広義の解釈は,旧監査報告基準の第4によって 代表 される幅の広い概念である。‑旧第4基準は‑ 『財務諸表に記載 されない重 要な事項であって,これを省略する場合誤解 を招 く虞があると認めるものについ ては,監査報告書 にこれを補足 して記載 されなければならない。』 と定め,垂直昼 的説明事項の内容を 「次期以後」の発生事象に限 らず,かな り拡張 した解釈 を示 している。この見解によれば,財務諸表に関する利害関係者の判断に資するため 特 に必要 と認め られる事項 または省略すると誤解 を招 くおそれのある事項であっ て,財務諸表に記載 されていないか記載があっても不十分なものにつ き,墜墾撃 告書に補足 して説明を加えた事項はすべて補足的説明事項 となるわけで,‑・」(傍 線筆者)
他 方 , [図9] や [図10](1)〜(6)に見 られ る, 日東 金属 の蔵王鉱業所 の有形 固定 資産 や鉱業権 等 の資産 の金額 (及 び合計 額) の各年 度 の推移 は, [図13]
の ようになってい る。 この [図13] は,1963年3月期 か ら1966年3月期 までの 日東金属 の監査報告書 の記載 よ り作 成 した。[図13]中の「‑」は,「記載 な し」