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東アジアのオフィオライ ト

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北陸地質研究所報告

HGIReport No.3 0ct.1993 p.131

東アジアのオフィオライ ト

石 渡 明*

OphiolitesofEastAsia AkiralsHIWATARI*

(1993630日受理) (Received30,June,1993)

Abstract

OphiolitesinnorthernEastAsiaareverydiverseintheirage.ⅠnsouthwesternJapan, OrdovicianophiolitetectonicallyoverliesPermianophioliteandaccretionarycomplex,andall thesetogetherthrustontoJurassicaccretionarycomplex,whichinturnoverliesCretaceousand Tertiaryaccretionarycomplexeswithophioliticmelanges. BeforeMiocenetime,theOr dovicianophiolitemayhavecontinuedtotheothersideoftheJapanSea(SikhoteAlinMts.), whereCambr0‑0rdovicianophiolitethrustontoJurassicaccretionarycomplex.Ordovicianto Cretaceousophiolitesform analogousnappepilesinnortheasternJapanandnortheastern Russia(KoryakMts.)aswellasinwesternU.S.A.Multiplesuperpositionofophiolitesofwidely varyingages,whicharegenerallyyoungerasgoingdownthroughthenappepile,aswellas extremepetrologicdiversityandhighlydismemberednature,ischaracteristicofthecircum‑

PacificPhanerozoicmultipleophiolitebelts.

Ontheotherhand,ophiolitesinsouthernEastAsia(from PhilippinestoNew Caledonia) aremostlyuniform inage(LateCretaceoustoEocene).Theuniformityofophioliteageover the6,000km‑longarea,contemporaryvoluminousproductionofoceaniccrustintheadjacent marginalbasins,presenceofcurrentlyspreadingback‑arcbasins,andwelldevelopedupper mantlelow‑Velocityzonesuggeststhattheareahasoncebeenaoceanicriftzonecomparable totheothermid‑oceanicridges,andhasbeendecomposedintomanyislandarc一marginalbasin system soonafter.Theophiolitesmostlyrepresentsaportionoffore・arclithospherethrust ontothesubductingplate,ascurrentlydemonstratedbythesubmarineoutcropsofforearc

* 金沢大学理学部地学教室

DepartmentofEarthSciences,FacultyofScience,KanazawaUniversity,Kanazawa920ll,JAPAN

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ophiolitesinsomearcsidetrenchwalls.

Temporaldistributionofophiolites,bothincircum‑Pacificandcontinentalareas,show distinctpeaksinJurassicCretaceousandOrdovicianwithalesspronouncedpeakinPermian.

Theseophiolitepulsescorrespondtotheperiodsoflongpaleomagneticstability(noreversals), eustatichighsealevels,majoroilandcoalproduction,andvoluminousoceaniccrustproduc‑

tion,suggestingtheexplosionsandsubsequentsurgesofsuperplumesascendedfrom thecore/ mantleboundary.Althoughemplacementofanophiolitenappemaybeasuperficialplate‑

tectonicprocess,simultaneousgenerationandsubsequentemplacementofophiolitesinaglobal scalemaybebetterexplainedbytheplume(andsurge)tectonics.

l.序論

オフィオライ トとは造 山帯に巻 き込 まれた海洋性地殻 ・マ ン トルの断片であ り,幅数km〜数10km, 延長数km〜数100km,厚 さ数100m 〜10km程度 の大 きさの板状 の岩体 として ,大陸緑や 島弧の堆積物 の 上 にの し上 げた衝上岩体 として産す る.典 型的 な ものは下か らマ ン トルカンラン岩 (主 として‑ル ツバー ジャイ ト),火成沈積岩 (主 として‑ ンレイ岩),玄武岩質火 山岩 (岩脈群 お よび枕状溶岩)の 順 に重 なる層状複合岩体 をな し, それぞれ海洋性上部マ ン トル,海洋地殻第3層,お よび同第 2層 に対比 され, その上 には放散 虫チャー トな どの深海堆積物 (海洋地殻第1層)が乗 っているこ とが 多い (石渡,1986).

カンラン岩 ・斑 レイ岩 ・玄武岩の3つの メンバーが揃 った完全 な火成層序 をもつ オフィオライ ト は, キプ ロスや オマー ンな ど, 中 ・新生代 のユー ラシア南縁 (アルプス ・ヒマ ラヤ)造 山帯,お よ び古生代 のアパ ラチア ・カレ ドニア ・ウラル造 山帯 に発達す るが, 日本列 島の ような環太平洋地域 のオフィオライ トは, ある部分 (特 に岩脈群)が欠けていた り,層状構造や累重関係がはっき りし ないこ とが 多い.小論で は2つ以上の メンバーが揃 っていて,現位 置に構造的に搬入 された産状 を 示す場合, オフィオライ トとして取 り扱 う.枕状溶岩 だけの場合や, カンラン岩だけの場合 も,化 学組成や周囲の状況か らみて, それ らがオフィオライ トの断片 と考 えられ る場合 は考慮の対象 とす

る.

日本列 島の新生代古第三紀以前の地層の地質構造 は,ナ ップ (衝上岩体)の累重 を基本 とし,汰 み込み帯 で新 しいナ ップが次々に古いナ ップの下 に底付 け (アンダープ レー ト) されて成長 して き た大陸縁付加帯の特徴 を示す.従 って一般的にはナ ップ を構成す る地層の年代 は大洋側 に向か って 若 くなるが,古 いナ ップの断片が大洋側 のナ ップの上 に ク リッペ として残 っているこ ともあ る. な お,小論 では 「付加帯」 は付加型造 山帯 を意味 し,「付加体」はその中の個々のユニ ッ ト (例 えば, 層序が よ く似 た一連のナ ップ群) を指す.

付加体 を構成す る各ナ ップの堆積岩は共通の特徴的な層序 を示 し,海洋プ レー ト層序 と呼ばれ る (磯崎 ・丸 山,1991,p.707). これは,玄武岩 ・チャー トまたは石灰岩 ・泥岩 ・砂岩 の順 に重 なる層 で,ゆっ くり移動す る海洋プ レー ト上 で,長 い時間 をかけて堆積 した薄 いチャー トが,沈み込み 帯に近付 き, その上 に比較的短 い時間に厚 い陸源砕屑物 (泥岩 ・砂 岩)が堆積す ることに よって形

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成 され る. この陸源砕屑物 は しば しば島弧火 山起源の凝灰岩 を,挟 む. 日本列 島な ど,環太平洋地域 のオフィオライ トは,活動的大陸縁 を特徴づ け る,海洋プ レー ト層序 を持つ典 型的 な付加体 に対 し て衝上 してお り, オフィオライ トが受動的大陸縁 の大陸地殻お よびそれ を覆 う堆積物 (蒸発岩 ・泥 質石灰岩 ・フ リッシュ)に対 して衝上 しているアルプス ・ヒマ ラヤ造 山帯や アパ ラチア ・カレ ドニ ア ・ウラル造 山帯 とは産状が本質的に異なる.

日本 には島列 にほぼ平行 な数列 のオフィオライ ト帯が分布す るが, これ らも付加帯のナ ップ構造 の重要 な構成要素 であ り,一般 に大陸側のオフィオライ ト帯は構造的上位 を占め,形成年代が古 く

(古生代),大洋側 の ものは構造的に下位 にあって形成年代が若 い (中生代 〜新生代). この ように いろいろな地質時代 のオフィオライ ト・ナ ップが重 な り合 うオフィオライ ト帯は環太平洋造 山帯に 特徴 的であ り, 「環太平洋顕生代 多重オフィオライ ト帯」 と名付 け る (Ishiwatari,1991a,b). これ は, オフィオライ トの年代が ジュラ ・白亜紀 に限 られ るアルプス ・ヒマ ラヤ造 山帯や, オル ドビス 紀に限 られ るア ラチア ・カレ ドニア ・ウラル造 山帯 と大 きく異なる.

東 ア ジア北部 では, 日本 と同様 の多重 オフィオライ ト帯が ロシア極東地域 に続 いてお り, アラス カを経て北米西岸 まで延 びている(Ishiwatari,1991a,b).一方,東 アジア南部 では,大陸地域 と海 洋地域 でオフィオライ トの時空分布 に大 きな差異が あるように見 える. 中国内陸部青蔵高原か らイ ン ドシナにかけての大陸地域 の造 山帯 (東経

1 1

00以西)は環太平洋型の多重 オフィオライ ト帯 をなす が,フィ リピンか らイン ドネ シア東部 を経 てパプアニュー ギニア,ニュー カレ ドニアか らニュー ジー ラン ドに至 る広大 な海洋地域 (東経

1 1 0

0以東)では, 白亜紀後期 〜始新世 のオフィオライ トが始新世

〜中新世 に多量かつ大規模 に衝上 し,地球上 で最 も若 く,かつ オフィオライ トに富む造 山帯 を形成 している. この地域 では 白亜紀か ら現在 まで緑海の形成 と破壊が地球上 で最 も活発 に行 われて きて お り,海嶺 と同様 に上部マ ン トルの低速度層が発達 している特異な地域 である.

この論文 では コ リヤー ク山地お よびシホテア リン山地 での現地調査 の経験 を踏 まえて,東ア ジア 北部 (日本 ・ロシア極東)地域 のオフィオライ トについて概説 し,次に文献調査 をもとに東ア ジア 南部 の海洋地域 のオフィオライ トについて総括 し,東ア ジアの北部 と南部 でオフィオライ トの時空 分布が大 き く異 なるこ との意味 を,最近の地球 テ ク トニ クス理論 に基づ いて考察す る.

ll.東アジア北部 1. 日本列島

日本列 島では,マ ン トルカンラン岩 ・斑 レイ岩質火成沈積岩 ・玄武岩質火山岩の3つの メンバー が揃 ったオフィオライ トとして,夜久野,幌加 内,幌尻の3つが知 られているが, いずれ も岩脈群 は欠如す る.そのほかマ ン トルカンラン岩 と超苦鉄質沈積岩の複合岩体 としては大江山・宮守オフィ オライ トがあ り,玄武岩 と火成沈積岩の複合岩体 としては ミカブオフィオライ トが ある. また,嶺 岡 ・瀬戸川帯 には3つの メンバーが断片的に産す るオフィオライ ト・メランジが発達す る. これ ら の形成年代 は大江 山 ・宮守オフィオライ トがオル ドビス紀,夜久野オフィオライ トが二畳紀, ミカ ブお よび幌加 内オフィオライ トが ジュラ紀,幌尻 オフィオライ トは 白亜紀, そ して嶺 岡オフィオラ イ トは第三紀 と考 え られてい る.つ ま り, 日本列 島には古生代前期か ら新生代 まで,顕生代全体 に

3

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わたる様々な地質時代 のオフィオライ トが産す る (石渡,1989).

これ らのオフィオライ トは,ナ ップあるいはそれが破壊 された メランジとして, 日本列 島付加帯 のナ ップ構造 に参加 してお り,古いオフィオライ トが新 しいオフィオライ トの構造的上位 に産す る.

例 えば,西南 日本 内帯 ではオル ドビス紀の大江 山オフィオライ トが二畳紀の夜久野 オフィオライ ト に衝上 し, これ らは二畳紀付加体 である超丹波ナ ップに衝上 し, それ ら全体が更に ジュラ紀付加体 である丹波ナ ップ群 (2枚 のナ ップ よ りなる)に衝上 している (1).西南 日本外帯 では丹波 ( 秩 父)ナ ップ群が更に若 い 白亜紀付加体 であ る四万十ナ ップ群 に衝上 し, それは更に第三紀付加帯 である嶺 岡 ・瀬戸川ナ ップ群 に衝上 している.東北 日本 で も,基本的な構造 は西南 日本 と同様 であ ると考 え られ る (Ishiwatari,1991a,b).

夜久野 オフィオライ ト (石渡,1978)は,福井県西部か ら京都府 ・兵庫県 を経 て岡山県 まで,延 250kmにわたって露 出す るが,福井 県大島半 島お よび高浜町地域 に最 もよ く揃 ったオフィオライ ト 層序が見 られ る. このオフィオライ トの地殻部分 とマ ン トル部分 の境界 (即 ちモホ面 に相 当す る) は輝石 グラニュライ ト相 (スピネルカンラン岩相)の変成作用 を受 け,斑 レイ岩 は緑色 スピネル+

アル ミナ単斜輝石 +アル ミナ斜方輝石+An5斜長石 の鉱物組合せ を示す片麻状 変斑 レイ岩 に変化 してい る.地殻部分 の変成度は玄武岩層か ら斑 レイ岩層に向か って葡萄石パ ンペ リー石相 ・緑色片 岩相 ・緑簾石角 閃岩相 ・角 閃岩相 ・角 閃石 グラニュライ ト相 の順 に上昇 し, モホ面 で輝石 グラニュ ライ ト相 に達す る. この変成作用 は比較的厚 い海洋性地殻 中で,形成直後の高い地温勾配の もとで 行 われた,一種 の海洋底変成作用 と考 えられ る.

通常の海洋地殻の厚 さでは,モホ面での圧力は3kb以下 であ り,そこでグラニュライ ト相 の変成 作用が行 われて も,斜長石 +カンラン石 の組合せ は安定 で, ス ピネル+アル ミナ輝石 の組合せ には な らない.逆 に大陸地殻の ように30km以上の厚 さがあると,モホ面 での圧力は10kb近 くにな り,そ こで グラニュライ ト相 の変成作用が行 われ る と,斜良石 +斜方輝石 の組合せが不安定 になって,ザ クロ石 が形成 され る.夜久野オフィオライ トのモホ面ではザ クロ石 は形成 されていないので,圧力 5kb10kbの間 (地殻 の厚 さは15km30kmの間)と考 え られ る (Ishiwatari,1985).この よう に厚 い地殻部分 をもつ オフィオライ トは, その後 アラスカか らも報告 され, そこではザ クロ石が存 在 す るの で,夜久 野 オ フィオ ライ トよ り厚 い海洋性 島弧 の地殻 と考 え られ て い る (DeBari&

Coleman,1989).また,以下に述べ るように,最近,夜久野オフィオライ トと同様 の厚 い地殻 をも つ オフィオライ トが 日本海の対岸のロシア極東地域に存在す ることがわか った.

2.シホテア リン山地

シホテア リン山地 は 日本海 を挟んで 日本列 島の対岸にある(2). シホテア リン山地の南東部 は 日本海拡大以前に西南 日本 内帯 と連続 していた可能性があ り,日本の地質 を考 える上 で重要 である.

例 えばZonenshainetal.(1990)は, シホテア リンのオフィオライ ト帯 を飛騨外縁帯の, その西側 の先 カンブ リア代 の‑ ンカ(Khanka)岩体 (片麻岩1900Ma,花 園岩495Ma)を飛騨帯の延長 と考 え, Kojima(1989)もこのオフィオライ ト帯に按す るジュラ紀付加体 (那丹口合達 一西 シホテア リン帯 :古 生代後期 の石灰岩, チャー トを含む) を美濃帯の延長 と考 えている. この地域 のオフィオライ ト岩

(5)

1‑ L 一 ㌧

T s lT a mb a

N a p p e

1 西南 日本 内帯の地質構造.古生代 のオフィオライ ト・ナ ップ (大江 山 と夜久野

)が二畳紀付 加帯 (超丹波帯) を挟んでジュラ紀付加体 (丹波帯)に衝上す る.黒色は超苦鉄

質岩,縦線 は 苦鉄質岩,空 自部 は砕層岩お よびその変成岩.角の出た線はナ ップ を境す る衝上

断層 で,黒い 角の線は二畳紀付加体 とジュラ紀付加体 の境界.丹波帯 は2つのナ ップ よ り

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体 は どれ も斑 レイ岩類 を主体 とし,ナ ホ トカ周辺の 日本海岸か ら北北東方向に‑ ンカ湖 の北東方 ま 400kmにわた り断続的に配列 している (Mazarovich,1982).Vysotskiy(1993)に よる と,これ ら は南か らセルゲ‑エ フ岩体, カ リノフ岩体, ビキン岩体 の3つ に区分 で き, それ ぞれ岩質が異 なる (3a).私 は1993418‑25日に荒井幸 司氏 ・辻森樹 氏 とともにVysotskiy氏の案 内でセル ゲ‑エ フ岩体 とカ リノフ岩体 を実際 に観察す るこ とが で きた.以下 にその時の観察 と文献調査 を基 に シホテア リンの オフィオライ トにつ いて概 説す る.

セルゲ‑ エ フ岩体 は片麻状構造 の発達 した,輝石 を含 まない角 閃石変‑ ンレイ岩 を主体 とし,角 閃岩や石灰質変成岩 のブ ロ ックを含 み, 多量 の花 尚岩お よび若干 の トロク トライ トに貫かれ る ( 3b).この岩体 は夜久野 オフィオライ トの玄武岩 メンバー下部か ら‑ ンレイ岩 メンバー上部 にかけ ての部分 (特 に舞鶴帯北帯)に よ く類似 し,餐‑ ンレイ岩 中に角 閃岩 を主 とす る舞鶴変成岩 のブ ロッ クが含 まれ, 多量の舞鶴花嵐岩 に貫かれ る関係 とよ く似 てい る.粒度の異 なる変‑ ンレイ岩が不規 則 に入 り交 じる中 を,花 筒岩の脈が貫 く様 子 は全 く同 じと言 って よい. ただ し,舞鶴帯 の夜久野オ フィオライ トには トロク トライ トはみ られ ない.ナ ホ トカ港 を見下 ろす丘 に舞鶴 とナ ホ トカの姉妹 都 市締結記念碑 が立 ってい るが, この石 は舞鶴 か ら運 んで きた径3mほ どの変‑ ンレイ岩 であ り, 粒度が不均質 で多 くの花 尚岩 の脈 に貫かれてい る. これ とよ く似 た岩石 はナ ホ トカか ら西‑小 さな 峠 を越 えて出 る海岸 に露 出 してい る (Sinitsa&Khanchuk,1991).

Zakharovetal.(1992,p.9)の地質 図に よる と, この岩体 は,Kojima(1989)が美濃 一丹波帯 の延長 と考 えた ジュ ラ紀後期 一白亜紀前期 の付加体 (二畳紀石灰岩,三畳紀 ・ジュラ紀 チ ャー トを 含む)の上 に載 るナ ップ をな し,岩体 の北部 には,構造的下位 を占め る付加体 が露 出す る地窓があ る. また,岩体 の南東緑 に沿 って三郡変成岩 に相 当す る と思 われ る藍閃片岩お よび緑色片岩が分布 す る(3b).また,このナ ホ トカか ら東‑50kmほ どのUspenye湾付近 に も同様 のオフィオ ライ ト・

ナ ップが存在す る (Mazarovich,1982).

カ リノフ岩体 は輝石‑ ンレイ岩 を主 とし,若干の トロ ク トライ トを伴 う.西側 に多量の玄武岩枕 状溶岩が分布 し,二畳紀か ら白亜紀前期 の堆積岩 を伴 う. また,東側 には ウェル ライ ト,単斜輝石 岩, トロク トライ トな どの超苦鉄質岩や藍閃石 片岩,緑色片岩が伴 われ る.‑ ンレイ岩 中に角 閃岩 ブ ロックや花 尚岩貫入岩体 が ない点で南方のセルゲ‑エ フ岩体 と異 なる. また, この岩体 の トロク トライ トには カンラン石 と斜長 石 の間にス ピネル ・両輝石 シンプ レクタイ トが形成 されてお り,岩 体 形成後の冷却 に伴 ってス ピネル ・カンラン岩相 の温度圧 力領域 に入 ったこ とを示す. この こ とは,

この オ フィオ ライ トの地 殻部分 が か な り厚 か った こ とを示 す.更 に,Khanchuk& Panchenko (1991)は この岩体 の北部か らザ クロ石 を含 む変斑 レイ岩 を報告 した. これは もっ と厚 い地殻 の下部 の断片か もしれ ない.

最北の ビキン岩体 は露 出が悪 く,交通 の便 も悪 くて,我々は行 か なか ったが,Vysotskiy(1993) に よる と, 片麻状構造 の発達 したス ピネル両輝石変‑ ンレイ岩 を主 とす る岩体 であ る.超苦鉄質岩

としては, レール ゾライ トや‑ ルツバー ジャイ トが伴 われ, トロク トライ トはみ られ ない. ス ピネ ル両輝石変‑ ンレイ岩 は夜久野 オフィオライ トの地殻 ・マ ン トル境界 (モホ面) に見 られ るもの と, 岩石組織,鉱物組 み合 わせ,鉱物化学組成 な どの点 で,寸分違 わない ものであ り,顕微鏡下 で両者

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120 7

E

2 東アジア北部のオフィオライ ト帯 とシホテア リン山地およびコリヤーク山地の位置.

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Cretaceous Granite MesozoicClastics and volcanics JurassiCAccre‑

tionaryComp一ex PermianCLastjcs, Volcanics,Limestone Greenschistand Bhes¢hist

Cambr0‑0rdovician Granite

CambrianMetagabbr

o

(Sergeevophiolite) Pre‑Camb・?Amphibo輪te

十 十

3 a(左上)シホテア リン山地のオフィオライ トの分布.3つのグループに別れ,各々岩質 (と 時代 ?)が異なる.

bセルゲーエフ岩体の地質図および断面図. ジュラ紀付加体に衝上す るナ ップ をなす (Zak‑

harovetal1992中のKhanchukの地質図を簡略化).

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の薄片 を見比べ て も全 く同様 で区別がつかない. 中庄 グラニュライ ト相 での再結晶作用 を被 った変

‑ ンレイ岩 として,かな り厚 い (15‑30km)海洋性地殻の下部 を表す と考 えられ る.

以上 の ように, シホテア リンのオフィオライ トは夜久野オフィオライ トの地殻部分 の中 ・下部 を 3層に分割 した各層が, それぞれ別の大岩体 として分布 してい るよ うに見 える. このオフィオライ トの年代 につ いては, セルゲ‑エフ岩体 にデボン紀の地層が伴 われ, これが不整合 にオフィオライ トを覆 うとされ る露頭があるので,デボン紀以前 と考 え られて きた. このオフィオライ トを貫 く花 園岩の 白雲母 のArAr年代 は491Maであ り (Zakharovetal.,1992), このオフィオライ トはカ ンブ リア紀以前の ものである可能性が高い. もしそ うなら, 日本の大江 山オフィオライ トよ りも古 く,大江山オフィオライ トは単斜輝石 に富む‑ルツバー ジャイ トを主 とし斑 レイ岩 は非常 に少 ない ので,岩相 も全 く異なる.ただ し,大江山オフィオライ トの460Ma前後の角 閃石K‑Ar年代 を与 え る片麻状変斑 レイ岩はセルゲ‑エフ岩体 の もの とよ く似 ている.

3.コ リヤーク山地

コ リヤー ク山地の地質 については,Dobretsov&Chikov(平 山次郎訳,1979)の簡単 な解 説があ るが,最近Stavskyetal.(1990)は,この山地の構造区分 とプ レー トテ ク トニ クスに基づ く各 テレー ンの起源 を詳細 に論 じた.私 は199079日か ら83日まで,井上科学振興財 団か ら旅費の援 助 を受 けて,Stavsky氏 を リー ダー とす る 「地球変動学野外セ ミナー」に参加 し, コ ))ヤー ク山地 マ イニッ帯のオフィオライ トとそれ らの周囲の付加体 を観察す る機会 を得 た.以下の記述はこの時 の体験 とその後の文献調査,お よび持 ち帰 った岩石 試料 の顕微鏡観察 に基づ く.

コ リヤー ク山地 はカムチャツカ半 島基部か らベー リング海岸に沿 って北東‑延 び,アナデ ィール 平野に達す る,延長1000km,幅300kmの摺曲山脈 であ り,その規模 は西南 日本全体 に匹敵す る(2).

この地域の西方には始生代片麻岩 よ りなるオモロン (アマ ロン)地塊があ り, コ リヤー ク山地は こ の大陸塊の大洋側 に形成 された付加帯であると考 えられ る.現在 この地域 はア リュー シャン島弧の 背後 にあるが, この島弧 は白亜紀末期 ない し第三紀 に入 ってか ら形成 された ものであ り, それ以前 は クラ ・太平洋プ レー トが直接 オモ ロン地塊の下 にサブダ ク トしていた らしい (Scholletal., 1975).

コ リヤー ク山地の地質の特徴 は, (1)地質構造の線状配列, (2)火 山岩分布域 と堆積岩分布域 との複雑 な交代,(3)衝上断層の広範 な分布,(4)オフィオライ トが 多いのに対 して花尚岩類 を 欠 くこ とである(Dobretsov&Chikov,1979).この山地 には内陸側か ら海側へ大 き く分 けて3列 の オフィオライ ト帯が存在す る(Palandzjan,1986).4aに示す ように,最 も内陸側 は古生代前半 のオフィオライ トよ りなるPenzhina‑Pekulney帯 (またはUst'Belaya帯)で,北部の ものは古生 代 中期 (デボン紀),南部の ものは同前期 (オル ドビス紀)で,原生代後期 の もの もあるらしい. こ れ らのオフィオライ トには高圧型変成岩が伴 われ る.山地 中央のオフィオライ ト帯 は北か らRaryt kin帯,Mainits帯,Khatyrka帯に細分 で きるが,いずれ も古生代後期か ら中生代 中期 の ものであ

る.最 も海側 のオフィオライ ト帯 はカムチャツカ半 島基部の01yutor帯 で,Vatyna帯 とEastKam‑

chatka帯 に細分 され,この小規模 なオフィオライ ト群 の年代 は 白亜紀 ない し第三紀 である.Vatyna

9

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帯 にはア ラスカ型超苦鉄質岩体 (環状構造 をもつ グナ イ トー輝石岩体) も伴 われ る.

Stavskyetal.(1990)によると,前 ・中期古生代 オフィオライ トが付加 したのは130Ma(白亜紀初 期)以前,Mainits帯が付加 したのは70Ma(白亜紀末期)以前,01yutor帯が付加 したのは15Ma( 三紀 中新世)以前であ る.付加 の年代 は付加体 を不整合 に覆 う地層や火 山岩に よって決定 された.

オフィオライ トの年代 が古生代前期 か ら第三紀 まで顕生代全体 にわた り, 内陸側 か ら海洋側‑ 向 か ってオフィオライ トの年代が若 くなる点で, コ リヤー ク山地のオフィオライ トの時空分布 は 日本 列 島や北米西岸 クラマス山地 とよ く似 てお り,環太平洋顕生代 多重 オフィオライ ト帯の特徴 をよ く 示 している (石渡,1989,1991a,b).図4bPushchrovskiyetal.(1988)が描 いた コリャ‑ ク山 地の地質断面図であ り, 多重 オフィオライ ト ・ナ ップの累重構造が よ く示 されている. この山地は 植生が疎 らで, ほ とん ど全面露頭 なので,浅 い部分のナ ップ構造は実際に現地 でよ く観察 で きる.

ただ し, この断面図の深 い部分 につ いては疑問の余地がある.

環太平洋地域のオフィオライ トの特徴 は,年代幅が広 いだけでな く,マ ン トルの部分溶融程度が 変化が大 き く,岩質が 多様 であ るこ とであ る. この性質 は コ リヤー ク山地 で も同様 で,Penzhina‑

Pekulney帯 では,北側 のマ ン トル・カンラン岩 は レールゾライ ト質 であるのに,南側 はハルツバー ジャイ ト質 であ る.Mainits帯 で もTamvatnei岩体やYagelnyメランジのマ ン トル・カンラン岩は レールゾライ トであるのに,わずか数kmLか離れていないKrasnaya山やChirinai山の ものは‑ル ツバー ジャイ トであ る.

コ リヤー ク山地のオフィオライ トの岩石学的特徴 として,非常に高い圧力で形成 され る岩石や鉱 物が,カンラン岩 中に産す ることがある.例 えば,Penzhina‑Pekulney帯の最北端 に位置す るPekuト neyオフィオライ トは,基底部 にス ピネル ・ザ クロ石輝石岩やエ クロジャイ トを伴 うスピネル ・レー ルゾライ ト岩体 (上部 はグナ イ ト・ウェル ライ ト) よ りな り,Nekrasov(1980)はこれ を大陸地殻 下のマ ン トルの断片 と解釈 した. この岩体 は付加体 の中で最 も大陸側 に位 置 し, グラニュライ トを 伴 う原生代 チャル ノク岩のブロックに接 して産す るので,大陸縁の リフ ト帯 な どの特殊 な環境 で形 成 されたのか もしれない (Nekrasov,1980).

しか し,付加帯の中央部 を占め,大 陸地殻 の断片 を全 く伴 わ ないMainits帯 オフィオ ライ トの レールゾライ ト(Tamvatnei)や‑ルツバー ジャイ ト(Chirinai)か らもダイヤモン ド(Shiloetal., 1981)やパ イロープ成分 に富むザ クロ石(Lavrova,1982)が報告 されてお り, カンラン岩が部分溶 融 を経 なが ら海洋下 のマ ン トル深部か ら上昇 して くる過程 で,一部 の高圧鉱物 が相 変化 を免 れて 残 った可能性があ る.例 えば,大陸内部の衝 突型造 山帯 では, ときどきザ クロ石 に包有 されて コー サ イ ト(Si02の高圧相)が残 ってい るが,地殻 内に上昇後800℃以上 の高温 で岩石が再結 晶 したに も かかわ らず, まだ コーサ イ トが残 っている例 が最近報告 された (Wangetal.,1993). カンラン岩 中で もザ クロ石 に包有 されて さえいれば,部分 溶融 を経 た後 で もダイヤモン ドが生 き残 る可能性は ある.

我々が調査 した コ リヤー ク山地 中央部のマ イニ ッツ帯は,主 として ジュラー白亜紀の緑灰色塊状 火山砕層岩 (グレイワ ッケ と呼ばれている) よ りな り, その中に東北東方向にのび るい くつかのオ フィオライ ト・メランジュを含む. その中で最 も大 きいのはヤーゲル ・蛇紋岩 メランジュであ り,

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4a(上図)コ リヤーク山地地質概略図.(1)新生界,

(2)白亜紀付加体,(3)ジュラ系,(4)古生 代付加体(2‑4はオフィオライ トを伴 う),(5)

白亜紀火 山岩,(6)ジュラ紀火 山岩,(7)原生 一中 生界被覆層,b(下図)付加帯の北緯62(8)原生界基盤岩0の地質断面図 (Pushcharovskiyetal.,1988). (1)モホ面,(2‑5 ) 大陸地殻玄武岩層,(6)海洋地殻,(7‑10)大陸地殻花南岩

(12)

これ を境 として ジュラー白亜紀火 山砕層岩は北側 の トポ リョフ層群 と南側 のチ リナ イ層群 に分 け ら れ る.後者のほ うが破砕 ・変形が著 しいが,時代 ・岩相に大差 はない. どちらも珪質の部分が風化 ・ 浸食に抗 して残 り,尾根や 山腹 に石像群や塔 の よ うにみえる特徴的な地形 を形成す る.

これ らの火 山砕層岩は玄武岩 〜安 山岩質 で,一部 に母人岩質の もの も含 まれ,海洋性 島弧の火山 活動 で形成 された もの と考 えられている.ヤーゲル ・メランジュはチ リナ イ層群 に衝上 し, クラス ナヤ 山 (赤 い山)の カンラン岩体 はその ク リッペ と考 えられ る.ヤーゲル ・メランジュには鉄 とチ タンに富む玄武岩や ピクライ トが 多 く,海洋 島 または緑海で形成 された可能性が高い.チ リナ イ層 群 中にはエルゲバヤム (北)・チ リナ イ (南)の2列のオフィオライ ト・メランジュがあ り,二畳 ・ 石炭紀の石灰岩体 を伴 う. この極北の地に大 きな瑚瑚 礁石灰岩体が突 き立 っているのは異様 な光景 である. この2列 のオフィオライ トはカル ク ・アルカ リ岩質 の閃緑岩や火 山岩 を伴 い, 島弧 で形成 された もの と考 えれれている. なお,二畳 ・石炭紀の石灰岩や三畳紀のチャー トの小岩体 はチ リナ イ層群 中の他 の部分 に も構造的ブロックとして散在 している.

原生代 の大陸地殻起源 の砂や泥が固結 した珪長質砕層岩が量的に卓越す る日本や シホテア リンの 付加帯 とは異な り, コ リヤー ク山地の付加帯 は一見 日本 の グ リー ンタフに似 た灰緑色の火 山砕層岩 (グレイワ ッケ) を主 な構成物 とす る. 日本の付加帯 で も,比較的若 い四万十帯や瀬戸川帯にはか な り火山砕層岩が含 まれ るが, その比ではない.おそ ら く, この付加帯はい くつかの海洋性火 山弧 が次々に大陸縁 に付加 されて形成 されたのであろ う.

日.東アジア南部地域

この地域 のオフィオライ トの時空分布 は東経1100付近 を境 に西 と東 で全 く異 な る.西部 ではイン ドシナ半 島か らマ レー半 島にかけて,先 カンブ リア代 の大陸ブロックの間に古生代か ら中生代前期 のオフィオライ トが存在 し, スマ トラ島には中生代 のオフィオライ トが, そ して現在 のイン ド洋沈 み込み帯の北東側 には ビルマか らアンダマ ン諸 島を経て メンタワイ諸 島に至 る新生代 オフィオ ライ ト帯があ り(Hutchison,1975),環太平洋型の多重 オフィオライ ト帯 をなす. 同様 の多重 オフィオ ライ ト帯 はタ リム盆地か らヒマ ラヤにかけての青海 ‑チベ ッ ト高原に も存在 し,古生代前期か ら中 生代後期 まで,北か ら南‑年代が若 くなる6列 のオフィオライ ト帯が配列す る (Wang&Hao,印 刷 中). この地域 のオフィオライ トについては,本論文 ではこれ以上詳述 しない.

一万,1100以東の台湾 ・フィ リピンか らボルネオ,セ レベ ス,‑ルマ‑ ラ,パプア, ソロモン,バ ヌアツ, ニュー カレ ドニア を経てニュー ジー ラン ド, そ して更にマ コ‑ リー 島に至 る地域 (5) では, 白亜紀か ら新生代 を通 じて, 島弧線海系の形成 と破壊 が地球上 で最 も活発 に行 われて きたた めに, 白亜紀以後 の新 しいオフィオライ トが 多い. まだ陸上 には現れていないが,伊豆 ・マ リアナ・

ヤ ップ海溝や トンガ海溝の陸側斜面 には,第三紀の前弧 オフィオライ トが露出 してい る (前川他, 1989).世 界で最 も若 い, 台湾の利害 メランジ中の中新世 オフィオライ トもこの地域 にある (Jahn, 1986).

1.サンパレス (フィリピン)

図 2 東アジア北部のオフィオライ ト帯 とシホテア リン山地およびコリヤーク山地の位置.
図 5 東
図 8 地球上のオフィオライ ト帯・環太平 洋顕生代 ( 古生代前期 〜新生代)多重 オフィオライ ト帯,ヒマ ラヤ ・アルプス ・が ノブ中生代 ( ジュラ ・白亜紀) オフィオライ ト帯, アパ ラチア ・カレドニア ・ウラル前期古生代 (カンブ リア ・オル ドビス紀) オフィオライ ト帯に大 き く区分 で き る・先 カンブ リア紀造 山帯に も始生代か ら原生代後期 ま

参照

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