1034 長崎医学会雑誌第29巻第12号1034‑1037頁
人蚤の吸血活動について
長崎大学風土病研究所衛生動物学研究室(主任大森南三郎教授)
藤崎一克
ふじ さき か よし
緒 言
人家内で人を襲う蚤讃の種類及びモの季節 的消長に̲登TJては,経験的な記述はあるが, 科学的な調査の成蹟は殆んどないので,著者 は昭和27年9月から, 28宰9月皇で,描を飼 い,鼠族が普通に棲息している一員豪の居室
で,蚤類の凝集奇行い,以下に述べるような 成績を得たので報告する.この報告を出すに 当t),御指導鹿びに御校閲を賜った.剛中大森 教軌こ深謝し,文献の借用をうけた鳥取大学 長花数超に謝意を表する,
採集方法と成績
採集場所ほI佐賀県杵島郡江北町大字山口(33r⊃
12'N., 130つ11'E.)で,筑紫平野に望む山脚地帯の畑 に建っている古い農家である.この家は藁ぶきで, 南北に六畳が二間あり,夫々の部家に一家族づi生 讃している.この内の南側の部屋で採集を行ったが, この部屋は天井はなくI代りに葦であんだ農をおい てある.蘇下は粘土質で硬く排水は良い方であり,
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床まで約50糎の高さがある.家畜は猫,鶏,兎が飼 育してある.鼠ほ猫がいる問ほ殆んどいなかったが, 猫が2ア年12月に死んでから,時々騒ぐようになった.
艮蛋を調査する目的で数回桶屋器を用いたが屈は採 れなかった.又猫でも数回蚤の採集を行ったが,揺 坂出来なかった。
このような状況のもとで,人糞は多発していたが 調査期間中は殺虫剤の撒布を禁じJ選一回宛主人が 夜休む碍毛布を視で一番下に着て休みJ朝静かに密 閉出来る指の中に毛布を入れJクロロホルムで蛋を 殺してから採集Lた。
成揖ほ第1表の通りでI全部ヒト′ミ PulΦⅩ
irritans Linne, 】758で?16すj 8214,合計378個 体であった.ヒトノミ以外の蛋ほ全く採集出来なか
った.
Table 1. Number and Sex‑ratio of human且ea.
Number %
♀ 164 43.4 214 56.6 Tota1 378
ヒトノミの季節的消長については第1図に京Lた 通りでJ 27年9月に少し採集できたが,次第に少く なりJ 12月から丑年2月中旬までは全く採集できな かった. 2月下旬から3, 4, 月と僅かに増加の 憤向にあり, 6月になると急に増加し, 8月に最も 多く, 9月に急に減少Lている.第2図ほ佐賀市に 於ける温度'湿度'降水量であるが,これを参照す るとJヒトノミは高温多湿時に多く採集できている ことが分る.
入費の吸血靖動について
Fiョ. 1 JSeosoTial prevalence of the human
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Fig. 2. Astoromorical condition under which the
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1036 ・藤 崎 次にヒトノミの出甥時刻を調査する目的で毛布2
枚を用い,午後9時頁から午前2時頁まで1故を着 て休み,その後午前6時頃まで他の毛布を着て休みJ 夫々別の密閉出来る箱に入れて調査Lた成揖は,第 2表に示した通りでJ午前2時を境にしてJ前期と
筏期とに分けてみると, 6固の中前期に多く探集で きたのが1回,後期に多か‑iた暗が3回,同数の時 が2回で'採集臨琴でほ後期の方が多かった・この 結果からみると'ヒトノミほ終夜八を襲っているも
のと云ほねばならない.
Table 2‑ Number of human且ea collected before and after 2 a. m..
Time 9 p.m.‑2a. 2 a.m. ‑ 6 a.in.
Date 早 8 Total 早 a Total
23/ Aug.
30/Aug.
6J Sept.
13/ Sept.
20/ Sept.
27/ Sept.
3 3 1 3 1 1
3 4 1 2 0 3
6 7 2 5 1 4
3 5 3 4 2 1
8 2 3 1 1 0
ll 7 6 5 3 1
Tota1 12 13
考 人家に於ける蚤の採集成蹟は,多少の例外 はあるが,南方の熱帯,亜熱帯に於てはネコ
}ミ Ctenocephalides felis (Bauch」, 1835)
が優勢で,況帯や高地に行くに従ってヒトノ ミが多くなっているようである.著者の成績 は'捜帯での成績によく一致している.文事 節的消長について見ると,春の終りから越冬 蚤の羽化があって,所動を始めるが夏期に多 発し秋に次第に少くなるといはれている経験 的事実をこの成績によづてよく証明すること■
摘 1)著者は昭和27年9月からI 28年9月ま で毎週1回,佐賀果杵島郡江北町大字山口の 一点豪に於て,夜就眠時に裸体に白色毛布を 密着させて休ませ,その毛布を翌朝密閉出来 る箱に入れ,タロ、ホルムで蚤を殺して調査 した結果,採集し得た蚤は全部ヒトノミ Pu‑
25 】8 15 33
察
ができた.◆叉この成績は,長花環の岡山県に '於ける1952年の成績と略々一致している。
性比について見ると,殆んど総ての文献に 於て辛が多いと報告されているが,著者の戒 蹟では甲と8の比が43.4:56.6で,.明らかに 8が多くなっている.この事は興味あること であるが∫ 原因については今の処不明で, 或は採集方法によるのではないかと考えて いる.
要
Iex irritans で, 37即同体,守164, (43.4&)
$214, (56.6%)であった.
2)季節的消長についてみると,早, 8に 依って多少趣を異にするが, 早 8合計数をみ ると, 9月には侍多少所動しているが次第に 減少して, 12月から2月中旬までは全く採れ
人蚤の吸血活動について 1037 われる.
ヰ)性比を見ると)従来の多くの文献に現 はれている成蹟とは反対た, 8が56.6%で多 かった.蚤の苧8カ耳元祁各同数にいるものと すると.一今回の 8の捕殺率の高い事に対し ては略1 %の危険率で有意性が認められる.
その原因については今の処不明であるが或は 採集方故によるのかも分らない。
献
5〕大森南三部:台湾革蚤類に掛、て'応用動 物雑誌. 8 (3) : 158‑164, 1936.
6) Sapre, S.N. : Transmission of pasleurellosis by the鮎a. Indian J・ vet‑ ScL 15 (2〕‥ 15ト155, 1946. (cf. R.A. E., B, 38 : 34, 1950)
丁) Tre血oleyi‑̀H/L. & F. C. Bi岳h叩p: Dis‑
tribution and host of some 且eas of economic im‑
portance. T. Econ. Ent. 33 (4〕 : 701‑703, 1白瓜
( ■ 1■.
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す' 2月下旬から搾れ始め' 3'ヰ' 5月と 僅かに増加の傾向が奉り'.6月になって・急激 に増加し 7, 8月と更に増加して, S月に 最も多くなり, 9月に再び減少し始める.即 ち高温多湿時に多く採集され; 低温低湿時に 少くなる傾向が見られる」
3)人を襲う時刻vtついては;午由2時を 境にして前期と後期に分けて調査した結果中 ら,ヒトノミは終夜人を襲っていることが窺
耳 1〕藤崎一克;犬に寄生する蚤掛こついてJ 長崎医会誌. 2丁(4): 285‑288, 1952.
2)小♯晴拍部:寄生虫と衛生昆虫J白井書房.
京都. 1949.
3〕長花 操.:人家に放ける葺頓についてI (印刷中〕
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.4〕 」大森東=耶:台北市内七人類を襲ふ蚤掛こ 託てT'科学の台湾. 3:(,5〕: 1」5, 1935.
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〔昭芦9. 7. 15.受付〕
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