小田巻郁哉・石川勝彦・遠藤清香・倉澤一孝
1 .はじめに
近年、子育てに関する悩み相談や子育てサークルの交流、保育に関する情報提供を 目的とした子育て支援センターが各地で開設され、2018年には全国で約7400の地域子 育て支援拠点事業が実施されている
(内閣府・文部科学省・厚生労働省 , 2018)
。しかし、支援を必要としている人に子育て支援サービスが十分届いているとは限ら
ない
(井梅 , 2017)
。一般に、援助要請の行動には個人差があり、援助をためらう強い傾向をもつ者がいる
(永井・浜崎 , 2018)
。特に、育児ストレスが高い人は自発的な支 援要請が難しいことが多い(宮坂 , 2000)
。また、抑うつ状態を伴う場合には、評価懸 念を中心に多様な不安を意識しやすくなり、 要請抵抗が高まりやすい(Raviv et al, 2000)
。山梨県笛吹市にある健康科学大学産前産後ケアセンターは、厚生労働省が発行する 産後ケア事業事例集
(平成28年度)
に取り上げられ高い評価を得るなど、質の高い子 育て支援サービスを提供しているが、利用率は県内の年間出生数の2.4%だった(日経
BP,2017)
。当センターは「本当に援助が必要な人が援助を受けていない」可能性を懸念している
(日経 BP, 2017)
。県内の妊産婦を対象に実施したアンケート調査を分析し た石川・遠藤・倉澤(in printing (a)
)によると、当センターの日帰りケアサービスを利 用した人は、有効回答者831人のうち33人(3.96%)
、宿泊ケアサービスを利用した数 は834人のうち29人(3.48%)
のみである。また、調査対象者の属性等を統計学的に分 析した結果、利用が適切と思われる妊産婦の一部がケアサービスを利用できていない 可能性が示唆された。本研究では、産前産後ケアセンターの利用動向に関するアンケート調査結果から、
当センターを「利用しない理由」を明らかにすることを目的とした。具体的には、ア ンケート調査の自由記述をテキストマイニングの手法で分析し、「利用しない理由」
を分類・集計した。また、利用しない理由と妊産婦の属性との対応関係を明らかにし た。
子育て支援サービスを利用しない理由の統計学的分析
─自由記述のテキストマイニング─
2 .アンケート調査法と分析方法
2.1 調査方法・回答者数
山梨県笛吹市にある健康科学大学産前産後ケアセンターの利用動向についてアン ケート調査を行なった。2018年12月から2019年 2 月の間、山梨県の福祉保健部健康増 進課を通じて県下25の市町村に質問紙を配布・回収した。各市町村が実施する乳幼児 健診の会場で質問紙を配布し、1065票を回収した。回答者は全員妊産婦であった。
アンケートでは、回答者の属性について、「年齢」、「子どもの人数」を実数で尋ねた。
身近なサポートについて「出産・育児の心配事を相談できる人数」
(以下「相談できる 人数」)
、「家事・育児のサポートを頼める人数」(以下「サポートを頼める人数」)
を実数 で尋ねた。回答者の健康状態は「産後 4 ヶ月の健康状態(以下「健康状態」)
」を 5 件法(5. 最高に良い~1. 良くない)
で尋ねた。妊娠及び出産期間の妊娠・出産に伴う疾患につ いて、「罹った」「罹らなかった」の 2 項目で尋ねた。産前産後ケアセンターの利用動 向については、「日帰りケアサービス利用」(「利用していない」、「妊娠中に利用した」「出 産後利用した」)
、「宿泊ケアサービス利用」(「利用していない」、「利用した」)
をそれぞれ 尋ねた。産前産後ケアセンターを利用しない理由については、まず 9 つの選択肢から 複数回答により該当するものを選んでもらった(「利用の仕方がわからない」、「宿泊の用 意など面倒」、「申請手続きが面倒」、「料金が高い」、「家族の了承が得られない」、「自分が利用 対象と気づかない」、「遠方」、「交通手段がない」、「他の行政サービスを受けた」)
。加えて、自 由記述欄を設け、 9 つの選択肢に該当しない内容については自由に回答してもらっ た。なお、自由記述の回収票数は170票だった。2.2 分析
利用しない理由の自由記述はテキストマイニングにより分析した。自由記述文を対 象に、形態素単位の分かち書きを生成し、分かち書きの頻度を集計した。類似した表 現は「同義語」として 1 つの語にまとめ、重複のない分かち書きのリストを作成した。
このリストに階層クラスター分析を適用し、共頻関係に基づき回答者をクラスタリ ングした。これによりケアサービスに対する「利用しない理由のクラスター」を生成 した。
最後に、それぞれの理由のクラスターがどのような属性と関連性が強いか探索し た。どの理由のクラスターに所属するかを目的変数
(「属する」「属さない」の 2 値)
、妊 産婦の属性を説明変数とする 2 項ロジスティック回帰分析を利用しない理由のクラス ターごとに行った。なお、妊産婦の居住地域から産前産後ケアセンターまでの距離を統制するため、妊産婦の居住する地域の役所・役場から産前産後ケアセンターまでの 距離を共変量として回帰モデルに投入した。
3 .結果と考察
3.1 要約統計量
テキストマイニングに用いたキーワード
(一語としてソフトウェアに認識させる語を キーワードと呼ぶ。例えば、「上の」「子」→「上の子」)
を表 1 、同義語を表 2 に整理した。分析に用いた各変数の要約統計量を表 3 に示した。リッカートスケールは平均値と標 準偏差
(SD)
、名義尺度は度数(N)
と比率(%)
を示した。表 1 .キーワードリスト きょうだい上の子
下の子 お世話不安定 場ちがい 利用可能日環境変化 出産時入院 第一子 第 2 子 第 2 ・ 3 子
落ち着く 諸事情
助産院全体的 宿泊費 子育て宿泊中 上の子たち 上の子供たち上の子供
上の子供達上の子達 大変そう利用中
兄姉
表 2 .同義語リスト 元となる語 含む言葉
子ども
家族時期 必要性転居 保育施設世話
協力帰省 機会他者 一緒調整 都合
子供姉 第 2 子 上の子達家
産後転入 幼稚園必要 協力的面倒 里帰り きかい授け先 いっしょかねあい
諸事情
兄姉子 第 2 ・ 3 子 上の子供達
親族産前 必要性越す 保育園お世話 支援帰る きっかけ
人
上の子双子 こども 生後母 引っ越し大丈夫
対応園 手助け
下の子兄弟 子 日にち実家 引越し
きょうだい 上の子たち小学生
自宅最近
子供上 上の子供
家庭
第一子兄 上の子供たち
夫
Note.「子ども」の語は紙幅の都合上、 4 段に折り返してある。
表 3 .要約統計量
変数名 有効 N 平均値 標準偏差
年齢 1051 32.34 5.20
ケアセンターまでの距離(km) 1065 20.25 15.56
子ども数 1045 1.80 0.84
健康状態 1000 3.02 0.89
出産・育児の心配事を相談できる人数 1022 3.95 3.04 家事・育児のサポートを頼める人数 1025 2.36 1.57 妊娠・出産に伴う疾患の罹患
罹った 罹らなかった
N % N %
164 15.40 901 84.60
3.2 同義語の記述統計量
産前産後ケアセンターを利用しない理由についての自由記述は有効回答数が170票、
最初に自由記述回答文から分かち書きされた形態素数は172語であった。分かち書き された形態素を確認し、キーワード、ストップワード
(抽出・分析から除外する単語。
例えば、「である」など)
、同義語をそれぞれ指定した後、再び分かち書きを生成した。最終的な自由記述回答文の平均単語数は3.29語
(SD=2.19)
であり、最大単語数は20、最小単語数は 1 であった。同義語の頻度を表 4 にまとめた。
表 4 .同義語の出現頻度
順位 同義語 出現頻度
1 子ども 60
2 必要性 58
3 家族 27
4 時期 11
4 協力 11
6 世話 9
6 他者 9
8 帰省 4
9 転居 3
9 保育施設 3
11 機会 2
11 一緒 2
11 都合 2
11 調整 2
3.3 自由記述回答の利用しない理由のクラスタリングと特徴 3.3.1 単語のクラスター分析
分ち書きされた単語リストの共頻関係に基づいて類似した表現をまとめるため、階 層的クラスター分析を実行した。デンドログラムの分岐形状、クラスターの解釈可能 性を考慮しながらクラスタリングを行なった。最終的に20群に決定した
(図 1 )
。必要性 理由 心配 サポート忙しい 子育て 都合 不安簡単 調整 タイミング 時期 知る 機会 子ども転居 世話 保育施設 他者 難しい帰省 一緒家族 協力 体調
図 1 .抽出した語のデンドログラム
3.3.2 回答者のクラスター分析
3.3.1のクラスター分析によってまとめた語のリストから利用しない理由のクラス ターを析出するため、 語の使用回数から回答者を分類した
(階層的クラスター分析)
。 デンドログラムの分岐形状および、クラスターの特徴を検討したところ、 4 群にクラ スタリングすることがもっとも適切と判断した(図 2 )
。得られたクラスターは、語 の使用パターンから回答者を分類していることから、産前産後ケアセンターを利用し ない理由のクラスターと理解することとする。クラスターの特徴を確認し、以下のように解釈した。 1 つ目のクラスターは、「子 ども
_
世話」の標準得点が高く、次に「他者_
難しい」が続いた。この群では育児に 関する事柄が集まっていたため、「育児による利用困難群」と名付けた。割り振られ た回答者数は61名であった。 2 つ目のクラスターは「必要性」「理由」の標準得点が 高かったことに基づいて「不要認識群」と名付けた。回答者の所属数は50名であった。3 つ目のクラスターは、「時期
_
知る」「転居」「忙しい」「機会」といった産前産後ケ アセンターを利用する契機が得られなったことに関する語が集まったため「機会逸失 群」と名付けた。回答者の所属数は35名であった。 4 つ目のクラスターは、「家族_
協力」「帰省_
一緒」「サポート」といった家族による支援を表現する語が集ったため「家族サポート受容群」と名付けた。回答者の所属数は24名であった。
必要性 理由 心配 サポート
忙しい 子育て 都合 不安 簡単 調整 タイミング
時期_知る 機会 転居 子ども_世話
保育施設 他者_難しい
帰省_一緒 家族_協力 体調 2.5
2
1.5
1
0.5
0
-0.5
1 2 3 4
図 2 .クラスターの特徴
3.4 各クラスターの特徴の分析
クラスター分析によって析出された 4 つのクラスターは、日帰り・宿泊サービスを 利用しない理由のクラスターである。これらのクラスターの特徴を探索するため 2 つ の集計を行った。第一に 9 つの利用しない理由の選択肢と 4 つのクラスターのクロス 集計
(表 5 )
、第 2 に妊産婦の属性に関する変数を従属変数、 4 つのクラスターを独 立変数とする 1 要因分散分析を行った(表 6 )
。クロス集計については、利用しない 理由の選択肢として「利用の仕方がわからない」、「宿泊の用意などが面倒」、「申請手 続きが面倒」、「家族の了承が得られない」、「料金が高い」、「自分が利用対象と気づか ない」、「交通手段がない」、「遠方」を投入した。「他の行政のサービスを受けた」は 実測値がゼロのセルを生じたため分析から除外した。妊産婦の属性は「年齢」、「健康状態」、「子どもの人数」、「出産・育児の心配事を相談できる人数」、「育児・家事のサ ポートを頼める人数」、「妊娠・出産に伴う疾患の罹患」を目的変数に投入した。「妊 娠・出産に伴う疾患の罹患」については、「罹患していない= 0 、罹患した= 1 」と コードした。
表 5 .利用しない理由の選択肢と各クラスターのχ2検定の結果
変数名
育児による
利用困難群 不要認識群 機会逸失群 家族サポート
受容群 所属なし 所属あり 所属なし 所属あり 所属なし 所属あり 所属なし 所属あり 不利用理由の選択肢
利用の仕方がわからない 不選択
▼ 828 △ 58 ▼ 839 △ 47
853 33▼ 862 △ 24
選択
△ 176 ▼ 3 △ 176 ▼ 3
177 2△ 179 ▼ 0
宿泊の用意などが面倒 不選択 890 53 895 48 909 34 920 23
選択 114 8 120 2 121 1 121 1
申請手続きが面倒 不選択 885 55
▼ 891 △ 49
907 33 917 124選択 119 6 △ 124 ▼ 1 123 2 23 1
家族の了承が得られない 不選択
△ 980 ▼ 57
987 50 1002 35 917 23選択
▼ 24 △ 4
28 0 28 0 124 1料金が高い 不選択 833 52
▼ 836 △ 49
853 32 864 21選択 171 9
△ 179 ▼ 1
177 3 177 3自分が利用対象と気づかない 不選択
▼ 705 △ 57 ▼ 713 △ 49 ▼ 729 △ 33 ▼ 739 △ 23
選択△ 299 ▼ 4 △ 302 ▼ 1 △ 301 ▼ 2 △ 302 ▼ 1
交通手段がない 不選択 985 59 994 50 1009 35 1021 23
選択 19 2 21 0 21 0 20 1
遠方 不選択 846 46 851 41 859 33 871 21
選択 158 15 164 9 171 2 170 3
妊娠・出産に伴う疾患の罹患 なし
△ 851 ▼ 43
855 39 865 29 873 21あり
▼ 153 △ 18
160 11 165 6 168 3表 6 .妊産婦の属性と各クラスターの分散分析
変数名 育児による
利用困難群 不要認識群 機会逸失群 家族サポート
受容群
df
1df
2 F 値 平均値 標準誤差 平均値 標準誤差 平均値 標準誤差 平均値 標準誤差年齢 35.37 0.67 33.67 0.69 32.91 0.88 31.19 1.02 3 155 4.99 **
健康状態 2.74 0.12 2.82 0.12 3.68 0.16 2.78 0.18 3 155 8.97 **
子どもの人数 2.57 0.10 1.51 0.10 1.55 0.13 1.48 0.15 3 155 4.99 **
出産・育児の心配事を頼める人数 3.28 0.44 4.18 0.45 4.52 0.58 5.13 0.67 3 155 2.12 + 育児・家事のサポートを頼める人数 2.33 0.25 2.53 0.26 2.29 0.34 2.83 0.39 3 155 0.48 罹患あり(ダミー変数) 0.29 0.05 0.23 0.06 0.16 0.07 0.13 0.09 3 166 1.21
**p < .01, *p < .05, +p < .10
利用しない理由の選択肢と各クラスターの関連について確認する。「育児による利 用困難群」は「妊娠・出産に伴う罹患の疾患」を選択している回答者が多かった
(χ
2=8.68, df =1, p < .05)
。また、「育児による利用困難群」では「家族の了承を得られない」を選択している回答者が多かった
(χ
2=3.90, df =1, p < .05)
。すべてのクラスターにおい て「自分が利用対象と気づかない」を選択している回答者が少なかった(「育児による 利用困難群」: χ
2=15.23, df =1, p < .01;「不要認識群」: χ
2=18.03, df =1, p < .01;「機会逸失群」:
χ
2=9.19, df =1, p < .01;「家族サポート需要群」: χ
2=7.18, df =1, p < .01)
。妊産婦の属性については「子どもの人数」で有意差が確認され
(F(3, 155) = 24.86,
η2p
= .039, p < .01)、多重比較を行ったところ「育児による困難群」が残りのクラスター
に比べ高かった
(「不要認識群」: t(155) = 7.43, p < .01, d = 1.01;「機会逸失群」: t(155)
= 6.20, p < .01, d = 1.38;「家族サポート需要群」: t(155) = 6.01, p < .01, d = 1.48)。また、
「年齢」でクラスターの主効果が有意であり
(F(3, 155) = 4.98, η
2p= .088, p < .05)、多
重比較の結果、「育児による利用困難群」が「機会逸失群」に比べ高かった(t(155)
= 3.78, p < .01, d = .84)。「健康状態」に対しクラスターの主効果が有意であり、 (F(3,
155) = 8.97, η
2p= .148, p < .01,)多重比較を行ったところ、「機会逸失群」が残りのク
ラスターに比べ高かった
(「育児による利用困難群」 : t(155) = 4.79, p < .01, d = .1.07;「不
要認識群」:t(155) = 4.32, p < .01, d = .575;「家族サポート需要群」: t(155) = 3.75, p <
.01, d = 1.43)。また、「育児による利用困難群」は妊娠・出産に伴う疾患に罹患してい
る回答者の方が有意に多かった
(χ
2=3.90, df =1, p < .05)
。 3.5 2 項ロジスティック回帰分析利用しない理由のクラスターの特徴をより厳密に記述するために、クラスター分析 で得られた 4 つのクラスターと各変数の関連について検討した。特に「相談できる人 数」と「サポートを頼める人数」、「健康状態」と「妊娠・出産に伴う疾患の罹患」の 交互作用について検討した。具体的なモデリングは以下の通りである。
2 値
(所属する = 1 、所属しない = 0 )
に変換した各クラスターを目的変数とする 2 項 ロジスティック回帰分析を実行した。説明変数には「産前産後ケアセンターまでの距 離」、「年齢」、「子ども数」、「健康状態」、「相談できる人数」、「サポートを頼める人数」、「妊娠・出産に伴う疾患の罹患」を投入した。投入する交互作用項に応じて 2 つのモ デルを推定した。「健康状態」と「相談できる人数」「サポートを頼める人数」をそれ ぞれ交互作用項としたモデル
(以下 Model 1 )
、「妊娠・出産に伴う疾患の罹患」と「相 談できる人数」「サポートを頼める人数」をそれぞれ交互作用項としたモデル(以下
Model 2 )
を推定した。 表 7 にModel
1 の結果、 表 8 にModel
2 の結果を整理した。また交互作用に有意な効果が確認された場合には単純傾斜分析を行った。
表 7 .Model 1 の結果
変数名 育児による利用困難群 不要認識群 機会逸失群 家族サポート受容群
b SE Z b SE Z b SE Z b SE Z
切片 3.58 ** 0.22 16.50 3.15 ** 0.18 17.46 3.83 ** 0.23 16.36 3.95 ** 0.26 15.10
センターまでの距離(km) 0.00 0.01 0.63 0.00 0.01 0.57 -0.01 0.01 -0.88 0.01 0.01 0.51 年齢 0.10 ** 0.03 3.12 0.03 0.03 1.09 0.06 + 0.04 1.76 0.04 0.04 1.05 子ども数 1.01 ** 0.15 6.53 -0.51 * 0.21 -2.44 -0.69 ** 0.24 -2.90 -0.70 + 0.38 -1.83
健康状態 -0.48 * 0.21 -2.31 0.75 ** 0.17 4.54 -0.52 * 0.20 -2.53 -0.28 0.21 -1.31
出産・育児の心配を相談できる人数 -0.14* 0.06 -2.23 0.06 0.04 1.37 0.03 0.06 0.53 0.19 * 0.04 2.27 家事・育児のサポートを頼める人数 0.15 0.10 1.43 0.11 0.09 1.23 0.00 0.12 0.03 0.09 0.08 1.19 罹患ありダミー 0.86 * 0.36 2.39 0.71 + 0.37 1.90 -1.66 * 0.83 -1.99 -0.56 0.74 -0.75 出産・育児の心配を相談できる人数×
健康状態 0.10 0.07 1.34 -0.05 0.04 -1.38 -0.03 0.05 -0.52 -0.02 0.04 -0.41
家事・育児のサポートを頼める人数
×健康状態 0.15 0.12 1.17 -0.27 ** 0.09 -2.89 0.23 + 0.14 1.71 -0.27 * 0.12 -2.33
**p < .01, *p < .05, +p < .10
表 8 .Model 2 の結果
変数名 育児による利用困難群 不要認識群 機会逸失群 家族サポート受容群
b SE Z b SE Z b SE Z b SE Z
切片 3.48 ** 0.21 16.31 3.20 ** 0.18 18.11 3.81 ** 0.24 16.13 4.00 ** 0.28 14.34
センターまでの距離(km) 0.00 0.01 0.58 0.00 0.01 0.60 -0.01 0.01 -0.85 0.01 0.01 0.51 年齢 0.10 ** 0.03 3.13 0.03 0.03 1.03 0.06 + 0.04 1.66 0.04 0.04 1.01 子ども数 1.00 ** 0.15 6.68 -0.42 * 0.20 -2.12 -0.67 ** 0.24 -2.78 -0.65 + 0.38 -1.72
健康状態 -0.52 * 0.21 -2.49 0.70 ** 0.16 4.32 -0.53 * 0.21 -2.59 -0.38 + 0.22 -1.76
出産・育児の心配を相談できる人数 -0.13 * 0.06 -2.17 0.02 0.05 0.41 0.04 0.05 0.88 0.07 0.05 1.30 家事・育児のサポートを頼める人数 0.10 0.11 0.99 -0.01 0.10 -0.11 -0.08 0.16 -0.51 0.09 0.10 0.93 罹患ありダミー 0.79 * 0.39 2.05 0.26 0.44 0.58 -2.03 * 0.84 -2.40 -0.94 1.05 -0.89 出産・育児の心配を相談できる人数×
罹患ありダミー -0.10 0.18 -0.59 0.17 0.11 1.53 0.02 0.08 0.27 0.16 0.10 1.57 家事・育児のサポートを頼める人数
×罹患ありダミー 0.11 0.26 0.44 -1.15 ** 0.32 -3.59 -0.60 0.77 -0.78 -0.50 0.38 -1.33
**p < .01, *p < .05, +p < .10
主効果を確認する。健康状態が良好なほど「不要認識群」に所属しやすくなり、健 康状態が不良なほど「育児による利用困難群」「機会逸失群」に所属しやすくなった。
妊娠・出産に伴う疾患の効果をみてみると、罹患していると「育児による利用困難群」
に所属しやすくなり、「機会逸失群」に所属しにくかった。また「相談できる人数」
が多いほど「家族サポート受容群」に所属しやすく、「育児による利用困難群」に所 属しにくかった。
交互作用については、「相談できる人数」に関係する交互作用はいずれも有意では
なく、「サポートを頼める人数」に関係する交互作用の一部が有意となった。Model 1 の結果から確認する。不要認識群に対する「サポートを頼める人数×健康状態」が 有意
(b = -0.27, p < .01)
であった。単純傾斜分析を行ったところ、「健康状態」が良好 な場合(+ 1 SD)
、「サポートを頼める人数」は不要認識群への所属確率に影響しない が(b = -0.12, n.s.)
、「健康状態」が不良な場合(- 1 SD)
、「サポートを頼める人数」が多 いほど不要認識群への所属確率が高まった(b = 0.35, p < .01) (図 3 )
。家族サポート受 容群に対する「サポートを頼める人数×健康状態」の有意な効果が確認された(b =
-0.27, p < .05)
。単純傾斜分析を行ったところ、「健康状態」が良好な場合(+ 1 SD)
には「サポートを頼める人数」は家族サポート受容群への所属確率に効果がなかった
(b
= -0.14, n.s.)
。一方、「健康状態」が不良な場合「サポートを頼める人数」が多いほど家族サポート受容群に所属する確率が高くなった
(b = 0.33, p < .01) (図 4 )
。健康状態 が不良であっても、「サポートを頼める人数」が多いことで、「不要認識群」「家族サ ポート受容群」に所属しやすい傾向が伺えた。不要認識群
-5 -4.5 -4 -3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5
0 -1SD +1SD
健康状態 - 1SD 健康状態+ 1SD
家事・育児のサポートを頼める人数
図 3 .不要認識群へのサポートを頼める人数と健康状態の単純傾斜分析
家族サポート受容群
-6 -5 -4 -3 -2 -1
0 -1SD +1SD
健康状態 - 1SD 健康状態
家事・育児のサポートを頼める人数
+ 1SD
図 4 .家族サポート受容群へのサポートを頼める人数と健康状態の単純傾斜分析
次に
Model
2 の結果を確認する。Model 2 では不要認識群に対する「サポートを頼 める人数×妊娠・出産に伴う疾患の罹患」に有意(b = -1.14, p < .01)
な効果が確認され た。単純傾斜分析を行ったところ、罹患なし(- 1 SD)
と罹患あり(+ 1 SD)
の両方に 有意な効果が確認された(図 5 )
。妊娠・出産に伴う疾患に罹患した経験がない場合(- 1 SD)
には、家事・育児のサポートを頼める人数が増えるほど、サービス利用を「不 要」と感じる傾向があった(b = 0.41, p < .01)
。一方、妊娠・出産に伴う疾患に罹患し た経験がある場合(+ 1 SD)
には、家事・育児のサポートを頼める人数が少ないほど、サービス利用を「不要」と感じる傾向がみられた
(b = 0.43, p < .01)
。不要認識群
-4.5 -4 -3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5
0 -1SD +1SD
罹患なしダミー - 1SD 罹患ありダミー+ 1SD
家事・育児のサポートを頼める人数
図 5 .不要認識群へのサポート人数と妊娠・出産に伴う疾患の罹患の単純傾斜分析
4 .考察
本研究では、産前産後ケアセンターを利用しない理由に関する自由記述をテキスト マイニングにより集計・分類した。分析の結果、産前産後ケアセンターの利用しない 理由として 4 つのクラスターが得られた
(「育児による利用困難群」、「不要認識群」、「機会 逸失群」、「家族サポート受容群」)
。利用しない理由のクラスターの特徴を探索したとこ ろ、健康状態が不良なほど「育児による利用困難群」「機会逸失群」に所属しやすく、妊娠・出産に伴う疾患に罹患していた場合、「育児による利用困難群」に所属しやす かった。利用しない理由のみに注目すると「上の子の面倒を見る必要がある」「機会 がなかった」など、外部的な要因への帰属が確認されるが、背景を探るとケアサービ ス利用が適切なケースが隠れていると推察される。
さらに利用しない理由のクラスターと妊産婦の属性との対応関係について分析した ところ、健康状態と出産・妊娠に伴う疾患の罹患は、周囲からどのようなサポートを 得られるかと連動して、利用しない理由に影響を及ぼすことがみえてきた。特に注意
すべきは、妊娠・出産に伴う疾患に罹患した経験があり、かつ、サポートを頼める人 数が少ないほどケアサービスを「不要」とみなす傾向にあることが確認された。これ は、一定のサポート資源にアクセスできる環境になければ利用に結び付きにくいケー スが存在する可能性を示唆するとともに、健康面とサポート資源がともに不良な状態 にあることでサービス利用がますます難しくなる可能性を示唆している。妊娠・出産 に伴う疾患に罹患した経験を持つケースは、体調の悪化や回復が不十分な可能性があ る事を考えれば、ケアを受けることが望ましい。また周囲に家事・育児のサポートを 頼める者がいない場合も適切な休息やケアが必要となるだろう。本結果はケアが望ま しい状況にあるほど、これを「不要」と感じてしまうケースが存在することを示して いる。この点は利用者支援として介入すべきポイントであると推察される。
本研究では、健康面からはケアサービスの利用が適切である場合でも「上の子がい るから」「機会がなかった」などの理由を抱く可能性があること、加えて、身近に家 事・育児のサポートを頼める人がいない状況にいると、支援サービスを「不要」と感 じてしまう可能性が伺えた。諸井
(2012)
の指摘によると、自力による問題解決思考 が強まると援助要請の行動が抑制される可能性が挙げられている。また健康状態が不 良であるほど、産前産後ケアセンターを利用しない理由を多く保有する傾向も指摘さ れている(石川・遠藤・倉澤 , in printing (b)
)。以上の議論を踏まえると、本人が問題や状況をセルフモニタリングし、援助要請を 行う事は難しいと考えてよいだろう。また、本人が「ケアや支援は不要である」と表 明する背景には、健康状態の不良やサポートを頼める人数の不足など社会的な困難が 存在する可能性が伺えた。
本研究では身近なソーシャルサポート資源について「出産・育児の心配事を相談で きる人数」という情緒的サポート資源と、「家事・育児のサポートを頼める人数」と いう道具的サポート資源にのみに言及した。ソーシャルサポート資源にはこれら以外 にも、評価的サポートや情報的サポートが存在する
(Berkman, 2007)
。評価的サポート とは、どう行動をしたら良いかを判断する際に適切なフィードバックを与えるとい う、主に意思決定に関する援助である。情報的サポートは特定のニーズに応じた情報 の提供やアドバイスによる援助である。これらの多様なソーシャルサポートは個人に 対し強い影響を与えるため、ソーシャルサポートの欠如は産前・産後うつといった疾 患の危険要因であることが指摘されている(橋本 , 2008)
。今後は、サポートの内容が「地域ケアサービス利用」に与える影響について、より詳細に検討する必要がある。
サポート内容の重要性の延長にある課題として、利用者支援に加え、「支援者支援」
を視野に入れる必要がある。支援を提供する支援者にも「どうしたら目の前の人を助 けられるのか」、「本当に支援できているのだろうか」といった悩みや困難感を抱えて おり、利用者と同様に支援を必要としている場合がある。利用者の支援にあたり、支
援者が直面する困難を明らかにするとともに、適切な介入方法の研究蓄積に基づく知 見の提供を進める必要がある。
5 .謝辞
調査にご協力くださった山梨県保健部健康増進課及び、各市町村行政の皆様、回答 にご協力くださった妊産婦皆様に厚く御礼申し上げます。また調査設計の段階で子育 て支援の現状についてご教示くださった産前産後ケアセンターの施設長をはじめ関係 者皆様に感謝申し上げます。
本研究は科学研究費
(課題番号18K18614:挑戦的研究(萌芽)
)の助成を受けて行われ ました。引用文献