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子どもの発達支援と社会的視点

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Academic year: 2021

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子どもの発達支援と社会的視点

著者 糸田 尚史

雑誌名 社会保育実践研究

号 1

ページ 6

発行年 2017‑03‑24

出版者 名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科

論文ID(NAID) 120006342827

URL http://id.nii.ac.jp/1088/00001670/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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報告④ 子どもの発達支援と社会的視点 糸田尚史

(名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科)

幼児期の情緒・社会性に何らかの課題が窺われたときには神経発達症の有無に拘らず送迎つき単独通園で はない親子通園によって複数親子でのゲーム等から人間関係を築くような小集団指導がなされている地域が ある。そこでも思春期の反社会的問題や非社会的問題等を皆無にはできないが、修復的介入はまだ機能する という。しかし、幼児期の問題は先延ばしにする“事なかれ主義”なのに学童期以降まで子どもの反社会的 な症状行動が遷延すると今度はいっきに「施設に入れるぞ」等と脅す厳罰主義へと豹変する地域の事例への 対処は困難を極めるという。これは道内各地を異動してきた或る児童相談所長が語ってくれたことである。

北海道では平成元年度から、国の事業とは異なる北海道独自の事業として北海道障碍児早期療育システム 推進事業により、当時は 212市町村で構成されていた広域な北海道を、政令市である札幌市を除いて 67圏域 に分け、約十年をかけて各圏域に一か所ずつ多くは公立の「母子通園センター」と呼ばれる通園事業施設が 開設されてきた。そこでは、いわゆる「気になる子」たち(一時期グレーゾーンの子と呼ばれたこともあっ た)とその保護者が地域の保健センターや児童相談所等の積極的なサポートを得ながら親子で通園し、特別 支援教育の乳幼児版ともいえる療育や発達支援といったサービスを「無料」(税金の範囲内)で受けることが できていた。子どもに今でいう知的能力障碍、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、発 達性協調運動症などの発達症があってもなくても、どちらでも容易に情緒・社会性にかかわる対人交流や社 会適応のための専門的トレーニングを無償で受けられていた時代がかつて北海道には存在したのであった。

ところが、国も地方自治体も財政的に厳しくなり、高齢者や障碍者の障碍福祉サービス利用の厳格化・有 料化の波が子ども家庭福祉サービス利用の分野にも押し寄せてくる。発達支援事業を活用するには「受給者 証」を取得して利用料の負担をしなければ通えないハードルも加わった。成人の福祉領域などからおりて来 た本人だけの単独送迎といった新しいレスパイト的なサービスも、逆に複数親子が早期から親子通園をして 情緒・社会性の訓練を集団的に受けることを難しくさせてしまっている。かつては適切な指導・援助を予防 的に受けられた子どもも保護者も現在では障碍のはっきりしたタイプでなければ発達支援を受けられない。

北海道では全国に先駆けて先進的な事業を推進してきただけに時代に逆行する危機的な状況が進行している。

幼児期から「ルールがわからない」「ルールを守れない」「我慢ができない」「順番が待てない」「衝動的で ある」「乱暴である」「空気が読めない」「人の気持ちがわからない」「悪いことで他者の気を惹こうとする」

「人が嫌がることをする」などといった問題の徴候にせっかく早くから誰かが気づいていたとしても、「様子 をみましょう」と問題を先送りしなければならない古い社会システムに逆戻りしてしまっているのである。

情緒・社会性の問題を有していても発達症がなければもはや「障碍福祉」の領域では対応できない仕組み でしかないのだとしたら、代わりに「子ども家庭福祉」の領域で子どもの情緒・社会性の発達を伸長させる 社会の新しい支援システムを創造していくしかないともいえる。それが 20年後 30年後の日本社会で納税者 の過剰な税負担を抑制し、より安心・安全で自他ともに幸せな持続可能社会を構築していくことへと繋がる。

情緒・社会性の発達に課題を有する子どもたちに対するより早期からの発達支援(ソーシャル・スキル・

トレーニング等)は有効である。また、子ども虐待“予防”のためにも出先機関(地域子育て支援センター 等)だけでなく他職種との巧みな連携のできるリエゾン保育士の市町村本庁舎への配置等も推進されるべき である。あわせて、乳幼児の人間関係を育める親になってもらうための小学校・中学校・高校での教育プロ グラム等、これまでの社会教育だけではない「社会保育」という概念・制度・文化等を創出していきたい。

参照

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