高校生の親密性形成に影響を及ぼす自己開示 II 一ホームルーム担任教師と生徒の自己開示状況一
横 島 義 昭*・吉 田 昭 久**・小 熊 均***
(1996年10月14日受理)
The Effect on Intimacy Formation of Self−Disclosure among High School Students H
:The State of Self−Disclosure among Homeroom Teachers and Students
Yoshiaki YoKosHIMA*,Teruhisa YosHIDA**and Hitoshi OGuMA***
(Received October 14,1996)
はじめに
平成7年度に,不登校で30日以上休んだ小・中学生が約8万2千人にのぼったことが文部省の学校 基本調査速報で明らかになった1)との新聞報道があった。そして,この対策として「スクールカウン セラー」の派遣対象校を現行の全国約五百校から,来年度は約千校に倍増する方針を文部省が固め た2)と,報道された。このことは,社会問題化するいじめや不登校を解決するための一つの方策にな るであろう。しかし,子どもたちに起きる問題行動が,社会的病理現象を背景にしていることを踏 まえると,事後処理的対策だけではなく,学校教育に積極的な開発的介入の方策が早急に望まれる。
現代の子どもたちの心理的傾向は,同調性が高い反面,他に対して心理的距離をとり,内面的付 き合いをしないことを特徴としている3)。その一端が高校生の間で流行している電話やポケベルによ る気軽なおしゃべりの氾濫として表われている。休み時間ともなると,高校の公衆電話には列がで きるほどであり,まさに「おしゃべり洪水」4)の状況となっている。友人との直接的な会話よりも,
電話やポケベルによる間接的で表面的な会話が好まれているかのようである5)。電話やポケベルの会 話は,相手のまなざしを見つめながら,葛藤したり,共感したり,手を握りあったりするというも のではなく,個人という枠の中に閉じこもり,つぶやきの交流であり,見えない相手との遊戯化の 側面をも持っている6)。このように,表面的で間接的な会話が氾濫しているが,心を開き,内面的で 直接的な会話は行われない傾向のようである。このことは,友人関係が希薄になっていることを示
している。同性同年輩交友関係の希薄化の原因は,現代社会のあらゆる場面でみられる,集団性の
*茨城大学大学院教育学研究科教育臨床心理学研究室/茨城県立下館第一高等学校.
**茨城大学教育学部教育臨床心理学研究室.
***茨城大学教育学部教育心理学研究室.
弱化や学歴社会化によって引き起こされた人間関係の希薄化によるものであると考えられる。
そこで,筆者らは,前論文において,希薄な人間関係とは親密性が形成されていない状態である と捉え,親密性形成の重要性と,さらに,親密性形成を促進するための自己開示の必要性を指摘し た7)。親密性とは,人と人とが率直にかかわり合うことである。それは,相互の交流から生まれ,人 間関係の成長発達において不可欠なものである8)9)10)1D12)。また,自己開示とは,自分自身に関する情 報を他人に言語を介して伝達する行為である。筆者らは,親密性形成を促進するためには,直接的
な伝達手段としての言語表出を重視している13)14)15)16)。
学校教育の一つの課題は,同性同年輩関係が希薄化している高校生段階での親密性を如何に形成 するかである。そのために,開発的介入としての「心理教育(psychoeducation)」の実践が望まれる。
そこで,その実践に先立って,より適切な実践を模索するためには,ホームルームにおける人間関 係の実態を的確に把握する必要がある。
以上のことより,本稿では,ホームルーム担任教師と生徒の自己開示の現状を明らかにし,さら に,生徒の親密性を形成するための方略について検討する。
1 自己開示に関する理論的検討
1−1親密性形成過程における自己開示の機能
人と人は出会い,相互に自己開示し合うことによって親しくなり,親密性が形成される。そして,
親密性が形成されるにつれて,よりいっそうの内面的な自己開示をするようになるm。
内面的自己開示と好意との関連についてのこれまでの研究には,内面性の効果が認められなかっ た研究,あるいは内面性と好意の間に逆U字型の関連が示された研究とがある18)。しかし,中村は,
内面的な開示を行う人物は,表面的な開示を行う人物よりも好意が持たれることを明らかにしてい る19)。この内面的自己開示における情報とは,独自性が高い,可視性が低い,社会的に望ましくない 側面が含まれる,強い感情を伴うという特徴を持つものである20)。このように,内面的な自己開示が,
相手に好意の感情をもたらし,親密性形成に影響を与えるものと言えよう。
サリヴァン(H.S.Sullivan)は,友だちとの間で親密性(intimacy)の感情が体験される関係を親友 関係と捉え,さらに親友関係について,次のように述べている2D。親密性を作りあげる能力を獲得す るのに最良の時期は,児童期後期すなわち前青春期である。この時期に健全な親友関係が持てない と,青春期や成人期において親密性を発展させるのに苦労する。
親友関係の形成の時期を,竹内は前思春期から思春期22),また笠原は青年期前半%)と捉えており,
ほぽサリヴァンの見解と一致する。一般的に,高校生の交友関係においては,友人の数が減少する かわりに,友人を厳選する傾向が強くなり,人格的に影響を及ぼし合うような親友を望むようにな る鋤。つまり,より成熟した親友関係は,高校生時代に成立するものと言えようお)。
この親友関係の形成は,自己開示との関係で,以下のように段階的に発展していくことが明らか
にされている26}。
① 知り合いの段階:知り合ったばかりの人や親しくない人には,本当の意味での自己開示はし ない。いわばヨロイで心をおおったまま付き合う。このような場合,会話や付き合い方は,表
面的かつ形式的なものに留まる。
②友人形成段階:相互に,この人とは友だちになれそうだと思い,双方が少しずつ,表面的な 自己開示を始める。相互的で,互いに同じくらいずつ,徐々に自己開示をし合う。
③ 親友形成段階:相互に,内面的な自己開示をし,関係が発展し,親友になる。二人は互いに 心の中の深くまで知り合う。
このように自己開示の発展とともに同性同年輩関係は,知り合いのレベルから友人,そして,親 友のレベルへと進展していく。親友関係をつくる過程で,自己開示の機能は大きい。
では,何がこの自己開示を発展させるのか。それは,返報性(reciprocity)の現象である。この現 象に関して,最初に注目したのが,自己開示研究の先駆者であるジュラード(S.M.Jourard)であっ た27)。自己開示の返報性とは,自己開示の受け手が,同じ程度の深さの自己開示を送り手に返す現象 のことである28)。この返報性がなぜ起きるのかには諸説があり29),一概に特定はできないが,次のよ うな代表的な仮説がある。
① モデリング仮説:ルービン(Z.Rubin)は,不特定多数の人と会える飛行場において自己開 示の実験を行い,次のことを明らかにしている30)。実験者が被験者にモデルとなる手掛かりを提 供すると,モデリング(modeHng)のメカニズムによって,返報的な自己開示を引き出すことが できた。これは,相手の行動の模倣としての返報である。
② 信頼一好意仮説:ルービンは同じ飛行場の実験において,実験者が被験者個人にメッセージを 送ると,そのメッセージが信頼(trust)や好意(liking)に基づいたものであると被験者に認知
され,相手に対する好意も高まり,自己開示を引き出すことができた。
③ 社会的交換仮説:コズビー(P.CCozby)は,対人関係における自己開示の役割について次 のように述べている3D。対人関係の成長は,対人報酬(interpersonal reward)と関係している。対 人関係が,非親密な領域から,親密な領域へと発展するかどうかは,返報によってもたらされ た結果が,報酬か損失かという計算を通して決定される。
このように,相互の自己開示は,モデル,信頼,好意,報酬等が媒介となっている。このことか ら,開示者自身が,相手から自己開示の返報があることを常に意識して,自己開示することが必要
となる。
これまでに,内面的自己開示の重要性を述べてきた。しかし,アルトマンら(1.Altman et aL)は,
自己開示の深さ(depth of self−disclosure)だけではなく,自己開示の広さ(breadth of self−disclosure)
も対人関係に影響を与えているとして,次のように述べている32)。知り合い程度の人(average man)
との自己開示の場合は,話題はかなり広がり,個人的な話題にまで話が及ぶ。しかし,あまり深く 自己開示はなされない。親友(best friend)との自己開示の場合は,自己開示は広い範囲にわたり,ま た個人的話題についても深いところまで開示される。
これらのことは,親密性形成には内面的自己開示とともに,多領域の自己開示も不可欠であるこ とを示唆している。
以上のように,内面的かつ多領域的な自己開示は,親密性を形成させ,さらに親友関係を成立さ せることに効果がある。では,実際に高校生の自己開示は,高校生自身の発達課題にどんな役割を 果たすのか。また,その自己開示を促進するために,教師はどんな態度で臨めばよいのかが問題と
なる。
1−2生徒と教師の自己開示の意義
(1)高校生の発達課題における自己開示の意義
高校生が親友関係を形成する時に,内面的で多領域的な自己開示が不可欠となるが,実際には,現 代高校生の同性同年輩における人間関係は,どうなっているのであろうか。
NHK世論調査33)の結果は,高校生の親友の数とその付き合い方が,この10年間で大きく変化して いることを,次のように指摘している。
親友の数を「4人以上」とする者は,37.8%から55,0%へと増え,人間関係が広がっているように みえる。これは,現代の高校生が,心を開かない友人関係であっても,それを親友関係と認識して いるためであろう。一方,親友との付き合い方をみると,「なんのかくしだてもなくつきあう」が68.6
%から67.6%へと減少し,逆に,「心の深いところは出さないでつきあう」と「ごく表面的につきあ う」の和が25.6%から29.3%へと増えている。親友との付き合いで心を開かない高校生は,4人に1 人の割合から3人に1人の割合となっている。このように,親友といわれる友人の数は,かなり多い にも拘らず,比較的浅い表面的な付き合いのものが多くなっていることを示していよう。
高校生は,親密性を形成し,真剣に相互的なやり取りをし,深く人格的に交わるというような真 の親友関係を持つことが困難になっている鋤。親友関係を持てない高校生は,発達課題からみて,重 大な問題があると言えよう。なぜならば,自我形成の再点検のうえで,あらためて自分とは何かを,
他者や社会との脈絡の中で明確に確認し,さらに能動的で安定した主体性の実感を体得する課題が 成し遂げられないからである35)。つまり,それは,エリクソン(EH.Erikson)の述べた自我同一性 の確立が達成できないことを意味する。エリクソンは,青年期に体験される自我同一性の感覚(asense of ego identity)を,「内的な不変性と連続性を維持する各個人の能力(心理学的意味での個人の自我)
が,他者に対する自己の意味の不変性と連続性とに合致する経験から生まれた自信」36)と述べている。
このように,自我同一性とは,確信を持って自己理解をしている状態のことと言える。自我同一性 が確立していない状態においては,対人的かかわり合いに拒否や孤立などがみられる。また,自我 同一性の混乱が,神経症,無気力症,非行などの原因となる場合が少なくないことも指摘されてい
る37)。
現代は,集団性が弱化し,人間関係が希薄化して多様な人間関係を体験できない状況となってい ることはすでに指摘した。このために,高校生は親友関係を持つことができず,また,自我同一性 を確立することが困難になっている。この自我同一性を確立するためには,自己開示の機能が有効 に働くと言えよう。その理由は,自己開示の持つ機能認)39)には,親密な人間関係を促進する機能や,
自己理解を深める機能があるためである。それらを詳述すると,次の通りである。
まず,親密な人間関係を促進する機能について述べよう。前述したように,返報性によって相互 の自己開示が進展し,親密性が形成され,親友関係が成立する。この親友関係は,自我同一性を確 立する過程において有効に働く。
次に,自己理解を深める機能について述べよう。ロジャーズ(C.Rogers)は,「自己を自由に表現 することによって,抑圧されている感情や態度から情動的に開放され,同時に,自己理解も明らか になり,合理化したり,否認したりという防衛なしに,自分の様々な様相に直面できるようになる」
40)と述べて,自己表現が自己理解を促進すると示唆している。また,ジュラードは,「人間が自分を 他の人に開示する行為と経験を欠くと,自分自身を知ることができない。人は自分自身を十分に他
の人に開示することができるようになった時に,真の自己(real self)との接触がどうすれば豊かに なるかを学ぶ」41)と述べて,自己開示が自己理解を促進させると主張している。このように,確信を 持って自己理解のできる状態が,まさに自我同一性の確立している状態ということができる。
以上のように,自己開示には,親友関係と自己理解を促進する機能がある。このことから,高校 生の発達課題としての自我同一性の確立にとって,自己開示の果たす役割は大きいと言えよう。
(2)生徒の自己開示を促進する教師の自己開示の意義
生徒の親密性形成や自己開示を促進するためには,ホームルームの構成員の一人である担任教師 の役割も大きい。しかし最近においては,担任教師と生徒の関係は希薄になっていると言えよう。
前出のNHK世論調査によると,担任教師と高校生との付き合い方が,この10年間で変化している ことが指摘されている42》。担任教師との付き合い方をみると,「なんのかくしだてもなくつきあう」
が10.3%から8.8%へと減少し,逆に,「心の深いところは出さないでつきあう」と「ごく表面的に つきあう」の和が,87.7%から89.6%へと増えている。担任教師との付き合いで,心を開かない高校 生は,約9割となっている。このように,生徒と担任教師との付き合いは,浅く表面的なものになっ ていると言えよう。
担任教師と生徒との関係が希薄になっている状況を打開し,より豊かな人間関係を作りあげるた めには,教師側からの積極的かつ意図的な働きかけは不可欠の課題であろう。教師と生徒が親密性 を形成するうえで,パターソン(A.H.Patterson)の「対人間親密性の覚醒モデル(the arousal mode1 of interpersonal intimacy)」の理論は,示唆に富むものである43)。その理論は,次の通りである。
相手の人が,今までのレベルと違う親密性の行動をとった時,その程度が小さい場合は,さして 気にならず,対応行動に変化は起こらない。しかし,親密度の変化が大きいと,覚醒状態となり,そ の予想を超えた行動に対応する行動が起こされる。その時,相手の行動にどのようなラベリング
(emotional labelling)をするかにより,対応の仕方は決定される。不安,不快,困惑などネガティブ な情緒を感じた場合,対応は報復的(compensation)になる。たとえば,近寄ってきたら,無視した り離れたりする。一方,好意(1iking),愛,安堵などポジティブな情緒を感じる場合,自分の水準も 変化させ,相手と同様の行動で返報(reciprocity)する。たとえば,話しかけられたら,自分も話を
し,近づいてきたら,自分の方からもさらに近づく。この返報的行動が相手に伝わると,相手の人 は自分の是正した親密度が受け入れられたことを知り,相互の親密性は深あられていくことになる。
このように,受け手がポジティブな情緒を感じると,返報し,相互の親密性は深められる。この モデルを教師と生徒の人間関係に当てはめてみると,生徒が好意などのポジティブな情緒を教師か ら感じた時,教師と同様の行動で返報し,両者の親密性は深められる。このことは,教師の自己開 示の行動が,生徒から好意的に受け入れられる時,生徒も同様の自己開示を返報し,親密性が形成
されることを示唆する。
このことから,教師と生徒の関係が疎遠になっている現状は,教師の自己開示の絶対量が少ない か,あるいは,教師の自己開示が生徒にネガティブな情緒を感じさせていることに原因があると考 えられよう。なぜ教師が自己開示をしないのか,あるいは,なぜ教師が生徒にとって非好意的な自 己開示を行ってしまうのか,この点を解明することは教師の資質向上を問題とするとき,今後の課 題になると言える。このことの背景には,教師たる者は常に威厳を持って生徒に対応しなければな らぬという信念が,教師の自己開示に抵抗感を植え付けているといったことが考えられ,また,教
師自身も心を開いた付き合いをしない現代青年と同じ線上にいるということも考えられよう。
一般的に,人は好意をもっている人に対しては,親和的行動を進んでとろうとするが,嫌悪の感 情を持っている人に対しては,親和的・依存的行動が控えられ,逆に攻撃的・拒否的・回避的行動 が引き起こされやすいという44)。このように,好意が生徒の親密性形成に影響を与えている。生徒か
ら好意的に受け入れられる教師を,ただちに優れた教師と考えることは危険であるが45),生徒の自己 開示を促進し,親密性を深めるために,生徒から好意的に受け入れられる自己開示を,積極的に行
うことは,教師にとって大きな意義があると言えよう。
H 質問紙調査の実施
H−1質問票の作成
(1)予備調査の実施
調査票を作成するために,予備調査を次の通りに実施した。調査協力校は,農業科高校と普通科 高校の2校である。いずれも,茨城県の地方都市に立地する公立の男女共学校である。調査協力生徒 76名の内訳は,表1の通りである。調査時期は,1995年11月下旬から12月上旬である。
調査形式は・設問1の生徒自身の自己開示と・設問2 表1 予備調査協力者の内訳(人)
学級担任の自己開示とについて,自由記述での記入によ
@ 高校っている。 2年
j子 2年
落q 合 計
設問1の質問内容は・学校にいる時・仲のよい同性の 農業科高校 25 12 37 友だちに対してどんな話をしているかを,「気軽に話せる
普通科高校 19 20 39 内容」,「まあ話せる内容」,そして「話しにくい内容」に
分けて問うている。この結果を,開示内容の深さ別に整 合計 44 32 76 理し,それを延べ数で表わしたものが表2である。また,
得られた話題をその内容から,10領域に分類し, 表2
対友人自己開示内容の深さ別話題(延べ数)
整理したものが表3である。
分 類
氓ノ,設問2の質問内容は,これまでに受け持 男 子 女子 合 計
ちとなった学級担任の先生がどんな話をしてくれ 気軽に話せる内容 113 102 215 たのかを,「学級全体を対象にした場面」,「何人か まあ話せる内容 78 50 128
話しにくい内容の小集団を対象にした場面」,そして「1対1の場 64 38 102
面」の3場面において,それぞれに「好感が持て 合 計 255 190 445 た話」と「好感が持てなかった話」に分けて問う
ている。この結果を,開示の場面別に整理し,それを延べ数で表わしたものが表4である。また,得 られた話題を,その内容から8領域に分類し,さらに,「好意的な話題」と「非好意的な話題」に分 けて,整理したものが表5である。
以上の予備調査の結果を,後述のように本調査の作成の際に資料として使った。
(2)対友人自己開示度調査票(調査1)の作成
一
対友人自己開示度 表3 対友人自己開示の主な話題
調査票は,高校生の 領 域 主 な 話 題
ホームルーム生活にお (1)身体像・性格 性格,ダイエット,性格の悪いところ,欠点,性格の嫌なところ,今の自分
ける自己開示状況を明 ②不安・悩み 悩み,性格上の悩み,家庭での悩み,家族の悩み,友人関係の悩み,勉強の Yみ,進路の悩み,異性の悩み,恋愛関係の悩み,色々な悩み,本当の悩み,
らかにすることを目的 容姿の悩み
(3)体験・思い出 小中学校の思い出,悪さをしたこと,ドジったこと,恥ずかしいこと,恥を
としている。具体的に かいたこと,私生活,昨晩の夢,過去の話,本当に感動したこと,辛かった
は,友人に対する生徒 こと,悲しかったこと,やばいこと,秘密にしていること,腹が立ったこと,
{られたこと,自分の臼慢話,失敗談 の自己開示が,どの話 (4)学業・進路 勉強,成績,テスト結果,進路,将来のこと
題で多いのか,そし ⑤家庭生活 家族,家庭環境,家庭事情,親への不満・文句,親との確執,身内話,
ニ庭での出来事,家庭問題
て,男女差があるのか ㈲学校生活 授業,先生の行動,先生の悪口,先生の評価,学校行事,学校の出来事,
部活動
を明らかにする。 (7)嗜好・趣味 好み,趣味,バイク,ゲーム,音楽,テレビ番組スポーッ,漫画,遊び,
前述した予備調査の お金,バイト,車,映画,雑誌,洋服,ファッション,化粧品,本,小説,
pソコン,麻雀
設問1の結果と先行研 ⑧友人関係 友達,友人関係,うわさ話,悪口,先輩の話
⑨異性関係 異性,好きな入,恋愛,すけべな話,性欲,SEXしたこと,失恋,
究とを検討して,質問 エッチな話
票の領域分類と質問項 ⑩社会観 社会情勢,面白いこと,事件,世間話,身の回りの人の行動,経済,
jュース,新聞政治,朝食のこと,金銭関係 目の選定を行った。基
本的には,予備調査で 表4 生徒の認知する担任教師の自己開示の場面別話題(延べ数)
分 類 男 子 女 子 合 計
得られた話題をもとに 学級全体を対象にした場面 好意的 31 31 62 非好意的 ,Q4 17 41 103
選定したが,さらに, 好意的 20 23 43
何人かの小集団を対象にした場面 64
非好意的 12 9 21
ジュラードらの作成し
好意的 31 17 48 80
た自己開示尺度 1対1の場面 非好意的好意的 2482 718 15332
(JSDQ)46),その邦 合 計 非好意的 60 34 94 247
訳47)48),そして,児童 表5 生徒の認知する担任教師の自己開示の主な話題
生徒を対象とした先行 領 域 好意的な話題 非好意的な話題
研究の調査票49)50}51)52) 1 ・ wみ
②家族生活 子供,家族,私生活,愛犬,彼氏の話 を参考にした。 、 、
s, 子・ ,局 ・ ,子 ・ 日 の 』,古力蕎, の言,
の恋愛,子どもの頃,人生の印象深 失敗談
領域の分類は,先行 い出来事,失敗談,受験,苦労話,昔
研究で設定された身 話,笑い話,若い頃,面白い体験談,
ャ功した思い出,新婚旅行,頑張っ
体,趣味,学校生活, たこと
(4肚事 教科の面白いところ,自分の職業選 他の先生の文句
性格,社会観,友人関 択,薄給,部活指導,熱中している仕 磨C学校への不平不満
係,そして異性関係の ⑤嗜好・趣味 趣味,本の感想,本の紹介,遊び, 自慢話,ひいき,テレビ番組,愚痴 スポーツ スポーツ の
7領域に,さらに家庭 ㈲生徒の生活 学級,学校生活の過ごし方,励まし, 修学旅行,宿泊学習,服装,校則,
生活と学業・進路を加 学校の良い面,生徒の体質,掃除の d方,部活動,生徒本位の指導
一方的な説教,授業態度,生活態度,
ヲこひいきの生活指導
えて9領域とした。家 (7)生徒の学業・@進路 進路,職業,就職,将来,大学受験,
蜉w選択法,専門学校,就職難,
テスト,テスト結果,進路,成績,
ャ績不振者,現実の厳しさ,進学,
庭生活を入れた理由 (8)社会観・人生 勉強法 職業の紹介好きな言葉,掃除,事故,福祉, 独善的な進路対策宗教,長い話,くだらない話,
は,予備調査で頻度が 観 宗教,格言,社会的事件,社会的な出
?磨Cワイドショーねた,CMニュ
だじゃれ,自分だけの考え,
ッなす話,愚痴話,ひどい悪口,
とくに高かったことに 一ス,冗談,くだけた話,気軽な話, 人間不信の話 世間話,恋愛観
よる。また,学業・進
路を加えた理由は,高校生のアンケート調査53)の結果を検討すると,学業・進路は高校生の悩みの 上位にランクされており,自己開示の話題として頻度が高いと考えたことによる。
以上のことにより,9領域27項目としたが,その9領域の特徴を表わしたものが表6である。また,
27項目を領域別に表わしたのが,表7である。 ,
評定基準は,先行
表6 対友人自己開示度調査票(調査1)・対教師自己開示度調査票(調査皿)の領域 研究をもとに検討した
領 域 項目内容の特徴
結果,「非常によく話 (1)身体像 (body images) 主として自己の身体面や外見に関ること す」,「やや話す」,「ど (2)性格・体験 (personality and experiences) 主として自己の性格や体験に関ること 一
ソらとも言えない」, (3)学業・進路 (studies and careers) 主として自己の学業や将来の進路に関ること
(4}家族生活 (family life) 主として自己の家庭生活や家族に関ること
「あまり話さない」,そ
(5)学校生活 (school life) 主として自己の学校生活に関ること
して「まったく話さな {61嗜好・趣味 (tastes and interests) 主として自己の嗜好や趣味に関ること い」の5段階評定とし, (7)友人関係 (friend relations) 主として自己の友人関係に関ること
各項目の回答について (8}異性関係 (the othersex relations) 主として自己の異性関係に関ること
(9)社会観 (opinions of society) 社会情勢についての自己の意見に関ること
は,順に5点から1点
を与えた。質問項目は,乱数表を使ってランダムに配列した。
(3)生徒の認知する担任教師の自己開示度調査票(調査H)の作成
生徒の認知する担任教 表7 対友人自己開示度調査票(調査1)・対教師自己開示度調査票(調査皿)の項目 師の自己開示度調査票は, 項目番号
高等学校のホームルームに
領 域 調査1 調査皿 項 目 21 17 自分の容姿をどう思っているかについて
おいて,ホームルーム担任 (D身体像 26 7 頭痛・不眠・食欲不振など自分の健康状態について
教師の自己開示の状況を明 1 19 自分の性的なことについて
23 16 自分の性格のなかで嫌いなところについて
らかにすることを目的とし ②性格・体験 15 12 自分の今の不安や悩みについて
ている。具体的には,担任 18 2 自分が失敗したことについて
8 11 勉強の仕方がわからず困っていることについて
教師の自己開示が,どの話 ③学業・進路 27 23 自分のテストの結果や成績について
題で多いと生徒から認識さ 17 9 自分の将来の進路や希望について 6 18 自分の家庭生活での出来事について
れているかを明らかにす ㈲家族生活 4 15 自分の家庭の経済状態について
る。質問の形式は,生徒に 13 4 自分の親の態度や考え方について
ll 5 先生の態度に対して自分がどう思っているかについて
教師の自己開示を評定させ ⑤学校生活 5 26 授業に関して自分がどう思っているかについて る形とした。 14 21 学級の雰囲気に関して自分がどう思っているかについて
質問票の領域分類と質問 3 14 自分の好きな洋服について
㈲嗜好・趣味 22 13 自分の好きなテレビ番組・音楽・漫画について
項目の選定は,前述した予 19 25 自分の好きなスポーツについて
備調査の設問2の結果と先 25 8 友人の行動や考えを自分がどう思っているかについて
(7)友人関係 10 6 自分の親しい友人の名前・性格・家庭などについて
行研究駒踊6}とを参考にし
12 3 自分の友人関係での心配なことについて
た。すでに述べたように, 16 1 異性の行動や考えを自分がどう思っているかについて
親密性の形成には,開示者 ⑧異性関係 20 27 自分の好きな人の名前・性格・家庭などについて 7 24 自分の異性関係での心配なことについて
の自己開示の深さと被開示 24 22 社会に起こった出来事に対する自分の考えについて
者の認知した好意が影響を ⑨社会観 2 10 今の政治や経済に対する自分の考えについて 9 20 同世代の若者の行動に対する自分の考えについて
与えていることから,教師
の自己開示の深さと教師の開示内容に対する生徒の好意の程度とを組み合わせて,領域を選定する こととした。
まず,自己開示の深さによって,内面的自己開示と表面的自己開示とに分節した。内面的自己開 示とは,独自性が高い,可視性が低い,社会的に望ましくない側面が含まれる,強い感情を伴うと いう特徴を持つものであるために,身体,性格,仕事,将来,学業,進路,家庭,親友,そして恋 人に関する項目を選定した。一方,表面的自己開示は,友人,異性,学校,社会,趣味,スポーツ,
興味,そして関心に関する項目を選定した。
次に,教師に対する生徒の好意の程度によって,好意的自己開示と非好意的自己開示とに分節し た。教育現場において,教師が自己開示を盛んにしているにも拘らず,生徒との間に親密性が形成 されないことも見受けられる。このことは,教師の自己開示の深さだけではなく,教師の自己開示 に対する生徒の好意の程度も親密性形成に大きな影響を与えることを示唆している。
表8 生徒の認知する担任教師の 表9 生徒の認知する担任教師の自己開示度調査票(調査H)の項目
自己開示度の視点 領 域 項目番号 項 目
ω好意的 7 先生が自分の体をどう思っているかについて
b 内面的 表面的 内面的 16 先生の性格の好きなところについて
a (intimacy) (superficiailty) 14 先生の恥ずかしかった出来事について
8 先生の家庭生活での楽しいことについて
好意的 (1)好意的な ②好意的な 10 先生の将来の夢や希望について
(liking) 内面的自己開示 表面的自己開示 ②好意的 4 先生の学生時代の楽しい思い出について
表面的 2 先生の好きな飲み物や食べ物について 非好意的 ㈲非好意的な ㈱非好意的な 11 先生の友人の面白い出来事について
(unliking) 内面的自己開示 表面的自己開示 19
P2
先生の好きなテレビ番組や音楽について ミ会で起きた出来事に関する先生の考えについて a:教師の自己開示に頬する生徒の好意程度 ③非好意的 6 先生が生徒に関して非常に腹の立つことについて
(student s liking of teacher sself−disclosure) 内面的 13 先生の家庭で起きた深刻なもめ事について
b:教師の自己開示の深さ 17 先生の体験した不愉快な出来事について
(tercher s depth of self−disclosure) 3 ほかの先生に対するひどい悪口について
20 先生の過去の経歴に関する自慢話について
(4)非好意的 18 校則を守らない生徒に対する先生の考えについて
表面的 9 学級全体に対する一方的な批判について 15 成績の悪い生徒に対する先生の考えについて
1 生徒の進路に対する先生の一方的な考えについて 5 バイク,ゲーム,漫画等に対する一方的な批判について
以上のことから, 教師の自己開示の深さの視点と教師の自己開示に対する生徒の好意の程度の視 点とを組み合わせて,表8のように4領域を設定し,表9のように20項目を選定した。評定基準とそ の得点化,さらに質問項目の配列は,調査1の調査票作成と同様である。
(4)対担任教師自己開示度調査票(調査皿)の作成
対担任教師自己開示度調査票は,教師に対する生徒の自己開示が,どの話題で多いかを明らかに することを目的としている。また,調査1と対照させて,生徒の自己開示が,対友人と対教師との 比較で,どちらに多いかも明らかにする。
対友人自己開示と対担任教師自己開示との比較をするために,調査1の調査票と同じ質問項目を 使う必要があることから,調査1と同様の作成手順をとって,調査皿の調査票を作成した。ただし,
質問項目の配列は,新たに乱数表を使ってランダムに行った。
H−2調査の実施
以上の手続きにより作成した調査票を用 表10 本調査協力者の内訳(人)
いて,調査を行った。調査時期は,担任教師
男 子 女 子
と生徒との人間関係が形成されていると考え 高 校 合 計
られる年度末の1996年3月上旬から中旬であ 1年 2年 1年 2年 る。調査実施日が3年生の卒業式後であった
A 校 37 21 35 15 108
ために,調査対象生徒は,1年生と2年生で B校 一 14 『 64 78
ある。調査協力生徒417名の内訳は,表10の通 c校 42 } 36 一 78 りである。調査協力校は,茨城県県西地区の D 校 42 34 39 38 153 地方都市に立地する公立高校4校である。い 合 計 190 227 417 ずれも,学力は中学校時代の成績が中レベル
以上の生徒が入学する高校であり,特にD校は進学校である。また,いずれも,男女共学であるが,
B校は数年前まで女子校であったために現在も女子の比率が高い。調査にあたっては,生徒の心理的 負担を考慮し,無記名方式で各ホームルームごとに集団調査で行う。調査の実施者が,調査用紙を 各生徒に配布し,回答方法について説明した後は,生徒が自由に記入する方式である。回答に要し た時間は,約20分であった。
皿 ホームルーム担任教師と生徒の自己開示状況の検討
皿一1友人やホームルーム担任教師に対する生徒の自己開示状況
(1) 自己の内面的話題と政治経済話題とが少ない高校生の自己開示の状況
まず,ホームルームにおける友人関係を見るために,生徒が友人にどのような自己開示をしてい るか,その状況を明らかにする。「対友人自己開示度調査」の結果を,「非常によく話す」と「やや 話す」の割合の和を, グラフ化したものが図1である。
ユ臼@
9臼 囮:非常に話す 圓:やや話す
冒,,,冒,層曹.冒●7一辱甲 8図
7曾 卿.幽. ●一幽・.幽 辱・.,層,−o曜冒甲
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図1 生徒の対友人項目別自己開示度
自己開示度が60%以上の項目(括弧内の数値は%を示す)は,嗜好・趣味領域の「テレビ番組」
(89.6),学業・進路領域の「テスト成績」(71.6),学校生活領域の「先生の態度」(68.7)と「授業」
(63.3),性格・体験領域の「自分の失敗談」(65.6)の5項目であった。これらの話題は,表面的な 自己開示と言えるものである。なお,「自分の失敗談」は,自分自身に関する話題であるため,内面 的自己開示として設定したものであったが,高い開示度を示していることから表面的な開示話題と 推量できる。
一方,自己開示度が30%以下の項目は,社会観領域の「政治経済」(13.1),家庭生活領域の「自 分の家庭の経済」(16.5),身体像領域の「自分の容姿」(26.1),そして性格・体験領域の「自分の 性格」(27.0)の4項目であった。これらの話題は,生徒自身の容姿,性格と家計などに関する内面 的自己開示と,さらに,政治経済についての自己開示となっている。
ジュラードらは,身体像,性格の領域に比べて,嗜好・趣味,勉強と社会観の領域が高く自己開 示される57)と指摘している。また,ジュラードらとほぼ同じ質問票によって調査した加藤は,身体 像,性格,そして社会観に比べて,嗜好・趣味と学校生活の領域が高く自己開示されたことを報告 している詔)。本研究の結果もこれらと同様に自己開示度が高かった領域は,嗜好・趣味,学業・進路,
そして学校生活であった。しかし,ジュラードらの調査では社会観に関する自己開示が高いのに対 して,加藤や本研究では低い結果となり違いがみられた。これは,日米の青年の間での社会観の違 いからきているものと思われる。第5回青年意識調査報告書59)によると,「社会に不満を持ったとき の態度」として,「積極的な行動はとらない」と「かかわり合いを持たない」が,アメリカでは全体 の約4割であるのに対して,わが国では約7割にもなる。これは,わが国の青年が政治経済等の社会 問題に対して,無関心であることを顕著に示唆していると言えよう。
高校生の自己開示でとりわけ多かったのが,テレビ番組などについての話題であった。テレビを 見ていなければ,友だちとの会話には入れないと言われるほど,テレビは友人関係維持のために不 可欠なものとなっており,テレビに関する話題は友達の話と絡み合いながら中学生・高校生の生活 の一部になっているようである60)。
以上のような自己開示状況から,場が盛り上がるように,「ネアカ」な話題でおもしろおかしくお 喋りし合う高校生の会話の様子が浮かんでくる。そこでは,学校生活やテレビ番組に関する表面的 自己開示が好まれるが,自分自身に関する内面的自己開示は避けられ,また政治経済の重い話も敬 遠される。まさに同調性は高いが,心理的距離をとり,内面的な付き合いはしないという現代青年 の特徴が,話題の中に表われているものと言えよう。
(2)男子に比べて内面的話題の多い女子の自己開示の状況
次に,友人に対する生徒の自己開示における男女差を明らかにする。一般的に女子はお喋りとい われるが,実際にどの話題で男女に違いがあるのか,また,内面性の違いはあるのかを検討した。「対 友人自己開示度調査」の結果から,男女別に評定平均値を線グラフ化したものが図2である。
4.5
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2.5
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事 図2 生徒の対友人自己開示の男女別評定平均
このグラフは,評定平均値が高いほど自己開示的であることを示している。全項目の平均値の合 計から総平均値を求めると,男子は3.03点,女子は3.38点となり,女子の自己開示度が高いことを 示した。
項目別に男女の平均値差をみると,男子の平均値が女子よりも高い項目(括弧内の数値は平均値 差を示す)は,「自分の性的なこと」(0.4),「テスト成績」(0.3),「政治経済」(0.3)や「スポーツ」
(0.2)と,わずかに4項目しかなく,その平均値差は僅少である。そして,残り23項目は,男子の平 均値よりも女子のほうが高い結果となっている。このことは,女子が男子に比べて量的にも領域的 にも多く自己開示をしていることを示している。
女子の平均値が男子より高い23項目の中で,平均値差が0.7点以上となっている項目は,「親の態 度」(1.0),「家庭生活」(1.0),「好みの洋服」(0.8),「恋人の名前」(0.7),「不安や悩み」(0.7),
そして「友人関係の心配」(0.7)の6項目であった。これらの中で,「好みの洋服」以外の項目は,特 に自分自身に関する話題であることから,男子に比べて女子は,内面的な自己開示を多くしている ことが窺える。NHK世論調査部61)によると,高校生の「親友」との付き合い方は,「なんのかくし だてもなくつきあう」とする男子が61.0%に対して,女子が75.5%と,女子の方が深く内面的であ る結果を示している。この調査では,男女ともに内面的付き合いが高い数値となっているが,高校 生の親友に対する認識が曖昧になっていることを示唆するものであろう。いずれにしても,この調 査から高校生の女子は男子に比べて内面的自己開示が高いことが裏付けられよう。
男女差ができる原因について,ジュラードは,「女性は,男性よりも自分に関するかなり個人的デー タを示す」62)が,それは,伝統的な性役割と関連が深いことを指摘している。つまり,男性役割とし て,「強靱で,客観的で,抗争的で,達成的で,センチメンタルでなく,感情をおもてにあらわさな
いように振舞うこと」63)を男性に要求する結果,男子の自己開示が抑制されるというのである。この ように,自己開示を抑制・促進する要因として,性役割が大きく働く。これは,アメリカでのこと であるが,現代の日本でも同様であろう。
(3)担任教師に対して学業・進路に偏る高校生の自己開示の状況
さらに,生徒と担任教師との人間関係を見るために,生徒が,ホームルーム担任教師にどのよう な自己開示をしているかを明らかにする。「対担任教師自己開示度調査」の結果から,「非常によく 話す」と「やや話す」の割合の和をグラフ化したものが図3である。
担任教師への自己開示は,全体的に極めて少なく,自己開示度が20%以上の項目(括弧内の数値 は%を示す)は,学業・進路領域の「将来の進路」(43.8),「テスト成績」(35.0)と「勉強の仕方」
(23.2)の3項目だけである。この3項目が突出して多く,次にやや多い話題として「健康状態」(10.7)
が後に続いている。
残り23項目は10%以下であり,その中で,自己開示度が0.5%以下の項目は,「自分の性的なこと」
(0.2),「自分の容姿」(0.5)と「異性関係の心配」(0.5)の3項目であり,これらの内面的自己開 示は,皆無に等しい状況となっている。
以上の結果から,担任教師と生徒の話題の接点は,学業・進路の領域に限られていると言えよう。
その一因は,生徒に対する担任教師の自己開示にもあるものと思われる。予備調査における教師の 開示話題は,表1のように延べ247話題であった。その中で,学業・進路の領域に関するものは,延 べ61話題であった。教師の自己開示の4分の1は,学業・進路の話題ということになる。また, 学業・
ユ朋
9図 図:非常に話す 圓:やや話す…・…・…………・一……
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7臼 。 曾 ● 。 r . 亀 り 騨 ・ ■ . 匿 ■ . , 哺 − ・ 騨 . ■ 。 ■ 曽 曹 ・ ・ 。 … ■ . . ° 曽 ・ 曜 鱒 岬 ■ ■ . . . . 噛 , . . ・ ° 幽 . 卿 ゜ ・ ° 一 . 賜 .
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姻 咀 , ● , ■ . ・ . 嚇 . 學 9 . . 噂 ■ 幽 . ■ ● 瞳 o ■ ■ ● o ● 鱒 . ■ 一 ● O o 辱 . 辱 . 曜 邑 . 昌 . ● ・ 噛 曹 曜 鴫 胃
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奨縫籍鐸譲麟蓋響蕪量諜蓋辮董難
図3 生徒の対担任教師項目別自己開示度
進路領域の61話題を開示場所別でみると,「学級全体を対象にした場面」が21話題,「何人かの小集 団を対象にした場面」が3話題,「1対1の場面」が37話題という結果であり,学業・成績領域に関
する話題の過半数が1対1の場面での開示であった。この1対1場面とは,質問紙の設問に提示した 定期個人面談のことであり,教師側の設定した面談において,教師の学業・成績に関する質問を一 問一答式に応対したことが,結果に反映したものと考えられよう。
(4)対友人に比べて極めて少ない対教師の自己開示の状況
ここでは,生徒の対友人と対教師との自己開示を比較して,どちらに多く自己開示をしているの かを明らかにする。図1の対友人自己開示度のグラフと図3の対担任教師自己開示度のグラフとを線 グラフ化したものが図4である。
「非常によく話す」と「やや話す」の割合の和を,全項目合計し,その総平均値を求めると,対友 人自己開示度は47.2%,対担任教師自己開示度は7.7%となった。このことは,教師より友人への自 己開示のほうがはるかに大きいことを示している。項目別にみると,図4において,自己開示度が30
%以上の項目は,対友人自己開示度調査で22項目,対担任教師自己開示度調査で2項目であったこと からも,生徒の自己開示は対教師よりも対友人に,量的にも領域的にも多いことが明らかになった。
対友人自己開示度の高い項目は,「テレビ番組」,「テスト成績」,「先生の態度」,「授業」,そして
「自分の失敗談」であった。一方,対担任教師自己開示度の高い項目は,「将来の進路」,「テスト成 績」と「勉強の仕方」であった。「テスト成績」は,対友人と対担任教師ともに頻度の高い話題にな
るものの,全体的にみれば,対友人と対教師の話題傾向は一致しない。
高校生の自己開示状況の先行研究の結果餌)65)を検討すると,同性の友人に対しては,最も自己開示
ユoo
@
%饗籍欝馨嘉蓑蒙舞鞍聾嚢熊蕪馨蓋登講難 事
図4 対友人項目別自己開示度と対担任教師項目別自己開示度の比較
的であるのに対して,担任教師に対しては,極めて低い自己開示であったことが明らかにされてい る。このことは,本研究の結果と一致しており,担任教師と生徒の関係は相互理解を欠き,疎遠な ものになっていることを示唆している。