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Academic year: 2021

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(1)

木材加工学習における「仮組立て」と「組立て」の思考内容の分析

臼坂 高司*

(2011 年 11 月 25 日受理)

Analysis of students’ thinking contents in “Temporal assembling”and

“Assembling parts into a work”of manufacturing

Takashi USUZAKA*

(Received November 25, 2011)

1.はじめに

 新学習指導要領(平成20年告示)が平成24年度から全面実施される。この度の改訂において,

中学校技術・家庭科,技術分野(以下,技術科)では,ものづくりを支える能力を一層高めるとと もに,よりよい社会を築くために,技術を適切に評価し活用できる能力と実践的な態度の育成が重 視されている。また,「A材料と加工に関する技術」,「Bエネルギー変換に関する技術」,「C生物 育成に関する技術」,「D情報に関する技術」の4内容を必修とし,小学校での学習を踏まえ中学校 3年間の見通しを立てさせるガイダンス的な内容を第1学年の最初に履修させるなど,学習内容の 大きな再編が図られている1)

 技術・家庭科の教科目標は従来と同様であり,最終目標を「進んで生活を工夫し創造する能力と 実践的な態度を育てる」と定め,習得した知識や技術を活用して生活上の様々な課題を解決する能 力(問題解決能力)の育成を目指している2)。技術科では,学習経験を生活場面に応用させるために,

技術的な問題解決場面での思考が重要であることが指摘されている3)。これまでに,ものづくり学 習における学習者の思考を調査した先行研究は,設計初期段階4)やけがき作業を対象としたもの5)6)7) が見られる。また,たがね8),のこぎり引き9)といった特定の工具使用場面における技能の習得過 程を調査した研究が行われている。しかし,組立てにおける中学生の思考を分析したものはあまり 見あたらないように思われる。

 そこで,筆者は現在までに組立てを対象として,中学生の思考研究10)11)12)を行ってきた。本研究 では,「仮組立て」と「組立て」における思考内容を分析するために,具体的な組立て課題を設定 した調査を実施し,ものづくり経験の多い大学生を比較の指標として用い,中学生の特徴を把握す ることを試みた。

茨城大学教育学部教育学研究室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Laboratory of Education, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

*

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2.調査方法 2-1 設定課題

 設定した課題は,教科用図書に掲載されている中で,適度な難易度のある「マルチラック」13 を選び,一般的な製作品となるよう一部変更した。

 なお,実際の製作場面を意識しやすくするため,調査票には完成図(図1)と組立てに使用する 代表的な工具などを参考資料として図示した。

図1 設定した題材「マルチラック」

2-2 調査協力者

 調査協力者は,技術科の授業においてものづくりを経験している某県内の中学生(12~14才)

205名(男子92名,女子113名)及び某大学教育学部の大学生(19~24歳)46名である。

 本研究では,「マルチラック」を完成させるために「仮組立て」と「組立て」の2工程において,

どのような思考を行っているか自由記述により回答を求める調査を実施した。

 調査協力者の大学生は,年間2コマ以上のものづくりに関連する科目を履修しており,中学生と 比較して製作活動の経験・知識が豊富である。そのため,中学生の思考内容を特徴づける指標とし て大学生が参考になるのではないかと考えた。また,ものづくり学習の製作段階における意識の男 女差を報告した先行研究14の知見を踏まえて,中学生については男女別に分析を行った。

3.カテゴリーの設定と分析方法

 思考内容を分析するためのカテゴリーを先行研究12に基づいて設定した。先行研究では,組立 て場面における中学生の思考内容として,「F1:組立て作業実行」,「F2:部品認知」,「F3:工具・接 合検討」,「F4:部品検査・修正」,「F5:組立て見通し」の5因子を抽出している。これらの知見を 参考にしてカテゴリーを設定し,中学生及び大学生が回答した自由記述の整理・分類を行った。なお,

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信頼性を確認するために,1度目の分類の後,約2ヶ月程度の間隔をあけて再度整理を行い,2回 の整理・分類において,同じカテゴリーに属したものを分析データとして採用した。

 表1に各カテゴリーの特徴と自由記述の抽出例を示す。分析データの抽出は「仮組立て」と「組 立て」ごとに実施し,中学生男女と大学生の出現率を比較・検討した。次に各工程での思考内容を 構造的に把握するために,コレスポンデンス分析を用いて,カテゴリーの相互関係や調査対象者間 の類似性について分析を行った。

表 1 設定した製作カテゴリーと自由記述の抽出例

4.中学生と大学生の思考内容の比較と考察

 調査協力者の自由記述から抽出・設定した「仮組立て」及び「組立て」における7カテゴリーの 出現数を表2に示す。

4-1 「仮組立て」における中学生と大学生の思考内容の比較

 カテゴリーの出現数を調査協力者数で割ったものをカテゴリー出現率とした。「仮組立て」にお ける大学生,中学生男子及び中学生女子の各カテゴリーの出現率を図2に示す。

 「C部品相互の関連」,「D工具」,「E接合材料」,「G接合順序・計画」において大学生の方が中 学生に比べて高い出現率であった。一方,「A正確・慎重」,「B作業実行」では中学生女子の出現 率が大学生を上回っている。

(4)

表2 大学生と中学生男子及び中学生女子のカテゴリー出現数

図2「仮組立て」におけるカテゴリー出現率  

 出現率の相違を比較するため 検定を行った。その結果,「C部品相互の関連」( =41.21, p<.01),「D工具」( =7.10,p<.05),「E接合材料」( =11.05,p<.01),「G接合順序・計画」

( =56.77,p<.01)で有意差が認められた。そこで,ライアン法による多重比較を行ったところ,

全てのカテゴリーにおいて大学生と中学生男子,大学生と中学生女子の間に5%あるいは1%水準 の有意差が見られた。

 「C部品相互の関連」は,組立ての失敗を未然に防ぐための重要な内容であるが,中学生の出現 率は10%程度に留まっている。

 「D工具」における中学生の出現率は10%未満であり,工具の選択や使用法についての意識は低 くなっている。

 「E接合材料」の出現率は大学生で約11%,中学生は10%未満であったが,このカテゴリーは組 立ての計画や見通しをもつ上で重要な要素であり,学習指導において十分に留意する必要性が示唆

(5)

された。

 「G接合順序・計画」は,組立ての順序や計画,作業や完成品をイメージするといった内容である。

これらは,先を見通した準備的な思考であり,中学生は大学生と比較して意識が低調であることが 示された。

 一方で,中学生と大学生の差が顕著でないカテゴリーは「A正確・慎重」,「B作業実行」,「D工 具」,「F検査・修正」であった。

 この中,「F検査・修正」は,接合面や部品全体の検査や修正をすること,寸法に間違いがない かチェックするなどの内容である。その出現率は中学生男女及び大学生で100%であり,「仮組立て」

における中心的な思考であると推察できる。

 「A正確・慎重」は仮組立てを正確に遂行するための情意的な内容である。「B作業実行」は,図 面の確認,力加減を考えた加工,作業場所を選択するなどの実行場面に関するカテゴリーである。

これらの出現率はいずれも30%未満であり,「仮組立て」ではあまり強く意識されていないものと 思われる。

4-2 「組立て」における中学生と大学生の思考内容の比較

 「組立て」における大学生,中学生男子及び中学生女子の各カテゴリーの出現率を図3に示す。

 「A正確・慎重」,「F検査・修正」は大学生と中学生女子が同程度の出現率であるが,他のカテゴリー については大学生が中学生男女よりも高い出現率であった。出現率の相違を比較するため 検定 を行った結果,「A正確・慎重」( =7.95,p<.05),「D工具」( =44.94,p<.01),「E接 合材料」( =37.70,p<.01),「F検査・修正」( =12.03,p<.01),「G接合順序・計画」(

=9.27,p<.01)で有意差が認められた。そこで,ライアン法による多重比較を行ったところ,

大学生と中学生男子,大学生と中学生女子の間に「D工具」と「E接合材料」では1%水準,「G 接合順序・計画」では10%水準の有意差が見られた。「A正確・慎重」,「F検査・修正」では大学 生と中学生男子,中学生男子と中学生女子の間に5%水準の有意差が認められた。

 「A正確・慎重」は,組立て作業を正確に遂行するための注意事項に関する情意的な内容であるが,

中学生男子の意識が低調となっている。

図3 「組立て」におけるカテゴリー出現率

(6)

 「D工具」は,工具の使用法を工夫することや,安全に配慮するといった実行場面での重要な内 容である。中学生の出現率が大学生よりも低いことから,工具に関する意識が十分に定着していな いものと考えられる。

 「E接合材料」は,くぎやねじなどの接合材料の選択や使用法の内容であり,他のカテゴリーと 比較して出現率が高かった(大学生100%,男子45.7%,女子59.3%)。そのため,「組立て」にお ける中心的な思考であると推察される。

 「F検査・修正」は,接合部分の検査や失敗の対処法などに関する内容であり,中学生女子の出 現率が大学生と同等であった。この思考は「仮組立て」における中心的なものであったが,「組立て」

でも再度検討する意識が大学生と中学生女子で強いことが示された。

 「G接合順序・計画」は,中学生の出現率が低い(大学生26.1%,中学生男子7.6%,中学生女 子12.4%)。組立ての順序や計画に関する思考は,「仮組立て」と比較して「組立て」では低調に なる傾向が見られた。

 一方で,中学生と大学生の間に顕著な差が認められなかったカテゴリーは「B作業実行」,「C部 品相互の関連」であり,出現率はいずれも30%未満であった。これらは,実行場面での具体的な 作業内容や,部品の大きさ,性質などが含まれる重要な内容であり,学習指導をより充実させる必 要性が示唆された。

5.「仮組立て」と「組立て」の思考構造の比較

 「仮組立て」と「組立て」の各工程におけるカテゴリー出現数を基礎データとして,コレスポン デンス分析を行った。

5-1 「仮組立て」の思考構造

「仮組立て」のコレスポンデンス分析結果を図4に示す。大学生は第1軸の正方向に,中学生男女 は負の方向に位置していた。

図4 「仮組立て」分析結果

(7)

 中学生男子は「F検査・修正」に対して,中学生女子は「A正確・慎重」,「B作業実行」及び「F 検査・修正」に対してそれぞれ強い意識をもっていると推察される。一方で,大学生は「C部品相 互の関連」,「D工具」及び「G接合順序・計画」への意識が強いと考えられる。

 図4より,「仮組立て」では第1軸の正方向に位置している「E接合材料」から負方向の「A正確・

慎重」にかけてカテゴリーが時系列的に配置していると捉えることができる。すなわち,接合の方 法や組立ての順序を考える『計画・準備』(「E接合材料」,「C部品相互の関連」,「G接合順序・計 画」)を基点として,使用する工具の確認や部品加工の精度を検討する『確認・評価』(「D工具」,「F 検査・修正」)を経由して,正確に作業を行う『実行』(「B作業実行」,「A正確・慎重」)につなが る3つの思考構造と推察できる。従って,「仮組立て」工程において中学生は,『確認・計画』や『実 行』の意識が強く,大学生は『計画・準備』を重視しているものと考えられる。

 

5-2 「組立て」の思考構造  「組立て」のコレスポンデンス分析結果を図5に示す。

図5 「組立て」分析結果

 大学生と中学生男子は第1軸の正方向に,中学生女子は負の方向に位置している。第2軸では大 学生と中学生女子は負の方向に,中学生男子は正方向に位置していた。

 中学生男子は「B作業実行」,「C部品相互の関連」,「E接合材料」に対して,中学生女子は「A正確・

慎重」,「F検査・修正」に対してそれぞれ強い意識をもっていると推察される。一方で,大学生は

「D工具」,「E接合材料」,「G接合順序・計画」への意識が強いと考えられる。

 図5を時系列的に解釈すると,『工具検討』に関する思考(「D工具」)を出発点として,接合材 料の選択や部品相互関連の検討をした後,具体的な作業の実行を行う『計画・実行』(「G接合順序,

計画」,「E接合材料」,「B作業実行」,「C部品相互の関連」)を経由して,接合部分の検査や修正 を正確に行う『評価・修正』(「A正確・慎重」,「F検査・修正」)に結びつく3つの思考構造となっ

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ている。従って,大学生は『工具検討』及び『計画・実行』を重視していると考えられる。中学生 男子は『計画・実行』に関する思考が強く,中学生女子は『評価・修正』への配慮が強いと推察で きる。

6.まとめ

 本研究では,組立て工程において,ものづくりの初心者である中学生がどのような思考を行って いるかを調査した。「仮組立て」と「組立て」の思考内容を抽出し,大学生との比較・検討を行っ た結果,以下に示すことが明らかになった。

(1)「仮組立て」では,「C部品相互の関連」,「D工具」,「E接合材料」,「G接合順序・計画」において,

中学生の思考が大学生と比較して低調であった。また,「F検査・修正」の出現率は中学生男 女及び大学生で100%であり,「仮組立て」における中心的な思考であると推察できる。

(2)「組立て」では「D工具」,「E接合材料」,「G接合順序」において,中学生の思考が大学生よ りも低調であった。また「A正確・慎重」,「F検査・修正」では,中学生男女間で意識の強 さに違いが見られた。

(3)「仮組立て」の思考構造は,『計画・準備』,『確認・評価』,『実行』で構成されていた。中学生は,『確 認・計画』や『実行』の意識が強く,大学生は『計画・準備』を重視している傾向が見られた。

(4)「組立て」の思考構造は,『工具検討』,『計画・実行』,『評価・修正』で構成されていた。大 学生は『工具検討』及び『計画・実行』を重視し,中学生男子は『計画・実行』に関する思 考が強く,中学生女子は『評価・修正』への配慮が強いと推察できる。

引用文献

1) 文部科学省.2008.『中学校学習指導要領,技術・家庭編』(教育図書),pp.3-10.

2) 同書,pp.11-13

3) 清原道寿.1968.「技術教育の原理と方法」(国土社),pp.115-116.

4) 竹野英敏・松浦正史.1993.「中学生を対象とした加工学習での設計過程における初期構想場 面の内的操作と外的行為に関する分析」『日本産業技術教育学会誌』35巻4号,pp.279-286.

5) 左田和幸・松浦正史.1993.「技術的な課題における問題解決の過程に関する研究」『日本教 科教育学会誌』第16巻第3号,pp.109-116.

6) 左田和幸・松浦正史.1993.「技術的な課題における問題解決のプランに関する研究」『日本 産業技術教育学会誌』第36巻第1号,pp1-8.

7) 左田和幸・松浦正史.1995.「技術的な課題の問題解決過程における修正行動に関する研究」,

『日本産業技術教育学会誌』,第37巻第3号,pp205-212.

8) 大道正樹・松浦正史.1994.「認知学的アプローチによる技能習得の初期段階に関する基礎 的研究」『日本産業技術教育学会誌』Vol.36,No.2,pp.75-81.

(9)

9) 大道正樹・松浦正史.1996.「中学校技術科の学習における認知と遂行に関する基礎的研究」『日 本教科教育学会誌』Vol.19,No.1,pp.23-32.

10) 臼坂高司,谷田親彦,藤井大三,上田邦夫,山本透.2009.「ものづくりの組立て場面におけ る大学生と中学生の思考内容の比較」『日本産業技術教育学会誌』第51巻3号, pp.175-186.

11) 臼坂高司,谷田親彦.2009.「ものづくり学習の組立てプロセスにおける工程と思考要因の 分析」『日本教科教育学会誌』第32巻2号,pp.41-48.

12) 臼坂高司,谷田親彦,山本透.2009.「ものづくり学習の組立て場面における中学生の思考構 造の解析」『科学教育研究』第33巻4号,pp.302-309.

13) 加藤幸一ほか.2006.「新編新しい技術・家庭,技術分野」(東京書籍株式会社)pp.44.

14) 上田邦夫・谷田親彦.2001.「ものづくり学習の製作場面における生徒の思考活動の構造解析」

『科学教育学研究』Vol.25, No2,pp.102-107.

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